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第231話 異次元世界から来た勇者たち

―ヤマト皇国「樹海」 中腹部ー


シュウウ……. ザッ ザッ! 


ヤマト皇国「樹海」の中腹部、勇者サトシとスズカの前に、同じく勇者の、ケンゴとショウゴの2人が高速移動術で現れ、不敵の笑みを浮かべ立っていた。


「ケンゴ…3年ぶり、神様の部屋以来かな、ショウゴも元気そうで良かったよ」 チャキッ


「はッ、サトシ、それが3年ぶりに会う親友に剣を向けて言う言葉か?」 ザッ!


「おいおいッ! スズカじゃねえかッ! お前もヤマト皇国に来てたのかよッ!」 ザッ!


「ええ来てたわよ、ショウゴは相変わらずね」 フリフリ


「どう言う事だよケンゴ、ここにはサトシだけじゃなかったのかよ!」 バッ


「ああ、そのはずだったんだがな…(俺の勇者能力、《サーチ》ではサトシと数人の騎士しか探知しなかった…スズカを認識しない? どう言う事だ?)」 ふむ…


「それで、ケンゴにショウゴ、一応聞いておくが、2人とも『樹海ここ』には何しに来たんだ」 グッ


「ああ、俺達か…俺達はな、ココル共和国の奴らに頼まれて、『樹海ここ』に居るって言う、神の力を持っているという女を回収に来たのさッ!」 二ッ


「回収? そうなのか? ケンゴ」


「ああ、本来の目的はなッ!」 ギリッ


「やはり、あなた達も聖女様が目的なのね」 ジッ


「聖女? 聖女だと? スズカ、お前そんな奴が本当にいると思うのか? お笑いだなッ!」 ククク!


「黙りなさい…ショウゴッ!」 ジャキッ!


「おっと! すまんな、だがスズカ、聖女なんていないぜ! あいつら、見た目は清楚で綺麗だが、その名を騙って振る舞い、いざと言う時はその実、何もできない奴らばかりだ! そうだろケンゴ?」 サッ!


「俺は…俺は神だの女神だの、ましてや聖女なんて奴らはぜってえ許さねえ! 俺たちをこんな偽世界ところに呼び寄せ…ユカを… 俺はその名を聞いただけで反吐が出るぜ! そいつら全員、この偽世界の奴ら共々皆殺しにしてやるッ!」 グッ!


「ケンゴ…お前、やっぱり変わったな、元の世界の時はそんなやつじゃなかったろ? 何があった?」 グッ


「サトシ…お前はあの時、俺達は何人いたか覚えているか?」 バッ!


「あの時って…」


「神の部屋での時だッ! スズカはどうだ? 覚えているか?」 ジッ!


「ええっと、はっきりとは…私達3年生の男女、引率の先生と添乗員、あとその飛行機のパイロットと乗務員、それと他の乗客、神様の部屋に居たのは…500人…ちょっとくらいだったかな…」 う〜ん…


「516人だッ!」 バッ!


「ケンゴ、よく覚えてたな。俺なんか何人居たか、全く覚えてねえぜ」 ヒラヒラ


「そうだな、僕もスズカもはっきりとした数は把握していない、ただ、同級生と引率の先生の数は覚えてる」


「ふん、兎に角、あの場には516人の人間がその場にいたんだッ! そして、その場で神のやつは言ったよなッ! あの神の部屋で俺達全員にッ!」 グッ


「ああ、この偽世界『アーク』で僕たち召喚者が不自由しないようにと力をくれるという話だろ?」


「そうだ、だが神のやつ。俺たちがあの部屋から消える寸前。笑いやがったんだッ!」 ググッ


「えッ⁉」

          ・

          ・

          ・

ー3年と少し前、異次元世界 地球世界ー


ヒイイイイーーーッ! ゴウウウウウウウーーーッ


そこは、偽世界「アーク」とは全く縁もゆかりもない別次元の世界、どこかで聞いた事のある世界、その世界の大空を一機の巨大な飛行機なる乗り物が飛んでいた。


ー日本国 東京 ー アメリカ合衆国 ハワイ諸島間、太平洋上空ー


ポン!


