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第270話 皇居宮殿、謁見の間と聖女アリス

ーヤマト皇国 帝都「トキオ」皇居宮廷内貴賓室ー


アニス達が連絡艇で皇居宮殿に到着する少し前、ここ、宮殿内貴賓室の一つに、義弟派が見つけ出した聖女アリス達一向が滞在していた。そこへ、天帝の義弟である月詠命の命を受け、宇喜田秀家少将が訪れていた。



「という事で、聖女アリス様方一行には、聖女を語る者共に奇跡の身技で撃退していただきたいのです」 サッ!


「わかりました。ここ迄の援助を鑑みて、その依頼を受けたまります」 サッ! ペコ


「おおッ! 受けてくださるかッ! では皆様方には支度と準備をお願いいたし、後ほどお迎えをいたします」 サッ!


ギイッ! パタン


宇喜田少将は、聖女アリスの承諾を受けた後、満面の笑みを浮かべ貴賓室から出ていった。



「ふう…」 ファサッ


宇喜田少将が出ていったのを確認した後、アリスはソファーに深く腰掛けため息をついた。貴賓室の中にはアリスの他に、懐中時計を首から下げ、タキシード姿の長身の男と、色眼鏡のサングラスに白いTシャツ、濃紺のジャケットにパンツスタイルの青年、西洋風フルプレートアーマーを着、ショートソードを持った双子の男の5人がいた。


「なあアリス、妙な依頼だが受けて良かったのか?」 サッ


ソファーに腰掛けたアリスの後ろから、懐中時計を首から下げたタキシード姿の長身の男が声をかけた。


「うん…」 コクン


「良いのか? 俺から見れば奴らをあんまり信用しない方がいい」 バッ


「でも… この世界に来て、右も左も分からない私たちに優しくしてくれたわ」 サッ


「それは奴らの懐柔策だッ! 親切心を装って恩を売り、俺たちを利用するつもりなんだ」 ババッ


「ええ、多分そうね…」 スッ


「だったらッ!」 ザッ


「おいおいニベル、アリスが決めた事だぜ、そこまでにしておけよ。 冷静になれ、俺たちはアリスについて行くしかないんだ! 元の世界に戻るために… そうだろ?」 ザッ


「しかしだなチェシャッ!」 バッ


「さあ、さっさと準備をしようぜ、俺たちはアリスを守る、元の世界に戻るまでなッ!」 ギンッ! ガチャガチャ


「「 そうだ、そのとうりッ! 」」 ババッ! チャカチャキ!


「チェシャ、ドルダムにドルティ、それでいいのか? ここの連中が依頼して来た内容を聞いただろ! おかしいと思わないか? 相手はただの少女か、もしくは悪魔、聖女を語る異形の者かもしれん、得体の知れない相手なんだぞ!」 サッ


「ニベル、どんな相手が来ても平気さ、俺たちは最強の力を得てるんだ」 ギュッ ギュッ!


「「 そうです、我々が負けることなどあり得ない 」」 ガチャッ!


「確かに我々には『不老不死』、『最強の攻守魔法』『剣聖剣技』『自動治癒』、そして誰にも敵わないアリスの特殊能力『願い事』、これらを持ってすればそうだろう。今まではな…」 グッ


「大丈夫さ… まあ、どの力も『アリスと共にいること』『アリスを守るためなら』という条件付きだけどな」 ニッ


「だがチェシャ、今までに訪れた異世界はそれで事を成してきたのは確かだ、しかし今回のこの異世界がそれで凌げるかどうか、我らの能力や力、魔法がどこまで通じるかなんてわからないのだぞ! 俺は慎重に動くべきだと言いたいのだ!」 ババッ!


「う… それは…」 サッ


「ごめんなさい、ニベル… でもね、私にはこれが… 今回が最後のチャンスかもしれないと思うの、この異世界の聖女と呼ばれる少女、その娘に会ってみたい… いえ会わなければならない、そしてその娘に賭けてみたいの…」 ニコ


「最後のチャンス? まさか、今度こそ本物が見つかったのか?」 ザッ!


