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第259話 反撃開始

ーヤマト皇国「樹海」辺境 エリア071上空ー


シュゴオオオオオーーッ! ゴゴゴゴゴーーーッ!


「『ライデン』現在速度60ノットッ! 最大戦速ですッ!」 ピッ


「敵艦隊補足修正ッ! 方位0000 高度3000変わらず 距離32000 マークポイント11 進路633から634へハンドオーバー 速度45ノット増速ッ! オレンジアルファッ! チャーリーッ!」 ピッ タンタン ピコッ!


「敵艦隊の構成を確認ッ! 重巡航艦1、正規空母1、巡航艦2、軽巡航艦1、駆逐艦6、接近中ッ!」 バッ! ピッ ピッ ビコビコッ!


ゴゴゴゴオオオーーーッ! ゴウン ゴウン ゴウン シュバアアアアアアアーーッ!


「ふむ、やはり空母がいたか… 索敵手、敵ブレードナイトの動きを見落とすなッ!」 バッ!


「アイサーッ! お任せください艦長ッ! 1機たりとも見逃しませんッ!」 サッ!


カチカチ ピッ タンタン ピッ ピッ ピッ ピコッ! ビコビコッ!


「敵ブレードナイト補足ッ! 総数変わらず318機ッ!」 ピッ ピコッ!


「FEIS照合ッ! 識別コード『UBK-DX7』 方位1145 チャートNo. 508 エリア071 ヘディング107 高度4000 距離26800 速度340ノット 接近中です!」 バッ! ビコビコッ!


「UBK… やはり例の、無人ブレードナイトですね艦長」 サッ


「うむ、接近速度が340ノットか… やけに遅い… 」 むう…


「こちらのブレードナイトが、レオハルト中佐の1機だけですからね、圧倒的戦力を見せ、威嚇しながら一気に仕掛けて来るつもりでは無いでしょうか?」 サッ


「ふむ、おそらくな… よしッ! このまま前進せよッ!」 バッ!


「アイサーッ!」 グイッ! 


バウウウウウウウウーーーーッ! ゴゴゴゴオオオーーッ!


強襲巡航艦「ライデン」は、ココル共和国自衛艦隊の完全自動無人艦隊の状況を把握しつつ、全速力で飛んでいた。


ゴゴゴゴオオオーーーッ! シュバアアアアアアアーーッ! ピッ ピッ ピッ! ビコビコッ!


ビーーッ! ビーーッ!


「敵艦隊陣形変わらず! 距離28000ッ!」 ビコ!


「艦長、このままでは敵艦隊のど真ん中です! ヤツらと刺し違えるおつもりですかッ!」 バッ!


高速で突き進む「ライデン」の艦橋内で、副官のノイマン大尉は、情報用大型モニターに映る敵艦隊と強襲巡航艦「ライデン」との移動位置と状況を見て、艦長席の横から艦長のグレイ中佐に聞いてきた。


「ん?いいや副長、そんな事はしないさ!」 ニヤ


「しかし、このままでは敵艦隊と正面衝突です!」 バッ!


シュゴオオオーーーーーッ! ゴンゴンゴンゴオオオオーーッ! ピッ ピッ


「そうだな… このままではそうなるだろな、だが大丈夫だ副長、ヤツらに一泡吹かせてやる」 ニイッ


「艦長、何か策でもあるのですか?」 サッ


「まあな、これ以上ヤツらをこのヤマト皇国国領内に入れるわけにはいかないのでなッ! あの敵艦隊をここから誘い出すんだ!」 グッ!


「あ… なるほど、さすがは艦長! この『ライデン』を囮に使うおつもりですねッ!」 サッ!


「そうだッ! ヤツら… 先駆者と言ったか、奴らの目的がこの国の人々を、我々を含めたヤマト皇国の人間すべての殲滅をするのが目的のようだ。 だが、なぜだか今はこの『ライデン』を狙っている。 ならばそれを利用し、この『ライデン』で挑発して、ヤツら敵艦隊をヤマト皇国領内からココル共和国領内に引き戻してやるッ!」 グッ!


「はいッ!」 ババッ! サッ!


「うむ、落伍した『ユキカゼ』からもできるだけ離れた方がいいのでな! さっきヤツらはこの国、ヤマト皇国の国民をココル共和国の国民同様、その全ての人間を抹殺すると言った。 という事はその次は我がアトランティア帝国、ひいては全世界、この世界すべての人間を狙っているはずだ。 そんな事は絶対にさせてたまるものかッ! 断固阻止するんだッ!」 ザッ!


