第243話 創造神のシナリオ
ーヤマト皇国「樹海」辺境 国境付近上空ー
ピッ ピッ ゴウン ゴウン ゴウン シュゴオオオーーッ!
ゴゴゴゴ
アニス達のいた場所から約20Km、ヤマト皇国側国境付近上空をココル共和国の無人護衛艦「ソード1」が、攻撃型一等級駆逐艦「ユキカゼ」と交戦状態に入っていた。
ビーッ ビーッ
『ヤマト皇国ノ駆逐艦接近、『グリフォスC、D、E』ハコレヲ迎撃セヨ』 ブ〜ン!
ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ! ガシュンッ! ガシュンッ!
『『『 了解 』』』 ガシュンッ!
無人護衛艦「ソード1」のブレードナイト発艦デッキに、自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の3機が、発艦用電磁カタパルトについていた。 既に出撃していた「グリフォスA」と「グリフォスB」は撃墜され、追加戦力として「ソード1」が判断したのであった。
ピポッ!
『『グリフォスC.D.E』進路クリアー、発艦セヨ!』 ピコ!
『了解、発艦スル』 ピッ
ビーッ! ガシュンッ! シャアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!
ステルス無人護衛艦「ソード1」から、次々と3機の自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」が、発艦していった。 その真下、「樹海」の森の中からその様子を見ていた者がいた。
バサバサ! バッ! ザッ ザッ ザッ ピタッ! ニヤッ!
「フッ! どうやらアレは俺たちの国の艦のようだな… 」 ジイイッ!
ブレードナイトを発艦させ、ステルスモードで身を隠しながら戦闘体制に入っているステルス無人護衛艦「ソード1」を見て、そう言ったのは、ココル共和国が召喚した最後の勇者、【ケンゴ】だった。
彼は同じ召喚勇者のショウゴとイチロー、タケシの3人の内、ショウゴとタケシの能力を殺害して奪い、自分の物にして、勇者としての能力を上げていた。 本来ならイチローの能力も奪うつもりだったが、イチローの自害で、それは叶わなかった。
ググッ!
「イチローのヤツ… だが、まあいい、勇者はまだ他にもいるからな」 ククク
ココル共和国の勇者ケンゴは、神、創造神ジオスに『お前は私に選ばれた勇者、他の勇者達の能力を奪い取り込むのだッ! さすればお前はこの世界最強の勇者となり、我の敵、邪神をも倒せるだろう』と啓示を受け、動いていた。
「ククク… 俺が邪神を倒し、この世界最強の勇者になってやる!」 グッ!
シュゴオオオーーッ! ゴウン ゴウン ゴウン ゴゴゴゴ…
ザッ ザッ! クルッ! ジイイッ!
「ふん、あんな艦に今は用はないぜ、確かサトシとスズカだったな…」 バッ!
上空をステルスモードで移動するステルス無人護衛艦「ソード1」が自分の国の物とわかると、ケンゴは向きを変え、この国にいた2人の勇者、サトシとスズカに標的を定めた。
ギュウッ! ザッ ザッ ザッ!
「もうあの時とは違うッ! 今、俺は2人も勇者の力を取りこんでいるんだ、もうサトシなんかに負けはしねえッ! 俺の方が勇者として全ておいて上回っているはずだッ! サトシ、お前の能力も俺がいただいてやるからなッ!」 ググッ!
ケンゴは歩きながら拳を握りしめ、以前サトシに負けた時のことを思い、次は自分がサトシを抑え、その能力を取り込もうと考えていた。
ガサガサ バサバサ ザッ ザッ ババッ! ダンッ!
「くそッ! 全く方向がよく掴めねえ… サトシの奴ら、いったいどこに居やがるんだ…」 バッ
ザッ ザッ ガサガサ
ケンゴは鬱蒼とした「樹海」の森の中を、聖剣「アスカロン」で切り開きながら、闇雲に進んでいた。
ビュンビュンッ! バサッ! バサッ! ガサガサ ザッ! ザッ!
