第280話 ヤマト皇国 皇国内反乱
ー皇居宮廷内、中庭ー
ワーワー キンキン ダダダ シュバ ドオオンンッ!
「くそうッ! これ以上侵入を許すなッ! 天帝様をお守りするのだッ!」 ザッ!
「「「 おおーーッ! 」」」 チャキチャキンッ! ザッ!
「天帝に天誅をッ! 天帝の犬どもを蹴散らせえッ!」 バッ!
「「「 おおーーッ! 」」」 ダダダダッ! チャキン!
ヤマト皇国の帝都「トキオ」、その中央にあるこの国の長、天帝卑弥呼が座す皇居宮廷内は、突然起きた反乱によって、至る所で皇居宮廷護衛の兵と侵入して来た反乱部隊兵とが戦闘を繰り広げていた。 今、その宮廷中庭では、井伊直弼中将と天帝近衛兵が、宇喜多少将が引き入れた反乱部隊兵と激しい戦闘を繰り広げていた。
ワーワー ザワザワ キンキン ドゴオンッ! バッ ババッ!
「ぬううッ!」 バッ!
「はんッ この老耄武官がッ! 死ねええーーッ!」 ダダダッ! ブンッ!
「その首、もらったーーッ!」 ダダダッ! シュン!
「へへへッ! 賞金首賞金首ッ!」 ニヤニヤ ヒュンヒュンッ!
天帝近衛兵と反乱兵とが乱戦状態に陥っていた中、その中央にいた井伊直弼中将に3人の手練れの反乱兵が一度に襲いかかっていった。 中将に襲いかかる3人、元は宇喜田少将配下の遊撃隊で活躍していた兵達で、「銀星」を名のり、三人1組で今回のような乱戦の中で戦果を上げていった者達であった。
シュバッ! ギキイイイインンッ! バババッ! ザザザアアアーーーッ!
「うおッ! このおっさん、弾きやがったぜッ!」 バッ
「くそおッ! 老耄のくせにやるじゃねえか!」 チャキ!
「きひひひひッ!」 ビュンビュン!
3人の反乱兵が同時に井伊直弼中将に斬りかかった瞬間、井伊直弼中将はその攻撃を大太刀を振り、その同時攻撃を易々と跳ね除けた。
「うん? 何だこやつら? 囲まれた時はダメかと思うたが、どうやらわしの見込み違いか… むう、長く艦隊司令などやっておると勘が鈍っていかんなっ!」 バサッ! シュバッ! ブンッ! チャキッ!
井伊直弼中将は、襲いかかって来る3人の反乱兵を見てその瞬間は、1対3の絶体絶命と死を覚悟した。 しかし、その覚悟は最初の一撃目で杞憂に終わる。 乱戦状態の戦場では、いかに勇猛果敢で経験豊富な猛者でも、不意に囲まれればこのような状態と判断に陥る事が多々あった。 井伊直弼中将もその例外にもれず、宮廷内での突然の反乱兵との乱戦と、艦隊司令官としてしばらく戦場に出ていなかった事でこのような状態が起きていた。
「おうお前らッ! もう一度だッ! 次は仕留めるッ!」 ググッ チャキッ!
「「 おうッ! 」」 ザザッ! チャキン!
手練れの3人の反乱兵は横並びで構え、井伊直弼中将に向けて剣を構えた。
「むう… こやつら、相手との力量の差もわからんか、ならば仕方がない!」 ググッ
「「「 くたばれ、おっさんッ!(ヒャッハー) 」」」 シュザッ! ヒュババッ!
「ぬううッ! この小童どもがあッ!」 ビュンッ!
ズバアアアーーッ! ドオオオオオオオオオーーーーーッ!
「「「 うおおおおーーッ! 」」」 シュバッ! ズバアアーーーッ!
3人で一斉に襲いかかった手練れの反乱兵達だったが、井伊直弼中将による渾身の一撃、大太刀の一閃で防御も出来ず吹き飛ばされ、数m後方の地面へとたたきつけられていった。
ドシャアアーーッ! ザザザアアアーーーッ! ダンッ ダダンダダーーッ!
