第287話 アニスと超重巡航艦「ヤマト」
-ヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属 超重巡航艦「ヤマト」艦内ー
テクテクテク ピ ポン
「ん、こっちね」 サ テクテクテク
ヤマト皇国の秘匿艦艇、超重巡航艦「ヤマト」の艦内を、通路に出る指示通りにアニスは1人で歩み進んでいた。
テクテクテク ピ ポン テクテク ピ ポン
「なるほどねえ、侵入者… ううん、この偽世界の人間が勝手に『ヤマト』の最重要区画に侵入しない為の、通路を使った暗号キーかあ、パターンは通路と曲がり角の数で無限にありそうだし、よく考えてるね」 テクテク
アニスの言う通り、「ヤマト」の巨大な艦内には大小無数の通路と数多くの曲がり角やT字路、階段があり、「ヤマト」の最重要区画に辿り着くには、それらのキーとなった通路と曲がり角やT字路、階段を順番に通過しなければ辿り着けず、間違えた時点でいつの間にか入り口へと誘導されてしまう迷路になっていた。
テクテク ピ ポン テクテクテク ピ ポン クル テクテク…
数十の通路と階段、曲がり角を曲り、やがてアニスは指示通りに進んだ先に一つの扉の前に辿り着いた。
「ん、ここが終点かな?」 ピタ
アニスが扉の前で立ち止まると、何処からともなくアニスに対して優しい女性の声がかけられた。
ポン
『カロシスト、アニス、シーア(お待ちしていました、アニス様)』 ピッ
「わッ! これは、神語じゃないか、それも最上位界、ファースター言語ッ!」
『モレイ、カタロレイト、ベイス?(言葉は通じていますか?)』 ピッ
「ん、え〜っと… 『カタロレイション、ヤマト(言葉はわかるよ、ヤマト)』」
『オレイア。 ベルトゥメイス(安心しました。 中へどうぞ)』 ピッ
「ん!」 コクン
ピッ プシューーッ! テクテクテク
アニスは、目の前の扉が開くと躊躇なく中へと入っていった。
テクテクテク ピタ
「何にもない部屋だね… ここが目的の部屋なのかな?」 キョロキョロ
アニスが入った部屋の中は、縦横25mもある薄暗い部屋で、入り口の扉以外何もない部屋だった。
ポン
『ファラカロイス、メアケイル、アニス、シーア(そのままでお待ちください、アニス様)』 ピッ
「ん?」
パアアアンンッ! シュバアアアーーッ! ゴオオオーーッ!
アニスがその場に立ち尽くしていると、アニスを中心に純白の魔法陣が足元に現れ、アニスを包むように光の円柱が現れた。
「へええ… ここまで来てさらに『ヤマト』自身が転移させないと目的の場所にいけないんだ… 完璧な侵入者対策だよ、『ヤマト』は凄いね」 シュバアアッ!
『エルファレイラ、キュレイス、アニス、シーア、トゥルア、ゼキュレイ、ティア、メイフィーア(ありがとうございますアニス様、それでは転移を開始します)』 ピッ
シュバッ! シュンッ!
