第244話 勇者ケンゴ再び
ーヤマト皇国「樹海」外縁部ー
ヤマト皇国領に存在する広大な森「樹海」の外に出て来たアニス達は、突然飛んで来たロケット弾を人化した神獣の「アコンカグア」の手によって破壊した後、小高い見晴らしの良い丘の上にやって来た。
テクテク ピタッ
「ん〜、あっちがココル共和国で、こっちにある、あの大きく聳え立つ山が霊山『フジ』なんだよね」 スッ
「ああ、その通りだアニス、そしてその麓に広がる広大な森が我らの『樹海』なのだ」 ザッ!
「ふ〜ん、あの山の麓かあ、随分と広そうだね」
「まあな、毎年、皇国の人間が何人か迷子になっておる」 ムウ…
「それで、ヘビくんやカグアは、『樹海』の森から出ちゃったけど、大丈夫なの?」
「うん? ああ…アニス、その事だったら大丈夫だぞ!」 ニッ!
「そうですわ、アニス様♡」 ギュッ!
「わあッ! カグアッ!」 ギュウ…
「全く…カグアは、いちいちアニスに抱きつくのをやめんかッ!」 バッ!
「いいじゃないッ! 女の子同士だしッ! ヤキモチは醜いわよヤマタノオ、ロ、チ♡」 ニヤ
「ぬううッ!…おのれえッ! アコンカグア〜…」 グググッ! サッ! メラメラ
人化して、アニスのそばにいたヤマタノオロチは、同じく人化したアコンカグアの挑発に、額に血管を浮かび上がらせ、腰に帯刀していた黒刀に手を添えた。
「なによッ!」 ギイイッ! メラメラ
そんなヤマタノオロチを見ても、アコンカグアも負けずに、歯を喰いしばり睨み返していた。
「ふう〜 もう、ヘビくんもカグアもやめなさいッ!」 バッ!
「「 はッ! すまん(すみません) 」」 ササッ! ザッ!
アニスに注意され、アコンカグアはアニスから離れ、ヤマタノオロチと共に2人の人化した神獣は、同時にアニスに謝罪した。 颯爽と立っているアニスの前に2人が片膝を着き頭を下げている姿を、サトシとスズカの勇者2人はジッとその様子を見ていた。
「やっぱりアニスさんって凄いね」 うん
「ええ… 私、アニスちゃんと友達になれて、心底よかったわ」 キュ
「ああ、それは僕も同感だね。なんたって、勇者としての能力や魔力を上げてもらえたし、さらに様々な技や魔法も鍛え、教えてくれたんだ… ましてや神獣『アコンカグア』さんの加護、これを授かった事は大きい、勇者としてこれは物凄い事だよ」 グッ!
2人はアニスの特訓によって、勇者としての能力と魔力が大幅に上昇し、戦技や魔法も大きく向上していた。そこに加え、神獣「アコンカグア」からの恩恵である。 この世界の勇者として2人は、最早最強クラスに達していた。
スッ!
「《ファイアッ!》」 ボッ ボオオオオーーッ!
勇者サトシは何気に、右手を伸ばし、手のひらを上に向け火炎系の初級魔法、《ファイア》を唱えた。 いとも簡単に発動する炎の魔法… だがそれは、初級と言うにはあまりにも強大な炎が、サトシの手のひらから大空に向けて立ち昇った。
「サトシどうしたの? いきなり炎の魔法なんか使用して」 サ
ボオオオオーーッ!
「ああ、アニスさんに鍛えられたこの体… どの程度のものか初級の魔法で試して見たんだが…」 ジイイ…
ボオオオオーーッ!
「そうね、オロチさんやカグアさんに、『『 この森を出るまでは魔法は禁止だぞ(ですわ) 』』 って言われてたからね」 ジイイ…
ボオオオオーーッ!
2人は、サトシの出した、空高く昇る魔法の炎を見つめていた。
「なあスズカ… これ、どう見ても初級魔法じゃないよね」 ジイイ…
ボオオオオーーッ!
