第278話 アニスと天帝卑弥呼 三種の神器
-ヤマト皇国国防軍本部ー
アニスが天帝卑弥呼と宮廷内最奥の天帝居住区に着いた頃、ヤマト皇国の防衛の要、国防軍総本部は蜂の巣を突いたかのような騒ぎになっていた。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
「皇居宮廷内にて非常事態ッ! 宮廷内にて反乱発生ッ!」 ピッ ピコピコ ビーーッ!
「宮廷護衛隊隊長、【服部半蔵】より救援の申請あり、『反乱部隊、天帝卑弥呼様を急襲! 現在、【井伊直弼】中将と共に天帝近衛部隊と交戦中、至急急行されたし』との事です」 バッ!
バンッ! ザザッ!
「馬鹿ものおッ! 皇居宮廷内でなんたる失態ッ! 公安部隊は何をしておったのだッ! なぜ賊の侵入を許したッ! 装甲擲弾兵師団を直ちに皇居へッ! 天帝卑弥呼様の御無事を確認しろッ! 急げッ!」 ザッ バサッ!
「「「「「 はッ! 」」」」」 ザザッ!
ヤマト皇国国防軍総司令部、200人のオペレーターが帝都及びヤマト皇国の全てを監視し、必要とあらば国防軍を動かす中枢、その総司令官席で、ヤマト皇国国防軍総司令官【織田信長】元帥が、自身の司令官席から立ち上がり、怒りを露わにして指示を出していた。
「第1、第2、装甲擲弾兵師団は至急皇居宮廷へッ! 帝都防空師団は直ちに発進体制をッ! 全軍第1級防衛体制ッ! 繰り返す! 第1、第2…」 カタカタ ピッ タンタン…
「参謀長ッ!」 バッ!
「はッ! 閣下ッ!」 サッ!
「【前田利家】を呼べッ! それと五稜郭要塞、艦隊司令の【徳川家康】もだッ!」 バサッ!
「はッ! 直ちにッ!」 バッ! タタタタ
「誰だか知らぬがこの騒動、首謀者は生かして帰さんッ!」 グググッ!
ビーーッ!
「五稜郭要塞、艦隊司令【徳川家康】上級大将が出ました」 ピッ
「うむ」 コク
ブ〜ン パッ!
『総司令官閣下、御呼びですかな?』 サッ!
司令室内にある大小多数の情報パネルの1枚に、織田信長とほぼ歳を同じくした、風格のある上級大将の将印を付けた人物が現れた。
「うむ、家康よ、皇居で少々面倒事が起こってな、その事で卿を呼んだのだ!」 ニッ!
『ほう、皇居もですか、これは偶然ではないようですな』 ピッ
「ん? なんだ、そっちでも何かあったのか?」
『ほんの先程ですが、要塞内の港にて一部の兵が暴動を起こしましてな、今その対処を始めたところですわい』 ピッ
「むうう、五稜郭要塞内でか… これは偶然ではなさそうだな、港は大丈夫か?」
『暴動を起こしている兵の数は約300、この要塞を攪乱、占拠するには数が少なすぎますな』 ピッ
「ふむ、という事は要塞内での暴動は陽動… いや、港から艦隊を出さないようにするのが目的か、味な真似を…」 グッ
『閣下、とにかく今は艦隊が出せませんぞ、帝都上空は帝都防空師団に任せるしかないですな』 ピッ
「そうだな、まあその為に【又左】の奴を今呼んでいるところだ」 むうう
『利家ですか… そうですな、彼奴なら適任でしょうな』 ピッ
ビーーッ!
「総司令官閣下、前田利家大将、繋がりました」 ピピ
「うむ、家康、港の方は任せた」 サッ!
『了解致しました、総司令官閣下殿』 サッ ピッ! パッ
ブ〜ン パパッ!
徳川家康との通信が終わったのと入れ替わりに、同一の情報パネルに、【前田利家】大将が姿を現した。
『御呼びでしょうか、総司令官閣下』 ピッ
「うむ、又左よ、貴様に帝都内の反乱分子の掃討を任せたい、どうだ?」 ジッ!
