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第229話 勇者達と『樹海』の主

ーヤマト皇国『樹海』 最深深層部 深夜ー


パチパチ メラメラ カタン パチッ ボウッ メラメラ…


コクコク コクン  カチャ…


「ふうう… 」 コロン パサ… スッ!


日は沈み、闇夜のヤマト皇国『樹海』の深層のさらに奥、恐らくこの国の人間も立ち入った事のない最深部で、アニスはただ1人、焚き火を焚き野営をしていた。 山鳥の肉料理を食べ終え紅茶を飲んだ後、毛布を敷いたその場に横になり、『樹海』の樹々の間から見える夜空を見ていた。


「大山曹長のあの亡くなり方…やっぱりアレは創造神ジオスのやり口だよね…」 ん〜


昼間、一級河川河原にて、大山曹長との戦いの途中で、彼は突然倒れ、魔素還元されその身体は消えていった。 アニスの一撃を受けていたが、致命傷になる様な攻撃でない事はアニスが1番よく知っていた。にも関わらず、彼は亡くなった。 


まるで、糸の切れた操り人形の様に、崩れ倒れたのだ。アニスはその亡くなり方をアトランティア帝国で見て知っていた。


「さて、先ずはこの国から出た方がいいのかな…白井達にも迷惑をかけるし、何より…レオンに会いたいな…」 キュッ


アニスは夜空を見ながら、アトランティア帝国で別れたレオハルト中佐の事を考えていた。


「明るくなったら移動しよう、今はお休み…レオン…」 ク〜

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国 帝都『アダム』王城ー


バンッ!


「俺が行くッ! いや、行かせてくれッ!」 バッ!


アニス発見の報告を成された即日、アトランティア帝国、帝都『アダム』の王城会議室で、主だった者が集まり、アニス救出の準備会議が、深夜遅くまで開かれていた。テーブルを叩き叫んでいるのは、アトランティア帝国、大陸艦隊所属のブレードライナー、【レオハルト・ウォーカー】中佐だった。


「落ち着けレオンッ! 元よりそのつもりだ!」 バッ!


「そうよッ! だから少し座って待ちなさいッ!」 サッ!


「ジジイッ! レイラ姉ッ! うううッ…」 ググッ… ストンッ ギシッ!


苛立って立ち上がったレオハルト中佐を諌め、落ち着く様に言ったのは、現皇帝の長女、【レイラ・ヴァン・クリシュナ】公爵と、アニスの友人の父であり、アトランティア帝国辺境公爵当主、【ヴェステバン・フォン・マイヤー】提督だった。


大人しく席に座ったレオハルト中佐に、アトランティア帝国皇帝、【ベルディア・ヴェル・アトランティア】が、彼に諭す様に話した。


「レオハルトよ、アニスの元へすぐにでも駆けつけたい、その気持ちは重々承知しておる。だが、今彼女がいるのは極東の大国、ヤマト皇国なのだ。我が国どころか殆どの国との国交がない。はいそうですかと言ってそう易々とは行けないのだ」 サッ


「皇帝陛下…しかし、今アイツがいるのは『迷いの森、迷宮大森林』、あの森はヤバい…早くアイツに会ってやらねえと…」


「わかっておる、我が国だけでなく、他国も動き出しておる。だがの、ヤマト皇国との間には友好国、ココル共和国がある。友好国とはいえ他国の領土上空を戦闘艦艇が通過するのだ、その了解を得るにも今少し時間がかかる。わかってくれ」


「そう言えば陛下、どのくらいの規模を出すおつもりですか?」


「ふむ、友好国、ココル共和国の領土を通過し、国交の無いヤマト皇国へ向かうのだ、大群では不味かろう、少数精鋭、しかも今回はワシの娘の救出という大義名分で動く事になると、巡航艦一隻で充分じゃろ!」 ふむ…


「皇帝陛下ッ! 流石に巡航艦一隻では心許ないと…私のふね、『ヴィクトリアス』を御指名ください」 サッ!


「ダメだッ!」 サッ!


「陛下ッ! 何故ですッ!」 バッ!


