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第239話 有人対無人

ーヤマト皇国「樹海」辺境 国境付近上空ー


ブヨン ヒイイイイイイーーッ! ブオン ピッ ピッ


『ビビ、『グリフォスB』へ、標的駆逐艦、未ダ健在、攻撃ヲ続行スル』 ピッ


『グリフォスB了解』 ピッ


一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」を、ステルス機能で接近攻撃をしていたのは、ココル共和国が開発した2機の新型自律思考型無人ステルス戦闘機、ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」だった。前機体、プロトタイプの「ファウストFAV22」の戦闘データーを引き継ぎ、より性能を上げた自律思考型完全無人の機体であった。


ブブンッ! シュバアアアーーッ! ヴオンッ! 


ピッ ピッ ピコ!


『ウン? 反応ッ! 敵駆逐艦ヨリ3機ノ機影ヲ確認、『グリフォスA』へ、警戒セヨ』 ピッ


『当機モ確認シタ、『グリフォスB』へ、我々ハ現在ステルスモードデ行動中、発見サレル可能性ハ限リ無ク 0. デアル、攻撃続行ヲ提案スル』 ピッ


『了解、『グリフォスA』二同意、攻撃ヲ続行スル』 ピッ


ピピピピピ! ビコッ! ドオオンッ! シュバアアアーーッ!


2機の自律思考型無人ステルス戦闘機、ブレードナイト「グリフォスD/FAV7」は、駆逐艦「ユキカゼ」より発艦した白井中尉のブレードナイト、白井小隊を探知していたが、自分達はステルス機能で見つからないと判断し、白井中尉達より敵母艦である、駆逐艦「ユキカゼ」の攻撃続行を確定した。


ピッ ピピピピピ


『敵駆逐艦ハ計算外ノ防御性能ダ、『グリフォスB』へ、当機グリフォスAハ艦橋攻撃ヲ優先ッ!』 ピッ


シュバアアアーーッ! ブウウウンッ!


『了解シタ、当機グリフォスBハ敵駆逐艦ノエンジンユニットヲ攻撃スル』 ピッ


ジャキンッ! ピコッ! シュウウウウーーッ!


自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスA」は、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」の防御力の高さから、その中枢の艦橋に狙いを定めた。


ピッ ピピピピピ ビコッ!


『標的ッ! 固定ッ!』 ギュワアアアーーーッ! ヴオンッ!


グリフォスAが、駆逐艦「ユキカゼ」の艦橋の狙いを定めた時、グリフォスAの周囲警戒センサーが警報を鳴らした。


ビーーッ! ビーーッ!


『ナニッ! 直上二敵機ッ‼︎』 グリンッ! ピッ ビビイーーーッ‼︎


グリフォスAは、警戒センサーの反応する方向を見た。 そこには遥か上空よりスラスターを全開にして急降下してくる1機のブレードナイトの姿があった。


バウウウウウウウーーッ! ゴオオオオオーーッ! 


それは一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」搭載機、ヤマト皇国国防軍主力艦上戦闘機、白井中尉の操縦するブレードナイト「ZERO 52型 202」だった。 全くの無防備で、駆逐艦「ユキカゼ」の艦橋を狙っていた自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスA」は油断しすぎていた。


シュバアアアアアアアアアアーーーッ! ブオンッ! ビコッ!


『目標を捉えました。射程内です』 ピッ


「喰らえええッ!」 カチッ!


ブオオオオオオオオーーッ! ドッババババババッ!


ビーッ! ビーッ! ビーッ! 


『ス、ステルスガッ! 捕捉サレテイルッ⁉︎ アリエナイッ! ビイイッ!』 ドガッ‼︎


シュバババババババーーッ! ガンガンガンッ! メキイッ ドオオオンッ!


「よっしゃーッ! 手応えあったぜえッ!」 ニイッ! グッ! グイッ!


シュバアアアアアアアーーッ! ビュンッ! バウウウウウウウーーッ!