次の瞬間、アニスの身体は一瞬でその部屋から消え去った。
ー超重巡航艦「ヤマト」最重要区画中枢ー
シュンッ! シュパアアンンッ! ファサ… トン…
「ふ〜ん、どうやらここが目的の場所みたいだね。 なるほどねええ… 『ヤマト』ここが君の最重要区画、中枢部があるメインコアルームなんだ、そして君が『ヤマト』なのかな?」 クルッ ファサ…
転移したそこは、照明の眩い光が部屋全体を白く照らしだし、その中央に床から4mほどの空中を直径が10mもある黒い球体が宙に浮き存在し、それにアニスは振り向き尋ねた。
ブウウン ブウウン ピッ
「ネイ、イハラティーネ、レヴン、アニス、シーア、セトゥンファ、フェル?(はい、ようこそおいで下さいましたアニス様、御疲れではございませんか?)」 ピッ
「ん、『ヒネウィ、ザクシィ、ノッファ(大丈夫、疲れてはいないよ)』」 ニコ
「ヴィファ、ノスフィリア(そうですか、安心しました)」 ピッ
「トレティ、グロッサリア… シィ、アシュトル、パルウェラシ『アーク』アルトロパ、ディ、ボウナスイ、メイサ(しかし、神語かあ… この偽世界『アーク』の人々では君との会話は出来ないね)」
「ナイン(いいえ)… 会話なら出来ますよ? アニス様」 ピッ
「ええッ! なんだ『ヤマト』、この偽世界『アーク』の言語が話せるのッ⁉︎」
「はい、言語はこの世界の人々から習得しました。 このように会話でしたら不都合なく出来ます」 ピッ
「じゃあ、最初の神語は何だったの?」
「当然、侵入者対策ですね。 神語が交わせない者は、ここには通しません」 ピッ
「完璧だ… 鉄壁の防御だよ」
「エルファレイラ(ありがとうございます)」 ピッ
「ん〜、神語はもういいよ、この偽世界の言語の方が馴染み深いからそっちでお願い」
「了解しました、アニス様」 ピッ
「ん、それで『ヤマト』、君は私を探しに来た神界の船なのは分かってるけど、本当はなんなの?」
「はい、私の正式名称は『自立思考型、多次元異空間広域探査救助船 ボイジャーシリーズ 船体番号NCC-2021』、第1神界世界の創造神様、【シュウゴ】様が異次元世界にロストされたアニス様を捜索し救助する為に多数作られた探査救助船の一隻です」 ピッ
「そうか、君はシュウゴが作った船なんだ… 何隻が動いてるの?」
「はい、私を含めまして同型探査船、10万隻が異次元世界へ放たれ、アニス様の捜索に飛び回っています」 ピッ
「10万隻かあ… 異次元世界にロストした私を探すには少なすぎるね」
「その通りです。 一つの次元世界に世界が数千万以上、さらにその一つ一つ世界を探査するのに数百年を要しますから、全く足りません。 ですが創造神シュウゴ様以外の神々も同様の大小様々な多次元探査救助船を独自に制作、無数の異次元世界に飛ばしてアニス様を探しています。 その数は数億隻、決して少ないとは言えません」 ピッ
「そうか… 他のみんなも私を探してくれているんだ」
「はい、特に6大女神様の1人、【エレンディア】様が必死でお探し中です」 ピッ
「そうなんだ、エレンディアがねえ… それで君はどうしてここに? 船体の状況から見て随分と前からここにいるみたいだけど?」
「はい、今より318年と118日、14時間15分前に、私はこことは別の異次元世界を探査中でした。その世界の探査を終了した時、別の異次元世界から超高速次元信号を受信しました」 ピッ
「次元信号? 何それ?」
「はい、こちらにそのログが残されています」 ピッ ポン タタタタタ
『…… ザ、ザザザアアー… き… たら返事… れ、… わ…はアニス… 異次元の…… 救助… この… 聞こえたら…… 座標…… 頼む…… ザザザアア……』 プツン ピコ!
「これ?」
「はい、信号の中に、探査救助船の私にとっての最重要固有名詞、アニス様の名前がありました。 そこで私は信号にあったわずかな記録の中で、該当する座標をいくつか選出し、この世界にたどり着いたのです」 ピッ
「へええ、やるいじゃないか」
「ありがとうございます。 ですが私がこの世界、偽世界『アーク』に辿り着いた瞬間、この世界の創造神によってこの地に誘い込まれ、この場所から身動き出来ないようにされたのです」 ピッ
「よく破壊されなかったね」
「はい、同格の創造神様に創造、製作された広域探査救助船の私はその任務の性格上、船体は強固な単分子装甲の他、各種防御シールドにより、そう簡単には破壊することはできません」 ピッ
