表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/311

第227話 アニスとヤマト皇国の兵士達

ーヤマト皇国「樹海」 最深部一級河川 河辺ー


偽世界「アーク」その中央大陸の極東、そこに位置する大国、ヤマト皇国の領内にある霊山「フジ」、今、アニスは、その裾野に広がる広大な森、「迷いの森 迷宮大森林」の「樹海」にある一級河川の河辺で、ヤマト皇国国防軍、ブレードナイトライナーの【白井隆信】中尉とテーブルを挟んでお茶を飲んでいた。


ゴクン カチャ!


「ふうう… で、アニス、君の事情は大体分かった。君がアトランティア帝国から転移して我が国に落ちてきた、と言うのだな」


「ん、まさか転移だけでなく時間まで作用したとは思わなかったよ…」 コクン 


「ふむ、1年前かな…あの騒動で我が国は影響はなかったが、他所は大変だった様だぞ」 トントン


白井中尉はテーブルを人差し指で叩き、アニスに尋ねた。


「ん、ガーナ神教団の暴走、そこに創造神まで出てきたからね…(そっか、1年か…レオン…心配してるかな…)」 ス…


「創造神か…俄かに信じられんが…で…」 ズイッ!


「ん?」 タジ…


「アニス…君がアトランティア帝国から来た事はわかったがそれ以外、君自身は何者なんだ?」 ジイイ…


「え、えっと〜…」


「いや、君が悪い人物でない事はわかる。だが、君みたいな少女が転移魔法を使い、この『樹海』の中を平然としている事が私には理解できない。もっと言えば俺の『ZERO』だッ!」 バッ!


「ん? 『ZERO』?」


「そうだ、コイツは俺の愛機、俺の所有するブレードナイトだ、いつも俺に忠実で的確な情報をくれる相棒なんだ」 ジイイッ!


白井中尉は自分の愛機「ZERO 52型 202」を見上げ、アニスに語った。


ピッ


『私もですよ白井中尉、あなたは私にとっても良き相棒です』 ピッ


「だああッ! だからッ! 俺の『ZERO』はこんな受け答えはしなかったんだよッ!」 バッ


「白井…ダメなの?」 ジッ


ピッ


『今の私はダメなのですか? 白井中尉』 ピッ ガシュン…


「うッ… い、いや…これはこれで良い、良いんだが… ああッ!くそッ! どうしてこうなったっんだか…」 ふうう…


アニスと愛機「ZERO」に問われ、白井中尉も「ZERO」の変わり様に不満はなかった様だった。


「ああ、それはねえ…」 ニコ


「うん?」


突然の「ZERO」の変わり様に関して、アニスは白井中尉に説明した。


「つまり…アニスが俺の『ZERO』の足を触った瞬間、『ZERO』に自我が目覚め、性能が向上したと言うのか?」 ジッ


「ん、どうやらそうみたいだね。 私がね、『ZERO』と友達になって話がしたいなあって思いながら触ると、なんらかの事象が発生して、自我とその対象の能力が大幅に上がってしまうみたいなんだ… ねえ『ZERO』、君はどう?」 うん?


ピッ


『はい…アニス、概ね、それで合ってますよ。私にも理解不能ですが、今の私があるのはアニスの特殊能力のお陰ですね、自分でも分かります、全体的に機体性能が向上しました。 加速性能18% 旋回性能15% 攻撃性能20% 敏捷性能20% 防御性能26% 稼働時間40% と、向上しています』 ピッ


「かああッ…マジかよ… こんなもん上にどう説明すりゃいいんだ?」 うう…


「ん?『ZERO』、白井って何かまずいの?」 うん?


ピッ


『アニス、ヤマト皇国国防軍では、たとえ自己所有のブレードナイトでも、許可なく勝手な改修、改造、性能向上操作は禁止されてるんです。今回の場合はそれに充分違反してますね。 ははは、白井中尉、御愁傷様です』 ピッ


「ええいうるさいッ! 『ZERO』ッ! お前も強制回収され、もしかしたら研究用にバラッバラッにされるんだぞ!」


『えッ! それは拒否しますッ! 何とかしてくださいッ!』 ピッ ガシュンッ!


「あははは… 大変だあ」 ケラケラ


「他人事みたいに言うなッ! アニスッ! お前がやったんだろッ!」 バッ!


「わああッ!」 ビクッ!


『アニス、何とかなりませんか? 私は研究対象に解体、バラバラにされたくありません』 ピッ ガシュンッ!