「「「 ううう... 」」」 ヨロ... グググ...
「ふんッ! やはりな、こやつら見掛け倒しであったかッ! たわいもない… おい貴様らッ!」 チャキッ!
「「「 うッ! 」」」 ビクッ!
「このわし、井伊直弼に立ち向かってきたことは褒めてやる。 普段ならば見逃してもよいが、今ここは戦場ッ! 当然、この場で斬られ、討ち死にする覚悟はできておろうなッ⁉︎」 ギンッ! バサッ! バサバサ... チャキンッ! ザッ
井伊直弼中将は、吹き飛ばされ地面に伏していた手練れの反乱兵3人を、将官位を示すマントを靡かせながら鋭い眼光で睨みつけ、中将の持つ大太刀、名刀『九鬼政宗』を構えた。
「ひいッ! い、いいッ、井伊直弼だとおーッ!」 ブルブルブル ガクガクガク
「な、なななッ じょ、冗談だろッ! 何で宮廷に猛将、井伊直弼様がいるんだよッ⁉︎ こ、こんなの聞いてねえよッ!」 ガタガタガタ
「あ、あわわッ! わあああーーッッ!」 ガバ! ザッ! ダダダダダダッ!
「「 あッ! おい待て! お、俺たちを置いていくなッ! 置いていかないでくれえッ! 」」 ガクガク ブルブル ザサッ!
井伊直弼中将の名を聞いた瞬間、3人の手練だった反乱兵は、2人は吹き飛ばされた場所で腰を抜かし震え、1人はあまりにもの恐怖のため、腰を抜かして動けない2人を置いて、叫びながら逃走をはじめた。
「むう、1人は逃げたか…」 ジロッ! ザッ ザッ ピタ バサバサバサ… チャキン!
「「 わ、わわわッ! 」」 ガクガク ヘタヘタ
「宮廷内での武器による刃傷沙汰は御法度ッ! ましてや反乱など天帝様に対しての不敬、大逆罪ッ! 襲撃を企て、反乱に加担した貴様らの大罪をここで償うがいいッ! はあああッ!」 ビュシュバアアアアーーーッ! ザンッ!
「「 ぎゃああああーーッ! 」」 ブシャアアーーッ! バタタッ! バタン…
井伊直弼中将は、容赦無く腰を抜かし地面にいた手練れの反乱兵2人を同時に一刀のもと、斬り裂いてしまった。
シュウウウ… キラキラキラキラ パアアア…
この偽世界「アーク」では、遺体は残らない、斬られ絶命した二人の身体は、魔素還元され光の粒子となって消えていった。 この状況は、乱戦状態の中庭の至る所で起きていた。 近衛兵、宮殿護衛兵、反乱兵、絶命した者は次々と消え、この偽世界「アーク」に還元、戻されていった。
「さて、取り逃したもう一人は… むッ!」 バサッ!
「ぎゃああああッ!」 ドサッ キラキラキラ パアアア…
井伊直弼中将が逃げ出したもう1人の手練れの反乱兵を見た瞬間、その反乱兵は袈裟がけに斬り付けられ、絶命し消えていった。 その反乱兵を斬りつけた若い兵士が、太刀を振り払い鞘に収めながら、井伊直弼中将の元へと歩き、近づいて来た。
ザッ ザッ ザッ ヒュンヒュンッ! チャキンン!
「ふッ! こんな反乱兵を取り逃すたあ、もう年なんじゃあねえのか親父ッ!」 ザッ! ニイイッ!
「【直政ッ!】 ふん! わしを年寄り扱いするでないッ!」 バサ!
井伊直弼中将の前に現れたのは、中将の息子である【井伊直政】中佐、皇国軍帝都防空師団、第1中隊の中隊長であった。 年齢は25歳で背丈は高く、その身長は190cmもあり、体格は鍛え抜かれた筋肉質の無駄のない戦士の身体を持つ好青年だった。 そしてその背後に、彼と同じ装備の兵士、20人が整列していた。
「ははは、冗談だよ親父、いや… わが井伊家当主、親父殿!」 サッ! 二ッ
「ふうう、お前がここに来たと言う事は帝都防空師団が動いたのか? その後ろにいる兵はお前の部下か?」
「ああ、俺の帝都防空師団第1中隊の連中さ、おいお前らッ! ここにいる反乱兵を抑えろッ! 1人も逃すなッ!」 ババッ
「「「「「 はッ! 」」」」」 ザッ バババッ!
