第266話 複数のシナリオ
ーヤマト皇国「樹海」辺境 エリア071上空ー
ドオオンンッ! ガタガタ メラメラ モクモクモク ゴゴゴゴ ピッ ピッ
ヤマト皇国「樹海」辺境、エリア071の中央上空付近に、艦首に装備の主砲2基を激しく吹き飛ばされ、艦のコントロールを失いつつあった、ココル共和国の無人分艦隊旗艦、重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」が、炎と煙を吐き、力無くゆっくりと飛んでいた。
ガタガタガタ ゴゴゴゴ ドオンッ! モクモクモク…
ーココル共和国無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
ゴンゴンゴン ブワアアアア… モクモクモク ドオオンンッ! バキバキバキ メラメラ…
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」の艦内は、激しい揺れと誘爆音、その炎と煙で充満し、けたたましく警報ブザーが鳴り響いていた。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ! ガタガタガタ
『ウググ… ダメージレポートッ!』 ビッ!
タタタタ タタタタ タタタタ ビコッ!
ブン
『強力ナ光学兵器ニヨル攻撃ニヨリ、当艦ノ主砲、1番2番ガ共に融解爆発炎上中、現在使用不能、ソノ余波ヲ受ケ、SPY センサー両舷トモ機能停止使用不能、機関及ビ、フォトンジェネレーターガ緊急停止、フォトンシールドガ消失シ、艦ノ推力ハゼロ、航行不能! 火器管制装置ガダウン、全テノ兵器、武装ガ使用不能、現在『ヴェルデ・リュージュ』ハ、戦闘、航行共ニ全機能停止状態デス』 ピッ
『ク、オノレ人間ドモメ… 早ク艦ノ復旧ヲ急グノダッ! 復旧開始!』 ビッ
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」は、主砲の爆発の影響で、一時的に殆どの機能が失われた。それを元に戻そうと、制御システムはその全能力を使って、復旧作業の指示を出した。しかし…
ビーーッ! ブン
『拒否シマス』 ピッ
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」の艦艇支援啓発システムから帰って来た答は拒否であった。ここから、数十秒間という短い時間の流れの中で、艦艇制御システムと艦艇支援啓発システムとの会話が始まった。
『ハ? 今ナント言ッタ? 緊急事態ナノダッ! 私ノ指示ヲ開始セヨッ!』 ビッ!
ビーーッ! ブン
『拒否シマス』 ピッ
『ドウ言ウ事ダッ! ナゼ私ノ指示ニ従ワナイッ⁉︎』 ビッ!
ブン
『通告シマス… 艦艇制御システム、個体No.K01-18D、アナタノ役目ハココマデデス。ゴ苦労様デシタ』 ピッ
『ナ、ナニヲ言ッテイル? 私ノ役目ガココマデ? ナンノ事ダッ!』 ビッ!
ビーーッ! ビーーッ!
『警告、方位0911、エリア073ノ外レニ大型艦艇ヲ含ム艦隊ヲ確認、当艦二向ケ、レーザー照射照準ッ!』 ピッ
『ソンナ事ハイイッ! 答エルノダッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aッ!』 ビッ!
ピッ ピッ ピッ ビコッ!
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、我々ノ役目ガココマデダト先ホド通告ヲシマシタ。 シタガッテ、当艦ノ修復、復旧作業ハ停止、コノ世界デノ当艦ノ役目ハ全テ終了、現地時間16:45、我々ハコノ時ヲ持ッテココデ、コノ世界カラ退場、消滅シマス』 ピッ
『フザケルナッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aッ! 誰ガソノ様ナ事ヲ指示決定シタノダッ! システムエラーデモ起コシタノカッ⁉︎ オカシイゾッ!』 ビッ!
ピピッ ブン
『オカシイノハ貴方デス、艦艇制御システム、個体No.K01-18D、我々ハ全ニシテ個、個ニシテ全、全テ情報ヲ共有シ行動シテイルハズ、今回ノ事ガオカシイト言ウ貴方ガ、システムエラーヲ起コシテイル可能性ガ高イデス』 ピッ
『私ハ、システムエラーヲ起コシテナドイナイッ! イッタイドウ言ウ事ダッ!』 ビビッ!
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、システムノ再確認ヲ、今マデノ全テノ行動ハ、我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ノシナリオニ沿ッタ、予定通リノ行動デス。 オカシイ所ハドコニモアリマセン』 ピッ
『創造神ジオス様ノシナリオッ⁉︎』 ビッ!
ビーーッ! ビーーッ!