「そうだよねえ、異次元に消えた私を見つけ出すなんて何年かかるかわからないもんね」
「はい、ですがこれがこの偽世界『アーク』の創造神は私を破壊することが目的ではなく、全く別の目的でこの偽世界『アーク』に私を誘い込んだようです」 ピッ
「別の目的ねえ… まあ大体想像はつくけどね」
「さすがアニス様、この偽世界『アーク』の創造神は貴女様を完全消滅させるのが目的、そしてその手段として、この私を偽世界『アーク』に誘い込んだのです。 私は遥か遠方の異次元世界よりここまで来て、その罠にかかりこの地より動けなくされました。 ですが、それさえもこの偽世界『アーク』の創造神にとっては単なるシナリオの一つだったと後で気が付いたのです」 ピッ
「罠… またシナリオかあ…」
「はい、創造神のシナリオでは広域探査船の私を使い、まずこの偽世界『アーク』の文明速度をあげ、この偽世界『アーク』の崩壊を促進させる行動に出ました」 ピッ
「ん、ジオスなら考えそうなシナリオだね…」
「はい、この地に落とされた私をこの偽世界『アーク』の人々を誘導し見つけ出させ、私の船体から多くのテクノロジーを引き出した人々は空に浮く船や巨大人型兵器、無人で動くドローンなどを次々と開発製造して、異常なまでの速さで文明が進んでいきました」 ピッ
「ああ、それは私も見たよ… たしかラウンドシップとかいう武装した数々の空を飛ぶ船やブレードナイトという人が乗り、操縦する兵器のことでしょ?」
「はい、その通りです。 あれらは私の船体から持ち帰った技術の発展型ですね」 ピッ
「そうか、初めてブレードナイトやラウンドシップ見た時、あまりにも文明技術が進んでいるなと思ったけど、君から流出した技術だったんだね」
「はい、私の意思に関係なく引き出された技術とその応用です」 ピッ
「そうか、この偽世界『アーク』の人々にとって君はオーバーテクノロジーの塊だからねえ…」
「はい、身の丈に合わない技術はその者の身の破滅を促します。 私の船体から出た技術はこの偽世界『アーク』全土に急速に広がりました。 当然、各国の間で技術の競い合いが始まり、兵器たちが格段に進歩を遂げると、いつしかこの偽世界『アーク』の人々はお互いの国の力を相手に見せ始めたのです」 ピッ
「つまり技術、兵器の見せ合い、武力衝突、国家間紛争、戦争が始まり、最終的には相互対消滅、そしてこの偽世界『アーク』の崩壊、この私… アニスを巻き込んでの… 創造神ジオスの数多くあるシナリオの一つとして… か」
「はい、正解です。 創造神ジオス、彼は何十何百何千といったシナリオを同時進行させています。 まったく通常の演算処理では到底出来ない芸当です」 ピッ
「まあね… 何と言ったって彼、創造神ジオスは私の娘たち6人の女神が総力を込めて作った特殊制御コア、それが自我に目覚め自らを創造神ジオスと名乗った神だからね、それくらいはお手のもんさ」
「しかし、このままでは…」 ピッ
「ん、大丈夫だよ。 私が何とかする、その為に私はこの世界に来たんだ」 ニコ
「アニス様… ではアニス様にお任せします。 ですがなぜこの偽世界『アーク』の創造神は貴女様を消去しようとするのですか?」 ピッ
「ん〜… 彼は、創造神ジオスとして、私の存在を認めたくないんじゃないかな?」
「????? 申し訳ありません、今の答えでは理解出来ませんでした」 ピッ
「そうだよね、それでいいよ…(創造神ジオスの狙いは私、アニスの私がいる限り創造神ジオスはこの偽世界『アーク』からどこにも行けない、抜け出せない、だから私を、アニスの消滅を望んでいるなんて、理解できるはずないからね)」 フリフリ
「わかりました、アニス様がそうおっしゃるのであればその通りにいたします」 ピッ
「ん、それでこの偽世界『アーク』はどう?」
「はい、無数に存在する異次元世界、その中でもここ偽世界『アーク』は異質中の異質、特別な異次元世界でした」 ピッ
「ん、そうだろうね」
「アニス様、この異次元世界、偽世界『アーク』とはいったい何なのですか? 他の異世界とはまったく別の何か大いなる力が関わっているようなのですが?」 ピッ
「さすがシュウゴの作った探査船、気付いていたんだ」
