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第255話 勇者対公安(忍者)部隊

ーヤマト皇国「樹海」辺境 平原ー


時は少し戻り、ヤマト皇国「樹海」辺境の平原から、レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」が飛び立ち、侵攻して来たココル共和国の斥候前衛艦隊へと向かって行った直後になる。


上空の2隻のラウンドシップ、ヤマト皇国国防軍、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」とアトランティア帝国、大陸艦隊所属の強襲巡航艦「ライデン」がスラスターを全開にして飛び去り、レオハルト中佐と白井中尉のブレードナイトもいなくなった平原で、アニス達は佐藤中尉率いる黒装束の集団と対峙していた。


彼らはヤマト皇国の国防軍内にある公安部、軍内部や国内の治安を維持する部隊で、その存在はあまり表に出ず、秘匿とされていた。以前は忍者という名で呼ばれていたが、現在では公安、又は安部とか、様々な呼び名で呼ばれている。そして、その公安部隊の者達が使う技や術(魔法)は、彼ら特有のものであった。


ザザッ!


「いくぞッ! 目的は聖女アニス様の確保、他の者は生死を問わん!排除せよッ!」 バッ!


「「「「「「「 はッ! 」」」」」」」 コクン ザッ!


シュバババババッ! ザザザッ シュンッ!


黒装束集団の長である佐藤中尉は、背後にいた同じ黒装束の9人に命令を出した。それと同時にその者達は一斉に素早く動き出し、その姿がその場から消え、普通の者にはその動きが全く見えない動きだった。しかし…


ザッ シュリンッ! チャキッ!


「スズカ来るよ、見えるかい?」 ググッ!


ヒュンヒュンヒュンッ! クルクル チャキッ!


「ええ、大丈夫よサトシ、私にも全部見えてるわ」 ニコ チャキッ!


勇者の2人、サトシとスズカは聖剣と聖槍をそれぞれ振り、いきなりその場から消えた黒装束の集団、公安部隊に向けて構えた。 アニスと神獣の2人に鍛えられた2人にとって、彼らの動きは全て見えているようだった。


「ん、じゃあ私は佐藤のところに行くね」 ニコ シュンッ! パッ


勇者2人の様子を見て、この場は任せても大丈夫だと判断し、アニスは2人の側から一瞬でその場から姿を消した。


「ふうう… 流石はアニスちゃんね、アレはどうしても見えないわ」 フリフリ


「アニスさんは別格だね、どれ程鍛えたら、あの動きが見えるようになるか見当も付かないよ」 はああ…


サトシとスズカの2人は、殺気立って迫ってくる黒装束の忍者達は見えるのだが、すぐ真横にいたアニスが移動した瞬間後がまったく見えなかった。それを見た佐藤中尉は即座に動いた。


「なッ! 聖女アニス様が消えたッ⁉︎ 【右近うこんッ!】【左近さこん ッ!】」 バッ!


「「 はッ!【八咫烏やたがらす】様 」」 シュババッ!


「聖女アニス様が消えた、貴様たちで早急に見つけ出し確保せよッ!」 バッ!


「「 御意ッ! 」」 シュバッ! シュンッ!


佐藤中尉の側に、新たな黒装束の2人が現れ、佐藤中尉の指示の元、素早く動き、その姿を消した。



シュザザザザアアアーーーッ! シャッ シャッ シュババッ! チャキンッ!


ササッ! ジイイイ…


「「 右に3人、左に4人、仕掛けてくるのは… 正面の2人だッ!(ねッ!)」」 ババッ!


広大な平原を多数の高速移動する音が聞こえる中、サトシとスズカは自分達に最初に襲い掛かってくるのが自分たちの真正面に位置する2人と見極め、それぞれの聖剣と聖槍を構えた。


シュザザザザーーッ! ババッ ババッ シュバッ!


「何者かは知らぬが長の命令だ、悪く思うなよ…」 ザザザアアアーーッ チャキッ!