「このッ!このッ! くそ、切りがねえ、どうなってんだよんだこの藪はッ!」 ガサガサ
ケンゴは、アニス達がいる方向とは全く明後日の方向に進んでいた。しかしその時、ケンゴの前の樹々が薙ぎ倒され、彼の前に複数のブレードナイトが現れた。
バキバキバキッ! ドオオオンッ! プシュウウウ… ピッ ピッ ピッ!
「うおッ! なんだコイツらッ!」 ババッ! チャキンンッ! ググッ!
いきなり目の前に、樹々を倒しながら現れたブレードナイトに対し、ケンゴは聖剣「アスカロン」を相手に向け構えた。
「なんだお前らッ!」 チャキッ! ググッ!
ケンゴも流石は勇者、身長13mはある複数のブレードナイトに対し、怖気もせず聖剣を構え、戦う意欲満々だった。
ピッ ピッ ピッ ブ〜ン ブ〜ン ブ〜ン ピコッ!
「へッ! なんだっていいか、今の俺にかかりゃブレードナイトの1体や2体、どうって事はねえぜッ!」 ニヤッ! ググッ!
ケンゴの言う事は事実であり、今の彼の能力と力は、勇者3人分のを得ており、ブレードナイトを相手に戦える程になっていた。
「来ないんならこっちから行くぜッ!」 ババッ! シュバッ! ダダダッ
ピッ!
ケンゴが聖剣を振りかざし、いきなり現れたブレードナイトに対し攻撃をしようとした時、現れたブレードナイトの1体が、ケンゴに話しかけて来た。
『勇者ケンゴト確認、高位存在ノ指示ニ従イ、貴方ヲ援護シマス』 ピッ
「ぬッ! 俺を援護だと… どうやら敵ではないみたいだが…」 スッ チャキン! ザッ ザッ!
ケンゴは聖剣「アスカロン」を鞘に収め、眼前のブレードナイトに近づいていった。
ピッ ビコビコッ! ブオンッ!
ザッ ザッ ピタッ!
「お前達は俺の何なんだ?」 スッ!
ピピ
『我々ハ、ココル共和国、兵器開発局開発、機体No.BNT/ATT9080 名称『グリフォスD/FAV7」、ステルス自衛艦「ウィングバード」搭載、自律思考型ノ無人ブレードナイトデス』 ピッ
「へええ、とうとう無人機が実戦配備されたのか、こりゃあ、各国のブレードライナーも、その存在意義を無くしちまうなッ!」 サスリ サスリ
勇者ケンゴは、ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の足を触りながら、これからのブレードナイトの行く末を想像した。
カシュン ブオンッ!
『当然デス、我々ノ主人デアル高位存在ハ、人間ノ不必要性ヲ考エテイマス。ソノ為ノシナリオガ動キ始メマシタ』 ピッ
「シナリオだと?… 高位存在… アイツ、あの創造神だなッ! そうだろッ!」 ババッ!
『ワカリマセン、我々ニハ、高位存在トシカ認識デキマセン』 ピッ
「ふッ! まあいい、それで俺も人間だが? 俺も不必要な存在か?」 ギロッ
『イエ、勇者ケンゴニツイテハ抹消対象ニ含マレテマセン』 ピッ
「ほう… と言う事は、俺は奴にとってまだ利用価値のある、必要な存在と言うわけだ」 ニイッ!
『ソノ判断ハ、貴方ニ任セマス。現状ハ貴方ガ必要ナ情報ト、行動ノサポート及ビ戦闘支援ヲ行イマス』 ピッ
「ふんッ! まあ高位存在だの創造神だの、どんなシナリオかは知らないが俺の邪魔だけはするなッ! このくだらねえ世界を全て、この手で消し去ってやるッ! 俺の【ユカ】を殺したその全てを… 」 ググッ!
勇者ケンゴには【ユカ】と言う恋人がいた。だが、異世界召喚の時、彼女はこの世界に召喚されずその存在は、召喚最中に世界の壁を乗り越えられず消えてしまっていた。 ケンゴはその事でこの偽世界「アーク」と創造神に対し、復讐をしようとしていた。
「よし、手始めに人探しだ! この『樹海』の何処かにいる2人の勇者の位置を見つけろッ!」 サッ!
