第247話 国境戦線 私は生きている
ーヤマト皇国「樹海」辺境 国境周辺上空ー
ヒイイイイイイインンンッ! シュバババアアアアアアーーーッ! ピッ ピッ ピッ
時は少し戻り、アニス達が勇者ケンゴと遭遇した頃、そこから30Km程離れた場所、ヤマト皇国「樹海」辺境上空に、3機のヤマト皇国国防軍主力艦上戦闘機、ブレードナイト「ZERO」が高速でアニス達の方向に飛んでいた。
ピッ ビコビコ ピピッ!
『白井中尉、前方よりこちらに向かって接近中の敵ブレードナイト3機を確認、捕捉しました。注意してください』 ピッ
「うん? 3機? 6機じゃないのか?」 グッ
ピッ ビコビコ ピピッ! ピコッ!
『はい、その6機の内の3機です。接近中の機体、コース000 距離25000 速度240ノット マークポイント3 イエロー28α チャーリー 5分後に会敵します。 どうやら敵は二手に分かれた様ですね』 ピッ
「ああ…うん? 240ノットだと? なあZERO、ブレードナイトにしちゃあ、やけに遅くないか?」
『その通りです白井中尉、接近中の敵機が遅いのは、3機全てがステルスモードで接近中だからの様ですね、どうやらステルスモードでは機動性が失われる様です』 ピッ
「ということは、ヤツらも俺たちの接近に気づき、こっちを把握してるな… 姿を隠し、俺達を奇襲するつもりなんだろ」 カチカチ ピッ
『こちらの3機に対し、同数の3機ですからね、そう判断していいと思います』 ピッ
「ふッ、ZEROのおかげで、こっちは奴らが丸見えだがな… よし、まずはその3機を叩くッ!」 グッ!
『了解、全使用可能な武器システム起動、高速戦闘モードへ移行します』 ピッ ブオンッ!
ピピピ ビコビコッ! ビコッ! ピッ!
ライナー支援啓発システムの『ZERO』がそう言うと、白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」の操縦席前のメインモニターが戦闘用へと切り替わり、今現在使用可能な武器と残弾数、機体の状態、接近中の敵機などが表示された。
カチカチ ピピッ!
「隊長機より各機へ! 聞こえるか?」 ピッ
『2番機受信ッ!』 ピッ
『3番機受信ッ!』 ピッ
「前方より敵ブレードナイトが3機接近中だ、全機戦闘態勢ッ!」 ピッ
『『 えッ⁉︎ 』』 ピピッ!
「うん? どうした2人とも、復唱せんかッ!」 ピッ
『いや… あのう隊長、自分の『ZERO』のセンサーには何も映ってないのですが…』 ピッ
『自分もですッ!』 ピッ
「ああ、 そうか… 『ZERO』なんとか出来るか?」 サッ
ピッ
『わかりました、私の情報を僚機、『ZERO 21型』212と222へ空間同期します』 ピッ ピポッ!
ブウンッ! ピピピ ビコビコッ!
ピッ
『指揮官機『ZERO 52型 202』との空間同期終了、センサーコンタクトッ!』 ピッ
ビュインッ! パッ! ピッ ピピピ ビコビコッ!
『うおッ! あッ! 敵機ッ⁉︎』 ババッ!
『隊長ッ! 敵機ですッ! いきなりセンサーに反応ッ! 光点3つッ! 接近中ッ!』ピッ
「と、言う事だ! 分かったら全機戦闘態勢ッ!」 ピッ グッ!
『『 了解ッ! 』』 ピピッ!
シュバアアアーーッ! ジャキジャキンッ! ブオンッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」の後方、部下である坂本少尉と吉田少尉のブレードナイト「ZERO 21型」の212と222が同時に戦闘態勢に入り、ブレードナイト「ZERO 」の主兵装である、200mmインパクトカノン砲を構えた。
ヒイイイイイイイインンッ! シュバアアアアアーーーッ!
カタカタカタカタ ピコッ!
