第279話 アニスと大神、日本武尊
ー皇居宮廷 天帝居住区最奥、瞑想の間ー
キュキイイインンッ! ドオオオオオオオオオーーーーーッ! バキバキバキッ!
「きゃあああーー!」 バババアアアアーーーッ!
ヤマト皇国の大神【日本武尊】の放った神罰、《ライトニング・イーグル》とアニスがそれを迎撃に使った神級迎撃剣技、《バーゼル.グラン.リッパー》が真正面から激突した。 普段は蝋燭の明かり程度の瞑想の間がその一瞬、瞑想の間すべてが真っ白な光り輝く世界へと変わっていった。
『ぬうううッ!』 バババババッ!
「ん!」 シュバッ! ヒュンッ!
『うおおーッ』 グバッ!
パアアアンンーーッ! シュバッ! キラキラキラキラ パラパラパラ…
スタ… チャキ、ファサファサ
大神、日本武尊の神罰とアニスの神級迎撃剣技が瞑想の間の中央でぶつかり合い、その威力は相殺されて光の粒となって霧散していった。 光の粒が舞い降りる中を、青みがかった白銀髪と純白のスカートを靡かせたアニスが神器ミドルダガーの「アヴァロン」を持ち直し、颯爽と立っていた。
「そんな… 大神、日本武尊様の神罰を… 打ち消した? アニス様、貴女はいったい…」 ペタン ヘタヘタ
天帝卑弥呼は、いま目の前で起こった出来事に驚き、腰をぬかして床に座り、瞑想の間の中で唯1人、颯爽と立っているアニスの姿を見ていた。
『なッ なんとッ! むう… 信じられん、たかが人間不勢がこのわしの神罰を打ち消すとは… 小娘、貴様はいったい何者だッ!』 グウッ
「ん、私? 神なのに私を知らないんだ… 私はアニス、ただのアニスだよ。 おま… ん〜ん、キミこそ本当はいったい誰? 卑弥呼を、この国の人を使っては何がしたいの?」 クルクルッ チャキン
アニスは、宝鏡「八咫鏡」の中に映っている、大神、日本武尊の質問に、神器ミドルダガーの「アヴァロン」を背中腰にある鞘に納め、逆に質問を返した。
『ふんッ! 小娘が… さっきも言ったであろう、わしの名は【日本武尊】、この国の神である』 バッ
「神ねえ… 本当に?」
『貴様ッ!』 ググッ!
「アニス様ッ! 大神、日本武尊様ッ! どうかお許しをッ!」 ササッ!
『むッ! そこにいるのは卑弥呼ではないか、なぜ貴様がまだそこにいる?』
「えッ⁉︎」 サッ
『卑弥呼よ、貴様は既に死に絶えていているはず、月詠命のやつはどうした? 貴様の後釜はやつにと決めていた筈なのだがな』 ザザッ!
「えッ⁉︎ あ、ああ… あの… え?」 ガクガク…
天帝卑弥呼は自身が、いやこの国の全ての民が崇拝している国の神、大神日本武尊に八咫鏡ごしに言われ、その事に理解ができずに言葉を失い震えていた。 自分が今まで信じていた神、それが自分の死を、そして義弟である月詠命がこの国の次の天帝になることを望んでいる。 彼女の中で何かが崩れる音がした。
「ん~ 日本武尊、だったよね?」
『くッ! 小娘がなんだッ! わしは神なのだぞッ! 気安くわしの名を呼ぶでないッ!」 バッ
「そう? でもキミが神ねえ、もうやめた方がいい。この国の人々や卑弥呼のためにも、キミは神を名乗らない方がいいよ」 サッ
『なッ! この生意気な小娘があッ! わしは最強の神ッ! 大神、日本武尊だッ! ふざけるでないわあああーーッ!』 ドオオオオオーーーッ!
バリバリバリッ! ビキビキビキッ! ビシイッ! パリッ!
八咫鏡の中の大神、日本武尊は憤怒のごとき激しく怒り、その影響からか、八咫鏡から激しい放電現象が起こり、鏡に無数のヒビとその一部が割れ欠け始めていった。
バリバリバリッ! ビキキッ! パラパラ…
「し、神器が… 八咫鏡がッ!」 ササッ!
