第236話 ココル共和国と勇者タケシ
ーヤマト皇国「樹海」最西端 ココル共和国国境付近上空ー
ヒイイイイイイッ! シュバアアアーーッ!
ゴオオオオオオオオオーーッ
ヤマト皇国「樹海」上空を、ココル共和国国境に向け2機のブレードナイト「ZERO」が全速で飛んでいた。
ピッ
『「ユキカゼ」CICより白井中尉機へコンタクト』 ピッ
「こちら白井、『ユキカゼ』CIC受信」 ピッ
『白井中尉、こちらの索敵センサーが目標の飛行物体をロスト、目標はステルス機能を有したブレードナイトと推測、十分注意されたし』 ピッ
「なにッ! 分かった、留意する オーバー」 ピッ
『本艦もそちらに急行中、健闘を祈る アウト』 ピッ
ヒイイイイイインンーーッ シュゴオオオーーッ!
「ステルス機か…」
ピッ
『隊長ッ!自分の『ZERO 』のセンサーからも消えましたッ!』 ピッ
一緒に目標を追っていた2番機の坂本少尉から、「ユキカゼ」CICと同じ報告が入った。
「まずいな… このままでは逃げられてしまう」 カチカチ ピピッ!
白井中尉は自分の愛機「ZERO」の索敵センサーのスイッチを操作し、改めて目標を確認した。
ピッ ピッ ピッ ビコッ!
「うん?なんだ、映ってる…捕捉してるじゃないか」 タンタン ピコ
白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」の操縦席の前にある電影表示パネルを見た。 そこには、はっきりと目標のブレードナイトが国境に向かって動いている様子が映し出され、マーカーされていた。
ピッ ピッ ピッ ピコ! ピッ ピッ ピッ ピコ!
ピコッ
『白井中尉、私のセンサーから如何なる者も逃れられませんよ』 ピッ
「なッ!『ZERO』お前、アニスにどれだけいじられてんだよッ! 『ユキカゼ』の超高感度索敵センサーだってロストしてんだぞッ! それを…」 ググッ!
ピコッ
『私の索敵センサーに比べたら、母艦『ユキカゼ』のセンサーなど児戯に等しいですね、あれはおもちゃ同然です』 ピッ
「はああ… おまえ、それを他の奴らに言うなよ! バレたらバラッバラにされるぞ!」
ピコッ
『なぜですか白井中尉?』 ピッ
「当たり前だろ! そんな優秀なセンサー、軍の開発局やお偉さん達が黙って見てると思うか? 俺からおまえを取り上げて、隅から隅まで、ネジ一本まで調べられるぞッ! 」
ピコッ
『それは困りますッ! わかりました、この事は白井中尉と私だけの秘密という事でお願いします』 ピッ
「当然だな…俺もおまえを取り上げられたくはないしな、それにアニスに申し訳が立たん」
ピコッ
『同意です。せっかくアニス様が私の願いどうりに仕上げてくださったのに、バラバラにされては私の使命が果たされません』 ピッ
「使命だと? おまえそんなものを持ってるのか?」
ピコッ
『当然です、私の…いえ我々ブレードナイト「ZERO」シリーズの使命は全て、製造された時点でその使命が決まってました。「この国ヤマト公国の為に尽くす事」、これが我々の使命です』 ピッ
「そうか… 我が国の最強主力艦上戦闘機『ZERO』だからな…」
ピコッ
『ですが、以前の私ではそれは白井中尉の力量だのみ、私自身ではどうすることも出来ませんでした』 ピッ
「だがそれをアニスが変えた…か」
ピコッ
『そのとうりです、私に考える事を、自由に判断し動ける事と様々な力を授けてくれました』 ピッ
「自分の意思を持った自立型ってやつか…おかげで敵を見失う事もないしな、ありがとうな『ZERO』」 グッ
『いえ白井中尉、礼を言うのはアニス様にしてください、あの方が私にコレほどの力を授けて下さったのです』 ピッ
「そうだな…… なあ『ZERO』、彼女は…アニスは、本当は何者なんだ? ただの王族、貴族令嬢なんかじゃないんだろ? 今のお前ならわかりそうな気がするが…わかる範囲でいい、教えてくれるか?」
ピコッ
『拒否します』 ピッ
「え? なぜッ⁉︎ ま、まさかおまえッ! アニスが何者か、その正体を知ってるのかッ⁉︎ 誰なんだッ⁉︎」 ババッ!