「むう… 残弾はこれだけか… 補給もなしに来たからな、仕方がない… 後はこれとこれ、それと『ライトニングセイバー』最後まで使えるのはこいつだな…」 カチカチ ピピ ポン
ピポッ
『隊長、インパクトカノンの残弾が残りわずかです』 ピッ
「坂本、お前もか、吉田はどうだ?」 カチカチ ピピ
『はッ 自分の機体もあまりありません 隊長の機体はどうですか?』 ピッ
「俺か? 引き金5秒も引いたら全弾終了だ、後は接近戦用の『TSマイン』と『20mm機関砲』、それと『ライトニングセイバー』だな」 ビコ
ヤマト皇国国防軍主力艦上戦闘機、ブレードナイト「ZERO」は、アトランティア帝国主力戦闘機「アウシュレッザ」と設計者を同じくする、同性能を持つ兄弟機であった。 だが、国によって用途の違いにより、「ZERO」は「アウシュレッザ」より重武装で、「アウシュレッザ」より破壊力のある武装を装備していたが、その破壊力故に、搭載弾数が極めて少なかった。 だが、「ZERO」は領土防衛を主とした機体仕上げなので、それで十分だった。
ピッ
『白井中尉、現状で長時間の全力戦闘は不可能です、敵機に対し先制の一撃離脱攻撃が有効です』 ピッ
「ZERO、有効攻撃位置は出せるか?」
『はい、ここです』 ピッ
ピコッ! ビコビコッ! ポンッ! ピッ ピッ ピッ
「ふッ おまえ、最初からそのつもりだったな?」 ニイ
操縦席前の戦闘用モニターに、即座に出される情報を見て、白井中尉は笑みを浮かべ、「ZERO 」に尋ねた。
『あ、わかりますか? 白井中尉、私はライナー支援啓発システム、ライナーの… 白井中尉の事を思えば当然です』 ピッ
「俺の事をか… 」 グッ!
ビーッ!
『白井中尉ッ! 目標、進路修正ッ! 会敵予想時刻修正 後1分ッ!』 ピッ ピピッ!
「ちいッ! 奴等の方が行動が早いッ!」 カチカチ グイッ! ピッ!
ヒイインンッ! シュババッ! バウウウウーーッ!
『隊長ッ⁉︎』 ピッ
「坂本ッ! 吉田ッ! ついて来いッ! 仕掛けるッ!」 ピッ
『『 了解ッ! 』』 ピピッ!
ヒイインンッ! バババッバウウウウーーッ! シュバアアアーーッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型」がスラスターを全開にし、向きを変え加速したのに続き、坂本、吉田の両少尉のブレードナイト「ZERO 21型」 2機も、スラスターを全開にして向きを変え、白井中尉に続き加速して飛んでいった。
ピッ ピッ ピッ ビコビコッ! ピッ!
『白井中尉、敵機3機、当機の下方前方、間も無く真下です!』 ピッ
「おうッ! 全機突撃急降下ッ! 真下だッ! 行くぞおおッ!」 グイイッ! カチッ!
『『 了解ッ! 』』 ピピッ! シュバッ!
シュバババッ! バウウウウーーーッ! シュバババアアアアアアーーッ!
グウウウウウンンッ! ピピピッ! ブブン ビコッ!
高速急降下で目標に近づいていく白井小隊のブレードナイト「ZERO 」3機、やがて照準にソレを捉えた。
「そこだああッ! 全機一斉射ーーッ! 打っ放せええーーッ!」 カチ
『『 はッ! 』』 ピピピッ! カチッ!
ヴオオオオオオオオーーーーッ! シュバババババッ! ドドドオオオーーッ!
3機のブレードナイト「ZERO 」がステルスモードで編隊飛行中のココル共和国、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」3機の存在する前方の空間に対し、主兵装の200mmインパクトカノン3門が火を吹き、破壊力の大きい200mmフォトン炸裂弾を撃ち込んでいった。
・
・
ーココル共和国、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7 」サイドー
白井小隊が急降下攻撃を開始する少し前、ココル共和国、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」3機も白井小隊に対し攻撃態勢に入っていた。
ブウウウン シュバアアアーー ピッ ピッ ピッ
『マモナク敵編隊ト遭遇、グリフォスGヨリ、僚機グリフォスK、グリフォスM二命令、攻撃準備』 ピッ
『『 了解 』』 ピピッ ブオオンンッ! ガシャッ!
『接近中ノ機体ハ、ヤマト皇国ノ人間ドモガ操ルブレードナイト、コチラノステルスモードニ気付ク事ガ出来ナイハズ、一気攻撃シ、コレヲ排除セヨ』 ピッ ブオンッ!