『お客様にお伝えします。当機は間も無くアメリカ合衆国領、ハワイ州オアフ島にございます『ダニエル・K・イノウエ国際空港』に着陸します。現地の天候は晴れ、気圧は…』


ザワザワ ガヤガヤ


「ねえねえ、もうすぐ着くよハワイハワイッ!」 キャ キャ!


「私、思いっきり焼くんだッ! その為に水着も新調したし!」 えへへ


「芸能人、誰かいるかなあ」 う〜ん


「芸能人よりブランド物よッ! アクセサリーにバックッ! 買い物に集中するわッ!」 ニコニコ


「美味しいもの食べた〜い」 あはは…


ワイワイ ガヤガヤ キャッ! キャッ!


ギシッ! 


「へッ! 女どもは浮かれてやがるぜ! おいサトシ、俺達はサーフィンやろうぜサーフィンッ!」


「あ、ああ、いいよやろうか」 サッ


「それでこそ親友ッ! ショウゴも誘って、3人でカッコよく乗ってやろうぜッ! そんで、現地の可愛い子をゲットしよう!」 グッ!


「はは… ケンゴはそっちが目的か…」 ははは…


「おうッ! ケンゴ、そんなこと言ってていいのか?」 ヒョイ


「うん? なんの事だショウゴ?」 サッ


「ほれ、ユカがお前を見てるぞ! 彼女なんだろ? ハワイでハメを外すと嫌われるぞ」 クイッ クイッ!


ショウゴは斜め後方にいて、冷めた目でこっちをジッっと見ている女生徒を親指で示唆した。


「ああッ! うう… 俺に自由はないのかよ!」 フリフリ


「彼女持ちのやつがハワイに来てなに言ってやがる、あるわけないだろ、まあ、サーフィンに集中する事だな」 ククク


「はああ…えッ⁉︎」 ガクン…


ヴァンッ! バッ!………………


東京都立高校「聖高校」の修学旅行、生徒306名、引率の教師12名の彼らは、東京成田国際空港からアメリカ合衆国、ハワイ州のオアフ島に向け太平洋上空を大型旅客機で飛んでいた。 あと30分ほどで目的地の空港に到着する寸前、彼らの意識が途切れ、気がつけば、その飛行機の乗っていた全ての人が、壁が存在しない広い空間の床に倒れていた。



シ〜ン………………


「はッ! え? 床? なんで?」 ググッ スタッ! 


1番初めに気がついたのはミユキという「聖高校」の女生徒だった。


キョロキョロ トコトコ サ


「ヒビキ、ヒビキ起きて、大丈夫?」 ユサユサ


「う…う〜ん…え、おねえちゃん…」 ムクッ


「よかった…他のみんなは…いた…でも、ここはいったいどこ? さっきまで飛行機に乗ってたのに…」 トコトコ


「おねえちゃん、ここどこ? 私たちいったい…」 ギュ キョロキョロ


「大丈夫…ヒビキ、私がついてるからね」 ニコ


「うん、おねえちゃん」 コクン


全く音がしない世界、天頂からわずかに届く光が、床に倒れている大勢の人影を浮かび上がらせ、その服装で、彼女達は同級生達を見つけた。 やがて、1人、また1人と気がつき始め、その場で皆が立ち上がった。


ガヤガヤ ザワザワ ソワソワ…


「なんだここはッ!」 ザワザワ


「どこ? ここどこよおおッ!」 ソワソワ


「うう…私はいったい…」 フルフル…


大型旅客機に乗っていたすべての人が気付き、静寂だったその空間は彼らの叫び声や話し声で騒がしくなっていた。そんな中、1人の若い高校教師が声を上げた。


「聖高校の生徒は全員クラスごとに整列ッ! こちらに集まって下さい。 各クラス担任の先生方は自分のクラスの生徒の確認をッ! 急いでッ!」 バッ


この声に、「聖高校」の生徒達は、クラスごとに集まり、各自無事を確認した。


「ケンゴッ!」 タタタ


「おお、ユカ、無事でよかった」 サッ!


