第252話 アニスと忍者
-ヤマト皇国『樹海』外編部 平原上空ー
シュゴオオオオオーーーッ! ゴゴゴゴーーッ!
ヤマト皇国に霊山「フジ」、その裾野に広がる広大な森林地帯『樹海』の外縁部の平原上空に、2隻のラウンドシップ、ヤマト皇国国防軍、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」とアトランティア帝国大陸艦隊、強襲巡航艦「ライデン」が、スラスターを全開にして進み、強襲巡航艦「ライデン」の主砲が火を吹いた。
「今だッ! 全砲門撃てええーーッ!」 ババッ!
「アイサーーッ!」 カチ ピッ!
ドドドドオオオオオンンンーーッ! シュバアアアーーッ!
強襲巡航艦「ライデン」の主砲、36.7cm連装フォトン砲2基4門が接近中のココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊の斥候前衛艦隊に向け砲撃を開始した。
ーココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊 斥候前衛艦隊ー
ピッ ピコピコ
『各艦ブレードナイトヲ発艦セヨ、制空権ヲ把握スルノダ』 ピッ
ウィイイイン ガコオン
ヴオンッ! ビイインッ! プシュウウウーーッ!
斥候前衛艦隊旗艦のブレードナイト発艦デッキ内には16機もの自立思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」が起動し、発艦用電磁カタパルトへと動き始めていた。
ガシュン ガシュン プシュウウウーーッ!
『発艦用電磁カタパルト準備完了、『グリフォスD/FAV7』全機発艦ッ!』 ピッ
ビーーーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオオーーーッ!
ビーーーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオオーーーッ!
シュバアアアーーッ! ブオンッ! ピッ
『前方二位置スル人間ノ艦隊ヲ攻撃スル』 ピッ
『『『 攻撃 攻撃 攻撃 』』』 ピッ ピピピピピッ! ブオンッ!
次々と発艦する自律思考型無人ブレードナイト、半数ほどが発艦した時、斥候前衛艦隊旗艦に警報が鳴り響いた。
ビーーーッ! ビーーーッ!
『敵大型艦艇、『ライデン』二発射反応アリッ! 砲撃ダッ!』 ピッ
『バカナッ! コチラノ主砲ハマダ有効射程外ダッ! コノ距離デ当タルハズガ!』 ピッ
ビーーーッ!
『方位0000ッ! 直撃ッ!』 ビイイイイイッ!
ギュワアアアーーッ! ボコオオッ! ドカアッ! ドゴオオオオンンンーーッ!
ビーッ! ビーッ! ゴオオオオッ! グラグラ ガタガタ…
『ダメージレポートッ!』 ピピッ!
タタタタタタ ピコ ビコビコッ!
『大型艦艇『ライデン』よりの砲撃、着弾3ッ! 艦体左舷中央装甲板大破、多目的ミサイル発射ナセル1番全壊使用不能、ブレードナイト発艦デッキ大破炎上、自律思考型ブレードナイト『グリフォスD/FAV7』8機ガ発艦デッキ内で大破使用不能、操艦、戦闘継続は可能』 ピッ ピコピコ!
ゴゴゴゴ モクモクモク ドオオオンンッ! パチパチパチ メラメラ
『オノレ人間ドモメッ! ダガ、タカガ2隻ダ、保有ブレードナイトノ半数ヲ失ッタガ12機モアレバ十分、戦力差ハコチラガ有利ナノダッ! コノママ進軍ッ! 大型艦艇『ライデン』ヲ撃沈スルノダッ!』 ピッ
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーッ! モクモクモク ゴゴゴゴ…
ココル共和国大陸自衛艦隊 完全自動無人艦隊の斥候前衛艦隊は、旗艦の巡航艦が被弾中破炎上したまま「ユキカゼ」と「ライデン」の2艦に向かって、進軍を続けた。 その頃、強襲巡航艦「ライデン」では、主砲発砲と同時に、「ライデン」のブレードナイト発艦デッキ内が慌ただしくなっていた。
ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイト発艦デッキー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「主砲発砲ッ! ブレードナイト隊、出すぞおおッ!」 ババッ!
「「「「 アイサーーッ! 」」」」 バババッ! ザッ! バタバタバタタッ!
強襲巡航艦「ライデン」のブレードナイト発艦デッキ内にいる整備員達が慌ただしく動き始めた。
ポンッ!
