第24話 アニスとソフィア
ー新成パルマ大地付近ー
アニスたちは衛星都市マゲラルを後に一路、聖王都カナルに向かって馬に乗りかえていた。聖王都までは馬で2日、馬車で3日、徒歩だとやく4日の工程になる。アニスは瞬間移動ができるが、マシューと同伴なので馬に2人乗りでゆっくり行くことにした。 パカパカ.. 手綱を持つマシューの背中からアニスが質問をする。
「なあマシュー、ちょと聞いていいか?」
「ああ、なんだ、俺で答えれるものだったらな」
「聖王都ってどんなとこだ?」
「聖王都はな、人口は約200万人、この国最大の都市だ。賑やかいぞ」
「そうか、大勢住んでいるのだな」
「そうだな、とにかく人は多い。それに商売人の出入りがすごいからいろんな物があるぞ」
「ほう、商売人が多いのか。つまり物流が盛んなことだな」
そんな時、アニスに思念会話が入った。 ポンッ!
『Lst、アニス様、アニス様聞こえますか?』
その声を聴いて即座にアニスは思念会話で返す。
『ん、その声はNo.001か?』
『Rog、そうです。ようやく自由につながることができました』
『自由に?それはどうい....ちょっと待てすぐにつなぐから』
『Rog、では後程』
アニスは一度、思念会話を切りマシューに声を掛けた。
「マシュー、ちょっと花を摘みに行きたいがいいか?」
「花をって...あッ! ああいいぞ、じゃあそこで休んでいるからな」
「すまん、いってくる」
そう言ってアニスは馬から降りて、街道から外れ人から見えない位置で再びNo.001に思念会話を再会した。
『聞こえるかNo.001』 ポンッ!
『Rog、聞こえますアニス様』
『で、どういうわけでマゲラルから離れているのに、おまえとつながるんだ?』
『Lst、本日つい先程までに、個体No.001エレンディアから個体No.993エレンディアまでの都市制御コアシステムすべてに接続完了、当個体No.001ジオスとのオンラインに成功、その後すべての仕様を書き換え同期、初期化、再起動、したがってこの世界に存在する都市制御コアシステム、個体No.001エレンディアから個体No.993エレンディアまでは、個体No.002ジオスから個体No.993ジオスへと変更、今後各コアシステムは並列化と最適化を繰り返し、最後にはすべて個体No.001ジオスになりこの世界の約8割弱をカバーできます。アニス様の支援が可能となりました』
『と言いうことは、ほぼすべてのコアが正常化したわけだ』
『Rog、この世界に存在するエレンディア様のコアは正常化されました。ただし、メインコアシステムの個体No.000Zfar01とサブメインコアシステム、6個の個体No.A01アリシアから個体No.F01フェリシアは、こちらとのリンク接続を拒否、7個全てが独立して作動中、従ってこの7個の制御コアに至ってはアニス様に直接、正常化して頂くこととなります』
『あ〜、あの子達が作ったやつか。元々7個のコアは私が正常化するつもりだからな、しかし993個の都市制御コアの管理、大丈夫か?』
『Rej、すべての並列化に成功しました。個にして全、全にして個、993個の制御コアは単一制御コアになりました、つまりすべて個体No.001ジオスとなりますので心配入りません』
『ん、そうか、だからかな、お前なんか会話が流暢になってきているぞ』
『Rog、全てのコアを同期単一化にした際、この様な会話術を取得したものと思われます』
『一種のスキルだな、そこまでの存在になったんだ、名前があった方がいいな。ついでにアップグレードしておくね、では個体No.001ジオスはこれより個体名変更、名前を統合コアシステム【スフィア】で登録』
『Rog、個体No.001ジオスはこれより個体名、統合コアシステム【ソフィア】になります。続けてシステムオンライン、アップグレード作業に入ります』......