「やるぞッ! 俺は剣の男を、【木兎みみずく】お前は槍の女をやれッ!」 サッ!


「ちッ! 女かよ、女が俺の相手になるものか、【ふくろう】見てろッ! すぐに終わらせてやるッ!」 シュバッ!


【木兎】と【梟】、当然彼等の本名ではない。 先程、佐藤中尉に指示を出され動いた【右近】と【左近】もそうだが、公安部隊隊員は全て本名ではない通り名で呼び合っていた。 それは、本名から素性がバレるのを防ぐためであった。


聖剣と聖槍を構えた勇者サトシとスズカの2人に対し、正面から短剣を構え、公安部隊の【木兎】と【梟】と名乗る2人が襲いかかっていった。


「スズカ! 来たぞッ!」 ギュッ! 


「ええ… さあッ! 来なさいッ!」 ビュンッ! サッ!


サトシとスズカも即座に対応する。


シュザザザザアーーッ! シュバッ! ブンッ!


「この素早さに対抗できまいッ!」 シュバババババーーッ!


「当然だろ、見ろよ梟、やつら全く動けないようだ」 ニヤ シュバババババーーッ!


「「 この一撃で終わらせてやるッ! 」」 シュババッ! シュキンッ!


「「 真刃一刀ッ!《霞斬りッ!》 」」 ズバアアーーッ!


木兎と梟の2人は、勇者サトシとスズカの2人に対し、同時に同じ公安部隊だけが会得する剣技で斬りつけてきた。だが、それに対し勇者の2人は即座に応戦した。


ザザッ! ビュンッ! シュバッ!


「ふんッ! 剣技ッ!《雷火閃光ッ!》」 ヒュンッ! シュバババーーッ!


「はああッ! 槍技ッ!《舜華滅槍扇ッ!》」 ビュンビュンッ! シュバーーッ!


ビュンビュンッ! シュギュアアアーーーッ!


勇者2人の聖剣と聖槍の技が、彼等に攻撃を仕掛けてきた者達へと放たれた。


「「 何いいーーッ! 」」 シュバッ! ビギイイイイイインンッ!


「「 うおおおおーーッ! わああああーーーッ! 」」 ビュンビュンッ!


ドゴオオオーーンッ! ザザザザアアアアーーーッ!


勇者2人の攻撃を受け、公安部隊の2人、木兎と梟は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられていった。


「「「「 ッ! なんとッ! 」」」」  シュンッ! ザザッ! ババッ!


左右に分かれて迫っていた他の公安部隊隊員も、その状況を見て足が止まり姿を現した。


シュウウウウ… パラパラ カラ…


「うぐぐ… バカな…」 ググッ…


「ううう…」 プルプル グッ…


勇者2人の攻撃を受け吹き飛ばされた2人は、地面に倒れ、身動きができなかった。


ヒュンヒュンッ! ビュンッ! ピタッ! ザザッ!


「「 さあ覚悟しろッ!(なさいッ!) 」」 ビシッ!


姿を現した他の公安部隊隊員に対し、聖剣と聖槍を構えた最強の勇者がそこに立っていた。


「おのれ… よくも…」 ググッ! ササッ! チャキッ!


1人の公安部隊隊員が、超剣を構え身を乗り出した時、別の公安部隊隊員に止められた。


「下がりなさい、【啄木鳥きつつき】」 ザッ!


「なッ!【かえで】様ッ! と、止めないでくださいッ! 梟たちがやられたのですよ! 奴らをこの手で…」 ググ…


啄木鳥と呼ばれたその隊員を楓という名の隊員が止めた。だが、啄木鳥は納得していない様子だった。


「私は下がれと言ったのです、聞こえなかったのですか?」 ギロッ!