上空より高速急降下でステルス攻撃行動中の「グリフォスA」を攻撃した白井中尉は、その手応えを確認し、被弾した「グリフォスA」のすぐ脇をすり抜け全速で離脱していった。 急降下攻撃を受けた「グリフォスA」は、完全に右腕を吹き飛ばされ失い、得意のステルス機能は停止し、その姿が露わになってしまった。


ボウンッ! バチバチバチッ! ブブンッ! ドオンンッ! モクモクモク…


ビーッ ビーッ ビーッ!


『ビビ…右腕完全消失ッ! ハイドロ、アポジモーター応答ナシッ! ジジ…オートバランサー損傷ッ! ステルス機能停止ッ! 光学迷彩大破、使用不能ッ! ビビ』 ピッ ガタガタガタ  


完全に姿を現した「グリフォスA」のその姿は、速度は落ち、至る所に穴が開き、煙を噴いて飛んでいた。


ピッ ビコビコ


『白井中尉、敵ブレードナイト、ステルス機能ダウンッ! 被弾飛行中ッ!』 ピッ


「坂本ッ! 吉田ッ! やれえッ‼︎」 ババッ!


「「 了解ッ! 敵機確認ッ! 」」 グイイッ!


ババウウウウウウウーーッ! シュバババアアアアアーーッ! ギュウウウンンッ!


ピッ ピコ


『『 マスター、メインウェポン200mmインパクトカノン射撃準備完了シマシタ 』』 ピピコ!


「ありがとう『ZERO 』」 ギュッ! ピピピピピ ビコッ!


「了解だ『ZERO』」 ギュッ! ピピピピピ ビコッ!


『『 ドウイタシマシテ 』』 ピピコ!


被弾して退避中の自律思考型無人ステルス戦闘機、ブレードナイト「グリフォスA」をその上空から2機の駆逐艦「ユキカゼ」搭載機、ブレードナイト「ZERO 21型」が急降下攻撃を仕掛けてきた。


ギュワアアアアアアアアアーーーッ! ゴオオオオオーーッ!


ビーッ ビーッ ビーッ!


『ビビッ! 敵機2機直上ッ! ビイイーーッ!』 ピッ ガタガタ ジジ…


ピピピピピ ビコビコ ピッ!


『『 マスター、敵機捕捉シマシタ、射程内デス 』』 ピピ


「「 ッええええええーーッ! 」」 カチッ‼︎


ブオオオオオオオオオオオーーーッ! ドッババババババババババーーーッ!


ビーッ! ビーッ! ビーッ!


『ボッ 防御ッ…ビビッ! ビイイイイーーーッ!』 ドガガガガガッ! ガンガンッ!


バンバンッ! ビシッ! ボコオオッ! ドオオオオオオーーンッ! ブワアアッ!


『ビ…ビビッ…『グ、グリフォスB 』…ジジジ…エ、援護…要請…ヲ…』 ピカッ!


ボウウウンンッ! ドガアアアアーーーーンッ! メラメラ バラバラ…


被弾飛行中の「グリフォスA」は、上空からの坂本、吉田、2機のブレードナイト「ZERO 21型」に攻撃され、穴だらけにされ火を吹き、爆発四散していった。


シュバアアアーーッ! ビュンッ! ゴオオオオオーーッ!


ビコッ!


『『 敵機撃墜ヲ確認ッ! 』』 ピピッ!


「よしッ!」 グッ!


「隊長ッ! やりましたッ!」 ググッ! ピッ


シュバアアアーーッ! 


「よくやったッ! 次だッ! ついて来いッ!」 ピッ グイッ!


ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ!


「「 了解ッ! 」」 ピピッ! グイイッ!


シュバッ! バウウウウウウウーーーッ! 


自律思考型無人ステルス戦闘機、ブレードナイト「グリフォスA」を撃墜した白井小隊は、3機編隊で上空へと上昇していった。


ピッ


『母艦、護衛艦『ソード1』へ、『グリフォスA』ハ撃墜消失ロスト、援護要請、当機1機デハ戦力不足、至急増援ヲ求ム』 ピッ


駆逐艦「ユキカゼ」を攻撃していた、自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスB」は、「グリフォスA」が撃墜され、母艦である無人ステルス護衛艦「ソード1」に援護を要請した。


ビコ……. ブオンッ! ビビビ


『コチラ護衛艦『ソード1』、『グリフォスB』へ、了解シタ、直チニ増援ヲ送リ、本艦モ急行スル 『グリフォスB』ハ攻撃ヲ続行セヨ』 ピッ


『グリフォスB、了解 ロケット弾攻撃ヲ継続スル』 ピッ


ピッ ピッ カチカチ タンタン ピコ ピッ ピッ!