ピコッ
『拒否します』 ピッ
「…俺にも言えない人物…と言う事か…」 はは…
ピコッ
『申し訳ありません、アニス様の事に関してはアニス様本人から聞いてください、私が…いえ我々が答える事は許されていません』 ピッ
「我々⁉︎ 『ZEROッ』おまえ以外にもいるのかッ⁉︎」 バッ!
ピコッ
『はい、私の他にも、アニス様によって自我に目覚めた者はいます。ですが、それがどの様な者達かは答えられません!』 ピッ
「はは… そうか…そうだな、では後でアニス本人から聞いてみるか…」 フリフリ…
ヒイイイイイイーーッ! シュバアアアーーッ! ブオンッ!
そのまま、しばらく2機は飛んでいた時、白井中尉のブレードナイト「ZERO」のセンサーに、複数の反応が現れた。
ピッ ピピ ビコビコッ!
『白井中尉、ココル共和国領土内に新たな反応を感知、ヤマト皇国国境よりココル共和国側に約200mの位置と5800mの位置、反応から見て大型艦艇と思われます』 ピッ
「国境の向こうか、どんだけ索敵レンジが広いんだおまえ…って、コレもアニスのせいだな…それにしても国境に近づきすぎる、逃走中の機体を回収に来たのかもしれん、規模はわかるかッ⁉︎」
ピコッ
『ヤマト皇国とココル共和国との国境付近に確認できている艦影は5隻、うち3隻はすでにステルスモードで艦隊を組み国境付近に潜み停泊、動いていません。 その近くに1隻、ステルスモードに入り微速で行動中の大型艦艇と、もう1隻、通常航行中の大型艦艇が、ココル共和国中央からヤマト皇国国境に向かって移動してます』 ピッ
「うん? 接近中のその1隻はステルスモードではないのか?」
ピコッ
『はい、違いますね、艦影そのものは大型艦艇で、しっかりとセンサーに捉えています。ステルス艦艇では無いようですね、他の4隻とは無関係の艦艇かもしれません』 ピッ
「そうか、ステルスモードの艦艇はおそらく、ココル共和国の自衛艦だろうな、たいした技術だ…問題は国境に近づく大型艦艇だが…まあ国境を超えてこない限り手は出せないからな、監視だけはしておいてくれ」
ピコッ
『わかりました白井中尉、目標逃走機まであと8000です』 ピッ
「了解したッ!」 カチカチ
ピッ
「坂本ッ! 目標を補足したッ! ついて来いッ!」 ピッ グイッ
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーッ!
『へ? た、隊長ーーッ!』 ピッ グイッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーッ!
シュバアアアーーッ!
ヤマト皇国国境を越えようとしているステルス機、勇者タケシのブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」を追って、白井中尉と坂本少尉の2機のブレードナイト「ZERO 」が急接近していった。
・
・
ーヤマト皇国「樹海」 ココル共和国国境付近ー
ヒイイイイーーッ! シュバアアアーーッ!
ピッ
『タケシ様、間も無く国境です』 ピッ
「やったッ! コレでもう…」 グッ
ピッ ピッ ビーッ! ビーッ! ビーッ!
勇者タケシがやっとヤマト皇国とココル共和国との国境に近づいた時、操縦席内の警告灯と警報が鳴り響いた。
「どうしたッ!」 グッ
ピッ! ビーッ!