『反乱分子ですか… 構いませんが、どの程度の数でしょうか?』 ピッ
「わからん、だが今現在、皇居宮廷内で直弼の奴が近衛兵と共に、潜入した反乱分子と交戦中だ」 ギシッ!
『井伊直弼ですか… 徳川様配下のあの者なら持ち堪えるでしょうな』 ピッ
「うむ、それでだ、皇居宮廷内でこの騒動だ、そして五稜郭要塞でも反乱が起きて、今、家康が抑えに入った」
『五稜郭要塞が? ご冗談でしょう? あそこには常に50000もの兵が詰めているのですよッ! 一体どこの馬鹿者が要塞を占拠するほどの大部隊を動かしたのですかッ⁉︎』 ピッ
「いや、反乱分子の数は300ほどだそうだッ!」 フリフリ
『300ッ! ではコレは陽動、もしくは時間稼ぎの部隊では?』 ピッ
「流石だな又左、俺もそう思うし家康の奴もそう言っておったわ… そこでだ、皇居宮廷内と五稜郭要塞…… 当然帝都内にも反乱分子共がいるはずだっ!」 バッ
『了解しました。この【槍の又左】こと【前田利家】、帝都内の反乱分子掃討に入ります』 ピッ
「むッ! 頼んだぞ! 又左ッ!」 サッ!
『はッ! お任せをッ!』 サッ! ピッ! パッ
「さて、皇居宮廷、五稜郭要塞、そして帝都トキオ… 残すはここ、国防軍総本部であろうな…」 むうう…
ヤマト皇国国防軍総司令官、織田信長元帥がそう危惧した通り、程なくして国防軍総本部の一部でも反乱が起きた。
ドオオオオオンンッ! バキバキバキバキ メラメラ モクモクモク…
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
「本部北側、第3メインゲート大破ッ! 火災発生ッ! 識別不能の未確認ブレードナイト、12機が侵入ッ!」 ピッ
「むうう、やはり総本部にも来たか…」 ググッ!
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
「破壊された第3ゲートより敵兵、約一個大隊規模が侵入ッ!」 ピッ タンタン ピコッ!
ブ〜ン パッ!
ワーワー ドオオオオオンンッ! ダンダンダンッ! シュバアアアアッ! ドゴオオンーッ!
司令部の情報用パネルの一つに、第3ゲート現状が映し出され、そこには、識別不能の未確認ブレードナイトを先頭に、破壊されたゲート内を沢山の反乱兵がフォトン銃やロケット弾を撃ちながら、内部へと侵入していく様子が映っていた。
「総司令官閣下ッ! このままではさらに内部に侵入されますッ!」 バッ!
「慌てるなッ!【猿】ッ!」 バサッ!
「はッ!【豊臣秀吉】ここに」 サッ!
「猿よ、アレを貴様に任せるッ! 総本部駐屯の部隊と貴様に与えた兵力の全てを挙げてアレらを殲滅せよッ! よいか、一兵たりとも帰す事は許さんッ!」 ギンッ!
「はッ! 多少荒事になっても?」 サッ!
「構わんッ! 行けッ!」 バッ!
「直ちにッ!」 ザッ! ダダダダダッ!
猿こと【豊臣秀吉】上級大将は、直属の主人である織田信長元帥の命を受け、総本部北側の第3メインゲートへと向かっていった。
ドオオンンッ! メラメラ ボウボウ ガコオンン ガコオンンッ! ブオンッ!
「ゲート守備隊は全滅ッ! 第3ゲートは完全に占拠されましたッ!」 ババッ! ピッ ピッ ピピ!
「むうう、やはりこちらが本命か… いや、それも違うな…」 ジイイ…
織田信長元帥は、第3ゲート内の様子が映し出されている情報モニターを凝視して、ある違和感を抱いた。
「なぜ、ゲート内にある湾岸設備や短艇、連絡艇を破壊しない? そもそも、ブレードナイトが狭いゲート内に侵入する事自体が不自然だ… 何か別の目的があるのでは…」 むうう…
シュンッ! シュバッ!
「親方様ッ!」 サッ!