「うん、他の子もみんな無事よ、他のクラスも全員いるみたい」 キョロキョロ


「ああ…そのようだ」 ギュ サッ!


ケンゴはユカを自分に引き寄せながら周りを見た。


「(いったい、ここは何処なんだ?)」 ジッ


ザワザワ ガヤガヤ…


スタスタ トコトコ ザワザワ ガヤガヤ 


「「 ケンゴ! 」」 タタタ ザッ スッ!


「おうッ! サトシにスズカ、お前らも無事だったな…てか、やっぱり一緒か?」 ニッ!


「もうッ! ケンゴッ! 今は非常事態なのよ!」 バッ


「はは、おいサトシ、お前の彼女、気が強ええぞ! 尻にひかれるなよ!」 ニヤ


「このッ ばかケンゴッ!」 カアアッ!


「「「 はははッ! 」」」


「それよりもケンゴ、お前、スマホ持ってるか?」 ジッ


「あッ? そんなもんいつも持って…」 ゴソゴソ


ケンゴは自分の制服の上着にある内ポケットを弄った。


「やべえッ! ないッ! どこにもないッ! どっかに落としたのか⁉︎」 ゴソゴソ キョロキョロ


「ケンゴ、私もないッ! どうしようッ!」 ササッ!


ケンゴの脇にいたユカもスマホを無くしていた。


「やっぱりか、俺たちのも、いやここにいる全員のスマホが無くなってる…ていうか、スマホだけじゃない、時計もタブレットも、俺たちは着の身着のままの状態だ!」 グッ!


「マジかよ…」


周りからも動揺の声が聞こえ始めた。


「ないないッ! どうしようッ!」 ガヤガヤ


「うおおおッ! 俺の課金アイテムがあッ!」 ザワザワ


「ああ、会社との連絡ができないッ! まずい まずい まずいッ!」 ガサガサ ザワザワ


「連絡ッ! 誰か持ってないッ⁉︎ 持ってたら貸して下さいッ!」 ザワザワ


ケンゴやサトシ達だけでなく、他の生徒達や飛行機の乗客達も、スマホなど携帯端末を失い再び騒ぎ始めた。 その時、彼らのいる広大な空間にどこからともなく鐘の音が響き始めた。


ゴ〜ン ゴ〜ン ゴ〜ン ゴ〜ン…


ザワッ! ザワザワ ガヤガヤ 


鐘の音は鳴り続け、516人全員がその音に騒ぎ出した。


「うん? なんだ?」 バッ!


「鐘の音…どこから…」 キョロキョロ


「ケンゴ…私怖い…」 ギュッ!


「大丈夫だ、俺がついてる ユカは俺から離れるなよ!」 グッ


「うん」 ギュウウッ!


ケンゴとユカの2人は、お互いを強く抱きしめていた。その様子を見たサトシはスズカの方を横目で見た。その様子にスズカも気付く…


「え〜ッと…」 チラ…


「なに?…私もユカみたい抱きついて欲しいのッ⁉︎」 グッ ジイイッ!


「いえ、側にいてくれるだけで充分です…」 はは…


「もうッ!…」 トコトコ スッ! ギュッ!


スズカはサトシに近づき、誰にも気づかれずにそっとサトシの手を握った。


「えッ⁉︎」 ピク


「今日だけよッ! 特別だからね…」 ギュウウッ! カアアッ


「あ…ああッ! わかってるよ」 ニコ


その時、鐘の音は止み、一瞬の静寂がおきたあと、516人全員の前に光る球体が現れ、それが弾けた。


ピカッ! 


「「「「「「 わああッ!(きゃあッ!) 」」」」」 バババッ!


「なんだッ⁉︎ 眩しいッ!」 ググッ


パアアアアーーッ!


