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第230話 波乱の前兆 ヤマト皇国『樹海』

ーヤマト皇国『樹海』上空ー


ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーッ!


シュンシュンッ! シュバアアアーーーーーッ!


ヤマト皇国領内、「迷いの森、迷宮大森林」「樹海」上空を、ココル共和国勇者、4人が乗る4機のブレードナイト「ブラックストライカー D型 FA」が、編隊を組んで飛んでいた。


「ふッ お前ら、流石にブレードナイトの扱いが上手くなったじゃないかッ!」 ピッ


『当たり前だろケンゴ、この3年間、ブレードナイトの扱いをみっちり偽世界ここの奴らに叩き込まれたんだぜ! もう自分の手足の様に扱えるさ!』 ピッ


『僕もさッ! 3年前はまだ不慣れで、操作を誤って空母を沈めちゃったけど、今ならバッチシッ! 思い通りに操れるからね』 ピッ


『本当、あの時は焦ったぜ、タケシがいきなり現れた空母を撃ち落としたんだもんな。落とされた方にしたら宣戦布告もなしにいきなり攻撃されたんだ。たまったもんじゃねえぜ!』 ピッ


『だから、あの時はまだブレードナイトに慣れてなかったんだよ! 避けるつもりがつい、ランチャーのトリガーを押しちゃったんだよね』 ピッ


『その所為で、俺達は隔離されたんだぜッ! ま、そのおかげでこの3年間、ブレードナイト操縦や俺達、勇者の能力や技の向上もできたんだ、これはこれでよかったかもな。その間にヤマト皇国の奴らも俺達の事なんざ忘れてるぜ!』 ピッ


「だといいがな…」 カチ ピッ タンタン グイッ


バウウウウーーッ! シュバアアアーーッ!


ピッ ピッ ピッ!


「全く、3年前と変わっちゃいねえなこの森は、見える範囲全てが森じゃねえか」 グッ!


『ケンゴ、『樹海』に入ったぜ、これからどうする?』 ピッ


「ああ、女を1人拐えって言ったが、どんな姿の女かがわかんねえ、なんでも神ほどの力を持ってるそうだが、この馬鹿みたいに広い森だ! 闇雲に動いても埒があかねえから一旦降りるぞッ!」 ピッ


『ええ〜、森の中に降りるの? なんで?』 ピッ


「見つけるのに数日掛かるかもしれねえ、野営拠点を作るんだよ!」 ピッ


『ああ、そうか、しばらくは森の中かあ、またあのでかい蛇が出たらどうしよう…』 ピッ


「ふッ あの時みたいに生身の俺達じゃねえんだぜ、今はブレードナイトに乗ってるんだ。いかに奴がでかかろうが生き物だ、こいつで吹き飛ばしてやるさッ!」 ピッ


『タケシ、ケンゴの言う通りだッ! ブレードナイトの武器なら1発だぜッ!』 ピッ


『そ、そうかッ! 空も飛べるし、巨力な武器もあるんだった…そうだよね、なら大丈夫かあ』 ピッ


ピッ


『マイマスター、ケンゴ、フォトン波動波の影響でセンサーに異常、正常に動きません』 ピッ


「ああ、そうだろうな、相変わらず出鱈目な場所だぜ! ストライカー、できるだけ影響の少ない場所はないか?」 カチカチ ピコ


『左舷方向下方、比較的フォトン波動波の弱いところが存在します。距離750m、ブレードナイトなら4機は充分着地可能です』 ピッ


「よしッ! 聞いたかお前らッ!」 ピッ


『『『 ああ、おう!、うん! 』』』 ピッ


「一度そこに着地、拠点を作る」 ピッ グイッ!


バウウウウーーッ!


『『『 了解ッ! 』』』 ピピッ! グイグイッ!


ババババウウウウーーッ! シュバアアアアアーーッ!


勇者達4機のブレードナイト、「ブラックストライカー」は、フォトン波動波の弱い場所に向かって降下していった。


ピッ


『下方、目標点ッ!』 ピッ


「ここかッ!」 グイッ! ギュッ! ピピ


バウウウウーーーッ! シュウウウウンンーーッ!