ワーワー シュバババ キンキン シュン ドオオン バアアア!
井伊直政中佐の部下達は、乱戦中の中庭へと突撃して行った。
「むうう、まさか帝都防空師団が動くとはな…」
「まあ、帝都始まって以来の大事だしな、それに動いたのは防空師団だけじゃねえぜ、皇居宮廷の表門には第1第2装甲擲弾兵師団が急行、集結中だ」 クイ!
「そうか… そう言えば直政、防空の貴様がなぜ宮廷内にいる? ブレードナイトはどうしたのだ?」
「緊急事態なんだぜ? いち早く駆けつけたんだよ。 それに、皇居宮廷内にブレードナイトは侵入禁止だぜ? 俺たちの機体は上空の母艦で待機してる。 皇居宮廷内には俺たちライナーだけがここに来たんだ。 今、帝都は上から下まで大混乱さ!」 フリフリ
「帝都が? どういう事だ直政?」
「うん? 親父殿は何も知らねえんだな、皇居宮廷の外は大事になってるんだぜ」
「ぬッ! 早く教えろッ! バカ息子がッ!」 ガアッ!
「わかったわかった、説明するからそう興奮するなよ親父。 まず今現在、天帝様の皇居宮廷が反乱兵によって襲撃を受け交戦中、それと同時に帝都中央にある国防軍総本部、それと艦隊司令部のある『五稜郭要塞』内でも反乱兵による奇襲が起きてる。 あと帝都内にもかなりの数の反乱兵がいて、帝都全域で防衛戦闘、交戦中なんだ」
「反乱兵がここだけでなく総本部と艦隊司令部にもだとッ⁉︎ それに帝都全域がかッ⁉︎」 バサッ
「ああ、そこで俺たちの大将、織田元帥閣下の指示で、天帝様をお守りするために帝都防空師団と装甲擲弾兵師団が皇居に派遣されたんだ」 ササ
「むう、帝都全域か… 」
「あッ そうそう、親父には『五稜郭要塞』、艦隊司令部に帰還命令が出てるぜ」
「うん? わしにか?」
「ああ、お館様… 徳川様から『至急、「ミョウコウ」に戻り出航、指揮をとれ』だってさ」 ヒラヒラ
「それを先に言わんかッ! このバカ息子ッ!」 ゴンッ!
「うがッ! 痛てええーーッ!」 ガッ!
「全く… しかし参ったのう、今ここ、この場を離れるわけにはいかんし、どうする?」 むうう
「痛ててて、何だよ親父、いつもなら『お館様の命令は絶対、何をおいても優先すべし』って言ってたじゃねえか? 一体どうしたんだ?」 サスサス
「む、いやこの奥、皇居宮廷居住区には、天帝様とわしがお連れした聖女様、アニス様が座すのだ。 そのおふた方を置いて動くのはどうしたものかと思ってな」 むうう…
「なら心配いらねえぜ親父、今、皇居宮廷には帝都防空師団と装甲擲弾兵師団が来てるんだぜ、ここは直に収まる、親父は安心して行ってくれ」
「む!」 キョロキョロ
井伊直弼中将が辺りを見渡すと、息子の井伊直政の言う通り、中庭での戦闘は収まりつつあった。
「ふむ、ではここは任せる、くれぐれも天帝様とお前の許嫁に失礼のないようにな」 二ッ
「はッ? い、許嫁? 親父、今なんて?」
「むふふ、わしが認めて決めた我が井伊家の嫁、お前の妻の事だ! いいぞお、あの娘は! お前に相応しい素晴らしい娘だ!」 ニイイ
「お、親父ッ! 何勝手に決めてんだよッ! そんな見た事もない女を妻になんかできるかッ!」 グッ
「む、嫌か? だが拒むことは許さんぞ! これは井伊家にとって良い縁談なのだ!」 ふん!