「卑弥呼離れて、近づいてはだめだよ」 サッ
「ですがアニス様ッ! このままでは八咫鏡がッ!」
「卑弥呼、残念だけど、鏡自体がその存在の維持を保てなくなってきている… 三種の神器はもう崩壊、消滅が避けらられない…」 フリフリ
「えッ⁉︎ アニス様、いったい何を…」 ササ…
「卑弥呼、三種の神器は三器一体の神器、一つでも欠けたら存在できないんだ…」 ジッ!
「そんな… それでは秘宝は、神器は…」 ワナワナ
ビキキイイイッ! パアアンッ! ドオオオオオーーンンッ! ババッバアアアアーーー!
「きゃああーーッ!」 バッ
「ん!《クリアーッ!》」 シュンッ! サッ パアアンッ!
三種の神器、宝剣、宝鏡、宝珠の三器が同時に光輝き、いきなり爆発し消滅していった。 アニスは咄嗟に天帝卑弥呼を三種の神器の爆発の威力と爆風や破片から守る為に、天帝卑弥呼の前に一瞬で移動し彼女を守るように防御壁の魔法を展開した。
ババババーーーッ! ビシビシ… サササアアアー…
「ア、アニス様…」
「卑弥呼、大丈夫ですか?」
「は、はい…(先程まで祭壇の上にいた筈なのに、いつのまにここへ…)」
「ん、良かった」 ニコ
アニスがいた三種の神器が祭られていた祭壇上の場所から天帝卑弥呼がいた場所まで約20m程、あの爆発の一瞬でアニスが祭壇から自分のすぐ目の前に現れ、爆風から自分達を守る魔法を放った神業的動作に天帝卑弥呼は驚いていた。 その時、祭壇の方から大きな音が聞こえてきた。
サササアアーー… ズウウンンッ! ズウウンンッ!
「え! 何?」 キョロキョロ
「ん? 出て来たみたいだね」 サッ
ズワアアアアッ! バサバサバサ ドオオオオオーー ズウウンンッ! ザシャ
「ほう、あの至近距離の爆発をも防いだか… アニスとか言ったな小娘、やるではないか」 ニイイ
「ん~、やはりキミかあ」 フリフリ
「大神ッ! 日本武尊様ッ!」 ファサ…
アニスと天帝卑弥呼の2人の前に現れたのは、先程まで神器八咫鏡の中に居た大神、日本武尊の巨大な姿だった。 身の丈は13m、典型的な古代の神が纏う和装の白い服装に、首には数十の曲玉の首飾りと腰には大剣を帯刀し、背中には弓と矢を背負っていた。
「ふむ、やはり生きておったか卑弥呼よ、月詠の奴めしくじりおったか。(あの御方のシナリオ通りにしなくてどうするだ、役に立たぬ奴だ)が、まあ良い、こうなればこのわしが直々に神罰として貴様らにとどめを刺すとしよう」 ススウー シュリンッ!
大神、日本武尊は腰に帯刀していた大剣を抜き、それをアニス達に向け構えてきた。
「ん?」
「あ、ああ… か、神よ…」 ググッ
天帝卑弥呼は、自身の信仰する神の前になす術なく、ただ祈る事しか出来なかった。しかしアニスは違った…
テクテク スタッ!
「はああ、仕方が無いか… ねえ、日本武尊ッ!」 サッ
アニスは大神、日本武尊の前に歩み出て問い掛けた。
「何だ小娘、今更命乞いか?」 グッ
「命乞い? そんな事じゃないよ、それより一つ聞きたいんだ」
「ふん、良いだろう一つだけだ! 申せッ!」
「ん、【ダイアナ・ディア・ゼルト】、この名を聞いたことはない?」
「アニス様?」
「ダイアナだと…… むう、聞き覚えがないな! 誰だその偉そうな名前の奴は。わしは知らぬぞ!」 ザッ
「そっか… 知らないんだ、あの娘はキミより随分と格上の神の名なんだけどね…」 ボソ フリフリ
「うぬ! 何か言ったか?」
「ううん、聞きたいことは以上だよ、おおよその見当はついたから」 ニコ
「ええい、なんだというのだッ!」 バッ
「キミの本当の目的は卑弥呼じゃない、この私なんだ」
「うッ!」
「さっきので全て分かったんだ、私はキミを知らない、知っている神ではない、キミはおそらく誰かに作られた神、この地で『この私を足止めし、あわよくば私を抹殺、消滅する為に差し向けたられた』神なんでしょ?」
「なッ! 小娘、気づいておったか…」 ググ…
「ん、キミがこの国の大神、日本武尊と神の名だと名乗った時にね」
「小娘貴様ッ! わしが神の名を謀ったとでもいうのかッ! 偽物の神とでも言うのかッ! 大神でもあるこのわしがッ!」 ドンッ!