「はあ… ヴェステバン、貴公のふねではあまりにも大き過ぎるッ! アレが他国に侵入しただけでも侵略行為とみなされてしまう程、驚異的な存在感のあるふねだ。 今回は諦めてくれ」 スッ


「ぬぬぬ… 仕方ありませんな…」 ググッ


「だとすると、小回りが効いて戦闘力と防御力、速度に優れたふねか…」 ウ〜ン


「やはり、ここはアニスに縁のある、あのふねかのう」 ふむ…


「ええ、ソレしかありませんわね!」 ニコ


「まあ…仕方がない、今回は譲るとしよう! のうッ!【グレイ】中佐ッ!」 ニイッ!


その場の全員が1人の男性中佐に向けて目が集中した。


「はッ! 皇帝陛下、並びにレイラ様とヴェステバン殿の推奨とあらば! 我が強襲巡航艦『ライデン』全力でその任につきますッ!」 バッ! サッ!


「うむ、我が娘、アニスを頼んだぞ、中佐ッ!」


「了解しましたッ!」 ザッ!


「『ライデン』か、アイツに初めて会った時も『ライデン』だったな…」 スッ


レオハルトは、もう2年ほど前にアトランティア帝国山岳地帯近郊の森の中、駆逐艦だった「ライデン」の搭載ブレードナイト「アウシュレッザ D型 カスタム」で、アニスの朝食を邪魔をし、その場で出会った時の事を思い出した。


「ふむ、では早急に出港準備と部隊編成をッ! 隣国のココル共和国には領内通過の許可を大至急取るのじゃッ!」 ババッ!


「「「「「 はッ! 」」」」」 ザザッ! サッ!


こうして、アトランティア帝国からは、アニスの救出に向け、強襲巡航艦「ライデン」と、少数精鋭の部隊編成、隣国のココル共和国への領土上空通過の許可申請が行われた。

          ・

          ・

          ・

ーココル共和国 首都「ブレストン」ー


翌朝AM0800時 国会議事堂議長室にアトランティア帝国より1通の申請書がココル共和国代表議員議長の元に届いた。


「それで…帝国はなんと言ってきているのだ?」 ギシッ


「は、『帝国要人の行方不明者を、極東の国 ヤマト皇国で発見した。ついてはココル共和国の領内の、捜索艦艇1隻通過の許可をいただきたい』だそうです」 サッ


「ふむ、要人ときたか… 流石に表立って神の力を持つ少女、【アニス】とは言ってこないか、あくまでも隠し通すつもりだな…だが、やはり帝国は動いたか、流石に行動が早い…」 ウウム…


「議長、帝国への返事はいかが致しましょうか?」


「10日だッ!」 スッ!


「は?」


「帝国への返事だ、我が国の領空を捜索の為とは言え、軍用艦艇が通るのだ、通過許可を出すのに会議を開き時間がかかる、10日後と返事せよッ!」


「はッ! その様に伝えますッ!」 バッ! ギイイ バタン…


「ふむ…これでアトランティア帝国には時間を稼げる。後は、動向のよく分かっていない国…」 ジイイ…


ココル共和国 国会議事堂会議室にいた代表議員議長の【レイトン・ブラウン】議員が、会議室の壁に掛けられていたこの偽世界「アーク」の世界図を見て呟いた。


「ゼルファ神帝国と南の大国、ミューレン連邦、それと、洋上スカイ小国家連合国…いずれもアトランティア帝国同様、動き出すだろうな… 」 ふうう…


ブラウン議長は深いため息の後、議長席にあるインターフォンのスイッチを入れた。


ピッ


「議長のブラウンだ、防衛省のブレンダー大臣を呼んでくれ」 ピッ


『わかりました』 ピッ


しばらくして、会議室のドアをノックし、1人の男が入ってきた。


コンコン ギイイッ! パタン カツカツカツ


「議長、お呼びでしょうか?」 サッ!


会議室に入ってきたその男は、この国、ココル共和国の軍事を任せられている防衛省の長、【レイナード・ブレンダー】防衛大臣だった。


「うむ、まあそこに掛けてくれ」 スッ!


ザッ ザッ ストン ギッ!


「それで、この私に何用ですかな、ブラウン議長」


「早朝からすまんなブレンダー大臣、君の防衛省の力を持って、南の警戒を強めてほしい、特に軍用艦艇には目を光らせてほしいのだ」


「南…ミューレン連邦…ですか?」 スッ


「ミューレンだけでは無いッ! 南側全てだッ!」 バッ!


「すると、ミューレンに、スカイ小国家連合国…まさか、キュリニア諸島国家もですかッ⁉︎」


「うッ! キュリニアか… あそこは最南端、大丈夫とは思うが…まあそれも含めてだッ! 保有する稼働可能な艦艇を全て出し、南の海上を警戒するのだ、我が領海、領空に入った不審艦船は全て拿捕せよ!」 ババッ!