「ウググ… ち、ちなみにその女、どんな奴なんだよ? 変なのは勘弁だぜ」
「そうだのう、器量はいいぞ、俺が保証する! 武の才も上々… いや、わしよりも強いし魔法も凄い! 気立ても竹を割ったような性格だし何より飯が美味い、わしが嫁にほしいくらいだ!」 ガハハハッ!
「親父より強い女だあ?…」 うう…
息子の井伊直政は、自分の父親より強い女性と聞き、筋肉隆々の大柄な逞しい女性を思い浮かべた。
「おい親父ッ! 俺は絶対にそんな女と夫婦になんかならねえからなッ!」 ババッ!
「ふッ! いずれ会えば解る、ではな、わしは行くぞ! ワハハハハッ!」 バサッ! ザッ ザッ
「親父ッ!」 ザッ!
井伊直弼中将は、高笑いをしながら息子井伊直政にこの場をまかし、皇居宮廷前にある、連絡艇発着場へと歩いていった。
ー帝都中央 国防軍総本部第3ゲートー
ワーワー ダダダッ ダダダダッ! ドンドン ドガアアンンッ! ババ! ドオオン! モクモク
「うう、本部守備隊の増援です! このままでは押し切られます、小西少尉どうしますかッ⁉︎」 バ!
「まだだ、もう少しで宇喜田様が月詠様をお連れするはず、このゲートをそれまで死守するのだッ!」 ザ!
「はッ!」 チャカッ! ダダダダダッ!
ドンドン ドガアアアアンンン! バアアアーーッ!
タタタ ザザ!
「月詠様、もうしばらくの御辛抱を、予定通り第3ゲートより帝都を脱出できます」 ササ
「うむ、卑弥呼の奴め、俺がこのまま終わると思うなよ! 俺には神、大神日本武尊様からの信託があったのだ、『この国を制せよ! この国の帝位は俺が継ぐのが相応しい』とな、神の信託は絶対なのだ!」 ググ!
宇喜田秀家少将と皇居宮廷から逃走中の月読命は、少将の率いる反乱兵達と共に、帝都中央にある皇国国防軍総本部の第3ゲートへと向かっていた。
「宇喜田様、ゲート入り口に敵本部守備隊ですッ!」 タタタ
「構うな、このまま押し通る! 月詠様を何としてもここから連れ出すのだ! 撃てええッ!」 バッ!
チャキチャカッ! ドババババッ! ダダダダダダッ!
「うわッ! 敵襲! 背後からも反乱兵! うわああーーッ!」 ババババッ! バタバタ
第3ゲートの入り口からゲート内の中にいる反乱兵と交戦中だった本部守備隊の背後に、月読命を連れ立った宇喜田少将の反乱部隊が攻撃を浴びせ、入り口付近にいた本部守備隊は倒されていった。
「今だッ! 第3ゲートに突入! 連絡艇を奪取し、ここから脱出するのだ!」 ダダダ
「「「「 はッ! 」」」」 ダダダッ!
宇喜田少将達は、天帝の義弟である月読命を伴い、第3ゲートへと入っていった。
「おおおッ! 月詠様ッ! よくぞご無事で!」 サッ
「うむ、手間を取らせたな、して、手筈の程はどうだ?」
「は、どうぞこちらへ、高速の連絡艇と護衛のブレードナイト数機が月詠様を無事、この帝都『トキオ』からお連れする手筈になっております」 サ!
「うむ、ではまいろういか!」 ザッ!
月読命を先頭に、宇喜田少将、小西行長少尉たちと10数人の反乱兵達は、第3ゲートの桟橋に接舷されていた大型の高速連絡艇2隻に乗り込んで行った。 しかし彼らは知らなかった。その様子をじっと見ていた男が1人いた事を…
「それが目的だったか、だが我が主人、織田信長様の命令だ、逃すわけにはいかない」 グッ ササ
それは、織田信長元帥の配下、豊臣秀吉大将だった。秀吉はこの第3ゲートの敵を殲滅せよと、織田信長元帥に命じられ、総本部制御室に詰めていた。
「主砲砲撃用意、奴らがゲートを出た瞬間に砲撃せよ。帝都への被害は考慮せずとも良い」 ニイイ
「「「 はッ! 」」」 ザッ
「主砲発射準備、1番から4番、順次装填開始、目標、第3ゲートより発進する敵反乱部隊」 ピ カチカチ ピコ!
