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第225話 アニスの捜索と行方

ーアトランティア帝国 帝都アダム 王城謁見の間ー



一連の騒動が収まって半年程経ったある日、アトランティア帝国 帝都アダム王城の謁見の間にて、皇帝【ベルディア・ヴェル・アトランティア】をはじめ、王族、貴族、名だたる重鎮の面々が集まっていた。


「して、アニスの行方はまだわからんのか?」


「はッ! この帝都を中心に各方面、帝国の領土の隅々まで捜索にあたっておりますが、未だ発見には至っておりません」 サッ


帝都アダムでのガーナ新教団武装蜂起終息から半年、捜索団長を務めている憲兵総監【ウィリバルト・フォン・アイゼンベルガー】上級大将が、コレまでのアニス捜索結果を皇帝陛下に報告をした。 実際、アニスが神聖艦「ルシェラス」と共に姿を消し、帝国に治安が戻った時点から捜索は開始されたが、どこからもそれらしい報告は入ってこなかった。


「あのはな、我が帝国をその身一つで救ってくれたのじゃ、どれだけ時間がかかってもかまわんッ! ウィリバルトよ必ず見つけ出すのじゃ」 バサッ!


「はッ! このウィリバルト、全力を持って必ずや見つけ出し、アニス殿をお連れ致します」 サッ! 


「すまんの…皆の者も頼むぞ」 


「「「「「 はッ! 」」」」」 ザザッ!


謁見の間にいる全員が頭を下げ、アニスの捜索に全員が賛同した。


ハア〜…


「本当に、何処へ行ってしまったの…アニスちゃん…」 ス…


皇帝の長女でアニスの姉となっている【レイラ・ヴァン・クリシュナ】公爵は、謁見の間にある大きな窓の外、雲ひとつない青空を見ながら、アニスを心配していた。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国最北部 ウラール山岳地帯ー


ゴウン ゴウン ゴウン バウウウウーーッ! ゴゴゴ


ピッ ピピ ピコ ピッ


「現在、チャートNo.25 マーク18デルタ 速度22ノット  帝国最北端 ウラール山岳地帯 気温-16° 気圧1180hPa 周辺空域異常なし」 ピッ タンタン ピコピコ


「艦長、気象班より報告、午後からは天候悪化、吹雪になるそうです」 ギッ 


「そうか、通信士ッ!」 バッ!


「はッ!」 ギッ


「捜索出撃中の全ブレードナイト隊に帰還命令ッ! 『直ちに捜索を中止し帰還せよ』となッ!」


「アイサーッ!」 サッ カチ ピッ タンタン ポン


ピッ


「こちらコントロール、全捜索ブレードナイトに命令、『帰還せよ』 繰り返す…」


ピッ ピッ ピッ ビコビコ!


「ふうう…アニスの嬢ちゃん、どこに行っちまったんだろうな…」 ギシッ!


「艦長、間も無く国境に差し掛かります。進路指示を」 サッ


「此の先は『ココル共和国』だったな、友好国だが国境を越境するわけにはいかん、艦回頭ッ! 進路変更、帝国領内から出るなッ!」 ババッ!


「アイサーッ! 艦首バウスラスター1番3番5番噴射ッ 艦回頭180° 進路6.226 マーク33アルファ 速度24ノット 回頭開始」 ピッ タンタン グイッ!


バババッ! バウウウウーーッ! グググ… ゴウンゴウン ゴゴゴゴ…


帝国最北部、ウラール山岳地帯で 国境ギリギリで進路変更していたのは、アトランティア帝国、大陸艦隊所属の強襲巡航艦「ライデン」であった。 「ライデン」艦長の【アレックス・グレイ】中佐は、皇帝の勅命を受け、早い段階からアニスの捜索をしていが、捜索開始から半年強、未だアニスどころか神聖艦「ルシェラス」の痕跡すら掴めていなかった。


ゴゴゴ バウウウウーーッ! ゴウン ゴウン ゴウン シュバアアアーーッ!


