第286話 惨劇と準備
ーヤマト皇国帝都最南端海上 硫黄島「父島要塞」格納庫ー
バリバリバリッッ バチバチッ!
「ぎゃああああーーッ!」 ガクガクガク ブルブル ドサッ
「「「 高木ーーッ! 」」」 ザザッ!
「あははは、また死んじゃったねえ… まったく、どうしてどいつもこいつも僕の言う事を聞かないかなあ? 僕に逆らったら死んじゃうのに、ねえ?」 サッ ブンブンッ! ビュンッ! ビシャッ!
ヤマト皇国国防軍が、総本部内で反乱軍に対しての作戦会議を開いていた頃、その反乱軍によって占拠された硫黄島「父島要塞」のブレードナイト格納庫内では、ヤマト皇国の勇者【ヒカル】が要塞駐留軍ブレードナイト部隊、多数の搭乗員のブレードライナー相手に、勇者ヒカルの持つ神剣の雷神剣「リヒト・ソラウス」を使って、「自分たちに従え、勇者の僕に忠誠を誓え、現天帝を崇め、それに従う者は全て討ち果たせ」と言う、非道的な強要を迫っていた。
だが、その場にいたブレードライナーは、誰1人としてそのような要求は認めず反抗し、逆らったライナーを勇者ヒカルは次々と容赦なく切り伏せ殺害していった。
「さあて、僕の言う事を聞く気になったかなああ?」 ニヤッ ヒュンヒュン!
「うぐぐッ! くそおおおおッ!」 ブンッ ビシュウウウウッ! ダダダダッ!
「よせッ! 小野田曹長ーッ! 戻れッ! 戻るんだああーーッ!」 バッ!
ブレードナイト格納庫の隅に追いやられていたブレードライナー達のうち、若い青年ライナーの1人が、ブレードナイト隊隊長らしき中尉の制止も聞かず、ライトニングセイバーを起動して神剣を振ってニヤついている勇者ヒカルに斬り掛かっていった。
「うん? はああ… まだこの状況を理解できない人がいるんだなあ…」 ビュンッ! チャキン!
「うるさいッ! 勇者だからってなんだッ! 高木の仇だああーーッ!」 ダダ! ブオンッ! ブン!
「曹長ーーッ!」 ババッ!
「ククク、いいねえその顔、だけど… 君らの実力じゃあ僕には勝てないよ?」 ニヤ シュンッ! シュバッ!
「なッ! 消えたッ!」 ビュンッ!
シュザッ! バッ!
「ははははッ! ここだここッ! どこを見ているのかなッ!」 チャキッ!
「あッ!」 バッ!
「反応が遅いねえ、じゃあ、バイバイ!」 ビュンッ! シュバッ!
「ぎゃああああーーッ!」 ザンッ! ブシャアアアアーーッ!
「小野田曹長ーーッ!」 ザッ!
「あ… ああ… た、隊長…」 ボタボタ…
ドサッ サササアアアア……
勇者ヒカルにライトニングセイバーで挑んでいったブレードライナー小野田曹長は、勇者ヒカルの逆撃を受け、一瞬で袈裟懸けに切り裂かれ絶命し、その身体は魔素還元され消えていった。
「あはは、だから言ったじゃないか、また死んじゃったねえ、次は誰かなあ?」 ニイイ ギロッ!
「ぐうう… おのれええ… 」 ギュウウッ!
「隊長ッ! 自分は行きますッ!」 ザッ
「「「 自分もッ! 自分もですッ! 」」」 ザザッ!
「お前ら…」
「もうあいつは勇者でもなんでもないですよ! 隊長ッ!」 ググッ!
「わかった、俺も行くッ! 全員でかかるぞッ!」 ザッ ビシュウウウッ! ブオン!
「「「「 おおおーーッ! 」」」」 ババッ! ビシュシュウウウッ! ブオンブオンッ!
「あ〜あ、やっぱり僕の言う事を聞いてくれないか、残念だねえ」 フリフリ ニヤアッ!
「「「「「 うおおおおーーッ! 」」」」」 ババババッ! ダダッ!