ガコオンンッ! ウイイイイインン カシュン ビコ!
国防軍総本部の北第三ゲート付近にある防衛用の主砲、36.6cm連装フォトン砲4基が稼働し、その砲身内に弾薬が装填されていった。
ヒュイイイイインン プシュウウウウ! ヴヴヴヴヴ!
「月詠様、発進準備完了しました!」 バ
「よし、ささっとこんな所から出ていってやる! 発進させろッ!」 ババ
「はッ! 全機発進ッ!」 ピッ! グイイイッ!
シュバアアアーーッ! ドオオオオオオーーーーッ!
大型高速連絡艇と護衛の未確認ブレードナイト10機が第3ゲートを出て行った。
ピピピピピッ! ピコ ビコビコ! ピッ!」
「捕らえましたッ! 敵反乱部隊です!」 バ
「ようし、主砲発射ーッ! 奴らを撃ち落せええッ!」 ザ!
ヒイイイイイイイッ! ドドドオオオオオーーーーッッ! シュババババアアアアーーーッ!
豊臣秀吉大将指揮の元、国防軍本部の主砲が逃走を図る月読命たち反乱部隊に向かって攻撃を開始した。
「後方より砲撃! 目標は当部隊ッ!」 ピピピ
「躱せえッ! こんなところで落とされる訳にはいかん! 月詠様も乗っておられるのだぞ!」 ババ
「はッ!」 グイッ! ピ ピ タンタン ピコ!
シュバアアアーー グイイイイイッ! ヒュンヒュン ドオオン!
月読命が乗った高速連絡艇は、激しく迫りくる36.6cm主砲弾を巧に躱していた。だが毎分20発もの砲弾を撃つ事のできる高速射撃型の主砲は、徐々にその射角を狭め、逃走中の反乱部隊を撃ち落とし始めた。
シュバアアーーッ! ドオオオオオーーンンッ! バアアアアーーー
「護衛ブレードナイト『TENRAI 18試2型』 2番機、5番機被弾ッ!」 ピピ!
「かまうな! 全速でこの場を離れる! 主砲の射程外に急げッ!」
「了解ッ!」 グイッ
シュゴオオオオーーーーーッ! ギュワアアアーーーッ!
ドンドン ドゴオオオッ! ドオオンンッ! ドガアアンンッ! バラバラバラ…
「くそうッ! 逃がすなッ! 撃て撃てええッ!」 ババッ!
ドオオンンッ! ドオオンンッ!
激しい主砲砲撃により、次々と撃ち落とされる反乱部隊のブレードナイト、その機体は火を噴きながら、帝都内の住宅街へと落ち、火災を起こしながら爆発していった。
「何をしているッ! さっさと奴らを撃ち落とさないかッ!」 ザッ!
総本部制御室では、いまだに高速連絡艇を撃墜できないでいる豊臣秀吉大将が大型情報パネルの前で騒いでいた。 高速連絡艇を守るように、ブレードナイト「TENRAI 18試2型」がその照準の邪魔をし、被弾しそうな砲弾があれば、自らの機体を盾に犠牲になって天帝の義弟、月詠命の乗った高速連絡艇を援護していた。
「はッ! しかし、目標をかばうように敵ブレードナイトが射線上に邪魔をいたしまして、照準が定まりません! このままでは射程外へと逃げられます!」 ピ ピコピコ
「おのれええ、反乱兵共めええッ!」 ググッ!
その時、豊臣秀吉大将の目の前にある大型情報パネルが切り替わった。
ブウウンンッ! パッ!
『猿ッ!』 ギンッ!
「はッ! あ、ああ、お、御館様ッ!」 ササッ!
大型情報パネルに映っていたのは、豊臣秀吉大将の主人、この国の国防軍総大将、織田信長元帥であった。
『この虚け者があッ! 賊を討ち取れとは言ったが都民を犠牲にするとはどういう事だッ! 直ちに砲撃をやめよ!』 ザザッ!