「ええ、どう見ても初級魔法じゃないわ、この炎の大きさだと中級の《ファイラル》… ん〜んッ上級の《ファイガレア》並じゃないかしら?」 う〜ん
ボオオオオーーッ!
「やっぱり… 僕もそう思うんだ」 ササッ! ギュッ バッ!
ボオオオオーーッ! シュバッ! シュウウウウ…
サトシは手のひらを握りそれを横に振り抜いて、炎の魔法を解除した。
「サトシ、感触はどう?」 うん?
「うん、全く魔力の減りを感じない、あれだけ大きな魔法を使用したのに殆んど魔力が減っていないんだ」 ギュッ パッ! ギュッ パッ!
サトシは魔法を使った手のひらを閉じたり開いたりして、魔力の減り具合を感じていた。
「へええ、炎系上級魔法を使っても、あまり魔力を使わないのね…」
「スズカもアニスさんに教わった魔法があったよね?」
「ええ、私のはこれよ」 ニコ
サッ!
「《アイスッ!》」 ピッ ビキビキビキイイッ! シュヒョオーーッ!
「おおおッ!」 バッ!
スズカが右腕を伸ばし、手のひらを向けた先に、巨大な氷柱が現れ、それもまた大空に向かって伸びていた。
「あれ? なんか大きいわよね、これ…」 ははは…
「ああ、僕のものと一緒で、スズカのこれも初級の《アイス》じゃなく、上級の《アイシェルガ》じゃないか?」 ジイイ…
ヒュオオオオオ…
「うん、そうみたい… 私としては初級魔法を使ったつもりなんだけどねえ…」 グッ! サッ!
シュバッ! ビキキッ! パアアンンッ! パラパラパラ…
スズカも手のひらを閉じ、横にその手を振ると、強大な氷柱は姿を消した。
「僕たちの魔法の威力が上がってるんだ、初級が上級になってしまうほどに…」 ググッ
「じゃあ、中級や上級は…」 ピク
「ここではちょっと… もっと何も無い所で試した方がいい」 コクン
「そうね、そうするわ」 コクン
「しかし…」 う〜ん
「サトシ、どうしたの?」 うん?
「魔法でこれだからね、僕やスズカの剣技や槍技、どうなってるんだろうと思って…」 はは…
「…無闇に使わない方がいいかも!」 サッ!
「そうだな!」 コクン
彼らの判断は正しかった。サトシとスズカの2人は、アニスの特訓の成果で、勇者として本来の力を引き出され、以前よりその身体能力と魔力が大幅に増強されていた。 今ここで、勇者の力を使った聖剣技や聖槍技を使用したならば、恐らくこの辺り一帯が不毛の大地となっていたかもしれなかった。それが、本来彼らの持っていた力とも知らず…
テクテク テクテク ザッ
「何をしてたんですか?」 ニコ サッ
「「 アニスさん(ちゃん) 」」 ババッ!
「ん?」
「え、ああ、いや、そのう…」 モジ…
「もうッ! サトシはッ! あのねアニスちゃん、私たちが今、どれだけの実力があるのか話し合っていたの」 サッ
「そう、そうなんです。アニスさん」 コクコク
「実力かあ… まあ、今この偽世界の勇者としては最強の部類かな… そう、本来、勇者が異世界に渡り召喚された時、その世界で最初から持っている能力くらいになれたと思うよ」 ニコ
「「 えッ⁉︎ 」」 バッ
「ん? どうしたの?」
「いや僕たち、最初にアニスさんと出会った時より随分と強くなった気がするんですが…」 サッ
「そうなのよアニスちゃん。 保有魔力や魔法、戦う術、そしてこの身体、そのどれもが以前と違うの… それが本当は本来、勇者が異世界に渡った時、最初に持っていたって、どう言う事なの?」 ササッ
「ああ…それはね、サトシやスズカ達をこの偽世界『アーク』に召喚した召喚者と、その過程で出会った神の所為だからねえ」 う〜ん…
「「 え? 召喚者と神様の所為? 」」 はて?
