第277話 アニスと宮廷内反乱
ー皇居宮殿内 謁見用大広間、昇竜の間ー
シュバババババッ! ピピピピッ!
「んッ! 《アルテミスリングッ!》」 サッ! パアアアンンッ!
シュバアアアアーーッ! ドオオンンッ! ドガアアンッ! キイインッ! ギンッ!
シュバアアアアーーッ! ドゴオオンッ! ダアアンンッ! バキバキッ! ボウッ! メラメラメラ ブワアアアアーーッ! モクモクモク…
アニス達に向かっていたロケット弾を、アニスは自身の絶対防御魔法、《アルテミスリング》で、そのほとんどを防いでしまった。 だが、ロケット弾の数発は目標をそれ、雛壇の最上段や全く明後日の方向に飛んで行き、昇竜の間の内部を破壊していった。
ゴオオオオーーッ! モクモクモク ガラガラ パラ…
「うううッ! こ、これはいったい何事ですかッ⁉︎」 バッ!
「卑弥呼様ッ! お下がりくださいッ! 反乱ですッ!」 バッ! ザザッ!
「反乱ッ⁉︎ だ、誰がッ⁉︎」 ファサ…
「詮索は後で、とにかく今はこの場から御避難をッ!」 ザッ!
「近衛兵ッ! 近衛兵は何をしているのですッ⁉︎ 近衛兵ッ!」 ババッ!
ゴオオオオ… メラメラ ドオンッ! パチパチ モクモクモク…
「ん、卑弥呼、この状況だと直弼や近衛兵達はここに来れない状態だと思うよ」 ジイイ…
「アニス様…」 サッ
アニスの予想は当たっていた。月詠命が召喚術を使用した時、井伊直弼中将と近衛兵はこの謁見用大広間、昇竜の間から一時避難した際、そのまま中に入ることが出来ず、数分後その場に急襲してきた宇喜田少将率いる反乱部隊と戦闘状態となり、現在は昇竜の間のある建物の外まで移動し交戦中だった。
皇居宮廷内にある天帝との謁見をする広い空間を持った謁見用大広間、昇竜の間は今、まるで最前線の戦場のような有様だった。 突然乱入して来た宇喜田少将とその部下数十人からなるロケット弾数発による攻撃により、爆発音と建物内が崩れる音と共に、火災を起こし煙が充満し始めていった。
ここで宇喜田少将の月詠命救出及び天帝襲撃計画に誤差が出た。突入直後、狙いを天帝卑弥呼がいるはずの謁見用最上段に向けてロケット弾を放つ算段だった。 たが、突入してみれば、天帝卑弥呼は最上段にはおらず、アニスと直接会うため、普段は決して降りる事のない最上段から最下段に降りて来ていた事で思惑が外れ、ロケット弾の狙いに迷いが生じ、狙いが正確さを欠いてしまった。
そしてアニスの存在、宇喜田少将達のロケット弾攻撃を、その場にいたアニスが絶対防御魔法の《アルテミスリング》を展開し防ぎ、それにより天帝卑弥呼は、宇喜田少将達からの襲撃によるロケット弾攻撃から身を守ることができ傷1つ負う事なく無事だった。 これは宇喜田少将にとって全く予想だにしない出来事ばかりであった。
ジリリリリリリッ! ビーーーーッ ビーーーーッ!
『火災警報ッ! 火災警報ッ! 謁見、昇竜の間は現在延焼中、近接の官使、書記官及び来賓者は速やかに避難を開始してください 繰り返します。 火災…』 ピッ
『自動消化装置作動します』 ピッ プシッ!
シャアアアアアアアーーーーッ! ザザザアアアアーーッ!
爆発による炎と煙によって、警報が鳴り響き、自動消化装置のスプリンクラーが、滝のような水を噴射し始めた。そのような状況の中を宇喜田少将は部下を伴い、延焼中の謁見の間、昇竜の間の中のさらに奥へと突入していった。 その際、アニスの側に立っている天帝卑弥呼を見て、宇喜田少将は舌打ちをした。
シュダダダッ!
「ちッ! 卑弥呼は仕損じたかッ! だがッ! 第一小隊、俺に続けッ! 月詠様をお救いするッ!」 バッ!