『護衛艦『ソード1』機関始動、進路コース1.245 マーク25 速度28ノット、発進』 ピッ


ヒュオオオオオンンッ! バウウウウウウウーーーッ シュゴオオオーーッ!


ブワワワアアンン! ビュビュビュウウウウーーッ! ゴゴゴゴ


ヤマト皇国の国境を超えた「樹海」周辺で、姿を消してステルス待機していたココル共和国の最新鋭無人ステルス護衛艦『ソード1』が、自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスB」よりの援護要請を受け動きだした。

         ・

         ・

         ・

ー一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー


ピコンッ! ピッ!


「白井小隊ッ! 未確認ステルス戦闘機、ブレードナイト1機を撃墜ッ!」 ピコ!


「「「 おおおーーッ!」」」 ワアーッ! ザワザワ!


「艦長ッ! 流石は白井中尉です! やりましたねッ!」 ババッ!


「うむ………」 ジイイ……


ピッ ピッ ピッ ピコ!   ピッ ピッ ピッ ピコ!


ヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」の艦橋内は、白井小隊の活躍に沸き立っていた。 そんな中、「ユキカゼ」艦長の青山少佐は、艦橋内にある大型メインパネルの表示をジッと見詰めていた。


大型メインパネルには、「ユキカゼ」のこれまでの航跡と、攻撃を受け被弾したポイント、白井小隊の動き、撃墜された敵機の位置などが全て表示されていた。


ポンッ!


『作業班より報告、間も無く応急修理作業終了ッ!』 ピッ


「………」 ジイイ……


「艦長?」


「…7時方向…仰角7度…弾数…1か2…」 ボソ…


「えッ?」 サッ


艦長の青山少佐が小声で呟いたのを、副長の松田大尉が聞いたその時、青山少佐はいきなり艦長席から立ち上がり、指示命令を叫び艦橋内に緊張が走った。


ガタッ スクッ! バッ!


「今だッ! 艦ッ、転舵一杯ッ! 進路変更コース2.226ッ! マーク31αッ! 機関出力最大ッ! 急げッ!」 ババッ!


「はッ! 『ユキカゼ』転舵一杯了解ッ! 進路変更コース2.226 マーク31α 機関出力最大ッ!」 カチカチ ピピ グイッ!


シュババババッ! バウウウウウウウーーッ! グググ ゴンゴンゴン!


艦長の青山少佐の指示通り、駆逐艦「ユキカゼ」が速度を上げ、進路を変え始めたその時、索敵員が叫んだ。


ビーッ! ビコビコッ! 


「センサーに感ありッ! 艦尾左舷ッ! 距離200! 7時方向よりロケット弾ッ! 弾数2ッ!」 ババッ! ビコッ!


バババッ! シュバシュバアアーーッ!


突然、何もない空間からロケット弾が2発、至近距離から駆逐艦「ユキカゼ」に向かって飛んできた。それに対し駆逐艦「ユキカゼ」艦長の青山少佐が指示を出した。


「そこかあッ! 艦尾VLS88式対潜弾全門発射ーッ! PDS起動ッ! ロケット弾を撃ち落とせえッ!」 バッ!


「はッ! 艦尾VLSッ! 88式対潜弾全門発射ッ! PDS起動ッ! 自動追尾開始ッ!」 カチカチ ピッ タンタン ピコ!


ビーーーーーッ!


ガコンッ! シュバババババババーーーッ! ドドドドッドオオオオーーッ!


駆逐艦「ユキカゼ」の艦尾に配備されているVLS発射管より、12発の88式対潜弾が拡散モードで発射され、艦尾舷側にあるPDS、近接防備兵装の88mmフォトンバルカン砲が、接近して来るロケット弾を自動追尾し撃ち始めた。


ピピピピピ グインッ! カシュンッ! ピッ ブオオオオオオオオーーッ! バババッ!


シュバアアアーーッ! ドバババーッ! ビシビシッ! ドガアアアアンンッ!