ドオンンッ! ガシュンンッ! シュウウッ……ピッ ピッ


勇者達は、次々と「樹海」の中に降りていった。


ヒュウンン… プシューッ! バクンバクン、チャ ウィイイイインン ガシュン! スタ


ザッ ザッ ピタッ!


「ふむ、まあ、比較的安全そうな場所だな!」 キョロキョロ


ブレードナイトから降りてきた勇者ケンゴは、辺りを見渡し、場所の確認をした。


シュウウンン… プシューッ バクンバクンッ! ウイイイイーーン…


ザッ ザッ ザッ!


「どうだいケンゴ、この場所でいいのか?」 ザッ ザッ


「ああ、ショウゴ、ここを野営地拠点にする。準備を始めようか」 サッ!


「そうか、よしまずはテントだな、ケンゴ、焚き火はどうする?」


「焚き火か… 前の時はそれでアイツを呼び寄せちまったからな、止めとこう。 ブレードナイトから電源を引いて投光器を設置する、それをあかりとしよう」


「そうだな…そうしよう」 バッ


「さあ! やるぞッ!」


「「 おうッ! うんッ! 」」 ダダダッ!


4人は早速その場所に拠点を設営し、4機のブレードナイトに上空から見つからないよう木の枝や草で偽装をした。


ガサガサ バサバサ


「で、ケンゴ、どうやってその女を探す?」 ガサガサ


「ああ、俺の勇者の能力、《サーチ》、探知、索敵、捜査で、見つけてやるッ!」 グッ


「流石だなッ! ケンゴにかかっちゃあ、誰も逃げられんぜ、すぐ見つかっちまう!」 二ッ!


「ああ、任せろッ!ただちょっと広いが、問題ないだろ」 ニヤ


タタタッ!


「設営終わったよ! この後どうするの?」 ザッ


「まだ昼前だ、早速やってみるか」 サッ!


ケンゴは、地面に右手の掌を当て、勇者の能力を使った。


「ふんッ! 《サーチッ!》」 コオオオンンッ! オン オン オン…


「………………」 サッ!


「ケンゴ、どうだった?」


「クククッ!」 フルフル…


「どうしたんだケンゴ、目標の女を見つけたのかッ!」 ザッ!


「いや、女はいねえ…だが、ここから10kmくらい先か、俺達以外にもこの国に侵入した奴らがいるぜ」 バッ!


「なに! まさかアトランティア帝国の奴らか?」


「いや違うなあ…ククク、あの装備…南の国、確かスカイ小国家連合国の主国、『スペルタ』の奴らだ、そのうちの1人は、【サトシ】だぜ!」 二ッ!


「スペルタの勇者かッ!」 バッ!


「ああ、そうだ! 流石にブレードナイトは持ち込めなかったようだぜ!」


「凄えッ! ケンゴさんの勇者能力ッ! そこまで分かっちゃうんだ!」


「ケンゴが勇者として異常に強いせいだろ、しかし、流石にブレードナイトみたいな巨大なもの、俺達の国以外、このヤマト皇国に侵入する事が出来なかったみたいだな!」 ふんッ!


「多分…な! さて、邪魔な奴らは消しておくか…」 スチャ ザッ!


「おッ! ケンゴ、やるのか?」 二ッ


「当然、『女を攫ってこい』とは命令されたが、『他国の奴らを、殺すな』とは命令されてねえ、ましてや同じ『勇者』だ、始末した方がいいだろ」 ニヤッ サッ!


「でも、国の奴らに『穏便』にと言われてるぜ! どうやるんだ?」


「ククク、だから… ブレードナイトを使わず、コレで『穏便』にすませるのさ…」 チャキ シュンン…


ケンゴは腰に帯剣していた剣を抜き、構えた。 勇者専用ロングソード、聖剣「アスカロン」、ココル共和国が勇者ケンゴのために用意した聖剣であった。


「なるほど…聖剣での地上戦か、それなら確かに『穏便に』だな! 俺も行こう!」 チャキッ シュリン!


勇者ショウゴも持っていた聖剣を鞘から抜いた。


「ケンゴの聖剣「アスカロン」、それと俺の聖剣「フルンディング」、腕が鳴るぜ!」 シュンッ!