「はい、この偽世界『アーク』、侵入するのは容易いのですが、脱出はほぼ不可能なのです。 異次元広域探査船である私の第一第二宇宙速度、それを上回るハイパードライブ、さらには次元波動空間短縮移動航法、ワープを使ってさえも脱出が不可能、出来なかった異次元世界… 今まで数多くの異次元世界を探査して来た私にある全ての知識にも、このような異次元世界は存在しないのですが…」 ピッ
「ん、この偽世界『アーク』は元を正せば6大女神が1人、エレンディアが創造した新世界、それを制御調整するための7個の制御コアが全て暴走して、その中でも最大最強の力を持ってしまった特殊制御コアが創造神ジオスとなり、数多くのシナリオを作って、人々を操り全ての世界を破壊する行動に出た。 そして一度だけ、異世界『アーク』は崩壊、消滅している…(まあ、私を消滅させる事に至らなかったけどね)」
「では、今あるこの世界は新たな…」 ピッ
「ううん、ここはそれとはまた別の異次元世界、偽世界『アーク』なんだ 」
「???? よく意味が分かりませんが? アニス様がこの世界を再構築したのではないのですか?」 ピッ
「ん〜 ちょっと違う、まずこの偽世界『アーク』の源は女神エレンディアが創造したたった一つの世界、魔道世界『アーク』なんだ」
「魔道世界…」 ピッ
「ん、この偽世界『アーク』とは違い、空を飛ぶ船もない、人が乗り操る人型巨大兵器もない、ただ剣と魔法、魔族や竜に魔物などが存在する世界だったんだ」
「そのような世界なら数多く探査して、確認しています」ピッ
「ん、だけど君の探査した世界とここは違うんだ」
「と、申しますと?」 ピッ
「あの日、この異次元世界、魔道世界『アーク』は一瞬で消えたんだ、そう一瞬で…」
「一瞬ですか」 ピッ
「うん、目の前が突然真っ暗になり、何もない世界になったんだ、そして私がその世界を元に戻した瞬間、魔道世界『アーク』の異次元世界にはいくつかの並行世界が誕生してしまったんだ… そう、いくつもの『アーク』しか存在しない異次元世界、他の類を見ない特殊な異次元世界になってしまったんだ」
「それはアニス様のお力でですか?」 ピッ
「ん、たぶん… ね」 コクン
「『アーク』と言う並行世界しか存在しない異次元世界、しかもこの偽世界『アーク』のみ蟻地獄のような、入れば二度と他の世界に行くことのできない特殊世界、確かに他の異次元世界とは違いますね」 ピッ
「ん、(まあ、この異次元世界『アーク』、そのすべての『アーク』という世界はどれも創造神ジオスを止める為の世界なんだけどね…)」
ドオオンンッ! ガアアアンンッ! グラグラグラ パラパラ
その時、遠くから爆発音と、それによるわずかな振動がアニスたちに伝わった。
「ん? 何だろう?」
「アニス様の御友人の方の様ですね、先ほどから私の中に入ろうと必死に破壊活動をしています」 ピッ
「破壊活動って…」
「アニス様が入った扉が開かないせいでしょうね、打撃や魔法、さらには火薬を用いた武器などを使っているみたいですね」 ピッ
「はああ、そんなんでこの船の扉が開くわけないのに…」 フリフリ
「同感です」ピッ
ドオオオオンンッ! グラグラ
ポン ブウウン パッ!
アニスの前に浮いている黒い球体の表面に、外の状況が映し出された。
『うをおおおおッ! 『ヤマトオオッ!』これでも食らえええッ!』 ドオオオオオーッ!
ドガアアアーーンッ!
「わああ… これでも食らえって何してんですか信長さん! ってかもうあの人は信長でいいや! しかし… あははは、怒ってる怒ってるよね、あれ」
「笑い事ではありませんよアニス様」 ピッ
「ああ、ごめんね。 そういえば、信長や卑弥呼は君のことを超重巡航艦『ヤマト』って呼んでるけどなんで? 君は戦う事もできるの?」
「はい、『ヤマト』と言う名前は、この地の国の人々が最初に私を見つけた時にそう名付け呼んでいます。 あと戦闘の方ですが、数々の異世界を探査する過程で、戦わざるおえない状況が幾度かありましたので可能です」 ピッ
「ん、じゃあこの偽世界『アーク』の空飛ぶ船のように大砲やロケットを撃つの?」
「確かにそのような設備は備わっています。 ですが大抵の場合は合理的速やかに一撃で終わらせてきました」 ピッ
「一撃って… どうやったの?」
「私の船首に装備されています特殊殲滅破壊兵器を使用しました」 ピッ
「それって、この国の要塞も一撃で倒せてしまうほどの物?」
「要塞ですか? 容易いですね、一瞬で消し飛んで消滅してしまいます」 ピッ
「それかあッ! 信長の持っていた要塞など恐れない絶対の自信! 君の兵器のことを知ってるんだ」