「PDSッ! ロケット弾2発を迎撃ッ!」 ピッ ポンッ!


「88式対潜弾! 予定地点に到達! 信管起動ッ!」 ピッ


ヒュルヒュルヒュルヒュル…… バッ! シュバババババババーーッ! ザアアアーーッ!


駆逐艦「ユキカゼ」のVLS発射管から撃ち出された88式対潜弾12発が放射状に飛び、ある一定の位置まで来た所で弾体内の信管が作動し、爆ぜて辺り一帯に無数の小型徹甲弾のシャワーを浴びせた。


ビビッ!


『コ、コレハッ! 対ステルス用散弾ッ⁉︎ 防御シールドッ!』 ブオンッ! ピッ


ザザアアーーッ ! シュンシュンッ!  ビシッ! ドオオオーーッ!


『直撃ッ! ビビーーーッ!』 ボンボンッ! ドカッ! ダアアンンッ!


ビーッ ビーッ ビーッ! バチバチバチ ガタガタ


『ビ…ビビ…ミ、右脚部ニ被弾ッ! ジジ… 推進ユニット及ビ、ステルス機能損傷ッ!』 ピッ ブブンッ! ガタガタ ガクン…


ボウンッ シュウウウウー モクモクモク ガクガクガク ピピッ!


88式対潜弾、元々は潜空艦を攻撃するための兵器で、艦艇の装甲を貫く威力のある噴進弾である。当然その破壊力は大きく、ブレードナイト程度の防御シールドなど、この兵器に取っては全く効果のない薄紙のようなものだった。


自律思考型無人戦闘機、ブレードナイト「グリフォスB」は、右足と背部に駆逐艦「ユキカゼ」の放った、88式対潜弾の小型徹甲弾を受け被弾し、その衝撃で移動速度は著しく落ち、ステルス機能が停止した。被弾した「グリフォスB」は、駆逐艦「ユキカゼ」の近くに現れ飛行していた。


ガクガク シュバアアアーーッ!


『セ…戦闘能力40%低下、ジ…ジジジ…光学迷彩消失ッ! ビビ… 緊急事態、離脱開始ッ!』 ピッ シュババッ!


ポンッ! バンッ! ガタガタ ヒイイイイインンン…

          ・

          ・

ビーッ! ピピ ビコビコッ!


「センサーに感ッ! 対潜弾9番が着弾ッ! 命中です!」 ピピ


ピピピピピッ! ビーッ! ビコッ!


「エリア00 方位左舷30°ッ! 距離120mッ! 速度60ノット イエロー08チャーリーッ! 敵ブレードナイト出現ッ!」 ピピ ピコッ!


「敵ブレードナイトッ! 速度低下ッ! 左舷方向へ離脱中ッ!」 ピコッ!


「逃がすなッ! 速度増速ッ! 機関最大ッ! 主砲三式弾装填ッ! 目標敵ブレードナイトッ!」 ババッ!


「はッ! 速度増速ッ! 最大戦速ッ! 機関最大ッ!」 ピッ ピッ ポン!


ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ! シュゴオオオーーッ!


「主砲ッ! 三式弾装填ッ! 12.7cm連装フォトン砲1番、2番用意ッ!」 ピッ カチカチ ピポッ!


ウィイイイインン カシュンッ! グググッ! ピタッ!


駆逐艦「ユキカゼ」の前部甲板上にある主砲、12.7cm連装フォトン砲が、被弾離脱を始めた「グリフォスB 」をその照準に収めた。


ピピピピピ ビコビコ ピッ!


「主砲三式弾装填完了ッ! 狙点固定ッ!」 ピッ!


ええーーッ!」 ババッ!


カチッ!


ドンドンドンドンドンッ! シュババッバババーーッ!


駆逐艦「ユキカゼ」の主砲、12.7cm連装フォトン砲、2基4門が連射砲撃を始めた。毎分40発射撃可能の速射連装フォトン砲で、被弾離脱中の自律思考型無人ステルス戦闘機、ブレードナイト「グリフォスB」に約30発もの三式弾、対空用フォトン弾が襲いかかった。


ビーッ ビーッ ビーッ!