「よしッ! 僕も行くッ!」 バッ


「タケシはダメだ!」 サッ


「ええ〜ッ! 僕もやりたいよお!」 グッ


「今回はタケシ、お前はイチローと一緒に留守番だ」 サッ


「俺もかよッ!」 バッ


「すまんな、ブレードナイトを使わず、10Km先の奴らの所まで行くのに高速移動術《瞬歩》がいる。2人は持ってないだろ? だから、俺とショウゴの2人で行ってくる!」 ザッ!


「大丈夫か?」


「ああ、勇者サトシとスペルタの奴らは俺とショウゴの2人で充分だッ!」 二ッ!


「わかった、じゃあ俺とタケシはここで留守番だな」 二ッ!


「ええ〜…」 がっくし…


「ケンゴ、気をつけろよ! 相手は俺達と同じ『勇者』だ!」 グッ


「おうッ! じゃあ行くかショウゴッ!」 ニヤ チャキン!


「ああ、場所案内頼むぜ!」 キン!


2人は聖剣をそれぞれの鞘に戻し、構えた。


「「 《瞬歩》 」」 シャッ! シュバッ! バババーーッ! ザザッ ガサッ!


ケンゴとショウゴの2人は、その場から一瞬で姿を消した。


「おおッ! ケンゴさん達凄ええッ!」 バッ


「そうだな、同じ勇者なんだが、持っている固有能力が全員違うからな。俺もアレは欲しかったぜ」


「僕も…神様はなんで付けてくれなかったのかなあ」


「神様か…そうだな、もう一回会えたら、文句を言ってやるか?」 うん?


「それいいかもッ!」 ニイッ!


「ははは、(会えればな…)」 


野営地に残された2人は、ケンゴ達2人の消え去った森を見ていた。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」 中腹部ー


ザッザッザッ ガサガサ バサバサ ザザ ダン バサ!


ヤマト皇国の国境を超え、この霊山「フジ」の裾野に広がる広大な森林、「迷いの森、迷宮大森林」と呼ばれる「樹海」の中を、ヤマト皇国国外勢力、スカイ小国家連合国の主国、「スペルタ国」の勇者とその一行達が、ヤマト皇国に気づかれず行軍をしていた。


バサバサ ガサッ! ザッ ザッ 


「勇者サトシ殿、本当にこの方角でよろしいのですか?」 ザッ ザッ ガチャガチャ


「騎士団長、間違い無いですよ、僕の勇者能力、《トレジャーハック》は確実に彼女、聖女様を見つけてます。あとあの山…(富士山そっくりだな…)その反対側、この国ヤマト皇国のふねが一隻います。注意が必要ですね」 ザッ ザッ


「分かり申した。そうですな、我々は国王の密命を帯びた密入国遠征部隊、見つからぬようにしませんとな」 ザッ ザッ ガシャガシャ


「しっかし、本当に不便よねここ、《ゲート》が全く使えないなんて」 トコトコ


「しょうがないよ【スズカ】、この『樹海』の中じゃ、移動魔法は使えないんだ、さっき試したけど、攻撃と治癒魔法は使えるみたいなんだ、あと、君の勇者能力、《隠蔽》や僕の《トレジャーハック》、他のいくつかも有効みたいだね」 ザッ ザッ ガザガザ


「転移移動用の魔法や能力だけ無効だなんて、意地悪な森ねッ!」 トコトコ バサバサ


「それでも、スペルタからこのヤマト皇国『樹海』入り口までは僕の《ゲート》で簡単に来れたんだ。それだけでも良かったじゃ無いか」 ザッ ザッ


「まあ、それもそうね、一瞬だったから…」 トコトコ


「………」 ザッ ザッ トコトコ トコトコ バササ ガサガサ…


「ねえ、サトシ…」 トコトコ


「うん? なんだいスズカ?」 ザッ ザッ ザッ バサッ! ザッ!


「もしかして、もう気づいてる?」 トコトコ


「うん、とっくにね、この反応、ケンゴとショウゴか…こっちに近づいてきてる。ちょっと離れた所に、イチローとタケシもいるみたいだね」 ニコ ザッ ザッ


「やっぱり… こっちに来るってことは…まさか…」 トコトコ トン


ピタッ! クルッ ザッ!