「そんなつもりは無いよ… ただ、私の記憶にない神の名だったのから… キミは神は神でもある目的の為だけに誕生した神、いわば数多ある下級神の1柱に過ぎない存在、この偽世界『アーク』において何ら影響を与える程の神なんかじゃないんだ。 それ故に、人々に神託や神罰を与えるなど言語道断、そうキミが三種の神器を作って惑わし、それを使ってしてきた事はこの国の人たちにとって単なる迷惑なだけなんだよ」 サッ
「うぐぐ だ、黙れ…」 ググ…
「今回の騒動もキミの予定? 予測? 予言だったかな? キミは卑弥呼にはそれを伝えず、密かに卑弥呼の義弟、月詠にそれを伝え誘導し、反乱を起こさせたんだ。『卑弥子を消せ、聖女を消し去り天帝位を奪え、軍部内の不平、不満を持つ者たちを先導し、反乱を起こせ、お前がこの国を導くのだ』と、そんなところかな… でも、このままだといずれキミは厄災を起こすだけの疫病神、邪神になってしまう。それでもいいの?」
「ぬうッ! 貴様ッ! このわしを言うに事欠いて邪神と申すかッ!」 グググッ!
「ん、このままだとそうなるね… (いや、これもアイツのシナリオ通りなんだ…)」
「ふんッ! いい加減な戯言はここまでだッ! 小娘ッ! いいやアニスッ! 卑弥呼共々この世界から消え去るがいいッ!」 ズワアアッ! ビュンッ! ピタ!
大神日本武尊は、自身の大剣を振り上げ、アニスト天帝卑弥呼に対しそれを振り下ろしてきた。
「ん、戯言ねえ… 本当のことなんだけどなあ、やっぱり言うことを聞かないか…」 フリフリ
「黙れえーッ! そこまでだッ! 2人まとめて消え去るがいいッ! 剣技ッ!《邪気滅殺・焦破斬ッ!》」 シュバアアッ!
ビュンッ! ヒュバッ! ドバアアアアーーーッ!
「きゃああッ! 大神様ッ! ご慈悲をッ! 日本武尊様ーッ!」 ギュウッ!
大神、日本武尊はアニスと天帝卑弥呼に向け、神の剣技を使い、神速を持ったその大きな大剣を振り下ろしてきた。
「ん、卑弥呼こっち!」 サ ギュウ
「え? アニス様?」 キョトン
「行くよ《刹那》」 ビュンッ! シュンッ!
「きゃ…」 シュンッ! シュバッ!
迫り来る大神、日本武尊の大剣による剣技攻撃が2人に襲いかかる瞬間、アニスは天帝卑弥呼の手を握り、超高速移動術《刹那》を使い、大剣が当たるギリギリの一瞬で、その場から消えた。 それを、日本武尊はあまりも一瞬の出来事に気がつかなかった。
ドゴオオオオンンンーーッ! バキバキバキバキ バアアンン バラバラバラ パラ…
「ふむ、さすがのあ奴らも、神の一撃は躱せなかったようだな」 ニイイ
大神、日本武尊は、自身が振り下ろした大剣の辺りは、床が20mに渡り裂け、裂け目は瞑想の間の壁まで達し、瓦礫が残るのみで2人の存在が確認出来ず、自身の剣技によって2人が消滅したものと思っていた。
「ふははは、我が創造主、創造神ジオス様ッ! ご覧になってましょうや? とうとうやりましたぞッ! シナリオ通り、貴方様の宿敵であるアニスは今、この大神、日本武尊が見事に討ち果たしましたぞッ!」 グバアッ!
大神、日本武尊は、瞑想の間の天上を仰ぎ、その場に居もしない神、創造神ジオスの名を叫び勝利の勝鬨を上げ、大笑いをしていた。
「ああっはははははははッ! ああっはははははははッ!」 グバアアッ!