「艦、回頭終了、捜索航行続行します」 ピッ タンタン ピコ


ピッ ビコビコ ピッ ピピ


「捜索ブレードナイト隊 全機帰還します。着艦デッキ、受け入れ体制準備」 ピポ


「帰ってきたか…」 ふうう…


艦長のグレイ中佐は、ブリッジの窓からこちらに向かってくる友軍機、アニスの捜索出撃をしていたブレードナイト隊を見ていた。



ー強襲巡航艦「ライデン」ブレードナイト着艦デッキー


ウィイイイインン ガシュンッ! ピッ ピッ ピッ


強襲巡航艦「ライデン」のブレードナイト着艦デッキのハッチが開き、誘導用ビーコンが発信され、それに従い1機、また1機と捜索から帰って来たブレードナイトが着艦していった。


ビーッ!


『アルファー小隊1番機、コースそのままッ! 着艦よしッ! 着艦ッ!』 ピッ!


シュバアアアーーッ! ガシュウウウンンッ! ギュウウッ! プシュウウウーーッ!


『アルファー小隊1番、アラン中尉機、着艦終了、続いて2番、マイロ中尉機着艦体制ッ! 3番機、ジェシカ中尉は上空待機着艦準備』 ピッ!


シュバアアアーーッ! ガシュウウウンンッ! ギュウウッ! プシュウウウーーッ!


『アルファー小隊2番、マイロ中尉機、着艦終了、続いて3番、ジェシカ中尉着艦体制ッ!…』 ピッ


半年前の騒動以後、英雄の3人、アラン、マイロ、ジェシカの3人は、その戦果と実力を評価され、大陸艦隊史上、王族以外で初めて17歳で中尉に昇進していた。 アニスの加護はいまだに働き、彼ら3人は順調に強く成長していった。 すでに同年代で彼らに勝る者はいなく、帝国内で一目置かれる存在となっていた。


『整備第3班は直ちに作業開始、着艦デッキ、アップル小隊接近、着艦体制』 ピッ


ピー ピー ピー


「オーライ、オーライ、ストーップッ!」ピッピーッ!


ガコオオオンン プシュウウウ…


「ようしッ! 整備第2班、作業開始」 ババッ!


「「「「 はッ! 」」」」 ザッ! ダダダッ!


シュウウウウウウウ… プシュウウウ バクンバクンッ! ウィイイイインン カシュンッ!


「ライデン」に着艦し、ブレードナイトを所定のハンガーデッキに固定した後、全ての電源を切り、コクピットハッチを開け、彼らは下に降りてきた。 彼らの隊長アラン中尉は手袋を脱ぎ、自分の愛機、ブレードナイト「アウシュレッザD型F1R2 リーザ」をジッと見つめていた。


*アラン中尉の前機体「アウシュレッザD型F1マークII」は、彼の昇進と同時に改修され、隊長機として「アウシュレッザD型F1R2リーザ」となって高機動指揮官機仕様になっていた。


「おつかれ〜」 ニコ トコトコ


「よッ!アラン隊長、おつかれ」 ザッ ザッ ザッ! 


アランの元に、同級生で同じアルファー小隊のマイロ中尉とジェシカ中尉がやってきた。


「ああ、マイロ、ジェシカ、2人とも大丈夫かい?」


「ええ、コレくらいどうってことないわ」 ニコ


「僕もだよアラン、コレくらい平気さ」 フリフリ


「そうか…そうだな、レオハルト隊長に比べたら俺たちなんて…」 グッ


「隊長、アニスちゃんのこと好きだったもんね…しかたがないわ…」 フリフリ


「そうだよなあ、やっと会えて一瞬でいなくなるんだ…切ないよな」 ハア…


ビーッ! 


『レオハルト中佐機接近、着艦体制ッ!』 ピッ


ヒイイイイイッ! シュバアアアーーッ! ピッ ピッ


『Rog. 誘導ビーコン受信、着艦体制、レオン着きましたよ』 ピッ


「…じゃない」 ググッ


『Lst. レオン? どうしましたか?』 ピッ


「この山じゃない、アニスはもっと向こうだッ!」 ババッ!


レオハルトはアトランティア帝国の最北端に位置する山脈、ウラール山脈の遥か向こうを見てそう呟いた。


『Lst. 向こう? レオンはアニスの居場所がわかるのですか?』 ピッ


「あ、ああ…いやすまんアウディ…なんでもない、着艦してくれ」 スッ


「Rog. 着艦します』 ピッ


シュバアアアーーッ! 