「「「「 はッ! 」」」 バッ! シュダダダダダッ!
「第二小隊ッ! 俺と第一小隊を援護ッ! 月詠様をお連れするまでの時間を稼げッ! 撃ちまくれえッ!」 ザッ!
「「「「「 了解ッ! 」」」」」 ザザッ!
ガチャッ! バシュウウーッ! ダンダンダンダンッ! シュバババーーッ!
謁見の間に侵入してきた宇喜田少将達は、二手に分かれて行動をし、第二小隊はあたり構わず宇喜田少将と第一小隊の進む方向を援護するように、ロケット弾やフォトンライフルを撃ち続けた。
ドオオオオオンンッ! バアアアンンッ! メラメラ ボウボウ シャアアアアアーーッ!
立て続き起こる爆発と炎により、消化用スプリンクラーの放水では炎と煙を完全に消す事ができず、その混乱の最中、宇喜田少将は月詠命の近くまで来るのに成功した。
モクモクモク ザアアアアアア… ダダダッ! ザッ!
「月詠様ッ!」 バッ!
「おおッ! 宇喜田かッ! 助かったぞッ!」 ザッ!
「はッ! もしやと思い準備しておいた事が功を奏しました」 ニッ
ドオオオオオンンッ! モクモクモク バアアアンンッ! メラメラ… ザザアアアア…
「うむ、それで首尾のほどは?」 サッ!
「はッ ひとまずはここより脱出を、兼ねてより計画しておりました場所にて明智様と三成殿がお待ちです」 ザッ!
「よしッ! 早速動くぞッ! もうこのような場所に用はないッ!」 ザッ!
「はッ! ではこちらへッ! 急ぎますッ!」 ザッ!
シュバアアアアーーッ! ドゴオオンンッ! ダアアンンッ! バキバキバキ メラメラ…
月詠命は、宇喜田少将とその部下達の手引きにより、爆発と炎に煙、飛び交うロケット弾とフォトン弾、そして消化用のスプリンクラーから出る大量の水と熱による水蒸気の湯気、視界が全く皆無に近い中、昇竜の間から逃げおおせていった。
シャアアアアアーーッ! ザザザアアアアーーッ! ジュウウウ ジュウウウッ!
「くッ! 待ちなさいッ!月詠―ッ!」 バッ!
火災の煙と消火による湯気の隙間に、この昇竜の間から逃げていく月詠命の後姿を見て、天帝卑弥呼は叫んでいた。
「いけません天帝様ッ! 今は御身の無事を優先、さあこちらへ、ここは間も無く崩れます」 ササッ!
「ふうう… わかりました赤影、アニス様」 ファサ…
「ん?」
「どうぞご一緒に、安全な場所に移動しましょう」
「ん〜 一緒にきたアラン達はどうするの? 大丈夫かな?」
「そうですね… 赤影、なんとか出来ますか?」
「はッ では我が配下の者にそちらの方を任せます。ご安心を」 サッ ピイイッ!
シャシャッ! スタッ!
特殊公安部員の赤影がそう言って口笛を吹くと、2人の黒装束に白、青のマフラーを靡かせた特殊公安部員が現れた。
「わああッ! かっこいいッ!」 サッ
「白影、青影、天帝様よりの勅命である」
「「 はッ! 」」 ササッ!
「向かいの控えの間に行き、聖女アニス様の付き人数人を避難誘導、案内をしろ。この建物の外までで良い」 バッ!
「「 御意ッ! 」」 シュバッ!
赤影の命を受けると、2人は一瞬でその場から消えた。
「さあ、天帝様、聖女アニス様、こちらへ、この様な状況になった場合に備えての専用の出口があります」 サッ
「うむ、ではアニス様ご一緒に」 ニコ
「ん」 コクン
赤影を先頭に、謁見用雛壇近くの壁に近づくと、いきなり出口が現れ、3人はその中へと消えていった。
ーヤマト皇国、宮廷内護衛部隊本部、隊長室ー
ビーーーーッ! ビーーーーッ!
バンッ!
「半蔵ッ! これはどういう事だッ!」 ババッ!