ヒュルンッ シュン スタ…
「そっか、やっぱりジオスが絡んでたんだ」 テクテク スタ
「ははは… は? なッ⁉︎ ば、 馬鹿なッ! 貴様はアニスーッ!」 ザザアッ! バッ!
大笑いをし、創造神ジオスにアニスを倒した事の宣言をしていた大神、日本武尊は、自身のすぐ背後から声が聞こえ、それに振り向いたその先には、全くの無傷のアニスが一人立っていて、それを見て驚きアニスの名を思わず叫んだ。
「ん」 コクン
「そんな筈はない、確かに貴様と天帝卑弥呼はこのわしが討ち取ったはずッ! なぜだッ!」 ババッ!
「そんなの、キミの攻撃を避けたからに決まってるじゃないか」 サッ
「ウグ、では、天帝卑弥呼の奴も…」 ザッ
「ん、無事だよ。 今はこの瞑想の間ではない別の場所、安全なところに避難してる」
「むうッ! ジオス様から伺ってはいたが、これほどとは…」 ググッ! チャキ
「それで、もう諦めて今回の騒動を収めてもらえないかな?」 うん?
「ぬッ 騒動を収めろだと? わあっはははははッ! 言うに事欠いて人間どもの騒動を収めろか、これは傑作だッ!」 ワハハハハッ!
「何がおかしい、キミが起した騒動だろ? 止められないの?」
「ははは、小娘、いやアニスよ、人間どもが今越している騒動はもう収めようが無い、あれは奴らの本能が起こしているような物、わしは奴らにその切っ掛けを作り与えたに過ぎないのだ。 我が創造主、創造神ジオス様のシナリオは絶対ッ! もう止める事など不可能だぞ」 ニイイ
「そう、そうなんだ、わかった…」 クルッ! ファサ テクテク
アニスは青みがかった銀髪と純白のスカートを翻し、颯爽と向きを変えて瞑想の間の出口へと歩き始めた。
「待てッ! どこへ行く? まだワシとの決着はついておらんぞ!」 バサ
テクテク ピタ
「決着? それはキミとの事? 残念だけど、私は決着などつける気はないんだ。 今はこの国の騒動を収めるのが先、どうしてもと言うのであればその後で、いくらでも相手をするから少し待ってて」 サッ テクテク
「ぬうう、行かせはせんぞアニスーッ!《ライトニング・イーグルッ!》」 バッ! キュインッ!
バリバリバリッ バチバチ! ドオオオオーーッ! バババババッ!
大神、日本武尊は、アニスに向けて再び神罰の雷撃系魔法、《ライトニング・イーグル》を放ってきた。 その威力は宝鏡、八咫鏡越しに放たれたものの比ではなく、それよりも強力なものであった。
「ん、《アルテミスリングッ!》」 サッ! パアアンンッ! シュバッ!
バチバチバチッ! パアアアンンッ! ビリビリビリッ! バババッ パアアアア…
アニスは、日本武尊からの神罰を怯む事なく即座に反応し、咄嗟にアニス固有のオリジナル絶対防御魔法、《アルテミスリング》を展開して、意図も容易くそれを防いでしまった。
「くッ 馬鹿なッ! わしの神罰が防がれただと? アニスめ、小癪な真似をッ!」 ババッ
「キミの魔法攻撃は一切効かないよ」 フリフリ
「ならばッ! そのふざけた防御魔法ごと、貴様を飲み込み消滅するがいいッ!《グラウンド・フォールッ!》」 サッ!
グオンッ! ドゴオオオオオーーーーッ!
大神の日本武尊は、アニスに向けて、巨大な暗黒の重力の塊、神罰級の魔法攻撃を放ってきた。 それはアニスに向かって早足程度の速度で近づき、その間の周辺にある瓦礫や置物など、その全てを物を呑み込み、粉砕しながら近づいていった。
「ん! 雷撃系に続いて重力系の魔法かあ… 仕方がないね…」 スウウ チャキンッ!
アニスは背中腰に装備するミドルダガーの神器の「アヴァロン」を抜き、腰を少し落として構えた。
「ふははは、何だその小さな剣は、いやナイフか? そのようなものでこのわしの神罰が防げると思っているのか愚か者めッ!」 ググッ
「ん、《インペリアル.グラン.レリースッ!》」 サッ パアアアンンッ! キイイン!
