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第228話 アニスと天帝の勅命

ーヤマト皇国「樹海」 最深部一級河川 河原ー


ザアア〜 パシャパシャ…


テクテク カチャカチャ サッ シュン シュンッ!


「ふうう、これでよしッ! もう残って無いね」 パ パ キョロキョロ


この偽世界「アーク」に存在する各国が動き始めたその頃、アニスはヤマト皇国の陸上陸戦部隊の兵士達に提供した、朝食の片付けを全て終え、ゴミなどがこの河原に残ってないか見渡していた。 確認を終えたアニスの耳に、未だに言い争っている白井中尉と佐藤中尉の声が、川のせせらぎとともに聞こえていた。


ザザアア〜 チャパチャパ…


「だから、お前がもうちょっとだなッ…」 ワーワーッ!


「いや、それを言ったらお前だって…」 ワーワーッ!

         ・

         ・

「ん? はああ… あの2人、まだやってんだ… 仲がいいんだね」 クスッ!


「集合ッ!」 バッ!


アニスがそんな2人を遠目で見ていた時、朝食を終えた第1小隊の隊員全員に、副隊長である大山曹長が号令をかけた。


タタタ ババッ! ザッ! 


「よし、隊長はまだ話し合いの最中だ、朝食を終えた我らはこの辺りの周辺警戒にあたる。全員、第1種警戒体制、3人1組になって巡回警備せよ!」


「「「「「 はッ! 」」」」」 ザッ!


ダッダッダッ! ザザッ! 


「どうしよう照ちゃん、アニスちゃん1人になっちゃう」 チャ ガサッ!


「悔しいけど命令には逆らえないわ」 ググッ バッ!


「2人とも、あとは隊長達に任せるしかないわ! さあ行くわよ!」 ザッ! ガサッ!


「「 うん… 」」 ザッ ザッ!


ガサガサ ザッ ザッ バササッ ザッ!


「おいッ! 杉浦ッ! なにやってるッ! さっさと行くぞッ!」 ザッ!


「は、はいッ!」 ザッ! バタバタ!


女性隊員3人はアニスの事が心配だったが、大山曹長との命令も、ごく当然の事だったので、名残惜しくも任務に就き、周辺警戒のための巡回に歩き出した。 それは、男性隊員の【杉浦貴明】上等兵も同じで、アニスを大山曹長の元に残すのには、戸惑いを見せていた。 当然、隊員達は周辺警戒という巡回なので、川の周辺だけで無く、川より森の奥、『樹海』の中へ約500mほど入り警戒任務を行うのであった。


ガサガサ ザッ ザッ バサバサ…


「ふふふ…(さあ、行け、さっさと行け行けッ!)」 ニヤッ


第1小隊副隊長の大山曹長は、部下達をこの場から遠ざけるために命令をしたのだった。


タタタ ザッ!


「大山曹長、自分はどうしたら良いでしょうか?」 サッ!


「うん?」


そこにいいたのは、3人1組では人数的にもあぶれてしまう、【山峰三郎】軍曹だった。元々3人1組では、彼は隊長と副隊長との3人で組んでいたため、1人あぶれる結果となっていた。


「ああ、山峰軍曹、君はあの岩場に通信設備設営、母艦である駆逐艦『ユキカゼ』に定時連絡、こちらの位置と現状を報告と、巡回行動の分隊との交信を頼む!」


「はッ! 直ちに無線設備を設営します」 バッ! サッ! タタタッ!


「ふッ (通信設備設営に結構時間がかかるはず…各分隊は1時間ほどこの場から離れる…チャンス到来)クククッ」 ニヤッ! ジロッ! ザッ ザッ!


大山曹長は、河原で片付けを終わり、白井中尉と佐藤中尉のやりとりを見て笑っているアニスに目をやり、近づいていった。


「だから上にはッ…」 やいやいッ!


「いやそうじゃ無いだろッ…」 ガーッ!

          ・

          ・

「ん〜…いつまでやってんだ? あの2人は…」 あははは…


ザッ ザッ


「本当ですよね、アニスさん。隊長達にも困ったもんだ」 ニヤニヤ


「ん?」 クルッ! ファサッ!


