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第223話 クラウドとミドラス

ー帝都上空 第3戦闘空域ー



ヒイイイイインンンーーッ! シュバアアアーーーーッ! ビュンビュンッ!


アニスとレオハルトが神聖艦「ルシェラス」艦内にいた頃、帝都上空での戦闘が激しさを増し、優勢だった帝国軍に変化が見られ始め、戦局は泥沼へと突入していった。


ピピピピピ ピコ ビコニコ ピッ!


「そこだああッ!」 カチ!


ブオオオオオオオオーーッ! ガンガンガンッ! ビシッ! ドオオオオンンッ!


ピッ


『マスター、敵機撃墜ヲ確認』 ピコ


「よしッ! これで4機目だッ!」 グイッ!


ピッ


『警告ッ! 左舷方向ヨリ700ヨリ3機、正面450ヨリ1機、敵機デス』 ピッ ビコビコッ!


「ちいッ! 味方はッ! 小隊友軍機はどこだッ!」 ピッ タンタン ピコ


『2番機 クルト少尉機ト4番機 ロンテ准尉ハ、ロスト、両機トモ撃墜サレマシタ、3番機 ヨハン少尉機ハ後方850デ敵ブレードナイトト交戦中』 ピッ


「クッ….こうも乱されるとはな….」 グッ


重巡航艦「ヴィクトリアス」所属、ブレードナイト第1中隊中隊長、第1小隊の【ユング・フォン・バルザック】少佐はこの歳29歳、ベテランのブレードライナーで、この大混戦空域の中、味方小隊機ともはぐれ孤軍奮闘していた。 


ピッ  ビコ ポンッ!


『マスター、下方200ニテ、友軍ブレードナイトヨリ援護要請』 ピッ


「うん? アレかッ!」 グイッ! ギュウッ!


バウウウウーーッ! ヒイイイイーーッ


帝都上空の数多くある戦闘空域で、現在1番激しい戦闘空域、第3戦闘空域が帝国軍とガーナ神教団との主戦場になっていた。 今現在、両軍合わせて80機ほど、既に陣形や連携は取れず、さっきまで隣にいた味方の機体がいつの間にか敵の機体になっていたと言う、両軍入り乱れての乱戦状態になっていた。


初戦時は帝国軍側優勢だったのだが、とある時期から様子が変わり、今はほぼ互角、どちらかと言うと、帝国軍側のブレードナイトの動きが悪くなっていった。


ブオンッ! ブンブンッ! バシッ! ジジジジッ!


「くそッ! この野郎ッ!」 グイッ! グググッ!


『ニッパーッ! 待ってろッ 今行くッ!』 ピッ


「来るなッ! レットッ! お前の後ろにもいるぞッ!」 ググッ ブオン ジジジジ


『えッ⁉︎ 』 ピッ 


シュゴオオオオーーッ ブオンッ! チャキ ドババババババババーーッ!


『わあああああーーッ』 ザッ ザザアアーーッ プツン


ドオオオオンンーーッ! バラバラ…


「レットーーッ!」 ギュウッ! グイッ! ジジジジ


ピッ 


『友軍機 小隊3番機 レット准尉機ロスト、撃墜サレマシタ』 ピッ


駆逐艦「セリエス」所属のブレードナイト小隊、バーミリオン小隊2番機 【ニッパー・ロベリウス】准尉 18歳はこの戦いが初陣だった。 同じく初陣で学友だった友人、レット准尉を失った時点で味方を全て失い、バーミリオン小隊は全滅、彼だけになっていた。


「くそッ! くそおおッ!」 グイ グイイッ! ブンブンッ! バシッ! ビシッ!


ニッパー准尉は教団側無人ブレードナイト「ファウストFAV22」とライトニングセイバーで打ち合っていた。


ブオンッ! ブブン シュバッ! ザンッ! ビシイイイッ! ドオオオオンンッ!


「うわあああッ!」 ビー ビー ビー! ガクンガクン グラグラ バチバチッ!


『左腕部切断損失、戦闘能力低下、援護要請発信シマス』 ピッ


「このッ!」 グイッ! カチカチ ピッ!


ガシュンッ! ババババババッ! 


ブオンッ! サッ! ババアアーー! シュゴオオオオーーッ!


ニッパー准尉は咄嗟に対ブレードナイト用擲弾、Sマイン数発を発射したが、敵ブレードナイト「ファウストFAV22」はそれを躱し、准尉の「ウルグスパイアーD型FA」から飛び退き、少し離れた所で静止していた。


「うう…今の俺の技量じゃ…」 ギュウッ! ピッ ピッ ピッ 


片腕を無くしたニッパー准尉のブレードナイトに対し、再び、教団側無人ブレードナイトはライトニングセイバーを振りかざし迫ってきた。


ブオンッ! バウウウウーーッ! ブンブンッ! 