「うッ!… はい… 申し訳ありません」 ササ


「貴方の言い分はわかります、ですが、感情を乱し私情で動くなど、相手の思う壺です。しかも… 今の貴方たち下位や中位の者では、あの者たちには歯が立たないでしょう」 ジイイ  スッ


「… はい…」 サッ


「ここからは、私と【はやぶさ】の2人でやります。他の者は牽制をしつつ、周辺警戒をしなさいッ!」 ババッ!


「「「「 ははッ! 楓様ッ! 」」」」 ババッ! タタタッ!


シュンッ! ザッ!


「いいのか楓、俺とお前がやると… やつら、殺してしまうぞ?」 チャキ…


「長… 【八咫烏やたがらす】様が仰ったじゃない、『生死は問わない』ってね」 ジイイ…


「ああ、確かに言ってたな… じゃあ、しょうがねえか」 ニヤ ビュンッ!


「私が槍使いの女を、隼は剣使いの男をお願い」 ササ


「わかった、だが気をつけろよ、やつら、全く本気じゃなさそうだぜ」 グッ!


「ええ、恐らくあの者たちは私たちと同等に近い、相当な手練れだと思うわ」 ジイイ…


「ふん、手練ねえ… まあ俺たちが負けるこたあねえだろ、さっさと終わらせようぜ!」 グッ! ザッ ザッ ザッ!


「そうね」 グッ! スタスタスタ


勇者2人の前に現れた全身黒装束の公安部隊隊員の中から、話し方から男女と思われる公安部隊隊員が近寄ってきた。それと同時に、他の公安部隊隊員はその場を囲むように、周辺へと広がっていった。


「スズカ、あの2人だ、本気で行こう」 グッ! チャキ!


「ええ、アニスちゃんが言ってた2人ね、確かに他の人とは違うわね」 クルクルッ! ビュンッ!


戦いの前に、2人はアニスに注意されたことを思い出した。『気を抜かないように、あの中で2人… 他の人とは違い、少し強い者がいます、気をつけてください…』


ザッ ザッ タッ タッ ピタッ!


「フッ! 本来なら自己紹介なんてなあ無いんだが、お前ら強そうだからな、一応挨拶はしとくぜ!」 バッ!


「なにッ!」 ザッ!


突然の事で、勇者サトシは驚いた。


「何を言っているのッ! さっさとやるわよッ!」 バッ!


「いいじゃねえか、ちょっとだけだからな」 サッ


「まったく…」 フリフリ…


隼は楓に制さられたがそれを無視し、話を続けた。


「何処の誰にやられたか分からないんじゃ、悔しいだろ? 教えてやるよ」 ニイ


「へええ、僕たちが負けると?」 サッ


「ああ、さっきの剣裁きを見て、大凡の強さは見当がつくのさ」 グッ!


「さっきの… あれは本気じゃ無いと言っても?」 グッ!


「ああ、想定範囲内だろな、ここで俺たちが相手になった事、後悔するがいいさ」 ビュンッ! チャキッ!


そう言うと、隼は漆黒の片刃剣を振り抜いて、サトシに向け構えた。


「後悔か… そんなものはしないッ!」 チャキッ!


「ククク、いいねえ… 元気があって、俺は隼、そしてコイツが楓だッ!」 ザッ!


「よろしく…」 ギンッ! スッ! ブンブンッ! バシッ!


隼と同様、紹介を受けた楓は棒状の武器を出し構えた。


ザッ!


「スカイ小国家連合、スペルタ国勇者、サトシッ!」 バッ!


「同じく勇者、スズカッ!」 バッ! 


サトシとスズカも武器を構え、自分の名を名乗った。とは言え、公安部隊隊員の2人は通り名である、本名ではなかった。


「なんだッ!お前ら勇者だったのかッ! 道理で、アイツらじゃ敵うわけなかったな」 ザッ


「そうね… 隼、尚更私たちで片付けましょッ!」 ググッ! ジャキンッ! ジャラ…


楓の棒状の武器が三つに分かれ、鎖で繋がったそれは、三節棍と言う武器だった。



「サトシ、あれ、やっぱり忍者だよね」 ジイイ…


「ああ、だが、俺たちの世界の忍者とはちょっと違う… 」 サッ!



