第284話 アニスと国防軍軍議
-ヤマト皇国皇居宮廷内天帝居住区 応接室ー
皇居宮廷内の謁見の間で井伊直政中佐との出来事の後、謁見の間から天帝の居住区に通じる隠し通路をアニスは1人で歩き、やがて目的の部屋へと辿り着いた所だった。
テクテクテク トン ギイイッ!
「だだいまあ!」 テクテク
「お帰りなさいませアニス様ッ!」 フワッ トン
アニスが隠し通路から天帝居住区の応接室へと入ると、この偽世界「アーク」の最高神、女神のダイアナが何もない空間から現れ、アニスの前に舞い降りた。
「ん、ちょっと遅れちゃった」 えへへ
「え? アニス様が遅れたのですか? 例の物、見つかりにくかったんですか?」
「あはは… 探し物は意外と早く見つけたんだけどねえ…」
「アニス様! 謁見の間で何かあったんですかッ!」 ズイッ!
「わあッ! ダ、ダイアナッ! 近い近いッ!」 バッ!
「アニス様ッ!」
「そ、そのね、えっと… 」 ボソ…
アニスは、謁見の間で起きたことを女神ダイアナに小声で話した。
「ええーーッ! 求婚されたあッ⁉︎ しかも出会ってすぐにですかッ⁉︎」 バッ!
「う、うん」 コクン
「誰ッ! 誰ですかッ⁉︎ アニス様に対してなんと恐れ多いッ!」 ググッ!
「ええっとねえ、直弼の息子だよ、名前はたしか… 井伊直政!」
「井伊直政? ああ、あの勇猛果敢な好青年ですか… 」 むう…
「ん?(確かに勇猛果敢だけど… 直政、好青年って言われてるんだ…)」 へえ〜
「そ、それでアニス様ッ! その求婚を受けたんですかッ⁉︎」 ズイッ!
「わッ! 受けてない受けてないッ!」 ブンブン!
「ふうう… まったく、アニス様は無防備すぎますッ!」
「え? ちゃんと防御はできてるはずだよ? 一度だって攻撃され傷を負った事なんてないんだけどなあ」 ササッ!
「そっちじゃありませんッ!」 ガアッ!
「わああッ! ち、違うの?」 ビクッ
「はああ… いいですかアニス様、アニス様はあの創造神ジオスを除いてこの偽世界『アーク』では最強の存在なのです。 ですがそれ以前に見た目は清楚で可憐な少女なんですよ? それもこの偽世界『アーク』では絶世の美少女的存在に値しますッ! もっと周りに気をつけて行動してくださいッ!」 サッ
「ええ〜… 気をつけてって言われてもねえ、このアニスの身体は【エレンディア】と他の女神たち、6大女神が私のためと言って勝手に作ったんだ、容姿や身体は私のせいじゃないよ? それに行動に関してはあの創造神ジオスに対処するだけで、特に気にせず動いてたんだけどなあ」 ポリポリ
「それでもですッ! 女の子としてもっと… は? 6大女神様ッ⁉︎ なるほどどうりで… その羨ましい美貌に完璧で見事なまでのきめ細かな身体、納得しましたわ」 フリフリ
「あはは… 私もね、この偽世界『アーク』に転移降臨するまで知らなかったんだ。 まさか女の子の身体で転移降臨させられるとは思わなかったよ…」 ははは…
「え? そうなんですか? 私はてっきりアニス様がその身体を所望したものと思っていましたのに… 不便でした?」
「いや、たいして不便は感じないかな、ただできれば男性の身体にして欲しかったよ」 ふ…
「あら、私は今のアニス様の方が可愛らしくてしっくり来ますけど… どうですか?」
「うん、今はね… 私もそれは否定しないさ、気に入ってる。 しかもこの身体はね、エレンディアたち、6大女神たちが私の力をこの偽世界に合わせてくれたんだ、私の本来の能力と力を極限まで下げに下げてね… そう、この偽世界『アーク』を私の能力と力で消滅しないように…」 スリスリ…
「アニス様… そう言えば、たしかアニス様にはレオンさんと言う殿方を好いていたと思うのですが… 婚約してませんよね? それともまさか… 既にしたなんて言いませんよねッ!」 ジイイッ!