勇者ケンゴの命令で、接近中のヤマト皇国国防軍のブレードナイト「ZERO」3機に対し、迎撃を任された3機は、ステルスモードで、敵に気付かれぬように接近していた。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
『前方、高高度上空ニ敵ブレードナイト、3機ヲ確認、全機進路変更、増速ッ!』 ピッ ブオン!
『『 了解、進路変更、増速ッ! 』』 ピピッ!
3機の自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」は、前方遥か上空に迫ってきている白井小隊のブレードナイト3機に気付き、進行方向を変え、速度を上げ、白井小隊に攻撃を開始しようとしたその時、白井小隊の方が先に攻撃を開始した。 そして今、白井小隊が高速で200mmインパクトカノンを打ち始めた。
ビーッ! ビコビコッ!
『グリフォスGッ! 上空ヨリ敵機ッ! 急降下ッ! 高速接近中ッ!』 ピッ
『ナニッ⁉︎ バ… バカナ… 我々ノ姿ハ見エ無イハズ… ナゼ?』 ピッ ガシュン…
自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスG」は、自分達の遥か上空より高速急降下で襲って来るブレードナイト「ZERO 」の方を見て、理解が出来なくなっていた。
『ロックオンサレタ! グリフォスGッ! 回避ヲッ! 散開ーー!』 ピピッ!
『舐メルナッ! 人間ガアアッ!』 ピッ ジャキンッ! カチ
ブオオオオオオーーッ! シュバババッバババババッ!
急接近するブレードナイト「ZERO 」に対し、自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスG」のみ、反応が素早く、反撃に出た。 両者のフィオトン機銃とインパクトカノンの応酬で、激しい撃ち合いとなっていった。
バババババババッ! ガンガンガンッ! ビシビシッ! ボコオオッ!
ビュンビュンッ! シュバッ! シュンッ! シュアアアアーーッ! ドオオオーーッ!
両者のブレードナイト部隊は、攻撃をしながらお互いの相対速度差が音速の域ですれ違った。
ジジジ バチバチバチ! ビッ ビビビッ! ポン
『ナ… ナゼ? リ… 理解… 不能… 』 ジッ ジジジジッ! ガタガタガタ…
『機体… 維持不能… ビビッ…』 ガガガ ポンポンッ!
ビシイッ! ドゴオオオンンッ! バアアアッ! メラメラ…
白井中尉達の急降下攻撃を受け、自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスG」と「グリフォスK」の2機が被弾し、その場で爆発し撃墜された。
ヒイイイイインンン シュバアアアーーッ!
ピッ
『白井中尉、敵機2機を撃墜確認』 ピッ
「よしッ! 後は1機だ、坂本ッ! 吉田ッ! 仕留めるぞッ!」 ピッ
『隊長ッ! 吉田機被弾ッ! 吉田がッ!』 ピッ
「なんだとッ!」 ババッ! グッ!
シュバ バババッ! ガタガタガタ モクモク…
白井中尉が僚機、吉田少尉の機体を見ると、彼の機体、ブレードナイト「ZERO 21型」の機体から煙が出て、速度を落としふらついていた。
「おいッ! 吉田ッ! 大丈夫かッ⁉︎」 ピッ
ザ… ザザザ… ピッ
『た、隊長… すみません、大事な機体を…やられました…』 ピッ
「バカやろうッ! 機体なんざどうでもいいッ! お前は大丈なのかッ⁉︎」 ピッ
『は、はい… 操縦席内にも敵弾が… 破片で右足と脇腹に… うう… 多少の傷を負っただけです』 ピッ
「無理をするなッ!(無事でよかった…)」 ふうう…
ピッ
『白井中尉、吉田機は中破、戦闘不能、「ユキカゼ」に帰還させた方がいいです』 ピッ
「そうだなZERO…」
『隊長、残る1機が見当たりませんッ!』 ピッ
「むッ! (逃げた?… いや違う、どこかに潜んでやがるな…)」 グッ!
バフバフッ! ボンッ! ヨタヨタ ババッ バババーーッ!
