第224話 終息 アニスと創造神ジオス
ー神聖艦「ルシェラス」中央部 礼拝室ー
神聖艦「ルシェラス」の中央部にある大空間を有した礼拝室、そこにアニスに声かけによって現れた本当の神、【創造神ジオス】が現れ、アニス達に向かって魔法陣を展開し、大空間の礼拝室内は魔力と魔素の風が吹き荒れ始めた。
シュバアアアアアーーーッ! パアアアアアーーーーッ! ビュワアア――ッ!
「うおおッ!」 ババッ! バサバサバサッ!
『『 うわああッ!(あ、主人殿ッ!) 』』 ググッ ババアアア――ッ!
「ん」 バサバサバサ…
「ククク…」 ニイッ! パアンッ! ヒイイイイイイイインンーッ!
あまりにも強烈な魔力と魔素により、その場にいた「創造神ジオス」や、創造、顕現した「グリース・ゼルダ」と「グレイタス・イリア」の3人は、その威力に必死に耐えていた。 しかし、アニスだけは平然として目を見開き、青みがかった銀髪と純白のスカートを靡かせ、空中にいる【創造神ジオス】をじっと見ていた。
そんなアニスを見て、空中の【創造神ジオス】は、ほくそ笑み、右腕先に出した灰色の魔法陣に向かってさらに魔力を高める。
シュバッ! ヒイイイイイインンッ!
「そう…アレが正真正銘、神の使う《ブレイク》の魔法陣、(【創造神ジオス】…「ゼルダ」と「イリア」を帰すつもりなんだ… )」 バサバサバサッ! ジッ!
「なッ! うわあッ ぐッ… き、貴様は誰だッ⁉ なぜこの俺と同じ姿をしているッ! ううッ…しかも、その魔法陣は何だッ!」 バサバサッ ググッ ガクガク…
空中に突然現れた本物の神【創造神ジオス】、右腕を伸ばし、灰色の魔法陣を出したその姿を見て、アニスはただ平然と微動だにせずその姿を眺め、アニス達の前にいた『創造神ジオス』は、その強力な魔力と魔素を放ち、強烈な光で圧倒するその人物に向かって叫んだ。
「うん?… ああ、そうだったな『創造神ジオス』、お前は私の存在を知らなかったな… だがしかし…ククク、この程度の魔法陣展開で何を驚く? 貴様も扱えるだろうに…… まさか、知らない、扱えないのか? だとしたら、私にしては情けないぞ」 ニヤッ シュバアアアーーーーッ!
【創造神ジオス】の神が使用する魔法陣、その展開は素早く、魔法陣自体もかなりの威圧感があり、アニスが創造、顕現した『グリース・ゼルダ』、『創造神ジオス』が創造、顕現した『グレイタス・イリア』の2人は、萎縮しその場から動けなくなっていた。
「ん、ジオス…彼らもなの?」 スッ
「ああアニス、その通りだッ! 残念だが、奴らも私のシナリオでは此処までの存在でね、早々に帰ってもらうのさ… 両者共退け、《ニクスッ!》」 バッ パアアアンンーーッ!
シュバアアアーーー! ビュオオオオオーーッ!
『『 うあああああーーッ! ジ、【ジオス】様ああーーッ! (うう、主人殿おおおーーッ!) 』』 シュバッ!
パアアアンンッ! チリチリチリ…… サラサラ ヒュウウウ……
アニスと「創造神ジオス」の2人が創造、顕現した「グリース・ゼルダ」と「グレイタス・イリア」の2人は、【創造神ジオス】の無散、消滅の魔法陣の発動によって、この世界から消えていった。
ガサッ ジイ…
「(なッ! 何だあの凶悪な魔法陣はッ⁉︎ 天使と大男を一瞬で消しやがったッ! あの野郎、とんでも無くやべえぜッ! アニスのやつ、アイツを『創造神』とか言ってたな… まさか、本当に神なんじゃねえのか? どうすればいいんだ? クソッ! もっと考えろレオンッ! 最善の策を考えるんだッ!)」 ザザ…
レオンハルトは、気配を消し、礼拝室の外れで瓦礫に身を隠しながら、アニス達の様子を見て必死に考えていた。
「…『グリース・ゼルダ』…『グレイタス・イリア』…またね」 サッ
「な…私と同じ魔法陣、だが…違うッ! 一瞬で2人も…何だアレは…私は知らないぞッ!」 ググッ!