「ん〜ん、解らないわ…」 フリフリ


「そうだよなあ、元の世界から弾かれ数千回、様々な異世界を行ったり来たり、何回も何回も、その中には俺らを元の世界に戻せそうな感じの奴もいたが全てダメ、偽物だった。 一向に元の世界に戻る算段が見つからねえからなあ…」 ササッ


「すまんなチェシャ、俺の異世界間磁針時計ワールドテイカーが壊れてなければすぐにでも戻れるんだが…」 ギュッ チャラ チッ チッ チッ ギギッ ギギッ チッ…


そう言って、ニベルという名のタキシードを着た長身の男は、自分の首から下がっていた懐中時計を握り、じっと文字盤を見つめた。


「二ベル、お前のせいではないさ… それに『あれは事故だった』だろう? だから気にすることはねえぜ」 ニッ!


「だがチェシャ、元の世界に戻れなくなって、時に換算すれば既に1000年は超えてしまった。 俺たちは『不老不死』のおかげで老いも死もしないが、もう元の世界には…」 ググッ…


「ニベル… アリスは諦めてないぜ、そうだろアリス」 ニコ


「うん… 私、みんなと帰りたい… 帰ってお父さんとお母さんに会いたい…」 ギュ…


「「 帰りましょうアリス、我らはいつか、こんな無限に異世界転移が続く状態から解放され、元の世界に戻るのです。それが出来る者と出会うために今は頑張りましょう 」」 ササッ!


「そうだな… とにかく、アリスと一緒にいれば俺たちは歳も取らない、死にもしない、ましてや無敵に近い力もある。 いつか元の世界の戻るまでな」 サッ


「うむ、すまなかったなアリス、ではその聖女様っていう少女に会ってみるかッ!」 ザッ チャラ チッ チッ


「うん… 一度その少女に会って確かめたいの… 私たちの探している人物かどうか」 コクン


「「 もし本物ならやっと終わるッ! 元の世界に戻れるんだ! 」」 ザザッ!


「ではアリス、その時まで待ちましょう」 サッ


「うん」 コクン


チッ チッ チッ ギギッ ギギッ チッ チッ…

          ・

          ・

          ・

そして時は戻り、アニス達は皇居宮殿に到着した。


ヒュウウウウンン プシュウウーーッ! ガコン!


ザッ ザッ ザッ テクテク バッ! バサバサ ファサファサ 


重巡航艦「ミョウコウ」の連絡艇から降りた、アニスと井伊直弼中将は、アニスの青みがかった銀髪や中将の髪、マントやスカートを靡かせて、皇居宮殿の入り口前、連絡艇発着ポートに立っていた。


「へええ… ここが皇居宮殿かあ… ん、でっかいッ!」  ファサッ!


「そうだ、この奥で、天帝様がお待ちになっておる!」 ザッ


「ん、じゃあ案内よろしくね、直弼」 ニコ


「うむ」 ザッ!


ザッ ザッ テクテク タタタ


井伊直弼中将を先頭に、アニスと英雄の3人、勇者が2人、伊賀公安八咫烏隊の2人、そして護衛の皇国軍兵の4人、合計13人が皇居宮殿入り口へと歩いていった。


ザッ ザッ ピタ!


「徳川家康様配下、井伊直弼中将であるッ! 天帝様の勅命を受け聖女アニス様をお連れしたッ! 開門ーッ!」 バサッ!


ピッ ガコオオオンンッ! ゴゴゴゴオオオーーッ! ゴオオンンッ!


ダダダダッ! ザザッ! ビシッ!


重圧な朱塗りの大門がゆっくりと開き、中から10数人の兵とこの門の責任者と思しき人物が出て来て左右に整列した。


ザザッ! サッ!


「聖女様並びに井伊中将閣下、お待ちしておりました」 バッ!


