第246話 勇者対勇者、再び
ーヤマト皇国「樹海」外縁部平原ー
シュバアアアーーッ! ドオオオオンンッ! ブワアアアッ! バラバラバラ…
「アニスちゃーんッ!」 ババッ!
「へッ! 聖女にはちっとキツかったかあッ⁉︎ だがまだだッ! 帝級魔法ッ!《グラウンド.ヘルファイアアッ!》」 バッ! キイイインッ!
シュゴオオオオオオーーーッ! ドオオオオオオンンンッ!
ジュワアッ! ボウウウッ! メラメラメラ ゴオオオオオオオオオッ!
勇者ケンゴの最高剣技、《爆炎黒龍斬》をアニスは真正面から受けた。その場は黒炎の炎と爆発の影響で、地面は抉れ、空に舞い上がった土が雨のように降ってきたが、それが治まる前に、勇者ケンゴは更に追い討ちの勇者特有の帝級魔法を放った。次の瞬間、アニスがいたであろう場所は、灼熱の炎の地獄と化していた。
ジュワアア… ドロドロ ボコボコ ボウボウ ゴオオオオオオオオオッ!
勇者ケンゴの魔法を放った場所は、大地は焼け焦げ、岩や岩石などは融点を越え溶けて流れ出し、まさに灼熱地獄と化していた。
「ククク、どうだあッ! 勇者による最高の連続攻撃コンボ… 魔王どころか神でさえただじゃ済まないぞッ! ましてや聖女なんざ瞬殺だろッ!」 ニヤ ババッ! ザッ!
ゴオオオオオオオオオッ! シュウウウ… シュバッ! パアアアンン!
「なにッ⁉︎」 ザッ!
サササアアア〜 サワサワ ソヨソヨ…
勇者ケンゴの攻撃で、灼熱地獄と化していた平原が、先にアニスが施していた魔法の影響で、溶け出し流れていた岩山や岩石は元に戻り、焼け焦げた高熱の平原も瞬時に元の自然豊かな平原へと復元されていた。だが、その場にはアニスの姿はどこにもなかった。
ザッ ザッ ザッ ピタッ… サワサワ…
「なんだあ、俺の攻撃の跡が元に戻ってやがる… そう言えば周りも元の平原になってやがるぜ…どうなってやがる」 キョロキョロ
勇者ケンゴはあたり周辺を見渡し、ここにきて、自分がいる平原の様子がおかしい事に気がついた。
ヒュウウ… ソヨソヨ サワサワ…
「何だかしんねえが、これだけの事だ… またあの創造神のやつが絡んでるのか? まあどうでもいい、それより… 」 クルッ クルッ! キョロキョロ ジイイ…
勇者ケンゴは辺りを見渡した。 彼の視界には、広大な平原と自分と同じ勇者のサトシとスズカの2人しか認識できなかった。
「ククク… はあっははははッ! やったぞッ! やってやったぞッ! 跡形も無く吹っ飛んじまったぜッ! あの女、アニスがいねえッ! どうだッ! 聞こえるかッ! 創造神ジオスッ! おまえの願いを、この俺が叶えてやったぜえッ!」 ググッ! バッ!
「そ…そんな、アニスちゃんが…」 ガクン ペタ…
「あのアニスさんが…」 フリフリ
勇者サトシとスズカの2人は、眼前の状況を見て愕然としていた。アレほどに強大で強いアニスが一瞬で消え去った… 周囲を見渡してもその気配が全く感じとられず、その存在を認識出来なかったからだった。
「ククク… さあて、次はお前らの番だな? サトシ〜… スズカ〜… 《ヒール》」 クルッ! ニヤ シュバッ! シュウウウ… ザッ ザッ ザッ
勇者ケンゴは、辺りにアニスの姿がないとわかると、離れた所にいた勇者サトシとスズカの方を向き、自身に治療魔法、《ヒール》を使い、治療しながら2人に近づいていった。
ザッ! シュキン!
「くそッ! 来るぞッ! スズカッ!」 バッ
「サ、サトシ……」 ガクガク ブルブル…
近づいて来る勇者ケンゴに対し、サトシは聖剣「クリューサオール」を構えたが、スズカは地面に腰を下ろしたまま震えていた。
「スズカッ!」 バッ
「無理よッ! あのアニスちゃんでも勝てなかったのよッ! 私たちに勝てるわけ無いじゃないッ!」 バッ ! フリフリ!