「了解しました。ならば、速度を生かした反航戦、高速離脱戦法ですね」 サッ!


「そうだ、正面衝突寸前に進路を変え、すれ違い様に一撃を与えて、ヤツらを誘導するッ! この国から引き剥がすんだッ!」 グッ!


「「「 アイサーッ! 」」」 バババッ!


シュバアアアアアアアーーーッ! ゴゴゴゴゴオオオオーーッ!


「通信士、レオハルト中佐を呼んでくれ」 サッ


「アイサーッ! 『ライデンよりアルファリーダー、レオハルト中佐コンタクト』」 ピッ ピピ!


ピッ ピコッ! ポンッ!


『こちらレオハルト受信、どうした艦長?』 ピッ


「作戦行動中にすまないな中佐、今少し、いいかな?」 ピッ


『そうだな… このままだと後15分ほどで敵ブレードナイト部隊と接触するッ!』 ピッ


「ふむ、少し話せるな…中佐、さっきの通信は聞いたか?」 ピッ


『ああ、あのふざけた内容の通信か、しっかりと聞いたぜ』 ピッ


「似ていると思わないか?」 ピッ


『艦長も気が付いたか… ああ、そっくりだぜッ! あの時の再来だッ! 2年前のッ!』 ググッ! ピッ


「うむ…」 コクン ピッ


「『 ガーナ神教団による全世界一斉蜂起ッ! 王都『アダム』内での反乱! 』」 ピピッ!

          ・

          ・

          ・

それは、今から2年程前、この偽世界アークに信仰されていたガーナ神教、その「ガーナ神教団」による、世界一斉蜂起、ガーナ神教団の保持する武力による同時多発テロ、反乱だった。 しかし、アトランティア帝国の王都「アダム」を除く全てのガーナ神教団の施設、部隊が、アニスによって消滅、無力化され、王都「アダム」でのみの内乱戦となった。


王都内乱では巨大なラウンドシップ、神聖艦「ルシェラス」が空に浮かび、多数の無人ブレードナイトが現れ、帝国艦隊や帝国所属のブレードナイト及び帝国警備隊との激しい戦闘がおきた。そんなガーナ神教団も、帝国大陸艦隊やマイヤー辺境侯爵家艦隊による反撃を受け、その殆どが撃破、無力化された。


最後には、王城に向かって落下、自爆をしようとした神聖艦「ルシェラス」をアニスが止めに入り、巨大なラウンドシップ、神聖艦「ルシェラス」と共に、アニスはその場から姿を消した。 それと同時に、ガーナ神教団は、この偽世界アークから壊滅したのだった。


これも、全ては創造神ジオスのシナリオの一つだったが、その事をこの場で知っているのは、アニスと、ここにいるレオハルト中佐、強襲巡航艦艦長のグレイ中佐だけだった。

          ・

          ・

          ・

「あの時もそうだった… 無人の教団艦隊やブレードナイトが人を… アトランティア帝国の国民を襲い消し去ろうとした… 」 グッ!


『ああ、そのせいで、アニスは俺たちの前から姿を消した、いや、消さざる負えなかったんだ… あの時、アイツは俺を、俺たち王都のすべての人々を守る為に、あの馬鹿でけえ教団艦ふねと共に転移したんだ…』 ググッ! ピッ


「中佐、私もよく覚えている。 そうだ、アニス様があの巨大な教団艦と共に消えたあの日を… あの大転移のおかげで、皇帝陛下や王都『アダム』と地上の民… いや、アトランティア帝国その物が救われた」 グッ


『ああそうだッ!(忘れもしねえ、アニスはあの時、あの巨大な教団艦ふねの中で、あの野郎と1人で戦っていた… アレは人なんかじゃなかった… そのせいで2年もアイツは… もうあんな思いはしたくねえぜ! 次は絶対に守ってみせる!)』 ギュウッ! ピッ