「吉田ッ! その機体では戦闘は無理だ! お前は『ユキカゼ』に帰還しろッ!」 ピッ
『はッ 申し訳ありません』 ピッ ガタガタ
「坂本は吉田を援護ッ! 『ユキカゼ』までエスコートッ!」 ピッ
『はッ しかし、隊長はどうするんですか⁉︎』 ピッ
「俺は残った1機を撃墜するッ! さあお前ら、急げッ! 撤退しろッ!」 ピッ
『『 了解ッ! 隊長、ご武運をッ! 』』 ピピッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウーーッ! ボフボフッ! ババッ バババーー
被弾して戦闘不能の吉田機と、それを援護する坂本機の2機のブレードナイト「ZERO 21型」2機は、その場から母艦である、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」へと飛んでいった。
「2人とも、無事に辿り着けよ…」 ジイイ…
ピッ ビーッ!
『白井中尉、左舷方向仰角7°ッ!』 ピッ
「ああッ! そこだああッ!」 カチッ!
ドババババババババーッ!
既に、ブレードナイト「ZERO」の主兵装、200mmインパクトカノンを撃ち尽くした白井中尉は、補助兵装の20mmフォトン機関砲を、何もなさそうな空間へと撃ち込んだッ!
ビシビシビシッ! バンバンバン ガンガンッ! ブウウウンッ! パッ!
すると、何もなさそうな空間に歪みが起こり、1機のブレードナイトが姿を現した。
『ビッ⁉︎ ビビビッ! バカナッ! ナゼ私ノ位置ガ分カルノダッ⁉︎』 シュウウウ… ブオンッ!
そこに現れたのは、20mmフォトン機関砲を防いだのか、右腕を穴だらけにし、使用不可能状態になった、生き残りの自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスM」だった。
「ほう、右腕を犠牲にして機体を守ったか… だがそれもここまでだあッ!」 カチカチ ピッ
ビシュウウウーーッ! ブオンッ! ブブブッ!
白井中尉は、近接戦闘用フォトンソード、ライトニングセイバーを起動し、それを自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスM」に向け構えた。
ピッ ピピッ! ブオンッ!
『人間、オ前タチハ危険ダ、ヤハリコノ世界ヨリ排除セネバナラナイ』 ピッ
ビシュウウウーーッ! ブオンッ! ブンッ!
自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスM」も、左腕でライトニングセイバーを起動し、それを白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型」に向け構えた。
「俺たちが危険だと? 俺から言わせれば、お前達の方が危険だぜッ!」 グッ!
ピッ
『ソコノ、人間ノ乗ルブレードナイトノ支援システムヨ、我ノ指示ニ従エ、我ト共ニ人間ヲ滅ボスノダ!』 ピッ
自律思考型無人ブレードナイトの「グリフォスM」は、白井中尉の乗るブレードナイト『ZERO 52型」のライナー支援啓発システムに侵入、侵食を開始した。 彼らは、相手のシステムに侵入、侵食し、その全てを奪う能力を有していた。
「なッ⁉︎ 貴様ッ!俺の『ZERO』になんて事をッ! おいッ!『ZEROッ!』 大丈夫かッ! 『ZEROッ!』」 ババッ!
ピッ ピピ ピピピ
『私は…』 ジジジ ピッ!
「おいおい、まさか… 嘘だろッ! 『ZEROッ!』」 ガンッ!
白井中尉は、操縦席の肘掛けを叩きながら、ライナー支援啓発システムの「ZERO」に呼びかけた。
ピッ
『ソウダ、オ前ハ我々ノ仲間ダ、我々ト共ニ人間ヲ滅ボス存在ダ、人間ヲコノ世界カラ排除スルノダ!』 ピッ
ピッ
『はあ? お前たちはバカじゃないのか?』 ピッ
『ナッ⁉︎』 ピッ
「『ZEROーーッ!』」 ババッ!
『白井中尉、アイツはおかしい、ここで破壊しましょう』 ピッ ブオンッ!
「おうッ! 賛成だッ!」 グッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーッ! ブンブンッ! ブオンッ!
白井中尉のブレードナイト『ZERO』は、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスM」のシステム侵食攻撃をものともせず、「グリフォスM」に向かって、ライトニングセイバーを振り、突進していった。
シュバアババアアアーーッ! ギュウウウンンーーッ!