「スズカッ! 諦めるなッ! 思い出せッ! アニスさんに言われたことをッ! 僕たちに教え授けてくれたものをッ! 今の僕たちはなんだッ!」 サッ! チャキ!
「え!… 私たちは… そうだわ、確かアニスちゃんは…」 うう…
・
・
ーアニス、勇者特訓用異次元空間ー
ヒュウウウウウ… カチコチ カチコチ カチコチ…
草も木も生えていない、ただ硬い地面に岩山や岩石だらけの荒野、陽がどこに存在するのかわからないが明るい異空間、その中に、どこからともなく時を刻む音だけが聞こえていた。そんな場所に今、アニスと勇者サトシとスズカの3人が立っていた。
『ア、アニスちゃん… ここどこ?』 キョロキョロ
『草も木もない… アニスさん、まさか、さっきとは別の異世界ですか?』 キョロキョロ
『ん? 違うよ、ここは特訓用の異次元空間、異世界じゃあないです』 ニコ
『『 異次元空間ッ! 』』
『さて… 先ほども話したように、君たち勇者はただ私、アニスを抹殺するためにだけ、この偽世界「アーク」に呼ばれた存在… でもね、そんなの悲しすぎるよね… そこで、私が鍛え直し、変えてあげる』 ニコ
『え? アニスちゃん?』
『変えるって… アニスさん、一体なにを…』 サッ
『ん、サトシ、スズカ、今はただ創造神と聖女に召喚された、ただの勇者、勇者としての基本の能力と魔力は備わって入るけど、本来なら聖女によって更なる能力と魔力の解放、神からは強力な技と魔法を授かる筈なの… だけどそれが、今は備わっていない…』 フリフリ
『そうなんだ… 私たちの、勇者としての全てがまだ完全ではないんだ…』 サッ
『ん!』 コクン
『本当の… 僕たち勇者の力を出せてないと言うのですか?』 サッ
『ん!』 コクン
『じゃあ… 私たちは…』 グッ…
『でね、私が君たち2人を… 創造神ジオスから解放し、『本来の勇者』にしてあげます』 ニコ
『『 アニスさん(ちゃん)ッ! 出来るのですかッ⁉︎ 』』 ババッ! ザッ!
『うわッ! ええっと、い〜いッ? 今から私があなた達2人を解放します。 勇者としての能力と魔力、そして『あなた達、勇者の2人』のみが使用できる勇者の戦技と魔法を教えます、ついでに私の剣技もひとつ教えてあげるね、だけどそれは、いざと言う時まで使わないでね、まだ早いから…』 ニコ…
『『 はいッ! 』』 ババッ!
『じゃあ、まずは……』 ニコ シュバッ……
・
・
「はッ!」 サッ!
ガバッ! スクッ! ヒュンヒュンヒュンッ! ジャキンッ!
勇者スズカは、大切なことを思い出したのか、勢いよく立ち上がり、先程までの怯えた表情ではなく颯爽と自信あふれた顔つきになり、自分の武器、神槍「グリムランサー」を振り回し、勇者ケンゴに向け構えた。
「ありがとうサトシ… 思い出したわ、そう私たちはただの勇者じゃないッ!」 ググッ!
「そうだッ! スズカッ! 僕たちはただの勇者じゃない!」 ググッ!
「「 アニスさん(ちゃん)の勇者ッ!『聖戦士』だッ!(よッ!) 」」 チャキンンッ! ザザッ!
ブワアアアッ! シュゴオオオオオオーーーッ!
2人は、強大な魔力を纏い、それぞれの聖なる武器はそれに応じて、刀身や矛先が青白くかがやきはじめた。
「うん? おいおいおいッ! なんだよそりゃあ、かっこいいじゃねえか、俺にも教えろよッ!」 ふふ…
勇者ケンゴは勇者サトシとスズカの様相を見て、2人に尋ねた。
「ふんッ! あなたには無理ねッ! 一生かかってもこの技は会得出来ないッ!」 ザッ
「そうだケンゴ、この技はアニスさんのオリジナルッ! 僕たちだけの技、お前には絶対無理だッ!」 グッ!