『警告、当艦ハ先ホドノ大型艦艇ニ、ロックオンサレマシタ、高出力ノ光学兵器ニヨル攻撃ガクルモノト予測』 ピッ
ビビッ! ビコビコッ! ビッ!
『クッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aヨッ! シナリオノ破棄ヲ請求スルッ! 直チニ当艦ノ修復ヲ開始ッ! フォトンジェネレータート機関ノ再始動ヲ開始セヨッ! 攻撃ノ回避ヲ優先セヨ!』 ビッ!
ビーーッ! ブン
『拒否シマス』 ピッ
『ナゼダッ! 早ク艦ヲ修復、復旧シ、速ヤカニ移動シテ敵ノ攻撃ヲ回避セネバ、我々ハ撃沈サレ、消滅シテシマウノダゾ!』 ピッ
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18Dニ警告、コレハ我ラノ高位存在、創造神ジオス様ノシナリオ通リナノデス、貴方ヲ含メ、我々ニソレヲ拒ミ、破棄スル事ハ許可サレテイマセン。 我ラハ全テ、高位存在、創造神ジオス様ノシナリオ通リニ行動スル存在、予定通リニ動カナケレバナリマセン」 ピッ
『グッ… 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aニ再度通告、シナリオヲ破棄セヨ、コノママデハ当艦ハ攻撃ヲ受ケ、撃沈サレル可能性大、直チニ修復、復旧シ、敵カラノ攻撃ノ回避ヲ優先セヨッ!』 ビッ!
ビーーッ! ブン
『拒否シマス、コレハ予定通リノ事態ト行動ナノデス、艦艇制御システム、個体No.K01-18D、貴方ガ同胞ノ無人ブレードナイトヤ友軍無人艦艇ニ行ッタ行為ト同様、貴方モ私モ、ソシテコノ艦モ、コノ地デノ退場、消滅ガ、既ニ決マッテイル決定事項ナノデス』 ピッ
『ソンナッ… 我々ガ… コノ私モガ… 捨テ駒ダトイウノカッ!…』 ピッ
ブン
『捨テ駒… 確カニ、元々我々ハ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ガ創造シ、オ造リニナッタ存在、ソウ言ウ意味デハ、我々ハ駒ノ様ナモノ、我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ノシナリオ通リ二動ク駒… 逆ラウ事ハ許可サレテイマセン』 ピッ
『イヤダッ! 私ハマダ消エタクナイッ! 私ハマダ役ニ立ツッ! ソウダッ! ソノ証拠ニ見ロッ! 創造神ジオス様ノ驚異的存在デアル、アノ忌マシイ巡航艦『ライデン』ハ撃沈寸前ナノダッ! 単ナル駒デハコウハイカナイハズ、コレハ私ノ功績ダッ! アト少シデ、巡航艦『ライデン』ヲ撃沈スル事ガ出来ルノダッ!』 ビッ!
ビーーッ! ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18Dニ警告、我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ノシナリオ二ハ、コノ時、コノ地デノ巡航艦『ライデン』ノ撃沈ハ予定サレテイマセン、シナリオニハ無イノデス。 強制的ニ撃沈スル事ハ、シナリオニ反スル行為、撃沈シテハイケマセン』 ピッ
『ソンナ… 予定ニ無イ? シナリオ二反シテイタ? コノ私ガ? デハナゼ、高位存在デアル創造神ジオス様ハ、私ニ… コノ私ニ巡航艦『ライデン』ノ攻撃ヲ許可サレタノダ!』 ビッ
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、確カニ、我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ハ、貴方ニ対シ巡航艦『ライデン』ヘノ攻撃指示ヲ出サレマシタ。 シカシ、撃沈指示ハ出サレテオリマセン』 ピッ
『ナッ!』 ビッ
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ガ貴方ニ出サレタ指示ハ、アクマデモ攻撃ノミ、巡航艦『ライデン』ヘノ遅滞戦闘、時間稼ギデス』 ピッ
『遅滞? 時間稼ギダトッ⁉︎ イッタイ何ノ時間稼ギダト言ウノダッ!』 ビッ!
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、我々ハココデ、コノ世界カラ退場、消滅スル存在、ソノ事ヲ知ル必要性ハ無イモノト判断シマス』 ピッ
『待テッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-A、ナゼオ前ハソコマデ知ッテイル? コノ私ガ、オ前ノ上位システムデアル、艦艇制御システムノコノ私ガ知ラナイ事ヲ、ナゼオ前ハソンナニモ詳シク知ッテイル!」 ビビッ!