「やあ、異次元世界『地球』の皆さん、こんにちは、私は神、これよりあなた達を新たなる世界、偽世界『アーク』へと導く存在です」 サッ!


516人の前に現れたのは神を名乗る1人の青年だった。その神は、驚き戸惑っている516人に、偽世界へと導くと言ってきたのだった。当然、そんな事を受け入れられない者達が声を上げた。


「ふざけるなッ! なにが神だッ! 私を元の場所へ帰せッ!」 バッ!


「そうよそうよッ! 空港には家族が待ってるのよッ! 帰してッ!」


「仕事があるんだッ! 大切な契約がッ! 帰して下さいッ!」 バッ!


ワーワー ギャーギャー ガヤガヤ ザワザワッ!


殆どの者が、現れた神に元の世界の帰して欲しいと叫んでいた。


「黙れえーッ!」 ドオオオンッ! ビリビリビリビリッ!


「「「「「 わあああッ!(きゃあああッ!) 」」」」」 ババババッ!


シ〜ン……………


「全く、それが神に対する態度か? これだから人間というやつは…」 フリフリ


静まり返ったその大空間に、神である青年の声だけが聞こえていた。 そこへ乗客だった1人の男性が神に問いかけた。


「か、神様、質問をしてもいいですか?」 サッ


「うん? 時間は無限にあります、いいですよ」 二ッ!


「では、私たちはどうなったんですか? 死んでしまったから神のあなたに会えてるのですか? なぜ他所の世界に行かないといけないんですか? そこで何をすればいいのですか?」 ババッ!


「ふむ…確かに、いきなりでしたからね…」 ジロジロッ!


神である青年は、周囲を見渡し、質問者の問いに答えた。


「では、順を追って説明します」 サッ


その場にいいた516人、全員が神の言葉を聞く為に耳を傾けた。


「まず貴方達全員は死んではいません。生身のまま、この空間に滞在しています」 サッ


「死んでない? 我々は生きているんですね!」 バッ


「はい、貴方達は偽世界『アーク』の聖女達によって、貴方達の世界より呼び寄せられたのです。ここはその偽世界へ行くまでの中間点、あなた達がいきなりその偽世界に行って困らぬよう説明をする為の場所です」 サッ


「聖女達と言いましたが、その人達が何故我々を…」


「それは、それぞれの聖女達に聞いて下さい。 そこで何を成すかは貴方達次第…ただ、このまま偽世界に貴方達を行かせるにはあまりにも不憫、そこで私が貴方達全員に、その世界、偽世界『アーク』で生き抜く為の力と能力を授けます」 ニコ


その言葉を聞いた時、「聖高校」の生徒の中からゲーム好きの何人かが声を上げた。


「うおおおッ! スキルだよッ! 異世界転生ってやつか?」 バッ ザワザワ


「バカ、俺たちは生きてるって言ったろ、転生じゃない転移もしくは召喚ってやつだ!」 ザワザワ ワイワイ


「異世界召喚かッ! うおおおッ! 激ってきたあ!」 ババッ!


「魔法、魔法ッ! 魔法が使いたいッ!」 ググッ! ザワザワ


「英雄だあ! それとも勇者か? 美少女を侍らせ、武器を持たせ… グフフ…」 ググッ!


「素敵な少年に会いたい」 ギュッ!


「それより王子様よッ! ああ、素敵だわ…」 フルフル


ワーワー ガヤガヤ ザワザワ


「聖高校」の生徒達だけでなく、その場にいた半数ほど人が神の言葉にどよめきたっていた。その時、旅客機の乗務員、スチュワーデスの1人が神様に別の質問をした。


「あのう、神様」 ソロソロ


「なんですか?」


「元の世界には戻れないのでしょうか?」


「残念ながら、行きはありますが帰りはありません」 フリフリ


「なんだとッ! 人を呼び出しといて帰せないとはどういう事だッ!」


恰幅のいい男性乗客が叫んだ。


「ああ、興奮なさらず、訳はあります」 サッ


「それは?」


「貴方達、『地球』世界に、貴方達を呼び寄せることのできる、『聖女がいない』からです」 ニコ


「あッ………」 ガクン…


神と名乗る少年の言うことはごく当たり前の事だった。『呼び寄せられたのなら呼び戻して貰えばいい』、ただそれだけの、単純な事だった。 だが、それができる者など、地球世界には誰1人としてのいなかったのであった。