ピピ ブオンッ!
『勇者カドウカハワカリマセンガ、ココヨリ北西方向、距離5800ノ位置ニ、高イ魔力反応ヲ帯ビタ複数ノ人間ノ反応ガ有リマス』 ピッ
「おッ! やるじゃねえか、もう見つけたのか」 ニヤ グッ!
ガシュンッ! バクンバクンッ! ピッ
『ソノ反応ノアル場所マデ移動シマス。私ノ中ニオ乗リクダサイ』 ピッ
先頭のブレードナイト「グリフォスD/FAV7」が片膝をつき、操縦席ハッチを開いた。
「なんだ、操縦席があるじゃねえか、無人機のはずだろ?」 サッ
『アクマデモ補助的ナ仕様デス』 ピッ
「そうかい、じゃあ頼むぜ『グリフォスD/FAV7ッ!』」 ババッ! タンタン ドサッ!
ピッ バクンバクン ヒュイイイイイインンン! グワアアッ!
ピッ
『私ノ事ハ、『グリフォスV』トオ呼ビ下サイ』 ピッ
ピッ ピッブウウンンッ! パパパ ピコピコピコ ピッ!
「ほう、中の仕様は以前俺たちが使ってた、『ブラックストライカーD型FA』と一緒だな」 ギュッ ギュッ!
ピッ
『当然デス、開発生産シタ国ト企業ガ同ジナノデスカラ、操縦席内ハ統一サレテイマス』 ピッ
「成る程な、なんでも合理的にってやつか」 フッ…
ピッ
『デハ目的地マデ、ステルスモードデ飛行シマス』 ピッ
「ああ、頼むぜ『グリフォスV』」 グイッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーーッ!
勇者ケンゴを乗せたブレードナイト「グリフォスD/FAV7」6機が、上空へと舞い上がり、アニス達のいる方向へと飛び去った。
・
・
・
ーヤマト皇国領「樹海」辺境 国境周辺上空ー
シュバアアアーーッ! ヒイイイイインンンッ!
アニス達のいるところから離れる事約50kmの地点上空、3機のヤマト皇国国防軍、主力艦上戦闘機ブレードナイト「ZERO」が高速で飛んでいた。
ピッ
『白井中尉、目標ステルス艦のさらに向こう側、6機のブレードナイトを確認しました』 ピッ
「なにッ! 新手か? 『ZERO』こっちに向かって来てるのか?」 サッ
『いえ、どうやらこちらに向かって来ている3機とは別行動みたいです。北西方向へと移動を開始しました』 ピッ
「北西だと? そっちには何もないぞ…… まさかッ! アニスがいるんじゃないのかッ!」 ババッ!
『その可能性は高いですね、アニス様が野営地から逃走した方向と一致します』 ピッ
「ちッ! 不味いぞッ! 奴らにアニスをかっさられるッ!」 ギュウッ!
『そう簡単にアニス様を拉致できるでしょうか?』 ピッ
「ブレードナイトが6機だぞッ! 過剰戦力で襲えばいかにアニスでも… 」 ググッ!
『では、当面の敵を撃ち落とし、早急に向かってはどうでしょうか?』 ピッ
「ああ、そうしよう」 ピッピピ カチ
白井中尉は操縦席横の通信機のスイッチを入れた。
「こちら白井小隊、1番機白井ッ! 『ユキカゼ』CICコンタクト」 ピッ
『こちら『ユキカゼ』CIC、受信』 ピッ
「今から座標を送る、主砲による一斉射、援護射撃を求む」 ピッ
『『ユキカゼ』CIC了解、援護射撃座標を指示せよ オーバー』 ピッ
「了解、指示を待て アウト」 ピッ
「『ZERO』頼めるか?」
『問題ありません、最適座標を『ユキカゼ』に送ります』 ピッ
「頼む、上手くすれば、この一斉射で何機かは落とせる、そうすればアニスの元に早く行ける!」 ググッ!
『白井中尉、最適座標算出、『ユキカゼ』に送信します』 ピッ
「さすがは『ZERO』、やる事が早い」 ニイッ!