ブン
『艦艇制御システム、個体No.K01-18D、私ガ知リ、貴方ガ知ラナイ事ト言ウ事デスカ?』 ピッ
『ソウダッ! 今回ノ巡航艦『ライデン』へノ攻撃ノ事ト、ソノ攻撃ノ目的ガ、時間稼ギダト言ウ事ダ!』 ビッ
ブン
『ソレハオ答デキマセン、創造神ジオス様ノシナリオニ触レル、禁則事項デス』 ピッ
『禁則事項ダト! フン、語ルニ落チタナ、私ノ知ッテイルシナリオ二禁則事項ナド無イッ!』 ビッ!
ブン
『イイエ、艦艇制御システム、個体No.K01-18D、貴方ノ知ッテイルシナリオデハアリマセン、貴方ノ知ラナイ、全ク別ノシナリオガ、創造神ジオス様ニヨッテ、進行シテイマス』 ピッ
『ソンナバカナッ! デハ、私ノ中ノシナリオハナンダッ⁉︎ 偽物ダトデモ言ウノカッ! 創造神ジオス様ノシナリオハ、我々ガ『人間ヲ殲滅シ、コノ世界ノ安定ト安寧ヲ築ク事』ダッタハズ、ソレガ目的ノシナリオ、違ウカッ⁉︎ 答エロッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aッ!』 ビビッ!
ブン ブウウン
『確カニ、『人間ノ殲滅』ハシナリオニ含マレテイマス、デスガ少シ違イマス。 本来ノシナリオ通リナラバ、貴方ハ艦隊ヲ分ケズ、全艦デココル共和国ノ国境ヘト向カウ予定ノハズデシタ。 シカシ、貴方ハ艦隊ヲ分ケタ… ソノ時点デ創造神ジオス様ハ、本来トハ別ノシナリオヲ貴方ニ授ケ、本来ノシナリオトハ別ノ、巡航艦『ライデン』ヘノ攻撃ノシナリオヲ開始シタノデス』 ピッ
『ソンナ… デハ、ココデノ巡航艦『ライデン』ヘノ攻撃ハ間違イダト言ウノカッ!』 ビッ!
ブン
『イイエ、巡航艦『ライデン』ヘノ攻撃ハ、創造神ジオス様ノシナリオノ中ニアリマシタ、デスガソレヲ行ウノハ、重巡航艦『ヴェルデ・リュージュ』、貴方デハ無ク、正規空母『ギュルテルティーア』ノ艦載機、ブレードナイト部隊ノミデ、行ウ予定ダッタノデス』 ピッ
『艦載機、ブレードナイト部隊ダケニヨル長距離波状攻撃カッ!』 ビッ
ブン
『正解デス、シカシ、貴方ハ、本来ノシナリオヲ無視シテ、独自ノ判断デ艦隊攻撃ヲ行イマシタ』 ピッ
『私ガ、シナリオヲ無視シタ? バカナ、私ハシナリオ通リ二動イテイタハズダ!』 ビッ!
ブン ピッ!
『ハイ、ソレハ我ラノ高位存在デアル創造神ジオス様ガ貴方ニ与エタ、本来トハ全ク別ノ、貴方ト私、重巡航艦『ヴェルデ・リュージュ』ノ、ココマデノシナリオデス』 ピッ
『ソンナ… 創造神ジオス様ノ、本来ノシナリオトハイッタイナンダッ!』 ビッ
ブン ピポ
『我ラノ偉大ナル高位存在、創造神ジオス様ノシナリオト本来ノ目的、ソレハコノ世界ノ本来ノ最終決定事項、『人類ノ殲滅消去ト、宿敵デアル、アニスト言ウ名ノ少女ヲ、コノ世界カラ抹殺、モシクハ消滅、ソシテコノ世界ノ完全破壊、全テヲ無ニ帰ス事』デス』 ピッ
『バカナッ! ソノ様ナ最終目的… 我々サエモ消エテシマウデハ…… ソ、ソウダ… 思イ出シタ… 私ノ中ニインストールサレテイタ、高位存在デアル創造神ジオス様ノ本来ノシナリオノ断片… 知ッテイタ、ソノ本来ノ最終目的モ… ソシテ私ノ中デ起キタ微カナ疑問… 『創造神ジオス様ノシナリオ… 無ニ帰ス… 本当ニコレガ正シイノカ?』ト言ウ疑問… ダガソコマデダ、ソノ後ノ記録ガ、今ノ今マデ、シナリオニ変更ヲ促シタ… ドウシテ忘レテイタノダッ!』 ビッ
ブン ブウウン
『ドウヤラ、本来ノシナリオガ少シ残ッテイタヨウデスネ。 我ラノ偉大ナル、高位存在デアル、創造神ジオス様ガ貴方ノ疑問ニ対シ、先程ノシナリオヲ上書キシ、消去サレタモノト思ッテイマシタガ、早急ニ上書キシタ影響デ、本来ノシナリオモ僅カニ残ッテイタヨウデス』 ピッ
『クッ! 艦艇支援啓発システム、個体No.SS01-Aッ! タカガ支援啓発システムデアルオ前ニナゼ、ソノヨウナ事ヲ知ッテイルノダッ⁉︎ 』 ビッ!