クルクルクル シュバンッ! ビシイッ! バキイイインッ! パラパラパラ…
大神、日本武尊が放った脅威的な神罰級の魔法攻撃を、アニスは神器「アヴァロン」に付与魔法を施し反撃した。銀色に光る神器「アヴァロン」、それを迫ってくる神罰に対し振り抜いた瞬間、神罰級の巨大な暗黒球は一瞬で消し去ってしまった。
「なッ⁉︎ わしの神罰がッ! 神の魔法が消滅したッ! うぐぐ… それならばッ!《ディープ・インパクトーッ!》」 シュバッ! キュイン!
ドオオンンーッ! ゴオオオオーーッ!
大神、日本武尊は次もまた、巨大で強大な破壊威力を持つ重圧な衝撃波の塊、神罰級魔法攻撃を放ってきた。しかし、アニスの右手の掌にはいまだに付与魔法がかかったまま銀色に光り輝く神器の「アヴァロン」が握られていた。
「何度やっても一緒だよ」 サッ シュバッ! ギュウウウンンッ! パアアアンンッ!
パキイイイインンッ! パラパラパラ…
またも、日本武尊の放った神罰級攻撃魔法はアニスの銀色に輝く神器、ミドルダガーの「アヴァロン」の一振りにより霧散、消滅していった。
「馬鹿なッ! わしの神罰が… 魔法がッ!」 グググ…
シュンッ! キイイイン… チャキッ! ファサファサ…
「ん、キミの攻撃はもう届かないよ… いや、私の前では、もうそれは児戯にも等しい無駄な行為、だからもう諦めてくれないかな?」 ニコ サッ!
アニスは、青みがかった白銀髪を靡かせ、銀色に輝やく神器ミドルダガーの「アヴァロン」を構えながら大神、日本武尊に忠告した。
「うぐぐッ! おのれえアニスーッ! うおおおおッ!《バーティカル・レインッ!》《シャイン・ベルファイヤーッ!》《グレイタス・ギガダストーッ!》」 バババッ!
キンッ キンッ シュバッ! パアアンンッ! ドドドドドオオオオオーーーッ!
「無駄だと、忠告したのに…」 スッ シュバッ! ビュンビュン! パアアアンンッ!
パキイイン パキイイン パキイイインッ! パアアアーーッ パラパラパラ…
アニスに自身の神罰級の魔法攻撃が児戯に等しいと言われた事に対し、大神、日本武尊は怒り、自身の持てる数種類の神罰級魔法攻撃を立て続けに放ってきた。どれもが一撃でその場を焦土や消滅、破壊しうる威力を持った魔法だった。
だが、アニスはそれらを見ても平然とし、右手に持った銀色に光る神器、ミドルダガーの「アヴァロン」を向かってくる神罰級の攻撃魔法に向けて振り抜き、その全てを消し去ってしまった。
「ハアハアハア… そ、そんな… わしの神罰が全て… アニスッ! 貴様はいったい何者なのだッ⁉︎ 先ほどからの小さな剣に帯びたそれは何だ⁉︎ わしの神罰に何をしたッ⁉︎」 ザザッ! ズウウンンッ! ズウウンンッ!
自身が持つ神罰級の攻撃魔法が全て通じないと悟った大神、日本武尊はアニスの前に歩み寄った。
「ん、質問が多いねえ、私の事はジオスから聞いてないの?」 ん?
「うぐ… 我が創造主、創造神ジオス様からは詳しくは聞いてなどおらんッ! ただ、『この世界に存在する事自体無視できぬ存在、排除すべき存在、その全てを消し去る事を優先すべき存在』としか聞いておらん!」
「わああ… ジオスのやつ、めちゃめちゃ私を嫌ってるね、まあしょうがないか」 ははは…
「今一度聞くぞッ! 貴様は何者だ! なぜわしの神罰が消える⁉︎ 答えろ! アニスッ!」
「はああ… 神なのにそれさえも理解できないんだ… 仕方がないか、キミは私や【ダイアナ】の事さえ知らない神、与えられた知識しか知らない、ジオスによって誕生した神なんだ。 わからないのも無理ないか」 フリフリ
「なッ 与えられた知識しか知らない…だと… わしを馬鹿にするなああーーッ!」 シュリンッ! チャキッ!