「ふあ! レ、レレ、レオンとだってまだだよッ! その… こ、婚約なんてしてないし、告白だって… されてもないし…」 モジモジ…
「アニス様? ん〜、アニス様って、レオンさんの事となると人格が変わりますね? なぜです?」
「え? そ、そうかな? おかしいな」 あはは… カアア… アセアセ
「ああーもうッ! アニス様って意外なところで恥じらう乙女になるんですねッ!」
「え? 私が恥じらう乙女?(はッ そうだ、なぜなんだ? 私はいつから…… あッ、)」 ジイイイ…
アニスは女神ダイアナに言われ、自分の両手を見ながら、はるか昔に6大女神の1人、アニスの身体を作成し、この偽世界「アーク」に転移降臨を手助けしたエレンディアの言葉を思い出した。
『…言葉使いと仕草、表情はこちらで女の子らしく自動補正をかけておきます……』
「ああ…(そうだった。 アニスのこの時々少女だったり、少女らしくなかったりするのはそれのせいか… この偽世界の人々、マシューやレオンを好きになる事も、女神によるこの娘の女の子らしい自動補正が関係してたんだ…)」
アニスは、これまでの自分のある特定の人物に対して好意を持つ感情に納得し、眺めていた両手を強く握った。
「ん、まあいっか」 ギュッ! ニコ
「アニス様?」
「ん? ああ、何でもない何でもいないよ、ダイアナ」 ニコニコ フリフリ
「なら良いんですけど、そう言えば例の物は…」
「ん、ここにあるよ」 サッ
そう言うと、アニスは謁見の間で見つけた物を女神ダイアナに見せた。それは何の変哲もない、手の平サイズのどこにでもある、翡翠色の丸い河原の石の様だった。
「これですか、召喚石… もう使用済みで魔力もカラッカラで残ってませんね。 どうしてこんな物が謁見の間に…」 ツンツン
「月詠命が持ってたんだ。 あの時、卑弥呼と私を抹殺しようとして使用し、神獣のヘビくんとカグアを召喚したんだ。 その後、襲撃があって、謁見の間から逃げる時にこの召喚石の価値も知らず、不要になったから捨てたんじゃないかな?」
「月詠命? そう言えば、いましたねそのような輩が… 確かに、あの男に神獣を召喚する事など、できようはずがないですわ。 たいした魔力も無く召喚術なんて使えなかったはず… なるほど、それでこの召喚石を… 何処でこの様な物を手に入れたのでしょうか? そう易々と手に入る代物ではないんですけど…」
「ん、たぶんこの国の神、日本武尊から… いや、創造神ジオスからだろうね。 ジオスから日本武尊へ、そして月詠命にわたり、それを使用させた。 アイツのシナリオどうりに… だがそれも筋書きが変わり失敗したってところかな」 うんうん
「ふふ、まあアニス様を相手に、創造神ジオスのシナリオなんて、そう筋書きどうりに事が運ぶ事などありませんのに… あの者も、どうしてそれが理解できないんでしょ。不思議ですわ」 フリフリ
「理解してもしたくないんだ、彼の… 創造神のとしての意地… いや神だから私を認めたくないんだ。 自分が絶対と自負してるからね」
「ふう… それでアニス様、この召喚石はどうなされるんですか?」
「ん、このままだとまた何時か、魔力を蓄えて誰かが何かを召喚してしまう… それこそ創造神ジオスだってね。 それを防ぐためにあの瓦礫だらけになった謁見の間の中からこの召喚石を見つけて持って来たんだ。 二度と使用できないようにするためにね…」 サッ!
パキイイインンッッ! パラパラパラ……
アニスは召喚石に手をかざすと、召喚石は一瞬にして破壊され、粉々になり消えていった。
「お見事ですアニス様」 サッ
「ん、これでよしっと、後は瞑想の間の方はどう?」 ファサ…
「はい、日本武尊のことですね、問題はありません。 今しばらくお待ちを、まだ少し時間がかかりますわ」 ニコ
「ん、それじゃあ後は任せるよ、私は卑弥呼に会いにいってくるね」 ファサッ! テクテク
「はい、お任せくださいませアニス様、それと…」
「ん?」 ピタ クルッ!