アニスが声のする方に振り向くと、そこには先程、アニスに声をかけかけた第1小隊副隊長の大山曹長が、近づいて来ていた。


ザザッ! バッ!


「えっと、たしか…大山曹長さん…でしたっけ」 うん?


「おおッ! 私の名前をもう覚えてくれたのですか、中々聡明な方だ」 ニコニコ ザッ ザッ スッ!


そう言いながら、更にアニスに近づき、アニスに右手を差し出し握手を求めてきた。


「素晴らしいです。(フフフ…私に落とせない女などいないッ! 誰も知らない私の能力…神技、《チェイン.ザ.ハート》、素手での接触による相手への心の支配攻撃、さあアニスッ! 私と握手をするのだッ! そうすればお前は私の言いなり…一切逆らう事のできない人形と化すのだッ!)」 ニヤッ!


「ん?(手? なんの儀式だろ? ああ、そう言えば白井と佐藤もやってたね)」 う〜ん…


「ぬッ…(この女、なにをしている? 早く手を出さないかッ!)」 ニコニコ ウズウズ…


大山曹長は知らなかった。 この握手をするという挨拶、これがヤマト皇国の独特の挨拶方法だと言う事を…ヤマト皇国以外の国の挨拶とは、男性は胸に手を当て頭を下げ、女性はスカートを両手で掴みカーテシの挨拶をする。 


親しい間柄なら抱き合いハグをする他、夫婦、恋人や親族なら頬にキスをするというのが常識で、握手は余程信頼のある者との商談や契約、仲直りなどの時であって、普段はあまり使われていなかった。


「手を握るのですか?(ん、なんかヤダッ! ばっちいッ!)」 ジイイ…


アニスの戸惑いの仕草と、出された手をじっと見ていた様子に痺れを切らしたのか、大山曹長はいきなり、なかば強引に、アニスの手を取り握手をした。


「そうッ! コレが我々の作法、挨拶なんです! アニスッ!」 ババッ! ギュウウッ!


「わああッ!」 ギュウッ! グイッ!


パアアアンンッ!


「ふはははッ! 握ったッ! 握ったぞッ!(神技ッ!《チェイン.ザ.ハートッ!》)」 ググッ!


シュバッ! ヒュオオオオオーーッ!


大山曹長は、アニスの手を握った瞬間、声に出さず心の中で彼の能力、神技という名の魔法を唱えた。 すると、アニスの足元に黄色い魔法陣が現れ、爪先からから頭にかけ、身体中がうっすら光り輝き、それは一瞬で終わった。


「ん、…」 ピタッ…


「ククク…やったぞッ! コレでコイツも俺の女だッ! 周りがなんと言おうと、コイツが俺を好きになった素振りを見せれば問題ないッ! 全く、俺の能力は無敵だぜ!」 グッ!


大山曹長は、自分の能力の神技が発動し、これでアニスが自分のものになったと確信していた。


「はははッ! やったぞッ! どうだ、大抵の奴はこの俺の神技を使えば思いのままだからなッ! ふむ、こうしてよく見れば美しい、皇国じゃこんなに綺麗な女、なかなかいないぞ! 銀髪か、唆るじゃないか…」 ふっふふ!


大山曹長は、アニスに自分の特殊能力、相手を意のままに操る能力、神技でアニスを自分のものに出来た事に、勝ち誇った顔をして、アニスを見ていた。


「さて、隊長達に気付かれる前に、俺を恋人…いや…そうだな、いっその事この俺を主人だと刷り込むか…ククク」 チラッ ザッ! スッ!


大山曹長は、佐藤中尉達を横目に、勢いよく両手を広げ、アニスに向かって命令をした。


「さあアニスッ! 俺だッ! お前の主人だッ! 俺の元に来いッ!」 バッ!


「んッ? ……」 ジッ……


「どうしたッ! 俺の言う事を聞けッ!」 グッ!


「…なんで貴方の言う事を聞かないといけないの? 私は貴方を主人だなどと思わないッ!」 サッ!