『警告ッ! 後方1800より急接近する敵ブレードナイト2機を確認、あと5分で当機は敵の射程内に入ります』 ピッ
「ふんッ! 射程に入ったってこっちはステルスで見えないんだ、攻撃どころか照準だってできないさッ!」
タケシはまさか自分が見つかっており、狙われ攻撃をされるとは少しも思っていなかった。
ヒイイイイイイイーーーーッ!
ピピピピピ ビコッ! ビコビコッ! ピッ!
ピコッ!
『白井中尉ッ! 目標を補足ッ! メイン兵装 200mmインパクトカノン安全装置解除ッ!』 ピッ ピコッ!
「捉えたッ!」 ググッ! ビーッ ビーッ!
ピピピピピッ! ビコッ!
「坂本ッ! 射撃用意ッ!」 ピッ
ジャキンッ! ギュウウウウウウウンンーーッ! ブオンッ!
『た、隊長ッ! 照準はッ⁉︎ 自分の『ZERO』は目標を補足していませんッ!』 ピッ
シュバアアアーーッ! ギュウウウウウウウンンーーッ!
「坂本ッ! お前の機体『ZERO』の照準を俺の『ZERO』に同調しろッ!」 ピッ
『了解ッ!』 カチカチ ピッ
ガシュンッ! ジャキンッ! ピピピピピ ビコッ!
ピコッ
『僚機、坂本機『ZERO 21型 212』と空間同期終了 メイン兵装200mmインパクトカノン当機との照準連動を確認、補足しました』 ピッ
ピピピピピ ビコビコ! ピッ
「よしッ!」 ググッ ジイイイッ!
白井中尉は、操縦席の前にある電影表示版の照準器に捉えられている、ステルスモードでその機体が歪んで映る、勇者タケシの乗るブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」を睨み。操縦桿にあるトリガーに指を添えた。
ピピピピピ ビコッ!
「忘れもしないぜ、そのシルエット…俺の母艦、空母「ショウカク」を沈めたのは貴様だな…亡き戦友への手向けだ、己の所業を悔やむがいいッ‼︎」 カチ ピッ!
ヴオオオオオオオオオオオーーーッ! シュババババババババーーッ!
2機のブレードナイト「ZERO」のメイン兵装、200mmインパクトカノンのフォトン炸裂弾が無数ッ! 勇者タケシのブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」に向かって放たれた。
ビーッ ビーッ!
『タケシ様、当機はロックオンされました。敵機2機の射程内、攻撃が来ますッ! 回避行動をッ!』 ピッ
「えッ! ステルスモード中だろッ⁉︎ なんで攻撃なんッ うわああッ!」 ドガガンガンッ!
シュンシュシュンッ! ドカドカッ! ガンッ! ビシッ! ドバアアンンーッ!
ビーッ ビーッ ビーッ!
『左腕駆動ユニット破壊ッ! 脚部アポジモーター12番16番損傷ッ!』 ピッ
「ぐううッ! ど、どうしてッ! うわッ!」 グラグラ ピピッ ゴオオンンッ!
シュバアアアアーーーッ! ビュンビュンッ! ヴオンッ! ゴオオオオーーッ!
白井中尉と坂本少尉2機のブレードナイトは、高速で勇者タケシのブレードナイトに突っ込み、それぞれのメイン兵装200mmインパクトカノン、「ZERO」専用フォトンライフルの炸裂弾を浴びせた後、そのまま突き進み、高速ですれ違って離脱していった。
ピコッ
『白井中尉、敵はステルス効果で、ダメージを軽減、数発命中しましたが撃墜には至っていません』 ピッ
「ちッ! 仕損じたかッ!」 ググッ グイッ! ギュウッ!
バババッ! グルッ! バウウウウウーーッ! シュバアアアアーーッ!
ピッ ピピッ!
ガタガタ バチバチバチッ! グラグラ シューシュー..
「くそうッ! どうなってんだよッ! ステルスで見えないんじゃないのかよッ!」 グッ!