「男には要注意ですよッ! いいですねッ!」 ビシッ!
「ヒャッ! う、うん… じゃあね」 ビクッ! コクン テクテクテク
ダイアナに注意喚起されつつ、アニスは卑弥呼がいる場所へと向かっていった、
ーヤマト皇国帝都「トキオ」中央、国防軍総本部-
ザワザワ ガヤガヤガヤ ピ ピピ カタカタカタ ジジ ピコピコ
「そっちの資料を見せろ!」 ザワザワ
「彼我の戦力比データーをだせ! 違うッ! それじゃないッ! 艦隊戦力比だ!」 バタバタ
ワーワー ドタバタ ガヤガヤ
「兵站責任者ッ! 補給計画案が雑だぞ! もっと細かくだせ!」 ガヤガヤ
「はいッ!」 カチャカチャカチャ ピピ ピコ
ヤマト皇国国防軍総本部、その地下にある大会議室には、主だった上級高官や将校、各艦隊や部隊の司令、隊長格の軍人が、国防軍総司令官である織田信長元帥のもとに集結し、軍事会議を前に、会議に使用する膨大な資料を大会議室横の情報処理室で様々なデーター処理に多数のオペレーター兵が作業に追われていた。
ピッ プシューー ドカドカ ザッ ザッ ザッ!
「おうおう! 随分と騒がしいじゃねえか、南の連中でも攻めてきたのか?」 ドカドカッ! バサッ
「忠勝、違いますよ! 聞いてないのですか? 籠城ですよ籠城ッ! 天帝様の義弟である月詠様と光秀が結託して反乱を起こし、要塞に立てこもってるんですよ」 ザッ ザッ ザッ バサッ
「うん? 何じゃそりゃ? わしは聞いておらんぞッ!」 ドカドカ!
「まったく、この人は…」
「無駄だ無駄だ康政! 忠勝は昨日一日中酒をかっくらって寝てたんだ、何も知らねえのさ」 ザッ ザッ ヒラヒラ
「忠次… はああ、まったく、忠勝はいくら非番だったとは言え仕方がない人ですねえ」 フリフリ ザッ ザッ
「がはははははッ!」 ドカドカ バサッ!
賑やかに大会議室に入って来たのは、徳川家康上級大将の直属の配下、【本多忠勝】中将、【榊原康政】中将、そして【酒井忠次】中将の3人だった。
「うん? そう言えば直弼のやつの姿が見えんな」 キョロキョロ
「直弼なら自分の座乗艦、『ミョウコウ』の様子を見てから来ると言っておったぞ」
「『ミョウコウ』? なんだどこか壊れたのか?」
「はああ、あなたという人は、『ミョウコウ』の姉妹艦、『ナチ』が湾内で砲撃しながら逃走したんですよ、その時係留中だった『ミョウコウ』『アシガラ』『ハグロ』の3艦にも被弾し、被害を受けたので、その状況を見てからこちらに来るそうですよ!」 サッ
「なにッ! わしの『アシガラ』に砲撃したのかッ!」 バサッ!
「『アシガラ』だけじゃないですよ、『ミョウコウ』『ハグロ』2艦ほか、近くに係留中だった主だった艦艇は軒並みやられました」 フリフリ
「はあッ⁉︎ 吉継のヤツは何やっとんじゃあッ!」 バサッ!
「忠勝、落ち着け、吉継のヤツはもういない!」 ガッ!
「むッ! それはどういう事だ、忠次ッ!」 ザッ
本多忠勝中将に問われ、酒井忠次中将は、周りの者に聞こえぬよう、小声で話した。
「(忠勝、これは極秘情報だ)」 ヒソヒソ
「むう」 コク
「(重巡航艦『ナチ』の艦長であり第四戦隊司令官の【大谷吉継】中将は、既にこの世にはいない、『ナチ』の乗組員と共に殺害されたそうだ)」 ヒソヒソ
「なッ⁉︎ だ、誰がッ! 誰が殺ったあーッ⁉︎」 ババッ! バサッ!
「「「「 ッ! 」」」」 ザワッ! バババッ!