「そのまさかだよスズカ、アイツらは僕達を攻撃するつもりさ、もしかしたら殺しに来るかもしれないね」


「はああ…やっぱり、ほんっとバカな奴らね… 私たちに勝てるつもりなのかしら?」 フリフリ


「同じ勇者として、自分たち以外の勇者は認めたく無いんだろ? ケンゴはそういう奴さ」 サッ


「サトシはいいの? 親友だったんでしょ?」 うん?


「ああ… 偽世界ここに来る前まではね、何かがアイツを変えてしまった…」 ふ…


先行していた2人が立ち止まって話していた時、後からついてきた騎士達の団長が話しかけてきた。


「勇者サトシ殿ッ!スズカ殿ッ! いきなり立ち止まって如何されましたか?」 ガチャガチャ!


「ああ、すまない騎士団長、もうすぐここに、敵…勇者がやってくる」 サッ!


「勇者ですとッ!」 ババッ! ガシャ!


「「「「「 勇者? 勇者だって? どこの? 」」」」」 ザワザワ ガヤガヤ


勇者サトシの言葉に、一緒についてきた、スペルタ国騎士12名はざわついた。


「そ、それは誠でございましょうか? サトシ殿やスズカ殿以外の勇者となると、他国の勇者ですな?」 ガシャ


「うん、で、ちょっと危ないから、騎士団の皆さんは少し下がってもらえないかな?」 ニコ


「な、我々は国王より勇者サトシ殿とスズカ殿の護衛を任せられています。それを成し遂げもせず、下がるというのは…」 ガシャ


「騎士団長さん、お願い、私たちが思いっきり戦うには、騎士団の方々がいると思う様に動けないの、サトシの言う通り、少しだけ下がってくれない?」 ニコ


「スズカ殿…わ、分かり申した… 遠征部隊、後方に下がるぞッ!」 ババッ!


「「「「「「 ハッ! 」」」」」」 ババッ! ガシャガシャッ! ザッ! ダダダダッ!


「では、勇者サトシ殿、勇者スズカ殿、御武運を、お気をつけて」 サッ! ガシャ ダダダッ!


「「 うん!(ええッ!)」」 サッ! 


勇者である、サトシとスズカの申し出を受けて、スペルタ国の騎士団は『樹海』の中に下がっていった。


「さて、スズカ、準備はいいかい?」 シュキンッ! シャッ!


「ええ、もちろん」 クルクルッ ヒュンヒュンッ ビュンッ! シュザッ!


「さあ、来るよッ!」 ググッ!


「うんッ!」 ザッ!


バサササササーーッ! バアアアンンッ! ザザーッ! ダンッ! シュウウウ…


「ようッ! サトシッ!」 ニヤ…


サトシとスズカの前に、よく見知った顔の2人の勇者が現れた…

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」 最深深部ー


パチパチ メラメラ ジュウウ…


トントントン ジャッ ジャッ! カチャカチャ ポコポコ


ヤマト皇国「樹海」の最深深部で、突然超巨大な蛇、「ヤマタノオロチ」に出くわしたアニスだったが、アニスの真の正体を知った「ヤマタノオロチ」はアニスに謝罪し、アニスはそれを受けて今、その最深深部で焚き火を焚き、遅い朝食を作っていた。


『あ…あのう、アニス様…ここでは、そのう…火を使うのはちょっと…』 ニョロ チロチロ


「ん? アニスの朝食、邪魔したのヘビくんじゃないか、少しだけだから待ってて…」 トントントン


アニスはすぐ背後に巨大な蛇、「ヤマタノオロチ」がいるにもかかわらず、調理を続けた。


『はあ…しかし、大森の主の前で平然と火を焚いて、調理をするなんて貴女だけですよ! それこそ大森がお怒りになるかと…』 チロチロ チロチロ


「大森ってこの森のこと? 森は別に構わないって言ってるよ?」 ジャッ ジャッ! 


『そんなバカな事……本当だ、アニス様なら構わないって…では、私はアニス様に怒られ損では無いかッ!」 ニョロニョロ チロチロ!


「ん! よしッ! 出来たあーーッ!」 サッ!


『うん? 終わりましたか? ではすぐに火を消していただけませんか?』 チロチロ


「ん〜…ま、いっか、じゃあ消すね」 パチンッ!