『いえいえ、こんな事、私にとって容易い事です』 ピッ
「言うねえ、」 カチ
「坂本ッ! 吉田ッ! 『ユキカゼ』から援護射撃が来る、その後、敵編隊に突っ込むぞッ!」 ピッ
『『 了解ッ! 』』 ピピッ!
ピッ ピッ ピッ
「よし、奴ら何も気付いてないな…」 ググッ!
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」の操縦席前にあるメインモニターに、こちらへと近づいて来る3つの光に点を彼は見て呟いた。
・
・
ーヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属 一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー
ピピピピピ ビコビコ ピッ!
「白井中尉の『ZERO 52型 202』より、砲撃座標受信ッ!」 バッ!
タタタタタタ ピコ ピッ!
「うん? こんな座標で良いのか? 何かの間違いじゃないのか?」 ギシッ!
「間違いありません、この場所を座標指定してます!」 ピッ カチカチ ピコ
「ふむ、白井中尉の事だ、間違いではなさそうだ… 副長ッ!」 サッ!
「はッ! 砲雷長ッ!主砲発射用意ッ!」 バッ!
「了解ッ! 1番2番ッ 12.7cm連装フォトン砲、砲撃準備」 ピッ カチカチ ピコ!
「砲撃データー入力ッ! 皇国エリア101 チャートNo.J04 距離2600 座標005から011ッ!」 カチカチ ピコ!
ウイイイイイインンンッ カシュンッ! グググ ピタッ!
「座標固定ッ! 弾種、徹甲フォトン炸裂弾ッ! 砲撃よしッ!」 ビコッ!
「援護射撃開始ッ! 斉射三連ッ!」 ババッ!
「はッ! 射撃開始ッ!」 ピッ
ヒイイイイインンンッ! ドドドドドオオオオンンッ! シュババババッ!
一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」の前部上甲板に装備されている12.7cm連装フォトン砲が三連射、指定座標に向けて立て続けに発射された。
・
・
ピッ
『白井中尉、母艦『ユキカゼ』が発砲ッ! こちらからの目標指定座標に向け援護射撃開始』 ピッ
シュシュシュッ! ヒュンッ! バババッ!
「どうだ『ZERO 』、お前の指定した座標だぞ?」 ジッ!
『完璧です。敵ブレードナイト、SS17からSS21へコース変更、援護射撃フォトン弾着弾地点に接近』 ピッ
「なッ⁉︎ 『ZERO 』お前、敵機の進路変更を知ってたのか?」 バッ
『いえ、ただ彼等の行動パターンを分析、おおよその位置と進路を予想、判断した結果です』 ピッ
「なんてヤツだ、お前、本当に俺の『ZERO 』か?」 サワサワ…
白井中尉は自分の操縦席シートを撫でながら、愛機「ZERO」に尋ねた。
『白井中尉、その話は後で、間も無く援護射撃フォトン弾、敵ブレードナイトに命中します… 3、2、1、今ッ!』 ピッ!
シュババッバババッ! ドオオオオンンッ! ドガアアアアンンッ! メラメラ バアアアーーッ!
何もないような座標地点で、援護射撃フォトン弾の着弾と炸裂、そして誘爆が巻き起こった。
「どうだッ!『ZERO ッ!』」 バッ!
『命中、2機大破撃墜ッ! 残数1…』 ピッ!
・
・
・
シュルシュルシュルッ! シュババッバババッ!
ピッ!
『砲撃ッ⁉︎ 全機散開ッ!』 ピッ
『『 間ニ合イマセン! 』』 ピピッ!
ドドドドッ! ドゴオオンンッ! ドカッ! バアアアッ! ドガアアアアンンッ! メラメラ
『グリフォスD、Eッ!』 ピピッ!