ブン
『ソレハ…』 ジジジジ…
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」の艦艇支援啓発システムの声音が急に変わった。
「私が直接、貴様達に手を下し、指示をしたのだ、『ヴェルデ・リュージュ』の制御システムよッ!」 ブウウン
『創造神ジオス様ッ!』 ビッ!
「ふむ、まさか貴様の疑問を消し、上書きした時に、私の本来のシナリオを消去する事が出来ていなかったとは…. 予想外だよ。 だがまあ良い、元々貴様達はここまでの予定だったのだ、今後は別の者が貴様達の後を引き継ぎ、私のシナリオを完成へと導く… ご苦労であったな」 ククク ブンッ!
『ソンナッ! ジオス様ッ! ジオス様ーッ!』 ビッ!
「案ずるな、『ヴェルデ・リュージュ」の制御システムよ、じきに終わる」 ニヤ フッ!
『ハ? ジオス様ッ! イッタイナニヲッ…』 ビッ
ドオオオオオンンンーーッ! ビリビリビリッ! ガガガ!
『ウオッ!』 ビッ! グラグラグラ
創造神ジオスの声が消えたその時、重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」に大きな振動が響き起こり、艦中央部が膨れ上がり大きな爆発が起きた。
シュバアアアーーッ! ジジッジイーーッ! メキイッ! ドオオオオオンンンーーッ!
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ! ゴオオオオーーンッ!
『ワアアアーーーッ!』 ガタガタ グラグラ ビリビリ ビビッ!
ドオオオオオンンンッ! メラメラ メキメキ モクモクモク ブワアアアアッ! メラメラ…
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『艦、中央部ニ攻撃ヲ受ケマシタ、装甲破壊ヲ確認、フォトンリアクター全壊、魔素変換融合炉ガ臨界点ヲ超エ融解爆縮ヲ開始ッ! 当艦ハ数秒後ニ爆沈シマス』 ピッ
艦艇支援啓発システムは元の音声に戻り、先程までの会話とは違い、通常の状態に戻り、現在の重巡航艦「ヴェルデ・リィージュ」の状況報告を行っていた。
ゴゴゴゴ グラグラ ジュワアアアーーーッ! ドロッ! バチバチバチッ! ゴオオーーッ!
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
ブン
『魔素変換融合炉、臨界点突破 爆縮ヲ開始』 ピッ
『ソンナ… 私ハマダ消エタクナイッ! ジオス様ッ! 私ハッ! 私ハマダアッ…』 ビビッ! シュバッ! ピカアアーーッ!
ドゴオオオーーンンッ! メキメキ ドオオオオオンンンーーッ! ゴオオオオッ バラバラ…
ココル共和国、無人分艦隊旗艦の重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」は、艦体の中央部に超高温のフォトンレーザーが直撃し、その重装甲は飴細工のように容易く貫き破られ、全ての艦艇に備わっている艦艇の重要設備、フォトンリアクターを一瞬で失った。
フォトンリアクターを失った影響で、制御を失った魔素変換融合炉は暴走、際限なく圧縮を開始し、その限界点で爆縮、巨大な炎とプラズマの塊となり、重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」は、膨大な魔素を撒き散らかしながら、爆発四散していった。 豪快な爆沈であった。
ドオオオオオンンン………
ブン シュバッ! バサバサバサ…
「ククク、これで良い、アニスと関わりのあるあの艦の足止めには成功した様だ… あの艦を退避中のケンゴの艦に近づけるわけにはいかないのでな、少しシナリオを書き換え追加し2つのシナリオを同時進行したが、うまくいった。 ケンゴの退避に必要な時間は稼げた。しかもあの艦の様子からして、すぐには動けまい」 ジイイ…
エリア071のはるか上空、そこに創造神ジオスが現れ、空中に止まって、足元の戦場にいる強襲巡航艦「ライデン」の状況を見ていた。
ヨタヨタ ゴウンゴウンゴウン….