「うむ、渡辺か、出迎えご苦労ッ!」 サッ


「はッ!」 サッ


渡辺守綱少佐、この皇居宮殿入り口の門の責任者であり、宮殿内専属の皇宮護衛部隊である。


「ではまいろうか、アニス様」 ザッ!


「んッ!」 コクン テクテク


井伊直弼中将に続き、その後をアニスが歩いていった。


「じゃあ俺たちも行こうか」 ザッ!


「そうね、私、他国の宮殿に入るの初めて!」 わくわく!


「「 我々もです(わ) 」」 ザッ ザッ スタスタ


「俺たちも初めてだな楓」 サッ! ザッ ザッ!


「ええ、宮殿内に入れるのは一部の限られた者のみ、私も初めてよ」 サッ トコトコ


アニス達が朱塗りの大門に向かって歩き始め、その門をくぐろうとした時、アニス達の歩みを止める声がかかった。


「あ、いやしばしお待ちをッ!」 ババッ!


「うん? なんじゃ渡辺?」 ザッ! ピタ クルッ!


「はッ! 恐れながらここより先は天帝様が座す神聖なる居城、その宮殿内への立ち入る事を許されるのはこの門を任されたこの私、渡辺が認めた者のみ、まずは御連れになったこの御方、聖女様にはその証を示して頂きたい」 サッ


「待て渡辺ッ! 証を立てよだとッ⁉︎ 貴様ッ! わしを信用せねと申すかッ!」 バサッ!


「いえ、中将閣下の事は信用しております。しかしながら…」 ペコ チラ…


門の責任者である渡辺少佐は、井伊直弼中将に頭を下げながら、横目でアニスを見た。


「本当にこちらの御方が聖女様でありましょうか? それを確認させていただきたい」 サッ


「渡辺ッ! 貴様ッ! 無礼にも程があるぞッ!」 ググッ!


「はッ! しかしながら、先刻この宮殿に聖女様が既に到着、天帝様に謁見をされました。さすれば、この御方も本当に聖女様か否か、この宮殿の門を預かる身としてその証を確認しなくては通す事はなりません」 サッ


「ぬうう… 義弟、月詠様がお連れになった聖女様のことか…」 ググッ!


「井伊中将閣下、お言葉を返しますがこれは規則ですッ! 何人であろうと、この規則は順守していただきます」 ザッ!


「渡辺、月詠様がお連れした聖女様は証を示したのか? それを貴様は確認したのか?」 ザッ


「はい、宮殿内に入る前、此処この場所で、その証を示し確認しました。 それは見事な奇跡の身技でした、さすれば次は中将閣下がお連れした聖女様と言われるこの御方が証を示す番、ご了承下さい」 ササッ


ザザザッ! ジャキジャキンッ! ババッ! カチャ!


渡辺少佐の背後に、一緒に門から出て来た皇宮護衛隊員達が横並びに門を塞ぎ、装備のフォトンライフルを構えた。


「ぬうう…」 ジイイッ! グッ!


「此処は引きませぬぞ! 中将閣下ッ!」 ググッ!


門の責任者である渡辺少佐と井伊直弼中将は互いに睨み合っていた。


「確かに、俺たちの国でも一緒だよな、得体の知れない者が許可もなく、その国の王に簡単に会えるわけがないか」 サッ


「そうね、それが常識よね」 コクン


「僕も同意です。国としても危機管理がちゃんとできてる、当然の行動ですね」 ウンウン


「でも証かあ… アニスちゃんどうするんだろ?」 う〜ん?


「なあスズカ、僕たち勇者だけど、やっぱりダメかな?」 スッ


「ええ多分ね、私たちはこの国の勇者じゃないから…」 コクン


「私たちも無理ね」 フリフリ


「ああ、いくら公安部隊員でもコレばっかりはな…」 サッ ポリポリ


その場にいた全員が困惑している中、アニスは門の責任者である渡辺少佐に近づいていった。


「ん〜… 証かあ… 私の能力を見せれば良いのですか?」 ニコ サッ! テクテク ザッ!