シ〜ン… ピ ピ ピピ カタカタカタ ビコビコ
本多忠勝中将はいきなり、将官位を示すマントを靡かせ叫んだ。それを聞いて、周りにいた将官や下士官、情報担当兵士が皆、一斉に中将達を見て静まり返り、情報処理装置の音だけがやけに大きく聞こえていた。
「わわッ! この馬鹿ッ! 声がでかいッ!」 バサッ! ガシッ!
「むぐぐッ! ふ、ふまんッ!」 サッ!
2人の中将に口と体を抑えられ、くぐもった声で本多忠勝中将は2人に謝罪した。
「ああ、皆驚かせてすまない、中将はちょっと昨日の酒が残って二日酔いで叫んだだけだ、気にせず作業をしてくれ!」 ササ
ザワザワ ガヤガヤ ピ ピピピ タンタン カチャカチャカチャ ワイワイ
酒井忠次中将が機転を効かし説明をすると、大会議室の中は元の喧騒に戻って行った。
「ふうう、まったく、気をつけろ!」
「すまん、それで誰が吉継ら『ナチ』の乗組員を殺ったのだ? まさか、月詠の奴か?」
「違うでしょうね、月詠様にそんな度胸と裁量があると思います?」
「むうう、無いな! では光秀の奴… いやあ、アイツは頭腦畑の官僚将軍だ、吉継があんな奴にやられるわけがないか…」 ふむ…
「ええ、誰が殺ったかは既に判明してるとの噂がありますが真意の程は… ただ、御館様と我らが主人、家康様の2人は知っているようです」
「では御ニ方から聞くとするか、それと此度の軍議、これは大事になりそうだな」 バサッ! ドカドカ!
「「 うむッ! 」」 コク バササッ! ザッ ザッ!
3人の中将は自分達の席へと歩いていった。 そして、軍事会議が始まった。それは大会議室の正面超大型モニターに、硫黄島「父島要塞」の映像が映ったことからであった。
ブウウウン ジジジ パッ!
「「「「「「「 おおおおー… 」」」」」」」」 ザワッ!
大型モニターに映る「父島要塞」の姿にどよめく中、大会議室正面の議長席にヤマト皇国国防軍総司令官の【織田信長】元帥が元帥位のマントに錫杖を持って現れた。
カツカツカツ ザッ バサッ!
「諸君、ヤマト皇国始まって以来の緊急事態である。 我が領土の南を守護する難攻不落の要塞、硫黄島「父島要塞」が月詠、光秀ら両名による反乱軍に占拠された」
ザワザワッ! ドヨドヨッ!
「騒がしいッ!」 バサッ!
ザワッ シ〜ン
「で、あるか…」 ニヤ ふふふ
将官に上級士官、各大隊長以上の下士官に大会議室に詰める兵士、皆が口を閉ざし、総司令官の織田信長元帥に注目していた。
「なんだ、わしが敬語を使うのはあくまでも天帝様御一人のみッ! その天帝様に弓引くが如く所業をした者に敬意など払う道理がないわッ! 奴らは逆賊、反乱軍いや賊軍と思えッ!」 バサッ! ドンッ!
「「「「「「「「 御意ッ! 」」」」」」」」 ザザッ! バッ!
「ふむ、では軍議を始める。 敵は反乱せし賊軍! 硫黄島『父島要塞』を拠点に各所に艦艇を配置しておる。此度はこれの対処と要塞攻略の部隊編成及びその攻略作戦を立てる会議である。 よいな!奴らを誰一人として生かして返すなッ!」 バサッ!
「「「「「「「「 ははッ! 」」」」」」」」 ババッ!
「うむ、勝家ッ!」 ザッ!
「はッ! では作戦参謀として、この【柴田勝家】が会議を進行する」 ザッ!
織田信長元帥に代わり、作戦総参謀長の柴田勝家中将が、大会議室正面の超大萱モニターを使って会議を進行していった。 参謀長の柴田勝家中将の指示に従って、超大型モニターには、誰もがわかりやすい様に布陣、配置図や図形、戦力情報、行動予測図が表示されていった。
「まず、敵の主力は硫黄島『父島要塞』を中心に布陣、その編成は重巡航艦『ナチ』を中心に戦闘艦艇18隻、兵員は要塞要員が合わさり約26000名ほどと推定、要塞背後には浮遊機雷源、約1万発の対艦、対ブレードナイト用の自動追尾型機雷が散布されており、要塞背後からの攻略はほぼ不可能と見て欲しい!」 ピッ!