「あはははッ! やっぱ君たちはバカばっかだよ」 シュンッ! シュバアッ!
「「「 ぎゃあああッ! わあああッ! 」」」 バタバタ ブシャアアーッ!
「ああっははははッ! ほらほらッ! そんなんじゃまた死んじゃうよッ!」 ビュンビュンッ! シュザアアアアーーッ!
「「「 うわああッ! クソッ! ああああッ! 」」」 ザシャッ! ドシャアアッ! バタバタ
勇者ヒカルに対し、ライトニングセイバーで立ち向かって行った多数のブレードライナー達は次々と斬り倒されていった。
「ヒ、ヒカル殿ッ! お待ちくださいッ!」 バッ
「うん? 何かな【宇喜田】さん、勇者の僕がやる事に何か文句でもあるのかなあ?」 ニイイッ ビュンッ!
その場に、勇者に同行していた宇喜田少将は、勇者ヒカルのあまりにもの蛮行に声をかけた。
「あ… いえ、ただ…」 うう…
「う〜ん? ただあ?」 ズイッ
「これ以上、ブレードナイト操縦者のライナーを減らされては、こちらの戦力に影響が…」
「あははは、だってしょうがないじゃないか、コイツらが僕のいう事を聞かないのがいけないんだ、協力を拒むんだよ? だったらそんな奴ら… いらないよねええ?…」 ニヤア ヒュンヒュンッ! ビュンッ! ビュシュウウッ! ズバアアアッ!
「うがあああッ!」 ザンッ! ドサッ! バタン ササササアアア…
「うッ! で、ですがッ!」 ビクッ! ババッ
「うん? ああ、大丈夫大丈夫、あの大型のロボットの事でしょ?」 サッ
「ロ、ロボット? いやアレは機動兵器ブレードナイトと言うもので…」
「ん〜 どっちでもいいや、そのブレード… ナイトかは僕がちゃんと動かせるようにするから心配はいらないよ」 二!
「しかし、操縦者のライナーがいなくなっては、ブレードナイトは動きませんぞ!」
「大丈夫だって言ったのに、聞こえないのかなあ? 【宇喜多秀家】少将さん?」 ジロッ!
「うッ」 ザリ…
「僕はね、神様に言われてわざわざ君たち反乱軍に協力してるんだよ。 わかるかなその意味が? 神様からだよ神様から、つまり僕は神様の代行者であり神様によって選ばれた特別な勇者なんだよ? その勇者である僕の言う事が聞けないのかな?」 ジイイ… チャキ!
「い、いいえッ! 決してそのような事は…」 ググ…
「じゃあ黙って見てなよ。 僕の言う事を聞き、僕に服従するヤツはそのまま、そうじゃないヤツ全員消えてもらい、残った機動兵器は僕の能力で無人自動兵器として働いてもらうんだ」 ビュン! チャキ!
「うおおおおッ! 勇者あーーッ!」 ブオン! ダダダダッ!
「おっと、君で最後だったね 隊長さん」 ニイ ビュンッ! ズシャアアアーーッ!
「があああッ! お、おの…れ…」 ボタボタボタッ! ドシャッ! バタン サササアアア…
「はああ、終わった終わった、ここのライナー達はこれで全滅だね」 ニヤニヤ
「… ヒ、ヒカル殿、先ほど無人とおっしゃたが、ブレードライナーを必要とするブレードナイトを無人で動かすと言うのは本当ですか?」 バッ!
「うん本当さ、神様からそれが出来る能力を僕はもらったんだ。 そこの機動兵器だろうが艦船だろうが、機械という機械に自分で考え動き、僕の言う事を素直に聞き目的を果たす、自立型思考戦闘機械にね」 ビュンッ! チャキン!
「そんな、それでは人は… 我々兵士は何をッ!」
「うん? ああ、艦隊戦闘や起動兵器による戦闘、運用はすべて機械に任せて、人はただじっと席に座って、目の前の計器を見てればいいだけの存在、いやあ、そもそも人なんかもう要らない存在かもねええ」 ニヤッ!