「ええ〜! ん〜、そっかあ、そうだよねえ、私にも責任があるのかあ…」スッ コクン カチャ


アニスが紅茶を飲み干し、カップを皿に置いた時、アニス達は近くの森に気配を感じた。


ガサ  ガサガサ…


「ん?」 クルッ! ジイイ…


「なんだ? 何かいるのか?」 ザッ


ピッ


『後方森林内に多数の生命反応を確認しました』 ピッ


「何ッ⁉︎」 ザッ!


ガサガサガササッ! ババッ! ダダッ! ダダダッ! ザッ! バババッ!


「フォーメーションッ!」 タタタ ザザッ! バッ バッ バッ! チャカッ!


それは、森の方から勢いよく現れ、河原にある大岩や倒木、草むらの影に入り、アニス達にフォトン銃を構えた、第1小隊 佐藤中尉達9人だった。 彼らはやっとの事でこの河原に到着し、その場で各員が散開、いつもの訓練どうりの動きで、配置に着き、アニス達を包囲した。


スッ! ガシャッ… ジイイ…


「白井ッ! 無事かーッ⁉︎」 ジャキンッ!


「え? 佐藤か?」 ザッ


ピッ


『白井中尉、あれは友軍の陸上部隊、第1小隊です。半包囲されました。RPG反応、ロックオンされています。 何か誤解してるみたいですね』 ピッ


「ん? 白井の仲間なの?」 


「ああ、心配するなアニス、俺に任せておけ」 ザッ ザッ


白井中尉はアニスにそう言い、佐藤中尉達のいる方に歩き出した。


「佐藤ッ! 大丈夫だッ! 武器をおろして出てきてくれッ!」 バッ!


白井中尉は大声を出し、佐藤中尉達に、武器を下ろし出てくるよう、語りかけた。


ガサッ! スクッ!


「白井ッ! そこにいる奴は何者だッ⁉︎ 」 チャキッ!


佐藤中尉のみ、大岩から姿を見せ立ち上がり、フォトン銃を構えたまま白井中尉に尋ねた。


「ああ、心配するな、彼女はアニス、俺が保証する彼女は大丈夫だ、危険はない、銃をおろしても構わんぞ」 ニイッ


「そ、そうか、お前がそう言うなら…」 スッ ザッ ザッ ザッ!


佐藤中尉はフォトン銃を下ろし、白井中尉に近づいていった。


「よッ! 佐藤、ご苦労さんだったな」 ギュッ!


「ああ、白井もなッ!」 ギュッ!


2人は握手をして挨拶を交わした。


「で、白井、本当に彼女は大丈夫なのか?」 ジイイ…


「ああ、俺を信用してくれ」 二ッ


「ふうう…わかった、お前がそこまで言うんだ、大丈夫なんだろ…総員武装解除ッ! 出てきて良いぞッ!」 バッ!


佐藤中尉がそう命令を下すと、河原に散開していた第1小隊の隊員が立ち上がり、武器を下げ佐藤中尉の元に集まり出した。


ザッ ザザッ! タタタ バッ!


「隊長、整列しました」 ババッ! ザッ サッ!


佐藤中尉の前に8人、迷彩服姿、重装備の第1小隊の隊員が整列していた。


「よし、全員1時間の小休止、交代で朝食を取れ、解散」 サッ


「「「「「 はッ! 」」」」」 ババッ! サッ


第1小隊の全員は、遅めの朝食を取るため自由に散らばった。


「佐藤、こっちに来い。彼女を紹介したい」 サッ! ザッ ザッ


「ああ、頼む」 ザッ ザッ


白井中尉は佐藤中尉を引き連れ、アニスのいるテーブルへと向かっていった。

          ・

          ・

ザアア〜  チャポチャポ


「わあ、冷たい!『樹海』の奥にこんなにも綺麗な川が流れてたんですね」 チャパチャパ


「ええ本当、『樹海』の中なんて嘘みたい。 こんな素敵な場所があったなんて」 パシャパシャ


「この水、飲んでも大丈夫なんでしょうか?」 チャパチャパ


「ちょっと待って」 ゴソゴソ


一級河川の河原のほとりで、第1小隊の女性隊員3人が手や顔を洗いながら楽しげに会話をしていた。そこにいたのは【天木照美】上等兵、【石川洋子】上等兵、そして【井下麻里奈】上等兵の3人で、井下上等兵が、背嚢より一つのアイテムを取り出し、川の水をそれに汲み、ゆっくりと振った。


チャポン ブクブク スッ チャパチャパチャパッ! ジイイ…


「ん〜、やっぱりこのままじゃダメね、魔素が濃く含まれてるから、このまま飲むとお腹を壊すわよ」 ジャバジャバ!