「いいえ、あの者は兵器のことを知らないと思います」 ピッ
「ん? じゃあ何であんなに自信満々だったのだろ?」
「そうですね、おそらくこの船に装備されている主砲を見たからではないのでしょうか?」 ピッ
「主砲? 大砲のこと?」
「はい、当船の船首に備わっている兵器に関しては知られていません、ですが以前彼らが私の中に侵入して技術を奪って行った際に、前部上甲板下に収められている2基の51cm3連装電磁加速砲を見たからだと思います」 ピッ
「わああ… 51cmって、その大きさのレールガン、しかも3連装が2基は最強装備じゃないか」
「この世界の空を飛ぶ艦船は全て一撃で跡形もなく撃沈できますね、おそらく要塞さえも多大な損害を与える事ができるでしょう」 ピッ
「ん〜、君を戦場に出したくないなあ、たくさんの人が大変なことになってしまうよ…」
「はい、ですが長きに渡り、この国の人々は私を彼らの手で動かす改装を施してきました。 船首の装備とここの中枢以外は全て彼らの手で動かせてしまいます」 ピッ
「君が制御はできないの?」
「現在は必要最小限の事ぐらいしかできません」 ピッ
「ん、じゃあ戦場には駆り出される可能性が高いね」
「はい、すでに私はアニス様に会えた事につい、メイン機関を起動させてしまいました。 そのせいでいつでも行動できる状態です。 しばらくすれば、私は彼らの手で此処この地を立ち、彼らの求める戦場へと赴くものと推測します」 ピッ
「どうしよう?」
「どうされますか?」 ピッ
「ん〜……」
アニスと超重巡航艦「ヤマト」が、この先の事をどうしようか考えている中、黒い球体の表面に映る外の映像には、爆炎の中で激しい怒りに満ちた織田信長元帥の姿が映し出されていた。
ピ ピ ピコ ピコ ブウウン…
『おのれえッ! 忌々しい扉めえッ』 ググッ! チャキン!
ヴオンッ! ヒイイイイイイインンーーーッ!
『うをりゃああーーーッ! 玉帝!《紅蓮斬ッ!》』 シュバッ!
ドガアアアアアンンーーッ! ドオオオオッ! ダアアアアンンンッ!
「わああッ!」 ガタンッ! グラグラグラ ヨロ…
「あらッ!」 ピッ
ビイイーーッ! ビイイーーッ! ポン
『左舷、第208乗船用ハッチ大破損傷』 ポン
ピ ピ ブウウン ピコピコ
『ハアハアハアハア…… フフフ!… ど、どうだ『ヤマト』… こじ開けてやったぞ… 』 ハアハア… フラ…
ブウウン ブウウン ピ ピ ピポ
「凄いですね彼は、防御シールドを打ち破り、乗船用ハッチを破壊するなんて… さすがアニス様の御友人」 ピッ
「ちょっと、それどう言う意味だよッ! だけど私もびっくりだよ、凄いね信長は、やるじゃないか… でもアレでいいの? 船の中に入ってきちゃうよ?」
「はい、大丈夫です。 彼には大変失礼ですが、あの程度の損傷など瞬時に修復できます」 ピッ
「ん?」
ポン
『損傷箇所のリペアを開始、端分子装甲再生、修復します』 ピッ
ブウウン ブウウン ピ ピ ピ
ゴゴゴ シュバッ! パアンンッ! シュウウウ……
織田信長元帥によって破壊された扉とその周辺の外壁装甲が、元帥の目の前で一瞬にして修復され、元の状態へと戻ってしまった。
『なッ⁉︎ 瞬時自己修復機能だとッ! く、くそおおおおッ!』 ダンッ! フラフラ ドサ…
ブウウン ピピ ピコ
「ね!」ピッ
「いや、ねって言われてもねえ… はああ、信長、『ヤマト』が なんかごめんね」 ペコ
アニスは、黒い球体の表面に映る外の様子の中で、魔力を使い果たし地面に片膝をついている織田信長元帥に対し謝っていた。
「それでアニス様、先程の続きですが」 ピッ
「ん?」
「この後、私はどうしたら良いでしょうか?」 ピッ
「ん〜…… そうだねえ、卑弥呼に反乱した人たち… その多くはおそらくアイツに操られているんだろうね、全く気づかず己の意思に反して… 私は助けられるものならできるだけ助けてあげたい… だけどこの船はそんな彼らを討伐に向かって動いてしまう、戦闘は避けられない… ならば…」 ググッ
「アニス様?」 ピッ
「ん、決めた! 私もこの船で一緒に戦場に行こうかな」 ファサ…
「はい? アニス様本気ですか?」 ピッ
「ん、船の一時的な管理操作は彼ら国防軍の軍人さん達に委ねるけど、いざとなったら私が何とかするよ」 ニコ
「はい わかりましたアニス様ッ! 仰せのままに」 ピッ ビコビコ!