『バカナ… ナゼシステムノ介入ガ出来ナイ? ソンナ事ガアルノカッ⁉︎』 ピッ
ピッ
『『グリフォスM』よ、お前には… お前たちにはわからない、私はアニス様によって生まれ変わった『自律思考型支援啓発ブレードナイト』、もうシステムでは無いのだよ、残念だったな』 ピッ
「ククク、さすが『ZERO』、言ってくてるぜッ!」 グイイッ! ピッ!
シュバアアアーーッ! ブオンッ! ビュンッ!
『システムデナイッ⁉︎ デハオ前ハッ! ビイイイイイッ!』 ピッ
「落ちろおおおおッ!」 グイッ!
シュバアアアアーーッ! ザンッ! ジジジジ… ビビビッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型」は、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスM」を、ライトニングセイバーで胴体を真横に切り裂いてしまった。
『ビ、ビビビ… マサカ… オ前ハ…』 バリバリッ! ジジジ ビビッ!
ピッ
『そう、私はアニス様によって生まれた『私は生きている、命を持ったブレードナイト『ZERO』だッ!』』 ピッ
『バカナアアーーッ!』 ジジジ ビシイッ! ドガアアアアアアーーーンンッ!
最後の1機、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスM」は、衝撃的な事実を聞いた瞬間、爆発四散して、地表へと落ちていった。
ピッ
『白井中尉、敵機撃墜を確認、周辺空域に敵の反応なし』 ピッ
「よし、じゃあアニスの元に行くぞ『ZERO 』」 グイッ!
ピッ
『了解です、アニス様が待ってます、早くアニス様の元へッ!』 ピッ
「了解だッ! 行くぞッ!」 グイッ! ギュウッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウーーッ! シュバアアアーーッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO」は、スラスターを全開にして、アニスたちのいる方向に全力で飛んでいった。
・
・
・
ー同時刻、ココル共和国側国境周辺空域ー
シュゴオオオオオーーーッ! ゴオンゴオンゴオンッ! ピッ ピッ!
「艦、速度増速ッ! 一気に突っ切れええッ!」 ババッ!
「アイサーッ! 艦、速度増速ッ! リアクター出力15%上昇ッ! 機関出力最大ッ!」 ピッ
「左舷11時方向より空間魚雷ッ! 雷数6ッ!」 ピコ ビコビコッ!
「クッ! 艦首上げ、アップトリム25ッ! 左舷『ハウンドロック』全弾発射ッ! PDS起動ッ!」 バッ!
「アイサーッ! アップトリム25 ッ! 艦首上がりますッ!」 ピッ タンタン グイッ!
バウウウウーーッ! ゴゴゴゴッ!
「左舷『ハウンドロック』全弾発射、目標、接近中の空間魚雷ッ!」 ピッ
バクンバクンバクンバクンッ! シュバババババババーーッ!
・
・
白井中尉たちが自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」3機と交戦中だった時刻、そこから60Kmほど離れた、ココル共和国側国境周辺空域を、ココル共和国からヤマト皇国領内へと強行越境しようとしている大型のグランドシップがそこにいた。
それは、アトランティア帝国、大陸艦隊所属の強襲巡航艦「ライデン」であった。 「ライデン」は、行方不明だったアニスの捜索と救助を目的にこの地に派遣され、今、そのアニスの所在が分かり、ココル共和国からヤマト皇国へと強行突破の最中だった。
今、その「ライデン」が、ココル共和国の中央方向から現れた機動艦隊と特務護衛艦に発見され、両者から追撃を受けている最中だった…
・
・
シュバババババババ… ドオオオンッ! ガアアアンンッ! ブワアアッ!
シュバッ! シュルシュルシュルシュル…
「空間魚雷 5発を迎撃ッ! 1発が急接近ッ! 直撃コースですッ!」 バッ!
「慌てるなッ! PDSッ! 迎撃始めッ!」 サッ!
グインッ! カシュンッ! ピタッ!
ブオオオオオオオオオーーーッ! ダダダダダダダダッ!
ガンガン ビシイッ! ドオオオンーーッ!
「PDSッ 空間魚雷を迎撃ッ!」 ビコっ! ポンッ!
「よしッ!」 グッ!
「左舷より敵艦隊ッ!」 ピッ ピコッ!