「そこでだレオハルト中佐」 ピッ


『ん?』 ピッ


「ヤツらをこの国から排除したい、ブレードナイトを含めその全てを艦隊ごと、この国ヤマト皇国からヤツらの国、ココル共和国へと誘い出すつもりだ」 ピッ


『へええ、いいじゃねえか、乗ったぜその計画、で、どうすりゃいい?』 ピッ


「うむ、問題は300機を超える敵ブレードナイトだ。アレをどうにかしなければならん」 ピッ


『ああ、確かに… 俺は奴らを撹乱するつもりだったが、誘い出すとなると方針を変えなければいかんな、どうしようか…』 ピッ


レオハルト中佐とグレイ中佐がそんな会話をした時、レオハルト中佐の愛機、「アウシュレッザD型FARアウディ」が提案をしてきた。


ピッ


『Lst. レオン、敵ブレードナイトを誘導すればいいのですか?』 ピッ


『ああアウディ、そうだが、何かいい方法があるのか?』 サッ


『Rog. レオン、グレイ艦長、2人に提案ですが1つ良い方法があります』 ピッ


「『 なにッ⁉︎ 本当かッ⁉︎ 』」 バッ! ピッ


『Rog. はい、敵ブレードナイトを母艦『ライデン』から遠ざけ、敵艦隊共々、国境を越えココル共和国側の領内に誘い出せば良いのですね?』 ピッ


「『 そうだッ! 出来るのかッ⁉︎ どうすればいいッ⁉︎ 』」 ババッ! ピッ


『Rog. 成功率92%の確率ですが、母艦『ライデン』のブレードナイトデッキで現在整備、補給中の【マイロ】中尉が所有するブレードナイト、『アウシュレッザD型F1R32 サニー』の特殊装備、『ファンネル.シーカー』を使用すれば可能です』 ピッ


「『 ああッ‼︎ その手があったかああーッ‼︎ 』」 ポポンッ! ピッ


レオハルト中佐とグレイ中佐は同時に叫びながら、ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」が意図する事に手を叩いた。


「なるほど、『ファンネル.シーカー』か、すぐ中尉に準備させる! レオハルト中佐は操作空域を設定してくれ! 直ぐに送るッ! オーバー」 ピッ


『了解だッ! アウト』 ピッ ブン!


両者の通信は、敵艦隊に対する対抗策の準備をするためそこで終わった。



ーココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊旗艦「ヴェルデ.リュージュ」ー


ピッ ピッ ピッ ビコビコッ! ピピッ!


『主目標、巡航艦『ライデン』急速接近中、ブレードナイト1機ノ発艦ヲ確認、高速接近中』 ピッ


『ブレードナイトガ1機ダト? コチラノ318機ニ対シテナンダソノ数ハ? 人間ノスル事ハ理解デキナイ コノ圧倒的戦力差ガ分カラナイノカ?』 ピッ


ピッ ピッ ピッ ビコビコッ!


『主目標、巡航艦『ライデン』 方位0000 高度3000 距離32000 マークポイント1 速度60ノット高速 コース1205 タンゴ1 チャーリー 急速接近中』 ピッ ビコビコッ!


『フム、我ラニ対シテ引ク気ハ無イト言ウ事カ、ナラバ各艦艇制御システムニ命令、圧倒的戦力ヲ持ッテ、巡航艦『ライデン』ヲ沈メ、イッキニコノ国、ヤマト皇国ヲ攻メ落トシ人間ドモヲ殲滅スルノダッ!』 ピッ


『『『『 了解 』』』』 ピピ


『行ケッ! 我ラガ同胞、ブレードナイト部隊ッ! タカガ1機ノブレードナイトナド、一瞬デ叩キ落トシ、巡航艦『ライデン』ヲ攻撃セヨ!』 ピッ!


シュババババババアアアーーーーッ!  バウウウウウウウウーーーッ! ピッ ピッ ピピッ!


ゴオオオオオオオオオーーーーッ!


『『『『『『『『『 御命令ノママニッ! 』』』』』』』』』 ピピピッ! ビコ ブオンッ!


正規空母「ギュルテルティーア」を発艦した自立思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」318機が一斉に同じ返事をした。



ー強襲巡航艦「ライデン」ー


強襲巡航艦「ライデン」の艦橋内では、艦長の【アレックス・グレイ】中佐が、適正な指示を下していた。


「艦、速度と進路そのままッ! 前部VLS発射管1番、弾種変更ッ!『スタンビート』装填ッ!」 バッ!


「アイサーッ!『ライデン』速度、進路そのままッ!」 ピッ ググッ!


「弾種変更開始します。 前部VLS発射管1番、対艦噴進弾『クラック.ハンマー』から艦艇抑止噴進弾『スタンビート』へ弾種変更しますッ! 装填開始ッ!」 ピッ カチカチ ピコ!


ガコン カシュンカシュン グイイ ガコンッ! ピッ!


強襲巡航艦「ライデン」の前部に24基のVLS発射管があり、その1番発射管管内の弾種が、対艦攻撃用から対艦艇抑止用にと変更されていった。


「前部VLS発射管1番、『スタンビート』装填完了ッ!」 ビコッ!