謁見用大広間、昇竜の間の惨状を見て、宮廷内護衛部隊隊長である服部半蔵に、八咫烏こと霧隠才蔵が詰め寄っていた。
「わ、私にも何が何やらわからんのだッ! 宮廷内で反乱なぞ予測してもいなかった」 グッ!
「公安部隊隊長として、天帝様にそんな言い訳は通じないぜ、半蔵」
「わかっているッ! 今、宮廷内にいる公安の全隊員を向かわせているところだッ!」 ザッ!
「半蔵… あなた月詠様の直轄公安部隊の隊長なんでしょ? 知らなかったでは済まされないわよ」 ジイイ…
「八千代、直轄公安部隊といっても、鳳輦隊だけは私の管轄ではないッ! 奴らは俺の部隊から月詠様に引き抜かれた者達ばかりなのだ、言わば別動隊、月詠様の私兵だ、俺に命令する権限はないのだ」 ググッ
「ちッ! だが宇喜田少将達の動向はどうなのだ? それも知らなかったのか?」
「いや、宇喜田少将に関しては俺の部下、猿飛佐助に… まさかッ!」 バッ!
「ふうう… こりゃ佐助にいっぱい食わされたか… いや、元々佐助は半蔵に近づき情報を盗み、捜査していた、って事だな」 ポリポリ
「うむ、大方そうであろうな」 コク
「おのれえッ! 猿飛佐助ええ..」 ググッ…
「あら珍しい、半蔵がこうも起こるところなんて初めて見たわ」 ササ
ガバッ! ザッ! ザッ!
服部半蔵は急に立ち上がり、隊長室の出口に向かって歩き出した。
「む、半蔵、どこへ行く?」 サッ
ザッ ザッ ピタ
「部下のしでかした事の後始末に… 才蔵、小太郎、八千代… すまんが天帝様を頼む!」 グッ!
「「「 うむ! (おうッ!)(わかったわ…) 」」」 コクン
ガチャ!
「半蔵ッ!」 サッ!
「むッ! なんだ才蔵…」 ザッ!
「あんまり派手にやるなよ!」 ニッ
「… 佐助次第だな…」 クルッ! シュバッ!
そう言って、宮廷内護衛部隊隊長の伊賀公安部四天王が1人、天位服部半蔵は一瞬で姿を消した。
「じゃあ八千代、ここはお前に任せた」 サッ!
「えッ!」 ササッ!
「俺は今から天帝様とアニス様の元へ行く! 小太郎、お前は事の詳細をお館様、徳川様と織田元帥閣下に報告してくれ」 バッ!
「ふふふ、いいわ任せて」 ニコ
「ええーッ! お館様はいいとして、織田様かああ… 俺、あの人苦手なんだよなあ」 う〜ん
「ははは、奇遇だな、俺も苦手だ、だから頼んだぜ」 サッ シュバッ!
「あッ! きったねええッ! 後で今日の晩飯を奢ってもらうからなッ!」 バッ シュバッ!
伊賀公安部四天王の霧隠才蔵、風磨小太郎も、それぞれが一瞬で消え、隊長室に如月八千代を残し出ていった。
ー避難用隠し通路ー
襲撃による破壊と火災によって、崩れるかもしれない謁見用大広間、昇竜の間から、緊急脱出用の隠し通路を、特殊公安部員の赤影と、天帝の卑弥呼、そしてアニスの3人が歩いていた。
カツ カツ カツ ザッ ザッ テクテク
「へええ…」 テクテク
「どうかしましたか? アニス様」 カツ カツ
「ん?、いや隠し通路って言うからもっと狭く薄暗いのかと思っていたけど、結構明るく広い通路だなっと思ってね」 ニコ テクテク
「そうですねえ、やはり狭くて暗いと逃げにくからじゃないでしょうか? 私もここを通るのは初めてでして、そこのところはよくわかりません」 ペコ カツ カツ
「ん、そうか、そうだね」 コクン テクテク
アニスの言うとうり、今3人が歩いている通路は、横幅180cm、高さ220cm、天井には等間隔に照明が点き、通路を先の方まで明るく照らしていた。
「そう言えば一つ、アニス様に聞いてもよろしいでしょうか?」 カツ カツ
「ん? なに?」 テクテク
「はい、聖女アリス様達のことです」 カツ カツ
「アリス達のこと? なにが聞きたいの?」 テクテク
「では、なぜ聖女アリス様達を元の世界にその場ですぐに帰してしまったのですか?」 カツ カツ
「ん?」 テクテク
「できれば今少、宮廷に滞在しお話を伺いたかったのですが…」 カツ カツ
「…時間がなかったんだ…」 テクテク
「時間がですか… それはいったい何の時間だったのでしょうか?」 カツ カツ
「この世界が消滅してしまうかも知れない時間だよ」 テクテク
「消滅ッ!」 カツ カツ ザッ!