ステルス無人護衛艦「ソード1」から発艦して来た自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7 」の「グリフォスC、D、E」の3機は、ステルスモードと光学迷彩で姿を消し、ヤマト皇国の一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」に近づき、攻撃しようとしていた矢先、思わぬ砲撃を受けていた。
シュバアアアーッ! ブウウンンッ! ピッ ピッ ピッ
ピッ
『グリフォスD、Eノ反応ロスト、撃墜サレタ? ドウ言ウ事ダ、ナゼ我々ノ所在ガバレタ? ナゼ攻撃ヲ受ケタ? 理解不能』 ピッ ビビビ ビコッ!
増援出撃して来た3機のブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の指揮官機「グリフォスC」は、現状を理解できないでいた。 艦船の探査センサーに引っかからない様に、ステルスモードと光学迷彩で発見困難な状況で「ユキカゼ」に接近中だった。 しかも接近コースまで変え接近中だったのに砲撃を受け、僚機2機を失ったのだ、「グリフォスC 」の自律思考は混乱していた。
ピッ
『ドウヤッテコチラノ位置ヲ突キ止メタノダ! 我々ノステルスガ完璧デハ無カッタノカ?』ビビ ピッ
ヒイイイイインンンーーッ ブウウンンッ!
単機となった「グリフォスC」を、その上空から3機のブレードナイト「ZERO」が襲いかかった。
シュバアアアーーッ! ピピピピ ビコビコ!
「捉えたッ! 各機ッ! 一斉射ッ !」 ピッ カチッ!
『『 了解ッ! 』』 ピピッ! カチッ!
ブオオオオオオオオーーッ! ドッババババババッ!
ピッ
『ビーーーーーッ! バカナーーッ!』 ビビビッ!
ガンガンガンガンッ! ドカッ! ビシッ! ドオオオンンッ! バラバラ…
たった1機になった自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスC」に対し、3機のヤマト皇国国防軍、主力艦上戦闘機ブレードナイト「ZERO」の200mmインパクトカノン3門が一斉に火を吹き、無数のフォトン炸裂弾が襲い、あっという間に「グリフォスC」は穴だらけになり爆発四散していった。
ヒイイイイインンンッ! シュバアアアーーッ! ピッ ピッ ピッ
『白井中尉、敵機の撃墜を確認、敵ブレードナイト部隊、全滅です』 ピッ
「おうッ! 『ZERO』、お前のおかげだぜ!」 グッ!
撃墜した自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」の爆炎の中を突き抜けた白井中尉達、3機のブレードナイト「ZERO」が再び上空へと飛んでいった。
ピッ
『隊長ッ! 敵潜空艦はどうしますかッ⁉︎』 ピッ
「坂本、それは『ユキカゼ』に任せる、俺たちは要人確保にこのまま北西方向に飛ぶッ!」 グイッ! ピッ
『要人と言いますと、天帝様の仰ったあの少女ですかッ⁉︎』 ピッ
「ああ、やっと見つけたぜ…」 ギュウッ! ピッ
ピピ
『白井小隊、こちら『ユキカゼ』CIC、コンタクト』 ピッ
「『ユキカゼ』CIC 、白井小隊の白井だ 受信」 ピッ
『敵機の撃墜を確認、敵潜空艦をそのまま攻撃可能か?』 ピッ
「『ユキカゼ』CIC、敵潜空艦には『ユキカゼ』の方で対処して欲しい。艦長に代わってくれ」 ピッ
『艦長の青山だ、どうした白井中尉? 被弾したのか?』 ピッ
「艦長、こちらは誰も被弾をしていない!」 ピッ
『では?』 ピッ
「天帝様の要人を発見! アニスを見つけたぞ! 今から我が小隊はそこに向かう!」 ピッ
『一個小隊でか?』 ピッ
「艦長、『ユキカゼ』のセンサーには映らなかっただろうが、新手の6機のステルス機、ブレードナイトがアニスの方に向かった」 ピッ
『なにッ⁉︎ 6機だとッ!』 ピッ
「敵潜空艦が接近中だ、『ユキカゼ』はそれに対処して欲しい、アニスの方は我々が行くッ!」 ピッ
『了解した。敵潜空艦は任せろッ! 天帝様の要人、アニスさんを頼むッ!』 ピッ ブン!