「「「「「「「 えッ⁉︎ 」」」」」」」 ざわッ!


そう言って、アニスが渡辺少佐達、皇宮護衛部隊の前に出て来た。それを見て渡辺少佐や皇宮護衛部隊の兵だけでなく、アニスと共について来た英雄のアラン達や勇者のサトシやスズカ、公安上位隊員隼と楓の皆が同時に声を上げた。


「アニス様ッ! 御引きくださいッ!」 バッ!


「直弼、この人はね『何人であろうと』と言ったんだよ、それはね『天帝に呼ばれ、此処に来たのはいいけど、その能力を、天帝に会わせられるほどの力を見せないとこの奥には入れないぞ、天帝には会わせないぞ! その資格を、証を見せてみろ!』って言う事なんじゃないの? だったら、その資格… 証とやらを彼らに見せ、証明しなくちゃダメなんだ、そうだよね」 ニコ


「は?」 ザッ


井伊直弼中将はアニスが何を言っているのか一瞬わからなかった。


「さすが聖女様と言う肩書を持つ御方、ご理解が早い」 ササッ!


「べつに私は聖女と思ってはいないですよ、直弼が勝手にそう言ってるだけ」 スッ!


アニスは井伊直弼中将を指差した。


「なッ! アニス様ッ!」 バサッ!


「直弼、私は一言も、私が聖女だなんて言ってないよ」 ファサ…


「それでは貴女は、自ら『自分は聖女ではない、偽者だ』と言うのですね」 ザッ


「ん、偽者はともかく、私は聖女なんかじゃないです」 ニコ


「ではこの奥へ通すわけにはまいりませんなッ! ただ、無事に此処から帰すことも出来ませんが…」 グッ! チャキッ!


渡辺少佐は、腰にあるホルスターからフォトン銃を抜き、アニスに向け構えた。


「よさんかッ渡辺ッ! 貴様、自分が何をしているのか分かっておるのかッ!」 ザッ!


「中将閣下こそッ! この様な聖女様の名を語る偽者を連れて来て、天帝様に申し訳ないと思いませんかッ! 私は、この者が聖女様でないと語った以上、このままただで返すわけにはまいりません」 ササッ! グッ!


「渡辺ッ!」 バサッ!


「中将閣下には丁重に、他の者どもは全て捕らえよッ!」 サッ!


「「「「「 はッ! 」」」」」 ババッ! ダダダッ!


「馬鹿者共おッ! この御方は聖女アニス様だッ! 手を出すでないッ!」 バサッ! 


井伊直弼中将が叫んだが、皇宮護衛部隊はフォトンライフルを構えたまま駆け寄って来た。


「ううッ! どうしようッ!」 ググッ!


「アラン、私はやるわッ! アニスちゃんに手を出す奴は誰であれ敵よッ!」 キッ ザッ


「僕もですね」 二ッ!


「マイロッ! ジェシカッ! そうだな、アニスさんに指一本、触れさせるものかッ!」 バッ!


英雄の3人は駆け寄ってくる皇宮護衛官部隊に対し、アニスを守る為臨戦態勢に入った。


「スズカ、僕らはどうしようか?」 サッ


「とにかく様子を見ましょ、この国の勇者でない私たちが手を出したらまずいわ」 フリフリ


「そうか… そうだね」 コク


「俺たちもだな楓、天帝様の護衛部隊を敵にするわけにはいかないッ!」 ザッ


「うう… こんな時、隊長がいてくれたら何とかなるのに…」 グッ!


勇者と公安部隊上位隊員の4人は抵抗せず、事の成り行きに任せるしか無かった。


ザザザッ!


「おのれえッ! アニス様、我が息子に会わせることができず、申し訳ないッ!」 サッ!


「あのね直弼、私は会うつもりはないからね! さてと… ん、仕方がないですね… 」 サッ!


シュバッ! パアアンッ! パパパッ!