「ええ〜 こんなに綺麗な水なのに〜、残念」 


「飲めないけど体は拭けるわッ!」 ジャバジャバ


「そうね、『樹海』の中を行軍したから汗びっしょりなの、これはこれでアリね」 ジャバジャバ


「そうよ、さっさとして食事にしましょ!」


そう言って3人は上着を脱ぎ、濃紺のノースリーブのシャツ一枚になり、上半身だけ、タオルを川の水につけ絞り、汗をかいた体を拭いた。


「でも麻里奈ッ、あの娘、どうやってお茶を入れてるの?」 フキフキ スッ!


「え?」 フキフキ


天木照美に言われ、井下麻里奈は彼女が指さした方向を見た。


「うそ…」 サッ…


彼女達が見た先には、アニスが川の水を汲み、竈門で火を焚きながら、ポットに水を入れ沸かし、紅茶の準備をしていた姿だった。


テクテク コポン ジャアッ! パチパチ メラメラ コポコポ


「白井、お友達のその方も紅茶でいいですか?」 カチャカチャ


「ああ、すまん、コイツは紅茶はダメなんだ、コーヒーはあるか?」


「ありますよ、ちょっと待ってくださいね」 ニコ

          ・

          ・

「わああ〜… あの娘 だれなんだろ? 凄く可愛い…」


「銀髪…皇国の娘じゃないわね」


「うん、私もそう思った。 隊長達と一緒にいるけど、誰なんだろ?」


「少なくとも私達の敵ではなさそうね」


「川の水を汲んでる…しかも、竈門を作って火を起こし、水をお湯に沸かしてるわ!」 バッ!


「この『樹海』で火を? なぜ平気なの? しかも、どうやってこの川の水を飲めるようにしているのかしら⁉︎」


「後で隊長に聞きましょッ!それよりも早く朝食を済ませるわよッ」 サッ!


「「 うん、そうだね 」」 サッ


ガサガサ バリッ! パク モグモグ…


彼女達3人は、河原のほとりで倒木に腰掛け、携帯していた火を使わなくても食べられる、軍用レーションを取り出し、食べ始めた。

          ・

          ・

アニスは、佐藤中尉の為に、椅子をもう一脚出し座らせ、求められたコーヒーを淹れ始めた。


コポコポコポ ブクブク フワッ 


「ほう、良い香りだな…上等な豆を使ってる様だ」 二ッ


アニスの淹れているコーヒーの香りを嗅ぎ、佐藤中尉はその香りだけで顔が綻んだ。 そこへ白井中尉がアニスの元へ行き、アニスに一つのお願いをした。


「なあアニス」 サッ


「ん?」


「そのコーヒー、俺とあいつの部下達の分も作れないか?」


「部下達? ああ、あそこで何やら食べてる方々にですね、良いですよ」 ニコ


「はは…すまんな」 ニコ ポリポリ


アニスと白井中尉はいつの間にか、昔からいる友人の様に会話をしていた。そんな2人を、コーヒーを待っていた佐藤中尉がジッと見つめていた。


「ふむ…(あの白井がねえ…確かに、このお嬢さん、アニスさんは大丈夫そうだ…後で詳しい事をゆっくり聞くとするか…)」 ふふん! ニイッ!


コポコポコポ カチャカチャ


「どうぞ、コーヒーです」 ニコ サッ カチャ 


「ああ、すまんね」 サッ ゴク


「はい、白井、貴方の分もね」 ニコ サッ カチャ 


「おッ 悪いなアニス」 サッ ゴク


白井中尉と佐藤中尉はアニスに出されたコーヒーを、ミルクも砂糖もなしに一口、口に含み飲み込んだ。


「「 美味いッ! 」」 ババッ!


「おい白井ッ! こんなに美味いコーヒーは皇都「トキオ」の皇室喫茶以来だッ!」 ゴクン


「ああ、確かに美味い」 ゴクン


「ん? 皇都?」


「ああ、アニス…我がヤマト皇国の首都のことさ」 ゴク


「ふうん…そこに偉い人が居るんだ」


「ああ、我らの国王、天帝様が座す都だ」 ゴク 


「ん、また今度行ってみようかな…よっと…」 カチャカチャ スッ


アニスはコーヒーセットを小隊の人数分用意し、河原で食事と見張りをしている隊員達の方へ向かっていった。


「部下の皆さんにも配ってきますね」 ペコ テクテク カチャカチャ


「アニス、無理言ってすまんな」 コク


「良いですよ、気にしないでね」 テクテク トコトコ


「………」 ゴクン カチャ…


「うん? どうした佐藤?」 ゴクン カチャ


「さあ白井、彼女は何者だ! さっさと吐けッ!」 ズイッ!