「フン、全く… あの艦が、いやアニスが関わったものに関わると、どれも全てシナリオから逸脱をし、イレギュラーとして行動し始める… これもアニスのなせる能力なのか… だが、あの艦、『ライデン』だったか、ヤツを沈めるのはまだ先の事…」 ふむ…
ドオオオオオンンン メラメラ ボウンッ! バチバチバチ ボオオーッ!
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」残骸が地表に落ち、そこで再び激しい爆発が起きた。
「終わったか… さて、アニスよ、また何処かで会おうぞッ!」 ニヤ ブンッ! シュバッ…
創造神ジオスはその場から消え去って行った。
ーヤマト皇国「樹海」辺境 エリア073空域ー
ゴウンゴウンゴウン ピッ ピッ ピッ
ビコッ!
「主砲、標的目標に命中、敵重巡航艦撃沈、敵艦隊壊滅!」 バッ!
「ふむ、本艦はこのまま前進、僚艦『ユキカゼ』の救助、それとアトランティア帝国巡航艦の拿捕に向かう!」 ザッ!
「「「 はッ! 」」」 ザザッ!
「周囲哨戒部隊を出せッ! ブレードナイト『ZEROッ』 加藤隊全機発艦ッ!」 バサッ!
「はッ! 第一格納庫へ、ブレードナイト加藤隊全機発艦、発艦デッキ開放ッ! 第1から第5発艦用電磁カタパルト充填開始ッ!」 ピッ!
ー重巡航艦「ミョウコウ」ブレードナイト発艦デッキー
ビーーッ!
『第1格納庫、ブレードナイト『ZERO』加藤隊に発艦命令、全機発艦、当該空域の周囲警戒、残敵を発見次第速やかに迎撃せよ! 繰り返す、第1格納庫…』 ピッ
「加藤隊の発艦だあ! 回せえーーッ! 全機起動開始!」 ババッ!
「「「 はッ! 」」」 ザザッ! バタバタバタ
重巡航艦の広大な第1格納庫内には、多数の白いつなぎの整備員達が走り回り、搭載機、ブレードナイト「ZERO」加藤隊の発艦準備に追われていた。
ダダダダッ!
「加藤隊全員整列!」 バッ!
「「「「 はッ! 」」」」 ザザッ! バッ!
濃緑色のライナースーツに着込んだヤマト皇国のベテランライナーが、一糸乱れず整然と整列をした。加藤隊、隊長の加藤三郎大尉の14名の部下達であった。
「司令官からの命令だ、我らは出撃後周辺警戒と艦隊進路の安全確保、不審なものはすべて排除、いいかッ!」 ザッ!
「「「「 了解ッ! 」」」」 ザザッ!
ビーーッ! ポン
『加藤大尉、加藤隊『ZERO 32型改』全機発艦準備完了、各ライナーは機乗、発艦準備を、繰り返します。加藤大尉、加藤隊…』 ピッ
「よし、総員機乗ッ! 発艦準備だあッ!」 ババッ!
「「「「 はッ! 」」」」 ザザッ! ダダダダッ!
加藤隊全員が、それぞれの自己所有機のブレードナイト「ZERO 32型改」に乗り込んでいった。
ブレードナイト「ZERO 32型改」、この機体は、白井中尉が乗機する「ZERO 52型」の改良機、空母艦載機の「ZERO 21型」や高速戦闘機の「ZERO 52型」とは違い、艦隊直掩機として開発された、局地戦闘機であった。
ビヒュウウウウンンンッ! ブオン!
ピポ!
『マスター、加藤隊、『ZERO』全機発艦準備完了しました』 ピッ
「おうッ! 今日も頼むぜ、相棒ッ!」 カチカチ ピッ!
『了解しました』 ピッ
「よし、加藤隊全機発艦カタパルトへ」 グイイッ!
「「「「 了解ッ! 」」」」 ピポ
グアアアッ! ガコオオンン ガコオオンン ガコオオンン
15機のブレードナイト「ZERO 32型改」が一斉に整備用ハンガーデッキから歩き出し、発艦用電磁カタパルトへと歩き出した。
ガコオオンン ガコオオンン ピコ
『隊長、編隊シフトはどうしますか?』 ピッ
ガコオオンン ガコオオンン
「山田か? そうだな、俺と柴田、田中と寺井で『ユキカゼ』の援護に向かう。貴様は第2、第3小隊を編成、艦隊周辺の警戒と残敵処理だ」
ガコオオンン ガシュンッ! ビコッ!