「そんな… 」
「さあて、この要塞内にはまだまだ僕の言う事を聞かないヤツが格納庫以外にも沢山いるみたいだからねえ、それに、月詠たちも早く片付けてこの要塞が欲しいんだろ? なら僕の邪魔はしないでよ」 ニヤ ザッ!
「ヒカル殿…」
「準備は速くすませないとねえ…」 チャキッ!
ヤマト皇国内で反乱を起こし、皇国国防軍最強要塞のひとつ、硫黄島「父島要塞」を占拠した天帝卑弥呼の義弟、月読命らは、未だ完全には要塞を掌握していなかった。 要塞内にいる14,000人もの皇国軍兵士及び要塞要員を、全て自分たちの味方、支配下には今だにできておらず、現在も自分たちに引き入れる為の懐柔策を取っていた。 しかし、兵士や要塞要員の半数以上がそれを頑なに拒絶し、要塞内の至る所で抵抗していた。
特に、要塞駐留のブレードナイト部隊のブレードライナー240人、要塞守備軍第1、第2連隊3,400人、要塞内維持非戦闘員約2,800人程が、要塞を無断で占拠してきた反乱軍、月詠命たちに抵抗していた。
だがその抵抗も、天帝卑弥呼の義弟である月詠命と明智光秀上級大将らの私兵と配下の反乱兵、そして彼ら側についたヤマト皇国の勇者【ヒカル】によって徐々に数を減らし、月詠命たち反乱軍へと抵抗出来なくなった者から強制的に彼らに下り、最後まで抵抗していた者は粛清抹殺、消去され、ブレードナイト部隊のライナー達240人に関しては数名を残し玉砕、全滅していった。
ー「父島要塞」司令室ー
ピ ピコピコ カチャカチャカチャ ザワザワ ガヤガヤ ピッ ピッ タンタン ピコ!
徐々に反乱軍の手中に収まっていく硫黄島「父島要塞」、その司令室内では、50人程の反乱兵が要塞各所の調整と各種兵器の認証コードの書き換え作業が行われていた。 3段層になっている要塞司令室、その最上段にある要塞司令官席に、今回の反乱の発起人、現天帝卑弥呼の義弟【月読命】と、反乱部隊を率いる【明智光秀】上級大将の2人が立っていた。
「ククク、どうだ光秀! この壮観な眺めはッ! さすがに卑弥呼のヤツでもこの要塞には手が出まいッ!」 バッ!
指令室にある大型情報パネルには、要塞前方に布陣する数々の艦艇とその上空を飛び回るブレードナイト、要塞後方の機雷原に要所要所に配備されている要塞砲や機関砲、重武装の反乱兵などの映像が映し出されていた。
「は、誠にその通りッ! あの織田や家康ら大陸艦隊など、この要塞の前ではただの烏合の衆、あやつらをこの要塞で叩きのめし、天帝位を無駄に振りかざす卑弥呼にそれ相応の罰を与えましょうぞッ!」 ババッ!
「うむ、よくぞ言った! この要塞と味方に引き入れた数々の艦艇、多数のブレードナイトに私に忠実な兵士たち、要塞の兵士どもを合わせその数20000以上、負ける要素がどこにある! 何もないぞ! わあっはははははははッッ!」 バサッ!
「まったくですな、これも月詠様の人徳と言えましょう」 ササッ
「わあっはははは! この私の人徳か、だがそれだけでは無いぞ光秀よ」 二ッ
「と、もうされますと?」
「ふふふ、私には絶対的な後ろ盾があるのだ」 ぐふふふ
「後ろ盾、我ら以外となると… なるほど我が国の大神【日本武尊】様ですな! それは心強い!」 バサッ!
「それだけでは無いぞ光秀よ」 ニヤアッ
「まだ他にも?」
「うむ、お前も知っておろう、我が国の最強勇者ヒカルを?」
「もちろん存じております。 ただあの勇者にはあまり良い噂をききませんが?」
「むッ、勇者ヒカルなどどうでも良いのだ、問題はその勇者ヒカルがこの世界最教の神である創造神様からの御指示で我らの味方になったと言うことだ」 ふん!