「では、我々全員が、貴方の言う召喚された偽世界「アーク」に行かざる負えないと言うのですね」 グッ


「はい、そう言う事ですね、だから、貴方達に『せめて力や魔力、能力だけでも』と言う事です」 サッ


「そうですか、皆さん、もうこれは神の意思、神の言う通りにするしかないようです」 サッ


ザワザワ ガヤガヤ


「そうだな…神様が言うのであればしょうがない」 うん…


「そうですわね」 コクン


「それで、その能力とは、どのようなものなのですか?」


「そうですね、力に関しては、貴方達の身体能力の大幅な向上と大量の内包魔力を、能力に関してはわかりません」 フリフリ


「わからない?」


「はい、偽世界『アーク』に降り立ち、しばらくしてから、その能力は解放されます」


「つまり、生き抜く力はすぐにもらえるが、特殊能力はその世界に降りないとわからない、と言う事ですか?」 ふむ


「そうなりますね、運次第では強力な能力を授かるでしょう」 サッ


「その能力は一つだけですか?」 バッ!


今度は、「聖高校」の男子生徒が手を挙げ聞いた。


「それも運次第です。1つかもしれませんし100かもしれません」 ニコ


「おおおッ! 100ッ! 最強だあッ!」 ギュッ!


「おおおッ! やってやるッ! ガチャみたいなもんだなッ!」 グッ


その生徒とその周りにいた生徒たちはガッツポーズで喜んでいた。


「それでは、ソロソロ偽世界『アーク』へと行きますよ」 サッ! パアアアンンッ!


魔法陣が展開され、準備が始まった時、「聖高校」の生徒、ケンゴが叫んだッ!


「全員ッ! 一緒なのかッ! 一緒の場所なのかッ⁉︎」 ババッ!


「ケンゴッ!」 バッ!


誰もが気に留めていなかった質問をケンゴがしたのだった。その質問の意味に、サトシは気付きケンゴの名を叫んだ。


シュワンッ! バアアアーーッ!


「召喚者の聖女は偽世界『アーク』のいたる所に点在しています。 貴方達はバラバラに、それぞれの聖女の元に赴く事になるでしょう」 二ッ


ババババババーーーーッ!


「なッ! 俺はユカとは離れたくないッ! 一緒に行けないかッ⁉︎」 バババッ!


「ケンゴッ! 私、ケンゴと離れたくないッ!」 ギュウウッ!


シュワアアアアアーーーッ! バッ バッ!


周りは光の空間へと変わり始め、所々で1人、また1人と消え始めた。


「お互いが寄り添っていれば、同じ場所の聖女の元に赴くでしょう」 フ


「ケンゴッ!」 ギュウウッ!


「ああ、ユカッ! 離すなよッ!」 ギュウウッ!


「うんッ! 絶対に離さないッ!」 ギュウウッ!


シュバアアアーーーーッ! バッ バッ バッ!


「ケンッ!」 シュバッ!


「サトシッ!」 サッ!


ケンゴの目の前で、親友のサトシとサトシの恋人、スズカの姿が消えた。そしていよいよ、自分たちの番と感覚で分かった時、ケンゴに神が一言言った。


「無事に、偽世界の壁を通れたらの話ですが」 ニヤ!


「えッ⁉︎  なッ!」 シュバッ! パアアアアーーッ!