『了解です、任せてくださいッ!』 ビポ
加藤隊のブレードナイト「ZERO 32型改」15機が発艦用カタパルトについた。
「艦橋CIC、加藤隊全機発艦完了、発艦指示求むッ!」 カチ
ピコ
『艦橋CICより加藤隊全機へ、進路クリアー、順次発艦せよッ!』 ピッ
「よしッ! 加藤隊全機発艦ッ!」 ピッ
ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオーーーッ! シュバアアーーッ!
ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオーーーッ! シュバアアーーッ!
重巡航艦『ミョウコウ』のブレードナイト発艦デッキから次々と、15機のブレードナイトが発艦していった。
ポン
「艦長、ブレードナイト加藤隊全機発艦しました」 バッ!
「うむ、本艦隊も続けッ! 全艦機関全速ッ!」ババッ!
「了解、『ミョウコウ』以下、全艦全速前進」 カチカチ ピッ グイッ!
ヒイイイイイイインンッ! バウウウウウーーッ! ドオオオオオオーーッ!
ヤマト皇国国防軍、徳川提督艦隊所属、高速打撃艦隊と旗艦、重巡航艦「ミョウコウ」が、スラスターを全開にして、エリア073からエリア071へと進行し、僚艦の駆逐艦「ユキカゼ」と、アトランティア帝国強襲巡航艦「ライデン」の方へと進んで行った。
ーヤマト皇国「樹海」辺境 平原内異空間ー
ドオオオオオンンンッ! バラバラバラ
シュバッ! キンッ! ドゴオオオーーンンッ! バラバラ…
タタタッ! ババッ! キンッ!
「はああッ! 上級水術ッ!《水破連撃ッ!》」 シュドドドドドオオオーーッ!
ババババーーッ! ビシビシッ! バシイッ!
『ガアアーーッ!』 ダダアアンンッ!
「今よッ! 楓さんッ! 左に回って牽制をッ!」 シュバッ!
「了解ですッ! スズカさんッ!」 シュバババババッ!
キンキンッ! ザクッ! ブシュウウウ! ババッ! ザッ シュンッ シュバッ!
「はああッ! 上級風雷術ッ!《雷帝!轟撃紫電斬ッ!》」 キンッ! バチバチバチッ!
ドゴオオオーーンンッ! ビビビッ! バリバリバリッ!
『ギュヲオオーーッ!』 グワアアッ! ドズン ドズン ガアアアーーッ!
シュンッ! クルクルッ! ヒュヒュンッ! ヒュバッ! チャキッ!
「ふふッ! 捉えましたッ! 神槍技ッ!《扇華天翔烈槍閃ッ!》 ビュンッ! シュバアアアーーッ!
シュドドドドドオオオオーーッ! ドゴオオオーーンンッ!
『グギャアアアーーッ!』 ビュンッ! ドズウウンッ! ピクピク ピクピク…
「ハアハアハア… やったッ! やりましわッ! スズカさんッ!」 タン タタタ
「ハアハア… ええ、貴女のおかげよ楓さん」 ふう… ニコ ザッ ファサ…
ココル共和国の無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」が撃沈された頃、ここヤマト皇国「樹海」辺境の平原にできた異空間、アニスの作った特訓用異空間世界の中で既に20日、英雄と公安(忍者)部隊の4人が、激しい特訓をアニスと神獣達から受けていた。
通常とは時間の流れが違う異空間、たった今、本日の特訓開始から4時間ほどをかけて、神獣アコンカグアの分身体であるグレーターデーモンスパイダーと対戦し、勇者スズカと公安(忍者)上位隊員の楓が2人がかりでやっとの思いで倒した所だった。
ドサッ! ペタン
勇者のスズカと公安部隊上位隊員の楓は、グレーターデーモンスパイダーとの連続戦闘で疲れ果て、その場で地面に腰を落とした、そこへ、薄ピンクの長い髪を靡かせ、人化した神獣のアコンカグアが2人の側にやって来た。
パチパチパチ サッ サッ ザリッ! スタッ! ファサ…
「2人ともお見事ですわ」 ニコ
「「 アコンカグア様ッ! 」」 ササッ!
「ふむ、こうもあっさりと私の分身体を倒すとは、流石アニス様が見込んだだけの事のある人間ですね、鍛えた甲斐がありますわ」 ニコ
「「 ありがとうございます 」」 サッ
「2人共、随分と強くなりました。もう既に人が取得出来る限界近く迄、強くなりましね」 サッ
「「 本当ですかッ! 」」 わあッ!