「ふん… (所詮は偽りの神…まあ良い…)」 ジイイイ…
【創造神ジオス】は、礼拝室の床で、呆然としている「創造神ジオス」を見た。そして、徐々に降りて来て、礼拝室の床に降り立った。
シュンッ! ストッ! ザッ! バサッ! ギンッ!
「さて、これで役者は揃った… そうだな、今しばらくは時がある、どうだい? アニス、『私の偽世界』は?」 ニッ!
「ん、そうだねえ…(時? 何かを待ってるのかな?)」 ん〜
「おいッ 貴様ッ!『私の偽世界』だとッ! ふざけるなッ! 此処はこの俺ッ!『創造神ジオスッ!』、この俺が作った偽世界ッ! この俺のだッ!」 バッ!
【創造神ジオス】の言葉に、「創造神ジオス」は怒り反論した。 ただこの時、両者の、この偽世界「アーク」の見解は大きく違っていた。
「ん? 違うよ、今は私のだよ」 スッ
「は? アニス、貴様なにを、いや…しかし…」
「だっておまえ、捨てたじゃないか、それを私が拾った、だからこの偽世界『アーク』はアニスのだよ」 うん?
「なッ! うぐぐ…」 ググッ
「クククッ ああっははははッ! そうッ! そのとおりだッ! アニスッ! 相変わらず変わらんな、お前はッ!」 ククク…
【創造神ジオス】は、アニスと「創造神ジオス」とのやり取りに思わず笑った。
「(笑ってやがる、くそッ! 此処からじゃ何を話してるのかよく聞き取れないッ! アニスのやつ、いったいアイツらとどんな関係だッ!)」 ガサガサ…
【創造神ジオス】が礼拝室の床に降りたため、アニス達の話し声は聞きづらくなっていた。
「ふふふ、全く… よく聞くがいい、「創造神」は自分の立場と役目をわかってないな… 」 ジイイイ…
「役目だとおッ!」 グッ!
「そうだ、「創造神」はこの偽世界に、アニスを止める為に私が創造した「創造神ジオス」、私の身代わり、分身なのだ」 ババッ!
「わ、私を創造…身代わり…分身だと… 何を戯言を…貴様ッ! ふざけるなああッ!」 ググッ! パアアアンンッ!
シュババババーーッ! ヒュンヒュンッ!
「創造神ジオス」は【創造神ジオス】に向け、赤色の魔法陣を展開し、無詠唱で攻撃魔法、《カラミティ.ランス》、無数の光の槍を放った。 しかし…
「ふん、《クリア》」 サッ! パアアアンンッ!
バシッ! バシッ! ババババッ! バアアアンン…
「なッ! アニスと同じ技をッ⁉︎」 グッ
「クク、こんなもの、私には効かん」 シュウウウ…
「おのれえッ! これでもかああッ!」 バシッ! パアアアンンーーッ!
「創造神ジオス」は【創造神ジオス】に向け、両腕を伸ばし、金色の大きな魔法陣を展開した。 その時、それを見たアニスが止めに入る。
「無駄だよ、『創造神ジオス』… 君では【創造神ジオス】には勝てない…」 フリフリ
「は? それはどう言う意味だッ アニスッ!」
「ん、まだわからないの? 『君は彼の完全なるコピー』、いや『彼の下位的擬似存在』… 本体の彼には勝てない、ましてやその体では…神の彼には絶対勝てないよ」 フリフリ
「ふッ 流石はアニス、見抜いていたか」
「わ、私がアイツのコピーだと… 格下だというのか…この『創造神ジオス』が…」 ググッ
「ふむ、害ばかりで有益では無いか、もう邪魔でしかないな…予定より早いが、まあいいだろう、誤差の範囲内だ」 スッ!