「はッ! ココル共和国、大陸自衛艦隊、出航しますッ!」 ババッ! カツカツ ギイイ バタン!


再び1人になったブラウン議長は、壁にかかっていたこの偽世界「アーク」に世界図にある、極東の国、ヤマト皇国のあたりを見て呟いた。


「さあ、サフロ議員、時間はつくった。後は頼みましたぞ」 ジッ!

          ・

          ・

          ・

ー同時刻、ココル共和国、最東部 ヤマト皇国との国境周辺ー


ゴウンゴウンゴウン シュゴオオオーーッ! ゴゴゴゴ…


ココル共和国議員のサフロ議員の要請派遣した特務艦艇が、ヤマト皇国国境付近に侵攻していた。 周辺の景色に溶け込み、気付かれず進行中の艦艇は、ココル共和国大陸自衛艦隊所属の特務自衛艦で、ヤマト皇国へと密かに接近侵攻をしていた。


ーココル共和国 特務自衛艦 自衛巡航艦「グレイウルフィル」ー


ビーッ!


「艦長、間も無くヤマト皇国国境、その先に目的地『樹海』を確認ッ!」 ピッ タンタン ピコッ!


「ふん…3年ぶりか、またアイツらを乗せてここに来るとは思わなかった」 グッ


「光学迷彩、正常に稼働中 ヤマト皇国側に動きはありません」 ピッ ピピ ピコ


「ヤマト皇国の警戒システムは尋常ではないッ! 警戒を厳とせよ!」 ババッ!


「「「 はッ! 」」」 ババッ! ピッピッ タンタン ピコッ!


「目標地点まであと1000ッ! 周辺空域に異常なしッ!」 ピッ ピッ


「よし、作戦行動に入るッ! 勇者達を降ろすぞッ! 発艦準備ッ!」 ババッ!


「はッ!」 サッ! カチカチ ピッ!


ビーッ! ビーッ! ビーッ! ポンッ!


『第1発艦デッキ、ハッチ解放、各ブレードナイト、発艦体制ッ! 勇者搭乗員は準備してください! 繰り返します、第1発艦デッキ…』 ピッ



ー特務自衛巡航艦「グレイウルフィル」ブレードライナー待機室ー


ビーッ! ビーッ! ビーッ!


「ちッ! うるせえなッ! いちいち命令するんじゃねえよッ!」 ガンッ!


「ケンゴの言う通り、確かに腹が立ちますね」 イラッ ギュッ!


「確かに、俺達をこんな偽世界ところに呼び寄せといて『帰れないから言うことを聞け、命令に従え』って、今の今まで監禁生活をしておきながら、いきなりの出撃命令で、コレだからなッ!」 キュ キュ


ブレードライナー待機室にいたのは、この国ココル共和国にて、勇者と呼ばれている4人の男達であった。 彼等は3年と少し前に、この国のとある地下施設で召喚魔法によりこの偽世界「アーク」に呼び寄せられた者達であった。


「でもよおッ! 3年ぶりの外だよ、僕達にまた前の様に動けって事だろ? やってやるぜッ!」 ギシ ギシ


「タケシ、お前ははしゃぎすぎだ! 3年前のあの時だって、お前が突っ走って相手の空母を沈めたせいで、俺達はこの3年間、訓練ばっかりの地下暮らしを余儀なくされたんだ、今度は気をつけろよ!」


「は〜い、今度は撃沈しなよう努力しま〜す!」 へへ…


「イチロー、タケシが悪いんじゃ無い、偽世界ここの連中が全て悪いんだッ!」 ググッ!


「ケンゴ… そうだよなッ! こんな世界に呼び寄せといて、『勇者様』なんて言いながら、周りを見れば、魔王どころかモンスター1匹いやしねえッ! たまにいるのはでっけえ猛獣と大悪党ってな奴ばかりだったからな」 はああ…


「そう言えばいたなあ…あのでっけえの! ヤマト皇国の森ん中だろ!」 スッ


「ああ、あのクソでけえ蛇ッ! まあ、あんなのと戦う気もねえから逃げちまったけどな」 二ッ


「逃げて正解だぜ! あんなのに勝てる奴なんざいないさ、俺達でも無理だッ! 相手にしない方がいいぜ!」 フリフリ


「確かに、ケンゴの言うとうりですね。魔法も武器も、勇者の能力もほとんど通じませんでしたからね。 アレに遭遇したら逃げるが勝ちです!」 うん!