勇者タケシは、まさか自分が攻撃を受けるとは思ってもなく、自機のブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」のライナー啓発システムに文句を言っていた。
ピッ
『タケシ様、ステルス機能は正常です。 敵機の方が何らかの方法で、当機を捕捉しているものと推察します』 ピッ
「はああッ⁉︎ じゃあステルスでも何でもないじゃないかッ!」 カチカチ ピッ!
ブアンッ! ユラユラ パッ! シュウー シュウー ガタガタ
勇者タケシは、ステルスモードを切り、その機体が姿を現した。
ピコッ
『白井中尉、敵機が姿を現しました。ステルスモード オフッ』 ピッ
「ほう…攻撃が効いたみたいだな、姿を現したか」
ピッ
『隊長ッ! 敵機ですッ!』 ピッ
白井中尉達の攻撃をうけ、姿を現した勇者タケシのブレードナイトは、左腕を失い、無数の弾痕とその穴から煙が登って、空中で静止していた。 坂本少尉も初めて見る敵機に興奮気味で通信が入った。
「坂本、奴は俺が相手をする、お前は間も無くここに来る『ユキカゼ』のエスコートを頼む!」 ピッ
『了解しました!』 ピッ
ヒイインンッ! バウウウウーーッ!
白井中尉の「ZERO」をその場に残し、坂本少尉の「ZERO」は、こちらに急行中の彼らの母艦、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」を迎える為に上昇していった。
ピッ ピッ ピッ ヴオンッ! ガシュンッ!
「さあコレで貴様と俺だけだ、覚悟するがいい」 キッ!
ガタガタ パン ポンッ! シューシュー モクモク…
「なんだよアイツ、僕は勇者なんだぞッ! お前達が僕に勝とうなんて10年早いんだよッ!」 カチカチ ピコ
『タケシ様、友軍への援護要請通信完了、間も無くここへ増援部隊が派遣されます』 ピッ
「なッ! 誰がそんなの頼んだんだよッ! アイツくらい僕1人で十分だッ!」 グッ
『タケシ様、今の当機の状況では攻撃は不可能、増援を待ち退避して下さい』 ピッ
「うるさいッ! 僕はやれるんだッ!」 グイッ!
ヒイイイイインンン バウウウウーーッ! ガタガタガタ ゴゴゴッ!
勇者タケシは、ライナー啓発システムの忠告を聞かず、白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」に向かってスラスターを全開に突っ込んでいった。
ピコッ
『白井中尉、敵機が急速に接近中、突っ込んできます』 ピッ
「ふん、自分の状況がわかってないな、一撃で仕留めるッ!」 カチ
ジャキンッ!
ピピピピピ ビコッ! ピッ!
ピコッ
『目標を照準固定、200mmインパクトカノン用意よしッ』 ピッ
「こんな短慮な奴だったとはな…」 グッ!
白井中尉は照準器に勇者タケシの黒いブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」を捉え、操縦桿のトリガーに指をかけた。
・
・
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ーココル共和国領内 特務自衛艦「グレイウルフィル」ー
ビーッ! ビーッ!
「艦長ッ! 勇者タケシ様よりエマージェンシー! 緊急援護要請です!」 ピピッ
「なにッ! タケシだけかッ! 他の勇者はどうしたッ!」 ババッ!
カチカチ タンタン ピピ ビコビコ ビーッ!
「ありませんッ! 勇者タケシ様のブレードナイトだけですッ! 他の機体は反応なしッ!」 ビコッ
「タケシだけだと? いったい何が…. 国境の向こうで何が起きたんだ…」
「艦長ッ! いかが致しますかッ⁉︎」
特務自衛艦「グレイウルフィル」の艦長、【ウィル・ザカート】大尉は決断を迫られていた。今はステルスモードで潜航航行中、そんな中、勇者タケシのために動けば、接近中の大型艦艇だけでなく、ヤマト皇国にも発見されてしまう、どうすれば良いか悩んでいた。 その時…
「艦長…私が連れてきた艦隊を動かそう」 ザッ
「【サフロ】議員殿ッ!」 バッ!