キラキラ…クルクルクル… シュヒイイイイ…
動揺し、金色の魔法陣を展開したままの「創造神ジオス」を前に、【創造神ジオス】は右手の人差し指を立て、その先に魔力を込めると、金色の小さな粒が多数現れ、指先に小さな渦を巻き回転し始めた。
「私は認めないッ! 私こそ神ッ! 「創造神ジオス」だああッ!」 バッ!
キュパンッ! シュバアアアーーーーッ!
「創造神ジオス」は金色の魔法陣を起動させ、そこより膨大な熱量を持った魔力の塊を放った。 それはアニスの撃滅魔法に匹敵するものだった。
「ははははッ! 消え失せろーッ!《アルデ.ギラン.ダストーーッ!》」 キュンッ!
シュゴオオオオーーーッ! ドオオオオオオーーーーッ!
「ふッ そう、それでいい」 ニヤ サッ バッ!
「あッ! そうかッ! コレが目的だったんだッ!」 バッ! シュンッ!
膨大な熱量を持った魔力の塊を見て、【創造神ジオス】は小さな光の渦を持った右手とは逆の左手を出し、その先に漆黒の魔法陣を展開した。 それを見たアニスは、【創造神ジオス】の意図を読み、その場から一瞬で消えた。
ドゴオオオオオオオオンンッ! ビリビリビリッ! バリバリッ ジジジ
「なッ! 何だとおおッ!」 ザザッ!
シュインシュインッ! ジッ ジジジッ! バリバリ! シュウウウ
「クククッ! ははははッ! いいぞ『創造神ジオス』、おまえの最大攻撃、《アルデ.ギラン.ダスト.》、しかと貰ったぞッ! こてでいい、これでシナリオどうりだッ!」 ガバッ!
「創造神ジオス」が【創造神ジオス】に放った彼の最大攻撃、金色の魔法陣を有した《アルデ.ギラン.ダスト》は、【創造神ジオス】に当たる寸前、彼の出した漆黒の魔法陣に吸い込まれ、何事もなかったように消えていった。
「これまでだ、「創造神ジオス」、いや…我が分身よ」 ニヤ スッ!
「くそおおッ!」 シュキンッ! バッ!
攻撃魔法を防がれた「創造神ジオス」は腰に帯剣している細身の剣を抜き、【創造神ジオス】に向かって切り込んでいった。
「やれやれ、往生際の悪い… ああ、私もか…クク…」 サッ! シュキンッ!
怒り迫ってくる「創造神ジオス」に対し、【創造神ジオス】も左手で、ミドルダガーを抜き構えた。
「うおおおおおーーッ!」 ブンッ!
「ふッ 遅いな…」 サッ! ビュンッ!
ギャリイイイインンン…… ググッ ググッ ギリギリギリギリ…
2人の剣はぶつかり合い、その威力を相殺し、鍔迫り合いになった。「創造神ジオス」は全力で斬り込んだが、【創造神ジオス】は、それを軽く受け止めていた。
「ククク…やはりこの程度か…」 グッ
「おのれええーーッ!」 ググッ ギリギリ…
「ふん…全く、『レプリカ』が『オリジナル』に敵うわけなかろうに…」 グイッ ブンッ!
「うわッ! があああッ!」 ザシュッ! ブシャアアアーーッ!
ザザアアーーッ ドタ、 ポタポタポタ…
「ふッ さらばだ、《ゼノッ!》」 キラッ!
シュゴオオオオーーーッ!
「がああああああーーッ!」 ビュワアアアアアアアーーッ! ビリビリビリッ!
【創造神ジオス】の右手人差し指にあった、小さな光の渦が、一瞬で消え去り、床で血を流し倒れている「創造神ジオス」の周りに現れ、彼を包み込んだ。 やがて「創造神ジオス」はその中で徐々に消えていった。
「お、おおお…」 ググッ ジュワッ! パアアアンンーーッ!
シュバッ! チリチリチリ シュウウウ…
「ククク、コレでいい、コレで…後は…ムッ! そうだったな、まだお前がいたのだったな!」 サッ!
テクテク ザッ ピタッ!