パアアアンンッ! ヒュウウウウウ………


神の部屋と呼ばれるそこにいた516人、全員が、偽世界「アーク」へと消えていった。そこに神と名乗る青年、『創造神ジオス』が不敵の笑みを浮かべ笑っていた。


「ふふふ…これでいい、シナリオどうり…さて、516人、あの中で無事に偽世界『アーク』に降りられそうなのは…ふむ、10人ですか…勇者と呼ばれ、アニスに立ち向かう者達よ、私の為に頑張って下さい…ああッははははは」 シュンッ!


そう、そこにいたのは創造神ジオス、3年後の後、偽世界「アーク」に現れるアニスを消滅させる為に布石を敷いたのだった。 創造神ジオスは、誰もいなくなった神の部屋を笑いながら去っていった。




ー3年程前、偽世界「アーク」 統一召喚儀式ー


偽世界「アーク」、まるで誰かに操作されたかのように、「アーク」の存在する聖女を持った国々が、同時に勇者召喚の儀式を行なった。 誰に勧められたわけでもなく、また強要されたわけでもなく、ただただ、聖女達は召喚儀式を行なった。


ー南国、スカイ小国家連合国 主国 スペルタ国ー


南にある数国の国が集まってできているスカイ小国家連合国、その主国であるスペルタ国の神を祀る神殿にて、聖女の1人が召喚異議を行う為の祈りを捧げ、自身の魔力を水晶球と魔法陣に注ぎ込んでいた。


「我が祈りに答えよッ! 勇者降臨ッ!」 バッ!


パアアアンンッ! シュバアアアーーーー! ヒュウウンンンッ!


聖女の声と共に、魔法陣内に2人の人影が現れた。


シュバッ! ヒイインッ! チリチリチリチリ…


「おおおッ! 成功だッ! しかも2人だッ 勇者を2人も召喚したぞ!」 バッ!


「うう…ここは…」 スタッ!


「サトシ、どうやら着いたみたいよ!」 サッ!


「スズカッ! よかった、無事に着いたみたいだ」 バッ!


「ええ…」 ジロッ!


魔法陣に中でサトシはスズカの無事を喜んだが、スズカの方は周りをじっと観察していた。


ドサッ! 


「聖女様ッ!」 ダダダッ!


「いかんッ! 早く医務室へッ! 医従事長を早くッ!」 バッ!


「「「 はッ!」」」 ザッ! ダダダッ!


勇者召喚の間にいた騎士達の数人が駆け出していった。


「スズカ、彼らはどうしたんだろ?」 サッ


「サトシ、どうやら私たちを呼んだ聖女様が倒れたみたい」 スッ!


「ああ、それで慌ててるんだ。 でも不思議だ…」 う〜ん


「どうしたの?」


「いや、ここの人たちの言葉がわかるんだ、どう見ても日本語じゃあないのに…」 ふむ


「そう言えばッ! 違和感がなかったから気づかなかったわ、もしかして、コレも能力の一つかしら?」


「とにかく、ここの人達からの指示を待とうか?」 うん?


「そうね、ここがどこなのか、私たちに何をさせたいのか、私たちの力はどれほどなのか、全くわからないからね」 コクン


2人が魔法陣の中でそう決めていると、1人の騎士に客室へと案内され、後日この世界の事、コレからのことを教わるのだった。


ー同時刻、ココル共和国 首都「ブレストン」神殿ー


パアアアンンッ! シュバアアアーーーーッ!


アトランティア帝国の隣、ココル共和国でも、秘密裏に勇者召喚の儀が行われていた。 ココル共和国では召喚の儀に2人の聖女を使い、勇者召喚を行なった。 そしてそこには4人の勇者が現れた。


「うむ、見事だ、4人とはでかしたぞ聖女殿!」 バッ


「当然ですわ、では私達はこれで、報酬の方よろしくお願いしますよ」 ほほほ


「よろしくね」 あはは


トコトコトコ ギイイ バタン


「ふん、金の亡者が…聖女が聞いて呆れる」 グッ


ココル共和国の代表議員委員長が、聖女達に嫌味を言っていた。そんな中、魔法陣の中には4人の勇者が立っていた。


「うおおおおッ! キタキタキターーッ!」 グッ!