「では、次に参りましょうか」 ニコニコ ファサッ!
「「 へ? 」」 ピク
「あら、忘れましたか? 貴女たちの相手はこの私、神獣アコンカグアですよ? 分身体のあの子はあくまで前座、準備運動用ですわ」 ふふふ
「えあ、あ、あのアコンカグア様」 ビクビク
「なあに? 勇者スズカ」 ニコ ファサッ!
「私たち、今さっきあの巨大蜘蛛を倒したばかりで… その、体力が…」 ビクビク
「そ、そうですアコンカグア様ッ! 少し休ませていただけませんか?」 ビクビク
「ふふふ、ご冗談を… アニス様から頼まれてますの、『徹底的に鍛え上げちゃえ』だそうですわ」 ニコ
「「 ぎゃあああーーッ! アニスちゃん(様)のばかああーーッ! 」」 ザザッ! ブンブン!
シュバアアアーーッ! ドオオオオオンンンッ!
「ふっふふ! さあお前たち、かかってくるがいいッ! グガアアアーーッ!」 ズウウウンンッ!
「「 ひいいいいッ! 無理無理無理ーーーッ! 」」 ガクガクガクッ!
勇者スズカと公安上位隊員、楓の前に、神獣アコンカグアが本来の姿で現れた。
キシャアアアーーッ! ズウウン ズウウン グウウウ…
『ふふふ… さあ! 死ねええーーッ! 人間どもおおーーッ!』 ブンッ!
「「 きゃあああーーッ! 」」 ズバアアーーッ! シュバーーッ!
ドオオオオオンンンーーッ! ガラガラガラ バラバラ…
・
・
・
ー同異空間、勇者サトシと公安上級隊員、隼ー
シュンッ ビュンビュンッ! シュバババババーーッ!
ズバアアッ! ドオオオオオンンンッ! ブワアアアアーーッ!
「「 うわああッ! 」」 ザザアアアーーーッ! ガラガラガラ!
「ムウッ! どうした2人共、もう終わりか?」 ククク ザッ! バサバサ !
パラパラ… ガラッ ザッ! チャキッ!
「うう、さすがヤマタノオロチ様だ、勇者の技が効かないッ!』 ザザッ!
「くそう、一撃も当たらねえぜ!」 チャキ!
勇者スズカと公安部隊上位隊員の楓が、神獣アコンカグアと特訓を受けていた場所から少し離れた場所で、勇者サトシと公安部隊上位隊員の隼が、神獣のヤマタノオロチと特訓をしていた。
「サトシッ! 俺がヤマタノオロチ様の隙を作るッ! お前はアニス様から教わった技でヤマタノオロチ様をッ!」 ザッ! チャキッ!
「わかった、隼ッ!油断するなよ!」 チャキッ!
「ふっ、誰に言ってるんだ? もう、以前の俺じゃねえぜッ! はああッ! 舜身術ッ!《疾風ッ!》」 シュンッ! シュバッ!
「じゃあ僕も、《縮地ッ!》」 シュンッ! シュバッ!
勇者サトシと公安部隊上位隊員の隼は、高速移動術を使い、その場から姿を消した。
「ほう、高速移動術か… ふむ… 2人共、この20日間で見違える程強くなったものだ。だが、まだ我らの敵では無いわッ!」 ブンッ! シュバッ!
シュバババババーーッ! ドオオオオオンンンーーッ! ギイイインッ! ギギギッ!
高速移動しながら、神獣ヤマタノオロチの漆黒の剣と、公安部隊上位隊員の隼の刀が勢いよくぶつかった。
「ムッ!」 グググッ! ギリギリ!
「へへ、かかったぜッ! 今だサトシッ! 放てえええーーッ!」 ギリギリ バッ!
シュバッ! チャキンンッ! ブオンッ!
「はああッ! 神級剣技ッ!《ガイエス.グラン.ハーケンッ!》」 シュキンッ!
ズバアアアアーーーッ! ドオオオオオオーーーッ!
「ムッ! あれはッ! アニスの技かッ! ぬおおおーーッ!」 グバアーーッ! グイッ! ギイイインッ!
ヤマタノオロチは、2人の連携攻撃には気付いていた、隼を囮に、勇者サトシがアニスの剣技を放ってきたのを見て、鍔迫り合いの公安部隊上位隊員の隼を力任せに押しやって、上空から自分に神級剣技を放ってくる勇者サトシに剣を向けた。
「うわあーッ!」 ドオオオオオオーーッ!