「おおおッ! さすがは月詠様、大神日本武尊様だけでなく、最高神の創造神様をも我らの味方になさるとは、いやはや感服いたしましたぞ、」 バサ!
「ふふふ、さらにこの最強の「父島要塞」に多数の大陸艦隊、どうだ? 私は勝てるか?」
「勝てますッ! 勝てますともッ! 2人もの神が我らについたのです。 これはもう神の意志、大義名分、我らが正義! 我らに事を成し遂げよと言う事ですぞッ!」 バサ!
「わっはははははッ! そうだ、その通りだッ! これでもう我らを、この私を止めることなど誰もできんッ! 首を洗って待っていろ卑弥呼よッ!」 ババッ!
ビーーーッ!
『要塞機能、全てを掌握完了、これより当要塞「父島要塞」は月詠様の管理下に譲渡されます』 ポン
「ふむ、よし準備は整った、さあ来るなら来いッ! 信長ッ! 家康ッ! 卑弥呼ッ!」 ババッ!
「「「「「 おおおーーーッ! 」」」」」 ザワザワ ワーワー
硫黄島「父島要塞」司令部内は、月読命の掛け声に呼応し、司令部内の兵が一斉に右手の拳を握り締め高々とあげ、歓喜の声をあげていた。
ーヤマト皇国帝都「トキオ」国防軍総本部内艦艇ドックー
その頃、ヤマト皇国国防軍総本部内にある艦艇ドックに2隻の大型艦艇とその護衛艦数隻が出港の準備をしていた。
ピッピー ピッピー ウィイイイインン ガコオオンンッ!
ポン
『第1整備中隊は資材搬入を開始、整備完了のブレードナイトは順次格納せよ! 繰り返す、第1整備…』 ポン
ガガガガッ! ガコンガコンッ! ビーーッ!
「おらああッ 第1中隊やるぞおッ! 搬入開始ーッ!」 バッ
「「「 了解ッ! 」」」 ババッ! ダダダダッ!
ザッ ザッ ザッ
「へええ… 大きいじゃないか、『フェリテス』よりデカイんじゃないか?」 ザッ ザッ
「アラン当然ですよ、なんと言ってもこの艦はこの国、ヤマト皇国国防軍の正規空母なんですからね、我が軍の戦闘空母『フェリテス』とはその運用方法も違い、搭載機数も倍以上違います。 一緒にしないほうがいいですよ? でも… 確かに大きい、素晴らしい艦ですね」 ザッ ザッ
「もうッ! 2人ともッ! アニスちゃんの事が気にならないのッ⁉︎」 バッ!
「「 わああッ! ジェシカッ! 」」 ババッ!
「どうなのッ!」 ズイッ
「は、ははは、ジェシカ落ち着いて、気にはなってるんだよ! だけど… なあマイロ」 サッ
「ええ、そうですよジェシカ、僕もアニスさんの事は気にはしてますが、あのアニスさんですよ? たぶん大丈夫ですよ!」 ニコ
「マイロ… まあ確かに、アニスちゃん相手に何かできる人なんて存在しないと思うけど…」 う〜ん…
「そ、そうだよ! だからアニスさんは心配ないさ、それより見ろよジェシカ! この艦の大きさをッ! いやああ、感動する大きさだぜ!」 うんうん
「アランに同意ですね、確かに感動ものです」 うん
ワイワイ ワーワー あーだこーだ!
「はああ、まったく… どうしてこうも男の子達は大きい物が好きなのかしら? 興奮しすぎよ、ぜんっぜん理解できないわ」 フリフリ
「うふふ、そうですね」 ニコ
「おいおいスズカ、僕は違うぞ!」 バッ
「あら、サトシだって大きいのが好きじゃない、例えばそれ」 スッ
勇者スズカは勇者サトシの聖剣「クリューサオール」を指差した。
「こ、これは仕方がないじゃないかッ! この聖剣は元々がこの大きさだったんだ! だから大きいのが好きとかそういうのじゃなくて…」 ガシャ
「ふふ、にしては最初、それ見てもの凄く喜んでいたくせに」 くくく…
「スズカッ!」
「「 あははははッ! 」」 キャキャ
国防軍総本部内にある艦艇用ドックに、宮廷内騒動から避難誘導されて来たアトランティア帝国の英雄のアラン、マイロ、ジェシカの3人の中尉と、アニスに鍛えられ、今は聖戦士となっているスカイ小国家連合国のスペルタ国の勇者サトシとスズカの5人が、避難先からそれぞれの国に帰るため、ここに案内されていた。 途中、公安部隊上位隊員の隼と楓の2人とは、宮廷を出たところで別れ、彼らは状況報告の為に公安部隊本部へと帰っていった。
ザッ ザッ ザッ ピタ サッ!