「は、はいッ! 砲撃中止ッ! 中止だあッ!』」 ババッ!
織田信長元帥の命令で、反乱兵への主砲攻撃は停止した。その間に、月詠命を乗せた高速連絡艇と残存護衛のブレードナイト「TENRAI 18試2型」数機は、主砲の射程外はもちろん、帝都の境界外へと飛んで行った。
「申し訳ありません閣下、此度はこの秀吉の失態、いかようにも処分を…」 ササ…
『で、あるか… もうよい、猿よ、お前はこの総本部と帝都内の残敵の処理をせよ、逃げた反乱兵… いや、反乱兵どもと【月詠】、【光秀】一派の奴らは家康に任せる』 ムウウ…
「光秀⁉︎ では此度の反乱は【明智光秀】上級大将が主犯なのですかッ!」 バッ!
『うむ、あの戯け者が… 猿よ、後は任せたぞ!』 バサ!
「はッ! 御館様ッ!」 サッ
ブン パッ!
織田信長元帥との通信が終わり、大型情報パネルには、はるか遠方に逃走中の高速連絡艇と数機のブレードナイトの姿が映し出されていた。
「ちッ 取り逃したか… ええいッ! 残敵の掃討を開始しろおッ!」 ババッ!
「「「 はッ! 」」」 バタバタ
豊臣秀吉大将は、大型情報パネルに映る逃走中の高速連絡艇を見て諦め、織田信長元帥に言われた通り、総本部内や帝都内に残った反乱兵の掃討を開始した。 一方、その頃「五稜郭要塞」では…
ーヤマト皇国帝都「トキオ」湾岸 「五稜郭要塞」ー
ドオオンッ! メラメラメラ ワーワー ダダダッ ダダダダダッ! ドオオンッ!
皇居宮廷、国防軍総本部、そしてここヤマト皇国国防軍大陸艦隊の母港がある皇国最大の要塞、「五稜郭要塞」内でも、要塞守警備隊と反乱部隊とが激しい戦闘を繰り広げていた。
ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!
「第5警備中隊、敵反乱兵を殲滅! 第2通路はクリアー!」 ピッ! ピコピコ!
「第4ハンガーデッキに反乱兵ッ! 数、およそ30ッ!」 ピピ タンタン ピーッ!
「第1警備中隊は至急第4ハンガーデッキへッ! 繰り返す、第1警備中隊は第4ハンガーデッキへッ!」 ピッ!
ガヤガヤ ザワザワ ピピ ピコピコ
「ふん、反乱兵どもめ、この五稜郭、そう易々と攻略できぬは周知のこと、揺動なのは分かっておるのだ。さあ、貴様たちのその意を示せ!」 ジイイッ!
五稜郭要塞の最高責任者であり、ヤマト皇国国防軍大陸艦隊の司令官でもある【徳川家康】上級大将は、五稜郭要塞司令部の大型情報モニターで様々な情報が映る中、未だ抵抗を続ける反乱兵を見て、その行動の目的を見定めていた。
ビーーーッ
「総本部、織田元帥総司令官閣下より緊急通信!」 ピッ
「むッ! よし繋いでくれ」
「はッ!」 カチ
ブウウン パッ!
『忙しいところ悪いな家康』 ピッ
「なんの、この程度どうという事はありませんな、元帥閣下」 サッ
『ふむ、流石だな』 ニヤ
「して、この状況下で何用ですかな?」
『むう、家康よ、貴様にやってもらいたい事ができた』 ピッ
「ふむ、閣下が私に直に依頼とは、大事ですかな?」 ニヤ
『で、ある… 今回の反乱の元凶、その首謀者の天帝様の義弟、月詠めが逃走しよった』 ピッ
「なんと、あの月詠様がッ!」 ザザッ!