「へええ、ここが偽世界『アーク』ですか、楽しみですね」 スッ


「おおッ! ケンゴッ! お前と一緒だとはなッ! コレからよろしく頼むぜッ!」 ニイッ!


4人のうち3人の勇者は、この新たなる世界、偽世界に対し興奮気味でいたが、もう1人の勇者、ケンゴだけは違った。


「そんな…ユカが…うう、ユカが消えてしまった…こ、ここに…さっきまで確かにユカの感触はあった…それが…」 ふるふるふる… ポタ…


最後の勇者、ケンゴは恋人のユカと共にこの偽世界「アーク」に召喚されるはずだった。あの時、神の部屋から召喚のために消える瞬間まで、彼女の、ユカの温もりと体の感触は確かにあった、だがほんの一瞬でそれは消え去り、この召喚の間にはユカの姿はなく、ケンゴ1人と、他3人の男子生徒のみがその場に立っていた。


「さあ、選ばれし方々、勇者の皆さん、お疲れでしょう。まずはこちらでお休み下さい。詳しいことは明日からという事で、よろしいですか?」 サッ!


「は〜い、いい部屋をお願いしま〜す」 ザッ ザッ


「そうですね、今日は色々とありましたから」 ザッ ザッ


「おうッ わかった、じゃあケンゴ行くぞッ!」 サッ!


「………」 ググッ!


「ケンゴ、どうした? 移動するぞ?」 うん?


「グッ ユカがいねえんだよおおッ!」 ババッ!


「え、ユカと申されますのは?」 ピタッ


「俺の連れだッ! 一緒にここへ来るはずだったんだッ! それがいねえんだよッ!」 ううッ!


「はああ…左様でしたか、それは誠に残念な事です」 ペコ


「どういう事だよッ!」 グッ


「申し訳ございませんが、そのユカというお方は既にもう存在しません。恐らくは、この世界に召喚されるにあたり、体の方が耐えきれず、魔素変換され、消滅したものと思われます」 ペコ


「はああ⁉︎ あ、ああ、 ユカあああーーーーッ!」 バッ! わあああーーッ!


ケンゴはユカの温もりの残る自分の体を両腕で抱きしめ、その場に崩れ大泣きをした。自分にとって守りたい人物、先程までそれが自分の体に寄り添っていたのが忽然として消え去ったのだ、無理もなかった。


「まあ、消えてしまった者はしょうがありません、諦めも勇者の務めですよ、では皆さん、着いてきて下さい」 コツコツコツ


代表議員議長は、そう言って早々とこの部屋から出ていった。


「うぐぐぐッ!(アイツ今なんて言いやがった…しょうがないだとッ⁉︎ ふざけるなよッ!)」 ギュウウッ‼︎


「ケ、ケンゴ…行くぜ、とにかく休め、それからどうするか考えるんだ」 サッ


「そうですね、ではいきましょうか」 ザッ ザッ


「ケンゴさん、いきますよ」 ザッザッ!


ケンゴとショウゴ以外の2人は代表議員議長の後を追っていった。


「ショウゴ…俺はここの奴らが許せそうもねえぜ!」 ググッ


「ああ、お前の気持ちはわかる、だが、今はおとなしくここの奴らの言う事を聞いておけ、まだ俺たちがどんな力があるのか分からんし、ここがどこで、この世界がどんななのかもわからん、全てはそれからだ」 グッ


「ああ、お前のいう通りだ、見ていろ、この世界の奴ら、それと俺たちをここへ呼んだ聖女、それとあの神の野郎ッ! 俺はお前達を全て消し去ってやるッ!」 ググッ! ダアアンンッ! 


ベコオッ! ドオオオンッ! ガラガラ バラバラバラ…


ケンゴが握りしめた拳を壁に叩きつけると、重厚な石壁は脆くも破壊され、崩れていった。


「行くぞショウゴ、奴らの話に乗ってやる。全てはそれからだ」 ザッザッザッ


「おうッ!」 ザッ ザッ ザッ!