織田信長元帥が反乱部隊の様子に思案していた時、元帥の横に突然、自身の配下であり天帝卑弥呼の直轄の特殊公安部員、【赤影】がその姿を現した。
「むッ! 赤影か、どうした?」 バサッ!
「はッ! 報告します。 天帝卑弥呼様、及び聖女アニス様の御二方は無事に脱出、現在は皇居最奥の天帝卑弥呼様の居住区に退避を済ませております」 サッ
「うむ、それで、此度の騒動の首謀者などは確認できたか?」 ジッ
「はッ! 反乱分子と思われる兵の数は総勢12000ほど、実行部隊として【石田三成】中将、【宇喜田秀家】少将、及び【島 左近】准将を確認しました」 サッ
「石田に宇喜田、それと島か、となると首謀者は彼奴か…」 むううッ!
「はッ! 恐れながら、旗印は水色桔梗ッ!」 サッ!
「【光秀】かああーッ!」 バンッ! バサッ!
「はッ! それと天帝様の義弟で在らせられます、【月詠命】様も加担しているかと」 サッ
「ぬうッ! あの天帝様にとっての害悪、臆病者の獅子身中の虫、日和見主義者! あの大たわけかああッ!」 グッ!
織田信長元帥は、反乱分子の首謀者が誰なのかがわかると、怒りに顔を真っ赤にして叫んでいた。
「赤影ッ!」 バッ!
「はッ!」 サッ
「総勢12000と言ったが確認できた数との差異が大きい、必ずや奴らの本体が隠れ潜んでいるはずッ! 貴様の能力を持ってそれを炙り出せッ!」 バサッ!
「御意ッ!」 シュバッ! シュンッ! ヒュウウウウ…
赤影は、織田信長元帥の命を受け返事をした瞬間、その場から消えていった。
「ふむ、陽動が揺動でなかった場合もありうるかもか… 」 ジイイ…
情報用パネルを見て、織田信長元帥は、2手3手先を読み始めた。
・
・
・
ー昇竜の間向かい、別室控えの間ー
ドゴオオオンンッ! グラグラ パラパラ…
ヤマト皇国全体に広がりつつある反乱騒動の中、昇竜の間の向かいにある従者や付き人が待機する控えの間に、突然現れた服部半蔵と猿飛佐助が消えた後、アラン達英雄の3人と勇者のサトシとスズカ、そして公安上位隊員の隼と楓並びにこの国の兵士1人、計8人が残っていた。 ただ、隼だけは猿飛佐助の攻撃で、大怪我で血を流し床に倒れていた。
「ハアハアハア… くっそう… 痛てて…」 ググッ…
「隼ッ! しっかりしてッ!」 ササッ!
「はいはい、ちょっといい?」 トコトコ サッ!
「え? ジェシカさん?」 サッ
重症の隼に英雄のジェシカが近づいて、隼の傷の状態を見て来た。
「ハアハアハア…」 ブルブル
「ひどい傷ね… 早く処置をしないと、治さないの?」 ササッ
「私たちの能力、技ではここまでの重傷はとても…」 フリフリ
そこへ英雄仲間のアランとマイロ、そして勇者のサトシとスズカもやって来た。
「ジェシカ、傷の具合はどうだい?」 ザッ ザッ
「なんなら、彼の治療は僕がやりましょうか?」 ザッ ザッ
「ん〜、ちょっと待って」 サッ
トコトコ ザッ…
「サトシどう?」 スッ
「うん、あの傷… 《ヒール》じゃだめだね、その上位の《ハイ・ヒール》か《エクストラ・ヒール》でないと治せないよ」 サッ
「じゃあ早くッ!」 バッ!
勇者のスズカが倒れて重症の隼に駆け寄ろうとした時、ジェシカがそれを止めた。
「大丈夫… 私がやるわ、重症だけどなんとかなりそうよ」 サッ
「ジェシカさんッ! 本当ッ!」 バッ!
「うん、任せて、みんなもいい?」 ササッ
「「「「 ああッ!(うん!) 」」」」 コクン!
「じゃあ、楓さん、少し彼から離れていてね」 ニコ
「はいッ!」 ササッ
「うううう… ハアハアハア…」 ガクガク…
「隼さん、しばしの辛抱ですよ。 《ヒルティッ!》」 パアアンッ!