アニスは渡辺少佐と皇宮護衛部隊に向けて右腕を伸ばし、その手のひらを開くと、アニスの頭上に大きめの赤い魔法陣が三つ形成された。


「なッ 何だあれはーッ!」 ザッ!


「「「「「 うわわわあああーッ! 」」」」」 ザザザアアーッ! ピタッ!


その魔法陣を見た渡辺少佐と皇宮護衛部隊は驚き、動きを止めた。


「ん、奇跡の身技か何か知らないけど、君たちが見たがってた証と言う物はこれでいいのかな?」 ファサッ! ギュッ!


シュワアアーーッ! キン キン キン 


現れた三つの赤い魔法陣がゆっくりと回転をし始め、重圧な魔力を放ち光り始めた。


「なッ! コレはッ!」 バサッ!


「「「「「「 アニスちゃんッ!(さんッ!) 」」」」」」 ババッ!


「ん、大丈夫大丈夫、ちょっと証とやらを見せるだけだよ」 ニコ


アニスは後ろにいた井伊直弼中将であやアラン達に笑顔で振り向いた。


ヴヴヴヴウウウーーッ! ビリビリビリッ! バアアアアーーッ!


アニスの赤い魔法陣を正面にした渡辺少佐と皇宮護衛部隊には、その魔法陣から溢れ出る濃密な魔素と魔力風が直に触れ、身体全体に静電気を帯びている様な状態が襲っていた。


ビビッ ビリビリビリ パチッ!


「うぐぐ… 何と言う膨大な魔力… 月詠様が御連れになった聖女様の比ではないッ!」 グググッ!


ドサッ バタバタッ! 


「なッ⁉︎」 ババッ!


「わ、渡辺様ッ… か、体が! アアッ! ウガッ!」 ドサッ!


皇宮護衛部隊の隊員が次々とアニスの魔法陣を前にしただけで、気を失って倒れていった。


「バカなッ! 対魔力装備が効かないのかッ! うぐッ! こ、これはッ!」 ガクガク ビリビリ


「さあ、準備はできたよ、どれにする?」 ニコ


「は? な、なにをッ… ぎいいッ! ウガッ!」 ドスンッ! ザザ!


強大な魔素の重圧に耐えきれず、ついに渡辺少佐も膝を地に着いた。その時既に、他の皇宮護衛部隊隊員は皆、気を失い、地面に伏して倒れていた。


テクテク ザッ!


「キミが見たがったんだよ? さあ、君自身の身体にする? それともこの赤い門? 何だったらあの聳え立ってる山がいいかな?」 ニコ ファサファサ 


ブワアアアアーーッ! キュン キュン キュン ギュワアアアーーッ!


「アニス様ッ! 一体何をなさるおつもりですかッ!」 バサッ!


あまりにも強大な魔力を持った魔法陣が三つ、それを見た井伊直弼中将は慌ててアニスに駆け寄って尋ねた。


「ん、証を見せないとこの奥には行けないんだよ? だから、誰が見ても分かる様にしたんだ、だめ?」 うん?


「いやもう十分ですぞッ! そんな物騒な物は控えてくれぬかッ?」 ザッ


「ん〜でもねえ、この赤い門ぐらい消し飛ばした方が良くない?」 ね!


「うぐぐ… け、消し飛ばすですとッ!」 ググッ!


「ん、このくらい簡単だよ、で、その責任は全てキミ… あ、何だったらあのお城にしよう! それがいいッ! 一瞬で吹っ飛ばすなんて簡単だあッ!」  スッ!


「「「「「 いやいやいや それは駄目ですってーッ! 」」」」」 ババッ!


「ん?」 あら?


アニスの後ろでその様子を見ていた者、全員が同時に叫んだ。


シュバアアアアーーッ! ギュンギュンギュンギュンッ! ゴオオオオーーッ!


「うぐぐ… こ、これはまごう事なき奇跡の身技… しかも… こんなものッ! 撃たれもしたら、この国は壊滅するッ! 消えてしまうッ! こ、この御方も… 」 ググッ ザッ!