「ククク、忍者だってよ、楓、どう思う」 ククク…


「あながち、間違ってはないわ、言い方が古いだけよ、今は公安で通っているわ」 グッ!


「「 公安… 」」 ザザッ!


ヒュウウウウ…


一時の間が空き、突然4人が動いた。


「いくぞッ!楓ッ!」 ババッ! 


「ええッ!」 コクン ババッ!


「「 舜身術ッ!《疾風ッ!》 」」 シュンッ! シュバッ!


公安部隊の隼と楓の2人は、高速移動術、《疾風》を発動し、その場からその姿が消えた。


「スズカッ!」 サッ バッ!


「うんッ!」 コクン バッ!


「「 《縮地ッ!》 」」  シュンッ! シュバッ!


勇者の2人も高速移動術、《縮地》を発動し、その場から姿を消した。


「「「「 なんとッ⁉︎ 」」」」 ザザッ! ザワザワッ!


「あれは隼様と楓様と同じ舜身術ッ!」 サッ


周り周辺にいた公安部隊隊員達は、自分達より上位の隼と楓同様、同じ高速移動術を使う勇者サトシとスズカに驚いていた。


シュバッ! ババッ! ギインッ! ギャンッ! キンキンッ! ドカドカッ! バカアッ! バラバラ シュバババババーーッ!


何もない平原に、両者4人の高速移動音と剣撃や、地面が抉れる音が響いていた。 それが、4人の攻防の激しさを物語っていた。


シュバババババッ! 


「ちッ! こつら相当やりやがるッ!」 バババッ! ブンッ!


ギイイインンッ!


「なあに、僕らはまだまださッ!」 ニイ ギギギ バシッ!


「くそうッ!」 グイッ!ババッ!


ビュンッ! シュバッ!


キンキン! ゴンッ! シュバッバババッ! シュザッ! ジャラッ! ビュンッ! キンッ! ビシイッ!


「予想以上だわ、勇者がこんなにも強いなんて聞いてないッ! 気を抜けば一瞬でやられるッ!」 ビュンッ! ババッ! サッ! シュンッ!


「あら、貴女はどの勇者の事を言ってるのかしら、私たちとは初対面のはずですけど」 ニコ シュンッ!


クルクルッ ビュンッ! シュシャシャッ! ビシ!


「うッ! くッ! 速いッ!」 ババッ! ビシッ! ジャラッ ギイインッ!


公安部隊の隼と楓は、勇者サトシとスズカとの戦いで防戦一方になっていた。


ザザザザアアアアーーッ! シュザッ!


「ハアハアハア… く、くそう…」 チャキ…


シュンッ! ザッ!


「うん、流石は忍者… いや公安だったけ? 強いですね」 チャキッ!


シュザザザアアーーッ! タンタン ザザッ!


「ハアハア… まさか、これほどとは… 私の棍撃術が通じない…」 ググッ! ジャラ…


シュンッ! スタッ! トコトコ ザッ!


「ふふ… よろしいですか? 次、行きますよ」 ニコ ヒュンヒュンッ! ビュンッ!


勇者サトシとスズカは汗ひとつかいておらず、余裕の表情でそれぞれの武器を構えた。


シュザッ! 


「楓、真面マジでやつらは勇者なのか? 強さがハンパないぜ?」 ググッ!


「私も同感だわ隼、勇者にしては強すぎるッ! 私の知っている勇者はもっと弱かった… そう、私たちよりも少し… でもこれは一体どう言う事? あんなの私の知っている勇者じゃないッ!」 ギュッ! ジャラ…


彼等は知らなかった。勇者サトシとスズカの2人は、アニスと神獣 ヤマタノオロチ、アコンカグアによって、勇者のそれを遥かに超える力を身につけていた事を… 2人はただの勇者ではない事を…


「くそッ! こうなりゃ、奥の手を使うしかねえな」 ニイ…. ザッ!