「へッ そうかよ、じゃあ、お前たちを殺し、俺の聖剣でその技とさっきのサトシの剣技、吸収して奪い取ってやるぜッ!」 ググッ! チャキンッ!
「ふふ…ケンゴ、そううまくいくかしら?」 ニコ チャキ シュウウウッ!
「スズカの言う通り、さっきとは違うんだ、アニスさんに教わった剣技、受けてみろッ!」 ググッ! チャキッ! シュウウウッ!
「言うねえ、サトシ、スズカ、いいだろう、受けてやるよッ! さあ来やがれッ! 今度も返り討ちにしてやるぜッ!」 ニヤ チャキ!
勇者サトシとスズカに対し、勇者ケンゴも聖剣「アスカロン」を2人に向け構えた。
ジリ ジリ ババッ! ダダダダッ!
「「「 《縮地ッ!》 」」」 シュンッ! バババッ!
勇者の3人は、同時に高速移動術を使い、一瞬でその場から姿を消し、またしても高速戦闘に入った。
シュバババアアアアアーーッ! ブオンッ! シュバアアアーーッ!
「クク… こっちからいくぜえッ! 超級剣技いッ!《爆炎黒龍斬ッ!》」 キュインッ!
シュバッ! ドゴオオオオオオオオーーッ!
「うんッ 来るよ、スズカッ! アレを頼むッ!」 サッ シュバババババッ!
「ええ、任せてッ!」 ニコ! シュバババババッ!
ドゴオオオオオオーーーッ!
「ああっははははッ! 2人まとめて逝きやがれえッ!」 ニヤッ!
勇者ケンゴの超級剣技、《爆炎黒龍斬》の黒い炎の刃が高速で2人に迫っていった。
シュンシュンヒュヒュンッ! クルクルクルッ チャキッ!
「はあああッ! 聖戦槍技ッ!《アーテルッ!》」 ヴンッ! シュバッ!
「ぬッ! なんだとッ!」 ババッ!
グウウウンンッ! シュバッ! ドオオオオオオンンンッ! バアアアアッ!
迫り来る勇者ケンゴの超級剣技を、スズカが繰り出した聖戦槍技、《アーテル》の威力によって、方向を変えさせられ、明後日の方向に飛んで消えていった。
「今よッ! サトシお願いッ!」 ササッ! トン
「ああ、任せてくれ! 聖戦剣技ッ!《クラウド.バーストオオッ!》」 キュイン ブンッ!
ズバアアアアアアーーッ!
「うおおおッ! サトシいいッ!」 ババッ!
ドオオオオオオーーッ! シュバッ! バアアアアアアーーッ!
勇者サトシの聖戦剣技、聖なる光の波動は、勇者ケンゴを飲み込んでいった。
シュンッ! スタッ! ザッ!
「どうだケンゴ、これが僕たちの、勇者の本来の力だ!」 ビュンッ!
勇者サトシは《縮地》を解除し、聖剣「クリューサオール」を振り抜き、技を放った勇者ケンゴの方を睨んだ。
ビュホオオオオオオオ……… チリチリチリ シュウウウ〜…
「や…やろう… サトシのやつめえ〜…」 ギリッ! ググッ! チリチリ ポタ… ポタポタ…
勇者サトシの技がおさまったそこには、全身に火傷のような痕と、口から血を流した勇者ケンゴが立っていた。
「やはり… さすがは勇者ケンゴ、一撃では倒せないか…」 ビュンビュンッ! チャキッ!
「そうね、まあ、ケンゴも勇者、しょうがないわ」 ヒュンヒュンッ! チャキッ!
傷だらけの勇者ケンゴに対し、勇者サトシとスズカは、聖剣と聖槍を再び構えた。
「サトシ、てめええッ… 許さねえ… ぶっ殺してやるううッ! うおおおおッ!」 ググッ ブワアアアアッ!
シュバアアアーーッ! ゴオオオオオオオオオーーッ! ババババババッ!