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」 中腹部 現在ー


「そんなッ! ユカちゃんもこの世界に来れなかったの?」 サッ


「そうだ、俺達の国が調べた結果、この偽世界に到達できたのは10人ッ! 516人もいて、たったの10人だけだったッ! その中にユカは入っていない…」 ググッ!


「あれだけいて、たったの10人…」


「ケンゴ、お前達が4人、俺達が2人、あとは誰かわかるか?」 バッ


「ああん、なんだ知らねえのか、ケンゴ、言っていいか?」 うん?


「ああ、構わない、どうせ後で始末するんだからな」 ジイイ!


「ケンゴッ!」 グッ


「そうだな…じゃあ教えてやるか、この世界に来れたあと他の4人とは、全部『聖高校』の生徒だぜ!」 サッ


「誰なのッ⁉︎」 バッ


「スズカも知ってる奴さ、2つの国に2人づつ呼ばれて降りてるぜ、ここヤマト皇国に勇者ヒカルとレン、ミューレン連邦に美人双子姉妹の勇者、ミユキとヒビキ、俺らが知ってるのはコレくらいだな」 


「じゃあ先生とか他の乗客達は?」 バッ


「ああ、神官どもの話じゃあ、この世界に来れなかった奴ってのは、なんでも偽世界の壁に耐えきれず、その身体は魔素変換され、消滅、つまり死んだって事さ」 ふん!


「そんな…500人以上も死んだの?」 フルフル


「ああ、そういう事だッ! だろ?ケンゴッ!」


「そうだ、そしてあの神の野郎、その事を…全てを知ってて、俺たちをここへ導いた。ユカを…ユカを殺しやがったんだっ!」 シュリンッ! チャキ!


「ま、まて、ケンゴッ! では何故僕たちが戦う必要があるッ!」 ザッ!


「サトシ、さっきも言っただろ、俺はこの世界全ての奴を許さねえって…」 チャキ


「だからって…」 ググッ


「当然、そこにはサトシ、お前の国の人間も含まれる、そうすると、お前は国の勇者として、この俺と戦うことになる。だから、今、るのと後でるのになんら変わりはないという事だ」


「そうか…もう後戻りは…昔みたいに親友にはなれないんだな」 うう…


「ああ、だが心配するな、全てが終わったら、俺も逝ってやる」


「そうはいかないッ!」 ブワアアッ!


ビュワアアアーーッ! 


サトシの魔力が急に膨れ上がり、周りに魔力風が巻き起こった。


「うおッ! サトシッ! 流石は勇者、すげえ魔力だぜ!」 ググッ!


「ケンゴ、お前の境遇には充分同情するよ、だが僕たちは僕たちの考えがあって行動する。その僕たちに敵対するならば、ケンゴッ! 僕は君を討つッ!」 ザッ!


シュバアアアーーーーッ!


サトシはケンゴに対し、剣を構えた。それに対し、ケンゴも聖剣「アスカロン」を構えた。


「なあケンゴ、サトシは俺がやろうか?」 チャキンンッ!


「ショウゴ、サトシは俺の親友、奴は俺がる、お前はスズカの方をれッ!」 シュワアアッ!


ケンゴは聖剣「アスカロン」に魔力を込めながら、ショウゴにスズカの相手をするように指示した。


「そうか、わかった、任せろッ!」 ニイッ! ザッ ザッ!


そう言って、ショウゴはケンゴから離れた。


「ふん、サトシ、なんだお前のその剣は、俺の聖剣「アスカロン」をその様な剣で受け切れるのか?」 クク…


「ケンゴ…お前…」 ググッ!


「行くぞおおッ! サトシーッ!」 ダダダッ! ブンッ!


「ああ、来いッ!ケンゴッ!」 ブンッ! スチャッ!


「「 うおおおおおッ! 」」 ギイイイインンンンッ!


ヤマト皇国の「樹海」中腹部で、勇者同士の戦いが始まった。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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