「アニスッ!」 バッ!
「ん、【創造神ジオス】、どう? シナリオどうり?」
「ふッ ああ、アニス、お前の存在以外はなッ!」 ニイイッ!
【創造神ジオス】の背後からゆっくりとアニスが姿を現した。
「そう…で、この先の、君のシナリオはどうなってるの?」
「ふん、知れた事、もうこの偽世界は、ほとんどアニス、お前のものになっている。 知ってのとおり、アニス、お前の加護で生きながらえたこの偽世界は他の世界と完全に隔絶されてしまった。故に私もこの偽世界から抜け出すことは不可能に近い。 だが、この偽世界を破壊して仕舞えばどうだ?」
「ん、異世界への道が開かれるね」
「その通りだ、私はこの偽世界では、『創造神』としての力は使えたが、この世界から抜け出る力を失った。 それもアニス、お前という存在がそれを阻むからだッ!」 バッ!
「私の偽世界になったからね」 コクン
「だから私は自分の分身を作り、シナリオを立て此処まできたのだ」
「ちなみに、そのシナリオ、いつからなの?」
「ふ、この世界がアニスによって創成され、その反動で私は過去に飛ばされたその時からだよ」
「どの位過去に戻されたの?」
「なあに、ほんの少し前、3万年ほど前だな…」
「3万年…そんなに前から…」
「気にするな、特別暇ではなかったぞ、3万年もの間、私は幾つもの文明を起こしては滅ぼしてきた。 その場にいた人間どもを思うように使い、誘導し、文明を起こし、争わせ、滅亡へと導いたのだ。 ククク…全く、人間という者達は、いつの時代も争いばかりだ。学習をしない」
「ジオス…なぜ、人間を繁栄へと導かない? なぜ、争わせる? 君なら滅亡など導かせない事も出来たのでは無いか?」
「ふッ アニス、コレを見ろッ!」 パアアアンンッ! パッ!
「ん…」
それはこの偽世界、「アーク」の過去の人々の映像だった。 そこには人々のあらゆる争いが表示されていた。国家間の争いから王族同士の争い、貴族同士の争いに、果ては村人の家畜や畑の水の取り合いまで、今日に至るまでの争いの記録だった。
「『神』となってこの偽世界を見て思ったのだ、『人間とは争うだけの種族ではないのか』と、そこで私、【創造神ジオス】は決断したのだ。全ての世界、新世界から既存の世界、異世界、偽世界、異次元世界、世界という世界から『人間などいなくなれば良い』と、そして私は動いたのだ…それを、アニス…お前はなぜ邪魔をする?」
「ジオス…」
「さあ時間だ、この時の為に、この巨大な艦を作らせ、我が分身より最大級の魔力を得たのだ、そしてこの帝都、すでに多くの魔素が充満している。アニスよ、これの意味することがわかるか?」 ククク…
「ん、君のシナリオどおりなら、『この巨大な艦の魔力炉に、先程の「創造神ジオス」の魔力弾を注ぎ込み暴走させる。 そのまま暴走状態の魔力炉でこの帝都、王城に落として起爆させれば、この帝都一帯に充満した魔素に魔力反応が起き、連鎖魔核爆発を起こさせる。 その威力は絶大で、そこに君の、【創造神ジオス】の力を更に加え、この偽世界、「アーク」と私、アニスの完全消滅をする』ってところかな?」 ふむ…
「はっはあッ! 正解だあッ!」 パアアアンンッ! シュバッ!
シュオオオオオオオーーッ!
すると、【創造神ジオス】は、左手に先程の強力な魔力弾を出してきた。
「ん、やっぱり…」 グッ
「さあッ! コレで全てが終わるッ! 消え去るがいいッ! アニスよッ!」 バッ!
【創造神ジオス】が左手の魔力弾を振り下ろそうとした時、それを止めようとフォトンライフルの銃撃が襲ってきた。
ダダダダダダダダダダッ!
「うおおおおおーーッ! アニスッ! 逃げろおおーーッ!」 バババッ!
ババババッ! チュンッ チュインッ! ビシビシッ! バシッ!