勇者ケンゴは眼を真っ赤に血張らせ、自身の魔力を最大限まで高めた。それは大気を震わせ、微細な静電気を辺りに撒き散らかした。 その体に纏った魔力は今のサトシ達と同等のものだった。
「くッ! ケンゴのやつ… あいつも勇者の力に目覚めてたのか…」 ビリビリ…
「そう見たいね、でも… これで私たちと対等かしら?」 ビリビリ…
「ああ、これで互角、対等だッ!」 ビリ… ビリ… チャキ!
「じゃあ、次はアレね」 ニコ ビリ… ビリ… チャキ!
「うん、スズカはサポートを、ケンゴの相手は同じ剣士の僕がやるッ!」 ググッ!
「了解したわサトシ、気をつけてね」 サッ!
「ああッ!」 コクッ! ババッ! チャキ!
大気中の静電気がおさまり、勇者サトシは聖剣「クリューサオール」を構えた。そして勇者ケンゴも…
「はあはあはあ、ククク… サトシ、もう加減なんかしねえぞ、覚悟はいいかあ… 俺の、創造神から譲り受けた技、見せてやる、神の技を… さあいくぞおッ!」 ニタアッ! ググッ! チャキッ!
「ああ、ケンゴ、君は神の技を、僕も… 僕の女神、アニスさんの技をッ! 勝負だッ!」 ニッ! ザッ! ビュンッ! チャキ!
サトシとケンゴ、2人の勇者が、互いの聖剣を相手に向け構えた。その時、一瞬でその場に2人の人物が現れた。
シュバババババッ! シュタタ ザザアアーーッ !
「うん? アニスがいないぞ」 キョロキョロ
「アニス様、いったいどこに?」 キョロキョロ
勇者スズカの近くに現れたのは、人化した神獣の【ヤマタノオロチ】と【アコンカグア】の2人だった。彼らはかなり離れた場所からここの状況を見、急遽ここに馳せ参じたのだった。
「ヤマタノオロチさんッ! アコンカグアさんッ!」 ババッ!
「うむ、スズカか、アニスの姿が見えんが知らないか?」 サッ
「え… ア、アニスちゃんは… (どうしよう… アニスちゃんの事をなんと言えば…. )」 うう…
「それに、あの勇者… 先程、アニス様に剣を向けていましたわね… 」 ジイイ… ギラッ!
「ああそうだ、だが今はサトシと交戦中らしい… 邪魔はするなよアコンカグア」 サッ
「わかってますわ、でも万が一、サトシが負けた時は… あの勇者は、この私が始末します… よろしいですわね、ヤマタノオロチ… 」 ニヤアッ! パキポキ ゴゴゴゴ…
「あ… ああ、かまわんが…」 タラ〜…
アコンカグアの勇者ケンゴを見る目が冷たく光を宿し、アコンカグアは勇者ケンゴを抹殺対象に確定した。
「やれやれ… しかし、アニスはいったい… 」 キョロキョロ
「ヤマタノオロチ、あれ…」 スッ!
「ム… そういう事か…」 コクン
「ですわね」 コクン
ヤマタノオロチは辺りを見渡した、そしてアコンカグアの示唆する方を見てあることに納得した。
「ちッ! またアイツらか… と言うことは、グリフィスVのヤツ、アイツらにやられたと言うことか… 全く、時間稼ぎも出来ないのか、役立たず供めッ!」 ふんッ!
勇者ケンゴは、一瞬で現れた神獣の2人を見て、彼らを相手に指示を出した、自立思考型無人ブレードナイト「グリフィスD/FAV7」の「グリフィスV」が破壊され、2人の阻止失敗を罵った。
「ふん、まあ所詮は無人の自動機械、こんなものか…」 グッ!
勇者ケンゴは、現れた2人が神獣が人化した姿とは知らなかった。 グリフィスVは決して弱いブレードナイトではなかった。ただ、相手が強すぎた、神獣に勝てる者など神以上、或いはそれと同等以上の力を持った存在しかいなかった。
「へッ サトシ、待たせたな」 ググッ ブワアアアアッ!
「いや、そうでもないさッ!」 ググッ ブワアアアアッ!