『ブレードナイト隊 直ちに発艦ッ! 第1小隊各ライナーは発艦体制をッ! 繰り返す、ブレード…』 ピッ
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「発艦デッキハッチ解放ッ!」 バッ!
ウィイイイインンッ! ガコオオンッ! ビュウウウーッ!
強襲巡航艦「ライデン」の発艦デッキのハッチが開くと、艦外からの風がデッキ内に舞い込んできた。その発艦デッキ内を整備用ハンガーから発艦用電磁カタパルトへと3機のブレードナイトが移動していた。
ガコオン ガコオン ガコオン プシュウウウーーッ! ヴオンッ!
ピコッ
『ライデンCICより第1小隊へッ!』 ピッ
「第1小隊アランです」 ピッ
『第1小隊、戦闘用小隊コードを『アルファー』に設定、以降はアルファー小隊になります』 ピッ
「了解ッ! よし、行くぞッ! マイロッ! ジェシカッ! アルファー小隊各機、各自の発艦用電磁カタパルトへッ!」 ピッ
『『 了解ッ! 』』 ピピッ!
アルファー小隊は、アラン中尉のブレードナイトを先頭に、マイロ中尉、ジェシカ中尉とそれぞれのブレードナイトが後に続き、発艦用電磁カタパルトへと向かっていった。
ピポッ!
『ライデンCICよりアルファー小隊各機へ伝達』 ピッ
「『『 アルファー小隊受信 』』」 ピッ
『敵艦隊よりブレードナイトが発艦、数は索敵エリア内で12機を確認、これを迎撃してください』 ピッ
ガコオン ガコオン
「アルファー小隊よりライデンCIC… いま確認した、敵機が12機か… 他に情報は無いですか?」 ピッ
『アルファー小隊へ、本艦前方に位置するヤマト皇国国防軍駆逐艦『ユキカゼ』より『ユキカゼ』所属のブレードナイトが出ます。友軍機と認定、敵味方識別コードを送りますので登録後確認、共同で迎撃行動をお願いします』 ピッ
「了解、ヤマト皇国のブレードナイトと共同か…」 カチカチ ピッ
ピッ
『マスター、敵味方識別コードを受信、登録します… ヤマト皇国国防軍、駆逐艦『ユキカゼ』搭載主力艦上戦闘機、ブレードナイト『ZERO 』、21型と52型の2機の登録を確認しました』 ピッ
ガコオン ガコオン
ピコピコ タタタタタタ ピピ ビコ!
「へええ、これがヤマト皇国国防軍の主力戦闘機かあ… 『アウシュレッザ』によく似ている」 ギュッ!
アルファー小隊の副隊長を務めるアラン中尉は、操縦席内にある全面パネルに映し出された、ヤマト皇国国防軍、主力戦闘機ブレードナイト「ZERO」のシルエットと、その敵味方識別コード登録完了の表示を見てつぶやいた。
ピッピー ピッピー ピッピー ガガガ ウィイイイン ゴオオンッ!
「オーライ オーライ 全機発艦位置へッ!」 ササ ササ バッ!
ガコオン ガコオン ガシュンッ! ジャキンッ! プシューッ! ビコッ!
「発艦用電磁カタパルトシャトル固定ッ! 班長ッ! 電磁カタパルト1番から3番ッ! 全機発艦準備よしッ!」 サッ!
「よし、発艦するぞ! 総員退避ーッ!」 ババ ダダダッ!
「「「「「 はッ! 」」」」」 バババッ! バタバタ ダダダダ!
ブレードナイト用発艦電磁カタパルト付近にいた整備員が一斉に退避していった。
ビーーーッ! ビコッ! ポンッ!
「ライデンCIC、アルファー小隊発艦準備完了 発艦指示を乞うッ!」 ピッ
『ライデンCICよりアルファー小隊ヘ、進路クリアー、順次発艦どうぞッ!』 ピッ
「よしッ! アルファー小隊 アルファー2ッ!『アウシュレッザD型F1R2 リーザ/アラン』発艦するッ!」 ピッ
ビーーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
「アルファー3『アウシュレッザD型R32 サニー/マイロ』出撃するッ!」 ピッ
ビーーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
「アルファー4『ウルグスパイアーD型SC レパート/ジェシカ』出ますッ!」 ピッ
ビーーーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
シュバアアアーーッ! ビュンビュンビュンッ! ゴオオオオーーッ!