シュバッ! シュワワワワアアアーーッ! パアアアアーーッ!
すると、ジェシカがアニスから教わった治癒魔法の呪文を唱えると、重症だった隼の体が光り輝き始めた。
「《ヒルティ》?… なあスズカ、聞いた事ない魔法名だね」 スッ
「勇者の私たちとは違う… 全く別の魔法、コレがこの世界の回復魔法かしら?」
「回復? 違う違うよ、コレはアニスさんが俺たち3人に教えてくれた治癒魔法なんだ」 サッ
アランが、ジェシカの治癒魔法を見ていた勇者のサトシとスズカに説明した。
「治癒魔法ッ⁉︎ 回復魔法とそっくりだけど…」 ババッ!
「ああ、僕にもそう見える、何が違うんだ?」 うん?
「そうだね、治癒魔法と回復魔法、どちらも傷を治す魔法だけどちょっと違うんだ。 元々勇者の君たちとこの世界の僕らじゃ魔力の質が違うんだ、そう魔力量も… だからお互い同じ似たような同等の魔法はあるけど、その実は全くの別、同じ魔法に見えて同じじゃないんだ」 サッ
「じゃあ、私たちは《ヒルティ》が使えないの?」
「うん、そうだね。 アニスさんが言うには、僕たちが君たち勇者の魔法が使えないように、君たち勇者も僕たちの魔法が使えない、そういう事みたいなんだ」 バッ
「そ、そうなんだ… 僕たちじゃあ《ヒルティ》は使えないんだ」 はは…
しばらくして、重症だった隼の傷はみるみるうちに塞がり消え、傷跡もなく治っていった。
パアアアンンッ! シュバッ!
「はい、治りましたよ」 ササッ
「隼ッ!」 バッ!
ハッ! ガバッ!
隼は目を見開き、いきなり立ち上がった、が…
「凄いッ! あれだけの傷が… ううッ!」 ヨロ…
「隼ッ!」 ガバッ!
「あ、ダメですよ、傷は癒えましたが、失われた血は戻りません。しばらくは貧血でふらつきますから、安静と養生が必要ですよ」 スッ!
「そ、そうか… すまない、助かったよジェシカさん」 サッ
「本当にありがとう!ジェシカさんッ!」 ペコ
「いえ、気にしないで、みんなアニスちゃんを通じて知り合った仲間でしょ? 当たり前のことよ」 フリフリ ニコ
公安上位隊員の隼と楓は、治療をしてくれたジェシカ頭を下げた。
ドオオンン… グラグラ パラパラ…
「この音は…」 サッ
「ああ、まだ戦闘が続いているんだ、少し離れているけどまだ戦っている…」 グッ
英雄のアランとマイロが、爆発音がする方向を見て、今回の騒動がいまだに続いていることを知った時、彼ら8人の前に2人の人物が現れた。
シュババッ! ザザッ!
「「「「「「 うッ! わッ! えッ! なにッ! むッ! 」」」」」 ババッ! ザッ!
「「 なッ! と、特殊公安部隊ッ!『影』ッ! 」」 ググッ!
いきなり現れたその2人に、全員が警戒したが、公安上位隊員の隼と楓だけは違った。
「うむ、我は白影ッ!」 ザッ
「我は青影ッ!」 ザッ
「「 我らは天帝様の命を受け、その方らを救助に来た。 敵ではない 」」 ファサッ
黒装束に白と青のマフラーを靡かせた2人はそう宣言した。
「救助? ねえ楓さん、あの人たちの事を知ってるみたいだけど、そうなの? 大丈夫?」 サッ
英雄のジェシカが公安上位隊員の楓に聞いてきた。
「え、ええ… あの方達は天帝様直属の… 公安部隊でもエリート中のエリートしか入隊が許されない特殊公安部隊、信用できます」 コクン
「そう、じゃあみんな、この人達に任せてここを出ましょう!」 サッ
「そうだね、ここにいても何にも分からないし、外の様子も気になるからね」 コクン
「うむ、それでは案内を、我らの後に着いてきてくれ」 サッ!