クルッ! ファサッ! テクテク


アニスは何事もなかった様に一言、大山曹長にそう言うと、青みがかった銀髪を靡かせ、白井中尉達の方に向かって歩き出した。


「なッ⁉︎ 馬鹿なッ! ちょっと待てッ!」 ザッ!


「ん! なに?」 ピタッ クルッ! ファサ…


「お、おお、お前ッ! なぜ動けるッ⁉︎ なぜ俺の言う事を聞かないッ⁉︎ 俺の神技は完璧に発動したはずだッ! どう言う事だッ!」 ババッ!


「ん? 神技?… さっきの魔法のこと? 強引に私の手を握り、光ったアレですか?」 うん?


「そうだッ! なぜお前は平気でいられるッ⁉︎ いつもなら、とっくに俺の言いなりになってるはずなのにッ!」 ググッ!


アニスに対し、大山曹長は自分の能力、神技の事を口走った。


「言いなり…と言うことは、先ほどのは魅了、《チャーム》系統の魔法か何かだったみたいですね」 ジッ!


「うッ! しまったッ! つい余計な事を…」 バッ!


大山曹長は、不用意に自分の能力を口走った事に気づき、右手を口に当てた。


「大山曹長…さん」 ジイイ…


「な、なんだッ! (なんだコイツの目はッ! 視線が外せない)」 ググッ


「あの程度の魔法、私には効きませんよ」 サッ


「馬鹿なッ! 俺の最強の能力、神より授かった神技ッ!《チェイン.ザ.ハート》だぞッ! 今まで誰1人、かからなかった奴などいないッ! いないんだあッ!」 バッ!


大山曹長はいつもは冷静な男だったが、アニスに神技が通じないと見ると、動揺したのか思わず声を大きくして、アニスに対して自分の神技の名前まで話してしまった。 アニスはその名に聞き覚えがあった。


「ん? 神よりって…《チェイン.ザ.ハート》? 確かどこかで…ああッ!なんだ、《アブソリュート》の劣化版じゃないか…(まさか…これも創造神の…)」 ふむ…


「は? なにをッ!(コイツは何を言ってる? 《アブソリュート》だと? なんだソレは? 聞いたことがないッ! 何だそれはッ⁉︎ 俺の、神からの神技が劣化版だと? 一体なんの事だッ!)」 ググッ!


大山曹長はアニスの口から出た言葉に理解できず、混乱していた。


「ん、そうだよね…ソレじゃあ尚更、私には効かないって言うかソレ、貴方より魔力の強い者に対しては効果がない、効かないんじゃないんですか?」 ニコ


「なッ⁉︎ ど…どうしてそれを…」 ググッ プルプル…


アニスの指摘は的を射ていた。 大山曹長は、今まで自分の欲望のまま、自分より立場が低く、魔力の弱い者や魔力が無い者達ばかりを、特に気に入った女性達ばかり、仕掛けてきた。 事実、自分の魔力以上の者や立場が上の者に対して、彼の能力、神技の《チェイン.ザ.ハート》は、発動しなかった。


「大山曹長、その能力は貴方を破滅に導きます。使わない事をお勧めします」 サッ


「うるさいッ! 知った事を抜かすなッ!」 シュキンッ! ザザッ!


大山曹長は、腰に帯剣していた剣、「刀」を抜き、アニスに向かって構えた。


「ん? へええ、片刃の剣か…初めて見たよ。 銃は使わないの?」 スッ


「ふふふ、この『樹海』では銃の威力は霧散してしまう。 兵達の持つフォトンライフルならまだ良いが、この小さな銃では撃っても効果がないのでね、そこでこの『刀』だ。 この抜き身の実剣なら、ライナーやその候補達が使用するフォトンソード、ライトニングセイバーと違い、ここでは有効な武器なんでね」 ニヤ…


「ん… それで私を斬り伏せると言う事?」 うん?


「察しが良いではないか、私の能力を知った以上、惜しいがお前には死んでもらう」 チャキ!


「ん〜、ここで私と戦うと隊長達に気付かれ、貴方的には不味い状況、処罰されますよ」 スッ!