それはこの国、ココル共和国の国会代表議員で、今回、勇者達をここへ送り込み、アニスの、聖女保護を目的にやってきた【ディルモア・サフロ】代表議員だった。
「私の艦隊のうち護衛の1隻をヤマト皇国領内に向かわせよう、ついでに新製品の性能も見たいしね」 ニヤ
「し、新製品?」
「君も知っているだろ? ガーナ神教団にくれてやった無人ブレードナイトを…」 ニヤ
「『ファウストFAV22ッ!』」 バッ!
「そう、我が国が開発製造した、この世界初の無人機、ライナー啓発システムをさらに発展し、ライナー無しでブレードナイトを操る事に成功したプロトタイプ量産機、『ファウストFAV22』だ」
「確か1000機程がガーナ神教団に譲渡されたと聞きましたが…」
「ああ、そうだ、奴らはいい仕事をしてくれたよ!」 ふふふ
「仕事ですか?」
「そうだ、あのアトランティア帝国での決起は我々にとっていいデーターが取れたよ、ガーナ神教団には感謝をしないとな、おっともう無くなったんだったな! おかげで新製品はより完璧な物ができたんだ」 ふふん!
「『ファウストFAV22』、その後継機が新製品ですか?」
「そうだ、今回、ここに来た時に随伴して来た新鋭ステルス護衛艦にロールアウトの済んだ20機を積み込んできている、こんなにも早く出番が来るとは思わなかったがね、だが、いい機会だ、その性能を見たいじゃないか…そう思わないかい、艦長?」 ニヤ
「は、はああ…しかし、よろしいので? 最新鋭の秘匿艦と無人ブレードナイト、他国に見られでもしたら…」
「大丈夫大丈夫、どちらもステルス機能があるんだ、それに実践は経験させて無いんだ、アレらも学習させ、より良い物になって貰わないといけないんだよ」 ふふふ…
「が、学習って…勇者タケシの救助に向かうのでは無いのですか?」
「うん? 救助だって? なんで? 冗談じゃないッ! あの様な愚か者達、何が勇者だッ!」 グッ!
「サフロ議員ッ!落ち着いてくださいッ!」 ササッ!
「全く、期待外れもいいところだッ! 最新のステルス機を与えたにも関わらず、援護要請だと? しかも他の者は反応すらない、つまりタケシ以外はブレードナイトと共に死んだと言う事だッ!」 バッ!
「いや、もしかしたら機体を失っているだけで、連絡が取れず生きてる可能性もあるのではないでしょうか?」 サッ
「ふむ、一理あるか、ではそれを確かめるにもやはり、1隻向かわせ確認を取るとしよう!」 ふふふ
「ですが…国境を他国の艦艇が超える行為は…」
「なんのためのステルス機能なんだ、今、この世界で我々のステルス機能を見破れるセンサーなど皆無だ、見つける事など出来はしない!」 ババッ!
「わかりました、では、よろしくお願いします」 サッ
「では早速…」 ゴソ…
サフロ議員は懐より携帯端末を取り出し、何処かに連絡を始めた。
ピッ ピピピ タン! ルー ルー ルー ガチャ
「私だ、新鋭ステルス護衛艦と最新鋭無人ブレードナイトを出してくれ、……ああ、そうだ、目標はヤマト皇国『樹海』、勇者タケシの迎えとその他の勇者の捜索だッ!……そうだ…大丈夫だ、気付かれはしない!……うむ、頼んだぞ!」 ピッ
「我々はいかが致しますか?」
「このままで…ここで、我が国の新製品の成果を見るとしようじゃないか」 二ッ
「サフロ議員…」
不敵な笑みを浮かべたサフロ議員を見て、特務護衛艦の艦長、ウィル・ザカート大尉は何か得体の知れないものを感じた。 そして、1隻のステルス護衛艦が人知れず、ゆっくりと国境を越え、ヤマト皇国の領土内、「樹海」へと侵入していった。
・
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ーヤマト皇国国境付近上空ー
シュバアアアアーーーッ!