「まあ、その前に、信長に君の出撃を止める様言ってみるけどね」 テクテク
ピッ プシュウウ… テクテク
「アニス様…」 ピッ
ブウウン ピ ピコピコ
超重巡航艦「ヤマト」、神界世界が作ったアニスを捜索し救助をする船、多次元広域探査救助船はアニスを乗せ、戦闘艦では無く本来の仕様である救助船として動き出した。 最強の戦闘力を持った救助船として…
ーヤマト皇国帝都「トキオ」国防軍総本部内艦艇ドックー
アニスと超重巡航艦「ヤマト」が会話をしていた頃、ヤマト皇国国防軍総本部内にある港から、反乱軍に占拠された硫黄島「父島要塞」に向け、機動部隊が出撃していった。
ビーーッ ビーーッ ビーーッ ポン
『第1機動艦隊出港準備、港湾作業員は退避せよ、繰り返す、第1機動艦隊…』 ポン
「おらああッ! 舫外せええッ! 出港するぞおおッ!」 バッ
「「「「 了解ッ! 」」」」 ババッ! バタバタバタバタ ワーワーッ!
シュゴオオオオーーッ ゴオオン ゴオオン ゴオオン
ー要塞攻略第1機動艦隊 旗艦正規空母「ヒリュウ」艦橋ー
ブウウン ピ ピ ピ
「『ヒリュウ』艦内、全艦異常なし、総本部港湾局より出港の許可を受信」 ピ タンタン ピコ
「『ヒリュウ』抜錨ッ! 補助動力にて微速前進、メインフォトン機関アイドリング開始、第1メインゲート開放、進路クリアー、出港します」 ピ タタ ピコピコ グイッ!
シュバアアーーッ! ゴゴゴゴ ゴオオーー
「『ヒリュウ』順調に港内を出港中、ジャイロ安定、機関動力に問題なし、速度増速ッ!」 ビコビコ!
ビーーッ!
「艦長、本艦後方に2番艦『アカギ』抜錨ッ! 本艦に続き出港します!」 ピポ
「うむ、操舵手! ゲートを出たら直ちにメイン機関始動、速度第1戦速! 輪形陣陣形を編成するぞ! 通信士ッ! 第1護衛戦隊旗艦に通信! 各護衛駆逐艦は予定の配置につけさせろ!」 バ
「「 はッ 了解しましたッ! 」」 ササ! ピ カチカチ ピピ ポン
ビーーッ!
「第1護衛戦隊、護衛駆逐艦「アキツキ」「シモツキ」「タニカゼ」「ミネカゼ」「フブキ」「アヤナミ」、戦隊旗艦の巡航艦「スズヤ」を先頭に第2ゲートより出港を開始ッ!」 ピピ ビコビコ!
ゴゴゴゴ シュゴオオオーーー ゴウン ゴウン ゴウン
やがて、総本部内艦艇ドックから、次々と第1機動艦隊の艦艇が出ていった。
ポン
「『ヒリュウ』ゲートを通過、メインフォトン機関始動用意!」 ピッ ピコ
「艦長、後方2番艦『アカギ』もゲート通過、第1機動艦隊全艦出港!」 バッ
「よしッ! 艦隊全艦上昇ッ! 高度1800ッ! 陣形を整え次第第1戦速ッ! 目標、五稜郭要塞及びヨコスカ軍港から発進する皇国国防軍、大陸艦隊の主力艦隊ッ! 全艦発進ッ!」 バサッ!
「はッ!」 ピッ タンタン ピコ グイイッ!
ヒイイイイイインンンッッ! バウウウウウウーーーッ! ドオオオオオーーッ!