『家康、奴は我らの天帝様に反旗を翻した謀反人、罪人に成り下がった奴に「様」なぞ不要だ!』 ピッ
「はッ! それで、私に何をせよと?」
『ふむ、要塞から艦隊を出してほしい… 目標は逃亡中の月詠めらと、その共謀者の光秀だ』 ピッ
「なんと、明智殿がッ⁉︎ 何かの間違いではッ!」
『俺の影が確認した、間違いない。 今、光秀の居場所を影共に捜索させているところだ。分かり次第、艦隊を差し向けてくれ』 ピッ
「分かり申した。この家康、元帥閣下の勅命、しかと受け取りましたぞ!」 ササ バッ!
『うむ、頼りにしているぞ家康!』 ニヤ
ブン パッ ピッ ピッ ピッ
織田信長元帥との通信はここで終わり、大型情報モニターには要塞内の情報が表示された。
「総司令官閣下より勅命が降った。要塞内全艦出港準備ッ!」 バサッ!
「「「「 はッ! 」」」」 ザッ!
ビーーーーッ! ビーーーーッ! ビーーーーッ!
バタバタバタ ザワザワ ガヤガヤ タタタ カチカチ ピ ピピピ!
五稜郭要塞内司令室は急に慌ただしくなっていった。
「全艦隊、発進体制、湾岸設備要員は全艦の発進体制をッ! 繰り返す、全艦…」 ピッ
ゴゴゴゴ ヴヴヴヴウウウウウーーッ!
「要塞内反乱兵は完全に沈黙、対処完了しました!」 ババ
「うむ、各艦出港用意ッ! 直弼の奴は来たか?」
「はッ 重巡航艦「ミョウコウ」艦長、井伊直弼中将は間もなくこちらに到着の予定」 ピッ
「急がせろ、他の艦長は良いなッ!」 バサッ!
その時、司令室内に緊急ブザーが鳴った。
ビーーーーッ!
「大変です! メインドック4番ゲート重巡航艦『ナチ』、こちらの指示を無視ッ! 出航を開始!」 ババッ
「なッ! 至急『ナチ』の艦長、【大谷】中将を呼び出せ!」 バサ!
「はッ こちら、艦隊司令部、重巡航艦『ナチ』へ、コンタクト」 ピッ
『ザ、ザザザアアアアーー…』 ビビビビ…
「こちら艦隊司令部、重巡航艦『ナチ』フルコンタクトッ! 応答せよッ!」 ピッ!
『ザザザアアーーー… 』 ジジジ ジジ ビビ…
「ダメですッ! 重巡航艦『ナチ』応答なしッ! コンタクト不能ッ!」 バッ
「どうしたのだ『ナチ』は? 大谷はなぜ返信しない」 ググ
シュゴオオオオオーーーッ! ピッ ピッ ゴウンゴウンゴウン ゴゴゴゴ
「重巡航艦『ナチ』抜錨ッ! 出港しましたッ! 速度15ノット微速、湾外に向け航行中ッ!」 ピッ ビコビコ!
「むうう!『ナチ』を止めろッ! 湾内警備艇ッ!『ナチ』に強制接舷ッ! 中に突入し指揮系統を奪取、『ナチ』を停船させよ!」 ババ
「指令ッ! 重巡航艦『ナチ』主砲砲塔を指向旋回!」 ピピ ビコ!
「なにいいッ!」 バッ!
ゴウンゴウン ゴゴゴゴ ウィイイイインンン カシュン ククク… ピタッ!
「『ナチ』主砲、全砲門が湾岸設備に、こちらに向け照準停止!」
「ま、まさか…」
ヒイイイイインッッ! ドドッドオオオオンンンッッ! シュバババババアアアーーッ!
ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!
「『ナチ』発砲ッ! 砲撃を開始ッ!」 ビコビコ ビーーーッ!
「まさか… 『ナチ』までもか…」 グググ… ドンッ!
ビーーーーッ!
「『ナチ』の主砲弾ッ! 直撃きますッ!」 ビコビコ ビコビコ! ビーーーーッ!
シュバアアアアアアーーーッ!
重巡航艦「ナチ」、井伊直弼中将の乗艦、重巡航艦「ミョウコウ」の姉妹艦が、自分の母港であった五稜郭要塞に向け、主砲の40.3cmフォトン砲弾で攻撃を開始した。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。