「レオンッ!」 バッ!
「ぬうッ! 人間か、この艦にまだいたとはなッ 鬱陶しいッ!」 ギン
ダダダッダダッダダダーーッ!
「このッ このおッ!」 ググッ! ダダダダダダダダッ!
レオハルトはフォトンライフルの引き金を引きっぱなしで、フルオートで【創造神ジオス】に向け、フォトンライフル弾を打ち込み続けた。 しかし、どの弾も【創造神ジオス】には届かなかった。撃ち出されたフォトン弾は命中する寸前、創造神の能力で霧散し、魔素変換され消えていったからだった。
ババババババッ! シュンシュンッ! パパパッ!
「ふむ、コレもアニスによる弊害か? シナリオではあの男、確か既に死に、この偽世界には存在していない予定だったはず…見逃せんなッ!」 スッ! パアアアンンッ!
フォトンライフルを撃ちまくるレオハルトに対し、【創造神ジオス】は右手を差し出し、その先に、赤い魔法陣を展開した。
「やめろジオスッ! レオンには手を出すなッ!」 ザッ!
「アニスよ、私のシナリオでは、ヤツはもうこの偽世界『アーク』から消えている存在、それが未だにこうして存在し、神に対して争う事など許されない。 直ちに消去する」 グッ!
「うおおおおおーーッ!」 ダダダダダダダダッ!
「クククッ! 《シュテルン.バーストッ!》」 キュインッ!
ドウウウウウウウウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーーッ!
「レオンッ!」 シュンッ!
「うわああああーーッ!」 ダダダダダダダダッ! ギュッ!
「ふふふ…うんッ⁉︎」 ググッ! ババババアアアアーーッ!
フォトンライフルを撃ちまくっているレオハルトに、【創造神ジオス】の攻撃魔法が放たれた。 自分に向かってくるその光り輝く魔力の塊を見て、レオハルトは逃げる事は不可能と判断し、フォトンライフルを撃ちながら目を瞑った。 その時、レオハルトの前に一瞬で1人の銀髪の少女、アニスが現れた。
シュンッ! ザッ!
「《アルテミスリングッ!》」 パアアアンンッ! シュバッ!
ドオオオオオオオオオーーンンッ! ビリビリビリッ! ババババッ!
「なッ! アニスッ!」 バッ!
「んッ! レ、レオン、大丈夫?」 ヒイイイインンッ! ババババッ!
「何無茶やってんだよッ!」 ザッ! ババババッ!
「ん〜ん、無茶じゃないよ。 私の大切なレオンだもん、このくらい平気だよ」 ニコ ババババッ!
「アニス… おまえ…」 サッ ババッ! バッ! シュウウウ…
ヒイイイインンッ! ヒイイイインンッ! バサバサ シュワアアーー…
【創造神ジオス】の神級殲滅魔法、《シュテルン.バースト》は、アニスとレオンのいた辺りを完全に薙ぎ払い、その威力は神聖艦「ルシェラス」の艦内を貫き、艦外へと大穴を開けてしまった。
その魔法の威力が収まった時、そこには青みがかった銀髪と純白のジャケットにスカートを靡かせ、純白の防御魔法陣を展開したアニスが、レオハルトの前で【創造神ジオス】の攻撃魔法を防ぎ立っていた。
「ちッ! アニスのオリジナル、絶対防御魔法陣か… あれだけは絶対に破れんッ!」 シュバッ!
ヒイイイインンッ! シュンッ パッ! バサバサ ヒュウウウウウ……
「アニス… えッ!」 くるッ ガバッ! ギュウウッ!
アニスが防御魔法陣を解除した時、レオハルトがアニスの名を言うと、いきなりアニスが振り返りレオハルトに強く抱きついてきた。
「レオンッ!」 ギュウウッ!
強く抱きついてきたアニスに、レオハルトはアニスの頭を優しく撫でて言った。
「やっと会えたなアニス」 ナデナデ
「ううう…レオンのばかちん…」 ぐりぐり
そんな2人を【創造神ジオス】はジッと見ていた。
「ふッ なるほど…その人間の男、お前はよほど大切らしい。 私には理解できんがな」 フリフリ
【創造神ジオス】のその言葉を聞き、アニスはレオハルトから離れ、【創造神ジオス】の方を向いた。
バッ サッ! スタッ!