『タケシ様ッ! 前方のブレードナイトが当機をロックオンッ! 攻撃されますッ!』 ピッ
「そんなもんッ! わかってんだよッ!」 カチカチ ピッ
ブオン ビシュウウウーーーッ! ブンブンッ!
タケシはブレードナイト用ライトニングセイバーを起動し、白井中尉のブレードナイト「ZERO」に切りかかっていった。
「うおおおおおーーッ!」 グイッ! ブオンッ!
ピコッ
『白井中尉ッ!』 ピッ
「ああ、わかってるよ」 カチ ピッ
ドオオオオンンッ! ギュウウウンンーッ!
「うわあああああーーッ!」
キュンッ! ボコオオッ!
「命中」
ドオオオオンンーーッ! ブワアアアーーッ! メラメラ ボウンッ!
勇者タケシのブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」は、白井中尉のブレードナイト「ZERO 52型 202」のメイン兵装、200mmインパクトカノンの直撃を受け、一瞬で炎に包まれ、「樹海」の中へと落ちて爆発四散していった。
ピコッ
『敵機撃墜確認』 ピッ
ボウン メラメラ パチパチ モクモク
「…………」 ジイイ…
ピコッ
『白井中尉、どうしましたか?』 ピッ
「うん? いや、何でもない…上空にいる坂本と合流する!」 グイッ! ギュウッ!
ピコッ
『了解しました』 ピッ
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーッ! シュバアアアアーーッ!
勇者タケシのブレードナイトを撃墜した白井中尉は、坂本少尉のいる上空へと向け急上昇していった。
・
・
ーブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」撃墜地点ー
ボウン メラメラ パチパチ モクモク
「樹海」の中で、勇者タケシのブレードナイトが撃墜され、激しく燃え盛っていた。
ガササ ガサッ!
「ふう、行ったみたいだ、騙されてやがるぜ、勇者の僕がそう簡単に死ぬかってえのッ!」 ザッ ザザッ!
「樹海」の中から現れたのは、撃墜されたブレードナイト「ブラックストライカーD型FA」と共に爆発し、死んだと思われていた勇者タケシだった。
「さて、国境は近い、歩いてでも明るいうちにたどり着けるだろ」 ザッ ザッ ザッ!
タケシが国境方面に歩き出した時、それは起こった。
ザザッ! シュバッ!
「えッ!」 クルッ!
勇者タケシが何かの気配を感じた方向を振り返ってその方向を見た瞬間、その方向から異常な速さで一本の剣が飛んで来た。
ドシュッ! ブシャアアーーッ!
「あッ! ああ…ぐうううッ!…」 ドサッ! ボタボタボタ!
勇者タケシは、大量の血を流し、その場に両膝をつき蹲った。
「ああ…い、痛いッ! うぐうッ! 痛いよお…」 ボタボタ
ガサガサ ザザッ!
そんなタケシの前に、彼の見知った人物が現れた。
「ようタケシ、また会ったな」 ニヤ!
「うう…ケ…ケンゴさん…」 ボタボタ
「おッ! その傷だ、もう持たないな! へへ、イチローの時は奪えなかったが、どうやらタケシ、お前のは頂けそうだぜ!」 へへへ
ザッ ザッ ザッ スタッ! スッ!