『回避ッ! 回避ーーッ! ビビーーッ!』 ビビ ピッ!


ババババッ! パアアアンンッ! シュドドドドドドドドオオオオーーッ!


『カ、回避不能ッ! ビーーッ!』 バンバンッ! ドカドカッ! ビシッ! ボコオオッ! 


ドオオオオンンーーッ! メラメラ バアアアーーッ! ボウンッ!


ピッ ビコッ!


「敵ブレードナイト撃墜ッ!」 ピッ ポン!


「「「 おおーッ! 」」」 ザワザワ


「やりましたよッ! 艦長ッ!」 ザッ!


「ふむ…落としたか…」 ふうう… ギシ…


自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスB」を撃墜し、艦橋内に緊張の糸がとけ、副長の言葉を聞き、艦長の青山少佐は艦長席に深く座り一息ついた。


ザワザワ ガヤガヤ 


ザッ! サッ!


「お見事です艦長、まさかステルス機をこうもあっさりと撃墜するとは思いませんでした」


「副長…まだだッ!…」 ふむ…


「え⁉︎ では敵がまだこの近くにいると?」 バッ


「ああ、2機だけではあるまい、他にも必ずいるはずだッ!」 ジイイ…


艦長の青山少佐は、艦橋内の大型メインパネルを再び見つめ、副長に答えた。


「しかし、ここはヤマト皇国領内ですよ、これ以上は…」


「副長、さっきのブレードナイトの画像をよく見てみろ!」 スッ!


ピッ ブ〜ン パッ!


艦橋内の大型メインパネルには、先ほど撃墜した自律思考型無人ステルス戦闘機「グリフォスB」の画像が映し出された。


「このステルス機能付きブレードナイトがどうかしましたか?」 ジイイ…


副長がそう尋ねると、青山少佐は答えた。


「装備が軽すぎるんだよ!」 スッ


「あッ!」 バッ!


「我が国に、国境を越え侵入して来たにしては軽装なんだ、どこかに奴等の母艦がいる!」 グッ!


「ココル共和国の奴等め… 早く見つけませんと、これは一大事です!」 ババッ!


「うん? まだココル共和国とはきまっとらんぞ?」  サッ


「艦長、この位置でこんな事が出来るのは奴等しかいませんよ!」 ザッ!


「まあな…十中八九、奴等だろうな、しかし証拠がない」 ギシ…


「証拠なら今、撃墜した奴が…」 バッ!


そう、副長が叫んだが、艦長は首を横に振った。


「無駄だよ、残骸はもう『樹海』に飲まれ、跡形もないさ」 フリフリ


駆逐艦「ユキカゼ」の艦長、青山少佐が言う通り、撃墜され炎を吹き『樹海』の中に落ちた2機のブレードナイトは、火も消えその姿は跡形もなく消えていた。


「相変わらず、火に対しては凄まじい反応ですね」 うう…


「うむ、この森『樹海』は火を極端に嫌う、ちょっとの火でも反応し、瞬く間にその火と辺り周辺を地中に引きずり込み、元の森へと戻っていくのだ。 この『樹海』の中で火を使うなんざ、命が幾つあっても足らない、自殺行為だよ…(まあ、あの嬢ちゃんは別みたいだがな…)」 ふふふ…


青山少佐は、「樹海」の中層部で出会った銀髪の少女、【アニス】の姿を思い浮かべ含み笑いをした。


「艦長、それで、まだこの領内にいる敵はどういたしますか?」


「ふむ………」 ジイイ…


艦長の青山少佐は、再び黙り込み、大型メインパネルを見ていた。


「副長、『ユキカゼ』周辺にはもういないな、奴らの母艦だがおそらくはここだ、『樹海』の辺境、ココル共和国国境から18000、ここから20000から25000の辺りにいると思う」 サッ ピピッ!


「艦長は敵の所在位置がわかるのですかッ⁉︎」 ザザッ!


「まあ…なんとなく…私の勘だがな!」 二ッ!


「艦長の特殊能力ですね、その勘ならまず間違い無いですッ! 行きましょう!」 バッ


「うむッ! 『ユキカゼ』進路変更ッ! 機関最大ッ! 最大戦速ッ!」 ババッ!