ー強襲巡航艦「ライデン」 ブレードライナー待機室ー


「ふうう…」 ドサッ!


レオハルト中佐は、ブレードライナー待機室のソファーに深く座り、目を閉じてため息をついた。


「ここじゃない…アニスが消える一瞬、俺の頭の中にアイツが見せた景色…あれは恐らくアニスと神聖艦「ルシェラス」の行先の景色だ…聳え立つ大きな山、その麓に広大な森が広がっていた。 似てはいたが帝国領の山じゃない…」


レオハルトは、当初から帝国領内にある森や山など、有りと有らゆる所を捜索していた。 初めて出会った森、皇太子救出時に近かった山、その殆どを隈なく捜索したが、アニスの行方や手掛かりなどは一切見つからなかった。


「くそッ! もう帝国のどこの山や森も違うッ! どこだ…どこにいる…アニス…」 ググッ


ピッ プシュウウウーーッ


「隊長…大丈夫ですか?」 ザッ! ザッ!


「うん? ああ、お前達か…大丈夫だ、心配かけてすまんな」 二ッ


「隊長、ちゃんと休んでます? ずいぶんとお疲れのようですけど…」


「ありがとうジェシカ中尉、ちょっとな、寝不足なんだ」 


「今日はこの後、吹雪くそうですから捜索は中止だそうです。ですが明日、明日にはきっと見つけてみせます。だから、今日はゆっくりと休んでください」


「そうだな…アラン中尉の言うとおりだな…ゆっくり…休む…かな…」 グウウ…


レオハルトは連日の捜索と寝不足が相まって、その場で眠ってしまった。


「寝ちゃったね」 クス


「だいぶ疲れてたからな、アラン、そのまま寝かせておこう」


「そうだな、隊長…ゆっくり休んでください」 ザッ!


ピッ プシュウウウーーッ


アラン達3人は、ソファーに横になって眠っているレオハルトに毛布を掛け、その場に残し、ブレードライナー待機所から出ていった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国 隣国、「ココル共和国」首都「プレストン」ー


ココル共和国、王政政治ではなく民衆が選んだ者がトップとなり、国の行政や法律を用いて政治を行う民主政政治の国である。 隣国のアトランティア帝国とは、双方で相互不可侵条約を結んでおり、アトランティア帝国とは、長きにわたり友好国として存在していた。


ーココル共和国 国会議事堂 会議室ー


「それで、帝国艦隊の動きはどうだね」


「はい議長、今現在、帝国領内にて多数の艦艇が活発に動いております。先程も巡航艦が一隻、国境を越え我が国の領域に入る寸前で転進しました」 サッ


「大規模な我が国への侵略準備ではないのかッ⁉︎」 ダンッ!


「なにッ! 侵略だとッ! そんな事は許さんッ!」 バッ!


「ガレス議員、ナセロア議員、両者とも落ち着きたまえ、まだそうと決まったわけではない」 サッ


「むう」


「そ、そうですな」 サッ


「ククク…」


「うん? サフロ議員、あなたは何か知っているようですが?」


「そうですな、代表議員の方々、聞いていただきたい」 バッ!


ザッ!


ココル共和国国会議事堂の会議室、そこには各行政区より選ばれた代表議員15名が、会議室の円卓で会議をしていた。 議長は順番制で、どこの行政区が偉いと言う弊害をなくす為の、手法をとっていた。


今、議長に名指しされた代表議員、【ディルモア・サフロ】議員、15名の代表議員の中でも1番若く、その体格も軍人の様な筋肉質の鍛えられた体つきをしていた。 そんな彼が、椅子より立ち上がり声を上げた時、その体躯から発せられた声にどうしても注目してしまう。


「ど、どうぞ、サフロ議員」


「皆さんは半年前の出来事を覚えておいでか?」


「忘れようがない、隣国アトランティア帝国内での『ガーナ神教団』の武装蜂起によるクーデターではないか」


「そうだッ! 散々、我らより献金を募っておいて、いきなり消えおったガーナ信徒どもッ!」 バンッ!