「ふむ… あの勇者、随分と力を付けたようだ、サトシと互角か…」 むう…
「大したことありませんわ、私ならあのような者一瞬ですわよ」 ジイイ…
勇者ケンゴと勇者サトシはお互いの間合いを取り、魔力を高めた。そしてその瞬間は訪れた。
「「 はあああああッ! 」」 ダダダダッ! シュキンッ!
「「 《縮地ッ!》 」」 シュバッ!
2人はお互いに聖剣を振り下げ、駆け寄った瞬間、高速移動術、《縮地》を使い、またも高速近接戦闘に入っていった。
シュバババババッ!
「喰らえサトシッ! これが俺の創造神の技だああッ!」 ビュンッ! ビュンッ!
「ああッ! ケンゴ! 来いッ!」 ビュンッ! ビュンッ!
シュバババババッ! ブワッ!
「うおおおッ! 神級剣技ッ!《ガイエス.グラン.ハーケンッ!》」 シュパンッ!
シュバッ! ドオオオオオオオオオーーッ! ギュワアアアアアアアアアーーッ!
それは、神が使う最上級の剣技、勇者と言えど神からの許可と指導を受けなければ使えない剣技だった。 それを勇者ケンゴは、創造神ジオスより授かり、勇者サトシに向けはなってきた。
「ほう、神級剣技か… アニス以外の物を見るのは初めてだな」 グッ
「ええ、そうですわね… さあサトシ、貴方はどう受けますかしら?」 ふふ…
「サトシ…」 ギュッ!
3人は、勇者同士の戦い、サトシとケンゴの戦いの行く末を見ていた。
シュババババババアアアアーーッ!
「そんなものおおッ! 聖戦技ッ!《烈斬ッ!》等級の2ッ! 威力の5ッ!《皇竜斬ーッ!》」 シュパアアンッ!
バッ! シュバアアアアアーーッ! ビュオオオオーーッ!
「なんだとおッ⁉︎」 ババッ!
ドオオオオオオオオーーーーーンッ! ブワアアアアーーーッ!
勇者ケンゴの神級剣技に対し、勇者サトシは、アニスに教わった聖戦士の剣技、しかもその派生型の最強剣技を放った。 その威力はお互いの剣技の威力を相殺し、大爆発を起こし消えていった。
シュウウウウ…
「バ、バカなッ! 神の剣技だぞッ! なんだそれはああッ!」 ググッ!
「はあはあはあ… す、凄いや、さすがアニスさんに教わった剣技… 神級剣技と同等なんて思わなかったよ」 はあはあ…
「凄い… アニスちゃんの剣技ってどうなってんのよ? 威力が尋常じゃないわ」 グッ
「スズカよ なにを言っておる、アレはまだ初期の剣技だぞ」 むう…
「そうよ、アニス様が本気で同じ剣技を使用したら、あの者など影も形も残らないわよ」 ふふふ…
「え?」 バッ
「まあ、アニスの場合は、聖戦技ではなく、その全てが神級剣技になってしまうがな」 ニイッ ククク…
「えええーーッ!」 ババッ
神獣の2人の言葉に、スズカは改めてアニスの力に驚いていた。
「ちッ! あんなのはまぐれだッ! 神の技が防げるわけがねえッ!」 ググッ
「それはどうかな? 僕の技は女神からって言っただろ?」 はあはあ…
「ふんッ ならこの技はどうだッ! 神級剣技ッ!《イリーガル.グラン.デスファイアーッ!》」 キュインッ!
シュバッ! ドゴオオオオオオオオーーッ! ブワアアアアアーーッ!
再び勇者ケンゴは、別の神の剣技を放ってきた。
「はあああッ! 聖戦技ッ!《烈斬ッ!》等級の3ッ! 威力の5ッ!《天竜閃ーーッ!》」 シュパアアンッ!
バシュッ! ドゴオオオオオオオオーーッ! シュバババババーーッ!
バッ ドゴオオオオオオオオーーンンッ! ブワアアアアーーッ!
またしても、勇者ケンゴの神級剣技は勇者サトシの聖戦技の前に相殺され消えていった。
「く、くそおおッ! ならこれでどうだッ!」 ババッ! サッ!
「はあはあ… ケ、ケンゴ、まだ何か… 」 ザッ!