大神、日本武尊は神罰級攻撃魔法はアニスには効果なしと見定め、腰に帯剣していた大剣を抜き構え、アニスに向け構えた。
「ん、剣術かあ… キミの大きな体躯では私に当てるのは至難の業だよ?」 ん?
「体躯の差など関係ないッ! これで全て終わりだあッ!《大地舜壊ッ! 烈風双破斬ッ!》」 ギュワンッ! シュバッ!
ザシャアアアアアーーーッ! ドゴオオオオオーーーーッ!
大神、日本武尊の言う通り、体躯の差は関係なかった。 大神、日本武尊が振り抜いた大剣の威力は線ではなく面、自身の前方全てを薙ぎ払う、神速を持った剣撃であった。
「んッ! そう来たんだ、でも残念、私の前ではそれも通用しないよ」 ググ…
「ふん、負け惜しみをッ! この広範囲を襲う神速攻撃、躱す事など不可能! アニスよ、消え去るがいいッ!」 グググ
ザシュバアアアーーッ! ゴオオオオーーーッ!
「ん、《ファントム》」 ヴンッ ユラユラ シュンッ! ザバアアアアーーッ!
神速を保った広範囲攻撃がアニスに当たるその瞬間、アニスの身体はぶれて消え、アニスが居た場所を斬撃が過ぎ去っていった。
「ぬおッ! 消えおった… どこだッ! どこへ行ったッ!」 ババッ! キョロキョロ
アニスを見失った、大神、日本武尊は、必死にアニスの存在を探し始めた。 その時、日本武尊のすぐ背後から声が聞こえた。
シュンッ! パッ!
「ここだよ」 シュピンッ!
「なにいッ!」 ババッ!
「ん、おそいッ!剣技、《エノーマル.エッジッ!》」 ビュンッ! シュバッ!
ドゴオオオオオーーーーッ!
「ぬおおおおーーッ!」 ドゴオオオンンッ! ビュンッ!
いきなり背後に現れたアニスの剣技をモロに受け、大神、日本武尊の巨体は吹き飛んでいった。
ダンダンッ ドカアアアッ! ダアアアンンッ! ガラガラガラ パラパラパラ カラン…
「う、ううう… な、何という威力の剣撃… これがあの小さな剣の威力だというのか…」 ググ…
シュン スタ テクテクテク ザッ
「もういいですか? これ以上は何度やっても一緒ですよ?」 ファサ
青みがかった白銀髪を靡かせて、アニスは吹き飛び、瓦礫の中の大神、日本武尊に尋ねた。
グバアッ! ガラガラガラガラ ズウウンン ズウウンン バサバサ
「ふ、ふはははは、わしの負けだ、アニスよ、貴様は強いッ! 神のこのわしがこうも手も足も出ぬとは、やはりわしは神として何も知らなさすぎるのだな」 ズン バサバサ…
もはや、自身が持つ最大効果のある神罰級の攻撃魔法は、ことごとく全て防がれ無効化し消え去り、大剣による神速攻撃をも躱された。 大神、日本武尊はアニスに対しての攻撃手段を全て失い戦意も失って、アニスに対し攻撃をやめた。 そして今、自分に足りない情報をアニスから得ようと聞き側に入っていった。
「そう、たとえばこれ」 クルクルッ チャキ!
アニスはいまだに銀色に光り輝く神器、「アヴァロン」を右手の中で回し見せた。
「ぬッ その小さな剣がどうした、確かに先ほどの威力は凄まじかったが、いまだ魔力が高まっているようだぞ」 ジイイ
「ん、これは神器、ミドルダガーの『アヴァロン』、材質はアダマンタイトとオリハルコンの単一結合合金、表層に神語のヒエログリフによる能力向上、そして今はそれに神級迎撃付与魔法の《インペリアル.グラン.レリース》が発動中の、私が創造、制作した唯一無二の神剣の一つだよ」 サッ!
「神剣ッ! 神剣を創造したッ⁉︎ ヒエログリフに付与魔法? そしてこの世に存在しない金属! 小娘、いやアニスッ! 貴さ、いや貴女様はまさかッ!」 バザッ! ガクン ドドオオンンッ!