「わかった、じゃあみんな行こうか」 グッ
「「「「「「「 ああッ!、(うん!)(ええ!) 」」」」」」」 コクン
アランを先頭に、皆がうなづき、特殊公安部隊の白影と青影の後に続いて、避難先へとその控えの間を出ていった。
・
・
・
ー皇居宮廷最奥 天帝居住区 応接室ー
コクン コクン カチャ
「そういえば、ねえ卑弥呼、ここでお茶を飲んでいていいの?」 コクン
「大丈夫ですよ、私には頼れる者が何人かいます。 彼らがこの騒動をなんとかするでしょう」 コクン カチャ
「そう、なら良いけど…」 カチャ
「それよりもアニス様、どうか貴女のそのお力を貸してください」 サッ
「ん? 私の力の事ですか?」
「はい、我が国… ヤマト皇国の為にツ! お願いいたしますッ!」 サササ バッ! ペコ
天帝卑弥呼は、アニスの元に近寄り、その場でいきなり土下座をした。
「わああッ! 卑弥呼! 何やってんのッ! 土下座なんてしなくていいよッ!」 ババッ!
「いいえ、アニス様からその御力を貸していただけると承諾されるまでやめませんッ!」 グググ…
「ううう… わかったッ! もうわかったから、土下座をやめてッ!」 ググッ!
「はいッ! アニス様、言質頂きましたわ。 ありがとうございますねッ!」 ガバッ ニコニコ
アニスから協力が得られると判断した天帝卑弥呼は、満面の笑顔で立ち上がった。
「なッ、あッ! は、はめられたあ… 」 うぐぐ…
「さて、アニス様、宜しいですか?」 サッ
「うう… で、何をすればいいの?」 はああ…
「はい、知っての通り、私はこの国、ヤマト皇国の長、天帝をしています」 チリンチリン
ガチャ トコトコトコ サッ コポポポ カチャカチャ サササ
天帝卑弥呼がテーブルの上の小さなベルを振ると、応接室のドアが開き、給仕姿の女性が数人、緑茶と菓子の御かわりを持って現れ、緑茶を入れ直すと再び部屋から出ていった。
ペコ ガチャン
「ん、それで? 天帝なら権力と財力、その力は十分あるよね、それでも私に力を貸せと?」 カチャ コクン
「はい、アニス様は『三種の神器』と言う、神より与えられた物をご存知ですか?」 カチャ コクン
「3種類の神の器? 何だっけ… う〜ん… ああッ! あれだッ!」 ポンッ!
「さすがアニス様」 ニコ
「あれだねッ! 冷蔵庫ッ! 洗濯機ッ! エアコンだあッ!」 バッ!
「違あうううッ!」 バンッ!
天帝卑弥呼はテーブルを両手で叩き立ち上がった。
「うわあッ! え? 違うの?」 はは…
「それは、映像モニター、冷蔵庫、洗濯機ですッ!」 バッ
「ああ、エアコンじゃなかったんだあ、そっか、映像モニターかあ…」 あはは…
「うふふ… そうですよ、アニス様ったらって、それも違ううッ!」 バンバン!
「わああッ!」 ビク!
「アニス様、全部違いますッ! 神器ですよ神器ッ! 人が開発製造した、生活に便利な物ではなく、神様から授かった神聖なる秘宝ですッ!」 バンッ!
「ええ〜… 何それ? 知らないよ」 フリフリ
「ええっとですねえ、三種の神器とは、宝剣『草薙剣』、宝鏡『八咫鏡』、宝珠『八尺瓊勾玉』の3つの事なんです」 ササッ
「ふ〜ん、剣と鏡に石ころかあ… そんなの作ったかなあ?」 はて?
アニスは聞き覚えの無い三種の神器に記憶を辿っていた。
「アニス様? 神がお作りし神器ですよ? アニス様が作った物ではありませんよ?」
「ん? そうか、神が作ったんだ! あ、いやでも誰だ? 誰が作ったんだろ?」 う〜ん?