「ケンゴとショウゴ、お前達2人がそう言うんだ、アレには手を出さんほうがいいなッ! まあ、この世界に来ていい事もあったんだぜ、ブレードナイト、アレには俺も気に入ってるけどな」 二ッ


イチローという青年がそう言うと、タケシという少年が叫んだ。


「そう、それだよッ! この世界、魔法が使えてさらに、夢だった憧れの操縦できるロボットッ! しかも空中を飛ぶ戦艦や空母ッ! この世界に呼ばれた俺達勇者はこの偽世界人とは違い、強力な魔力と能力を持って全てにおいて最強なんだ! 僕はそれだけで満足なんだ」 ググッ!


「ククク…タケシは楽しそうだな… まあ、この俺も、ブレードナイトってやつには興味がある。なんたって、この世界、ブレードナイト同士なら、相手を殺してもいいんだからよお」 ニイイ…


「ケンゴ…お前…」 


「ああ? 心配するな…お前達だけは仲間だ、りゃあしねえよッ!、俺の相手は、俺の邪魔をする全ての奴ら、こんな世界に呼びやがったこの偽世界の奴ら全てだッ!」 ググッ!


「はは…まあ俺達、勇者ん中じゃあ、ケンゴさんが1番魔力も能力の数も多いですからねえ…俺達でも敵いませんよ…」 はは…


ビーーーッ! ポンッ!


『ブレードナイト『ブラックストライカー D型 FA』発艦準備完了、勇者様各搭乗員は発艦体制をッ! 繰り返します、 ブレードナイト…』 ピッ


「しょうがねえッ! 行ってやるかあ…」 スタッ! ザッ ザッ ザッ!


「そうだな、一応飯も食わしてもらってる身だしなッ!」 ザッ ザッ ザッ!


「でも、またこの国かあ、あの山だけは元の世界とそっくりだったけど、周りの魔素がねえ…」 ザッ ザッザッ! 


「ああ、濃すぎる、しかもフォトン波動波ってヤツがセンサーを無効にしてしまうから、目視攻撃しかできん、まあ、俺達には関係ないけどな」 ザッ ザッ ザッ!


「ふん、そうだな、俺達にはそんなもの関係ないな、勇者特有の能力を持ってすれば、全く問題ないッ!」 ザッ ザッ! ピッ プシューッ!


「ケンゴ、今回の目的は分かってるんだろ?」 ザッ


「うん? ああ、女を1人かっさらて来いってヤツだろ?」 ザッ


「そうだ、『出来るだけ戦闘は回避する様に、穏便に済ませろ』だってよ」 ザッ


「知るかッ! 相手が突っ掛かって来たらどうしようもねえじゃねえか? 偽世界ここの連中は馬鹿ばっかりだな!」 ザッ!


「全くだッ!」 フリフリ


「「「「 ははははッ! 」」」」 ザッ!


プシューッ! ピピイイーーッ! ガコンガコン! ジ、ジジッジジ!


「ケッ! 相変わらず騒がしいとこだぜ!」 ザッ ザッ ザッ!


タタタッ! ザッ!


「勇者ケンゴ殿ッ! ブレードナイト『ブラックストライカー』全機発艦準備完了です!」 サッ!


「ああ、ご苦労さん、よしッ!お前ら行くぞッ!」 ババッ! ダダダッ!


「「「 おおおーーッ! 」」」 ダダッダダダダッ!


勇者達4人はそれぞれ自分の愛機に乗り込み、発艦準備に入った。


ウィイイイインン カシュン ピッ バクンバクンッ! サッ! ストン!


ピッ ピピ カチカチカチ ビコ ビコビコ ピッ! ブウウンンッ!


ヒュイイイイイインンン… ブオンッ! ピッ ピッ


『ようこそ、マイマスター ケンゴ様』 ピッ


「よう、ストライク、今日もまた頼むぜ!」 カチカチ ピコ!


『了解しました。マイマスター』 ピッ


ブオンッ! プシューー! ヒュイイイイイインンンッ!


ビーッ! ポンッ!


『発艦ベイ、第1から第4電磁カタパルト出力上昇、発艦準備完了ッ!』 ピッ


「よし、行くぞストライクッ!」 グイッ! ギュウッ!