大神、日本武尊は、アニスの言葉に驚き、その場で両膝を床に着いて姿勢を低くした。
「ん? 誰だと思いますか? ちなみに、【ダイアナ・ディア・ゼルト】とはこの偽世界『アーク』の最高神、キミよりずううっと格上の頂点に君臨する女神の名前ですよ」 ニコ
「な、なんとッ‼︎ もッ 申し訳ございませぬうッ!」 ガバッ! ズウウウウンンッ!
今、この瞑想の間にはアニスと大神の日本武尊しかおらず、もし他の者がいたならばその全ての者が驚いたであろう。 薄暗い瞑想の間の中央で、青みがかった白銀髪の白い服を着た少女の前に、13mもの巨体をもつこの国の神が膝まづいて頭を下げて謝罪している姿に…
「ん〜、日本武尊、頭を上げて、キミはただ、ジオスに利用されるために創造された神、今までのことは許し難いけど、これからそれを補う行動を示せば今回は不問とします」 ニコ
「やはり、貴女様はッ! アニス様は女神様だったのですなッ!」 ババッ!
「いやだから、土下座はいいから、それと私は女神じゃないよ?」 サッ
「なんとッ! あれほどのお力を持ちながら女神様ではないと? では、アニス様、貴女様はいったい…」 ガバ
「ん〜、まあ今ここにはだれも居ないし、キミは神だから知られても構わないか」 コクン
「アニス様?」
「ん、私の本当の名は【アニライトス・ディオ・ジオス】、有限無限、有形無形その全ての創造創生と破棄破壊が可能な創造者、それがこの私、アニスなんだ。 そしてこの身体は私が創造した私の娘たち、6大女神が1人の【エレンディア・ディア・ゼルト】が、この偽世界『アーク』仕様に用意した依代なんだ」 ニコ
「(まあ、6人全員の力が後から付与されてたし、しかも女の子の姿とは思わなかったよ、でも随分とこの身体に馴染んだよなあ、今となってはこっちの身体が本体のような気もするよ)」 あはは…
「ゆ、有限無限、有形無形の創造者ですと⁉︎ (そ、そんな存在、神以上の存在ではないかッ! 我が創造主、創造神ジオス様はいったい何を考えていらっしゃるのだッ! アニス様のような存在を消すことなど完全に不可能ッ! おそらく全ての神が束になって立ち向かったとしても勝算はゼロ、勝てるはずがない、それこそ全ての神がその場その時で一瞬で無に帰してしまう)」 ブルブル ガクガクガク
大神、日本武尊は、アニスの正体を知り、額から汗を流し完全に萎縮していた。
ドオオオオン…
「ん? あの音は… そうか、まだ続いているんだ…」
いまだに反乱騒動が続いている音が聞こえ、アニスは悲しい目を見せていた。
「申し訳ありません、今回の騒動、全てこのわしの責任。アニス様、このわしの処分を… 元々、そのために創造された神、あなた様の消去を企んだ神、貴女様にならこの身を消されても何の不満もございませんッ!」 バサ ササ
大神、日本武尊は、創造神ジオスによって、アニスを消去、抹殺を目的に創造されたこの国の神、強大すぎるアニスを目に、自身の反旗を翻した罪に苛まれ、自身の消去をアニスに願い出て来た。
「日本武尊、キミにはまだこれから多くの事をやって貰いたいんだ。それにはジオスから完全に切り離さなくてはいけない… そう、キミは新たな神として、創造神ジオスの束縛を受けない神として生まれ変わってもらいたい」 サッ
「わしが生まれ変わる? しかしこのままではこの国が、ヤマト皇国が…」 ザッ
「ん、大丈夫だよ、この国の人々は忍耐強いんだ。 そんなに柔じゃないよ、キミが先導したくらいでこの国は滅びたりはしないさ」 サッ
「アニス様…」
「さあ、どうする? 決めるのはキミだよ?」
「アニス様の思し召しのままに、この身をお預けいたします」 ササ
「ん、じゃあ、《セクターッ!》」 サ パアアンンンッ! シュワッ!
アニスが魔法を唱えると、瞑想の間の天井に光り輝く穴があいた。
「こ、これは…」
「お〜い、ダイアナ聞こえるかい?」
ブウウンンン! ジ、ジジジ、
『アニス様ッ!』 キイインン!