「さて、アニス様の御付きの方々には、こちらの艦艇に乗艦していただき、途中ヨコスカ軍港から出航予定の友軍艦艇、アトランティア帝国所属の強襲巡航艦『ライデン』に、それぞれ帰国のために移乗してもらいます」 サッ
案内役の女性士官がアラン達5人に今より乗艦し、途中で強襲巡航艦「ライデン」に移乗する為の艦艇を示唆した。
「「「「「 これえッ⁉︎ 」」」」」 ザザッ!
女性士官に言われ、5人は驚いた。 それもそのはず女性士官が示唆した艦艇は、先ほどまでアラン達が感動して見ていた艦艇、ヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属の帝都防空艦隊旗艦、正規空母「ソウリュウ」級の姉妹艦、正規空母「ヒリュウ」だったからだった。
「す、凄い! おいマイロッ! 俺たちコレに乗艦できるみたいだぞ!」
「やりましたねアラン! これはしっかりと艦内を堪能しましょうッ!」
「ああッ! やったぜ! 楽しみだぜッ!」 ワクワク
「はああ… 私にはさっぱり分からないわ」 フリフリ
そこへ1人の皇国軍人が、正規空母「ヒリュウ」の艦内から、乗下艦用タラップを使って彼らの前に現れた。
カン カン カン ザッ!
「やあ、君たちがヨコスカ軍港までの同乗者達だな? 私は帝都防空第1大隊隊長の井伊直政中佐だ! おっと、ついさっきに要塞攻略機動第1大隊に変更になったんだったな、まッ よろしくな!」 ニイッ!
アラン達の前に現れたのは、宮廷内でアニスに出合った井伊直弼中将の息子で、今回の出撃で大隊名を帝都防空第1大隊から要塞攻略第1機動大隊へと変更された、大隊長の井伊直政中佐であった。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。 私はアトランティア帝国、大陸艦隊所属、強襲巡航艦『ライデン』搭乗員、ブレードライナーのアラン・フォン・ウィルソン中尉です!」 サッ
「同じく、マイロ・フォン・カルヴァン中尉です」 サッ
「同じく、ジェシカ・フォン・ルーカス中尉です!」 サッ
「スカイ小国家連合国、スペルタ国の勇者サトシです」 ペコ
「同じく勇者スズカです」 ペコ
「ああ、君たちの事は我が主君、お館様より全て聞いている。 ふむ… 全員もの凄い魔力持ちだな、勇者の2人はともかくとして、君たち3人は… ブレードライナーなんだよな?」 ジイイ…
「「「 はいッ! 」」」 バッ
「ブレードナイト、愛機はどうしたんだ? 撃墜、もしくは破壊破棄されたのか?」
「いえ、私たちの愛機は母艦である強襲巡航艦『ライデン』の格納庫に置いて来ています」
「なんだライナーだけがここにいるのか、むうう… (これは使えるな…) よしッ いいだろう、まあまずは『ヒリュウ』に乗艦してくれ、間もなく出港だ! 部屋まで案内する」 サッ
「「「「「 はいッ! 」」」」」
「ではみなさん、無事の帰国を願っていますね」 ニコ フリフリ
案内係の女性士官は、「ヒリュウ」の艦内に入って行くアラン達に手を振って見送っていた。
ビーーッ! ビーーッ! ポン!