アラン達アルファー小隊3機が、次々と勢いよく強襲巡航艦「ライデン」から飛び出していった。
ー同時刻、ヤマト皇国国防軍 一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー
「艦長ッ! 僚艦『ライデン』主砲を発砲ッ! ブレードナイト発艦開始ッ!」 バッ!
ピッ ピッ ビコビコッ!
「僚艦『ライデン』ブレードナイト3機を発艦ッ!」 バッ!
「よしッ! こちらも艦載機発艦ッ! 『ZERO』を出せッ!」 ババッ!
「はッ! ブレードナイト発艦デッキへ 直ちに坂本機を発艦ッ!」 ピッ
『こちら発艦デッキ、了解ッ!』 ピッ
ー一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ブレードナイト発艦デッキー
ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!
『発艦命令発令ッ! 坂本機発艦せよ!』 ポン
ガシュン ガシュン プシューッ!
「艦橋CIC、坂本少尉準備よしッ!」 ピッ
『電磁カタパルト1番用意よし、進路クリアーッ! 坂本機発艦始めッ!』 ピッ
「ブレードナイト『ZERO 21型 212』坂本ッ! 発艦するッ!」 ピッ グイッ!
ビーーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
ヒイイインッ! シュバアアアアーーッ! ピッ ピッ
『坂本機発艦終了ッ! 発艦デッキハッチ閉鎖ッ!』 ピッ
ウィイイイインン ゴウウンッ!
シュバアアアーーーーッ! ピッ ピッ ピッ
強襲巡航艦「ライデン」のアルファー小隊に続き、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」からも坂本少尉のブレードナイト「ZERO 21型 212」が勢いよく発艦していった。
ー同時刻 ヤマト皇国「樹海」辺境 平原地上ー
ヒイイイイインンンッ! ピッ カチカチ ピッ タンタン ピコピコ!
ピピピピピ ヴオンッ! ビイインッ! プシュウウウーーッ! ピッ
『白井中尉、発進準備完了しました』 ピッ
「よし、行くぞッ!」 ギュッ!
ピコ
『白井中尉、『ユキカゼ』より緊急通信』 ピッ
「なんだ?」 カチッ!
『ユキカゼCICより、白井中尉コンタクト』 ピッ
「白井中尉だ 受信」 ピッ
『北西、ココル共和国国境より、敵艦隊接近、『ユキカゼ』はこれより、アトランティア帝国艦艇、強襲巡航艦『ライデン』と共同戦線を取り、共に敵艦隊を迎撃、白井中尉は『ライデン』の砲撃開始後発艦する坂本機と合流、『ライデン』ブレードナイト部隊と協力し、敵ブレードナイト部隊の接近を阻止、迎撃せよ』 ピッ
「了解した、白井中尉、これより地上を離れ、坂本機と合流する! オーバー」 ピッ
『『ユキカゼ』CIC了解、 白井中尉に御武運をッ! アウト』 ピッ
ピッ
『白井中尉、上空の大型艦艇、アトランティア帝国艦『ライデン』より3機のブレードナイトが発艦、『ユキカゼ』からも僚機、坂本少尉のブレードナイト『ZERO 21型 212』の発艦を確認しました』 ピッ
カチカチ ピコ ピッ ピピ
「敵ブレードナイトは12機、それに対しこっちは俺の機を入れても5機のみ、12対5か… 分が悪いぜッ!」 グッ!
ピッ
『分が悪い以前の問題ですね、彼我の戦力差は7対3、圧倒的に不利な状態です』 ピッ
「正確な分析ありがとうよッ! 確かにな、だがうちの艦長はやる気だぜ」 ジイイ…
シュゴオオオオオーー…
白井中尉が、発進準備をしながら戦力的不利な状況を見出した時、上空を飛んでいく自分の母艦、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」の姿を見ていた。その時、愛機ブレードナイト『ZERO 52型202』の操縦席の外から声を掛かけられた。
「いや中尉、12対6だッ!」 ザッ! ニイッ!
「なッ! レオハルト中佐殿ッ!」 バッ!
それは、先程まで一緒にいたアトランティア帝国大陸艦隊中佐、レオハルト・ウォーカー中佐だった。
「よお、白井中尉、俺も参加するぜ!」 グッ!
「中佐殿ッ! アニス様のほうはよろしいのですかッ⁉︎」 ババッ!
「ああ、アイツは大丈夫だッ!」 二ッ!
テクテク ザッ!