「なにが『次の選挙も推挙しますぞ』っだ! 高い献金ばかり取りおって、わしの金を返せッ!」 


ワーワー ザワザワ


どの議員も今はその存在が消えた『ガーナ神教団』の事に騒がしくなった。


「お静かにッ!」 ダンッ!


ザワッ! ピタッ シ〜ン…


「ふふふ、そう、皆さんご存知の『ガーナ神教団』、それが隣国、アトランティア帝国でクーデターを起こしたと思ったら、突如としてこの国、いえこの世界全てから消えた。なぜだかわかりますか?」 ふふん


「勿体ぶるでないッ! サフロ議員、知っている事は皆に開示し、共有するのだ」


「ふむ、確かに… では、この事は内密に、国民には知られぬ様願います」 サッ


コクンッ!


議員一同は、サフロ議員の言葉に首を縦にふった。


「良いですかな、私の得ている情報では『ガーナ神教団』は、その行いが神の怒りに触れ、神罰が下りその全てがこの世界から消えた様なのです」


「「「「 なッ⁉︎ 」」」」 ザワッ!


「神罰だとッ! サフロ議員、そんな話信じられるかッ!」 バッ


「そもそも、神が神罰を下したなど聞いた事がないぞッ!」 ダンッ


「そうだそうだッ! なにを根拠にその様なことを言うッ! 説明しろッ!」


ザワザワ ガヤガヤ


「黙れッ!」 バアンンッ!


ピタッ シ〜ン…


サフロ議員は円卓の端を両手で叩き、騒がしい議員達を黙らせた。


「いい加減その古臭い頭を使ってよく考えろッ! この中の何人かはすでに気づいてるはずだッ! いきなり一夜にして、この世界に800以上もあった『ガーナ神教団』の施設と数万もいた信徒や神官、司祭、信者その全てが消えたのだぞッ! あなた方は、人の身でそんな事ができるとお思いかッ!」 ババッ!


シ〜ン


「一つ二つではないのだぞッ! この世界全部だッ! この半年間で確認したのだ、『ガーナ神教団』は、完全にこの世界から消滅したのだ… そんな事、誰ができるッ! 出来はしまいッ! そんな事が出来るのは、人の力を超えた… 神だけだッ! 『ガーナ神教団』の者どもはその神罰を受けたのだッ!」 ググッ!


サフロ議員に言われ、誰もそれに反論、言い返しが出来なかった。


「しかし… やはり神罰とは…」 ザワ


「よく思い出してほしい、半年前、あの国の帝都でガーナ神教団は武装蜂起、アトランティア帝国に対しクーデターを起こした時の事だ」


「それなら報告を受け知っておる!」


「帝都アダムに教団が作ったとされる超大型のグランドシップ、それと見た事のない無人で動くブレードナイトでしたかな…」 ザワザワ


「そのせいで、帝国内は右往左往の大混乱だったと聞く」 ふむ


「……そうでしたな…」 うん


「どうやら覚えていた代表議員もおられる様だ」


「そんな事はいい、そのクーデターが何だったのだ!」


「その『ガーナ神教団』を、超大型グランドシップごと、とある一人の少女が消し去ったという報告はご存知で?」


「少女? そのような事…」


「間違いありません、確かな筋からの情報です。そして、その日から『ガーナ神教団』は、この世界からその存在が消えています」


「ではその少女が神なのか?」


「いえ、そこまでは確認できておりません。しかし、その日に『ガーナ神教団』はこの世界から姿を消し、その少女は、『ガーナ神教団』の超大型グランドシップを一瞬で消し去った。 これ程の力…神のような力を持っている少女… 私はその少女を神、もしくは神の御使様では無いかと思っています」


「神の力を持つ少女か…」 う〜ん…


「だとしたら…惜しいとは思いませんか?」 ニヤ 


「サフロ議員、一体なにを考えて…」


「今、帝国内で軍用艦艇が活発に動いてるのは、その少女が、『ガーナ神教団』のグランドシップごと行方不明と言う事で捜索中だと聞いております。要するに、『今、帝国にその少女は存在しない』のです」 バッ!