「んッ」 コクン
ザッ ザッ ザッ トコトコトコ スッ
そこへ、アニスのすぐ背後に、神獣で人化したヤマタノオロチとアコンカグアの2人がやって来た。
「どうしたのだ2人とも?」 ザッ
「そうですわ、いきなり魔法なんか試したりして」 うん?
「ヤマタノオロチさんにアコンカグアさん…」
「今、アニスちゃんに私たちの… 勇者の能力の事を聞いたのですが…」 サッ
「なんだ、やっと本来の力を手に入れて動揺してるのか?」 ジイイ…
「勇者らしくなったのでしょ、アニス様にしっかりとお礼をしなさいよ!」 バッ
「え? お2人は僕たちの事を気づいていたのですか?」
「「 当然! 」」 ババッ!
神獣の2人は同時に返事をした。
「うん? アコンカグア、嘘はいけないぞ、本当は気付いておらんかったのであろう」 ふふふ
「いやいやいや、嘘はあなたじゃなくて、ヤマタノオロチ、貴方こそ気付いてはいなかったでしょ」 ホホホ
「ほう、我を嘘つきと申したか」 ニヤ ふふふ チャキ!
「あら、本当の事を言われて悔しいの?」 ニコ ホホホ シュバッ! チャキ!
2人はお互い、笑いながらヤマタノオロチは黒刀を、アコンカグアは純白のワンピースから漆黒の戦闘服に瞬時に変え妖刀を、それぞれ手をかけ、今まさにそれを抜こうとしていた。 その時…
「やめなさいッ! バカちんッ!」 シュンッ! ガンッ! ゴンッ!
「「 ぎゃああああッ! 」」 ジタバタ ジタバタ
アニスは2人の背後に瞬時に現れ、両者の頭に拳骨を落とした。神獣の2人はその痛みでいきなり頭を両手で抱え、地面にのたうちまわっていた。
「痛い痛い痛いッ! アニス様ッ! ごめんなさい! これは痛すぎますッ!」 シュバッ! ううう…
「ぐおおッ! こ、これはきつい… すまぬアニス、調子に乗りすぎた…」 うぐぐ…
「次は本気でいきますからね!」 ニコ!
「「 ひいいいッ! もうしませんッ! 」」 ババッ!
「ん、じゃあ話の続きね」 ニコ
「「 は、はいッ! (わああ… 神獣の2人があんなに痛がってる…) 」」 ババッ!
「えっと、勇者の能力の事だったかな?」
「はい… 僕たちをこの世界に召喚した召喚者とその過程で出会った神様の所為で、勇者としての元々の能力が低かったと言う事ですが…」
「ああそれね、つまり本来、勇者は最初に召喚された異世界で最強の力を持って召喚されるの、今の貴方達くらいのね。 ただし、ただ召喚されただけではダメ、それだけでは勇者の力は発揮も発動もしない… ただ力を制御できず、自分自身がその力に振り回されるだけ」 スッ!
「それじゃあどうやって… 勇者は力を制御できるんですか?」 バッ
「それはね、召喚した召喚者… 確かこの偽世界では聖女だったかな、彼女達から祝福という名の儀式をしてもらう事、まあ、『能力解放』っていう儀式だけどね」 サッ
「そうかッ! 僕たちを召喚した聖女様はッ!」 バッ
「ええ、私たちを召喚した後、倒れて未だに目を覚ましていないわ」 スッ
「ん、今までサトシもスズカも、その聖女から祝福の儀式をしてもらっていない、だから勇者の能力や魔法が低かったんだ」
「じゃあ、ケンゴ達は!」 バッ
「ん、恐らく彼らも、あの様子じゃあ、聖女からもらった様子がないね」 フリフリ
「そうね、あの時でさえ、以前の私たちより弱かったもの…」 コクン
スズカは、以前「樹海」の森の中で、ココル共和国の勇者、ケンゴ達4人と戦った事を思い出した。
「ああ、次にまたケンゴ達が来ても大丈夫だッ! 今の僕たちに敵いっこないさ!」 バッ!