『反乱軍討伐第1機動艦隊、出港準備ッ! 港湾作業員は直ちに退避せよッ! 繰り返します。 反乱軍討伐第1機動…』 ポン
「『ヒリュウッ!』出港準備完了ッ!」 バッ!
「よおしッ! 各作業員は退避ーッ! ガントリーロック解除ッ! 各ハッチ閉鎖ッ!」 ババッ!
ウィイイイイインン ガコオオンン ピコ!
「機関始動ーッ! 湾内リアクター接続ッ!」 バッ
「機関始動、『ヒリュウ』フォトンリアクターへ接続、電源供給開始」 ピ ピコ ピコ
ヒュヒュヒュヒヒヒヒイイイイイイーーッ!
正規空母「ヒリュウ」の全てのハッチが閉鎖され、やがてメインフォトン機関が始動し、それに呼応して湾内に係留中の各艦隊護衛艦も出港準備を終え、機関を動かし始めた。
「『ヒリュウ』及び全艦、機関正常に起動中、出港に問題なしッ!」 バッ!
「よしッ! 出港整備員は総員退避ッ!」 サッ
「「「「 はッ! 」」」」 ザッ ダダダダダッ
国防軍総本部内に停泊中だった反乱軍討伐第1機動艦隊の出航準備が終了した。
ーヤマト皇国 天帝居住区内地下極秘通路ー
カツン カツン カツン テクテクテク
「ねえ信長さん、ずいぶん長い通路だね? どこに続いてるの?」 テクテク
「うむ、アニスよ、今はまだ言えぬ、すまぬが黙ってついて来てくれ」 カツン カツン
「ん、わかりました」 コクン テクテク
時は少し戻り、反乱軍及び反乱軍討伐艦隊のそれぞれが、諸々の準備が完了しつつある頃、天帝居住区の地下極秘通路をアニスと国防軍総司令官の織田信長元帥が、とある場所へと向かって歩いていた。 通路内は比較的広く、何処までも続く通路内は等間隔の照明器具で明るく照らされていた。
カツン カツン カツン テクテクテク…
カツン カツン カツン テクテクテク…
「ん~… (もう、30分は歩いてるけど、ほんと何もない通路だね、まだ着かないのかな?)」 テクテク…
「ふふふ、なんだ、もう疲れたのかアニスよ」 ニヤ カツン カツン…
「ん〜ん、疲れてはいないよ、ただ長~い通路だなっと思ってね…」 ニコ テクテク…
「で、あるか… ふむ、もう少しだ」 カツン カツン…
それから更に30分、やっとこの地下極秘通路の終点、頑丈な扉の前に2人は着いた。
「ここだ!」 ザッ
「ん、やっと着いたんだ」
「では、参るぞ!」 ピ ピピ ピコ
ガコオオン プシューッ! ゴゴゴ
織田信長元帥が頑丈な扉の脇にある12あるポタンの暗証番号を押すと、頑丈な扉はゆっくりと開き、2人はその扉から外へと出ていった。 そこは巨木が立ち並ぶ深い森の中だった。
カツン カツン ザッ ザッ テクテク
「へええ、大きな木がいっぱいだねえ」 キョロキョロ テクテク
「うむ、ここは霊山『フジ』と帝都『トキオ』を直線で結んだライン上にある森でな、霊山『フジ』から地下を通じて流れ出る膨大な魔素の溜まり場なのだ。 そのせいか樹木が大きく育ってな、いわゆるパワースポット的存在の森になっておる」 ザッ ザッ ザッ
「パワースポット? ん〜… なるほどねえ、確かにここの下にはもの凄い量の魔素が溜まってるみたいだね… 」テクテク
「で、ある」 二ッ ザッ ザッ ザッ
「信長さんはここによく来るの?」 テクテク
「むうう、半年ぶりくらいだな、用でもなければこんなところには来ぬ!」 ザッ ザッ ザッ
「ん、じゃあ今回は…」 テクテク
「この先に用ができた。 アニスよ、お前の助けが欲しいのだ」 ザッ ザッ ザッ
「ん? 私の助け?」 テクテク
「そうだ、 むッ!」 ザッ ザッ ピタッ!
