第265話 不死鳥、駆逐艦「ユキカゼ」
ーヤマト皇国「樹海」辺境 エリア071 戦場ー
シュゴオオオオオーー! ゴウンゴウンゴウン ボウボウ モクモク ゴゴゴゴ ピッ ピッ
ヤマト皇国「樹海」辺境を、ココル共和国の自立思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の体当たり攻撃を受けた強襲巡航艦「ライデン」が炎と煙を吐き航行していた。その「ライデン」を今、ココル共和国分艦隊が各艦の主砲の狙いを定め、一斉射撃の準備を終えていた。
ーココル共和国無人分艦隊旗艦 重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
『全艦照準ヨシ、砲撃準備完了』 ピッ
『ククク… 沈メエエッ!『ライデンッ!』 攻撃開始ーーッ!』 ビッ!
ヒイイイイイイインンッ! ドドッドオオオオーーッ! ドンドンドンッ! バババーーッ!
ココル共和国の無人分艦隊3隻から、被弾して、戦闘能力が著しく下がったアトランティア帝国、大陸艦隊所属の強襲巡航艦「ライデン」に向けて、多数のフォトン主砲弾が放たれた。
シュバババババーーッ! ザザアアアーーーッ!
ピッ ピッ ピッ ビコッ! ピッ ピッ ピッ ビコッ!
『コノ一斉射デ終ダッ! 『ライデン』』 ピッ!
旗艦「ヴェルデ・リュージュ」のメイン情報モニターに、艦隊が放った主砲弾が、標的の強襲巡航艦「ライデン」に向かって飛んでいく様子が映し出されているのを確認して、旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムは強襲巡航艦「ライデン」の撃沈を確信していた。
ー強襲巡航艦「ライデン」ー
ビーーッ! ビーーッ! ガタガタ ドンッ! グラグラ…
「艦長ッ! 敵艦隊が発砲ッ! 着弾まで15秒ッ!」 ババッ!
「「「 わああッ! 直撃だあーーッ! 」」」 ガタタッ! ザワッ!
「艦長ッ!」 バッ!
「まだだッ! 機関最大面舵転舵ッ! コース0133 マーク29ダイブッ! ピッチ角40ッ! 全力回避ッ!急げッ!」 ザッ ババッ!
「アイサーッ! 機関最大ッ! 面舵転舵、コース0133 マーク29ダイブッ! ピッチ角40ッ!」 グイイッ! ピッ タンタン ピコッ!
シュゴオオオオオーーッ! ググッグ!
「操舵手ッ! 艦回転ッ! 左舷艦底部ッ! 右舷上甲板スラスターッ! 全基全力噴射ーッ!」 ババッ!
「アイサーッ! 左舷艦底部側1番から15番ッ 右舷上甲板2番から14番スラスター全力噴射ーッ!」 カチカチ ピッ タンタン ピコッ!
カシュンカシュンカシュンッ! ババババウウウウウーーーッ! ドオオオオオオーーッ!
ゴオオオオーーッ! グググッ!
「総員ッ! 艦の姿勢に対処ッ! しがみつけえーーッ!」 バッ!
バウウウウウーーッ! シュバアアアーーッ! ググッ グワアアッ! ゴゴゴゴッ!
「「「 わあああーーッ! 」」」 ガタガタガタッ! ゴオオオオーーッ!
強襲巡航艦「ライデン」は、グレイ艦長の指示で敵艦隊からの一斉砲撃に対して回避行動に出た。それは、この世界の艦艇では、ただの一隻も取った事の無い艦艇による空間機動航行だった。
強襲巡航艦「ライデン」は艦首を下に下げ、速度を上げながら徐々に艦体がロールし始め、まるで踊っているかの様にゆっくりと右回転し始めた。
ギュワアアアアアアアアーーーッ! ガタガタガタ ミシミシ グラグラ!
「艦ッ! 急速降下ッ! 回転開始ーーッ!」 ググッ!
ビーーッ! ガタガタ ゴゴゴゴッ! グワアアッ!
「砲撃来ますッ!」 バッ! ピーッ ピーッ ピーッ!
ガタガタ ゴゴゴゴ ゴオオオオーーッ!