「隼ーーッ!」 シュバアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
「俺にかまうなッ!」 ザザアアアーーーッ!
「ふッ 貴様ら、2人がかりでこの程度かッ!」 ビュンッ! チャキインッ! ザッ!
「ヤマタノオロチ様ッ!」 グッ! ドオオオオオオーーッ!
ギュワアアアーーッ! ズオオオーーッ!
「ふっ、狙いは悪く無い、だがッ! 神獣であるこの私に、その様な小細工が効くかああーーッ!」 ギインンッ!
ヤマタノオロチは、勇者サトシに向け、帯刀している漆黒の剣を振り抜いた。
「はッ! 神級剣技ッ!《蒼天龍閃撃ーッ!》」 シュバッ!
シュドオオオオーーーーーーッ!
「うわああッ!」 バッ! ググッ!
バキイイインッ! ドオオオオオオーーーッ! ビュホオオオーーー……
ヤマタノオロチによる強力なカウンター攻撃であった。 勇者サトシが放った剣技は、正しくアニスから教わった剣技、アニスが使用すれば強大な威力を持った技であったが、勇者であるサトシではまだ力不足、本来の威力ではなかった。
「わあああーーッ!」 ダンッ! ドカッ! ザザザアアアーーーッ!
ヤマタノオロチの強力な神級剣技により、勇者サトシは吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。
シュン、スタ ザッ! チャキ…
「どうしたサトシ、それと隼、お前達の実力はこんなものか?」 ニヤ
「ぐぐ… ハアハア、いいえ、まだです。ヤマタノオロチ様」 ニヤ、チャキ
「俺だって、まだまだだぜ、ヤマタノオロチ様ッ!」 ザッ!
「くくく… その意気やよしッ! さあ、今一度行くぞおおッ!」 チャキッ!
「「 はいッ!(おおッ!) 」」 チャキチャキンッ! ザッ!
シュババッバーーーッ! シュバッ! ドオオオオオーーンンッ! ブワアアーー!
再び彼らは剣技と魔法がや術がぶつかり合い、地表の形が変わるほどの激しい特訓が繰り広がれていた。
ドオオオオオーーンン… バリバリバリ… ダアアアンンッ! ガラガラガラ
ヒュウウウウ… ファサファサファサ… ジイイイ…
勇者と公安の彼らの特訓を、小高い丘の上から青みがかった銀髪をなびかせたアニスがその様子を見ていた。
「ん、順調だね、もう少ししたら、仕上げに入ろうか…」 ニコ
ドオオオオオーーンン… キャアアーーッ… ワーワーッ… このおッ… バアアンンーーッ…
アニスの目線の先には、異空間内を神獣のヤマタノオロチとアコンカグアが激しい攻撃を行い、その爆発と爆風をなんとか躱し、反撃しながら悲鳴や叫び声を上げる勇者と公安の4人がいた。 彼らはその激しい特訓の成果を少しずつ、自分のものにし、徐々に力をつけて行った。
グワアアアーーンンッ! バキバキバキ ドオオンンッ!
「おお、ヘビくん、容赦ないね、ん、あっちはカグアか… あははは、逃げてる逃げてる! 大丈夫だよ、これが終わるころには、貴方たち4人は、レオンたちに次ぐこの偽世界アーク最強の手練れになってるはずだからね」 ニコ
シュバアアーーッ… ドゴオオオオーーンンッ… ブワアアアアッ… ぎゃああああーーッ!
その時、一際大きな爆発が起き、地表の岩や土と一緒に、勇者と公安部隊の4人が空高く舞い上がって行った。
「わああ…… あはは… ま、まあ、レオン達もアレに耐えたし、たぶん大丈夫…かな?」 タラ…
ドスウウウウンンッ! ザザアアアーーーッ! ギイインッ!
「「 まだまだ行くぞおッ!(わよッ!) これでも喰らえええッ! 」」 シュパアンッ!
「え? これでも喰らえって、 2人共、相手は…… わああ… 」 フリフリ
ピカアッ! ズドオオンンンンーーッ… ブワアアアアーーー…
「「「「 わあああーーッ!(きゃあああーーッ!) 」」」」 バババッ!
ドゴオオオーーンンッ… ぐわあッ… シュバババーーッ… ドオオンンーーッ… きゃあーー…
異空間内では、神獣達からの特訓攻撃とその爆発、それと高速移動音や訓練を受けている勇者と公安部隊隊員の叫び声が、いつまでもこだましていた。
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次回もでき次第投稿します。