「艦長、ここからでは『スタンビート』は射程外です! どうするんですか?」 サッ


「ああ、副長それで良いんだ、敵艦隊まで届く必要はないからな」 ニヤ


「届かない『スタンビート』をなぜ? 攻撃するのであれば射程が長く、威力も大きい『クラック.ハンマー』の方が良いのではありませんか?」 ササッ!


「副長、『スタンビート』は布石だよ、ある仕掛けのためのなッ!」 グッ!


「仕掛け… あッ!」 バッ


「さすが副長、気付いたようだな。 そう言う事だ」 ニイッ


「はい、では座標を急がせます」 サッ


「うむ… さて、ブレードナイトデッキ」 カチ ピッ


『こちらブレードナイトデッキ、甲板長のダゴスです』 ピッ


「甲板長、マイロ中尉のブレードナイトは発艦可能か?」 ピッ


『ちょっと待ってください…… まだ無理ですね、整備の方はともかく、補給の方がまだ40%を越えたあたりです。後50分はかかります』 ピッ


「そうか… ではマイロ中尉を出してくれ」 ピッ


『了解です、少し待ってください』 ピッ


しばらくして、艦内通信用モニターに英雄の1人、アルファ小隊のマイロ中尉が現れた。


ピポッ! ポン


『艦長、お待たせしました。【マイロ・フォン・カルヴァン】中尉です』 サッ ピッ


「うむ、中尉、早速だが君のブレードナイト、『アウシュレッザD型F1R32 サニー』の標準装備である『ファンネル.シーカー』だが、すぐに飛ばせそうか?」 ピッ


『『ファンネル.シーカー』ですか? はいッ! 最大12機ですが飛ばす事は可能です』 ピッ


「よし、ならば発艦デッキハッチから全12機を、前方にいるレオハルト中佐に向けて飛ばしてもらいたい」 ピッ


『隊長にッ⁉︎ 隊長に何かあったのですかッ⁉︎』 ババッ! ピッ


「ああ、いや、落ち着きたまえ中尉、レオハルト中佐には、まだなにも起こってなどいない、起こるとしたらこれからだ!」 ピッ


『これから? では…』 ピッ


「中尉、君のブレードナイトの装備が今、レオハルト中佐には必要なんだ、協力してくれ」 ピッ


『了解しました。すぐに準備します』 サッ ピッ パッ!


そう言ってマイロ中尉はモニターから消え、再び甲板長のダゴスが現れた。


「聞いての通りだ甲板長、早速準備を願いたい!」 ピッ


『了解しました艦長ッ! 最優先で準備しますッ!』 バッ! ピッ ブウウン


そう言って甲板長ダゴスとの艦内通信は切れた。


「さて… 総員、時間との勝負だぞッ!」 ババッ!


「「「「 アイサーーッ! 」」」」 バババッ!



ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイトデッキー


ピッピーッ! ピッピーッ! ピッピーッ! ガコオンッ!


「オーライッ! オーライッ! ストーップッ!」 ゴオオンッ! ピッ!


「班長ッ! ハンガーデッキC 『アウシュレッザD型F1R32 サニー』装備換装終了しましたーッ!」 ザッ!


「おうッ! よしッ! 直ちに起動準備ッ! マイロ中尉準備はいいですかい?」 サッ


「はい、甲板長、ありがとうございます。いつでも行けます」 ザッ ザッ スタ


ライナー待機室から、ライナースーツを着込んだマイロ中尉が自分の愛機の整備用ハンガーデッキにやって来た。


「では、すぐに起動します。 準備頼みますぜ!」 バッ!


「了解です。 それで甲板長」 ザッ スッ!


マイロ中尉は甲板長ダゴスに近寄り、彼の耳元で囁いた。


『な、なんですかい? 中尉」 サッ


ササッ


「(このまま『サニー』を発艦できませんか?)」 サッ ヒソヒソ…


「はああッ⁉︎ うッ!」 バッ! キョロキョロ サッ


甲板長のダゴスは一瞬声を上げたが、口を噤み辺りを見回してからマイロ中尉に小声で話しかけた。


「(そりゃ無理だ! 武器、装備換装と整備の方は終わってるが、補給の方がまだ48%程度だぞ、出られるわけがないッ!)」 キョロキョロ ササ ヒソヒソ…


「(そこをなんとか出来ませんかねえ?)」 ヒソヒソ…


「(なんとかって言われてもなあ…)」 ヒソヒソ…


甲板長のダゴスとマイロ中尉の背後に人影が近づき、マイロ中尉の肩を叩いた。


ザッ ザッ ザッ トントン!