「誰が大丈夫なの?」 サッ!
「わッ! アニスッ!」 ババッ!
いつの間にかアニスがその場に近づいている事に誰も気が付かなかった。
「おまえいつの間に…」 サ…
「ん、今だよ、ちょっとね…『アウディ』に話があったから、んしょ…」 バッ! ヨジヨジ…
シュンッ! トントン スッ! ストッ! ファサ…
アニスは、レオハルト中佐にそう言うと、レオハルト中佐の愛機、ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」の片膝によじ登り、そこから肩へと軽く飛んでその肩に座った。
ピッ
『Rog. アニス、久しぶりですね、元気そうで何よりです』 ピッ
「ん、アウディもね、どう調子は?」 ナデナデ
アニスはアウディの肩に座り、アウディの頭を撫でながら機体の調子を聞いた。
『Rog. レオンや『ライデン』の整備士たちに良くしてもらっています。今のところ不調はありませんね』 ピッ
「そう、アウディ… レオンを守っていてくれて、ありがとうね」 ナデナデ
『Rog. アニス、貴女との約束です。当然の事を遂行しているに過ぎません』 ピッ
「そっか… これからもレオンを守ってくれるかな?」 ニコ
『Rog. アニス、貴女の頼みは最優先事項です。約束しましょう、貴女にいただいた力の限り、この私がレオンを守り続けます』 ピッ
「ん、ありがとう、よろしくねアウディ」 ガバッ!
アニスはアウディの大きな頭に抱きついた。
パアアアアーーッ! ジジジジッ! バシュウウウーッ! ヴワンッ!
『Lst. アニスッ! これはッ⁉︎』 ピッ
アニスがアウディの頭に抱きついた瞬間、アウディのボディー全体が輝き、頭の側頭部、肩、両腕の一部、両足の脹脛、そして右胸の位置に神語であるヒエログリフが刻み込まれ、アウディの持つ全てのポテンシャルが大幅に上昇した。
「あッ! あらあ… あははは… 」 ちら…
アニスはその状態を確認した後、アウディの足元にいるレオハルト中佐の方を見た。すると、足元にいたはずのレオハルト中佐がいつの間にか高速移動術《縮地》を使って、アニスの座っているアウディの肩に移動していた。
シュバッ! ザッ!
「わッ! レオンッ!」 バッ!
そこには鬼のような形相をしたレオハルト中佐が立っていた。
「アニスおまええッ! あれほど触るなって言っただろうがあッ!」 ガシッ!
「わああーッ! レオンが怒ったあッ!」 ビクッ!
「今度は何をしたんだあ? ああん?」 ガシッ! グググッ!
レオハルト中佐はアニスの頭を鷲掴みにしてアニスに問いただした。
「ぎゃあああーッ! 割れちゃう割れちゃうッ! 今度こそアニちゃんの頭がああッ!」 ジタバタ!
『Rog. ははははッ!アニス、貴女とレオンはやはりいいコンビですね』 ピッ
「笑い事じゃねえぞアウディ、アニスはおまえに何をしたんだ?」 グッ!
『Rog. 全てのスペックが大幅に上昇、もう私に勝てるブレードナイトはこの世界に存在しないでしょう』 ピッ
「なにいいいッ!」 グググッ!
「痛い痛いッ! ぎゃあああーッ!」 ジタバタ ジタバタ!
「あッ すまん、ちょっとやり過ぎたか」 パッ!
「ううう… 痛かったよう… 女の子の頭になんて事するんだッ!レオンのばかちんッ!」 スリスリ グス…
アニスは涙目でレオハルト中佐に掴まれた自分の頭をさすっていた。
ピッ
『アウディ先輩、とんでもない性能値になってますね』 ピッ
『Rog. そうだね、自分でも驚いたよ。先ほどまで、私の性能は限界値に達していたとばかり思っていましたが、今はそれ以上に上がっている… まったく、アニスには驚かさせられる事ばかりですね』 ピッ
『アウディ先輩、アニス様とは一体どの様なお方なのでしょうか?』 ピッ
『Lst. アニスですか…』 ジイイ…
ワーワー ギャーギャーッ!
『Rog. 君も含めて我々の神… いや、それ以上の存在としか今は理解できない。 ただ、私はアニスの… あの娘の為ならなんでもしようと思う、それほどの存在と認識している』 ピッ ジイイ…
ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」と「ZERO 52型 202」は、機体間高速同期通信で会話をしていた。 そんな中、自分の肩で騒いでいるマスターのレオハルト中佐と、自分をここまでにしてもらったアニスとのやりとりを見てアウディは表情は出ないが、微笑んでいた。
ピッピイイーーッ!