「ん?」 テクテク ピタ!
話しながら森の中を歩いていた2人だったが、その時、織田信長元帥が何かに気づき急に立ち止まった。
ガサガサガサッ ババッ! ザッ トン ファサ!
「お待ちしておりました御館様! アニス様!」 サッ!
「なんだ、赤影さんじゃないか」
森の脇から現れたのは、漆黒の衣装を上下に纏い、首元に真っ赤なマフラーを靡かせた織田信長元帥直轄の配下、特殊公安豚隊長の赤影だった。
「で、あるか… 赤影、首尾の方はどうなっておる?」
「はッ すでに修理技術作業員が総出で出港準備を行なっている最中です」 サッ
「ふむ、で、あるか… 後どれほどかかる?」
「はッ メインシステムが起動すればすぐにでも」 サッ
「やはり難しいのか?」
「はッ 恐れながら、システムの起動にはアニス様に来ていただく必要があり、アニス様の到着をもって準備は完了するものかと存じます」 サッ
「ん? ねえ信長さん、私に手助けが欲しいってコレのこと?」
「で、ある 実はこの先の大型艦艇用極秘ドックに、わが国の最新鋭… いや、わが国の秘匿艦艇であり、この世界のグラウンドシップの基礎の基礎、全ての艦船の元になった太古の遺跡戦闘艦、ファウンデーションウェポンが収まっておるのだ」 バサッ!
「ファウンデーションウェポン? なんだそれ? 聞いたことないね」 う〜ん
「むうう、アニスには見てもらった方が早いであろうな」
「でもなんで私なんだ? 大昔の艦艇なんでしょ? そんなの知らないよ?」
「ふむ、それはだ、昨日よりその秘匿艦艇を動かすために修理技術作業班をさしむけ、出港前点検作業をしていたのだが、メインシステムらしき物がアニスよ、お前の名を表示したまま全く動かないのだ」
「大昔の艦艇が私の名前をねえ… 」 はて?
「反乱軍討伐が迫っておる、奴等は難攻不落の要塞を手に歯向かっておるのでな、それに対抗するためにも動かしたいのだが、全く動かん! リアクターもジェネレーターも、通信機器さえ何一つ動かない、作動しないのだ! ただどの表示モニターも『アニス アニス』と表示するのでな、それでお前に来てもらったのだ!」
「なんだそれ? そんなんで対抗できるの?」
「うむ、以前調査に入った時、とある兵器を搭載しておるのが分かったのだ」
「とある兵器かあ… それ、難攻不落の要塞に効果あるの?」
「で、あるッ!」 ズイッ!
「わッ 言い切ったよ、そんなに凄いのかああ…」
「御館様、あまり時間がないかと…」
「で、あるな、アニスよ、そういう事なのでその艦艇に来て、動かないそのシステムに会ってもらう。 よいなッ!」 バサッ!
「ええ〜… それ、会う必要あるのかなあ?」
「で、あるッ! つべこべ言わずついてこいッ!」 グイッ! バサッ! ザッ ザッ ザッ
「わあああッ!」 じたばた ばたばた!
織田信長元帥は、アニスをいきなり小脇に抱え、早足で目的の艦艇がある極秘ドックへと向かっていった。 そしてさらに10分ほど進んだ所に、緑色の転移魔法陣が形成されていた。
「わ、わわ、あれ? あれは、転移魔法陣ッ!」 じたじた ばたばた!
「ふ、さすがだなアニスよ、見ただけでわかるか…」 ニヤ ザッ ザッ ババッ!
織田信長元帥は、その緑色の転移魔法陣に躊躇なく進み、中に入っていった。
シュバッ! パアアアアンンッ! シュバババアアアーーッ!
魔法陣に入った瞬間、アニスと織田信長元帥、それと特殊公安部部隊長の赤影の3人が消えていった。
ー転移先 極秘ドックー
シュウウウウッ! パアアアンンッ! シュバッ!
一瞬後、3人は転移先に現れた。
ガガガガ カンカン ウィイイイン カシュンッ! ピー ピー
「エーテル注入終了ッ! ベント閉鎖ーッ!」 ゴオオン!