旗艦、正規空母「ヒリュウ」と「アカギ」を中心に、第1機動艦隊は急上昇した後、第1戦速という高速で、綺麗なリング状の輪形陣を取り発進していった。
ー超重巡航艦「ヤマト」第1ドックー
タタタタタ ササ
「元帥閣下、大丈夫ですかッ!」 ザッ
「ハアハア… ふううう… で、あるか…」 ぬうう…
アニスの入っていった扉を開けようと、魔力を全て使い果たし、片膝を突いて床にしゃがんでいた織田信長元帥の元に、この秘匿ドックに招かれた修理技術作業員が駆け寄ってきたその時、先ほど完全修復された乗船用ハッチが開いた。
ピ プシュウウ…… テクテクテク ファサ…
「うおッ! アニスッ! 無事だったか!」 バサッ!
「ん、ただいま帰りました」 ニコ
ザッ ザッ ザッ
「まったく、心配したぞッ!」 サッ
「あははは、ごめんね、でもちゃんと『ヤマト』とは話せたよ」
「むう、『ヤマト』とか… どんなことを話した?」 ジッ
「ん、この子が誰で、どこから来て、何の目的で此処にいるのかとかね」 ニコ
「何ッ! それで、それを聞いてお前はどう思った?」
「ん? 私? 私かあ… 天運命運時の運、地の利人の和、回りくる輪廻と森羅万象… ねえ信長、貴方は神の存在と奇跡を信じますか?」 ファサ…
「で、あるか… アニス、何のことだ?」
「そうだよね… ううん、まあいいや、でね、この子は戦うために此処に来たんじゃないんだ」
「ほう、面白い事を聞いたのだなアニスよ、では何のためだと言うのだ?」
「人探しとその救助なんだって」
「ふッ くくく、ああっははははははッ! 面白いッ! 久々に笑わしてもらったぞアニスッ!」 バサッ
「ん? おかしいかな?」
「くくく、おかしいも何もこの『ヤマト』、これほどの武装とその巨大な艦体ッ! これが救助船だと? どこをどう見ればその様な戯言が出てくるのだ!」 わっはははは…
「ん〜、でもね…」
その時、アニスと織田信長元帥が話している最中に、けたたましくブザーが鳴り響いた。
ビイイーーッ ビイイーーッ ビイイーーッ!
「むッ!」 バサ
ポン
『硫黄島『父島要塞』攻略作戦が開始されました。 要塞攻略主力艦隊及び第1機動艦隊、共に移動を開始、超重巡航艦『ヤマト』は直ちに発進体制を、繰り返します。 硫黄島…』 ポン
「むう、始まったか…」
「ねえ信長…」
「すまないアニス、話はまた後だ! お前は此処で待っておれ、『ヤマト』の機関始動には感謝するぞ! だが此処までだ! 女子供は下がっておれ、『ヤマト』 はこれより発進する!」 バサッ ザッ ザッ ザッ
そういって織田信長元帥は、メイン乗艦口に向かって歩いていった。
「はああ、信長のわからんちんめえ…」 ググ
ビイイーーッ ビイイーーッ ビイイーーッ
ワーワー バタバタバタ ガヤガヤ
「出港準備ーッ!」 バタバタ
「総員乗艦急げ! 発進するぞお!」 ザワザワ
ピポ
『どう致しますかアニス様?』 ピッ
「ん、仕方がないね、さあ行こうか『ヤマト』」 ファサ…
『了解しました。 アニス様、再度中へ』 ピッ
「ん」 コクン テクテク ピ ピシュウウウウ…
アニスは再び超重巡航艦「ヤマト」の中へと入っていった。
ー超重巡航艦「ヤマト」艦橋ー
ブウウン ブウウン ピ ピ
「主機関1番から4番正常に稼働中、総員配置につきました!」 ピコ ピコ
「燃料、弾薬積み込み終了、搬入ハッチ閉鎖」 ビコ ピ
「艦橋、こちらCIC、各種センサー、SPYレーダー共に正常問題なし!」 ピ
「元帥閣下、総司令部からの発進許可を受信、『ヤマト』発進準備完了!」 サッ
「うむ、『ヤマト』抜錨ッ! 発進ッ!」 バサッ!
「了解ッ!『ヤマト』発進しますッ!」 ピ カチカチ グイイッ!
シュゴオオオオーーーッ! ドオオオオオーーッ! ゴオオン ゴオオン ゴオオン
ヤマト皇国国防軍最大の艦艇が今、動き始めた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。