『Rog. レオン、『ライデン』から緊急通信、『これより敵艦隊を迎撃を開始する』だそうです』 ピッ
「むッ!」 ザッ!
「中佐殿ッ! 先に行きますッ!」 カチ ピッ
バクンバクン プシュウウウーーッ! ヴオンッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウーーッ! シュゴオオオオオーーッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」は、操縦席のハッチを閉めた途端、スラスターを全開にして、上空へと飛び立っていった。
シュバアアアーー…
「ふッ! そろそろ俺も行くか、アニス待ってろよ」 二ッ
「うううッ… レオンなんかッ! 早く行っちゃえッ!」 プイッ!
「おうッ! 行ってくるぜッ!」 カチ ピッ!
バクンバクン プシュウウウ ヴオンッ!
「さあアウディ、さっさと片付けて戻ってこようぜ!」 カチカチ ピピ
『Rog. レオン、その意見に賛成です、行きますよ』 ピッ
「ああッ! じゃあなアニスッ!」 グイッ! ギュウッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーッ!
レオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」も、スラスターを全開にして、アニスたちのいる地面から勢いよく大空へと上昇していった。
シュゴオオオオオーー…
ヒュウウウ… トコトコトコ サッ
「アニスちゃん、レオンさん行っちゃたけどいいの?」 スッ
勇者の1人スズカが心配そうにアニスの元にやってきた。
「ん、これでいいの、これで… レオンには大空の方が似合ってるから」 サッ!
「え? アニスちゃん?」
ザッ ザッ ザッ! トコトコトコ ササッ!
そこへ、神獣のヤマタノオロチとアコンカグアの2人がアニスとスズカの2人に近づいてきた。
「アニス様、お疲れ様でした」 サッ
「アニス、無事に渡せるものが渡せたようだな」 サッ
「ん、カグア、ヘビくん、流石だね、気付いていたんだ… 」 サ…
「当然、我らは神獣ですぞッ!」 サッ
「アニス様のなさる事、分からない訳がございません」 ササッ
「ん、そうだね… ちゃんと渡せたよ、もう、レオンは大丈夫… さて、」 クルッ! ジイイ、ザシャッ!
「えッ! アニスちゃんッ!」 バッ
アニスは、高速で上昇していくレオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」を見上げていたが、ヤマタノオロチとの会話後、急に振り向き、誰もいない木々の生えた藪の方を見た。
テクテク ザッ!
「もう、白井もレオンもここにはいないよ、そろそろ姿を表してもいいんじゃないかな?」 サッ
アニスは木々の生えた藪の方に向けて声をかけた。
「ア、アニスちゃん? どうしたの?」 ササ
「スズカ、アニスさんどうしたんだ?」 ザザッ!
「分からない、突然向きを変えて、誰もいないのに声をかけてるの…」 フリフリ
ヒュウウウ ザワザワザワ バババ
木々が揺れ、藪がざわめきだした瞬間、それは現れた。
シュバッ! シュバババババッ! ザザザアアアッ! ザシュウウウ…
「「 なッ!(えッ!)」」 ババッ!
「ふむ、やはりな」 むうう…
「貴方達でしたか…」 フリフリ
「わああッ! 真っ黒集団だあッ!」 あははは…
そこに現れたのは、全身頭のてっぺんから爪先まで黒一色の服装、顔の部分は両目のみ見え、顔立や表情は一切わからなくしており、そんな出立ちの10人が立っていた。いきなり現れた彼らを見て、勇者の2人は驚き、神獣のの2人は、その存在に気付いていて、さして驚きもしなかった。
ただ、アニスだけはその姿を初めて見て率直な感想を述べ、呑気に笑っていた。
「にッ 忍者だッ!」 サッ!
「そ、そうよね、あれは忍者だよね…」 サッ!
「ん? ニンジャ? なんだそれ?」 ス…
勇者の2人は、現れたその10人の姿を見て、無意識にその言葉が出た。彼等のいた世界にはその存在が認識されていたからだった。
「アニスちゃん知らないの?」 サ
「ん、知らない、なにそれ?」 コクン
「忍者だよ忍者ッ! 忍術や幻術、いろんな技を使う忍びの者だよ!」 バッ!