「ぐッ! 神よ…」 ググッ!
ヒュルヒュルヒュルヒュルッ! シュババッバッ! ババッ! ドドッドドオオオオーーッ! ビュンビュン ビュンッ! シュバッ!
絶妙なタイミングだった。 ココル共和国分艦隊からの一斉砲撃は確かに強襲巡航艦「ライデン」を捉え、飛んできた。そのまま航行していれば確実に全弾が命中し、強襲巡航艦「ライデン」は一瞬で吹き飛び、轟沈していただろう… しかしグレイ艦長の指示の艦体運動によってそれは免れた。だが降り注ぐ砲弾全てを躱す事は出来なかった。
シュンシュンッ! ドガアアンンッ! ビュンッ! ドオオンッ! ベキイッ! ダアアンンッ!
「「「 うわああーーッ! 」」」 ガクガクガクンッ! バチバチバチッ!
「ぐううッ! 被害報告!」 ガシッ!
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ! ガガガッ! グラグラ ビリビリッ!
「左舷前部甲板VLS発射管に被弾ッ! 火災発生ッ! 右舷SPYセンサー大破全壊ッ! 2番副砲消失ッ!」 ピッ
重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」の主砲、40.3cmの対艦徹甲フォトン弾を躱す事はできたが、軽巡航艦の15.5cm駆逐艦の12.7cm速射主砲弾の数発が、強襲巡航艦「ライデン」の要所要所に着弾し、少なからず被害を出していた。
普段なら、軽巡や駆逐艦程度の主砲など、容易く跳ね除ける「ライデン」だが、フォトンフィールドを消失した今の状態では、重装甲は破れないが、装甲の薄い装備や設備には被弾破壊されていった。
シュンシュン ビュンッ! ドオオオオオオーーー… ブワアアアアッ! ゴウンゴウンゴウン…
「敵、全砲弾通過ッ!」 ピコッ!
ガタガタ ゴゴゴゴ ドオオオオオオーーッ!
「よしッ! 反転上昇ッ! 回転回避航行解除ッ! 高度をとる、上昇せよッ! 機関最大ッ! 第1戦闘速度でこの空域から離脱するッ! 艦態勢、姿勢もどせーッ!」 バッ!
「アイサーッ! 各スラスター逆噴射反転ッ! 全力噴射ッ! 回転回避行動停止ッ! 第1戦闘速度ッ! 艦態勢、姿勢戻しますッ! 80°反転静止」 グイッ! タンタン カチカチ ピコ !
カシュンッ! バババッ! バウウウウウーーッ! グググッ! シュゴオオオオオーー!
ココル共和国無人分艦隊からの一斉射撃砲弾が過ぎ去った後、強襲巡航艦「ライデン」は、艦体を回転しながら降下回避行動から通常航行に戻し、高度をとり戦闘空域から離脱するために上昇していった。 この時の強襲巡航艦「ライデン」の幸運は、多数の被弾があっても、弾薬の欠乏が誘爆を防ぎ、火災のみで済んだ事だった。
ガクガク ガガガ シュゴオオオオオーーッ! ゴウンゴウン モクモクモク バアアーーッ!
ー重巡航艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
ビーーッ! ビコビコッ!
『巡航艦『ライデン』多数ノ被弾ヲ確認、サレド撃沈ニ至ラズ、現在、巡航艦『ライデン』ハ高度ヲトル為、急速ニ上昇中』 ピッ
『バカナッ! アリナイッ! 計算デハ確実ニ撃沈デキタハズ! 理解不能ッ! ナンダアノ動キハッ⁉︎』 ビビビ ビイッ!