「えッ! あ、ああ…その…」 タジ…


「なんだ? 言えない事なのか?」 ジイイ…


「い、いや実は俺もまだよくわからないのだ! 名前と何処から来たと言う事くらいしか聞いてない」 ポリポリ


「はああッ⁉︎ おまッ! よくそんなんだけで彼女が大丈夫だと言えたなッ! ええッ おいッ!」 グイッ!


「す、すまん、だがお前も、彼女を見て今はどう思うッ!」 バッ!


「むッ!…」 クルッ ジイイ…


佐藤中尉は自分の部下達にコーヒーを配りに行くアニスの後ろ姿を見た。

          ・

          ・   

「は〜いッ! 皆さんコーヒーです。どうですか〜…」 カチャカチャ トコトコ


わああッ! ザワザワ ガヤガヤ…

          ・

          ・

「ふうう…すまん…白井、美味いコーヒーを淹れるやつに、悪い奴などいないよな…」 ニッ!


「佐藤….」


「慌てなくていい、そう慌てなくて… アニスの素性は彼女から直接、後で聞こう」 コク


「すまんな、佐藤、手間をかけさせる…」 ペコ


「言うなッ! 士官学校時代、同じ窯の飯を食った者同士ッ! 頭なんぞ下げるなッ!」 ニッ!


「士官学校…同じ窯の飯か… 当時の同期はもう俺とお前だけになっちまったな」 ふッ


「うん?、どうした白井…」


「3年…もう3年になるのか…」 ふうう…


「ああ、そうだな…今度、皇都で合同3回忌がある、おまえも出るんだろ、白井」 スッ


「出ない訳にはいかんだろう…な……生き残った者として…」 グッ


「白井…(白井隆信…皇国軍大陸艦隊、第2航空戦隊、正規空母「ショウカク」ブレードナイト隊第1中隊中隊長…正規空母「ショウカク」ブレードナイト隊は白井を残し全滅、第2航空戦隊も正規空母「ショウカク」を失った… 白井の同期と部下達と共に…未だに、その事を引きずっているのか…)」 むうう…


「うん? ああすまん、ついなッ 昔の事を思い出した。 アニスの事はお前の言う通り、後で本人に聞くとするか」 うん!


「ああ、俺も昔を思い出させてすまん」 サッ


白井中尉と佐藤中尉の2人が、飲み干したコーヒーカップのあるテーブル席から、コーヒーを運ぶアニスの後ろ姿を見ていた時、白井中尉の愛機、ブレードナイト「ZERO 52型 202」が2人に語り始めた。


ピッ


『白井中尉、佐藤中尉、アニスの素性がわかりました』 ピッ


「なにッ! 『ZERO』ッ! 本当かッ!」 バッ!


ピッ


『はい、アニスのおかげで、外部ネットワークに接続、皇国軍重要アクセス端末に接続を完了、そこよりの情報を共有、他国の情報端末にアクセスに成功、それにより素性が判明しました』 ピッ


「は? ブレードナイトが…おいッ白井ッ! これはッ⁉︎」 ババッ ザッ!


ブレードナイト、「ZERO」の突然の語りかけに白井中尉は自然と返答し、佐藤中尉は驚きの表情を見せていた。


「あ、ああ…ははは、佐藤…その、コイツ『ZERO』の事も後で説明する、今はアニスの素性を聞くのを先にしてくれ」 サッ


「む… そ、そうだな、後でしっかり聞かせて貰うぞ、白井ッ!」 グッ


「ああッ! で、『ZERO』、アニスの素性を教えてくれないか」 バッ!


ピッ


『分かりました。 アニスですが、彼女はアトランティア帝国国内において、王族の地位を持つ、正式名【アニス・フォン・ビクトリアス/クリシュナ】公爵家令嬢、世にも珍しい2家名を持つ、現皇帝の娘です』 ピッ


「「 なにいいいーーッ! 」」 バンッ! ザザッ!


「お、おいッ! 白井ッ! 超重要人物じゃねえかッ!」 グイッ!