「ん〜… あははは、わかんないや」 サリサリ
勇者サトシが興奮気味に、アニスに忍者の説明をしたが、アニスにとっては初めて見る者達で、一向に理解ができず頭をさすり笑っていた。
「サトシ、それにスズカよ、アニスはこの国に来て間もないのだ、忍者などわかる訳がないだろ」 サッ!
「あ… そうでした。ヤマタノオロチさん、すみません」 ス…
ザッ ザッ ザッ ザッ! ピタッ!
アニス達が忍者を見て話していた時、現れた10人の中から1人、アニス達の前に出てきて止まった。
「我々の事を忍者と、よくご存知だ。改めて言おう、我々はこのヤマト皇国国防軍公安部隊、まあ忍者でも良いが、申し訳ないが聖女アニス様、我々と共に来ていただきたい」 サッ
「ん? 聖女? 私がですか?」 ス
「はい、我らの主人が貴女にお会いしたいという事で、お迎えに来ました」 サッ
「ん〜、私だけですか? 他のみんなもいますが、一緒ではダメですか?」 サッ
「聖女アニス様のみと…」 サッ!
「ん、じゃあ行かないッ!」 バッ
「聖女アニス様ッ!」 バッ!
「だって、私にはヘビくんやカグア、サトシにスズカという友人がいます。彼らを放って貴方たちの主人などに会いたくはないです」 サッ
「「「「 アニス(さんッ!ちゃんッ!様ッ!) 」」」」 ババッ!
アニスの返答に、勇者と神獣の4人は同時に叫んだ。
「ううむ… では聖女アニス様、その者達がいなければ良いので?」 スッ
「ん、それは… どういう意味ですか?【佐藤 猛】中尉ッ!(だったかな?)」 ジッ!
「なッ! あッ ああッ…」 ババッ! ググッ…
アニスは忍者の放った言葉に対し、睨みながらその忍者の名前を言い問い詰めた。 突然、名前を言われたその忍者は一瞬怯み、言葉に詰まった。
「やっぱり佐藤でしたか、という事は後ろの9人も…」 ジイイッ…
バババッ! シャキシャキンッ! ザザッ!
アニスがさらに奥にいる9人を見つめた瞬間、全員が腰に帯刀していた剣を抜き構えた。
「よせッ! まずは話し合ってからだッ!」 バッ!
「「「「「「 ……… 」」」」」」 コクコクン チャキンンッ! ザザッ!
佐藤の名を言われた忍者が彼らに止めるよう指示を出すと、9人全員が無言でうなづき、剣を納め待機の姿勢をとった。
「ん、いい判断だね」 ニコ
「なぜ私の事が…」 ザッ バサッ!
頭の覆いを取るとその顔は、以前『樹海』の深層部で白井中尉と出会った佐藤中尉の顔がそこにあった。
「ん〜、一度会ってるからね、後ろにいる人たちも… 何人かわかりますよ」 スッ
「流石は聖女アニス様、我が主人がお会いになりたいだけの事はある…」 ジイイッ!
「主人ねえ… それで? 先程の返事を聞かせてくれますか?」 ニコ
「我が主人の指示は聖女アニス様お一人との会合ッ! 他の者は指示されておりません、邪魔なのです。 やはり聖女アニス様以外は此処で御辞退していただきたい!」 ザッ!
「それは了承できないかな」 ん〜…
「では、致し方ありません、少々手荒になりますが、ご了承いただけますかな?」 シュキンッ!
シュキシュキシュキインッ! ザザザッ! ババッ! グググッ!
黒装束集団の長なのか、佐藤中尉が腰の剣を抜き構えた。それに合わせて、後方の黒装束の9人も同じように再び剣を抜き構えた。
「サトシッ!」 バッ! シュバッ! チャキ!
「ああッ! わかってるッ!」 ババッ! チャキンンッ!
黒装束の集団が剣を抜いたのを見て、アニスの側にいた勇者の2人、サトシとスズカも聖剣と聖槍を手に取り構えた。
「ん、サトシ、スズカ… 」 サッ
「アニスちゃん、私たちも一緒に戦うわ」 グッ!
「そうです、忍者と戦うのは初めてだけど任せてください」 チャ!
「ん、そうだねえ… まあ、いいかな、私は佐藤の相手をします。2人ともお願いしますね」 ニコ
「「 はいッ! 」」 ババッ! グッ!