アニスは、少し離れた場所にいる白井、佐藤、両中尉を見た。 彼らはまだこちらの異変に気づいてはいなかった。


「そんな心配はいらない、隊長達はこちらの事には気づかないさッ! ククク」 パチンッ!


シュワッ! ササササーーーーッ!


大山曹長が指を鳴らすと、アニス達の周りだけ、透明な膜に覆われた。


「ん、フォトンフィールド?」 サッ!


「ご名答、よくご存知だ。 まあ、我々は『遮音力場』と呼んではいるがね」 ニヤッ!


「遮音…つまり、白井達には気付かれ無い、干渉出来ないと言うものですね」


「そのとうりッ! さあ覚悟するがいいッ! 誰もお前を助けることはでき無いッ!」 ザッ!


「ん〜…仕方がないね」 スッ チャキッ!


アニスは背中腰にある、ミドルダガーの神器、「アヴァロン」を抜き、大山曹長に向け構えた。


「ほうッ、そのような短剣で俺の刀と戦うと? これはもう勝負が見えたなッ!」 ククク…


「ん、あまり、相手を甘く見ない方がいいよ」 グッ!


「ふんッ! 行くぞッ! 真・天生自源流ッ!《絶火蒼雷ッ!》」 ギンッ!


シュバッ! バアアアーーッ!


「んッ! 帝級剣技ッ!《グランツ.カッツエッ!》」 シュンッ!


シャッ! ギイイインンッ! バシッ! ドガアアアアーーッ!


「うおおおーーッ!」 ビュンッ!


ドザザザーーッ! ドサッ!


シュンッ! スタッ! タタ チャキッ!


大山曹長はアニスの剣技の威力により、後方へと吹き飛ばされ地面に倒れ、アニスは軽いステップを踏んで、神器「アヴァロン」を構えた。


「うぐぐ…ば、馬鹿な…なんと言う剣圧ッ! お前は一体何者なんだッ!」 ハアハア


ポタポタ ツツウウ〜


大山曹長は口から血を流し、アニスを睨んだ。 そこには、神器「アヴァロン」を構え、青みがかった銀髪と純白のスカートを靡かせ颯爽と立っていたアニスがいた。


チャキ  ファササア〜


「私はアニス…大山曹長、貴方に勝ち目はありません。もうやめた方がいいですよ」 サッ


「クッ…(なんなんだこの女はッ⁉︎ 神技は効かない、俺の剣術も全く歯が立たない!… こんな女がいるとは!)」 ググッ!


アニスと大山曹長との戦いがあっという間に終わろうとしていたその時、アニス達のいる『樹海』周辺上空、10000mから、その様子を見ていた者がいた。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」 10000m 上空ー


ヒイイイイイイーーッ! シュバアアアーーーーッ! ピッ ピッ ピッ!


「国防本部、こちら『SHITEI 100式 001』コンタクト」 ピッ


『こちら国防本部、『SHITEI 100式 001』受信』 ピッ


「『幻夜』への侵入者と思われる、ハッカーらしき人物を特定確認、場所は霊山『フジ』裾野の『樹海』最深部、その上空より確認、現在、当事者と思しき人物と我が軍の兵が交戦中、友軍機一機が各座、指示を乞う!」 ピッ


『国防本部了解、近郊に調査派遣の友軍駆逐艦『ユキカゼ』が待機、直ちに急行させる。『SHITEI 100式 001』はそのまま上空待機せよ』 ピッ


「『SHITEI 100式 001』了解、このまま監視行動を取る。 オーバー」 ピッ


『国防本部、了解 充分注意されたし アウト』 ピッ


ヒイイイイイイーーッ  バウウウウーーッ!


アニス達の事を一機のステルスブレードナイトが10000mもの上空より監視していた。



ーヤマト皇国『樹海』 火球落下地点上空ー


ゴウン ゴウン ゴウン


ビーーーーーッ!


「艦長ッ! 大陸艦隊総司令部より緊急電ッ!」 ギッ!