「なッ!」 クルッ ザッ!
アニスの言葉に、先を歩いていた赤影と天帝卑弥呼は驚き足を止めた。
「ん、あの時… アリスたちを直ぐにでも元の世界に帰す必要があったんだ。 このヤマト皇国だけじゃない、アトランティア帝国、ゼルファ神帝国、ココル共和国、その他全ての国々、そう… この世界が一瞬で消滅してしまう時間が迫ってたんだ」 テクテク ピタ
「アニス様、それはどう言うことですか?」 サッ
「んっとねえ…… あ、これこれ」 ゴソゴソ チャラ…
アニスは純白の上着の内ポケットからある物を取り出した。それは聖女アリスの付き人、【ニベル・マクトウス】が持っていた、壊れかけた懐中時計、異世界磁針時計の『ワールドテイカー』だった。
「それは時計ですか?」 ファサ…
「ん、歩きながら話すよ」 テクテク
「はい」 カツ カツ
「………」 ザッ ザッ
3人は再び出口に向かって歩き出した。
「これはね、アリスの友達のニベルが持ってた時計なんだけど、厄介な機能が追加されていてね、このままだとこの世界が消滅してしまうほどの能力を持った魔道具になってたんだ」 テクテク
「厄介な機能ですか… 」 カツ カツ
「ん、この時計… コレはね、最初はアリスたちが操作できたんだけど、ある時に故障して、今はアリスたちの意思に関係なく作動し、アリスたちを他の異世界に強制転移する、制御不能の異世界磁針時計になってしまったんだ。 そして厄介なのってのが、世界から別の世界へ、異世界へ渡る時に今いた世界を消滅し、その世界を魔素や魔力に変換、それらを使って異世界転移をさせる時計なってしまったんだ」 チャラチャラ テクテク
「では、あのまま聖女アリス様たちがこの場、この世界に留まっていたら…」 カツ カツ
「ん、いつ作動してもおかしくない状態の異世界磁針時計… いずれこの世界はヤマト皇国共々、全て消えていただろうね」 テクテク
「では聖女アリス様たちはどうやって元の世界に? この世界は現在も存在してますし、その異世界磁針時計もここにあるという事は、いったいどう言うことですの?」 カツ カツ
「ん? ああ、本物の異世界磁針時計を使って、アリスたちを元の世界に返してあげたからだよ」 ニコ テクテク
「本物ですか?」 カツ カツ
「そう、さっきのは創造神ジオスが作ったレプリカ、本物はこれだよ」 ジャランッ! チッ チッ チッ!
アニスは立ち止まり、もう一つの黄金に輝く懐中時計、異世界磁針時計を取り出して見せた。
「なんと神々しい…」
「本物の異世界磁針時計は、世界を消滅などしない、使用者の魔力を使って作動するんだ。 まあ、魔力をゴッソリと持ってかれるけどね… アリスたちはコレを使って、私が元の世界に帰してあげたんだ」 ファサ…
「ではこちらの、レプリカの異世界磁針時計はもう…」 カツ カツ
「ん、持ち主のアリスたちがいなくなった時点で、もう動いていないよ」 チャラチャラ テクテク
「本物とレプリカですか… やはりアニス様にお会いできて良かった」 ニコ カツ カツ
「ん?」 テクテク
「先ほどもお話しいたしました、アニス様は我が国にとって重要な存在ですの」 ペコ カツ カツ
「重要? なにかな?」 テクテク
そこへ赤影から声がかかった。
「すみませんが天帝様、聖女アニス様、もう直ぐそこで、この通路の目的の場所に出ます。お話はその後で」 ザッ!