意識を失いそうな渡辺少佐は、必死に片膝をついた状態から体を起こし、体勢を変えてアニスに向けて叫んだ。


「うぐ… あ、貴女様の聖女である、奇跡の身技… た、確かに見届けましたッ! も、もも、申し訳ありませんーッ! どうかッ!どうかご容赦をッ! 私が悪うございましたッ! そのお怒りを納めくださいーッ!」 ザザッ! サッ


渡辺少佐はそう言って、アニスに対しその場で土下座をしながら謝罪をし頭を下げた。


「ん~… もう良いのですか?」 サッ!


「はいッ! 我が国の、だ、誰もが一見して分かる証でしたッ! 異論などございませんッ!」 ササッ!


「ん、ではこれは無しとしましょう」 シュンッ シュバッ!


パアアンーーッ! ヒュウウウウ…


アニスが手のひらを閉じて右腕を振ると、頭上にあった三つの赤い魔法陣は一瞬でその姿を消し、その場に静寂が戻って来た。


「はあはあはあ… あ、ありがとうございます! 聖女アニス様ッ!」 サッ!


「ん〜… 先ほども言いました、私は聖女ではありませんよ」 ニコ


「い、いいえッ! あの強大な奇跡ッ! 貴女様は見紛う事なき聖女様であらせられますッ!」 ササッ!


「はああ… もういいです、通してくれますか?」 サッ! ファサッ…


「は、はいッ! 勿論でございますッ!」 バッ!


「ん、では行こうか直弼」 サッ


「いいのかアニス様、こ奴らはアニス様にとんだ無礼を働いたのだぞ?」 ズイ!


「ん、いいですよ… 直弼、彼らを許してやってください、コレが彼らの仕事、役目なんでしょから」 テクテク


「聖女アニス様ッ!」 ササッ!


「うむ… 渡辺、アニス様からの嘆願だ、今回は不問とする。良いか、次はないと思えッ!」 バサッ!


「はッ! この渡辺、このご恩は忘れません、天帝様と共にアニス様にも忠誠を誓いますッ!」 ババッ!


「では参ろうか、アニス様」 ザッ ザッ


「んッ!」 コクン テクテク


こうして、アニス達は朱色の門をくぐり、皇居宮殿内へと入っていった。 入ってすぐに、1人の文官が前に現れた。


カツカツカツ ザッ! ササッ!


「此処より先は、高位文官のこの私、【石田三成】が案内いたします」 ペコ


「三成か、天帝様の所まで頼んだぞ」 バサッ!


「はッ! ではこちらへ」 サッ! カツカツカツ


宮殿内に薄暗い通路を、アニス達は石田三成の案内の元進んで行った。



ー皇居宮殿内、管理棟ー


そこは、皇居宮殿の全ての管理調整、監視警備を一手に賄う建物だった。皇居宮殿内の全ての空調、警備体制をする場所で、そこにある大型の監視モニターにアニス達の動向が映っていた。


ビーーッ! ピッ ピッ ピッ


『石田三成様、井伊直弼中将閣下と聖女アニス様を伴い、謁見用大広間、昇竜の間に案内を始めました』 ピッ


『皇居内空調24度、湿度40% 異常なし』 ピッ


「ふむ、天帝様にご報告をッ! もう御一方の聖女様がご到着、まもなく謁見大広間、昇竜の間にご到着するとッ!」 バッ!


「はッ!」 ピッ ピコピコ ピッ!


「さて、聖女様が2人も… 一体どう言うことなんだ…」 むうう…


皇居宮殿の全ての管理を任せられている【黒田長政】大佐は、通路を歩いているアニスの姿を見て困惑していた。



ー皇居宮殿内、謁見用大広間、昇竜の間ー


カツカツカツ ピタッ!


「こちらでございます聖女様、中で天帝様と謁見をしていただきます」 サッ!