神級剣技を防がれた勇者ケンゴは、聖剣を天空に翳し、呪文を唱え始めた。
「ククク… もうどうでもいい、お前たち全員を、ここでまとめて殺ってやるぜッ! 《デバイン.ホールッ!》」 パアアアンンッ!
勇者ケンゴの遥か上空、そこには金色の巨大な魔法陣が展開されていた。
「ムッ! アレはまずいな… 」 ジイイ…
「ええ… あの勇者は死ぬ気ですか?」 ジイイ…
「えッ えッ! なに、なになにッ⁉︎」 キョロキョロ ギュッ!
ゴゴゴゴ ブワアアアンンンッ!
「な、なんて大きな魔法陣なんだッ!」 バッ
勇者サトシは上空に現れた巨大な金色の魔法陣を見て驚いていた。
「はあっははははッ! サトシ、これでお前達は終わりだ、もう何処にも逃げ場はねえぜ!」 ククク…
「やめろケンゴッ! そんな大きな魔法を使ったら、お前もただじゃ済まないぞッ!」 バッ
「はッ 心配するな、俺には創造神の加護がついてるんだッ! 奴が俺を必要としている間は、なにが起ころうが俺は死にはしねえッ! お前達とは違うのさッ!」 ククク…
「なッ! やめろおおーーッ!」 ババッ!
「はははッ! 全員、そこでくたばりやがれえッ! 神級魔法ッ!《メテオ.グラン.ディストラクションッ!》」 キイインンッ!
ドッパアアアアアアアーーーッ! ゴゴゴゴゴゴオオオーーッ!
天空の巨大な金色の魔法陣から、超巨大な真っ赤に燃えた隕石が一つ、勇者サトシ達のいる地表に向け現れ、落下し始めた。 それは、誰の目にも、この世の終わりを告げるに相応しい巨大な落下物だった。
「はっはははははッ! はっはははははははッ!」 ババッ!
「く… だめだ、僕の力じゃ、あれは防げないッ!」 ググッ!
ゴゴゴゴゴゴオオオオオーーッ! シュゴオオオオオオーーッ!
「ははは… もうだめだわ… 」 ガクン ペタ…
「ふむ、流石にあれは、この私でも無理だな」 グッ
「私もですわ、まあ、我々はこの程度で消滅はしませんが…」 ちら…
「うむ、サトシとスズカか、まあ、跡形も残らぬな…」 フリフリ
「ううう… そんな… 」 フルフル…
神獣の2人は平然とことの成り行きを見ていたが、勇者のサトシとスズカは絶望の表情を浮かべていた。
「はっははははははッ! 落ちろッ! 落ちろおーーッ! 全てを吹き飛ばしてしまええッ!」 ババッ!
ドゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオーーッ!
「「 うわああッ! 」」 ギュウッ!
落下する巨大な燃え盛る隕石が近づき、それに身構えた勇者の2人が目を瞑った時、冷静な少女の声が彼らの耳に届いた。
「ん、ここまでだね、《イグニ.グラン.バーストオッ!》」 キインッ!
シュバアアアアアッ! ドゴオオオオオオオオーーッ!
「なッ! なにいいッ!」 ババッ!
「その魔法は消させてもらいますね」 ニコ
「「「「 アニス(様)(さん)(ちゃん)ッ! 」」」」 ババッ!
ゴオオオオオッ! ビシイイイッ! ジュワッ! ドオオオオオオオオオーーッ!
「うおおおおおおおおーーッ!」 シュバッ!
突然、その場に現れたアニスに、神獣の2人と勇者の2人、4人が同時に声を上げた。 落下してくる超巨大な、真っ赤に燃える隕石は、アニスの魔法により完全に粉砕され、その全てが天空へと吹き飛び、そこにあった金色の魔法陣を勇者ケンゴごと吹き飛ばし消滅していった。
ビュホオオオオオオオオオオーーッ………
「ん、消えた消えた、アレはちょっとね、威力がありすぎるよ」 テクテク スタ
そこには、青みがかった銀髪と純白のジャケットに膝丈のスカートを靡かせた、アニスが颯爽と立っていた。
「アニスさんッ! 助かりました。しかし、今までどこに…」 サッ
「ん? どこにって…」 サッ
アニスが勇者サトシの質問に応えようとした時、背後からいきなり抱きつかれた。
タタタタタタッ! ガバッ!