ココル共和国分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムは、精密な演算処理と自身の未来予測で、強襲巡航艦「ライデン」の位置を割り出し、全艦の主砲を持って強襲巡航艦「ライデン」の撃沈を確実にしたものと自負していた。
しかし、各艦が全主砲を撃ち、その主砲弾が強襲巡航艦「ライデン」にとどめを刺そうとしたその瞬間、強襲巡航艦「ライデン」は、旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムの予測を超える動きを見せ、撃沈を免れて煙を吐きながらも上昇、航行している。 その事に理解ができなかった。
ピッ
『巡航艦『ライデン』、高度ヲトリツツ戦場離脱ノ模様、方位0318、高度1280、コース0733、マーク18 ブロー、速度60ノット、離脱開始』 ピッ
『ヌウウ… 巡航艦『ライデン』、ヤツハ不死身カ? コレ程ノ攻撃ヲ受ケテモ、マダ動ク、誘爆モシナイ… 正シク不沈艦… モウ、何ヲシテモヤツヲ… 巡航艦『ライデン』ヲ沈メル事ガ 出来ナイノカッ!』 ビッビ! ピー!
旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムは、強襲巡航艦「ライデン」に恐怖した。 制御システムが恐怖する、これは本来あり得ない現象ではあった。 しかし、創造神ジオスが手がけた彼ら無人機、無人艦の制御システムの中で、いくつかの個体が何らかの状況下に置かれた場合をきっかけに、独自の進化をし始めていた。
旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムもそのいくつかの個体のひとつで、それはまるで人間の様な判断や行動、怒り、驚き、恐怖や畏怖といった症状が現れ始めていた。 この症状は、ココル共和国、完全自動無人艦隊が、ここヤマト皇国領に近づき、侵入してからだったが、その事に彼らは全く気が付いていなかった。
その旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の無人の艦橋内にある大型情報パネルには、被弾し炎と煙を吐きながら、高速で上昇し、戦場離脱をし始めた強襲巡航艦「ライデン」の姿が映っていた。
ピコ
『状況カラ見テ、巡航艦『ライデン』ノ各種センサーハ作動不能状態、フォトンフィールドハ消失、搭載兵器モ大半ガ使用不能状態』 ピッ
ピッ ピッ ピッ ピコ ピコ!
『フム、単ナル杞憂デアッタカ、全艦ッ! 第2射、砲撃用意ッ! 既ニ巡航艦『ライデン』ハ反撃能力ヲ失ッテイル、アノ様子デハ次ノ攻撃ヲ回避スルノモ難シイハズダ。 次コソ確実ニ撃沈スルノダッ!』 ピピ ビコッ!
『『 了解 』』 ピピッ!
シュゴゴゴゴーーッ! ゴウンゴウンゴウン ウィイイイン カシュンッ!
ココル共和国無人分艦隊、各艦艇の主砲が、急上昇し戦場離脱をしていく強襲巡航艦「ライデン」に再度照準を合わせた。
ピピピピピ ピッ ビコッ! ビコビコッ!
『全艦、第2射、砲撃準備ヨシ、目標、撤退退避中ノ巡航艦『ライデン』 照準固定ッ!』 ピピッ!
『ククク… コレデ最後ダ、巡航艦『ライデンッ!』 ヨクココマデ耐エタッ!』 ピッ
ー強襲巡航艦「ライデン」ー
シュゴオオオオオーーッ! ガタガタ モクモクモク ゴゴゴゴ!
ビーーッ!
「艦長ッ! 敵艦隊から再びレーザー照射ッ! 本艦をロックオン! 第2波砲撃が来ますッ!」 バッ!
「艦長ッ!」 ザッ
「むうう… 残念だが、もう『ライデン』に次の攻撃を躱す余力がない… もはやここまでか…」 ググッ…
「「「 ……… 」」」 ピッ ピッ ピッ ビコッ!
強襲巡航艦「ライデン」は、グレイ艦長の言う通り、既に攻撃、防御能力双方が失われ、ただ離脱しかできない状態だった。各種センサーもダメージを受け、フォトンフィールドもない、まる裸同然の、敵にとっていい的であった。
艦長のグレイ中佐は、艦長席の通信機のスイッチを入れ、語り出した。
カチ ピッ!
『ライデン搭乗員の諸君、艦長のグレイだ。 皆、本日までよく着いて来てくれた、この場を借りて礼をいう、ありがとう』 サッ
「艦長…」 サッ
『『ライデン』は既に戦闘力を失い、また、防御力も失った。 そして今、敵艦隊から再び砲撃を受ける事になる! コレは艦長命令だッ! 総員離艦ッ! 直ちに脱出せよ! 以上だッ!』 カチ
グレイ中佐が通信を終えると、強襲巡航艦「ライデン」の艦内に自動警報アナウンスが流れた。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『艦長命令、総員離艦が発令されました。『ライデン』乗組員は所定の脱出ポットにて離艦してください。 繰り返します、艦長……』 ピポピポピポ…
「艦長」 サッ
「何をしている、副長、君が皆を先導してくれ」 サッ!