「は…はは…お、王族…」 ははは… ヒクヒク…


ピッ


『あと、アニスですが、アトランティア帝国より捜索願の出てる、尋ね人となっています。また、彼女は帝国軍大陸艦隊において、少佐の階級を持っています。 2人とも、彼女に失礼無き様にお願いします。 ヘタをすると上官侮辱罪で前戦送り、または銃殺刑の可能性もあります』 ピッ


「「 少佐ーーッ⁉︎ 」」 ババッ!


皇国軍では中尉の階級を持つ2人だが、階級差はこの偽世界「アーク」においては、すべて共通、少佐であるアニスは2人にとって2階級も上の存在、当然タメ口や、ましてやコーヒーなど給仕に使っていい存在ではなかった。


「大国の王族で捜索願のある尋ね人、現皇帝の娘であり…階級も、俺達よりも上の少佐…うう、佐藤ッ、すまん、俺と共に死んでくれ」 グッ!


「お、おおお、おまえッ! なんて事してくれたんだようッ!」 ガッ!


「いや、お前だってさっき、アニスに銃を向けてたじゃないか」 バッ


「なッ! そ、それは…不可抗力だッ!」 バッ


「ふふふッ! そんな事、通じるものか、お前の第1小隊全員が、アニス少佐に銃を向けたんだ、俺と同罪だああ」 ニイイ


「お前えーッ!」 バッ!


ワーワー ギャーギャー コノッコノッ!


2人は言い合いを始めた。

          ・

          ・

テクテク トコトコ カチャカチャ


「ん? 何やってんだ? あの2人は…」 テクテク


アニスは白井中尉達のいる辺りを見て、2人の喧騒に呆れていた。 アニスは、倒木に腰掛けて、朝食のレーションを食べていた女性隊員達の所までやって来て、持っていたコーヒーを薦めに行った。


テクテク ザッ!


「こんにちは、コーヒーを淹れたんですけど、どうですか?」 サッ ニコ


モグモグ ピタッ!  ジイイイ…


女性隊員の3人はその時、まるで時間が止まったかの様に、口にレーションを含んだまま止まり、アニスの方を見た。


「ん? どうしましたか?」 ニコ


「「「 きゃあああーーッ 可愛いいーーッ! 」」」 ババッ!


「うわあッ!」 ビクッ! カチャカチャ 


「わああッ! 可愛すぎるッ!」 ザッ!


「本当、まるで天使様みたい」 ギュッ


「凄い、姿どころか声まで可愛いなんてッ! 反則よ反則ッ!」 グッ!


「あはは… コーヒー、いかがですか?」 カチャカチャ


「えッ? いいの?」


「ええ、いいですよ」 ニコ


「「「 頂きますッ! 」」」 ババッ!


「はい」 サッ! コポコポコポ カチャ…


アニスは3人の勢いに押されつつも、コーヒーを配り終えた。


ゴク ゴクゴク ハア〜


「美味しい… コーヒーってこんなに美味しいんだ」 ゴクン


「違うよ照ちゃん、私、この前隊長の淹れてくれたコーヒーを飲んだけど、味が全然違うわ」 ゴク


「そうなの? 洋子ちゃん」 ゴク


「ええ、『ユキカゼ』の作戦会議室で、その場のみんなに配ってくれたけど、ただ苦いだけだったわ、このコーヒーに比べればアレは毒よ毒ッ!」 ゴク


「うわあ、洋子ちゃん辛辣だねえ」 ゴク


「「「 あはははッ! 」」」 ワッ!


3人の女性隊員が飲んでいるコーヒーは、ミルクと砂糖をたっぷりと入れた、それは甘い女性好みのコーヒーだった。


「はああ…コーヒーはこんなに美味しいのに、朝食がこのレーションではねえ」 パク サクサク


「照ちゃん、しょうがないよ、行軍では出来るだけ身軽にってので動くからね」 パク サクサク モグモグ


「できれば味だけでもなんとかしてほしいわ」 パク モグモグ ゴクン


「ん? それが朝食なんですか?」


「ええ、え〜っと…」 ジ…


「ああ、私はアニス、白井とは友達です」 ニコ


「えッ! 白井中尉とッ⁉︎」 バッ!