「うむ、そうであったな、アニス様こちらへ」 カツ カツ
「ん」 コクン テクテク
3人は、長い避難用隠し通路をようやく抜けた。そこは、皇居宮殿内の最奥、天帝の居住区の一つ、応接室だった。
「ここまでくればもう安全です」 サッ!
「うむ、赤影、ご苦労様でした」 サッ
「はッ! それでは私は主人の元へ報告に戻ります」 シュバッ! シュンッ!
天帝とアニスの2人を無事、皇居宮殿内の天帝居住区、応接室に送り届けた特別公安部員赤影は、自身の主人でもある織田信長元帥の元へと報告の為に消えて行った。
「さあ、アニス様、どうぞお掛けになって、今、美味しいお茶を用意させます」 チリイン
アニスは応接室の中央にあったテーブルの椅子に腰掛けた。 やがて、数人の給仕係が現れ、テーブルに様々な菓子と緑茶のセットを置き、天帝とアニスにお茶を入れた後、その場を去っていった。
「アニス様どうぞ、お召し上がりください」 サッ
カチャ コクン
「ん、緑色のお茶かあ、初めて飲んだよ」 ニコ
「お口に合いましたか?」 サッ
「ん、甘味があって美味しかったよ」 ニコ
「良かった、コレは玉露と言う緑茶です」 ニコ
「玉露ですか… それで、卑弥呼、ここへ私を招き入れた本当の理由を教えてください」 カチャ
「… はい、アニス様…」 カチャ
2人は湯呑みという茶器を置き、話を始めた…
・
・
・
ー昇竜の間向かい、別室控えの間ー
少し時は戻り、天帝卑弥呼とアニスが特殊公安部員の赤影の手引きにより、緊急避難用隠し通路を通っていた頃、謁見用大広間、昇竜の間の向かい、別室控えの間では、アラン達英雄3人と勇者の2人、公安上位隊員の隼と楓の7人が、服部半蔵配下の公安高位隊員、猿飛佐助と対峙していた。その時…
ドオオオオオンンッ! バタバタ ワーワーッ! ダダダッ! バアアンンッ!
「おい、なんだこの騒ぎは?」 バッ!
「通路の方ね… まさか、アニスちゃんじゃあないよね?」 サッ
「そうじゃない方に賭けましょう」 ヒラヒラ
控えの間の外から激しい爆発音と、数十人からなる争う声が漏れ聞こえていた。
「ククク、(宇喜田少将だな、という事は行動開始の合図か…)」 ニヤ
「猿飛様、この騒動はまさか…」 ザッ
「ああ、そのまさかだ、これは反乱なのだ、今頃は天帝卑弥呼もこの世にはおらんだろうッ! これからは月詠様の世となるのだッ!」 バッ!
「そんな… 天帝様がお亡くなりになった… 嘘よッ! 出鱈目を言わないでッ!」 バッ!
ドオオオオオンンッ! パラパラ…
「そんなに興奮するな楓、聞こえるであろう… いくら天帝といえど、あれだけの爆発の中、助かると思うか? 全く、お前ら下位の者達は理解が追いつかないようだ! あはははははは」 ザッ!
「うぐぐ… 猿飛佐助ええ… この裏切り者おーッ!」 ググッ!
「楓… 猿飛様ッ! いや、もうお前など仲間じゃねえッ! 猿飛ッ! 俺が… 俺たちが貴様を倒すッ!」 ギンッ!
ドゴオオンッ! グラグラ パラパラパラ…
「はんッ! 上位止まりの貴様たちが高位のこの俺に敵うと思っておるのか? しかも仲間だとお? 俺は鼻っからお前たちの事など仲間とも思っていないッ! ククク」 ジャキンッ!
「クッ! ま、まさか半蔵様もそうなのかッ⁉︎」 ザッ!
「あ〜ん? 半蔵だとお〜?… 服部半蔵のことかあ〜?」 ヒュンッ!
「そうよッ! あなたの上司ッ! 天位の服部半蔵様よッ!」 ササッ!