「艦隊総司令部からだと? なんだと言うのだ?」 スッ! カサ…


ヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属、一等級攻撃型駆逐艦『ユキカゼ』艦長の【青山幸弘】少佐は、艦隊総司令部からの緊急伝聞を受け取った。


「なにッ! 『幻夜』にハッカーだとッ! それもそのハッカーがこの先の『樹海』最深部で本艦の陸戦要員と交戦中だと言うのかッ!」 ガタッ! ババッ!


青山少佐は、艦隊総司令部からの伝聞を読み、艦長席から立ち上がった。


「『至急、現場に急行せよ、上空には国防本部付きの偵察機が監視中』か… 操舵手ッ!」


「はッ!」 サッ


「『ユキカゼ』緊急発進ッ! 機関最大ッ! 『樹海』最深部へ急行せよ!」 ババッ!


「了解しましたッ!」 サッ ピッ カチカチ ピコ 


ビーッ ビーッ ビーッ! ポン!


『全艦第1級戦闘配置、『ユキカゼ』緊急発進、陸戦部隊の援護に急行する、繰り返す…』 ピッ


「機関始動、『ユキカゼ』発進準備ッ!」 ピッ ピコピコ


「陸上第2小隊収容開始ッ! 第3発艦ベイ、回収用上陸舟艇は直ちに発艦、のちに合流、回収する」 ピッ


ガコン シュバアアアーーッ!


「回収用上陸舟艇発艦、第3発艦ベイ閉鎖、『ユキカゼ』発進準備よし!」ピッ ビコビコ


「機関接続ッ! 『ユキカゼ』発進しますッ!」 ピピ グイッ!


ヒイイイイインンンッ! バウウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーーッ!


第2小隊回収用上陸舟艇を残し、ヤマト皇国国防軍大陸艦隊所属、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」は、スラスターを全開にして、「樹海」の最深部へと飛んでいった。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国「樹海」 最深部一級河川河原ー


「全く、このドアホッ!」 グッ


「アホは貴様だッ! 白井ッ!」 バッ!


アニスと大山曹長が戦ってるなどつゆ知らず、白井中尉と佐藤中尉はアニスの事で、今も言い合っていた。その時、傍でその様子を見ていた白井中尉の愛機、ブレードナイト「ZERO 52型 202」が両者の言い争いを止めた。


ピッ


『白井中尉、上空10000mに友軍ステルス機を探知、国防本部付きの高空高速ステルス偵察機、「SHITEI 100式 001」です。こちらを監視してます』 ピッ


「なにッ! 本部付きの偵察機だと⁉︎」 バッ!


「白井ッ! 何だお前のブレードナイトはッ⁉︎ 」 ザッ


「うん?」 バッ


「なんでステルス機を探知出来るんだよッ! おかしいじゃねえかッ!」 グッ!


「はは…なんでだろ…俺にもわからん!」 ポリポリ


「まあいい…それでその偵察機だが…」 ふむ…


「ああ、国防本部付きの偵察機だ…おそらくアニスの事だろ」 スッ!


そう言いながら2人はアニス達がいた辺りを見た。


「「 なッ! 遮音力場だとッ‼︎ 」」 ババッ!


アニス達の姿は認識できなかったが、その場にフォトンフィールド、遮音力場が形成されてる事は流石は中尉クラスの魔力持ち、2人はすぐに見破った。


ピッ


『白井中尉、アニスはあの中です。第1小隊副隊長の大山曹長と戦闘状態になってます』 ピッ


「はああ? なんで大山と…」


「おい白井、アレはちょっと…」 スッ


「ああ…もし、あの中でアニスと大山が戦闘をしているとしたら…アニスのその身に何かあったら国際問題になるぞ! ましてや偵察機の監視付きだ…まずい事になった」 グッ


「おいまさか…」


「ああ、そのまさかだ、霊山『フジ』、この近くだと…徳川の第1打撃艦隊か…やって来るぞ!」 


「早く行くぞッ!」 バッ!


「おうッ!」 ババッ!