シュン… チリチリ


『ふうう…ありがとうございます。 アニス様』 ペコ チロチロ


「ん、それより今日の朝食ッ! ふわふわオムレツに粗挽きソーセージ、フレッシュサラダとコーンポタージュッ! ん〜美味しそうに出来たッ!」 グッ!


『コレが、アニス様の朝食ですか』 ニョロ ジイイ! チロチロ


「ん? ヘビくんも食べてみる」 うん?


『いえ、私は1000年ほど前から、口で物を食べる必要がなくなりました。今は、この大森の魔素を、体全体で吸収すれば良いのです』 チロチロ


「へええ、美味しいのに…じゃあ私は食べよっと」 スタッ! ん!


『はあ…はは…呑気な方だ… ムッ⁉︎』 ニョロッ!


ズワアアアッ! グイイインッ! ピタッ!


アニスがミニテーブルと椅子を異空間庫から取り出し、朝食を並べ椅子に座り、朝食をとり始めようとした時、「ヤマタノオロチ」が何かに気づき、その大きな鎌首を持ち上げた。


『うむ…なんだ…ずいぶん遠いが、大森のハズレに強大な魔力の持った者の反応がある…1、2…全部で6人…いや7人か…アニス様といい、今日は一体なんて日だッ!』 チロチロ


「いただきま~す、ん? この魔力…」 パク モグモグ ングング ゴクン!


『アニス様、この魔力をご存知で?』 ニョロ


「美味しいいーーッ!」 パクパク モグモグ ゴクン


『ア…アニス様… 』 チロチロ


「ああ、ごめん。 遠くの魔力だよね」 カチャカチャ パク


『はい…』 ニョロ チロチロ


「勇者だよ、ジオスが言ってた」 パク モグモグ


『ジオスッ! それは、創造神様ではないのですか?』 シャアッ! チロチロ


「ん、そうだよ」 モグモグ ゴクン


『では、勇者とは創造神様がこの世界に差し向けた者達なのですか?』 チロチロ


「ううん ちがうよヘビくん ごちそうさまあッ!」 サッ


『違う? では彼ら勇者とは…』 ニョロ チロチロ


「勇者は召喚者によってこの偽世界に呼び出された、異世界人だよ。創造神には出来ない」 カチャカチャ


アニスは食べ終わった食器類を片付けながら語った。


『出来ない⁉︎ 神である創造神がですかッ⁉︎』 シャッ! チロチロ


「うん、創造神はその世界を作り出す神、その世界にあらゆるものを、豊かな大地に豊富な水、人や動物、草や木、ありとあらゆるものを創造するのが、創造神の出来ること…よその世界…異世界から人を呼び出す事など出来ない…」 カチャカチャ サッ サッ シュンッ!


アニスは全ての食器とミニテーブルに椅子を異空間庫に収納した。その場には調理した焚き火の跡や食事をした痕跡は一切残っていなかった。


『では、勇者とはこの世界の人間が呼び出した悪しき存在なのですか?』 ニョロ チロチロ


「ん? 悪しき? ちがうよ、彼らは悪く無い、彼らは元々、純粋な心を持った平和な世界の者達なんだ。ただ…」 う〜ん…


『だた? なんでしょうかアニス様』 チロチロ


「彼ら勇者は、世界を越える時、強大な力と能力、魔力をその身体に宿すんだ。それこそ、能力の中には神をも倒すことのできるのもある…」


『神を…倒す…』 チロチロ


「ん、当然、ある種の制約は必要だけど…その力、能力に呼び寄せた国、あるいは呼び寄せた者が目をつけ呼び出し、呼び寄せた彼らをどう扱うかで、異世界人…彼らの偽世界ここでの性格や態度が変化、それが時間とともに顕著に現れる。 勇者とは呼び寄せた異世界人をこの偽世界の人々がどう扱うかで決まるんだ」


『勇者とは、この世界の人間が作ると言うのですか?』 シャッ チロチロ


「半分はそうかな、後は異世界人の性格と努力、判断次第だね」 ニコ


『その勇者が複数人、この大森に侵入して来てますが、アニス様の判断をお伺いしても?』 チロチロ


「ええ〜… ヘビくんの森でしょ? 君の判断でいいんじゃ無いの?」


『大森がアニス様に判断を仰いでまして…』 二ッ チロチロ


「わッ! ヘビくん笑うんだ… えっと、森が私にねえ…」 う〜ん…


アニスは両腕を組んで考えた。「ヤマタノオロチ」の言う大森、「樹海」自身が意思がある様に、アニスに勇者達とこの森の事を委ねたと言う事だった。


「ん、じゃあ、ちょっと見てくるよ!」 ポンッ!