「なあにをしてるんだ? マイロ〜」 ニイイ〜


「「 えッ⁉︎ 」」 クルッ!


そこには、同じアルファ小隊のアラン中尉とジェシカ中尉の2人が、ライナースーツに身を固め、不敵な笑みを浮かべながら、そろってジッと2人を見つめていた。


「うわああッ! アランッ! ジェシカーーッ!」 ババッ!


「わああッ!」 バッ!


背後にいた2人を振り返って見た瞬間、マイロ中尉と甲板長のダゴスは驚き後退りした。


「うん〜? なにを驚いてるんだい、マイロ〜?」 ん〜?


「ねえマイロ〜、私たちに何か隠し事してるのかなあ〜」 うふふ ニコオ〜


「わああッ! 違う違うッ! 隠し事なんてしてない してないッ!」 ブンブン!


「そうかあ? なんか『発艦』とか聞こえてたぞ、俺の空耳かなああ〜?」 スッ


「ねえマ、イ、ロ、私たち仲間よねえ〜」 ニコニコ


「うう… ごめんなさい… 僕だけ隊長の元へ行こうとしました… 」 サ…


「やっぱりか…」 フリフリ


「もうッ! 水臭いんだから、そういう事は皆んなでやるのよ!」 バッ!


「え?」 サッ


「「 俺(私)たちも出る(わ)ッ! 」」 ババッ!


「「 はああッ⁉︎ 」」 ババッ!


「ちょ、ちょっと待てくれ、中尉たちの機体はまだ…」 バッ


「甲板長、自分が隊長に言って聞いたんだ、『整備が終わり次第行きます』ってね! そうしたら隊長は『ああ』と返事をしたんだ」 パチ!


「え?… あッ!」 バッ!


「そう、『補給はまだだけど整備・・は済んでる』そうですよね甲板長!」 サッ!


「はああ… アラン中尉、それは詭弁ってもんでさあ! 艦長に怒られますぜ?」 ササッ!


「承知してます。 後で艦長には謝罪します。 敵は300を超えるブレードナイト大部隊ですよね、そんなものを隊長の1機だけに任せておけません!」 グ!


「そうねアラン、その通りだわ」 サッ


「確かに、数が多すぎる、僕たちで隊長を援護するんだ!」 バッ!


「「 ああッ(うん)! 」」 コクン


「はああ、まったく… 中尉たちは確かに中佐殿の部下だよ、やる事なす事全ての行動原理がそっくりだ!」 フリフリ


「無理を言ってすみません甲板長さん。 分かってます、無茶は承知です、でも私たちはどうしても隊長のお手伝いがしたいの… お願いできますか?」 ペコ


ジェシカ中尉は、甲板長のダゴスに頭を下げた。


「はああ… ああッ もうッ! 仕方ねえなッ!」 サッ ガシガシ!


甲板長のダゴスは、作業用の安全ヘルメットを取り、頭をかいて彼ら英雄3人の願いを承諾した。


「「「 それではッ! 」」」 ササッ


「艦長の方には後で自分から言っておきまさあ! 3人は発艦準備をッ! 他の2機も急いで仕上げるッ! 時間が余りないですぜッ!」 グッ!


「「「 了解ッ! 」」」 ササッ! ダダダダッ!


アラン、マイロ、ジェシカの3人は、それぞれ自分の愛機、ブレードナイトに向かって走って行った。


「やれやれ、昔のレオハルト中佐のことを思い出すぜ… 」 ふ…

          ・

          ・

          ・

ー5年前、アトランティア帝国 帝国領バゼラ空域ー


アトランティア帝国の領内、バゼラ地区の上空で、隣国ゼルファ神帝国の艦隊と遭遇戦に入り、とある艦艇のブレードナイトデッキ内に、新兵のブレードライナー【レオハルト・ウォーカー】准尉が、愛機ブレードナイト「レスタリッザD型G」の操縦席のハッチを開け、身を乗り出して、甲板員のダゴスに叫んでいた。


ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!


『第1小隊が全滅、本艦は戦場を離脱、後退する。 各員、接近中のブレードナイトに注意せよッ! 繰り返す、第1…』 ピッ


ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!


『撤退だああッ! 総員配置につけええッ!』 バッ!