「わあああ、大きな扉だね」 ペチペチ


昇竜の間の扉は縦に3m、横に2.6mの銅板で作られた観音開きの扉であった。アニスはその扉を軽く叩いていた。


「天帝様はもう居られるのか?」 サッ!


「いえ、まだお見えになっていません。中には義弟様で荒らせられます月詠様とその護衛数人が居られます」 サッ


「ふむ、月詠様か… 」 むうう…


井伊直弼中将は、盟友である本田忠勝中将の言葉を思い出した。


『ちときな臭くはないか…』


「むうう、まさかな…」 ググッ!


「それでは、謁見には聖女アニス様と中将閣下のみとさせていただきます。他の方々はこちらの控えの間で御寛ぎ下さい」 ササッ!


「ん、私と直弼だけ?」 サッ


「はッ 天帝様は大いなる存在、此度は聖女様と井伊直弼中将閣下のみとなっております。ご了承ください」 サッ


「むうう、仕方がなかろう、アニス様、何かあればこのわしが、貴女を守ろう」 ニッ!


「ん、じゃあ他のみんなは後でね」 ニコ


「そうね、しょうがないわね」 サッ


「まあ、この国の王様だもんな、それとその王様の弟だろ? 仕方がない、おとなしく待ってます、アニスさん」 サッ


「では我々も後でね、アニスちゃん」 フリフリ


「ん!」 コクン フリフリ


ギイイッ! パタン


アニスと井伊直弼中将以外の者は、石田三成の案内の元、控えに間へと入っていった。


「さあ、入るぞアニス様」 バサッ!


「ん、いつでも」 ニコ


ピッ ピピ ピコッ!


ガコオオオンン ゴゴゴゴ!


銅板で出来た大扉はゆっくりと開いていった。


ゴオオオンンッ! ピタッ! ヒュウウウウ…


昇竜の間の中はものすごく広く、まるで外にいるかの様な広々とした部屋に、数十本の巨大な柱が天井高く聳えていた。


「おお、広いねえ」 キョロキョロ


「さあ、この奥だ、こちらへ」 サッ! ザッ ザッ ザッ!


「んッ!」 コクン テクテク テクテク


2人は中に入り、真正面奥にある玉座へと向かっていった。やがて、雛壇になった玉座が見え、その近くの一つ下段の位置に1人、椅子に座ってこちらを見ていた人物が声をかけて来た。


「や、やあ井伊中将、ひ、久しぶりだねええ」 ははは…


「はッ、月詠様に至っては、お元気そうでなによりです」 サッ!


「はは… そ、それで、そこにいるのが聖女様なのかい?」 ビクビク


「左様です月詠様」 サッ!


「ねえ直弼、あれ誰?」 スッ!


「アニス様ッ! あの御方こそ天帝様の弟君、月読命様ですッ!」 ササッ!


「弟ねえ… 」 ジイイ…


「な、なにかな? せ、聖女様」 はは…


「嘘つき」 スッ!


「は?」 ザッ


「え?」 ビク


「君は大嘘つきの卑怯者だッ!」 サッ!


「アニス様ッ! なにを… え?」 バサッ


「だ、誰が大嘘つきの卑怯者だッ! き、聞きましたか聖女様ッ! こ、この者が余を侮辱したのだッ! この様な者が聖女であるわけがないッ! 罰をッ! 聖女様の奇跡で懲らしめてくださいッ!」 サッ!


トコトコ ザッ ザッ コツコツ ザザッ!


月読命が叫ぶと、アニス達の左から5人の人影が現れた。 金髪に青いエプロンドレスを着た少女を先頭に、タキシード姿の背の高い男と色眼鏡をかけ、白いTシャツに濃紺のジャケットとパンツスタイルの男、それと重武装のフルプレートの鎧を着た2人、月読命がこの皇居宮殿に連れて来た聖女アリス達一向だった。


トコトコトコ スタ サッ!