ガンガンガンッ! キンッ!
「くっそおッ! なんで動かねんだよッ!」 ガンガン!
ピッピー ピッピー!
「オーライ オーライ ストーップ!」 ガコオオン! プシュウウーー
「班長ッ! 弾薬は全て搬入完了ですッ!」 ザッ
「よおしッ! あとは機関部とシステムだッ! 応援に行けッ!」 ババッ
「「「「 了解ッ! 」」」」 バババッ! ダダダダッ!
転移完了したアニス達の目の前には、多数の修理技術作業員が動き回り、眼前にある山のような巨大な艦艇の整備をしていた。
テクテクテク ザッ
「わああああ…… 大きいい… ん?……」 ジイイ…
「ふふふふ… どうだアニス! この大きさ、このわしも初めて見たときは驚いたものだッ! これがわが国の極秘最強艦、超重巡航艦『ヤマト』だッ!」 バサバサッ!
「…… 『ヤマト』ねえ……」 ジイイ…
テクテク サッ スリスリ…
アニスは超重巡航艦「ヤマト」の側までくると、そっと右手を伸ばし、優しく「ヤマト」の艦底部を撫でて呟いた。
「『ヤマト』大変だったね、ここまで来るのに随分かかったよね… 偉いね君は… ちゃんと目的を果たせたんだ…」 スリスリ…
「アニス… いったい何を… うッ!」 サッ
ドオオオオンンッ! ビリビリビリッ! グラグラグラ ガタガタガタ ゴゴゴゴゴッ!
アニスの呟きに織田信長元帥が問いただそうとした時、いきなり極秘ドック全体が激しい振動に見舞われた。そして…
ビーー ビーー ビーー ヒュインッ! ヴヴヴヴヴウウウウウーーーッ! ヒイイイイインンッ
シュゴオオオオオオオオーーーッ! ブウウウン ブウウウン
「うぬッ! こ、これはッ!」 バサッ!
「う、動いたッ! 動いたぞおッ! 『ヤマト』メインフォトン機関始動ッ! エーテルリアクター接続開始ッ! ジェネレータ出力最大!」 ピ ピ ビコビコ ポン!
ゴオオオオオーーーー ピピ ピピ ピコピコ ピ ピ
「各部、電力の供給を開始、管内制御システムオンライン! 武器管制制御システムオンライン! 各種センサー正常に作動開始! 生命維持制御システム正常! 機関部制御システム正常に作動中! 『ヤマト』出航準備完了」 ピコ
ゴウン ゴウン ゴウン ゴウン…
「で、ある…か… (アニスか… 触れただけで『ヤマト』を目覚めさせるとは… いったいあの者は何者だ?)」 むうう…
超重巡航艦「ヤマト」は、全ての機能が動き出し、まるでアニスと会えたことに喜んでいるかのようだった。 すると、アニスを迎えるかのように、乗艦用ハッチが自動で開いた。
ウィイイインン カシュン ピッ ビコ! シュウウウ…
「ん、そうだね、じゃあ入るよ」 ファサ テクテク
「アニスッ!」 バサッ
「ん、信長さん、ちょっとこの艦が私に話があるんだって、だから行ってきます」 ニコ
テクテクテク
「なッ⁉︎ ま、待てッ! アニスッ!」 バッ バサッ!
テクテク ピコッ! プシュウウウーー ガコオオンッ! ピ!
「アニスーーッ!」 バサバサッ!
織田信長元帥の声も虚しく、アニスが超重巡航艦「ヤマト」の艦内に入ると、乗艦用ハッチは固く閉ざされてしまった。
ダダダダダッ! ガンガンガン! ドンッ!
「くそおがあッ! 開けろおッ! 開けるんだあッ!『ヤマトオオオッ!』」 ドン! ゴオオンッ!
織田信長元帥が慌てて乗艦用ハッチに駆け寄り、力の限り打ちつけ叫んだが、超重巡航艦「ヤマト」の乗艦用ハッチは開く事はなく、織田信長元帥の叫び声だけが、極秘ドック内に響いていた。
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