『『『『 はッ! 』』』』 ババッ! ワーワー バタバタ


ガヤガヤ ザワザワ タタタ ドタバタ! 


『准尉ッ! 後退ですよッ! 何やってんですかッ⁉︎ 艦長に怒られますッ! 早く動力を落として降りてくださいッ!』 ババッ!


1機のブレードナイトの足元で、まだ一介の整備員だったダゴスが叫んでいた。


『おいッ! そこの整備員ッ! 早く俺を出せッ! ことが終わったら後で俺が艦長に謝ってやる!』 バッ!


『しかし准尉殿! その機体では無茶です! 降りてください!』 ババッ!


『無茶は承知だぜッ! いいから俺を出せッ! このふねが沈められたらお終いだぞ!』 サッ!


『くッ! 分かりました准尉殿ッ! どうなっても知りませんよッ!』ダダダッ!


『おうッ! 任せろッ!』 ピッ バクンバクン プシュウウウーーッ!


ガコン ガコン ガシュンッ! ピッ!


『いくぜえッ! 『レスタリッザD型G/レオハルト准尉』出るッ!』 ピッ!


ビーーーッ!


ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!……

          ・

          ・

          ・

「あの後、レオハルト中佐のお陰で俺たちのふねは無事に離脱できた… 圧倒的不利な状況でも出撃していく、ククク… 全く、レオハルト中佐… 彼らはアンタにそっくりだよ」 ニッ!


「全機発艦する! 起動準備ッ!」 ババッ!


「「「「 はッ! 」」」」 ササッ バタバタ ワーワー 


ウィイイイインン カシュンッ! ピピ ヒュウウウウウンンン! ブオンッ!


アルファ小隊の機体が次々と起動し、ブレードナイトデッキ内は慌ただしくなっていった。 英雄の3人がそれぞれの愛機に乗り込んでいくのを見て、甲板長のダゴスは近くにある艦内通信機のスイッチを入れた。


サッ カチ ピッ!


「ブレードナイトデッキより艦橋、艦長いいですかい?」 ピッ


『艦長のグレイだ、どうした甲板長?』 ピッ


「予定変更、アルファ小隊全機を出します!」 ピッ


『全機? 甲板長、出せるのか? 整備、補給は間に合ったのか?』 ピッ


「なんとかします。 まあ、元々マイロ中尉の機体装備の『ファンネル.シーカー』ですが、母機である中尉の機体が現場にいた方が操作は容易で正確に動きますぜ!」 ピッ


『確かにそうだが、本当に大丈夫なのか?』 ピッ


「艦長、彼らを出した後に自分が拠点支援機タンカーで後を追い補給をします、敵は大部隊なんでしょ? ここに居たって状況が一緒なら出した方がいい、それに艦長も知っての通り、彼らは強くなったんだ。大丈夫ですよ!」 ピッ


『甲板長… わかった、では発艦準備を頼むッ!』 ピッ


「アイサーッ!」 ピッ ガチャ!


艦長の許可を得て、ダゴスも意気揚々と通信を切り、ブレードナイトデッキ内の甲板員達に檄を飛ばした。


「おらああッ! 艦長の許可が出たッ! 電磁カタパルト1番から4番充填開始ッ! 全機発艦準備ーーッ!」 ババッ!


「「「「「 了解ッ! 」」」」」 ババッ! ダダダダッ!


ヒュインッ! ヴヴヴヴヴウウウウウウイイイイイイーーッ! ジ、ジジジッ!


強襲巡航艦「ライデン」のブレードナイト発艦デッキにある電磁カタパルトが動きはじめ、アラン中尉達は、各自、自分の愛機の操縦席に座り、ライナー支援システムと会話しながら、発艦前準備の調整をしていた。


ピッ タンタンピコブウウンンッ! パッ パパパッ!


『こんにちはマスター、出撃ですか?』 ピッ


「そうだ、リーザ、補給が間に合わなかった。58%だが隊長が危ない、サポートを頼む!」 カチカチ ピッ ピピ ピコ!


『了解ですマスター、装備はいつもので宜しいでしょうか?』 ピッ


「うん、隊長と同じ仕様で頼むよ!」 カチカチ ピコ ブウウンンッ!


『はい、では高速格闘戦用フォトンライフル、及び『シュテルンブレード』を装備します』 ピッ


「うん、それとブースターパックを、出力は最大で!」 パチッ! 


『了解しました。換装開始ッ!』 ピッ


ガシュンッ! カシャン カシャン ジャキンッ! プシュウウウーーッ!