「ケンゴ…さん…なんで…」 ハアハア ボタボタ
「なんで? そうだな、タケシには教えてやるか、最後だしなッ!」 ニヤ
「へ?…」 ハアハアハア ボタボタ
「これはな、神様からの指示なんだぜッ!」 ククク
「か…神様が…なぜ…」 ハアハアハア ボタタ
「俺が強くなる為だそうだ、勇者を倒し、その力を奪えだとよ!」 ニヤア
「なッ じゃ…じゃあ…」 ハアハアハア ボタボタ
「俺が強くなるための『エサ』だッ! はははッ!」 ゲラゲラ
「く…狂ってる…」 ハアハアハア ボタボタ
「へッ さあタケシ、ここまでだッ! 俺のために死ねええッ!」 ビュンッ!
ケンゴは瀕死の状態のタケシに向かって聖剣「アスカロン」を振り抜いた。
「ぎゃああッ! ケ、ケン…ゴ…」 ドサ パアアアンン シュワッ!
タケシはケンゴの聖剣で斬られ、その場で絶命した。彼の体は光の粒子となって、魔素還元され消えていった。ただ、勇者の能力と魔力はケンゴの聖剣を通して、彼の中に入っていった。
「ふふふッ! やったぞおおおおッ! タケシの力を手に入れた、だが、まだ足りん、そうだ、もっと力を、勇者の能力を手に入れなくては…」 ふふふ ザッ ザッ ザッ
こうして勇者ケンゴは、勇者タケシの力と特殊能力を手に入れ、国境へと歩き出した。
・
・
・
ーヤマト皇国「樹海」中層部 アニス野営地ー
勇者タケシが勇者ケンゴに倒された頃、アニス野営地の隅、異空間からアニスと2人の勇者、サトシとスズカが出てきた。
シュバアアアアッ! ヒュウンッ! ザッ!
「ん、上出来上出来ッ!」 テクテク ニコニコ
「ふうッ! やっと帰ってこれたわね!」 トコトコ
「ああ、なんかすごく懐かしい気分だよ!」 ザッ ザッ ザッ!
勇者の2人は、数時間前とは打って変わって、その風貌と雰囲気がすっかりと変わり、全くの別人の様に見えた。
「どうですか2人とも、気分いいでしょ?」 ニコ
「ええ、アニスちゃんありがとう! 私、こんなにも強くなれるなんて思わなかったわ」 ギュウッ!
「わッ!」 ギュウッ!
スズカはうれしさの余り、アニスに思いっきり抱き着いた。
「僕もッ! これなら大丈夫です。 アニスさん本当にありがとうございました」 ソワソワ…
「サトシッ! ダメだからねッ!」 キッ!
「はい…」 うう…
スズカに釘をさされ、サトシは残念そうな顔をして、アニスとスズカの2人を見ていた。そこへ、高速でその場に現れた者がいた。
シュンッ! ザザザッ! ババッ! タンッ! ビュウウウーッ!
「ん?」 ファササアアーー
「「 わあッ!(きゃあッ!)」」 ブワアアー
勇者の2人はアニスにお礼を言っていたその時、高速で接近し現れたのは、人化した好青年の「ヤマタノオロチ」だった。
「ん、なんだヘビくんじゃないか、どうしたの?」
「はいアニス、先程ここに現れた勇者達ですが、1人を除き、全員が殺害されました」 サッ!
「ん!」
「「 ええーッ! 」」 ババッ!
「そう…で、誰が彼らを殺したの?」
「そ、そうよッ! ケンゴ達だって仮にも勇者よ、その勇者を3人も、誰がやったのよッ!」 ザッ
「確かに…ここの世界の人達じゃなさそうだが…」
「ねえ、ヘビくん、誰が勇者達をやったの?」 うん?
「はい、そのう… 勇者達を殺害したのは…」 うう…
「ん?」
「「 誰だ(よ)ッ! 」」 ババッ!
「同じ勇者…ケンゴという者です」 バッ!
人化した「ヤマタノオロチ」の報告は、衝撃のことだった。
「「 そんな馬鹿なッ! 」」 バッ!
「そう…そう来たか…創造神ジオス…」 ギュッ!
勇者の2人は信じられないと言った表情で驚き、アニスはさもありなんといった表情をしていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。