「あんな奴、この俺にとっては、単なる手駒、上司でもなんでもねえよ!」 ニヤ
「「 はああッ⁉︎ 」」 ババッ!
公安上位の隼と楓は驚きの声をあげた。今の今まで、猿飛佐助は服部半蔵の優秀な部下、右腕とおもっていたからだ。それが上司の服部半蔵を手駒と言い、自分たちの仲間ではないとまで言われた。 上下関係が厳しい公安部員として驚かないわけがなかった。
「ふん、お前ら公安共全員、この俺にまんまと騙されたってわけだッ! まあ1人、あのアニスとかいう女は俺のことを見て瞬時に見破っていたみたいだがな…」 むうう…
「アニスちゃんが…」 サッ!
「さて、俺もこれから忙しくなるんでな! お前達全員にはここで消えてもらうッ!」 ジリ…
「へええ、じゃあ俺から行こうか」 ザッ!
「待ってよアラン、さっき言ったでしょ? 私にやらせて?」 サッ!
「僕もやりたいね、どうする?」 ザッ!
「そうね、私もあの人だけは許せそうにないわ」 ググッ!
その場にいる英雄や勇者の全員が、猿飛佐助と戦おうと前に出た。しかし…
「みんな、悪いがこれは公安部員として俺たちが始末しなくちゃならないんだ、下がってくれると嬉しい」 ザッ!
「そうね、みんなお願い」 サッ!
公安上位隊員の隼と楓の2人が、他の5人に下がるよう頼んだ。
「そっか… そうだよね、じゃあ私たちは下がって見ているわ」 ササ
「うん、わかった… みんな、ここは彼らに任せて下がろうか?」 ザッ
「仕方ありませんね、了解です」 フリフリ
そうして、公安高位隊員、猿飛佐助の前には、同じ公安上位部員の隼と楓の2人が構え立っていた。
「楓、いくぞッ!」 バッ!
「ええ、いつでも…」 ササッ!
ジリ… ジリジリ…
「はんッ! お前たちが俺の相手だと? 武器も持たぬ下級隊員が… 」 ヒュンッ!
「「 武器ならあるぜッ!(りますッ!) 」」 スッ チャキンッ!
そう言って、隼と楓は、何処からともなく片刃の刀という剣を取り出した。
「ほう… 暗器か、さすが公安部隊隊員だな、よく持ち込めたものだ」 ニヤ
「絶対に許さないぞッ! 猿飛ッ!」 ググッ!
「ふん、強がりを… 《疾風ッ!》」 シュバッ! シュンッ!
「「 《縮地ッ!》 」」 シュババッ! シュシュンッ!
公安高位隊員の猿飛佐助が公安部隊の高速移動術、《疾風》を使い動いたと同時に、公安上位隊員の隼と楓も、アニス直伝の高速移動術、《縮地》を使い動いた。
シュバババッバーーッ! ザッ! シュバッ!
「へええ、あの猿飛って奴、なかなかいい動きをするじゃないか」 ジイイ…
「そう? 私にはそうは見えないけど…」 う〜ん
「ジェシカ、俺たちと彼らを一緒にしないほうがいい、最初に比べれば彼らは随分動けるようになってるよ」 ジイイ…
アラン達勇者の3人は、姿勢をそのままに、目だけで隼達の動きを追っていた。
「ねえサトシ、見えてる?」 サッ! ササッ!
「あ、ああ、なんとか、目で追うのがやっとだよ」 サッ ササッ!
勇者のサトシとスズカも、高速で動く隼達をなんとか捉えていた。
シュバッ! ダダダダダッ! ビュンッ!
「クッ! 投剣術ッ!《蓮斬ッ!》」 シュババッ!
「うッ! 隼ッ!」 シュババッ!
高速移動中の猿飛佐助は、隼と楓に対し棒状の短剣を複数投げつけてきた。それに対し、隼も応戦した。
「任せろッ! 投剣術ッ!《蓮斬ッ!》」 シュババッ!
ビュンビュンッ! ビュンッ! キンッ! キキキンッ! カッカッカッ!
「なにッ⁉︎ (隼の奴、いつの間に高位術を… いや、たまたまだッ! 奴が使えないという事はない術だしな)」 シュザッ! ビュンッ! ダダダダダッ!