「アニス?」 サッ
「レオン、もうちょっと待っててね」 ニコ
「あ、ああ…」
「うん? もういいのか、まだ待っててやってもいいんだぞ、アニス?」 ふふふ…
「【創造神ジオス】、君は確かに神だ…だが、まだまだだよ」 フリフリ
「ほう、私が神としてまだ未熟と言うのか?」 ニイイッ
「ん、ちょっと違う、君はまだ浅いんだ」 コクン
「むッ!(浅い? どう言う意味だ? 若いとか未熟なら理解できるが浅いだと? どう言う意味だ?)」
「だが、もう此処までにしようか…君がこのままこの偽世界にいるとこの偽世界を破壊してしまう。 この偽世界が消滅してしまう。 私はこの偽世界を失いたくないんだ…だから君を消滅させる」 スッ ギンッ!
シュバアアアーーーーッ!
そう言うと、アニスの周りに膨大な魔力が湧き始めた。
「むッ! アニスッ! 貴様ッ!」 ババアアーーッ! ビュウウウーーッ!
「アニス…おまえ…」 ババアアーーッ! ビュウウウーーッ!
「レオン…大丈夫、貴方は私が守るからね」 ニコ シュバアアアーーーーッ!
「ええいッ! ならばアニスッ! その人間の男と共々シナリオどうり、この神聖艦「ルシェラス」と共に落ち、この偽世界『アーク』と共に消え去るがいいッ!」 バッ! ブンッ!
ドドドドッ! ドゴオオオオオオオオンンッ! メキメキメキ バキバキッ!
【創造神ジオス】は左手のにあった強大な魔力弾を振り下ろし、この神聖艦「ルシェラス」の心臓部、魔力炉に向け投げつけた。 投げつけられた魔力弾は、床や壁を抉り突き抜け、この艦「ルシェラス」の心臓部、魔力炉へと突き進んでいった。
「はあっはははははッ! もう止められないぞアニス、さあどうする? この偽世界を犠牲にしてその人間の男を助けるか? それとも、この偽世界を救う為に、その人間の男と共にこの艦を消滅するか? それともその両方か? 好きな道を選ぶがいい」 ザッ!
「んッ⁉︎ (選ぶ? …そうか、まだ何か…)」 サッ!
ドゴオオオオオオオオンンッ! グラグラ ミシミシ パラパラ…
神聖艦「ルシェラス」の奥の方で、鈍い音が響き渡っていた。 おそらく、先の魔力弾がこの艦、神聖艦「ルシェラス」の心臓部、魔力炉に到達した音に違いなかった。 神聖艦「ルシェラス」は艦全体が震え、至る所から軋みや異音が鳴り出し、やがて高度が下がり始めた。
、
「ん……」 ググッ!
スッ! ザッ! ガバッ! ギュッ
「え?…レオン?…」 ギュッ
アニスがどうしようか迷っていた時、後ろからレオハルトがアニスに優しく覆い被さり、アニスの耳元で小さな声で語った。
「アニス…おまえとだったら一緒に逝ってもいいぜッ! この偽世界、『アーク』を救ってくれ」 ギュッ!
「レオン…」 サッ!
「アイツを消滅させよう… それがお前には出来るのだろう? 『女神アニス』」 ふッ
「レオンッ! 私はッ!」 バッ
「言うなって、薄々気付いてたんだ…アニス、お前が普通じゃないって、俺たちとは違うってな」 ニッ
「ん、いつから?」 ササ…
「お前と出会ってすぐかな… あん時、敵の巡航艦を一隻消し去ったろ、あれを見てそう思ったんだ。アニスは違う、俺の、俺たちの前に現れた『女神』なんじゃないのかってな」
「そっか…見られてたんだ…」 ス…
「でもな、俺はそんなお前が好きだッ!」 ギュッ!