「だけど気をつけた方がいいかな…」 ジッ!
「「 アニスさん(ちゃん)? 」」
「勇者の能力を元々の状態、今のサトシやスズカ達と同等にしたり、それ以上に上げる方法はまだいくつもあるの!」 サッ
「それって…」
「さっきも言った途中経過で出会った神、創造神ジオスがその創造の力を使って、彼らの能力を上げて来るかも知れない、それともまた別の方法で上げて来るかも知れない…」
「「 創造神ッ! 」」
サトシとスズカは驚きを隠せなかった。 確かに、この偽世界に来る直前、あの何もない空間で神に出会った。 ただ、それがどんな神なのか2人は知らなかったからだった。
「そんなッ! 最強の神の1人じゃないかッ!」 バッ
「最強か… そうだね… たしかに最強かな」 ニコ
「ちょっと待って、じゃあその最強の神様がアニスちゃんをこの偽世界から消滅させようとしてるのッ⁉︎ って言う事は、アニスちゃんって聖女様ではなくて、まさか… か、神様… 女神様なのッ⁉︎」 ババッ!
「なんだお前たち、そんな事も気がつかなかったのか?」 ジロッ!
「全く呆れますわ、私たち、神獣が2人も従えている時点で、ただの聖女であるわけがないのに、アニス様に失礼ですよ」 ふふ…
「「 あわわわッ! どうしよう 」」 ザザ…
神獣の2人と勇者の2人、彼らがそんな事を話していた時、アニスは以外な事を言った。
「ん? 私は神ではないですよ」 ニコ
「「「「 は? え? なッ? はい? 」」」」 サササッ!
「だから、私、アニスは神ではありませんよ!」 サッ! フリフリ
「「「「 えええーーーッ⁉︎ 」」」」 バババッ!
アニスを除く4人全員が驚きの声をあげていた。そこへ、急速に近づく者がいた。
「ん! 何か来るッ! 私の事は後でね、みんな伏せてッ!」 ババッ!
「「「「 えッ⁉︎ はッ! なにッ! わあッ! 」」」」 ザザザッ! ババッ!
シュバアアアアアアアアアアーーッ! ゴオオオオオーーーッ!
その瞬間、アニス達の頭上を高速で通過して行った物体があった。
・
・
・
ーヤマト皇国「樹海」外縁部上空ー
ヒイイイイインンンッ! シュバババアアアーーーッ!
ピッ ピッ ピッ ブオンッ!
アニス達のいる場所に近い上空、勇者ケンゴを乗せた6機編隊の自立思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」が高速で飛んでいた。
ピッ
『勇者ケンゴ、後方ヨリ3機ノ反応、敵ブレードナイトガ追尾中!』 ピッ
「うん? ヤマト皇国の奴らだな、目標までの距離は?」 グッ
『ハイ、コノママノ速度デ約5分程デ到着シマス』 ピッ
「すぐだな… グリフォスV、邪魔をされたくない、後方から追尾して来る3機をなんとかしてくれ」
『了解シマシタ。指揮官機グリフォスVヨリ命令、僚機グリフォスG、K、Mハ直チニ反転、後方ヨリ接近中の敵ブレードナイトヲ撃破セヨ』 ピピッ!
ピッ ピピ ヴオンッ! ピッ!
『『『 了解 』』』 ピピピッ!
シュバアアアアーーッ! クルッ! ヒイイインンッ! バウウウウーーッ!
6機編隊の後方3機が急反転し、自分たちを追跡して来るヤマト皇国のブレードナイトに対し迎撃に向かった。
ピッ
『勇者ケンゴ、コレデ邪魔ハ入リマセン』 ピッ
「おう、それでいい」 ククク
『間モ無ク目表地点デス』 ピッ
シュバアアアアーーーッ ピピピピピ ビコッ!
「はははッ! 見つけたぞッ! 勇者サトシッ! それと勇者スズカッ!」 ギラッ!
ドオオオオオオーーーッ! シュバアアアアアアアアアアーーッ!