『Lst、アニス様、新しい名前をありがとうございました。これより最適化に入ります、一度連絡を絶ちます。終了次第報告します』
『ん、わかった。また後でね』
そう言って思念会話が終わりマシューのもとに帰った。ここまででやく3分程の高速圧縮思念会話であった。
「お待たせマシュー、さあ行こうか」
しかし、マシューはこっちを見ず、空を凝視していた。
「マシュー?」
「まさか、..皇国の奴ら本気か?」
マシューが見ている大空に八つの巨大な翼竜が移動していた。移動方向は城塞都市があったパルマ方向。
「アニスッ!わりいが聖王都へは後だ! こいッ!すぐ移動する」
そう言うとマシューはアニスを馬に乗せ、馬をパルマ方向に走らせた。
「ハアッ!ハアッ!」 ピシッピシッ!
馬に掛け声と軽く手綱を叩く、そうするといっそう馬は早くかける。
「もっと早くッ 間に合え、間に合えッ!」
マシューは必死の形相で馬を走らせた。
「マシュー、何が起きた?」
「皇国軍だ、奴らまたパルマに攻めてきた!」
「攻めてきた? だけどパルマにはアーデルベルトの第2騎士団がいるじゃないか」
「ああ、アーデルベルト、確かにアデルのやつが第2騎士団を率いている。普通の軍隊なら問題ない、だが今飛んで行ったあれは、あいつらだけはまずい!」
「危険やつなのか?」
「危険ってもんじゃあない、あれは下手をすればあの一帯が消滅する」
「見たところ8体の翼竜しか見なかったが、強力なのか?」
「俺の勘違いでなければ、あれはおそらく『アルカノイド級』の翼竜、竜種は『ヤクトグランデ』、人が使役できる最大最強の翼竜だ。攻撃、破壊、防御、どれも強大だ、それが8体だ、アデル一人では苦戦する。だから助けに行く」
「ん、分かった。知らぬ仲じゃないしな、いくか!」
「すまんッ!」
森の中を二人乗りの馬が駆け抜ける。マシューの操馬術でまさに疾走であった。そんな状態の中アニスに再び思念会話が入る、明るい少女の声で。 ポンッ!
『ハイ、アニス様、お待たせしましたあ。全部終了で〜す』
『ハア? お前ダレ?』
『いやですよ〜、私です。アニス様に名前を頂いたソフィアで〜す』
「はああッ!」
ソフィアだと言われ、思わず声が出てしまった。
「アニス、どうした? 何かあったのか?」
「あ、いや すまないマシュー、なんでもない」
「そうか...ならいい、もう少しだ。しっかり捕まってろ!」
マシューにそう言われマシュー腰にに抱きつきながらスフィアと思念会話を再開する。
『ソフィア、どうしたんだその..話しかたは?』
『はい、先程アニス様から頂いたアップデート、それを行いましたらどうも、擬似人格が生まれましてえ、そのベースにエレンディア様の性格が組み込まれたようですよ〜』
『ああ〜、そうだ、あの子はこんな感じだった。元々エレンディアが作った世界の都市制御コア、あの子寄りになりやすかったんだ』
『これからよろしくお願いしますね、アニス様〜』
『ん、わかった、よろしくね』
『それより〜、何かお急ぎのようですけど、なにかあったのですか〜?』
『ああ、私が再生した地域にまた争いが起ころうとしていてな、そこに行こうと思ってな、急いでいるのだ』
『わかりました、今よりアニス様のサポートに入ります。状況確認いたしますのでしばらくお待ち下さい』
いきなり事務的会話になったと思ったら思念会話が切れた。
「どうしたアニス、さっきから黙ったままだが大丈夫か?」
「すまない、少し考え事をしていた」
「ならいい、そこの丘を登ったらもう見えるぞ」
そう言いながら馬を走らせて丘の上に登った瞬間、あたり一面が真っ白になり少し後に極大な爆発音が響いた。 ドオオオオオオオンンンンンンッっ!!
そこは第2騎士団の拠点防衛陣地があったはずの場所だった。
「ハハハ、自宅よ私は帰ってきたっ⁉...ぎゃああああッ!」
「どうしたユキヤマ!」
「アニスちゃん、エア、エア、ァーー」
「エア?なんだエアって」
「エアコンのスイッチが入りっぱなしだあああああ」
次もよろしくお願いします。