「そうか、帝国はその神の力を持つ少女を探し出し、自分達のものにしてこの世界を治めようとしているのだな!」


「そんな事は断じて許せませんなッ!」 ダンッ!


「帝国には多額の援助をしている、それは我が国を帝国が力を使い他の国から擁護すると言う密約のため、だが本当は、我が国が帝国を使い、経済面でこの世界を納める為だ。それをこの様なことをされては全てが水の泡だ」 バッ!


「どうですか皆さん、我々が帝国より先に、その少女を見つけ我々のものにし、この国の為に使ってはどうですか?」 ニヤ


「少女を…神を我々が利用すると言うのかッ!」


「いえいえ、利用だなんて… ただ、もう他の国は動いていますよ。 その神の力を持った少女を見つけ出し、自分達こそがこの世界を治め、君臨しようとしています」


「なんとッ!」 ザワッ


「これは由々しき問題ですぞッ! 我が国はすでに遅れをとっていると言うのかッ!」 バンッ!


「直ちに動くべきだッ! その少女を見つけ我が国にッ!」 ババッ!


「見つけても強要はいきません…その少女には見つけ次第、我が国で『寛いでいただき、その対価を払って貰う』、それだけですよ」 ククク…


「おおおッ! 成る程、対価か、それは妙案だッ! だが、その少女… 我らは全く知らないのだがどうやって探す?」


「なあに、我々は漁夫の理を得ればいいのです」 ニヤ


「成る程、他国に見つけ出させ、それを攫うと…だがどうやってやるのだ?」


「確かに、見つけ出した国も相当な手練れの者達が派遣されているはず、ましてや神の力を持つ少女だ、そう易々と我らの手に入らぬのでは無いか?」


「私に良い手立てがあります」


「おおッ! してその手立てとは?」


「我が国が秘匿していた、あの者達を使います」 ニヤ


「ま、まさか… だが、あの者達は…」


「この国の切り札…でしたかな、しかし、あの者達ほどの力がなければ神の力を持った少女を手に入れる事など出来ませんぞ。 決断は早い方が良いですぞ」 ククク…


「仕方がない、ただでさえ遅れをとった我が国だ、早急に手配しよう。代表議員の方々、それで宜しいなッ?」 バッ!


「「「「「 おおッ! 」」」」」 コクンッ!


議長の裁決でその場にいた代表議員、全員が頷いた。


「では、この件に関してはサフロ議員、あなたにお任せする。良いですかな?」


コクン


「わかりました。では、彼らは私が連れて行きます」 ザッ!


「くれぐれも、隠密に頼みますぞ」


「ええ…(他国や神を相手にするんだ、隠密だあ? そんな事、出来るわけないだろ! この老ぼれどもめ!)」 ペコ


サフロ議員は内心そう思いつつも、笑顔で会議室を出ていった。


ギイイッ! パタン… ザッ ザッ ザッ!


「さあ、忙しくなるぞ ククク ああっはははは」 ザッ ザッ ザッ


いかつい体躯のサフロ議員は、高笑いしながら国会議事堂を後にして、自分の行政区に向け帰っていった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国領から遥か極東、大森林ー


アニスが行方不明になって約1年後、どの国もアニス捜索に躍起になっていたが、誰もアニスを発見する事はできなかった。 しかし…ここアトランティア帝国領から遥か極東に位置する大森林、深夜01:00時過ぎのこと、雲ひとつない夜空にそれは現れた。



ー大陸極東 ヤマト皇国 皇国領霊山「フジ」 観測所ー


ピッ ピコ ピッ ピコ ピッ ピコ


「深夜0100時、皇国全域に異常なし、天候レーダーに雨雲は観測されず」 ピコ


「ふむ、ここしばらくは天候が安定しているな」


「所長、もう交代の時間ですか?」


「いやな、何かこう胸騒ぎがしてな、目が覚めたんだよ」


「いやですよ、所長のそれ、マジ半端なく当たるんですから」


「すまんな、こればっかりは代々受け継がれてきた能力でな、俺にもどうしようもないんだよ」


ビーッ! ビーッ ビーッ!


「うわあッ! なんだッ!」 ババッ! カチカチ ピッ!


「どうだ? なんの警報だッ?」 グッ!