「うおおおッ! そこだああッ! 猿飛ーッ!」 シュキンッ! ビュンッ!
「ククク、《陽炎ッ!》」 ブブンッ! ユラッ!
シュザアアッ! ビュンッ! フッ!
絶好の間合いに入った隼だったが、切りつけた先にいた猿飛佐助は、その姿がぶれ、霧のように消えて行った。
「ちいッ! 幻影術ッ! 高位隊員だけの事はあるッ!」 シュンッ! ダダダッ!
「どこを見ているのだ隼、よそ見はいかんぞおッ!」 シュバッ!
「なにッ!」 バッ!
「隼ッ! 避けてーーッ!」 サッ!
「ふッ! 散れッ!《幻影飛翔剣ッ!》」 ビュンッ! シュザアアーーッ!
「あッ! うわああーーッ!」 ザンッ! ドシュウウーーッ!
「「「「「 隼ーーッ! 」」」」」 ザザッ!
ダンッ! タタ… ヨロ… ヨロ…
「く、くそう…」 ポタポタ ドサッ!
「隼ッ! 隼ーーッ!」 タタタタ ザザアアーーッ!
「ううう……」 ググッ…
「大丈夫ッ隼ッ⁉︎ しっかりしてッ!」 バッ!
「楓、すまない… やっちまったぜ… ハアハア… また迷惑をかけちまう…」 ポタポタ…
「ばか… いいのよ…」 ギュウ…
楓は傷つき血を流し倒れた隼を見て戦意を失い、隼を守るように抱き寄せた。
シュザッ! スタ ザザッ!
「どうしたあ、威勢がいいのは最初だけか? ククク、隼、これでわかったであろう、所詮貴様ら上位の者どもなど、私にすれば下級止まりの底辺という存在だという事だ」 チャキッ!
「猿飛ッ! 私達をいつまでもそう思っていると、いつか天罰が下るわよッ!」 キッ!
「ふんッ! 楓、天罰だと? そんなもの俺には全く関係ないッ! 今の俺には月詠様を始め、神にも近いあの御方が付いておるのだッ! 恐れるものはなにもないッ!」 ニイイッ!
「ううう… こ、この裏切り者… め… ハアハア…」 ググッ… ポタポタ…
「猿飛ッ!」 グッ!
・
・
「マイロ、ジェシカ、俺が殺る、止めるなよ」 ググッ…
「止める? そんな事はしないわ、なんだったら私が殺ってやるわよッ!」 ワナワナ…
「ん? アレは… 動いてはダメだッ! 待つんだ2人ともッ!」 ザッ!
「「 うんッ⁉︎ 」」 ザザッ! バッ!
英雄の1人、マイロが、今にも猿飛佐助に飛びかかろうとしていたアランとジェシカの2人を止めた。
「あそこだッ!」 バッ!
「「 えッ⁉︎ 」」 クルッ! バッ!
マイロが指差した先は、公安高位隊員の猿飛佐助の右背後上方、そこに空間の歪みのようなものが見え出した。興奮状態の猿飛佐助は、床にいる隼と楓に気を取られ、その事に全く気付いていなかった。
「ククク、天罰というならば、これがお前達に与える俺からの天罰だあッ!」 シュキンッ!
「ううッ! 隼ッ! ごめんねッ!」 ギュウウッ! バッ!
「ハアハア… か、楓…」 ググッ! ポタポタ…
「さらばだッ! 隼ッ! 楓ッ!《幻影飛翔剣ーッ!》」 ヒュンッ! シュザアアーーッ!
ビュンッ! ガキイイインンンッ! シュバ…
「ううッ! えッ⁉︎」 バッ…
「……ハアハア……」 ポタポタ…
猿飛佐助の攻撃剣技が、公安上位隊員の隼と楓に襲い掛かろうとしたその時、猿飛佐助の剣技が途中で霧散、撃ち消されてしまった。
「なにいいッ⁉︎ なに奴ッ⁉︎ 誰だッ!」 バッ ザザッ! スチャッ
ヒュヒュヒュッ! シュバッ! スタ トン ヒュウウウウ…
「佐助、よくもこの俺を… 公安全てを謀ってくれたなッ!」 ギンッ!