勇者ケンゴの乗るブレードナイトを先頭に、3機のブレードナイトが、アニス達の頭上をすれ違った。
ゴオオオオーーッ! ビュオオオオオーーッ! バサバサバサッ!
「うわッ!」 ババッ! ビュウウウーーッ!
「きゃあッ!」 バサバサッ!
「ムウウッ! 人間の機械人形かッ!」 ジイイッ! バサバサ!
「ふん、うるさい奴らだわね!」 ギッ! バサバサ!
「ん〜、勇者か…」 サッ! バサバサバサ…
アニス達5人は、通り過ぎて行った3機編隊の動きを強い風の中、大空を飛ぶその軌跡を目で追っていた。
ピッ
『勇者ケンゴ、目標地点ニ5人ノ反応ガアリマス』 ピッ
「ああ、そいつらに間違いない、グリフォスV、そいつらの前に着地してくれ」 グッ!
『了解、全機着陸、我ニ続ケ!』 ピピッ
『『 グリフォスR、L了解 』』 ピピピッ!
バウウウウーーッ シュバアアアアーーッ! グウウウンンッ! ピッ ピッ
「ククク、待ってろよサトシ、スズカッ! この前の礼を倍にして返してやるぜッ!」 ググッ!
グリフォスVの操縦席内で、操縦席前にあるメインモニターに映る2人の勇者、サトシとスズカを見て、勇者ケンゴは、以前負けた時の事を思いながら叫んでいた。
シュバババババアアーッ! ゴオオオオッ!
「ムッ! 降りて来るようですな」 ジイイ…
「人間の分際で、我らに何用なのかしら?」 ふんッ!
「サトシ、何か嫌な感じがするわ」 ギュッ!
「ああ、僕もだよスズカ… なんだこの違和感は…」 ググッ!
「……..」 ジイイ…
ヒイイイイインンン ガシュウンッ! プシュウウウーーッ! ピッ ピッ
ガシュン グググ ピコ バクンバクン ザッ!
3機同時に地面に降り立ち、その内の真ん中の1機のみ片膝を付き、胸の操縦席のハッチを開いた。 そして、中から1人の男が出てきた。
「ククク、また会ったなサトシ、それとスズカ」 ニヤ
「「 ケンゴッ! 」」 ババッ!
勇者サトシとスズカの2人は、ブレードナイトの中から現れた人物を見て驚き叫んだ。
「うぬ! またあの勇者か… 懲りない奴め!」 ザッ!
「ほう、あやつも勇者なのか… サトシとスズカとはちと毛並みが違いますわね」 ジイイ…
「カグアは初めて会ったのかな、そう彼もサトシやスズカと同じ、この偽世界に召喚された勇者なんだ」 サッ
「では、あの者もアニス様のご友人ですか?」
「ん〜ん、アレは創造神、ジオスの勇者、私を消すためだけに召喚され、育てられてる勇者だよ!」 フリフリ
「「 ムッ! ハッ! 」」 シュバッ! シュリインッ! チャキッ!
アニスのその一言に、ヤマタノオロチとアコンカグアの2人は、自身の持つ魔力を一気に高め、ヤマタノオロチは黒刀を、アコンカグアは白いワンピース姿から全身黒い戦闘服スタイルになり、妖刀を抜き、其々が現れた勇者ケンゴに向け構えた。
「おッ! 見かけない奴が2人もいるじゃねえか、なかなか強そうだが今、お前達の相手をしてる暇はねえ」 ニヤニヤ
「ほう、随分と言うではないか」 ニイイッ! ググッ!
「私たちを見てもその態度、相当腕に自信があるのか、それとも只の空けか…」 ふふふ ギッ!
「へええ… どうやったのか…いや、ジオスの諫言か… そうか、いよいよ持って私をこの偽世界から消す方向に向かっているんだね…」 フリフリ
「へッ 流石は創造神の標的になる女だ、俺の今の実力を見抜いてやがる」 ニヤ ククク ババッ!
シュンッ! スタ ザッ!