アラン中尉のブレードナイト「アウシュレッザD型F1R2 リーザ」に次々と装備が付随されていった。


ピピピ ヴオンッ! プシュウウウーーッ!


ピポ


『ごきげんようマスター、もう出撃ですか?』 ピッ


「うん、サニー、今回僕らの装備が戦局に大きく作用する事態になったんだ、『ライデン』からの指示どうりにしてくれるかな?」 カチカチ ピコ ピコ ピピ


『ちょっとお待ちください…… はい、作戦内容はインストールされました。『ファンネル.シーカー』をこの様に使うのは初めてですが、敵艦隊に対して有効な効果を与えるものと推測します』 ピッ


「へええ、そこまでわかるんだ、サニーは凄いね」 ピコ タンタン ブウウンンッ!


『ですがマスター、補給が61%しかありません、これでは長時間戦闘行動はできませんよ?』 ピッ


「はは、このままではね、でも大丈夫みたいだよ、ほら」 スッ!


マイロ中尉は、操縦席の中から発艦デッキのはじの方を指差した。


『あら、ふふふ… では、主兵装にスナイパーフォトンライフルを、『ファンネル.シーカー』総数12機換装開始し、全力で頑張りますね、マスター』 ピッ


「ああ、頼むッ!」 グイッ!


シュヒンッ! ガシュン ピコ! グイイイインン ガコオオンン ビコビコ!


マイロ中尉のブレードナイト「アウシュレッザD型F1R32 サニー」の両肩に、巨大なバックパックと、彼の愛機専用の長射程狙撃用フォトンライフル、スナイパーフォトンライフルが装備されていった。


ビコ ピピピピピ ブオンッ! パッ!


『こんにちは、マイマスター』 ピッ


「ええ、こんにちはレパート、調子はどう?」 カチカチ ピコピコ ポン


『そうですね、損傷箇所なし、金属疲労なし、各部可動部分異常なし、一部を除いて全て正常です』 ピッ


「あら、一部ってなあに?」 ピッ ピコピコ ピピ カチ カチ ピコ!


『ブレードナイトを動かす為のフォトン、及びエーテルの補給状況ですね、現在66%程です。全力出撃とはいきませんが宜しいのですか?』 ピッ


「ええ、いいのよ。そっちの方は準備しているわ、私たちはいつも通りいきましょ」 ニコ


『わかりました、それでは主兵装はフォトンライフルと対ブレードナイト用『アシッド.ブレード』及び『カイザーナックル』、後は『バッシュ.ランサー』を装備換装します』 ピッ


「ふふ、いい選択だわレパート、お願いね」 タン ピコ ブウウンンッ!


『はい、マイマスター 換装開始』 ピッ


ヒュウウンンンッ! カシュンカシュンッ! ウィイイン ガコオン ピコ!


ジェシカ中尉の「ウルグスパイアーD型SC レパート」には、近接格闘戦用の装備が換装されていった。


『『『 装備換装完了しましたマスター 』』』 ピピピッ!


「皆んな準備はいいか?」 ピッ


『ああ、アランいつでもいいよ』 ピッ


『私もいいですよアラン』 ピッ


「よしッ! いくぞッ!」 グイッ!


『『 了解ッ! 』』 グイイッ!


グワアアッ! ガコオン ガコオン ガコオン!


3機は完全武装の換装が終わり出撃体制が整うと、発艦用デッキへと進み、発艦用電磁カタパルトの所までやって来た。


ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!


ポン


『アルファ小隊が発艦する、各員は発艦体制を、発艦デッキハッチ解放』 ピッ


グイイイイイイ ガコオオンンッ! ヒュウウウウー…


発艦用ハッチが開くと、艦外からの風が発艦用デッキ内に舞い込んできた。


「艦橋CIC、アルファ小隊発艦準備完了、発艦指示を請う」 ピッ


ピポ


『アルファ小隊、艦長のグレイだ』 ピッ


「『『 艦長ッ! 』』」 ササッ! ピッ


『アルファ小隊、発艦は『ライデン』が打ち出す『スタンビート』の起爆後とする』 ピッ


「『『 はッ! 』』」 ピピッ!


ピポ


『各機、電磁カタパルトでスタンバイ待機』 ピコ


プシュウウウーーッ! ヴウウウウウウウーーーッ!


各ブレードナイトは、発艦体制のまま待機し、電磁カタパルトの唸り音だけがやけに大きく聞こえていた。


ピッ ピッ ピッ ビコビコッ!