「艦長は如何されるのですか?」 サッ
「私はいい、ここに残り、『ライデン』と共に逝く!」 フリフリ サッ
「では、私もお供します」 ニコ ザッ
「何を言う、貴様には国に許嫁がいるではないか、さっさと降りろ!」 バッ
「いいえ、敵を前にして逃げてはそれこそ許嫁である彼女に顔向できません、ご一緒させてください」 サッ! ペコ
「副長…」 サッ
「「「 自分も降りません! 自分もです! 艦長共に逝きましょう! 」」」 ザザッ! サッ!
「お前たち…」 サッ!
艦橋内要員全ての兵がそう言って離艦を拒んだ。だがそれだけではなかった。
「艦長、本艦より離艦作動した脱出ポット、ゼロッ! 総員離艦を拒否、皆が『艦長とこの『ライデン』と共に』 との事です!」 バッ
索敵員が脱出者ゼロを言うと、グレイ中佐は頭を下げて呟いた。
「融通のきかんやつばかりだな… すまん…」 サッ
「敵艦隊、主砲発射体制に入りました!」 バッ! ピコ
「むううッ!」 グッ!
ビーーッ!
「艦長ッ! 敵艦隊右舷前方に反応ッ!」 ピッ ビコッ!
「何ッ!」 バッ!
ピッ ピッ ピピピピピ ビコビコッ!
「こ、これはッ!」 ジイイッ!
グレイ中佐は、艦橋内にある大型情報パネルに映る多数の発光点を見つめていた。
ーココル共和国無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
ピッ ピッ ビコッ! ビコビコッ! ビッ!
「ヨシ、捉エタゾッ! 『ライデンッ!』 砲撃用意ッ!』 ビビッ!
ココル共和国無人分艦隊旗艦の制御システムが完全なる勝利を確信し、全艦に砲撃の命令を下そうとしたその時、分艦隊全ての艦艇に警報が鳴った。
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『ナンダッ⁉︎』 ビッ!
『右舷前方、距離300ニ空間魚雷出現ッ! 雷数15高速ッ! 当艦隊ニ急速接近ッ! 命中マデアト10秒ッ!』 ビーーッ!
ビコッ!
シュバババアアアーーーーッ! ドドドドオオオーーーーッ!
『ナッ⁉︎ ナニイイッ! 全艦砲撃中止ッ! 全速回避ッ! 機関全速転舵一杯、急ゲーッ!』 ビヒイーーッ!
ヒイイイイイイインンッ! バウウウウウーーッ! ゴゴゴゴッ!
強襲巡航艦「ライデン」に向け一斉砲撃をしようとしたココル共和国の無人分艦隊の右前方、300mの空間に、突如15本もの空間魚雷が現れ、高速で艦隊に向かって突進してきた。
シュバババアアアーーーッ! ピッ ピッ ピピピピピ!
『回避不能ーーッ!』 ピーーーッ!
ドゴオオオーーンンッ! ドガアアアーーーンッ! メキメキ! ドオンッ! ブワアアーーッ!
『ウオオオオーーッ! ヒ、被害報告ッ!』 ドオオンンッ! ガタガタ グラグラ
ボウボウ メラメラ グラグラ ドン バン! ビリビリビリ
ピッ
『艦中央部ニ空間魚雷3発ガ命中、舵ガキキマセン、左方向ニ艦ガ動キマス!』 ピッ ビーーッ!