「私はアリス、この国では聖女と呼ばれている者です。此処の場での無礼は私が許しません!(この娘が聖女アニスね… ふふ、さあ貴女のその力、能力を私に見せて…)」 ニコ


ザザッ! ザッ!

 

アリスの前に先程の4人の男達が横並びに前に出た。


「アリス、此処は俺たちがやろう、アリスの能力は今は使わないでほしい」 ニッ!


「ニベル、分かりました、でも気を付けてくださいね」 ニコ


「ああ、分かってるさ、特にあの少女、聖女アニスだったか? ありゃあ半端ないぜ!」 ジイイ


「誰から行く? 俺は少女をいじめるのは勘弁だぜ」 にひひ…


「「 チェシャ、我らが行こう、あの者たちの力、よく見ていてほしい 」」 ザザッ! チャキン!


そう言って、重武装のブルプレートを着た2人が前に出て来た。


「アニス様、此処はわしが行こう」 バサッ!


「直弼待って」 サッ


「アニス様、なぜ止める? あの者たちなどわし1人で十分だぞ? なぜ、え?」 ピタッ!


「お願い、あの人たちものすごく強いよ、だから私に任せて」 グッ!


「ふむ… いいでしょう、ですがその代わりに」 ニコオッ!


「ん? 何だ直弼?」 はて?


「ことが済み次第、我が息子に会ってもらいますぞ!」 ニコニコ


「誰が会うかああッ! このバカちんッ!」 プク


「「 ククク ふふふ ああっははははははーッ! 」」 ケタケタ


2人はその場で大笑いをしていた。


「何だあアイツら、気でも狂ったのか?」 ヒラヒラ


「ふん、おお方、俺たちの強さを見抜いて、気でも触れたのであろう」 ササッ!


「「 2人とも気を抜くでないぞ! あの大男はともかく、少女の方、聖女を名乗るあの者の存在力は尋常ではないぞ 」」 ジャキン!


「ああ、分かった分かった、ドルダム、ドルディ、お前たちこそ気を抜くなよ」 ササッ!


「「 承知ッ! 」」 ザザッ ザザッ!


重武装のブルプレートを着た双子の兄弟、ドルダムとドルディがアニスの前までやって来た。


「行けええッ! やってしまえええッ! 偽物の聖女など消してしまえええッ!」 わはははッ!


「ぬうッ! あれが月詠様の正体か… 全くの別人ではないか…」 ググッ


無我夢中で叫ぶ月読命の姿を見て、井伊直弼中将は驚いていた。


「ん、君たちだけ? 他の人たちはいいの?」 サッ!


「「 ふむ、その自信が仇となろうぞッ! 」」 ザザッ!


「ん、そうだね、私はアニス、よろしくね」 ニコ


「我はドルダム」 チャキッ!


「我はドルディ」 チャキッ!


「「 行くぞッ! アニスッ!《《 縮地ッ! 》》 」」 シュババッ!


「ん、《縮地》」 シュバッ! 


「なッ!アニス様ッ!」 バサッ!


「ほう… やるねえ、あの聖女様は、《縮地》が使えるんだ」 へええ…


「予想以上の使い手であったか…」 むうう…


「凄い、凄いわ、(でもこの程度ではまだまだ、さあ、もっと見せて!)」 ギュウウッ!


天帝と謁見する昇竜の間で、いきなりアニスとアリスの配下、ドルダムとドルディ兄弟との高速移動術による戦いが始まってしまった。


ビュンビュンッ! シュババッ! ギンギンッ! バシイッ! ドオオンッ! バアアーーッ!


「うおおおッ! アニス様ーッ!」 ググッ ババッ! バサバサ!


爆風や轟音が響き吹き荒れ、崩れて倒れる柱を見て、井伊直弼中将は思わず叫んでしまった。


ドオオオオオンンッ! バキバキバキバキ ダアアアンンッ!


シュンッ! シュババッ! ビュンビュンッ! ヒュンッ! バアアアアーーッ!


アニス達の高速移動音が広大な大広間、昇竜の間に鳴り響いていた。





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