『了解です』 ピッ


グワッ! ガコオンッ! ガコンッ! ガコンッ! プシュー! ガシャンッ! ピッ


4機の勇者達が操るブレードナイト「ブラックストライカー」は、所定のハンガーから歩き出し、それぞれが第1から第4までの電磁カタパルトに着いた。


『こちらコントロール、電磁カタパルト1番から4番 勇者殿各位、進路クリアー、発艦可能です!』 ピッ


「じゃあ僕から! 勇者タケシ『ブラックストライカー D型 FAッ!』行きまーす♪」 ピッ


ビーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーッ! ドオオオオオオーーーッ!


「ヤッホオオオーーッ! あはははッ! すっげええーーッ!」 グイッ!


バウウウウーーーッ!


「タケシは、まだまだ子供だね…」 ピッ


「全くだ、俺達も行くぞッ!」 ピッ


「「 了解! 」」 ピピッ!


「『ブラックストライカー D型 FA』勇者イチロー出ますッ!」 ピッ


ビーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーッ! ドオオオオオオーーッ!


『ケンゴ、先に行くぜ』 ピッ


ヒイイイイインンンッ! ピッ ピッ プシューッ!


「ああ!すぐに行くッ!」 ピッ


「『ブラックストライカーD型FA』ショウゴッ! 行くぜッ!」 ピッ


ビーッ! ガシュンッ! シャアアアアアー! ドオオオオオオーーッ!


「さあ俺達だ!」 ピピピッ! カチカチ! グイッ!


『進路方向問題なし、いつでもどうぞ、マイマスター』 ピッ


「ふッ 『ブラックストライカー D型 FAッ!』 勇者リーダー ケンゴッ! 出るッ!」 ピッ


ビーッ! ガシュンッ! シャアアアアアーッ! ドオオオオオオーーッ!


「ふんッ!」 グイッ! ギュウッ!


ヴオンッ! バウウウーーッ! シュバアアアーーッ!


4機の勇者達が操るブレードナイト「ブラックストライカー」が、国境を越えヤマト皇国「樹海」へ向けて飛んでいった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国 帝都「アダム」王城ー


ドカアッ! バキバキ パラパラ…


「ふ…ふざけるなああーーッ!」 ふう ふう…


帝都「アダム」王城の謁見の間横の会議室で、座っていた椅子を壁に投げつけ破壊し、怒り心頭のレオハルト中佐がそこにいた。


「これ、レオン、落ち着かんか!」 スッ


「これが落ち着いてなんかいられるかッ! なんだこの回答はッ! 10日だあ⁉︎ ふざけた事を言ってくるなあッ!」 ブンッ! ガシャーンッ! パラパラ…


「レオンッ! 物に当たるのは良くないわよッ!」 ギンッ!


「うッ!…す、すまない…レイラ姉、つい…」 ペコ…


「大丈夫よレオン君、怒ってるのは貴方だけでは無いから…」 メラメラ パキッ! ポタタ…


レオハルト中佐の横で、皇帝陛下の娘、長女のレイラが笑顔ではあるが目が笑っておらず、彼女の前に置かれたワイングラスがいきなりヒビが入り、中のワインが漏れ出していった。 それを見たレオハルト中佐は額に冷汗を流した。


「うおッ! (レ、レイラ姉が怒ってるッ! まじでやっべえッ!)」 ビクッ!


「ふむ、どうしたものかのう…」 ウ〜ン…


「全ての船が許可に時間がかかるのですか?」


「うん? いや、武装を施した軍艦だけだろうな、民間船や商船は問題なく即日通過許可が出ている」


「民間船や商船ねえ… あッ!」 ポンッ!


「そうよッ! アレよッ!」 パンッ!


「うん? なんじゃ?」 はて?


「「 仮装巡航艦ッ!」」 ババッ!


「ほおッ! その手があったか!」 バン!


「ヴェステバン、余には何の事かよく分からんのだが…」 うん?


「陛下、武装装備した艦船に商船や民間船のように見せる偽装を施し、敵を目を欺くふねの事です」 サッ


「おお、それならすぐにでも通れそうだな! すぐに準備せよ!」 バッ!


「「「「 はッ!」」」」 ザザッ!


「で、やっぱり『ライデン』か?」


「当然ですわね、2日もあれば偽装を完了できるでしょ!」 ニコ


「くそお、それでも2日か… よし、俺は連れて行く部下を厳選してくるッ!」 バッ! カツ カツ


「あ、レオン君」 サッ!