2人は急遽、アニス達がいるであろう遮音力場の方へ駆け出していった。


ザザアア〜 パシャパシャ


アニスと大山曹長は、遮音力場内で対峙していた。2人とも動く様子はなく、一級河川の川の流れる音だけがよく聞こえていた。


「くそ…大誤算だ、この女、ただの女じゃなかった…俺が手を出していい女ではなかった」 ググッ


大山曹長は傷ついた体でアニスを睨みながら、後悔の言葉を小声で呟いていた。 そんな彼の頭の中に、声が響いた。


『(そうだ! 貴様のような奴にアニスが倒せるわけなかろうに、役立たずの人形がッ!)』


「なッ! 誰だッ!」 ババッ!


「わああッ! どうしたんだ大山曹長」 バッ!


大山曹長は頭の中に聞こえた声に叫び、アニスはその様子に驚いた。 それでも、大山曹長の頭の中の声は止まなかった。


『(全く、勝手に動き回るだけでなく、余計な事をしおって…能力を授けたのも無駄になった)』


「わあああッ! なんだッ! 出て行けッ! 出て行けッ!」 ガシッ! ブンブン!


大山曹長は、両手で頭を掴み激しく振りながら叫んだッ!


「ん! まさかッ!」 バッ!


アニスは大山曹長の異常な行動に一つの可能性に気がついた。


『(出て行けか…良いだろう、お前にもう用はない、お前のシナリオはここまでだ。終わりとしよう)』 パアアアンンッ!


「わああああッ! がッ!…まだ…俺は…」 ドサッ! シュワッ! シュウウウ…


大山曹長は一瞬叫び、体が光った瞬間、まるで糸の切れた操り人形のように、地面に崩れ落ち、その身体は魔素還元され消えていった。


「んッ! 遅かったか…」 ザッ! 


アニスが駆け寄った時、大山曹長の身体は魔素の粒子となって消えていき、それと同時に、遮音力場は消滅した。 その時、白井中尉達とアニスとの間で一つの誤解が生まれた。


ダダダ ザザアアーーッ! ピタッ!


「アニス…お前…」 サッ!


「アレを見ろッ! 白井ッ! 大山曹長が消されたぞッ! アイツは大山曹長を殺したんだッ!」 ババッ!


「あッ!… 」 サッ!


そう、遮音力場が消えた瞬間、大山曹長の身体は消え、その場にいたアニスの手元には、ミドルダガーの神器「アヴァロン」が握られており、どう見てもアニスが大山曹長を殺害したにしか見れなかった。


「アニス…嘘だろ…お前が人を…」 スッ!


「どけッ!白井ッ! 大山は俺の部下だッ! 俺がアイツを仕留めるッ!」 シュキンッ!


佐藤中尉は腰の帯剣、刀を抜き、アニスに構えた。


「ん、白井、佐藤、信じてはくれないかも知れないが、私は大山曹長を殺してはいない…」 カチンッ!


アニスは神器「アヴァロン」を腰の鞘に戻し、大山曹長を殺していないと話した。


「アニス…」 ジリ…


「嘘をつくなあッ! 俺はこの目で見たぞッ! 大山が消え、その場にナイフを持つお前がいたその姿をッ!」 ググッ! ザッ!


「ん、コレは不味いね(部下が消えたのを見て逆上してしまってる。こっちの話を聞こうとしない…か… 無理もないかな、でもこのままじゃ佐藤と戦ってしまう…コレもアイツのシナリオ…か…そうはさせない)」 シュンッ! スタッ! サッ クルッ!


アニスは後方に飛び退き、向きを変えた。この場で白井中尉や佐藤中尉と戦いでもしたら、彼らとの溝がさらに深まる。それが創造神ジオスのシナリオかもしれないと予期したからだった。


「んッ! (今はこの場から離れた方が得策だね)」 ババッ!


「貴様ッ! 逃げるのかッ!」 ザッ!


「待てッ! アニスッ!」 バッ!


ザザッ! ピタッ!


「ん、白井、今はごめんね、だけど信じて、私は大山曹長を殺してはいない…」 ザッ! シュザザアーッ!


アニスはそう言って、『樹海』の中に消えていった。


「アニスーーッ!」 ババッ!