「えッ! レオンッ!」 カアア…
「呑気で、食いしん坊で、寂しがり屋の癖に、めちゃくちゃ強ええ、お前が俺は好きだッ! 他の誰にも渡したくないッ!」 ギュウウッ!
「ん、わかってる…私も好きだよ、レオン」 キュッ!
「はは…最後に本音が言えて良かったぜ」 サッ!
「最後じゃないよ」 クルッ! サッ!
「は? アニス?」
「じゃあねレオン、愛してる」 チュッ♡ キュインッ!
「えッ! アニスッ! おまッ!」 シュバアッ! パアアアンンッ! シュンッ!
アニスは レオハルトと軽く口づけをした瞬間、レオハルトをこの場から何処かへと無詠唱で転移脱出をさせてしまった。
「なッ! 転移術ッ! 貴様ッ!、だが、この偽世界が滅ぶことに変わりはないぞ、そうなれば、今助けた人間も同じ運命を辿るのだ」 ザッ!
「ん〜ん、そうはさせない… 取り敢えずはこの大きな艦だね、コレをなんとかすればいいんだよね」 サッ
「この質量とこの大きさだ、どうにかなるものかッ!」 グッ!
「でも… コレもシナリオどうりなんでしょ?」 ニコ
「なッ! 気付いてたのか…」 ググッ!
「【創造神ジオス】、君のシナリオにはまだ続きがある、それは此処、この帝国での事じゃない。此処での事はあくまでも布石、この帝都周辺程度の魔素くらいが魔核爆発してもこの偽世界を消すほどの威力はない、そうでしょ」 うん
「ふッ 全てバレていたか… 流石はアニスだ、恐れ入ったよ」
「大方、この帝国が邪魔なだけ、もしくは力が大きすぎた、それを消し去る為の今回の騒動、違う?」
「ふん、そういう事にしといてやる」
「で、この後のシナリオはどうなるの?」
「ククク、では少しだけ… アニス、お前にはとっておきの者と戦ってもらう、お前を倒し消滅させるのは俺じゃないってことさ」 バッ!
「とっておき?」
「ああ、並大抵の強さじゃない、奴らは勇者だそうだ」
「へ? 勇者?」
ドオオンンンッ! グラグラ ビシイッ! パラパラ…
「ふん、もうこの艦はもう持たないな、また会おう、アニスッ!」 二ッ!
シュンッ! シュバッ! パアアアーーッ!
「あッ ジオスッ! うう… 逃げられた…」 ググッ
アニスの隙をつき、【創造神ジオス】この場を去っていった。 1つの疑問を残して…
「勇者…ってなんだ?」 はて?
ドオオオオオオオオオーーンンッ! グラグラ ミシミシ パラパラ…
「おっと、こっちが先だね…」 スッ!
アニスは、誰もいなくなった礼拝室の床に手を添えた。
・
・
・
ー帝都、王城上空ー
ゴウンゴウン ドオオオオオオオオオーーンンッ! モクモク
超強大な神聖艦「ルシェラス」は、ゆっくりと高度を下げ、煙を吐きながら王城へと降下していった。
ー重巡航艦「ヴィクトリアス」 ブリッジー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「提督ッ! 超大型艦降下開始ッ! 王城へと落下中ッ!」 ピッ ピコピコ
「ぐううッ! 艦首フォトンブラスター用意ッ!」 バッ!
「提督ッ! 王城が近すぎますッ! コレでは撃てませんッ!」 ビコッ!
「コレが奴らの狙いかッ!」 ググッ!
・
・
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ー第3戦闘空域ー
ブオオオオオオーーッ! ガンガン ギン ドオオオオオオオオオーーンンッ!
「Rog. 全機撃墜、後はアニスを、うん?」 ピッ
キラキラ シュウンッ! シュバッ! パアアアーーッ!
「うおッ! アニスッ! って 此処は… ブレードナイトのコクピット?」 キョロキョロ
『Rog. レオン、いつの間に乗り込んだのですか?』 ピッ
「アウディかッ! すると此処は…」 グイッ ピッ タンタン ピコ
『Rog. 帝都上空、第3戦闘空域ですよ』 ピッ
ヒイイイイイイイーーッ バウウウウーーッ! ピッ ピッ ピッ
シュバアアアーーーーッ! ダダダッ! ドオオンンンッ! ギュワアアアーーッ!