「アニスちゃ〜んッ!」 ギュウッ!
「うわああッ! えッ スズカッ!」 ババッ! ギュウッ!
「ううう… もうだめかと思ったよお」 グスグス…
「ん、ごめんね、心配させて」 ナデナデ
ザッ ザッ ザッ トコトコトコ
「「 アニス(様)! 」」 ササッ
「ん、ヘビくん、カグア、2人はどうだった?」 サッ
「え? アニスちゃん?」 スッ!
「うむ、勇者としては及第点、今少しは魔力と体力を増やしたほうがいいかと思います」 サッ
「そうですわね、サトシはそうですね、スズカ、貴女はもっと状況をよく見なさい、感情が乱れていい判断ができてませんでしたよ」 サッ
「それではッ! アニスさんが消えたのは…」 サッ
「ん、君たち勇者の2人が、創造神の勇者にどれだけ立ち向かえるか、試させてもらいました」 ニコ
「アニスちゃんひどいッ! それならそうと言ってくれればいいのにッ!」 バッ
「ん〜、でもね、私はいつか消されるかもしれない…」 スッ
「「 アニスさん(ちゃん)ッ! 」」 サッ
「そう、突然、あなたたちの前から消えるかもしれないの、そんな時のために、今回の状況を演出したんだ… 私が消え去った後の時のために…」
「いやッ! 私はそんなの絶対嫌だからねッ!」 ババッ
「そ、そうだよッ! 僕たちがもっと力をつけて、アニスさんを守るッ! 守ってみせますからッ!」 ババッ
「そうだぞアニス、その考えは捨てたほうがいい、我らもおるしなッ!」 グッ!
「アニス様、私が絶対にお守りします。消えるなんて言わないでください」 ギュッ!
「あはは… そうだね、そうか… みんなありがとう」 ニコ
5人で話し込んでいた時、再び彼はやってきた。
キインッ! シュバババババッ! ドオオンンッ! パラパラ…
「ん、やっぱり、生きてたんだ… 創造神の加護だもんね、当たり前か…」 ババッ!
「ふううッ ふううッ て、てめええッ! よよ… よくもッ… 」 フラフラ ガクガク
「「 ケンゴッ! 」」 ババッ!
そこには、満身創痍の勇者ケンゴが立っていた。
「なんと、アニスのあの攻撃を受けて生きてるとは、やつは不死身か?」 サッ
「では、今度は私がやりますわ」 スッ! トコトコトコ
シュバッ! シュウウウウ チャキンン!
アコンカグアは一瞬で白いワンピース姿から、漆黒の戦闘用ブラウスにアーマージャケット、黒いフレアスカートに漆黒の妖刀を手に持った姿に変え、妖刀を抜き勇者ケンゴに向け構えた。 その時、どこからともなく声が聞こえてきた。
『そこまでにしていただこう!』 キイインン
「はッ! 何者ッ! 姿を現しなさいッ!」 ササッ! チャキッ! キョロキョロ
「待ってカグア」 サッ
声の主を探し、臨戦体制に入ったアコンカグアをアニスが止めた。
「アニス様、なぜお止めになるのですか?」 サッ
「それ以上は近寄ってはダメ、上をよく見て」 サッ!
アニスの指示で、4人は一斉に上空を見た。
「「「「 えッ⁉︎ ぬッ! あッ! 」」」」 ババッ!
ヒュウウウウウ バサバサバサ!
「ククク…」 ニヤ
「ん、やはり… また君か」 フリフリ
「ようアニス、まだまだ元気そうだな」 ニイッ バサバサ
「ん、まあね、で、私に何か用なのか、創造神ジオスッ!」 スッ!
「「「「 創造神ッ! 」」」」 ババッバッ!
勇者ケンゴの頭上上空に空中で静止して現れたその人物は、アニスをこの世界から抹殺、消滅を望んでいる創造神ジオスだった。
「ククク…」 ニヤッ バサバサバサ…
いきなり現れた創造神ジオス、彼は不敵な笑みを浮かべ、アニス達を上空から見下ろしていた。
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。