「なッ! あ、ああッ…… は、ははは、半蔵様ーーッ!」 ザザーーッ!
猿飛佐助は、いきなり現れた上司である天位を持つ服部半蔵に驚き、叫び出した。
「佐助… お前だけは許さんッ!」 ザザッ! シュンッ!
「ひッ! ひいいいいッ! は、《疾風ーッ!》」 シュバッ!
突然現れた猿飛佐助の上司、宮廷内護衛隊の隊長でもあり、伊賀公安部服部隊隊長、天位の服部半蔵は、鋭い眼光を放ち、猿飛佐助を睨んだ瞬間、高速移動術でその姿を消した。猿飛佐助もぞれを見て、高速移動術でその姿を消した。
シュバババババーーーッ!
「くそッ! 服部半蔵など相手にできるかッ! 反乱も上手くいったであろうに、ここは公安部内でも《疾風》最速を誇るこの俺だ、逃げるが1番だぜッ!」 ヒュンッ! シュンッ! シュンッ!
伊賀公安部隊員、総勢約3000名、その中でも公安部が使用する高速移動術《疾風》の移動速度を、猿飛佐助は1、2を争うほどの使い手であった。その動きから、猿飛佐助は猿飛佐助という名を服部半蔵から貰い受けていた。 そう、猿飛佐助という名は本名ではなく、その実力と功績によって与えられた名であった。
公安部では、高位以上の者の名は初代、二代と後世に受け継がれていくものであった。
シュバババババーーッ! ヒュンッ! バッ! シュバッ!
「よしッ! 宮廷の外に出たッ! 早く月詠様たちと合流せねばッ!」 シュバッ!
高速移動術《疾風》を使い、広大な宮廷内から外に出た猿飛佐助は、一刻も早く月詠命達、反乱勢力と合流しようとしていた。が、その時…
シュバッ! ヒュンッ!
「逃げ足だけは早いがまだまだ遅いな、佐助」 キイインッ!
「なッ! 半蔵様ーッ!」 シュバッ! ザザザアアアーーッ!
猿飛佐助の行手にいきなり天位の服部半蔵が現れ、猿飛佐助は《疾風》を解除し立ち止まった。
「そ、そんな… この俺よりも速いだとッ⁉︎」 ググッ!
「佐助、お前にはここで、俺の記憶から消えてもらう…」 チャキインッ! ギランッ!
ゴゴゴゴゴッ! シュバアアアアーーッ!
「ひいッ!」 バッ!
猿飛佐助を見る服部半蔵のそれは、全くの無表情で、全身に魔力が溢れ始めた。
「半蔵流奥義、《影法師》」 シュパッ!
「あッ! わあああーーッ!」 ブンブン ビュンッ! シュンッ!
服部半蔵のその姿が何十人にもなった。それは天位の位を持つ者しか会得できない、分身術の一つであった。 猿飛佐助は、どれが本物の服部半蔵か見分けが付かず、無闇矢鱈に片刃の刀を振り回すだけだった。
「無駄だ!」 ヒュンッ!
ズバアアアアアアアアアアーーーーーッ!
「があああッ!」 ブシャアアアアーーッ! ドサッ! シュワアアーー……
猿飛佐助は左肩から袈裟がけに一刀両断され、その場で崩れ落ち地面に倒れていった。
シュバ シュウウウウウウ…
「佐助、その名はお前には分不相応だったようだ、返してもらうぞ」 チャキンッ! シュバッ! ヒュウウウウ…
猿飛佐助を一瞬で倒した服部半蔵は、そう言い残し、その場から消えていった。
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ドオオオオオンンッ! ワアアーーッ! キンッ! バンバンッ! ワーワーッ!
「うぬうッ! 天帝様ッ! アニス様ーーッ! ふんッ! じゃまだあああッ!」 ブンブンッ! シュバッ!
「ぎゃああッ!」 ドシャアアーッ! バタンッ!
ビュンッ! ビュンッ! ワーワーッ! ドオオンンッ! パラパラ…
宮廷外中庭では、井伊直弼中将と天帝近衛兵が、乱入してきた宇喜田少将の配下の反乱部隊と未だ交戦中であった。
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