「はッ! 『ユキカゼ』進路変更ッ! 機関最大ッ! 最大戦速ッ!」 カチカチ ピッ


ピッピピ タンタン ピコ! ヒュインッ! 


「進路変更ッ!コース1.128 マーク06αッ!『樹海』辺境、ココル共和国国境方面ッ!」 ピコッ!


ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ! シュバアアアーーッ!


駆逐艦「ユキカゼ」は進路をココル共和国との国境付近へととった。

          ・          

          ・

          ・

ー一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」上空ー


時は少し戻り、白井小隊が2機目の自律思考型無人ブレードナイトを、撃墜しようと上空へ上昇していた時、駆逐艦「ユキカゼ」がその2機目を撃墜したところだった。


ヒイイイイインンンーーッ! バウウウウウウウーーッ! ピッ ピッ ピコ


「隊長ッ! あれッ!」 ピッ


「ん? おいおいおいッ! マジかッ!」 グッ


駆逐艦「ユキカセ」の上空にいた白井中尉は、2番機の坂本少尉の通信で、高空より眼下の様子を見た。 そこには、駆逐艦「ユキカゼ」が巧みな操艦で動き、砲撃により2機目の自律思考型無人ブレードナイトを撃墜したところだった。


ピッ


『白井中尉、『ユキカゼ』がもう一機のステルス機を撃墜しました』 ピッ


「ああ、見た見た…流石は『ユキカゼ』艦長、青山少佐だぜ、まいったね…」 はは…


ピッ


『現在、駆逐艦「ユキカゼ」周辺には敵は存在しません』 ピッ


「周辺には? て事は、何処かにまだいるのか?」 グッ


ピッ


『はい白井中尉、国境方面、距離22800の位置からこちらの方向に…今度は艦艇ですね、駆逐艦クラスが接近中です』 ピッ


ブンッ! ピッ ピッ ピコ! ピッ ピッ ピコ!


白井中尉の座る操縦席の前に、メインパネルに表示された地図上に、艦艇らしき反応の点がこちらに向かって動いていた。


「なあ『ZERO』、これ『ユキカゼ』は気がついてるのか?」 ジイイ…


ピッ


『おそらく、気づいてないですね。『ユキカゼ』のセンサーでは目標を探知不能、無理でしょう』 ピッ


「全く、お前の性能には脱帽するぜ!」 二ッ


ピッ


『それで白井中尉、この後どうしますか? このままでは駆逐艦「ユキカゼ」は、ステルス艦艇から攻撃を受け、相当なダメージを受ける事になります』 ピッ


「そうだな…『ZERO』、接近中の艦艇の情報をくれ」 スッ


ピッ


『了解… 今、メインパネルに表示します』 ピッ ブン!


ピコ タタタタタ


メインパネルの表示が切り替わり、接近中のステルス艦艇の情報が表示され始めた。


ピッ


『白井中尉、私が分かる範囲での情報です』 ピッ


「ああ、それでいい」 コクン


ポン


『接近中の艦艇はステルス機能を有した駆逐艦、もしくは護衛艦クラスです。 現在移動速度が28ノットと、このクラスの艦艇にしては遅いですね。 おそらく、ステルスと光学迷彩を使用しての移動という事で、これが精一杯なのかもしれません』 ピッ


「なるほど… 速度が出せないのか…」 うむ…


ピッ


『白井中尉、現状の情報は以上です。あと、推測ですが、ステルス機能を持ったブレードナイトにも、コレは当てはまると思います』 ピッ


「要するに、姿が見えない状態では速度が出せない、亀よりも劣るってことか」


ピッ


『白井中尉、流石に亀よりは早いかと…』 ピッ


「例えだ例えッ! 本気にするなよ!」


ピッ


『当たり前です。本気だと思いましたか? ククク』 ピッ


「くッ…『ZERO』おまえ… なんかアニスに似て来たぞ!」 グッ!


ピッ


『ははは、白井中尉、気のせいです』 ピッ


「なわけあるかああッ!」 バッ


ピッ


『白井中尉ッ! 駆逐艦「ユキカゼ」が動き出しました。ステルス艦艇方向に向かっています』 ピッ


「なにッ⁉︎」 バッ!