勇者ケンゴは、ブレードナイトの操縦席ハッチの辺りから地面へと飛び降り、アニス達の前に正対した。
「「 ケンゴッ! 」」 ババッ! シュリンッ! シュバッ! チャキッ!
勇者ケンゴに対し、同じ勇者のサトシとスズカも、自身の聖剣と聖槍を顕現させ、それを構えた。
「ククク、5対1か、まあ別に構わんが、当初の目的はお前達2人だッ!」 シュキンッ! バッ!
勇者ケンゴも自身の聖剣を顕現させ、それをアニス達に向け構えた。
「さて、勇者の相手は俺がする、グリフォスV、他の連中を頼めるか?」 ググッ!
ピッ ガシュン! ブオンッ!
『了解シマシタ、ターゲットハ、前方ニ位置スル勇者ヲ除ク3人デ宜シイデショウカ?』 ピッ
「ああ、だがあの白い銀髪の女には気を付けろよ! 創造神のお気に入りの強さだぜ!」 ニヤ
『了解シマシタ、全力ヲ尽クシマス』 ピッ
ガシュン ガシュン ガシュン ピタッ! ブオンッ!
「ん〜、ヘビくん、カグア、どうしよう?」 サッ!
「アニス、知れた事、我らに歯向かうは不届千万ッ! 私にお任せ下さい!」 ザザッ ニヤ!
「あら、ヤマタノオロチだけにいい格好はさせませんわ、私もやりますわよ!」 ふふ ニヤ!
「はああ、仕方がないね、サトシとスズカの方は大丈夫?」 サッ!
「もちろんッ! 大丈夫よアニスちゃん」 バッ!
「勇者は勇者で方を付けますッ! 見ててください! アニスさんッ!」 ググッ!
神獣の2人に続き、勇者の2人も自信満々に返事をしていた。
「ククク 大丈夫だと? 方を付ける? お前ら、以前の俺とは違うんだぜ、いいのかそんな軽口を叩いて、俺はどんどん力をつける! そしてそこの女ッ! 俺はお前を消し、やがて神も、この世界全てを消し去ってやるッ!」ババ グッ!
「ケンゴ… いつものケンゴじゃない…」
「ああ、もう、僕たちの知ってるケンゴじゃないな、アレは別の何かだ…」 ググッ
「さあ行くぜえ! サトシッ! スズカッ!」 ババッ! ザッ!
「「 ああッ!(ええッ!)」」 ザザッ! ググッ!
ダダダッ!
「「「 《縮地ッ!》 」」」 バババッ! シュバッ! シュンッ!
3人の勇者は同時に高速移動術《縮地》を唱え、高速接近戦闘に入った。
シュバババババッ! シュンッ! ババッ! キンッ! キュインッ! ザザッ! バッ! バッ!
広大な平原に、高速で動く移動音と剣と剣が鍔迫り合いをする検撃の音がこだましていた。
ピッ ブ〜ン ピピ
ガシュン ガシュン ガシュン ブオンッ!
『攻撃目標ヲ確認』 ピ
「さて、我が黒刀の威力、その金属の身体で味わうがいい」 グググッ! ザッ!
サッ サササッ! ピタッ!
「ふふふ、さあ来なさい、その身体、バラバラにさせていただきますわ」 ニヤ チャキッ! シュバッ!
ピピピッ! ピコピコ ビコッ! ガシュンッ! ジャキンッ! ピッ!
剣を構えている神獣の2人に対し、自立思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」3機は、彼らに対し12.7mmフォトン機銃を構え、それを3機同時に打ち出した。
『殲滅ッ!』 ピッ!
ドガガガガガガガガガッ! ババババババッ! ドドドッドドドッド!
「むッ! そのようなものッ!《縮地ッ!》」 シュバ! ササッ! ババッ! シュンシュンッ!
ヤマタノオロチは、ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の銃撃を、高速移動術で全て避け、急接近して行った。
シュバッ! ザッ!
「ふッ! その巨大な図体を恨むがいいッ! 剣技ッ!《蛇撃烈斬抜刀牙ッ!》」 ビュンッ! シュバアアアーーッ!