『アニス様ッ! では私もお供をします』 ニョロ チロチロ


「いやいやいや、ヘビくんはここで待っててよ!」 フリフリ


『私では役に立たぬと?』 シャッ チロチロ


「そうじゃ無いけどねえ、その身体でしょ? 勇者が見たら一斉に飛びかかってくるんじゃ無いかな?」


『ははは、勇者がですか? アニス様じゃあるまいし、あのような者達に私はやられませんよ!』 シャッ チロチロ


「ん、そうだよねえ…今のヘビくんは神獣級の強さと防御力、回復力だから大丈夫かな…でもその大きさは…ちょっとねえ…」 う〜ん…


『では人化しましょうか?』 チロチロ


「えッ! できるの?」 バッ!


『はい、この大森の中だけですけど、出来ますよ』 チロチロ


「なら、一緒に来る?」 うん?


『はい、ではッ!』 ニュルルルッ! バシュウウウーーッ! バアアアーー!


パアアアンンッ! モクモクモク シュワアアアア……. ヒュウウ…


「コレで如何ですか? アニス様」 ザッ サッ 二ッ!


「わああッ!」 バッ!


この「樹海」の主、「ヤマタノオロチ」がトグロを高速に巻き、辺りに煙が沸き起こり立ち込めた後、一瞬輝き、その煙が晴れたその場所には、身長200cm程もある、金髪に金色の瞳、所々に金の刺繍が入った黒いジャケットに黒いズボン、黒革のブーツに細身の剣を帯剣した、好青年が立っていた。


「うん、化たなヘビくん、かっこいいよッ!」 グッ!


「ありがとうございます」 サッ!


「じゃあ、勇者達の所まで行こうか、ヘビくんは高速移動術、使える?」 スッ


「勿論、《縮地》で宜しければ」 サッ


「ん、上等、行くよ」 グッ


「はいッ アニス様ッ!」 グッ


「「 《縮地ッ!》 」」 キュンッ シュバッ! 


シュンッ シュババババーーッ! ザザザザアアアアーーーッ!


アニスと人化した「ヤマタノオロチ」は、瞬時に高速移動に入り、『樹海』の樹々の中に消えていった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国、カルディナ軍港ー


ピッピイーッ! ピッピイーッ! ガガガガッ! ガコーン ガコーンッ! ジ、ジジジ…


「オーライ オーライ ストーップッ!」 ガコーンッ!


ピコン!


『第3補修部隊は偽装作業開始』 ピコッ!


「おいッ! アーク溶接機をこっちに持ってこいッ!」


「分かりましたあーーッ!」 ゴンゴン ゴロゴロ


ジジジ バジジジッ!


ここアトランティア帝国、大陸艦隊本部軍港、カルディナ軍港の作業ドックにて、強襲巡航艦「ライデン」が、仮装巡航艦装備の艤装工事を急ピッチで行っていた。騒がしい作業音のする作業ドッグ内に、2人の人物が近づいていた。


ガガガガ ゴンゴン ジジジ ウィイイイン ガシャンッ! バババッ


カツカツカツ


「ほおお、だいぶ進んでおるな!」 ザザッ! バッ!


「ええ艦長、予定より随分早く終わりそうです。このままですと翌朝、AM0800時には出港できそうです」


「ふむ、一刻も早く、ココル共和国を抜け、ヤマト皇国に行かなくてはなッ! しかし…」 ジイイッ!


その場に来たのは、強襲巡航艦「ライデン」艦長の【アレックス・グレイ】中佐で、偽装されていく「ライデン」を副官とともに見上げていた。


「ははは…コレはもう軍艦…戦闘艦では無いな、どう見ても1000万トン級、商業用輸送船にしか見えん」 ポリポリ


グレイ中佐の言う通り、「ライデン」のその姿は、完璧なまでにコンテナや荷の積み下ろし用クレーン、艦体は明るい目立つ塗装をされ、艦名、艦番号もその上からステッカーで隠され、商業船の名前と番号に変えられていた。


アトランティア帝国、リバプール商会商船「オプテミス号」 船体商船番号「A-0101」、強襲巡航艦「ライデン」の偽装船名であった。


「う〜ん…」 グッ


「艦長、どうされましたか?」


「副長、退役して、商船の船長もいいかもと思ってな」 ニイ


「艦長ッ! まだ退役なんかしないでくださいッ!」 バッ!