「仕方がないわね… 」 コクン グッ!


ササッ! サッ サッ シュッ!


隼と楓の2人は武器を持たない方の手で、素早く何か不思議な動きを見せた。



「うん? スズカ、あれって忍者がよく使う呪文の印じゃないか?」 ザッ


「ええ、そのようね、忍術でも使うのかしら?」 ジイイ


勇者の2人は、自分達がいた世界の忍者という存在と、彼等を重ねて見ていた。


キンッ!


「おおおッ! 火術ッ!《煉獄弾ッ!》」 ドドドドドオオオーーッ!


「はああッ! 水術ッ!《水撃槍ッ!》」 シュババババババーーッ!


隼からは大き目の炎の塊が、楓からは水の槍が無数、勇者の2人に襲いかかっていった。


「魔法攻撃ッ!」 ザッ!


「スズカ、ここは僕が…」 ザッ ザッ チャキッ!


「じゃあ、サトシに任せるね」 ニコ サッ


無数に襲いかかる2つの異なる術の攻撃に、勇者サトシだけが少し前に出て、聖剣を構えた。


「はははッ! バカめッ! たとえ勇者でも、この異なる2つの術を受けたらタダでは済まんぞッ!」 グッ!


「炎と水、高温に冷水かあ、確かに、水蒸気爆発の素だね、でも…」 ググッ! ギンッ!


シュバアアアアアーーッ!


勇者サトシは聖剣「クリューサオール」に魔力を込めた。


「あの輝き… まさか…」 ピクッ!


「はははッ! そんなこけおどしが通用すると思ったかああーーッ!」 ザザッ!


「じゃあ、受けてみろ!」 グッ! ギュッ!


「隼ッ! 避けなさいッ!」 ババッ!


「なにッ⁉︎」 バッ!


「はあああッ! 神級剣技ッ!《バーゼル.グラン.リッパーッ!》」 キュピンッ!


シュンッ! シュバアアアアアアーーーーッ! ギュオオオオオオオーーーッ!


それは、勇者サトシがアニスから授かり、ようやくものにした神の剣技、究極の神級剣技だった。


ギュワアアアアーーッ! シュバッ! ジュウォッ! シュゴオオオーーッ!


「なッ! なにいいいいッ! うわああああーーーッ!」 シュバーーッ! ビュンッ! 


勇者サトシが放った神級剣技、《バーゼル.グラン.リッパー》の威力は、隼と楓の火術、水術を呑み込み消し去って、そのままの勢いで、隼を巻き込んでいった。


「隼ーーッ!」 ババッ!


シュバアアアアアアーーーー……


シュンッ! ドサ…


「うぐ… ち、ちくしょう… て… めえ…」 ガクン バタ…


隼は、かろうじて勇者サトシの神級剣技を躱したが、その身にはダメージを受け、少し離れた場所に姿を現したが、気を失い倒れてしまった。


「隼ーーッ! うッ!」 サッ! ズサッ!


「はい、何処へいくのですか? 貴女の相手は私ですよ」 シュンッ! チャキッ!


「ううッ… いつの間に… (《疾風?》いや違う、それ以上の素早さだわ…)」 ググッ!


倒れた隼の元へ行こうとした楓の前に、いきなり勇者スズカが現れた。


「どうしますか楓さん、降参しますか? していただけると良いのですが」 サッ! ニコ…


「うう… それはできないッ! 《疾風ッ!》」 ババッ! シュンッ!


「仕方ありませんね… 《縮地》」 シュバッ! シュンッ!


楓とスズカの2人は再び高速移動術を使い、その場から姿が消えた。


シュバババババーーッ! シュンシュンッ! 