ブワアアアアーーッ! ガタガタ グラグラグラッ! ドオオンンッ! メラメラ モクモク…
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『護衛駆逐艦『ビット9』大破轟沈ッ! 軽巡航艦『ガノン』通信途絶ッ! 応答アリマセン、現在『ガノン』ハ急速ニ落下中ッ!』 ピッ
『グウウ… 巡航艦『ライデン』ニ反撃能力ハ無イハズ… 何処カニ敵艦ガイルノカッ⁉︎ ドコダッ! 直チニ発射点ヲ探スノダッ!』 ピッ
『ブウウン… ブウウン… センサーニ反応ッ!』 ピッ
『コイツカッ! ウン? ナッ! バカナッ! ナゼオ前ガソコニイルッ! ナゼダアアアー!』 ビビッ!
旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の制御システムは、センサーに信じられない存在を見て叫んでいた。
ー強襲巡航艦「ライデン」ー
ビーーッ!
「艦長、敵艦隊が空間魚雷の攻撃を受けました! 駆逐艦は轟沈、軽巡航艦は大破落下中、敵旗艦にも命中弾、火災を起こし退避中です」 バッ!
「これは、まさか酸素空間魚雷ッ! じゃあッ!」 ババッ! グッ!
グレイ中佐は、敵無人分艦隊を襲った空間魚雷を正体を知っていた。
「艦長、左舷SPYセンサーに反応ッ! エリア071、マークポイント1、グリーン28、速度28ノット、高度230、距離3600ッ!」 ピッ ピコピコ!
「友軍艦ッ! ヤマト皇国国防軍、攻撃型駆逐艦『ユキカゼ』ですッ!」 ババッ!
「無事だったか…」 ふうう
「「「 わああーッ! 」」」 ザワッ!
それは、初戦でいきなり被弾し、炎と煙を吐きながら地表へと落下していった、ヤマト皇国国防軍の攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」であった。「ユキカゼ」は、被弾し地表へと落下して絶望視されていたが、艦長の青山少佐以下、乗組員の努力で撃沈は免れた。
応急修理のせいか高度が取れず、地表スレスレを28ノットという速度しか出せず、駆逐艦としては低速で、時間をかけてここまでやって来ていた。
ーヤマト皇国国防軍、攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー
シュゴゴゴゴーーッ! ゴウンゴウンゴウン ゴゴゴゴ ピッ ピッ ピッ
「95式酸素空間魚雷、敵艦隊に命中」 バッ!
「戦果ッ! 敵駆逐艦大破轟沈ッ! 軽巡航艦撃沈確実降下中! 重巡航艦に命中2ッもしくは3ッ中破撃沈ならず! 以上です」 ババッ!
ピッ ピピ ビコビコッ!
「友軍艦、強襲巡航艦『ライデン』を確認、被弾しています。なれど健在、戦域を離脱中」 サッ
「ふうう、そうか、なんとか間に合ったな…」 ドサッ! ギッ!
「しかし艦長、当艦の魚雷も打ち尽くしました、後は主砲とPDSだけです。いかが致しますか?」 サッ
艦長席に座った青山少佐に、副官の松田大尉が不安そうに尋ねて来た。
「そうだな… 足の速い駆逐艦と軽巡は落としたんだ、重巡もアレだけ食らったんだ、そう簡単には動けまい」 ふむ…
「では…」 サッ
「艦回頭ッ! 友軍艦『ライデン』の後ろに着くッ! ブレードナイト発艦デッキッ! 『ゼロ』を出せッ! 『ユキカゼ』の後方を守護しろッ!」 ババッ!
「了解ッ! 艦回頭120° 速度最大ッ!」 ピッ タンタン グイイッ!
カシュン! シュバアアアーーッ! グググ ヒイイイイインンッ! バウウウウウーーッ!
攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」は、その場で回転し、強襲巡航艦「ライデン」の空域離脱方向へと出せる全速で飛んでいった。
ー攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ブレードナイト発艦デッキー
ビーーッ! ビーーッ!
『発艦命令発令、ブレードナイト発艦準備、繰り返す、発艦命令発令…』 ピッ
「総員配置に着けえッ! 発艦準備! 第1発艦電磁カタパルト用意ッ!」 ババッ!
「「「「 はッ! 」」」」 ザザッ! バタバタ ガヤガヤ ワーワー!
ポン
『『ZERO 52型 202』白井機、『ZERO 21型 212』 坂本機 発艦準備』 ビーーッ!
「よし出すぞおッ! 白井中尉ッ! 坂本少尉ッ! 準備は良いですか!」 ザッ!