ピッ ビビビッ!
『ビイイイイイーーッ! 馬鹿ナーーッ!』 ビコッ! ザンッ!
ビキキキッ! ジジ…ジジジジ… ドオオオオンンッ! ブワアアッ!
シュンシュンッ! チャキンンッ!
「でかいだけではないか…」 ムウ!
ヤマタノオロチは一瞬で、13m以上もある巨体のブレードナイトを袈裟懸けに斬りつけ、破壊してしまった。
「さて、アコンカグアの方は… ふむ、やるではないか…」 ニヤ…
ヤマタノオロチが見たそこには、既に一体のブレードナイト「グリフォスD/FAV7」が、手足と頭部を切り離され、戦闘不能状態で地面に転がっており、残るもう一体、「グリフォスV」と戦闘中のアコンカグアがそこにいた。
ブオン ピッ ビコビコ!
ドガガガガッ! シュンシュンッ! バババッ! ヒュウウウンン カラカラカラカ…
『残弾ゼロ! ナゼ当タラナイ! ピッ 馬鹿ナッ! グリフォスR、L共ニ信号消失! 戦闘不能ロストダト⁉︎ 目標ハ完全ニ想定外ノ行動パターン、本機ノ性能ヲ超エテ攻撃ヲ続行中、対処不能!』 ピピピッ!
ガシュン ガシュン ブン ブオンッ! ブンッ!
残されたグリフィスVは、撃ち尽くしたフォトン機銃を、まるで棍棒のように持ち、振り回して自分に比べ小さな黒服の少女に向けそれを振り回していた。
「はッ! ふふ! そこッ!」 ブン ブン ササッ サッ サッ
シュバッ! ザンッ! ビシイッ! パンッ!
フォトン機銃を振り回し攻撃して来る「グリフォスV」を他所に、アコンカグアは涼しい顔をして余裕でそれを避け、隙を見ては妖刀で攻撃を続けていた。
ビー ビー バチバチバチッ!
「左脚、動力切断使用不能ッ!』 ピッ!
「さあ、とどめですわッ!」 シュバッ! ババッ! ググッ!
動きが鈍くなったグリフィスVの真上にやってきたアコンカグアは、妖刀を使ってトドメを刺した。
「ふふふ、戦技ッ!《天翔天破八連斬ッ!》」 キュパンッ! ババッ!
シュバババババッ! ザンッ!ザンッ! ビシイイイッ!
ビビビッ! ジジ… ジジジジ… ビビ…
『コ… 高位存在デアル主人…様… 』 ビビビ…
ビキキキッ! ドオオオオンンッ! バラバラバラ…
上空からのアコンカグアの戦技によって、ブレードナイト「グリフォスV」は、無数に切り刻まれ、爆発四散していった。
シュンッ! スタッ! チャキンンッ!
「これで2体撃破ですわ」 ニコ
神獣の2人は、あっという間に3体のブレードナイト「グリフォスD/FAV7」を撃破、撃墜破壊してしまった。
ザッ ザッ ザッ ピタッ!
「やるではないか」 ニヤ
「神獣としてこの程度、なんでもないですわ」 ふん!
「全くだ、後は勇者達だな」 スッ!
「ええ、そうね」 サッ
2人は、高速戦闘中の勇者達の方を見た。 そこには小高い丘の上から3人の勇者の戦いを見ている、青みがかった白銀髪と純白のブラウスにジャケット、膝丈のスカートに膝上までのニーソックス、戦闘用ショートブーツを履いたアニスが、髪とスカートを靡かせ立っていた。
「美しい… なんと神々しい姿なんだ…」 ムウウ…
「ああ、アニス様ッ! なんて素敵なお姿かしら…」 はああ♡ ギュウ!
神獣の2人はそんなアニスの姿に見惚れていた。
ドカッ! ババッ! ザッ シュンッ! シュババッ! バザーッ!
勇者ケンゴ、サトシ、スズカ、3人の戦いは以前続いていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。