「作戦スタートカウントダウン開始、10、9、8…」 ピッ ピッ ピッ


「やるぞッ! 副長」 バッ!


「はい、艦長」 コクン! 


「3、2、1」 ピッ ピッ ピッ


「前部VLS発射管1番ッ! 『スタンビート』発射ーーッ(0ッ!)」 ババッ!


ドオオオオオオーーーッ! シュバアアアアーーーッ!


「作戦スタートです! 艦艇抑止弾ッ『スタンビート』目標点に向け飛行中ッ!」 ピコ!


「ブレードナイト、アルファ小隊発艦用意ッ!」 ピコ



ーココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー


ピコ ピピピピピ ビコビコ


『敵巡航艦「ライデン」二発射反応アリ、ロケット弾ガ1発接近中』 ピッ


『1発ダト? サラニ人間ノスル事ハ理解不能ダ』 ピッ


『艦隊ヲコノママ進メルノダ、容赦ナク、巡航艦「ライデン」ヲタタキ潰スノダッ!』 ピッ


シュゴオオオオオーーッ! ゴウン ゴウン ゴウン ゴゴゴゴゴーーッ!



ー強襲巡航艦「ライデン」ー


ピッ ピッ ピッ ビコビコ!


「『スタンビート』目標点まであと5秒、3、2、1、今ッ!」 ピコッ!


ドオオオオオオオオオーーーンンッ! ビリビリビリッ! ジ、ジジジッジジジッ!


強襲巡航艦「ライデン」の放った艦艇抑止弾「スタンビート」は、ココル共和国大陸自衛艦隊、完全自動無人艦隊の前方で起爆した。



ーココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊旗艦「ヴェルデ・リュージュ」ー


ビーーーッ! ビーーーッ!


『敵ロケット弾ガ進路前方ノ空間デ自爆ッ!』 ビコ


『人間ドモメ、無駄ナ事ヲ!』 ピッ


ビッ! ビババババッ! ジジジジジギガガガガガガガッ! ビビイイイッ!


ビーーーッ! ビーーーッ!


『ナンダ? ナニ事ダッ!』 ピッ


ビビビ ジジ ジジジッ!


『巡航艦『ライデン』ノロケット弾ガ自爆シタ影響デ、全テノセンサーガロストッ! 使用不能ッ! 機関出力低下。空間ジャイロモ安定シマセン』 ピッ


グラッ! ジバババッ! ビビビッ!


『艦隊、陣形ガ崩レマスッ!』 ピッ


『オノレエッ! 人間ドモメエエッ!』 ガガガガッ!


ゴゴゴゴゴ ヨロ! ガガガガッ!


ココル共和国大陸自衛艦隊、完全自動無人艦隊は、強襲巡航艦「ライデン」の放った『スタンビート』の起爆の影響で、艦隊の陣形と進軍速度が崩れていった。



ー強襲巡航艦「ライデン」ー


ピッ ビコビコッ!


「艦長ッ! 敵の陣形が崩れましたッ!」 ババッ!


「今だッ! ブレードナイトアルファ小隊ッ! 全機発艦ッ! それと同時に前部VLS対艦噴進弾『クラック.ハンマー』全弾発射ーッ!」 ババッ!


「アイサーッ! 前部VLS発射管、対艦噴進弾『クラック.ハンマー』全弾発射」 タンタン ピコ!


バクンバクンバクンバクンッ! シュドドドドドッドオオオオオーーッ!


「艦橋CICよりアルファ小隊へ、発艦始めッ!」 ピッ


ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイト発艦デッキー


ビーーーッ!


『アルファ小隊へ 進路クリアー、順次発艦どうぞッ!』 ピッ


「アルファ2、『アウシュレッザD型F1R2 リーザ/アラン』発艦するッ!」 ピッ グイッ!


ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


「アルファ3、『アウシュレッザD型F1R32 サニー/マイロ』出撃するッ!」 ピッ グイッ!


ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


「アルファ4、『ウルグスパイアーD型SCレパート/ジェシカ』行きますッ!」 ピッ グイッ!


ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


「セイビング1、『ウェルフェアD型BTVタンカー/セリア、ダゴス』出ます」 ピッ グイッ!


ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


強襲巡航艦「ライデン」から、アラン達アルファ小隊と、拠点支援機ライナーの【セリア】伍長と甲板長のダゴスが搭乗する拠点支援機の4機がスラスターを全開にして飛んでいった。 強襲巡航艦「ライデン」の反撃が開始された。






いつも読んでいただきありがとうございます。

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