ビヨンッ! ヒュイイインッ! プシュウウーーッ!
「ああ、甲板長、いつでも良い、早くしてくれ」 バッ!
「自分も行けますッ!」 グッ!
「了解ッ! ハンガー開放ッ! カタパタルト準備ッ!」 カチ
ガシュンッ! プシュウウーーッ!
「よし、いくぞ坂本」 グイイッ! ピッ バクンバクンッ!
ブオン! グワアアッ! ガコオオン! ガコオオン!
「了解です隊長ッ!」 グイイッ! ピッ バクンバクンッ!
ブオン! グワアアッ! ガコオオン! ガコオオン!
攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」のブレードナイト発艦デッキ内を、2機のヤマト皇国国防軍、主力戦闘機、ブレードナイト『ZERO 』が、発艦用電磁カタパルトへと歩き出した。
ガコオオン ガコオオン ピッ
『中尉ッ!』 ピッ
「艦長、なんですか? 今出ますよ」 ピッ ガコオオン ガコオオン
『分かってると思うが、今回は後方の警護だけだ、『ユキカゼ』と僚艦の『ライデン』の空域離脱が優先してほしい!』 ピッ
「攻撃を受けたら撃って出ますよ?」 ピッ ガコオオン ガコオオン
『ダメだッ! お前たちを失うわけにはいかないんだッ! 自重しろッ! いいなッ!』 ピッ
「了解しました」 ピッ ブン…. ガコオオン ガコオオン
艦長との交信を終えた2機のブレードナイト「ZERO」は、やがて、発艦用の電磁カタパルトに着いた。
「発艦準備よし、カタパタルト装着、CIC、発艦指示求む!…… 聞いたか?『ZERO 』、今回は戦闘は無しだ」 ピッ カチカチ ガシュンッ! ピコ!
『それは残念ですね白井中尉、重巡航艦を仕留めるチャンスだったでしょうに…』 ピッ
「おッ! 言うねえ、自身はあるのか?」 カチ カチ ピッ タンタン
『95式酸素空間魚雷を3本も命中、被弾したのです、いかに重巡航艦と言えど、大きな損傷を受けているはず、沈めるなら今かと具申します』 ピッ
「まあな、それが正解かもしれん、だが俺たち… いや俺は軍人だ、命令には逆らえないのさ」 ふふ
『仕方ありませんね、白井中尉、あなたの判断に従います』 ピッ
「すまんな『ZERO 』」 グッ!
ピポッ!
『白井中尉、こちら『ユキカゼ』CIC、進路クリアー、1番機発艦はじめッ!』 ピッ
「了解ッ! 1番機『ZERO 52型 202』白井中尉ッ! 発艦するッ!」 ピッ
ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーーッ! ドオオオオオオーーッ!
『続いて2番機 坂本少尉、進路クリアー、発艦はじめッ!』 ピッ
「了解ッ! 2番機『ZERO 21型 212』坂本少尉、発艦しますッ!」 ピッ
ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーーッ! ドオオオオオオーーッ!
2機のブレードナイト「ZERO 」が、「ユキカゼ」の後方を守るために発艦して行った。
ー強襲巡航艦「ライデン」ー
ピッ ピコ!
「僚艦、『ユキカゼ』、当艦の後方に着きますッ! 速度28ノット ブレードナイト2機を発艦ッ!」 バッ!
「あの様子じゃあ『ユキカゼ』も相当やられているな… 速度を落とせ、『ユキカゼ』と同航、援護する」 ザッ!
「アイサーッ! 速度30ノットまで減速ッ!」 ピッ
ババババウウウウウ… ゴゴゴゴ…
強襲巡航艦「ライデン」は、後方地表近くの攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」に速度を合わせるため、その場で減速をした。「ライデン」「ユキカゼ」共に被弾が激しく、艦同士の通信ができなかったが、お互いの艦長同士の意思は通じていた。
ーココル共和国無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
バチバチバチ ドオオンンッ! メラメラ ボウボウ モクモクモク グラグラ ガタガタ
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『ウウ… オノレ人間風情ガ… アノ駆逐艦トイイ、『ライデン』トイイ… コトゴトク、コチラノ演算計算ノソレヲ上回ル… アノオ方、我ラノ高位存在デアル創造神ジオス様ガ危惧スルハズダ… ダガソレモココマデ、我ガ主砲ハマダ生キテイル、オ前タチヲ捕捉シダイ、撃沈シテクレル… 』 ビビビ!