白井中尉は大声でアニスの名を叫んだが、アニスからの返事はなかった。


「くそッ! 逃したか…だが、この『樹海』の中にいるのは分かった。 しらみつぶしに探し、炙り出して大山の仇を打つッ!」 チャキンンッ! ググッ!


佐藤中尉は大山曹長の事に怒りを露わにし、アニスの消えていった『樹海』の森を睨んでいた。


ゴウン ゴウン ゴウン シュバアアアーーーーッ! ゴゴゴ


それと同時に、彼らの上空には、母艦である一等級攻撃型駆逐艦『ユキカゼ』が到着し艦底部第3ハッチより、2隻目の上陸用舟艇が降りてきた。


シュバババババーーッ! ヒュウウウンンン… バクンッ!


「中尉ッ!」 タンタンタン ザッ!


上陸用舟艇から、白井中尉達に声をかけながら降りて来たのは駆逐艦「ユキカゼ」艦長の【青山幸弘】少佐と副長の【松田邦夫】大尉だった。


「「 艦長ッ! 」」 ババッ! サッ!


「うむ…で、コレはどう言う状況なのだ、説明してくれると助かるのだが…」 キョロキョロ


2人は、アニスと出会い、これまでの事を全て話した。


「ふむ、銀髪の少女か…で、これがその話にあった貴様のブレードナイトか…」 コンコン


青山少佐は、白井中尉の愛機、ブレードナイト「ZERO 52型 202」の足元に近づき、その足を軽く叩いた。


ピッ


『艦長、アニスは無実です。悪いのは彼女に手を出した大山曹長と判断します』 ピッ


「うん? 『ZERO』、それはお前の意思か?」


『はい、艦長、私の意思です』 ピッ


「ほお、これは凄いな、ブレードナイトが自分の意思を持ってるのか、その アニスとやら、詳しく調べてみなければな…」 ふむ…


「艦長ッ! 奴は大山を殺したんですッ! そんな悠長な事言ってないで、さっさと討伐命令をくださいッ! 私のこの手で必ずや仕留めますッ!」 ババッ!


佐藤中尉は、部下の大山曹長を殺された事が許せず、アニス討伐を具申した。 その時、艦長、青山少佐の携帯端末が鳴った。


ピッピーーッ!


「私だ」 カチ


『艦長、国防本部本部長より通信が入ってます』 ピッ


「ふむ、私の携帯端末に繋いでくれ」 カチ


『わかりました、繋げます』 ピッ


「(おい白井、国防本部長って言ったら…)」 ヒソヒソ


「(ああ、俺達の長、親玉だよ! 【織田信長】上級大将閣下だ!)」 ヒソヒソ


「(やっぱり…雲の上の存在じゃないか)」 ヒソヒソ


「(ああ、だがうちの艦長、どうやら親しい仲みたいだぜ!)」 ヒソヒソ


「(凄ええ…)」 ヒソヒソ タラ〜…


ビビ ヴンッ! パッ!


『やあ、青山少佐、久しぶりだな!』 ピッ


「本部長」 サッ!


『ふふふ、相変わらず律儀なやつだ! 昔の様に『信』ちゃんでも良いぞ』 ピッ


「それより本部長、たかが駆逐艦の艦長に何用ですか?」


『ふ、まあ良い、帝より…天帝様からの勅命が降りた!』 ピッ


「天帝様ッ!」 ババッ! 


『そうだ、驚いたろ? 私も驚いた わははははッ!』 ピッ


「で、一体どのような…」


『おお、そうであった、天帝様からの勅命だッ!』 ピッ


「ははッ!」 サッ!


『勅命ッ!『樹海に舞い降りた銀髪の少女、【アニス】を丁重に保護し、余の元に連れてまいれ、よいか、手荒な真似は絶対に許さん、彼の者を怒らせるでないぞ、敵対も許さん、よいかッ!余の勅命に背く者は、何人であれ極刑に処す。一族郎党ッ! 親兄弟、親戚に至るまで全て根絶やしにせよ』だそうだ』 ピッ


「は?…(ど…どうしよう…)」 タラ〜  スッ! ジロッ!


艦長の青山少佐は、本部長の織田上級大将の言葉を聞き、額に汗を垂らしながら、白井、佐藤両中尉を見た。


「「 やべッ! 」」 ササッ!