「あのアニス様、とにかくその三種の神器が神力を失ってしまったのです」
「ん? 神力? 要するにその三種の神器が神器でなくなった… 秘宝からただの物になった事がこの国に、何らかの影響を与えているという事なの?」
「はい… 此度の騒動も三種の神器が心力を発揮し、私たちに導きを与えていたならば、ここまでの騒動はならなかったはずなんです…」
「何だそれ? 武器や鏡と石が君たちを導く? 神からの秘宝ねえ… それ、一度見せてもらえるかな?」 カチャ コクン
「はい、ぜひ見ていただけませんか? そうすれば三種の神器も何らかの反応はすると思うんです」
「ん、でどこに?」
「はい、皇居にあります、私こと天帝のみが入室を許された場所、瞑想の間にて、そこの祭壇に祭られています」 サッ
「じゃあ、早速行こうか」 スタ
「はい、では着いて来てください」
「ん!」 テクテク
アニスは天照卑弥呼の案内で、皇居宮廷の奥、天帝居住区の最奥にある、瞑想の間へと向かっていった。
ー皇居宮廷、天帝居住区最奥、瞑想の間ー
「アニス様、こちらです」 サッ
そこは、石造りの巨大な扉が天帝以外の者を拒むかのように存在し、たとえ屈強な大男が何人集まっても開ける事が出来ない重厚な扉が存在していた。
「入室には限られた者、神の認められた者のみしか開けて入る事が出来ない扉となっています」
「ふ~ん、神にねえ…」 スッ
アニスは瞑想の間の入り口である重厚な扉に、右手の手のひらを当てた。
「ふふふ、だめですよアニス様、この扉は私にしか開ける事はできません。 例え、聖女の称号を持つアニス様でもこの扉だけは… えッ!」 ババッ
ガコオオンッ! ゴゴゴゴゴ ズズズズズ ギイイイイ
天帝卑弥呼がアニスに自分以外扉を開ける事はできないと言おうとしたその時、石造りの重圧な扉が、低い音をたて、ゆっくりと開き始めた。
「ん、開いた開いた、開いたよ卑弥呼」 ニコ
「うそ… 私以外で扉を開くなんて…」
ガコオオオンン ヒヤアア〜 ヒュウウ…
開いた扉の奥からは、冷やされた空気が流れ出て来た。
「うん、随分広い空間だね、それに少し薄暗い… この奥でいいの?」
「え、ええ… どうぞ奥へ」 カツ カツ カツ
「ん、じゃあお邪魔しま〜す」 テクテク
扉から真っ直ぐに暫く歩くと、祭壇が現れ、その頂には宝剣『草薙剣』、宝鏡『八咫鏡』、そして宝玉『八尺瓊勾玉』、三つの秘宝、三種の神器が祀られていた。
「ん? あれが三種の神器?」
「はい、いかがでしょうか?」
「あははは… まあ確かに、神器ではあるけど、これは秘宝でも何でも無いよ」 フリフリ
「え?」
「ん、宝剣『草薙剣』は通信アンテナ、宝鏡『八咫鏡』は通信用映像モニター、そして宝玉の『八尺瓊勾玉』は通信機、三種の神器とは、神から人に与えられた、神と人とが分かり合える通信設備なんだ」
「では、神からの神託を得ることの出来る秘宝じゃあないですかッ!」 ババッ
「ん〜ん、神託じゃあないよ未来予知… というより未来予定かな、神が予定した不確実な未来、予定の未来、それを教えてくれるのがこの三種の神器なんだ。 神の不確実、未定の予定を三種の神器は通告する… この国の未来行末を、この先何が起きるかを、それを時代の天帝は受け止め、天帝はこの国の人々を導き、指導して来た… ううん、誘導させてきた。 だが今になってそれが動かなくなった、未来予定を通告しなくなった、いや出来なくなったの方かな、そしてそうなったのには理由があるんだ」 サッ
「それは一体何なのですか、アニス様」
「私がこの国に来たから… そのせいで、この先の未来が変わった、わからなくなり通告ができなくなった。 そして壊れた。 そこに困っていた卑弥呼に、その三種の神器の製作者から私を探せ、聖女を探せと言われたってところかな…」 サッ
「すごい、まさしくその通りですわアニス様ッ!」 バッ!