「観測レーダーに感ありッ! 天頂方向から…こ、これは…」 ピッ ピッ!


ビーーーーーーーーッ! 


「超巨大火球ーーッ! 隕石ですッ! 落下ポイント『フジ』山麓、大森林樹海ッ!」 ピッ!


シュゴオオオオオーーーーッ! ボボオオオオオオーーッ!


「落下コースッ! 天頂方向から南南西樹海最深部ッ! 落着まで後5秒、4秒…」 ピッ ピッ


「そんな… なぜ突然にこんな事が…」 ビーッ! ビーッ!


「2秒、1ッ 落下しますッ!」 ギュッ! 


ビーーーーーーーッ!


ドオオオオオオオオオオーーーーーーンンンンッ! ビュワアアアーーッ!


ビーッ ビーッ ビーッ! グラグラ ガタガタ


「うおおおーーーッ!」 ガタガタ バリバリバリ


「かッ! 観測所があーーッ!」 ババッ! バキイッ! バアアアアアーーッ!


大陸極東の国、ヤマト皇国、その国の霊山「フジ」の裾野に広がる広大な森林地区「樹海」、その最深部にその巨大な火球は容赦なく落下し、周りの木々を薙ぎ払い、その衝撃波は、霊山「フジ」にある観測所を吹き飛ばしてしまった。


シュゴゴゴゴゴ… メラメラ パチパチ ボウボウ モクモクモク


落下した火球は大森林「樹海」に、落下地点から10Kmほど抉り一本線を引き、その先で大爆発を起こし大森林を焼いた。


バラバラ カタン カラカラ…


「うう…おい無事か?」 ガタガタ カラン


「な、なんとか…」 ガサガサ ガラガラ…


観測所はバラバラになったが、観測員の2人は無事だった。


「おおお…凄いな、『樹海』が燃えてるぞ」 スッ!


「大変ですよ、このままじゃ『樹海』が燃えて無くなってしまいますよ!」 バッ!


「うん? ああ、それなら大丈夫だって、じきに火は消えるさ」 はは


「そうなんですか?」


「ああ、この大森林『樹海』はな、その魔素の密度が濃くてな、炎程度はすぐに消えちまうのさ、まあ、霊山『フジ』の溶岩なら別だけどな!」 うん


「ですが、随分と『樹海』が傷ついてますよ、あれでは…」


「全く、お前、ここに配属が決まった時のレクチャーをちゃんと聞いたか?」


「え、え〜っと…はい、寝てて聞いてませんでした」 はは…


「いいか、この大森林『樹海』はな、別名『迷いの森、迷宮の大森林』って名があるんだ」


「『迷宮の森』…」


「そうだ、あの程度の傷、この森なら一晩で無かった事になる程、再生能力が高い。つまり、明日には違った森に生まれ変わるんだ」


「では中に入ったら…」


「まあ、レンジャーやガイドがいなけりゃ、二度と出てこれず、森の中で死ぬことになるな」


「うう…あッ 本当だ、もう火が消えてる」


「取り敢えず、街まで降りて報告をしなくては、明日にでも調査団を派遣してもらわんとな」 ザッ!


「はいッ!」 ザッ ザッ!


2人の観測員は、破壊された観測所を後にして、街に向かって歩き出した。 しかし、2人が見たものは既に探知されており、ヤマト皇国国防軍司令部は 速急に調査派遣のため、一隻の駆逐艦を出撃させていた。



ーヤマト皇国 国防軍艦隊所属、一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ー


ゴウン ゴウン ゴウン バウウウウーーッ! シュシュシュシュ!


ポン


「『ユキカゼ』当該空域に到達、両舷減速 微速前進」 ピッ ピコ


「センサーに感あり、前方『樹海』最深部!」 ビコビコッ!


「よしッ!『ユキカゼ』機関停止、現状で待機、地上部隊編成降下準備」 バッ!


一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」艦長、【青山幸弘】少佐は、皇国国防軍司令部よりの命を受け、霊山「フジ」の裾野に落ちた火球の調査に出撃していた。


「了解しました。機関停止、『ユキカゼ』現場で固定します。制動っ! 艦首1番2番ッ! 逆噴射ッ!」 カチカチ ピッ! 