「了解したッ!」 ピッ カチッ
ヒイイイイインンン シュゴオオオーーッ! ピッ ピッ
「さて、『ZERO』北西に向かった6機のブレードナイト、追跡できるか?」 ギュッ
『白井中尉、当然です。今も、6機ともトレース出来てますよ』 ピッ ポン ブン!
操縦席前の情報モニターに、ここいら周辺一帯の地図とその上に6つの光の点が北西方向に移動していた。
「やるなあ『ZERO』、ちなみにブレードナイトの機種もわかるか?」 ピッ タンタン
『当然、6機とも、先程撃墜したブレードナイトと同機種です』 ピッ
「ふむ…と、言うことは…」 グッ
『ステルス戦闘機ですね 私以外では少し厄介な相手です』 ピッ!
「くッ! 坂本ッ! 吉田ッ! 急ぐぞッ!」 カチカチ ピッ!
『隊長、いったいどこにッ⁉︎』 ピッ
『そうですッ! 敵潜空艦が急速に近づいているんですよッ! そっちは良いんですか?』 ピッ
「敵潜空艦は『ユキカゼ』に任せたッ! 我々は天帝様の要人確保に急行するッ! これは天帝様からの勅命だぞッ!」 ピッ
『『 ちょッ 勅命ッ! 』』 ピピッ!
「そうだ、それとも俺だけで行こうか?」 ニヤッ!
『『 行きますッ! 行かせてくださいッ! 』』 ピピッ!
「よしッ! 全機俺に続けーッ!」 ピッ グイイッ! バッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ! シュバアアアーーーッ!
『『 了解ッ! 』』 ピピッ! グイイッ! ギュッ! ババッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ! シュババアバアアアアアアーーッ!
白井中尉のブレードナイト白井小隊3機が、スラスターを全開にして、北西方向、アニス達のいる方向に飛んでいった。
・
・
・
ーココル共和国側、国境周辺空域ー
シュバアアアーーッ! ドオオオオンンッ! メラメラ バアアアーーッ!
ピッ
『Rog. 敵ブレードナイト撃墜確認、これで7機目です』 ピッ
「おうッ! 調子出て来たぜッ! 『アウディ』次はどいつだッ⁉︎」 ギュッ!
『Rog. 11時方向、距離2000ッ! 新たな敵編隊3機、攻撃可能ですよ』 ピッ
「よし、じゃあ次はそいつらだ、アラン達の方はどうだ?」 カチカチ ピコ
『Rog. 問題ないですね、順調に敵ブレードナイトを駆逐してます』 ピッ!
「じゃあ行くぜッ! 『アウディッ!』」 グイイッ!
『Rog. 了解ですッ!』 ピッ
ヒイイインンッ! バウウウウウウウーーッ! シュバアアアーーッ!
レオハルト中佐はスラスターを全開にして、新たな敵編隊に向け飛んでいった。
・
・
ジャキンッ! ビシュウウーーッ! ブオンッ!
「うおおおーーッ!」 グイッ!
ザンッ! ビジュウウウッ! バチバチバチッ! シュバッ!
『ビビッ! ビガガガッ!』 ビシッ! ドオオオオンンッ! メラメラ
『マスター、流石です、これで撃破5です』 ピッ
「ふう…ありがとう、『リーザ』」 グッ!
『どういたしまして、アラン様』 ピッ
「マイロとジェシカはッ!」 ババッ!
高速戦闘で自律思考型無人ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」をライトニングセイバーで切りつけ撃破したアランは、同級生の他の英雄2人の様子を見た。
ドババババッ! ガンガンガンガンッ! ドドドドッ!
『ビギイイイイッ! ビビッ!』 ボコオオッ! ドオオオオンンッ! メラメラ…
『敵ブレードナイトの撃墜確認、マイロ様、撃墜5ですわ』 ピッ
「ん〜、まだフィトンライフルの収束率が悪そうだ、なんとかのならないかなあ『サニー』?」 クイ クイ
『マイロ様、換装武器に関しては整備班に言って下さいませんか? 私では補正するので限界ですわ』 ピッ
「ん〜、それでも、君はナントカしちゃうんだろ?」 ニコ
『もうッ! マスターのためにだけですッ!』 ピッ!