下を見ると、駆逐艦「ユキカゼ」が進路を変え、スラスターを全開にして動き始めた。


シュゴオオオーーーッ! ゴゴゴゴッ!


ポン


『こちら『ユキカゼ』CIC、白井小隊コンタクト』 ピッ


「 CIC、こちら白井小隊の白井ッ! 受信」 ピッ


『艦長命令、『ユキカゼ』はこれより、前方20000から25000の周辺位置、エリア00 方位0902 ココル共和国との国境付近に潜伏中と思われる敵潜空艦が存在すると推定、コレを攻撃する。白井小隊は上空掩護に徹せよ』 ピッ


「なんだ、『ユキカゼ』はちゃんと把握してるじゃねえか」


ピッ


『白井中尉、違うと思いますよ。 おそらく「ユキカゼ」の中に、誰か感知能力の高い、特殊能力を持った魔力持ちがいるんだと思います』 ピッ


「感知能力か… それってやはり…」


ピッ


『「ユキカゼ」艦長の青山少佐だと思います』 ピッ


「そうなるよな…」 はは…


ポン


『白井小隊、返信を乞う』 ピッ


「白井小隊了解、直ちに『ユキカゼ』上空を掩護する! オーバー」 ピッ


『了解、敵はステルス機能で潜伏行動中、敵ブレードナイト、潜空艦に注意せよ! アウト』 ピッ


ヒイイイイインンン シュバアアアーーッ!


「さて、坂本ッ 吉田ッ!」 ピッ


『『 はッ! 』』 ピピ!


「聞いての通りだ、編隊を組んで『ユキカゼ』上空の援護をするッ!」 ピッ グイッ!


『『 了解ッ! 』』 ピピッ グイッ!


バウウウウウウウーーーッ! シュゴオオオーーッ!


白井小隊の3機は、駆逐艦「ユキカゼ」の上空掩護をするため、3機編隊、トライアングル飛行で急降下していった。


「駆逐艦『ユキカゼ』艦長、青山少佐か… 感が鋭いと聞いてたが、20000以上離れた敵潜空艦だぞ、ステルス中のブレードナイトどころか 敵艦まで見つけるとは…やはり艦長の持つ強大な魔力と特殊能力のなせる技だな…」 フ…


この偽世界「アーク」の住人は皆、大なり小なり魔力を持ち魔法も使える。そんな中、一部の者はその強大な魔力と生まれ付き持っている特殊能力によって、高い地位や軍上層部にと登りつめていた。 貴族位や軍の将官、ブレードライナーなどがそうであった。


ヒイイイイインンンッ! ドオオオオオオーーッ! シュゴオオオーーッ!


ピッ


『白井中尉、駆逐艦「ユキカゼ」、速度増速ッ!』 ピッ


「よしッ! 坂本ッ! 吉田ッ! 2人とも遅れるなよッ!」 ピッ グイッ!


『『 了解ッ! 』』 ピピッ! グイッ!


バウウウウウウウーーーッ! シュバババアアアアアーーッ!


速度を上げ、敵潜空艦の存在する国境方面へ、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」と3機のブレードナイト「ZERO」が、スラスターを全開にして飛んで行った。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」辺境ー


ザザザッ! ババッ! ガサバササッ! ダンッ!


ヤマト皇国「樹海」の辺境、ココル共和国国境に近い場所に、「樹海」の奥から1人の男が現れた。


「おッ! やっと『樹海』から出れそうだぜ、全く…次々と森の中が変わるからまっすぐに進みやしねえ!」 ザッ ザッ!


そこに現れたのは、ココル共和国が召喚した勇者の生き残り、勇者【ケンゴ】だった。 彼は創造神ジオスの指示を受け、仲間の勇者を殺し、その能力を自分のものにしていた。 だが、自分のものに出来たのは、勇者【ショウゴ】と勇者【タケシ】の2人分だけだった。勇者【イチロー】は【ケンゴ】の意図を察知し、自ら命を絶ったので、その能力を奪うことができなかった。


ガサガサ バッ! ザッザッ!


「【イチロー】の奴め… あいつの能力を奪えていたら今頃は俺も…うんッ⁉︎」 ググッ! ザッ!