「ははは、冗談だよ冗談ッ!」 ははは…


その時、グレイ中佐の携帯端末が鳴った。


ビーッ ビーッ ピッ!


「私だッ!」


『艦長ッ! 緊急事態ですッ! 至急王城へお戻り下さいッ! 皇帝陛下がお呼びですッ!』 ピッ


「慌てるな、何があった?」


『「勇者」ですッ! 他国がすでにヤマト皇国に向け、勇者を送り込んだとの情報が入りましたッ!』 ピッ


「『勇者』だとッ⁉︎」 グッ!


「艦長ッ!」 バッ!


「すぐ戻るッ!」 ピッ バッ! ダダダッ!


グレイ中佐は、通信を切るとすぐさま向きを変え、王城へと駆け出した。


「副長ーッ! 『ライデン』を頼むッ!」 ダダダッ! バッ!


「はッ!」 ババッ! サッ


そう言って、グレイ中佐は作業ドックを出て行った。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国 帝都「アダム」王城ー


アトランティア帝国 王城では緊急の会議が行われていた。ヤマト皇国に先立って潜ませていた密偵からの報告で『勇者が6人、ヤマト皇国領内の「迷いの森 迷宮大森林」「樹海」に入った』と言う報告を受けてのことだった。


「それで、状況はどうなのだ、【ウィリバルト】よ」


「はッ 皇帝陛下、最新の情報によりますと、すでに友好国ココル共和国から4名、南の諸国家より約2名が、ヤマト皇国に侵入したとの報告です」 サッ


「ふむ…6人か…」


バンッ!


「何が友好国だッ! 俺達を足止めさせておいて、自分達はさっさとヤマト皇国に潜入とは!」 ググッ


「レオン君、落ち着きなさい、それくらいの事、どこの国ももうやっているわ、ただね、流石に勇者が潜入ともなると話は別なの」 サッ


「う…そうだな、すみませんレイラ姉…」 スッ


ギイイッ バタン  タタタ スッ ササッ!


「遅くなりましたッ! グレイ中佐、今御前に!」 ハアハアハア ザッ! サッ


勢いよく扉を開けて入って来て、皇帝陛下の前でひれ伏したのは、強襲巡航艦「ライデン」の艦長、グレイ中佐だった。


「グレイ中佐、急に呼び出してすまない」


「いえ、陛下の緊急の呼び出し、当然のことです」 サッ


「うむ、飛び出したのは他でも無い、グレイ中佐」


「はッ!」 サッ


「『ライデン』の方はどうであるか?」


「はッ 8割がた偽装は完了し、明日AM0800時には出港予定です」


「8割か…では残りは航行中に為せば良い、グレイ中佐ッ!」


「はッ!」


ズバッ! ザッ!


アトランティア帝国皇帝、【ベルディア・ヴェル・アトランティア】は、玉座から勢いよく立ち上がり、平伏すグレイ中佐に命令した。


「勅命であるッ! 直ちに出撃、ヤマト皇国に赴き、我が娘、アニスの奪還を命ずッ!」 ババッ!


「はッ! 皇帝陛下の勅命、しかと受け止めましたッ!」 サッ


「うむ、頼んだぞ、グレイ中佐」 サッ


「はッ!」 スタッ タタタ


「よし、レイラ姉ッ! 行ってくるッ!」 バッ! ダダダ!


「ええ、レオン君、あの娘をお願いね」 ニコ


「ああ、任せろッ!」 二ッ! 


ギイイ バタン!


嬉しそうに笑みを浮かべ、レオハルト中佐は会議室をグレイ中佐と共に出て行った。


「2人とも、アニスを頼んだぞ」


こうして、明日を待たず、強襲巡航艦「ライデン」は、偽装巡航艦1000万トン級商船「オプテミス」号として、カルディナ軍港を出港して行った。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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