ザワ!
「機雷原か… 」
「むう、正面対決のみだ、要塞相手にそれは手厳しいな」 むうう…
「確かにな、艦隊はともかく、要塞主砲が脅威だ、アレに狙われたら、駆逐艦なんか一瞬で轟沈だぞ」
「まったく厄介な、敵対して初めてこの要塞の脅威度が知れたわい、さてどうする?」
「総参謀長、こちらの戦力はどの程度動かせるのだ?」 サッ
「うむ、先の艦艇システム障害や、乗員の洗い出し、寝返った謀反艦、そして謀反艦からなる攻撃の被弾で、戦力として動かせるのは、重巡航艦が『ミョウコウ』を始め3隻、正規空母が2隻、重巡、軽巡、駆逐艦、支援艦艇全てを合わせて、稼働可能な動かせる艦艇は国防軍全艦艇の3分の1、32隻だッ!」
ザワザワ ガヤガヤ
「たった32隻だと?」 ザワザワ
「無茶だッ! 艦隊戦ならともかく、あの難攻不落の『父島要塞』だぞ! 数が足りん!」 ダン!
大会議室内ざわつく中、大会議場の一角にある佐官席にいた【井伊直政】中佐が同じく中佐の階級を持つ同僚の【鳥居忠元】中佐と話していた。
ザワザワ ガヤガヤ ワイワイ
ー大会議室 大隊長以上佐官席ー
「聞いたか忠元、要塞相手に32隻だとよ、 へッ! 無茶を通り越してこりゃ無謀だぜ、こりゃ死にに行く様なもんだなッ!」 ササ!
「そうだな、艦隊数ではこちらが勝っても、奴らには難攻不落の要塞があるからなあ…」
「それだけじゃねえ、要塞には駐留軍のブレードナイト、1個連隊がいるはずだ、アレとやり合う事になると…」 う〜ん…
「彼らも一騎当千、数で不利のこちら側が負けるでしょうね」 ササ!
「なあ忠元、俺たちの戦隊で制空圏だけでも奪えないか?」
「ん〜、ブレードナイト2個大隊、たった180機でか? 無理じゃないか直政、やはり最低でももう1個大隊あれば何とかってとこだろうが…」
「そうだな、3個大隊、240機か… つまり1個連隊か、確かにそうだがライナーや機体、そもそも、もう1個大隊を賄う空母その物がないぞ、こりゃ無理かあ」 ポリポリ
「ああ、まあ艦隊上空の制空と護衛が精一杯ってところだろ、要塞攻略にまで手が回らん!」
「くそう、あの中に… 要塞内に千代姉を殺った奴がいるんだ! 俺にもっと力が… 連隊以上の兵力が、あるいは他の機動部隊でも使えりゃあんな要塞…」 ググッ
「無駄だぜ、俺たち以外の機動部隊、全部隊で艦艇や機体がシステムエラーで稼働できないらしい、ブレードナイトなんざ自分の搭乗者、主であるライナーさえ認識せずフリーズしちまってるって話だぜ」 ヒラヒラ
「むうう、空母以外、稼働可能な30隻の各艦艇の搭載機を全部合わせても空母一隻にも満たない、とにかく機動戦力が全く足りないんだ、上層部はどうする気なんだろうな」
「そうだな…」 むうう…
ザワザワ ガヤガヤ
ざわついている大会議場の中、2人の機動部隊大隊長は議事席の近くで座っている上層部たちの方を見ていた。
「総司令官殿ッ! 要塞攻略にしてはあまりにも戦力不足、それを踏まえての今回の出兵案、何か有効な作があるのか教えて頂きたい!」 ザッ
ザワッ! シ〜ン
大会議室に集まった誰もが欲していた事を、会場内の誰かが大声で質問をした。
「うむ、で、あるか… 総参謀長、勝家ッ! 説明をッ!」 ギラ
「はッ 御館様! 総司令官に代わり私が説明しよう」 バッ
大会議室にいる全員が、議長席にいる総参謀長、柴田勝家中将に耳を傾けた。
「確かに、現状の我が戦力では要塞攻略戦など無謀といえよう。 だが、それは奴ら、要塞を占拠している逆賊の反乱軍、賊軍どもがまともな戦闘集団だった場合である!」 ババッ!