ビュユユワアアアアーーッ シュバアアアーーーーッ! ザザザアアアーーッ!


ケンゴは徒歩でココル共和国へ向かっていた。その時、彼の頭上を巨大な歪んだ空間が通り過ぎていった。


「なんだ、ありゃあッ⁉︎」 バッ!


それは、ココル共和国の最新鋭艦、無人ステルス護衛艦「ソード1」だった。


シュバアアアーーーーッ  ゴウン ゴウン……


「へッ なんか知らんが面白そうだ、行ってみるか」ニヤッ シュンッ! バババッ!


2人の勇者の力を持った勇者【ケンゴ】が、無人ステルス護衛艦「ソード1」を追って、その場から姿を消した。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」外縁部付近ー


ザザザーーッ! バサバサッ! ドオオオオンンッ! メキメキメキ 


『キシャアアアーーッ! ゲゲゲッ ガチガチガチ シャアアアアーーッ!』 ブワッ!


シュンッ! シュバババババーーッ! バサバサバサッ!


「いやああああーーーッ!」 バババッ! ザザッ! タンッ! バサバサッ!


「ひッ! ひいいいーーッ! なッなんだよあれええッ!」 ババッ! シュンッ!


ドドドドッ! ドオオオオンンッ! メキメキメキ ドオオオオンンッ! 


『キシャアアアーーッ! キシャアアアーーッ!』 ドゴゴゴゴッ! ババッ!


「きゃああッ! あんなのに捕まったら死ぬッ! 絶対死んじゃうーッ!」 ババッ!


「スズカーッ! とにかく逃げるんだああーーッ!」 シュバババババーーッ!


バサバサバサッ! シュンシュバババーーッ!


ヤマト皇国の『樹海』の外縁部の森林の中を、高速で悲鳴を上げ、逃げ回っているのは、勇者のサトシとスズカだった。 それは「樹海」の樹々を軽く薙ぎ倒し、アニス達4人を追いかけていた。


バババッ! タンタン トンッ! シュンッ!


「あははははッ! くもおッ! でっかい蜘蛛だああッ!」 ヒュンッ! シャッ!


シュババッバババーーッ! ザンッ! タンタン シュバッ!


「アニスッ! なんで貴女は『アコンカグア』の巣なんかに突っ込むんですかあーーッ!」 シュバッ! ザザザーーッ!


「ヘビくんごめん、全っぜん気がつかなかったよ! いやあ、でっかい蜘蛛だねッ!」 チラッ!


『キシャアアアーーッ!』 メキメキメキ ドドドドドッ!


「わああ、怒ってる怒ってるッ!」 ババッ! シュンッ! タンタン シュッ!


アニス達を追いかけているのは、体長16mもある巨大な蜘蛛だった。 アニスは高速移動で先頭を走っていたのだが、とある蜘蛛に、蜘蛛の住処に誘い込まれ、脱出の時に巨大な巣があり、超巨大蜘蛛『アコンカグア』の巣だとも知らず、そのまま突っ込んで魔法を放ち、『アコンカグア』の胴体ごと巣を破壊し怒らせてしまった。 当然巣は破壊され、怒った『アコンカグア』が追いかけて来て、今に至っていた。


「蜘蛛に食べられるのはいやああーーッ!」 シュンッ ババッ! ザザザーーッ!


「アニスさんッ! どうにかなりませんかーッ! スズカはもうパニック状態ですよッ!」 ザザッ! シュバアアアッ!


「アニスッ! どうするんですかッ!」 ババッ! シュザッ!


『キシャアアアーーッ カチカチ キシャアアアーーッ!」 ドドドドッ!


「蜘蛛蜘蛛蜘蛛おーーッ! 絶対にいやああーーッ!」 シュバババッ!


「あははははッ! 逃げろおッ!」 ニコニコ シュンッ! シュバッ! サササッ!


「アニスーーッ!」 ババッ! シュバッ! バババーーッ!


『キシャアアアーーッ! ガチガチ キシャアアアーーッ!』 ドドドドッ!


メキメキメキ ドオオオオンンッ! ドドドドッ!


アニス達は巨大蜘蛛「アコンカグア」から逃げ延びるために、半日ほど「樹海」の中を駆け巡っていた。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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