「はい、さっきなりました」 コクン


「はは…えっと、私は駆逐艦『ユキカゼ』所属、陸上陸戦部隊、第1小隊所属の【天木照美】上等兵です」 ペコ


「はい、【天木照美】さん、よろしくです」 ペコ


「あ、私ッ! 同じく駆逐艦『ユキカゼ』所属、陸上陸戦部隊、第1小隊所属、【石川洋子】上等兵です」 ペコ


「はい、【石川洋子】さん、よろしくです」 ペコ


「じゃあ私ね、2人と同じ、駆逐艦『ユキカゼ』の陸上陸戦部隊、第1小隊所属の【井下麻里奈】上等兵よ」 ペコ


「はい、【井下麻里奈】さん、よろしくです」 ペコ


「「「 よろしくねッ! 」」」 ワイワイ…


4人は一気に意気投合し、仲良くなった。


「それで、みんなはコレを食べていたんですか?」 スッ!


アニスは置いてあったレーションの一つを手に取った。


「ええ、軍から支給の携帯食です。美味しくないですが栄養価はある様ですよ」 ふふ…


「へええ…」 ガサ バリ パク ングング ゴクン…


「どう? アニスちゃん、美味しい?」 うん?


「んッ! 不味いッ! 美味しくないッ! こんなの楽しくないです!」 バッ!


「「「 えッ? 楽しくない? 」」」 バッ!


「いいですか、食事と言うものは、美味しく、楽しいものなんです。ちょっと待っててくださいね」 スクッ! ブウンッ! 


ドンドン ドオンッ!


「「「 きゃあッ! 」」」バッ!


アニスは異空間庫、ストレージより、調理台と食材を取り出し、いきなり調理をしだした。


パチンッ! ボウッ! メラメラ パチパチ


河原の岩だらけの辺りに、簡易的な竈門として火を付けた。


「アニスちゃんッ! ストレージ持ちなのッ⁉︎」 ザッ


「え! なになにッ! 魔法?」 バッ


「そんな、火を触媒も無しに無詠唱で…はッ『樹海』がッ!…なにも起きない…」


「アニスちゃんは不思議だね…」


3人はアニスの突拍子のない行動に驚いていた。


「よしッ!」 ババッ! トントントントン ダダダダッ!


ジュワアアッ! ジュウウ…


アニスはあっという間に簡単な朝食を作ってしまった。


「ん、こんなものかな」 コクン サッ!


アニスが今回用意した朝食は、野菜スープにウインナー炒めと目玉焼き、サラダを添えて、ふんわり柔らかバターロールパンを並べた、一般的な朝食を作り出した。 飲み物にはオレンの実の果実ジュースを添えた。


「「「 わあああッ! 美味しそうッ! 」」」 ババッ!


「さあみなさん、どうぞ召し上がってください」 ニコ


「いいの? アニスちゃん」


「はい、その為に作りました。どうぞ」 サッ


「「「 いただきますッ! 」」」 パクッ!


モグモグ ゴクンッ!


「美味しいいーーッ!」 パクパク


「本当ッ! このパンッ! 柔らかくて美味しい」 ムシッ! パク モグモグ


「野菜スープも、ハア〜… 美味しいわ」 ゴクン


「『樹海』でこんな朝食が食べれるなんて」 モグモグ ゴクン


アニスの朝食は3人に好評だった。 そこに男性隊員達が集まってきた。


ザッ ザッ ザッ!


「照美ッ! 何かってにそんなもの食ってんだッ! お前はッ!」 ザッ!


クルッ! バッ! モグモグ ゴクン


「うるさいわね貴明ッ! これはアニスちゃんが私たちのために作ってくれたのッ! 貴方には関係無いじゃないッ!」 バッ!


「うッ! くそおッ! 相変わらず生意気な女だッ!」 グッ!


「やめたまえ、杉浦上等兵ッ!」 ザッ!


「うッ でも曹長ッ!アイツら…」


「杉浦、天木上等兵の言う事も一理ありますよ」 ジッ


「は、はい…すみません」


「まあ少し待ちなさい…へええ、美味しそうですね。 貴女がコレを?」 ニッ!


天木照美と言い合っていたのは同じ第1小隊の男性隊員、【杉浦貴明】上等兵と、それを諌めたのは同じく第1小隊、男性隊員の【大山健斗】曹長だった。その場にはあと後ろに、【山峰三郎】軍曹、【小林芳雄】軍曹、【酒井章司】上等兵が集まっていた。


「ん、彼女達の朝食があまりにも美味しく無かったので、私が作り提供しました」 コクン


「そうですか…ちなみに、それと同じものを我々にも提供していただく事はできますか?」


「ん? 食べたいの?」


「はい、とっても、先程のコーヒーも素晴らしく美味しかったので…」 ニコ


「ん〜、わかりました。ちょっと待っててください」 スッ テクテク バサ キュッ!