「で、その動かなくなった三種の神器を私にと言ったのはどこの誰ですか?」
「はい、わが国の大伸…【日本武尊】様です」 サッ
「日本武尊?(誰? そんな神いたか? いやいや、そもそもこの世界… 偽世界『アーク』の最高神は女神ダイアナだったはず… 500年の時は色々と変化したのかなあ)」 むう…
テクテクテクテク シュンッ シュザッ!
アニスは祭壇に近づき、その場から祭壇上にある三種の神器のそばに移動した。
「アニス様ッ! 一体何をッ!」 ザッ
「ん、卑弥呼、ちょっと待っててね」 ニコ サッ
パアアアンンッ! ヴヴヴヴヴッ! ヴオン ヴオン ヴオンッ!
アニスが三種の神器に手を翳し、それらに魔力を放つと、宝剣、宝鏡、宝珠の3つの神器がそれぞれが個別に振動し、共鳴、作動しはじめた。
「三種の神器がッ! 作動したッ!」
ヴヴヴヴヴッ! ビイイーーッ!
「ん、繋がったかな? お〜い、もしも〜し、聞こえるか〜い?」 テンテン
アニスは宝鏡「八咫鏡」を軽く叩きながら、鏡に向かって問いかけた。
ジ、ジジジ… ブウウンッ!
『だ… だれ… だ… 』 ヴヴヴ ジジ… ジジジ…
「ん、繋がったね、卑弥呼、ほら声が聞こえた、治ったよ」 サッ
「へ? いやアニス様、三種の神器からは声など出ないのですが…」
「え?」
ヴヴヴヴァンッ! ピカッ パアアアンンッ!
『我を呼び付けたのはだれだああーーッ!』 バチバチバチ ババババ ビリビリビリッ!
宝鏡「八咫鏡」には、白髪と白い髭を蓄えた神様らしい神が現れ、いきなり叫び出した。しかし、宝鏡に現れた神様らしいその人物に対しアニスは平然と言葉を返した。
「ん? お前だれ?」 ジ
『ぬううッ! 神であるワシを知らぬとは無礼なやつめッ!』 グググッ!
「ま、まさか神様ッ! 【日本武尊】様ッ!」 ササッ!
『いかにもッ! 我が貴様たち人間の神、【日本武尊】であるッ!』 ババッ!
「我が大神、日本武尊様ーッ!」 ササ
「ん? ああッ! コレがこの国の神様なんだ。初めて見たよ」 ニコ
『ほう… この我をコレ呼ばわりか… そこな少女よ、神罰が落ちるやもしれんぞ』 ニヤ
「ん? 神罰? この私が? なんで?」 うん?
『無礼者めええーーッ!』 ビカアアアーーッ!
バリバリバリッ! ドドドドッ! バチバチバチッ!
「きゃあああーーッ!」 ババッ!
「あれは……」 ジイイ…
瞑想の間全体に、雷が荒れ狂い至る所で放電現象が起こり始めた。
『身の程を知らぬ少女よ、食らうが良いッ!《ライトニング・イーグルッ!》』 キンッ!
ビカアアアッ! ドオオオオオオオオオーーーーーッ! バチバチバチイイイイーーッ!
宝鏡「八咫鏡」の中に現れた神は、瞑想の間の中いるアニスに向かって、神罰の神による一撃を放って来た。
「神様ッ! 神様ーーッ!」 バッ! ガタガタガタ
「んッ!」 ググ
膨大な威力を持った雷が、アニスに向かって降り注いできた。それは、一撃で宮廷を、いやその辺り一帯を吹き飛ばすに十分な威力を持った物であった。
「仕方がないね…」 サ チャキ
アニスは背中腰にある神器、ミドルダガーの「アヴァロン」を抜き、迫り来る神の神罰に向けて構えた。
『何をしても無駄じゃ小娘えッ!』 バババババッ!
「ん、神級迎撃剣技… 《バーゼル.グラン.リッパーッ!》」 シュピンッ!
ドゴオオオオオオーーーーッ!
『な、何いいいッ!』 バッ!
今、瞑想の間の中で、神の神罰、《ライトニング・イーグル》とアニスの神級迎撃剣技、《バーゼル.グラン.リッパー》が激突した。 薄暗い瞑想の間は膨大な光の中へと包まれていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。