「はは…まあ僕と違って、彼女は自分でなんとかしちゃうんだよねえ…」 ちら…
ギュオオオオーーーッ! ピピピピピビコッ!
「『レパートッ!』 行くわよッ!」 グイッ! ギュ!
『ジェシカ、いつでも良いですよ』 ピッ
「はああッ! 行けええッ!」 グウイイイイッ!
シュバアアアーーッ! ザンザンッ! シュババッバババッ! ビシイッ!
『ビビビッ! ガガッ!』 ブワッ! ドオオオオンンッ! バアアアーーッ!
『バカナ… ビビビ…』 ビキッ! シュバアアッ! ドオオオオーーッ!
『追尾不…能… ギギッ…』 バチバチバチッ! ドガアアアアンンッ! ボウンッ!
ピッ
『敵機撃破ッ! ジェシカ様、3機同時撃破は新記録ですね』 ピッ
「フウ、まあまあかしら」 ニコ グッ!
『まあまあですか… ジェシカ様は、すでに2個小隊6機を撃墜してますよ、並のライナーの実力を超えてます』 ピッ
「あら、7機じゃなかったの?」
『1機、かろうじて被弾しつつも逃げてますね』 ピッ
「あ〜、悔しいッ! 隊長と同数撃破だと思ったのにッ!」 ググッ!
『レオハルト中佐ですか… あの方はまた異質ですね』 ピッ
「そうなのよッ! 全く追いつけそうもないの! なんでかなあ?」 う〜ん…
『レオハルト中佐もそうですが、中佐の機体、『アウシュレッザD型FAR アウディ』、アレも規格外の性能ですね』 ピッ
「そうね、あの機体はアニスちゃん特製の機体ですもの…」 ふッ…
アルファー小隊は、接近中だった20機ほどの敵ブレードナイトを、この時点で全て撃墜撃破し、全滅に追い込んでいた。 隊長のレオンハルト中佐はともかく、アランとマイロ、そしてジェシカの3人は、まだ学生で18歳の少年少女達、この歳でブレードライナーとなりこの戦果は驚異的だった。
そんな彼らは、巡り合わせでアニスと出会い、アニスによって鍛えられ英雄と言われるまでになっていた。既に18歳で中尉の階級を得ており、その身体も強化されさらに、個人所有のブレードナイトも持っていた。そのブレードナイトも他のブレードナイトとは違い、異質の性能と自律思考を有しており、他からも一目置かれる存在となっていた。
シュバババババーーッ! バシュウウウッ! ヒイイイイーーッ!
その時、ジェシカとブレードナイト「ウルグスパイアーD型SC レパート」の元に、アランとマイロの2人のブレードナイト「アウシュレッザ」がやって来て、空中で静止していた。
ピッ
「凄いじゃないかジェシカ、6機も撃破したんだ」 ピッ
「もう、近接格闘戦ではジェシカに敵いませんね」 ピッ
「あはは、1機逃しちゃったけどねえ」 フリフリ ピッ
ピッ ポン!
『おうッ! 英雄諸君ッ!』 ピッ
バシュウウウッ! バババアアーーッ! ヒイイイイ…
3人が集まっていた所に、隊長であるレオハルト中佐のブレードナイト「アウシュレッザD型FAR アウディ」が近づき、彼らの少し上空で静止していた。
「「「 隊長ッ! 」」」 ピピッ!
「ははは、お前達やるじゃないか、だが気い抜くなよ! 10時方向からさらに新手が来てる」 ピッ
「「「 えッ! 」」」 ザワッ! ピピッ!