織田上級大将の言葉を聞いていた2人は、青山少佐から目線を逸らしそっぽを向いた。


『ん? どうしたのだ? 天帝様からの勅命だぞ! さっさと復唱せんかッ!』 ピッ


「ははッ! 駆逐艦『ユキカゼ』艦長、青山少佐、天帝様の勅命、謹んでお受けいたします」


『うむ、吉報を待っているぞ』 ピッ


「はッ! 天帝様の仰られたとうり、天帝様の意に反した者は極刑にいたします」 ササッ!


織田上級大将と青山少佐、2人の会話を聞き、白井中尉と佐藤中尉の2人は震え上がった。


「「 (ひいいいッ!) 」」 ビクビクビクッ!


『おお、かまわんッ! 天帝様のお許しが出ているのだ! 徹底的にな! 頼んだぞ』 ピッ


「はッ!」 サッ!


ヴンッ シ〜ン…


その場に静寂のひと時が流れた… しばらくして、青山少佐は白井、佐藤両中尉に尋ねた。


ザッ!


「佐藤中尉ッ!」


「は…はいいいッ!」 ビシッ!


「死にたいか?」 ニコオ!


「い…いえッ! いいえッ! 私は天帝様の忠実な兵士ッ! 天帝様の意に背くなどありませんッ!」 ババッ! ブルブル…


「ふむ、では白井中尉、君はどうだ?」 ジイイ…


「私は敵対など絶対にしていません!アニスとは仲良しですよ! わははははッ!」 ガタガタ…


「そうか、では今回の事は聞かなかった事にする、両名いいな!」 バッ!


「「 はッ! 了解しましたッ! 」」 ババッ サッ!


「うむ、では天帝様の勅命だ! 銀髪の少女、アニスさんの捜索を全力で行うッ!」 ザッ!


「「 はッ! 」」 バッ!


こうして、アニスはヤマト皇国天帝の勅命により、捜索される事になった。 数時間後、駆逐艦「ユキカゼ」は全ての兵の回収を終わり、発進体制に入った。

          ・

          ・

          ・

ザッ ザッ ザッ!


「なあ佐藤、アニスの事なんだが…」 ザッ ザッ


「ああ、小隊の部下達から全て聞いたよ、アニス、あの娘は悪くない、聞いた話では大山の方が私の知らぬ所で色々とやってたそうだ…隊長として、その事に気がつかなかった。私はダメだな」 ザッ ザッ


アニスの件と大山曹長の事で責任を感じたのか、佐藤中尉は気落ちしていた。


「そ、そう言えば佐藤、お前のブレードナイトはどうした?」 ザッ ザッ


「うん? 俺のか?」 ザッ ザッ


「ああ、皇国じゃ最強の陸戦隊仕様の、ブレードナイト『HAYABUSA 3型 616』、お前の愛機だ」スタッ!


「俺の愛機か…」 ググッ


「『ユキカゼ』のブレードナイトデッキには『ZERO』しか搭載してなかったぜ?」


「ああ、今、改修中なんだ!」


「そうか、早く出来るといいな、また2人で飛ぼうぜ!」 二ッ!


「ああ、改修後の『HAYABUSA 』凄えぞ! まあみてのお楽しみって奴だ」 グッ!


「「 ははははッ! 」」 ザッ ザッ ザッ!


2人の中尉はそう笑いながら、佐藤中尉は上陸用舟艇に、白井中尉は愛機ブレードナイト「ZERO 52型 202」で、上空の駆逐艦「ユキカゼ」に帰っていった。

          ・

          ・

          ・

ーヤマト皇国『樹海』 最深深部 某所ー


パチパチ ボウッ メラメラ 


「んッ! できたあー! いただきまーす!」 ハグッ!


モグモグ ングング ゴクンッ!


「美味しいいーーッ!」 パクッ! モグモグ


アニスはヤマト皇国の「迷いの森、迷宮大森林」「樹海」の最も奥深い所で1人、焚き火を焚き、調理した鶏肉を頬張っていた。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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