ザワッ!
ー大会議室 大隊長以上佐官席ー
「まともな戦闘集団だと? むうう…」
「なあ直政、もしかしたら要塞の奴ら、反乱軍も一枚岩ではないんじゃないのか?」
「うむ、あり得ない話じゃないな… 要塞内の兵も、その全てが反乱に加担していないんだろ、ただ単に上官、いや月詠や明智ら賊軍の命令でやむなく反乱に加担しているに過ぎない、命令系統が万全では無いと言う事じゃないのか?」
「なるほど… 額面どうりの戦力では無いという事か…」
「ああ、おそらくな」
ガヤガヤ
「説明を続ける! 既に、『父島要塞』には我が方の強行偵察巡航艦『チクマ』が密かに偵察任務についている。 それからの情報だが、まず反乱艦艇だが、その大部分が自動制御で乗組員は乗艦しておらんッ! 密かに偵察用小型ドローンで艦内を偵察したがどの艦艇も無人、兵員は艦長を始め誰も乗艦していなかった。 全てが無人操縦艦であることが判明した!」
ザワッ!
「無人艦隊か、各艦艇の艦長や乗組員はどこに?」 ガヤガヤ
「無人制御なら乗り込んで取り返すことも可能じゃないのか?」 ザワザワ
「いや、罠かもしれん、それに誰がやる? 反乱艦など沈めてしまう方が手っ取り早いぞ?」
「だが、元は我が軍の艦艇だぞ? それをみすみす沈めてしまうのは…」 ガヤガヤ
「「「「 あーだこーだ、 いやしかし… そうじゃない… 」」」」 ワイワイ ザワザワ
再び各人が意見を述べ合い始めた。そんな中、柴田勝家中将の話は続く…
「強行偵察巡航艦『チクマ』の報告の中に、反乱軍に寝返っていたブレードナイト『ZERO 22型』1機を鹵獲、ライナーを捕虜とし、尋問し情報を得ようとしたがライナーは既に中で死亡していた、操縦席にはライナースーツとヘッドギアのみが残された状態で、ブレードナイトも無人で動いていたと推測される。 つまり奴ら反乱軍には思ったほど兵力がないのだ!」 ググッ!
ザワッ!
ー大会議室 将官席ー
「むう、確かにそうであろう。 元々明智の奴が持つ軍勢は地上部隊のみだったはずだ」
「ああ、そうだな、月詠なんざ私兵が数百人程度のはずだろ? その程度と光秀の戦力でここまでの事は無理がある、他の何者かの手引きがあったのではないのか!」
「うむ、上空を飛び回る機動戦力は全て我が主人、大陸艦隊総司令の家康様が掌握していたはず、光秀にはブレードナイトや艦艇を動かす程の兵力は持っておらんからな!」
「月読様や光秀らが強引に機動戦力を奪った、だが各艦艇の艦長や乗組員、ブレードナイトのライナーは皆協力を拒み自決、もしくは処刑殺害、無人となった艦艇やブレードナイトは何らかの方法を使って無人自動操縦で動いてるってところだろ」
「なるほど、艦艇やブレードナイトを無人で自動操縦か… 厄介だな、いったい奴らはどこでそんな方法を…」
本多忠勝ら3人の中将は、反乱を起こした月読命や明智光秀の反乱部隊による艦艇やブレードナイトの搾取や無人で動かしている事について色々と推測していた。 その間にも総参謀長、柴田勝家中将の話は続いた。
「ただその後、鹵獲したブレードナイト『ZERO 22型』は、『チクマ』の格納庫内で調査中に自爆、『チクマ』に多数の死傷者が出た。 この事を鑑みて、逆賊である反乱軍に渡った全ての艦艇、ブレードナイトは無人操縦艦並びに無人機! そしてそれらは自爆する可能性が高い、従ってその全てを撃沈、および撃墜せよ!」 バ!
「「「「「 おおおーッ! 」」」」」 ババッ!
「だが総参謀長殿! 敵が無人、兵力が足りないのは理解したが根本的に要塞にはどう対処するのですかッ⁉︎ それをお聞きしたいッ!」 ザッ!