「わあッ! びっくりした! ダ、ダイアナ? もうちょっと声を落としてくれない?」
『何言ってんですかッ! ぜんぜん連絡をくれないアニス様が悪いんですッ!』
「あははは… そんなにしてなかったっけ?」
『500年ですよ500年ッ! いくら何でもこれは酷すぎますッ!』
「ああ〜 そっか、一時期よその世界に行ってたからねえ、ごめんね」
『全くもう、そういう時は一言連絡を入れてください! 報連相ですよ報連相ッ!』
「はい、ごめんなさい…」 ペコ
『それで、いきなり連絡とはどうしたんですか?』
「ああそうだ! ダイアナ、今私のそばにいる神がわかるか?」
『うん? アニス様のそばですか? え〜っと… ああ、確かに男神が1人おられますね、誰ですか? こちらには登録されていないようですが…』
「ん、ああ彼は創造神ジオスに創造された神なんだ」
『ああん、創造神ジオスですってえ〜…』 ギラ ゴゴゴ…
「うん、そうジオス、アイツが創造して誕生した神なんだけどってダイアナ? 聞こえてる?」
『ええ、よ〜く聞こえてますよアニス様、すぐさまそこへ《ラウム.ジ.ハザード》を発射します。 アニス様は直ちに退避を!』
「わああ! ダイアナ! ダメッ ダメだよッ!」 フリフリ!
『アニス様?』
「彼はもうジオスの配下じゃないよ、キミと共にこの偽世界『アーク』のために働く神になるんだ、今からジオスの呪縛からとき放ち、キミの配下の神に調整する。 彼をこの異世界の神として登録を頼む」
『アニス様は相変わらずお優しいのですね、わかりました… では同時進行致します』 カチャカチャ
ポン
『偽世界「アーク」管理システム「アブソリュート」、第1級最高神ダイアナの接続を確認』 ピッ
『アニス様、準備ができました。『アブソリュート』正常に作動中です』
「ん、じゃあ始めようか、日本武尊」
「はい、アニス様。どうぞ御随意に、お任せ致します」 ササ
「ん、ダイアナいくよッ!」 ザッ サッ
『はい、いつでもッ!』
パアアアン! シュバババババアアアーーッ!
アニスが両手の掌を開いて大神、日本武尊にそれを向けると、日本武尊を中心に黄金の魔法陣が床と天井に現れ彼を挟んだ。
「ん、行くよ!《アペリオス.オ.エルテンッ!》」 キイインンッ!
ドゴオオオオオオオオオーーーーッ!
大神、日本武尊は上下の黄金の魔法陣から出る黄金の柱の中に、その姿は溶け消えていった。
ー皇居宮廷内中庭ー
キイン! ブンブン ワーワー バババ ドオオンンッ!
アニスと大神、日本武尊の戦いが終わり、神の生まれ変わりが始まった頃、皇居宮廷内の反乱は今も続いていた。
ギャギイインン!
「そこだああッ!」 ブン! ザシャアアアーー
「ぎゃあああーー!」 ブシャアアーー ドサ
「ぬう、全く次から次へと、まるで害虫のように湧き出てくるわい!」 バサ
井伊直弼中将は、皇居宮廷の中庭にて、天帝の近衛兵とともに、いきなり襲いかかってきた義弟派の反乱部隊と戦っていた。
ワーワー キンキン ビュン ドカアッ! ババ ババ ガアアンン! ドンドン!
「ふうう、流石にちっと疲れてきたのう、だが天帝様とアニス様のためだ、ここはもう一踏ん張り!」 チャキ
既に、20人以上を倒してきた井伊直弼中将が、仕切り直しに刀を構え直した時、彼は叛乱部隊の手練れの三人にいきなり囲まれた。
ザザッ! チャキン!
「むッ!」 ザザ!
「ほう、こんな所に将官がいるたあ、俺たちはついてるぜ」 ニヤ
「おう兄貴、コイツの首を持ってけば賞金もたんまり貰えるぜ!」 へへへ
「だいぶ疲れてる様だし老耄だ、おい、全員でかかるぞ! いいなッ!」 チャキ
「「 おうッ! 」」
「ちいッ、わしもここまでか、せめて息子とアニス様の結納を見届けたかった、それだけが心残りだ」 ふふふ
「「「 その首もらったあーーッ! 」」」 バババッ!
手練れの3人は同時に動き、井伊直弼中将に襲いかかっていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。