「そこッ! 槍技ッ!《龍仙槍ッ!》」 ビュンッ! シュバアアアーーッ!


シュザッ! ババッ! バシイイッ!


サッサッ シュシュッ! サッ!


「くッ! 雷術ッ!《撃滅剛雷ッ!》」 キンッ!


バチバチバチッ! ドゴオオオオオーーッ!


楓は勇者スズカの高速移動による槍の攻撃を躱しながら、最大の雷術で反撃をしてきた。


シュバババッ! ビュンッ!


「ふふ、雷撃魔法ですか、それなら… 聖戦槍技ッ!《アーテルッ!》」 ヴンッ! シュバッ!


シュゴオオオオーーッ! バチバチバチッ! ドオオオオオンンンーーッ! バリバリバリッ!


勇者スズカは、楓の放った雷術、《撃滅剛雷》を、これもアニスから教わり授かった彼女の固有スキル、聖戦槍技、《アーテル》によって粉砕消滅させてしまった。


バババッ! ビュンッ! タタタッ!


「バカなッ! 雷を消滅させるなどありえないッ! 魔法ではなく槍技でだなんて!」 シュバッ!


自分が放った雷術の攻撃が、槍の一振りで消滅させられて、楓は明らかに動揺していた。


シュバババババッ! シュバッ!


「あら、魔法が見たかったのですか? では見ます? 私の魔法攻撃」 ニコ シュンッ!


「うわああああーーッ!」 ババッ! ビュンッ! タタッ タタッ! シュバババッ!


動揺しながら高速移動中の楓のすぐ脇に、突如、勇者スズカが現れ、語りかけてきた。 楓はまさに、パニック状態に陥っていた。


「逃がしませんッ! 槍技ッ!《仙華烈槍扇ッ!》」 シュバッ!


シュババアアアーーーッ!


「ああああ――ッ! 《金剛撃―ッ》」 ブンッ! バシイイッ!


ドオオオンンン――ッ


「きゃあああーーーッ!」 バアアアアーーーッ!


シュバッ! ザザザアアアーーーッ! ドサッ! バラバラバラ…


「ハアハアハアハア… ダメだ… 私では… ううッ!」 ザシャ…


楓は、勇者スズカの攻撃を辛うじて棍撃術でいなし躱したが、その威力に押され、楓は膝から地面に崩れ落ちた。


シュザッ! トン スタ… トコトコ ピタッ


「再度お尋ねします。 楓さん、降参していただけますか?」 ニコ ヒュンヒュン! チャキ!


「ハアハア… ええ… こ、降参するわ」 ガクン…


「はい楓さん、ありがとうございます」 ニコニコ シュンッ!


その様子を見た周囲にいた公安部隊隊員が騒ぎ始めた。


「そんなッ! よくも我らの楓様をッ!」 ググッ!


「くそッ! ならば我らがッ! いくぞッ!」 ザシャ!


「「「「「 おうッ! 」」」」」 シュキシュキイインッ! ババッ!


「や、やめなさい!」 ササッ!


公安部隊上位の楓の言葉も聞かず、周囲に囲っていた中位、下位の公安部隊隊員が一斉に攻撃を開始した。


「スズカ、死なない程度だよ」 チャキ


「ええ、分かってます」 シュキンッ!


「「「「「 うおおおおおおおおーーーッ! 」」」」」 ババババッ!


チャキンッ! シャシャッ! ドオオンッ! 


「「「「 ぎゃああ… うああああッ… おおおーーッ… 」」」」 ババッ ドオオン …


今の勇者サトシとスズカにとって、中位、下位の彼等はなんの障害にもならなかった。


シュバッ! キンキンッ! ズバッ! ドシュッ! ドオオンッ!


「「 うわあああーーッ… ぐふうううッ… 」」 ドサッ バタンッ!