カシュン バウウウウーーッ! グググ シュウウウンン…


「『ユキカゼ』停止、現状を維持します」 ピコ


「うむ、直ちに上陸部隊を降ろせ、ブレードナイト発艦デッキッ!」


ピッ


『こちら発艦デッキ』 ピッ


「上陸部隊を援護、2機出してくれッ!」


『了解しました。直掩機、ブレードナイト「ZERO」2機すぐに出します』 ピッ


「頼むッ!  索敵手ッ! 深夜だ、周辺警戒を厳とせよ!」


「了解しましたッ! 索敵レンジ最大ッ! SPY レーダー起動ッ!」 ピッ タンタン ピコッ!


「さて、何が落ちたんだ… 地上部隊の報告待ちだな…」 ギシッ


「ユキカゼ」艦長、青山少佐は陸上部隊の調査報告を艦長席に腰を深く座り待った。



ー「ユキカゼ」艦底部降下用上陸舟艇発艦デッキー


ピッ ポン


『第三ハッチ、降下用上陸舟艇発艦準備、陸上部隊準備!』 ピッ


「ようしッ!第1第2小隊、装備を確認して乗り込め! グズグズするなよ」 バッ!


「「「「「 はッ! 」」」」」 ザッザッザッザッ


プシュウウウー バクン ピッ


『艦底第三ハッチ解放、降下用上陸用舟艇発艦せよ!』 ピッ


ビーーッ!


バシュンッ! シュバアアアーーッ! シュウウウウウウウ…


2小隊18名を乗せた上陸舟艇は、第三ハッチから出て、深夜の「迷いの森、迷宮大森林」「樹海」へと降下していった。


ー一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」ブレードナイト発艦デッキー


ビーッ ビーッ! ガヤガヤ ワイワイ


「第1第2電磁カタパルト起動! ブレードナイト夜間発艦準備ッ!」 バッ!


『白井中尉、坂本少尉、発艦準備、上陸用舟艇及び、上陸部隊の掩護をしてください』 ピッ


「よしッ! 坂本ッ! 行くぞッ!」 バッ!


「はいッ!」 ダダダッ!


ウイイイイインン カシュンッ! バクンバクン ヒイイイイインンンッ!


ピッ ピッ ピコピコ


『白井中尉、夜間発艦出撃です、気をつけてください』 ピッ


「おう、大丈夫だ、任せろッ!」 グイッ!


ガコオオン ガコオオン ガシュン プシュウウウー!


ピッ


『電磁カタパルト1番、白井中尉、進路クリア、発艦どうぞッ!』 ピッ


「ブレードナイト『ZERO 52型 202』白井中尉ッ! 発艦するッ!」 グイッ!


ビーーーーーッ!


ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


『続いて電磁カタパルト2番、坂本少尉、進路クリア、発艦どうぞッ!』 ピッ


「ブレードナイト『ZERO 21型 212』坂本少尉ッ! 発艦します!」 グイッ!


ビーーーーーッ!


ガシュンッ! シャアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーッ!


バババウウウウウウウーーッ! ピッピッピッ!


2機のブレードナイト『ZERO 』が一等級攻撃型駆逐艦「ユキカゼ」より深夜の大空に飛んでいった。 

          ・

          ・

          ・

ー「迷いの森、迷宮大森林」「樹海」早朝 火球落下爆発地点ー


ピピピ ピチュピチュ バサバサバサ


ササアアアーー…


新緑の森の中、朝日がさすと森の中で小鳥達が囀り、羽ばたいていった。 爆発炎上の影響は瞬く間に修復され、まるでそのような事が無かった様に、元の大森林の森となっていた。


その森林の樹々の一つ、巨大な幹に身体を横たえて、1人の少女が眠っていた。


「ん…ふわああッ…んん…」 ムク…キョロキョロ  スタッ! パ パ


青みがかった白銀髪に純白のジャケットとスカート、膝上までの白いハイソックスに近接戦闘用ブーツを履いたアニスがそこに起き上がっていた。


「ん…ここ…どこ?」 キョロキョロ


大森林の森の中、アニスは自分が今、どこにいるのかわからなかった。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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