ザワッ シ〜ン…
一人の青年下士官が、総参謀長に質問し、再び会場内は静かになった。
「うん? それは…」 ザッ
「待て勝家ッ!」 バサッ! ザッ!
「ッ⁉︎」 ビクッ!
総参謀長の柴田勝家中将が、質問をした青年士官に答えようとしたその時、その答えをその場の最高権力者である総司令官の声が遮った。 その声に柴田勝家中将は口を閉ざし振り向き、青年下士官は一瞬で顔を青くした。
「御館様」 サ…
「貴様… 誰だ? わしの記憶にない顔だが?」 ジイイイ ドンッ!
「ひッ! わ、私は…」 ビクビク
「誰だと申しておるッッ! 聞こえんのかああーーッ!」 ダンッ! ズワアアーーッ!
「ひいいいーーッ! わああああーーッ! ドサッ! ガクガク ブルブル ダダダッ!
ヤマト公国国防軍総司令官、織田信長元帥の怒声と威圧をモロに受けた青年下士官は、恐怖のあまりに腰を抜かして震えながら、大慌てで大会議室の外へと駆け出していった。
「……… 赤影」 ジイイッ…
シュバッ!
「ここに」 サッ
「あ奴を捕らえよ、賊軍の間者だ! 良いか、わしが命令するまで奴を殺すな、徹底的に情報を吐かせよ!」
「御意ッ!」 シュバッ!
その様子をその場にいた全員が、固唾を飲んで静観していた。
「さあ、軍議を再開する! そして『父島要塞』など、この織田信長にかかれば取るに足らぬ小島である! 攻略の策は既にわしにはある! 良いかッ! このわしに遅れをとるでないぞッ!」 バサッ!
「「「「「「「 おおおおーーーッ! おおおおおーーーッ! 」」」」」」」 ババババッ!
大会議場は総司令官、織田信長元帥に対し全員が片手をあげて鼓舞していた。それに応えるようにう織田信長も片手をあげながら大会議場にいる全員に応え、小声で総参謀長の柴田勝家中将に指示を出していた。
ワーワー ガヤガヤ ワーワー
「うむ、であるか…… 勝家」 ボソ
「はッ 御館様」 サッ
「このまま会議を進めよ、仔細は家康と決めた通り、各軍の配置と攻略手順を伝えよ! わしはこれから天帝様の元へと赴く」 ボソ
「はッ 仰せのままに」 ササ!
ワーワー ザワザワ
「諸君! わしは少し席を外す! よいなッ! 月詠と光秀ッ! 賊軍どもを1人として許すなッ!」 バサッ!
「「「「「「 御意ッ! 」」」」」」 ザザッ! バッ!
「では頼んだぞ勝家」 ニイイッ! バサッ カツ カツ ピッ プシュー
「はッ」 サッ
そう言って、ヤマト皇国国防軍総司令官、織田信長元帥は大会議室を出ていった。
ーヤマト皇国国防軍 総本部地下3階 天帝居住区への地下通路ー
カツカツカツ バサバサ
国防軍総本部と天帝居住区とは、総本部の地下3階にある緊急の地下通路で繋がっていた。 元々は軍議で決まったことや緊急事態を天帝に報告する為の通路であった。 今、国防軍総司令官の織田信長元帥が天帝、卑弥呼に謁見するために、地下通路を歩いていた。
「む、ここもしばらく振りだな!」 ザッ! ピ ピピピ ビコ!
プシューー
地下通路の終点に着き、扉を開ける為の暗証番号を押すと、天帝居住区との扉が開いていった。
「さて、天帝様は何処に…むッ!」 ザッ! ピタ! バサッ…
開いた扉から一歩足を踏み出した織田信長元帥の目の前に、1人の少女が通り過ぎようと通りかかり、その少女も織田信長元帥の存在に気づき、その場に立ち止まった。
「ふんふんふん♪ んッ⁉︎」 テクテク ピタ! ファサ…
お互いがその場で身動きせず見つめ合い、しばらくした後2人は同時に声を発した。
「「 お前は誰だッ!(貴方は誰ですか?) 」」 サッ!
アニスと織田信長元帥が初めて出会った瞬間だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。