「うん?」 ピタッ クルッ!


「選ぶんならあの子達を絶対入れてあげて」 スッ


「ああ、アニスの弟子達だろ? 当然の選択さ、任せてくれレイラ姉ッ!」 グッ! タタタッ! ギイイッ バタン


そう言ってレオハルト中佐は部屋から出ていった。


「では、各々、自分の責務を果たせ! 良いなッ!」 バッ!


「「「「 はッ! 」」」」 ザザッ! バッ! タタタ ギイイッ


会議室にいた主だった者達は、レイラとヴェステバンの両公爵を残し出ていった。


「アニスちゃん、心配だわ…」 ふうう…


「なあに、あの嬢ちゃんの事だ、大丈夫だろ。 わしが保証するぞ!」 二ッ


「ヴェステバン様、そうね…アニスちゃんなら無事よね…」


「ふふふ、皇帝である、わしが認めた娘でもあるからのう…良い娘だぞ、誰にも渡したく無いのだが…まあ、レオンにはお似合いかの?」 うん?


「ええッ! あの娘なら、レオン君を任せてもいいわ」 ニコ


「さて、わしも少し準備をするか」 ザッ ザッ


「ヴェステバン様、どちらへ?」


「うむ、ちっと南の方の警戒にな、恐らく南方諸国も動くだろう、この期に我が国へと侵攻があるやもしれん。その警備になッ!」 サッ!


「面倒をかけるの! ヴェステバン!」


「陛下、これが私の仕事です。『ヴィクトリアス』を受領した時点で、私は帝国防衛の要、帝国の盾となってこの国をお守りします。ではッ!」 ババッ! ザッ ザッ! ギイイッ バタン


「父…皇帝陛下、ヴェステバンの言う南とは…」


「うむ、恐らく、ミューレン連邦の事だろうな…」 ふむ…


「あの軍事国家ですか?」 バッ


「多分な、あ奴らもアニスを狙っておるのかもしれん、いやそれを口実に、この国への侵攻もあるか…」


「そんな…もしそうなったら…」 フルフル


「全面戦争じゃろな、この国だけでなく、この世界「アーク」の全てを巻き込んだ…」


「ッ!……」


皇帝の一つの可能性の話を聞き、あまりの事にレイラは声を上げる事ができなかった。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国『樹海』 最深深部ー


バカッ! バキバキバキッ! ドオオンッ! バサバサバサッ! ザッ! シュンッ!


ドゴオオンッ! ドカドカッ! バキバキ バサッ!


「わッ! わわわッ!」 シュンッ! タタッ! バッ! ババッ!


ドゴオオンッ! ドカドカ バササッ!


『シャアアアアアーーーッ!』 ズルズルッ! ニュルッ! チロチロッ バッ!


シュババババーーッ! ビュンッ ドゴオオンッ!


「わああッ! でかいッ でかいッ! ヘビくんッ! 君、大っきすぎるよおおッ!」 バッ!


ヤマト皇国の「迷いの森、迷宮第森林」「樹海」の最深深部で、アニスは朝食を取ろうとした矢先、超巨大な蛇、「グロウバルキングパイソン」このヤマト皇国では「ヤマタノオロチ」に襲われていた。


全長約80m、胴回りが約3m程もある大蛇で、この「樹海」の主とも呼ばれていた。遭遇すればほぼ助からない存在の大蛇が今、アニス目掛けて、その鋭い牙や硬い鱗の覆った頭で執拗に、岩を砕き、『樹海』の大木を薙ぎ払いながら、アニスに攻撃を続けてきた。


『シャアアアアアーッ! シャアアアアアーッ!』 ズルズルッ シュバッ! 


ドゴオオオオンンッ! バラバラ…


「わッ! 凄いッ! ヘビくん、君、痛くないの?」 シュンッ!


ブワアアッ! ビュンッ!


『シャアアアアアーッ!』 ニョロッ! シュバアアアーッ!


「あわわッ! あはははッ! 聞こえてないや!」 シュンッ! ババッ!


ドゴオオンッ! バキバキ メキイッ! バサバサバサッ!


『シャアアアアアーッ! シャアアアアアーッ!』 ググッ! チロチロッ!


「ん〜、まだやるの? いい加減落ち着いてくれないかな?」 うん?