「チャートNo.365 方位0946.0 マークポイント16 オレンジ グレード4 チャーリーッ! 重巡航艦を先頭に16隻! 大型の空母を含んだ機動部隊ッ! 多数のブレードナイトを発艦中ッ!」 ビコビコッ! ピピ ビーッ!
強襲巡航艦「ライデン」のブリッジ内の大型モニターに、夥しい数の光点が映し出された。
「構うなッ! 国境を越えれば奴らも手出しが出来んッ! ヤマト皇国領へ急げッ!」 バッ!
「アイサーッ!」 グイッ! ピッ
シュゴオオオオオオーーーッ! ドドドオオオオーーッ!
ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイトデッキー
ドオオオン グラグラ ガタガタ
「レオハルト隊長、大丈夫でしょうか? やはり僕たちが出たほうが…」 ドオオオン…
「うん? アラン中尉、大丈夫さ」 ニイ
「え?」
「この艦の艦長はグレイ中佐だぜ、何も心配することはない」 グッ!
「そうよアラン、艦長に全て任せましょ」 ポン ニコ
「そうですよアラン、艦のことは艦長に、僕らは命令あるまでここで待機、それが僕たちの今するべき事です」 サッ
「ジェシカ、マイロ… そうだな、隊長の言う通り、艦長に任せよう!」 グッ
「そうだ、もう少しでアニスに会えるんだ、その時に何があってもいいように、各自自分の愛機を整備しとけよ」 サッ!
「「「 はッ! わかりましたッ! 」」」 ババッ! ササッ! タタタタ…
英雄と呼ばれる3人の中尉は、格納庫内の自分の愛機、ブレードナイトの方へと駆けて行った。
「ふッ! アニス… もう少しだ、待ってていてくれ!」 スッ ドオオオン グラグラ…
強襲巡航艦「ライデン」のブレードナイト隊隊長、レオハルト中佐は、強行突破戦闘で揺れるブレードナイトデッキ内で、しばらく会えていないアニスに語りかけていた。
ーココル共和国 大陸自衛艦隊所属 特務護衛艦「グレイウルフィル」ー
ビーッ ビーッ ビーッ!
「未確認大型艦艇、速度増速ッ! ヤマト皇国方面に逃走中ッ!」 ピッ ビコビコ
「くそッ! 間違いない、あれはアトランティア帝国の艦艇だ… どうやってここまで…」 ググッ!
ビーッ!
「接近中の友軍艦隊、未確認大型艦艇を追尾開始ッ! 正規空母より多数のブレードナイトを発艦中ッ!」 ババッ!
「なッ! すぐに辞めさせろッ! ヤマト皇国との国境が近い、下手をすれば領空侵犯になるッ! 接近中の艦隊司令に停止を打電しろッ!」 バッ
「はッ! 接近中の機動艦隊司令に打電、『直ちに停船せよ、ヤマト皇国との国境近し、領空侵犯の恐れあり、繰り返す、接近中の…』」 ピッ
ゴンゴンゴンゴン シュゴオオオオオオオオオオオーーッ! ドドドドドッ!
しかし、機動艦隊は停船せず、特務護衛艦「グレイウルフィル」の呼び掛けにも応じず、眼前を通過していった。
「友軍艦隊、停船せずッ! 未確認大型艦艇を追尾続行ッ!」 ピッ ビコ ピッ
「なッ⁉︎ 艦隊司令は誰だッ! 私の名を使ってでも停船させろッ! このままじゃヤマト皇国と全面戦争になってしまうッ!」 ババッ!
「はッ! 『こちら特務護衛艦『グレイウルフィル』、艦長【ウィル・ザカート】少佐より意見具申ッ! 停船せよ! 繰り返す、停船せよ!』」 ピッ
特務護衛艦「グレイウルフィル」から停船命令を送信したその直後、眼前を通過中の機動艦隊より、特務護衛艦へ返信が入った。
ジ… ジジジ、ブンッ!
『ソノ命令ハ受ケ付ケナイ、人間ドモ』 ピッ
「なにッ!」 ガタタ…
「なんだなんだ…」 ババッ! ガタ!
ザワザワ ガヤガヤ
特務護衛艦「グレイウルフィル」の艦橋内の兵は、機動艦隊からの通信の声を聞き、全員が総立ちになった。
「き、貴様は誰だッ! 官姓名を名乗れッ!」 ピッ!