アニスによって神聖艦「ルシェラス」の礼拝室から転移脱出したレオハルトが現れたのは、自分の愛機、ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」の操縦席、コクピット内だった。
「アウディ! アニスはッ! アイツはどこにいるッ!」 バッ!
ピッ
『Rog. 右舷前方上空、2800に位置する、教団側巨大グランドシップ、その中央付近に反応があります』 ピッ
ピコ ブンッ! パッ!
アウディがアニスの位置を答えると、操縦席前のメインパネルに、遥か前方上空に、ガーナ神教団の巨大なグランドシップ、神聖艦「ルシェラス」が、炎と煙を吐きながら、徐々に王城へと降下していく姿が見られた。
「アニスーーッ!」 ギュッ!
『Lst. レオン、いったい何があったのですか?』 ピッ
「たのむッ! アウディッ! あそこへッ! あの艦に行ってくれッ! アニスがッ! アイツがあそこで戦ってるッ!」 ガチャガチャ ピッ!
『Rog. レオン、落ち着いて、あの艦ですがもう持ちません、こちらのセンサーで魔力炉が暴走中、後数分で爆発炎上します』 ピッ
「そんな…後数分だと…うう…馬鹿やろおーーッ!」 ダンッ! ググッ!
レオハルトは理解した。いくら「アウディ」でも、この距離では間に合わない、もう手遅れなのだと…
ピッ
『Rog. レオン、超大型艦に膨大な魔力反応ッ! 空間転移しますッ! 行き先は不明ッ!』 ピッ
「アイツ…まさかアレを…アニスッ!やめろおおッ! そんな巨大な物転移なんざしたら、お前の体がもたねえッ!」 ババッ! グイッ ギュッ!
ヒイイイイインンン バウウウウーーッ! シュバアアアーーーー!
「アニスーーッ!」 グッ!
シュゴオオオオオオオオオオオーーーーッ!
レオハルトはブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」のスラスターを全開にして、神聖艦「ルシェラス」へと飛んでいった。
・
・
・
ー神聖艦「ルシェラス」中央部 礼拝室ー
グラグラ ガタガタ ミシミシ パラパラ…
ポン ビーッ! ビーッ! ビーッ!
『当艦乗組員に避難命令、当艦は間も無く魔力炉が暴走、爆発します。至急退艦して下さい。 繰り返します。 当艦乗組員に…』 ピッ
ガタガタ ドオオンンンッ! パラパラ…
沈みゆく超巨大艦、神聖艦「ルシェラス」の艦内にただ1人、アニスは礼拝室の床に片膝を立て床に手を触れしゃがんでいた。
「悔しいけど、コレも【創造神ジオス】のシナリオどうりなんだね…」 ギュウウッ!
パアアアンンーーッ! シュバアアアーーーーッ!
アニスを中心に、超巨大な魔法陣が形成され、礼拝室いっぱいに広がっていった。
ポン
『魔力炉臨界点突破、暴走限界まであと5秒、4秒、3秒…』
「レオン…またいつか、どこかでね…《フェイズ.グラン.ワイプッ!》」 キュインッ!
パアアアアアアアーーーーッ!
『1秒 臨ッ!』 ピッ
シュバッ! パアアアンンッ! シュバアアアーーッ パッ ヒュウウウウウ……
「アニスーーーーッ!」 ヒイイイイイーーッ! バウウウウーーッ!
レオハルトが神聖艦「ルシェラス」に辿り着く寸前、王城上空にいた神聖艦「ルシェラス」は、魔力炉臨界爆発前に、アニスと共にその姿を消した。 その瞬間、帝都上空にいた教団側残存部隊は、まるで糸の切れた操り人形のように力なく地表へと落ち、全て機能停止していった。
神聖艦「ルシェラス」の消失と共に、帝都の戦闘は全て終了し、ガーナ神教団は壊滅した。
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