グググッ! ババッ! ニュルッ シュシャアアアーーーーッ!


『シャアアアアアーーッ!』 シュバッ! ビュンッ!


「わああッ! もうッ! いい加減に言うこと聞けッ!」 シュンッ!


バチイイイインンッ! ビュンッ! 


『シャアアアアアッ!』 ドオオオオンンンッ! ドカアアアアンンッ! ビキキッ!


バラバラ ガラガラ ゴン ドン ゴロゴロ ガラガラッ パラパラ… ピクピク…


アニスは、言う事を聞かず猛突進し、大口を開け鋭い牙で攻撃してきた「ヤマタノオロチ」の頭を、右手の掌で思いっきり叩いた。 その威力は尋常ではなく、あの巨大な大蛇が真横に吹き飛び、周囲の木々や大岩を砕きながら、最後には岩の大壁に激突して、「ヤマタノオロチ」は崩れてきた岩の下敷きになってしまった。


「あッ! しまったッ!」 ババッ! シュンッ! タンタン トン スタッ!


アニスはふきとばされ、崩れた岩の下敷きになった「ヤマタノオロチ」の元まで、高速移動で『樹海』の中を軽快に移動した。


カラン コロン… パラパラ… ピクピク…


「わああ…ごめんヘビくん、大丈夫?」 ガラガラ ゴソゴソ


アニスが崩れた岩を全て退けると、そこには80m程もある巨大な大蛇が気を失って横たわっていた。


「あははは…これはやり過ぎだったね…」 サスサス


アニスは気を失い倒れている「ヤマタノオロチ」の頭を撫でていた。すると「ヤマタノオロチ」が目を覚まし、巨大な鎌首を持ち上げた。


パチッ! ググッ! ズワアアアアッ! ピタッ! チロチロ…


「ん、ヘビくん大丈夫そうだね、よかった」 ニコ


チロチロ チロチロッ! ブンッ!


「んッ!」 シュバッ! キイインンッ!


大蛇の「ヤマタノオロチ」がアニスをじっと見つめ、一瞬覇気のようなものを発した。すると、アニスの頭の中に声が聞こえてきた。


『我はこの大森の大長、少女よお前は何者だ?』 チロチロ


「わああッ! ヘビくん、君、話せたんだッ!」 


『少女よ、今まで、我に歯向かって来た者は多々いたが、我にダメージを与えたのはお前が初めてだ。』 チロチロ


「ああ、ごめんね。 ヘビくんが私の言葉に耳をかさなかったから…つい、手が出ちゃった」 えへへ


『ふむ、ここは人間が入る事の許されない場所、大森の聖域である。もう一度聞く、少女よ、お前は何者だ?』 ニョロ チロチロ


「私? 私はアニス、ん〜、何者って言われたらねえ…まあ、ヘビくんなら…いいか」 テクテク ピタッ! スッ!


アニスは大蛇、「ヤマタノオロチ」の元まで来て、その硬い鱗に覆われた体に右手の掌をそっと当てた。


『なんの真似だ少女よ』 チロチロッ!


「ん、今から私の事を伝えるね」 ニコ  パアアアンンッ!


『なにッ⁉︎』 ニョロ チロチロッ!


シュバアアアアアーーーーッ!


『うおおおおおおおーーッ!こ、これはッ!』 ビクビク バタバタ チロチロッ!


バッタンバッタン ビクビク バタバタ チロチロ チロチロッ!


『こ、こんなッ! がああああああ……』 ピクピク ピクピク


シュウウウウンン… キラキラキラキラ…


「どう? ヘビくん、これが私、アニスだよ!」 ニコ スッ 


『………』 ピクピク ピクピク チロ チロチロッ!


「ん? ヘビくん? お〜い、大丈夫か?」 ペチペチ


『はッ⁉︎』 ピクンッ! チロチロッ!


ニョロニョロニョロ ズウウンッ! ピタッ スウンッ!


一瞬、意識を失い、固まって微動だにしなかった「ヤマタノオロチ」に、アニスがその身体を軽く叩いて尋ねると、意識が戻り、その巨体がゆっくりとトグロを巻き、最後にその大きな鎌首をアニスに向け下げた。


『申し訳ありませんでしたッ!』 ニョロッ! チロチロチロッ!


「わあああッ! ヘビくん?」 ん?


80mもの巨大な大蛇、「ヤマタノオロチ」は、アニスに向かって謝罪をしてきた。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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