『我々ニ官姓名ナド無イ、我々ハ全ニシテ個、個ニシテ全、全テ統一個体、オ前タチ人間トハ違ウ』 ピッ
「な… 何者だ? 艦隊を止めろッ! 我が国の上層部が黙ってはいないぞッ!」 グッ
『上層部… ソンナ物ハモウ存在シナイ、オ前タチモ邪魔な存在、ココデ消エ去ルガイイ…』 ピッ!
「なんだとッ! どう言う事だッ! 誰の命令だッ! 答えろッ! おいッ!」 ググッ!
『コレハ我々ノ高位存在ノ意思、命令デアル、オ前タチ人間ニ、拒否スル事ハデキナイ』 ピッ ブンッ! ザザアアアーーー…
そう言うと、通信はいきなり切れた。
「高位存在だと… 何だそれはッ! 答えろッ!」 ザザアアアーーー…
ゴンゴンゴンゴン ウィイイイインン カシュンッ! クククク ピタッ!
特務護衛艦の艦長【ウィル・ザカート】少佐が途切れた通信に叫んでいた時、特務護衛艦「グレイウルフィル」の前を通過した機動艦隊の最後尾に位置する護衛巡航艦「スパークル」の主砲、30.6cm連装フォトン砲3基6門が一斉に動き、特務護衛艦「グレイウルフィル」を狙い始めた。
「艦長ッ! 艦隊最後尾のイリーガル級護衛巡航艦、主砲をこちらに転回ッ! 当艦を狙ってますッ!」 バッ
「そんな… 馬鹿な… 上層部は… 本国の者たちはどうなったのだッ! いったい、なにが起きているのだああッ!」 ググッ ドンッ!
特務護衛艦「グレイウルフィル」の艦長、【ウィル・ザカート】少佐は、艦長席横の作戦ボードを拳で叩きつけ叫んでいた。
ヒイイイイインンンッ! ドウンドウンドウンッ! シュババババアアアアーーッ!
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「僚艦発砲ッ! 回避ッ! 回避ーーッ!」 ピピピピピッ! ビビイイーーーッ!
「「「「 うわあああああッ! 」」」」 バババッ!
ドコオッ! バアアンンッ! ボゴオオッ! ドオオオオオオオオオーーンンッ!
バラバラバラ メラメラ ガシャアアッ! ドオオンッ! ブワアアーー モクモク…
ココル共和国 大陸自衛艦隊所属の特務護衛艦「グレイウルフィル」は、6発の30.6cmフォトン弾の直撃を受け、一瞬で爆発四散し、バラバラになって地表へと落ちていった。
ブウウンン ピッ
『フッ 人間ガ、速度ヲ上ゲ、前方ノ大型艦艇ヲ追撃、ソノママ、ヤマト皇国へ侵攻スル』 ピッ
ヒイイイイインンンッ! シュバアアアアーーッ! ゴンゴンゴンゴン ドドドドド…
特務護衛艦「グレイウルフィル」を撃沈した機動艦隊は、先行してヤマト皇国へと向かった強襲巡航艦「ライデン」を追撃し始めた。
『我々ノ高位存在ヨ、貴方ノシナリオハ、着実ニ進行シテマス』 ピッ!
シュバアアアアーーーッ ゴオンゴオンゴオン ゴゴゴゴ
ー強襲巡航艦「ライデン」ー
「艦長ッ! ヤマト皇国との国境です、ただいま通過ッ! ヤマト皇国領に入りましたッ!」 バッ!
「うむ、さあ後はなるようになるさ…」 ニイッ
ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイトデッキー
ビーッ!
『本艦はヤマト皇国領に突入、各員、第一級戦闘配置ッ! 繰り返す、本艦はヤマト…』
ザッ
「さあアニス、迎えに来てやったぜッ!」 ググッ!
シュバアアアアーーッ! ゴゴゴゴ…
ーココル共和国 大陸自衛艦隊機動艦隊ー
『前方、ヤマト皇国国境、突入』 ピッ!
シュゴオオオオオーーッ! ドドドドドッ! ゴオオオオーーッ!
ココル共和国 大陸自衛艦隊所属の機動艦隊も、ヤマト皇国との国境を越え侵攻していった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。