「「 では我らも… 」」 スッ!
「ヘビくんとカグアはダメッ!」 バッ! ササッ!
「「 えッ⁉︎ 」」 ピタッ!
勇者の2人を見て神獣の2人も参戦しようとしたのをアニスは止めた。
「アニス、なぜ止めるッ?」 バッ!
「そうですわッ! 私に任せて頂ければあのような者たちなど…」 グッ!
「瞬殺だよね」 ニコ
アニスは笑顔で答えた。
「なッ! 聖女アニス様、我らを愚弄するのですかッ!」 ババッ!
ザワッ! ギラッ! ゴゴゴゴッ! グググッ!
アニスの言葉に反応し、佐藤中尉は怒り、その後方にいる黒装束の集団からは怒りの雰囲気が伝わってきた。
「ん? まさか〜、あのね佐藤、これは貴方たちの事を思っての事だよ、この2人が相手をしたら、貴方たちみんな死んじゃうよ? いやでしょ? 死んじゃうの?」 サッ!
「聖女アニス様とはいえ、そのお言葉は感化できませんなッ!」 グッ!
「いやいやいや、この2人どころか勇者の2人でも佐藤たちに勝ち目はないよ」 フリフリ
「「 えッ? 」」 ササッ!
「アニスちゃん、それ本当?」 サ
「僕たち、そんなに強いかなあ?」 グッ!
「ん、強いよ、サトシとスズカは随分と成長しました。まあ、今までずっと神獣の2人が相手の模擬戦だったからね、わからないかな」 あはは…
これまで、勇者たち2人は訓練の一環として神獣の2人と模擬戦をしてきた。勇者の2人は一度としてその模擬戦に勝った事はなかったが、相手は神獣、人とは違う桁外れの強さである。今の自分の力量を測ることは難しかった。
「うぬううッ! 聖女アニス様ッ! 我々を侮辱した事、後で後悔しても知りませんぞッ! 怪我をされ、他の者が命を落としても知りませんからなッ! 覚悟なされッ!」 グッ!
「ん〜佐藤、本当にいいの? ケガだけじゃ済まなくなるかもよ?」 サ
「我々は主人に使える身、ケガや死など恐れぬ」 ググッ!
「仕方がない… ヘビくんとカグアは手を出しちゃダメだよ、いいねッ!」 ササッ!
「「 うむ(はい) 」」 コクン
「ん、じゃあサトシとスズカ」 バッ
「「 はいッ! 」」ババッ!
「気を抜かないように、あの中で2人… 他の人とは違い、少し強い者がいます、気をつけてください。それと… できれば殺さないでね」 サッ!
「「 わかりましたッ! 」」 チャキンンッ!
アニスは神獣の2人と勇者の2人に注意を促した。
「むううッ! ではいくぞッ! 目的は聖女アニス様の確保、けっして聖女アニス様に手をかけてはならん、その他の者を排除せよッ!」 ババッ! サッ!
シュバババッバババッ! シュバッ!
佐藤中尉がそう言うと、彼の背後にいた黒装束の9人が一斉に動き、その姿が消えた。
「スズカ、来るよ」 ググッ!
「サトシ、大丈夫、私にも見えてるから」 ニコ チャキ!
「ん、じゃあ私は佐藤のとこに行くね」 シュンッ! パッ!
その場からアニスの姿も消えた。
「ふうう、流石はアニスちゃんね、アレはどうしても見えないわ」 フリフリ
「スズカッ!来たぞッ!」 ギュッ!
シュバッ! ババッ! ビュンッ!
いきなり勇者スズカとサトシの目の前に、それぞれ1人の黒装束の忍者が現れ、剣を振り下ろしてきた。
「ふんッ!剣技ッ!《雷火閃光ッ!》」 ヒュンッ! シュババーーッ!
「はああッ! 槍技ッ!《瞬華滅槍扇ッ!》」 ビュンビュンッ! シュバアアアーーッ!
ビギイイイインンッ!
『『 うおおおーッ! わああああーーッ! 』』 ビュンッ! ザザザアアアーーーッ!
勇者サトシとスズカの聖剣、聖槍の一撃で、攻撃してきた忍者の2人は後方へと吹き飛んでいった。
ヒュンヒュン ビュンッ! ピタッ!
「「 さあ、覚悟しろッ!(なさいッ!) 」」 ビシッ!
そこには最強の勇者サトシとスズカの姿があった。
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