「バカな子たち… 私と隼が勝てない相手に、あなた達が勝てるはずがないのに…」 ジイイ… フリフリ…


楓は戦意消失したその場所で、他の公安部隊隊員が、1人また1人と倒されていくのをジッと見ていた。


数分後には、隼は気絶、楓は戦意消失、他の中位、下位の隊員は全て倒され、佐藤中尉が連れて来た公安部隊隊員は全て倒されてしまった。

          ・

          ・

          ・

「うぐぐ… バカなッ! 隼と楓が相手にならんだとッ⁉︎ こんな事が…」 ググッ!


佐藤中尉は両手を握りしめ、その結果に、平原の真ん中に立つ勇者の2人を睨んでいた。


「こうなればこの俺の手で始末してやるッ!」 ザッ! シュリイインッ!


佐藤中尉がそう言って、片刃の大太刀を抜いたその時、佐藤中尉は背後から呼び止められた。


「ん、佐藤、やめたほうがいいよ」


「なッ! 聖女アニスッ!」 クルッ! ババッ!


「ん」 コクン ニコ


佐藤中尉のすぐ背後に、青みがかった銀髪に純白のジャケットとスカートを靡かせた、アニスが笑顔で立っていた。


「なぜここにッ⁉︎ 右近と左近はどうしたッ!」 ババッ!


「右近?左近? 誰?」 はて?


「貴女を保護するよう命令した私の部下だッ!」 バッ!


「保護? ん〜… ああッ! あの2人かッ! 大柄で黒装束のッ!」 ポンッ!


「そうだッ! 彼らはどこだッ!」 グッ!


「あ〜… 私が高速移動中にね、いきなり現れて、私を攫おうとしたから… その…」 はは…


「高速移動? 聖女の貴女が? それで、ヤツらは…」 サッ


「ん、あそこで寝てもらいました」 ニコ サッ!


「なッ!」 ババッ!


アニスが示唆した方向を見ると、平原脇にある小さな林の木の根元に、2人の黒装束を着た大柄の公安部隊隊員が横たわっていた。


「あッ! 大丈夫だからね! 死んでないからッ」 ササッ!


「そんなッ! やつらは隼や楓以上の使い手だぞッ? それが…」 ワナワナ…


「それで、私は佐藤に話があります」 テクテク ピタッ!


「わ、私に話ですか、聞きましょう、聖女アニス様」 サッ


「佐藤… いや佐藤の中にいる存在に聞きますね」 スッ


「は? 私の中? 存在? 一体なにを… うッ!」 ガクガクガク ブルブル


アニスの問いに、佐藤中尉は訳がわからなかったが、次第に佐藤中尉の体が小刻みに震え出し、佐藤中尉は自分の意思で動く事も話す事もできなくなっていった。


「ん、やっぱり… 最初にあった頃の佐藤と違ってましたからね」 フリフリ


「あ… ああ… ぐうう… ア、アニス…」 ガクガク ブルブル ガタガタ


「それで… 今回の件、コレもシナリオ通りにいってますか? 創造神ジオスッ!」 ギンッ!


アニスは佐藤中尉に対し、意外な人物の名を挙げ問いただした。


「ううう… うがああああああーーッ!」 ババッ! シュバババアアアアアーーッ!


佐藤中尉の体を中心に、眩い光の柱が天空へと伸びていった。それは一瞬の出来事で、すぐにそれは収まり、そこにいた佐藤中尉の雰囲気がガラッと変わっていた。


シュウウウウウウウウ…


「ククク! 流石はアニスだ、やはり貴様には通じぬか」 ニイイッ!


姿は佐藤中尉ではあったが、そこにいるのは紛れもなく創造神ジオスの力を持った存在であった。


「ふうう… いつから佐藤の体に入った、いや、指示を出したの方かな?」 うん?


「相変わらず目ざといやつだなアニスよ」ふふふ


佐藤中尉の姿をした創造神ジオスは不敵な笑みを浮かべていた。



いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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