アニスは再び調理台の方に行き、エプロンと長い銀髪をポニーテールに束ねて調理を再開した。


「なッ! 美しい…」 ポ〜…


「曹長ッ! あれッ あれッ!」 うう…


男性隊員全員が、アニスの青みがかった銀髪をポニーテールにエプロンの調理姿を見て、目を奪われていった。


「はあ〜…アニスちゃん可愛いわね、私のお嫁さんに欲しいわ」


「私も欲しいッ! あんな可愛い子この国にいないもん」 ギュッ!


「そうよね、見て、小隊の男達のあの顔ッ!」 スッ!


天木上等兵が指刺した先には、アニスの姿にただ見惚れている4人がいた。 ただ1人、杉浦上等兵に関しては、顔を真っ赤にしてアニスの動きを目で追っていた。


「うわッ 凄い顔…コレはちょっと…」 ヒク…


「ねえ、このままでいいの?」


「「 え? 」」


「どういう事? 洋子ちゃん」


「2人ともちょっと」 チョイチョイ


「「 なになに 」」 スッ


「(このままだと、アニスちゃんが男共にいい様にされちゃうわよ! 特に、大山曹長と貴明のヤツよッ!)」 ヒソヒソ


「「 はッ‼︎ 」」 クルッ! ババッ! ジイイッ


「(そう、大山曹長は綺麗な娘を見ればすぐに手が出るでしょ、あと貴明のあの顔ッ!、アレは絶対一目惚れだね、アニスちゃんが危ないわッ!)」 ヒソヒソ


「「 (確かにッ!) 」」 ヒソヒソ コクン


「(いい?、私達で出来るだけ、アニスちゃんを守るのよ!)」 ヒソヒソ


「「 (うんッ!) 」」 ヒソヒソ コクン ギュウッ!


女性隊員3人は、アニスを男性隊員から守るため結束をした。


カチャカチャ サッ ササッ! ジュウウーーッ タンッ!


「ん! 朝食セット5人前完成ッ!」 サッ!


アニスは男性隊員の分の朝食、5人前をあっという間に作り、この河原に設営していたテーブルにそれを並べ、先程の果実ジュースと人数分の椅子を出し、男性隊員達に声をかけた。


「準備できましたよ、どうぞお掛けになって召し上がってください」 ペコ


アニスがそう言うと、男性隊員5人は席につき、アニスの用意した朝食を食べ始めた。


カチャカチャ バクバク モグモグ ゴクン バクバク…


「うん、美味しいですね」 カチャカチャ パク


「美味いッ! 美味いッ!」 バクバク ガチャガチャ ゴクゴク モグモグ…


男性隊員達は夢中でアニスの作った朝食を食べていた。そんな時、早々に食事を終わらせた大山曹長が立ち上がり、アニスの元にやってきた。


スクッ ザッ ザッ ザッ!


「アニスさん、此度はこの様な大変美味しい朝食をありがとうございます」 ペコ ニヤッ


「いえ、お口に合ったのでしたら良かったです」 ニコ


「つきましてはこの後…」


その様子を見た女性隊員達がアニスに駆け寄った。


タタタッ!


「アニスちゃんッ! こっち、こっちに来てッ!」 ババッ


「そ、そう、あの朝食のレシピを知りたいのッ!いいかしらッ⁉︎」 グイッ!


「私も私もッ! こっちで教えてね!」 グイグイッ!


「わああッ! わかりました。 では失礼しますね」 ペコ


そう言って、大山曹長からアニスは引かれるままに、女性隊員達に連れ去られていった。


「ちッ! まあ、まだチャンスはあるさ…あんな良い女、見逃せないぜ…ククク」 ペロッ クルッ! ザッ ザッ ザッ!


いやらしい笑みを浮かべ、大山曹長はテーブルへと戻っていった。

          ・

          ・

「ふうう…危なかった」 ハア〜…


「全く、曹長ったらほんと、女の子を見ればすぐにこうなんだから…」 フリフリ


「アニスちゃん、ごめんね」 スッ


「ん、そう言う事でしたか、皆さんありがとうございます」 ペコ


「いい? アニスちゃん、彼、大山曹長と貴明…杉浦上等兵には気をつけてね」 


「ん〜、大丈夫ですよ。もし、何かしてきたら少し、怖い目に遭ってもらいます」 ニッ


「アニスちゃん?」


「さあ、後片付けをしちゃいますね」 テクテク ファサッ!