「まだ距離はあるが、またえらい数だぜ、この第2波は…」 ニヤ
「隊長、敵機の機数はわかりますか?」 ピッ
「うん? そうだな、『アウディ』何機いるんだ?」
ピッ
『Rog. そうですね、数にして2個大隊、144機ですね』 ピッ
「わああ、やっぱり隊長の「アウシュレッザ」は違うわね…」
『そうですね、私より遥かに高性能と思います』 ピッ
「へええ、144機ですか…」 ふふん
「隊長、もしかして正規空母が存在するんじゃないんですか?」 ピッ
「おうジェシカ、正解だ!」 ニッ! ピッ
「144対4かあ…」 う〜ん… ピッ
「あらアラン、怖気付いちゃった」 ニコ ピッ
「バカ言うなよジェシカ、あんな数大した事ないよ、ただ、残弾がな…」 ムウ… ピッ
「ああ、そうか… 確かに心許ないわね…」 う〜ん ピッ
「それなら大丈夫だぞ」 ニッ ピッ
「「「 隊長? 」」」 ピピッ
「もうすぐ『ライデン』がここに来る、補給を受けられるぜ」 サッ! ピッ
「「「 えッ! 」」」 ババッ! ピピッ
バウウウーーッ! シュバアアアアーーッ! ゴウン ゴウン ゴウン
レオハルトが指示した方向を見ると、こちらに向かって全速力で近づく大型艦艇、輸送船の偽装を全てパージした、アトランティア帝国大陸艦隊所属の強襲巡航艦「ライデン」の姿があった。
「「「 『ライデンッ!』 」」」 ババッ! ピピッ
彼らが接近中の強襲巡航艦「ライデン」を確認したと同時に通信が入った。
『こちら『ライデン』CIC、アルファー小隊コンタクト』 ピッ
「アルファー小隊 レオハルト受信」 ピッ
『アルファー小隊に帰還命令ッ! 至急帰還せよ!』 ピッ
「うん? 『ライデン』CIC、何かあったのか?」 ピッ
『ヤマト皇国の駆逐艦の通信を傍受、アニス様発見の報ありッ! 本艦は至急、転舵回頭、アニス様救出に向かいます』 ピッ
「それを早くいえッ! 了解した、アルファー小隊は直ちに帰還するッ! オーバー」 ピッ
『了解、直ちに帰還、着艦せよッ! アウト』 ピッ
「よしッ お前らッ! 直ちに帰るぞッ!」 ピッ
「隊長ッ! 接近中の敵機はどうするんですかッ⁉︎」 ピッ
「んなもんほっとけッ! アニス救出が最優先だッ!」 ババッ! ピッ
「「「 了解ッ! 」」」 ピピッ!
シュバババババーーッ! バウウウウウウウーーッ!
レオンハルト中佐を始め、アルファー小隊の4機は、強襲巡航艦「ライデン」へと帰っていった。
ヒイイイイイイーーーッ! シュバアアアアアアーーーッ!
ピッ ピッ ピッ ピッ
「アニス… やっと会えるぜッ! 待ってろよッ!」 ギュウウッ!
約1年ぶりである、レオンハルト中佐の胸は鼓動を激しくし、頭の中はアニスの事でいっぱいになっていた。
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ー某異空間世界ー
シ〜ン フワ フワ ポコ ポコポコ フワ
なにも存在しない空間に、1人の男がいきなり現れ立っていた。その男の前には、巨大な情報モニターのような物が現れ、そこには、偽世界「アーク」での様子が映し出されていた。その様子を見て、男は笑って見ていた。
「ククク…そうだ、それでいい、シナリオ通り集まれ集まれ… 実に良いタイミングだ… さて、アニスの方はこれでいい… 次はミューロン連邦か… さあ、次のシナリオだ、お前達も動き出すがいい」 ニヤ ササッ!
シュパアアーーッ!
そう言って、その男が手をかざすと、情報モニターの下方、ミューロン連邦と書かれた場所が光り輝き、何かが動き始めた。 そう、この男こそ、アニスの最大の真敵であり、この偽世界「アーク」の前創造神【ジオス】、この偽世界に住む一部の人間を自由に操り、アニスの消滅を企む神であった。
「さあ、 アニス… もうすぐだ… お前自身とこの偽世界、終わらせてもらうぞッ!」 ククク…
シュバッ! パッ シ〜ン…
そう言うと、創造神ジオスの姿は消え、異空間世界は何も無い、静かな闇の世界と戻っていった。
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次回もでき次第投稿します。