ビコ ビコ ピピピピピ ビコビコッ! ピッ!
『レーザー照準ハ使カエヌガ、コノ距離ダ、直接照準デ十分ッ!』 ピピ
ボウボウ モクモクモク ガタガタ ウィイイイン カシュン ククク ピタッ!
ココル共和国無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」は、攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」の95式酸素空間魚雷の命中により、艦の機能が著しく下がっていた。巨大な艦体を持つ重巡航艦にこれほどのダメージを与えるヤマト皇国の秘匿兵器、95式酸素空間魚雷の威力がいかに大きいかよく分かる事態だった。
護衛駆逐艦は消し飛び轟沈、軽巡航艦もたった2発でその全機能をを失い撃沈、重巡航艦の「ヴェルデ・リュージュ」に至っては、機関と各種センサーは停止し、炎と煙で満身創痍の状態だった。それでも2基の主砲が、ゆっくりと動き、「ライデン」「ユキカゼ」をそれぞれに狙いを定めていった。
ー強襲巡航艦「ライデン」、攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー
この時、2隻の艦橋内は、偶然にもまったく同じ状況になっていた。
「「 艦長ッ! 敵主砲が本艦に直接照準ッ! 砲撃が来ますッ! 」」 ババッ!
「「 なにッ! 機関最大ッ! 全速前進ッ! 躱せええーッ! 」」 ババッ!
ヒイイイイイイインンッ! バウウウウウーーッ! シュバアアアーーッ! ゴゴゴゴ!
ーココル共和国無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー
ピコッ!
『今サラ逃ゲテモモウ遅イ… ソコダアッ! 『ライデンッ!』 目障リナ駆逐艦共々消エ去ルガイイッ!』 ピッ
ヒイイイイインンッ! キュインッ! ドガアアアーーーンンッ! ドオオオオンンーーッ!
グラグラ ビーーッ! ビーーッ!
『ナッ ナンダッ! 何ガ起キタノダッ!』 ビビイイーーッ!
無人分艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」の主砲が火を吹こうとしたその時、主砲弾を発射する前に、主砲である2基の40.3cm連装砲塔は、激しく爆発していった。
『主砲、1番2番、共ニ融解爆発、使用不能』 ピッ
『ナンダ? 融解? 攻撃ヲ受ケタ?』 ビビ…
『弾道測定デキズ、フォトン粒子反応ナシッ!』 ピッ
『マ… マサカ… フォトンレーザーナノカッ!』 ビーーッ!
ーヤマト皇国「樹海」辺境、エリア073ー
ピッ ピッ ピッ ゴウンゴウンゴウン ゴゴゴゴ ヒュウン ヒュウン
「艦長、46cm秘匿兵器、フォトンレーザー初弾命中、敵重巡航艦主砲の無力化に成功しました」 サッ!
「駆逐艦『ユキカゼ』、アトランティア帝国の巡航艦と共に健在」 サッ
「ふむ、流石だな青山少佐、『不死鳥ユキカゼ』の名は伊達ではないな… 第2射用意ッ!」 ふふん バッ!
「はッ! 主砲、第2射用意ッ!」 バッ!
「了解」 ピッ タンタン ピコ ピッ!
ウイイン! カシュン ピタッ!
シュゴオオオオオーーッ! ゴウンゴウンゴウン
それは、ヤマト皇国国防軍、徳川提督艦隊所属、【井伊直弼】中将率いる高速打撃艦隊の旗艦、重巡航艦「ミョウコウ」であった。
「主砲ッ! 第2射始めええッ!」 バッ!
「主砲発射、目標、ココル共和国重巡航艦」 カチ ピッ
シュゴオオオオオーーッ! シュバアアアーーッ! ビュンッ!
ヤマト皇国重巡航艦「ミョウコウ」より、再び強力なフォトンレーザーが発射された。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。