アニスはそう言って朝食の準備で使用した調理器具やゴミなどの片付けをしていった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国、帝都情報局中央センターー


ビーーッ! ビーーッ!


「何事だあッ!」 ババッ!


「はッ 局長ッ! 帝国メイン情報システム、『ヘカトンケイレス』に外部からの侵入者、接続を確認ッ!」 ピッ カチカチ タンタン ピコ


「本日0825時、『ヘカトンケイレス』重要情報端末に接触、帝国の重要機密ブロックに強制介入、開示接続ッ! 情報を引き出していますッ!」 ピピ


「なッ! 何処からだッ! 侵入者端末を探し出せッ!」 ババッ!


「現在サーチ中!」 ピッ ピピ ポン!


ビーーッ!


「確認しましたッ!」 ビコッ!


「隣国、友好国の『ココル共和国』メイン情報システム『ケルトリアス』を経由、その先、大陸極東 ヤマト皇国、皇都メイン情報システム『幻夜』へ無線LANアクセスッ! それ以上は接続が切れましたッ! 侵入者ロストッ!」 ババッ! ピッ ビコビコ


「バカなッ! 二つの国を跨いでアクセスだとッ⁉︎ どうやって各国のセキュリティーを、防壁を潜り抜けてきたんだッ!」 ググッ


ビーーッ! ポン


『当システムは、外部よりの強制アクセスを終了、情報漏洩を確認しました。 責任者は直ちに対処してください』 ピコン!


「ええいッ! 引き出された情報はなんだッ!」 ザッ!


「少し待ってくださいッ!」 ピピ タンタン ピコピコ


ビビ ビコビコ ポン ピピッ! ビーーーーーッ!


「出ましたッ! 侵入者が引き出した重要情報は、『王宮、第1級重要案件、最優先捜索者【アニス・フォン・ビクトリアス/クリシュナ】、皇帝陛下の御息女の個人情報です」 タンタン ピコ!


「なにッ⁉︎」 ザッ


「侵入者のログの痕跡を確認、残存最終画像データーです!」 ピッ ブオン パッ!


「こッ これはッ!」 バンッ! スタッ!


アトランティア帝国、帝都情報局中央センターの局長の【バロア・フォン・マインバッハ】は、その情報局中央制御室の大型モニターに映った、今回のシステムへの侵入者が残した画像を見て、局長席の机を両手で叩き、勢いよく立ち上がった。


大型モニターに映ったその姿は、青みがかった銀髪に純白のジャケットとスカート、行方不明になった当時の、アニスの姿が大きな川の河原に立っていた。


「【アニス】様ーッ!」 ババッ!


「アニス様?」 ザワ


「アニス様だって?」 バッ! ザワザワ


「アニス様だッ!」 ザワザワ ガヤガヤ


「「「 わああーッ! アニス様だあーーッ! 」」」 ザワザワザワッ! 


情報局中央センターの中央制御室内は歓喜に沸いた。 行方不明から捜索を開始して約1年、ようやくアニスの存在を確認できたからだった。


ワーワー ガヤガヤ ザワザワ


「通信士ッ! 直ちに王城の憲兵総監室、アニス様の捜索統括責任者である、【ウィリバルト・フォン・ベッケンヴァウアー】上級大将に緊急伝ッ! 『アニス様発見』大至急だッ!」 ババッ!


「はッ! 了解しました!」 ピッ カチカチ ピコ ポン!


「アニス様、今暫くのご辛抱を…」 ギュウッ!

            ・

            ・

アニスを極東の国、ヤマト皇国で発見の報告は、瞬く間に伝わりアトランティア帝国だけで無く、情報システムに侵入、通過された「ココル共和国」の他、周辺諸国に一気に伝わった。



ーアトランティア帝国友好国 「ココル共和国」某行政区執務室ー



「情報は以上です、サフロ様。それでは失礼します」 サッ!


ギイイッ バタン…


「ククク…ようやく見つかったか、我が女神よ…聞いての通りだ『勇者』諸君ッ! 極東の国、ヤマト皇国へと赴き、『アニス・フォン・ビクトリアス/クリシュナ】を捕縛、連行せよッ!」 ババッ!


ザザザザザアーーッ! 


ココル共和国の行政区の一つ、【ディルモア・サフロ】議員の執務室から4人の人影が姿を消した。


「ふふふッ、これでいい…これで我が国が…いや、この私がこの世界の頂点に立つのだッ!」 ニヤ…


アニス発見により、偽世界「アーク」に存在する全ての国が動き始めた。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