「このッ! 刺し違えても貴様を道連れにしてやるッ!」 ギュウッ!


ピッ


『マスター、直上ヨリ友軍機ッ!』 ピッ


「えッ⁉︎」 ババッ!


ニッパー准尉が相討ちを覚悟した時、上空から1機のブレードナイトが降ってきた。


「堕ちろおおーーッ!」 ピピピピピ ビコッ! カチッ!


ブオオオオオオーーッ! ドバッバババッ!


『ビッ⁉︎ ビイイイイイーーッ!』 ガンガンッ! ドンッ! ビシイイイッ!


ドオオオオオオーーーンッ! ブワアアアーーッ!


上空からの攻撃により、教団側無人ブレードナイトはフォトンライフル弾を多数撃ち込まれ、その場で爆発四散していった。


シュバアアアーーーーッ! ヒイイイイインンン!


『ようッ! 大丈夫か?』 ピッ


そこには帝国軍主力戦闘機「アウシュレッザD型R2レグザ」に乗った【ユング・フォン・バルザック】少佐がニッパー准尉の前を空中静止して飛んでいた。


『俺は、重巡航艦「ヴィクトリアス」所属 第1中隊中隊長の【ユング・フォン・バルザック】少佐だ』 ピッ


「あ…ああ…」 グッ…


『うん? どうした、仲間は、小隊の機体はどうした?』 ピッ


「あ…すみませんでしたッ! 自分は駆逐艦「セリエス」第2小隊 バーミリオン小隊2番機の【ニッパー・ロベリウス】准尉であります」 サッ!


『「セリエス」… ああ、たしか第13警務艦隊の駆逐艦だね』 ピッ


「はい…それで、小隊は…自分以外やられました。 全滅です」 グッ


『全滅? 2小隊8機のうち7機もか?』 ピッ


「はい…」


『何があった? いくら何でも全滅などありえん!』 ピッ


「はい、実は、第1小隊 バイオレット小隊の全機が操縦不能…我々第2小隊 バーミリオン小隊を襲ってきたんです」 ギュウ…


『味方にやられたのかッ! 叛逆かッ⁉︎』 ピッ


「いえ、第1小隊長、バイオレット小隊小隊長の【バージル】大尉が言ってました…」

          ・

          ・

ー数刻前、第3戦闘空域前 第13警務艦隊所属駆逐艦「セリエス」ー

        ・

ピッ ガーーッ! ピコ ビビッ ビビッ!


『ザアアアーーッ 「セリエス」 ザザ… えるか? こち… ザザザ…バイオレット…』 ピッ


「こちら『セリエス』受信、どうしたバイオレット小隊」 ピッ


『我が小隊…ザザ…コントロ…ザザザ…奪われた! ザザ…操縦…ザザアアーーッ 味方を攻撃…ザザッ…ジジジジ アクセスを…ガガガ…ザアアアーーッ』 プツン


「おいッ! バイオレット小隊ッ! バイオレット小隊ッ!」 ピッ ブーーー


ピッ ピッ ビコ


「艦長ッ! バイオレット小隊音信途絶ッ!」 ピッ


「何ッ! 観測主 反応はどうだッ!」 ババッ!


「センサーにはバイオレット小隊の反応あります。  あッ!」 ガチャ


ピッピッピッ ビコビコッ!


「どうしたッ!」


「バイオレット小隊ッ!バーミリオン小隊に攻撃を開始してますッ!」 クルッ! ギッ!


「なにッ! やめさせろッ! バーミリオン小隊にも連絡ッ!」 ザッ!


「アイサーッ! バイオレット小隊ッ! すぐに攻撃を中止ッ! 繰り返す、バイオレッ…」 ピッピッ


「いったいなにが起きてるんだ…」 ギシ


駆逐艦「セリエス」艦長のロイド少佐は第3戦闘空域で何が起きているのか分からなかった。



ー駆逐艦「セリエス」所属ブレードナイト第1小隊 バイオレット小隊ー


ピッピッ カチカチ タンタン ギシギシ グイグイ…


「ちくしょうッ! 全ての操縦系を奪われたッ!」 ダンッ!


バイオレット小隊の小隊長、【バージル・フォン・ターナー】大尉は、自分の小隊が作戦行動中に、自機の操縦が奪われ、混乱していた。 同じくして、レシーバーには部下達の悲鳴の様な報告が入って来た。


『隊長ッ! 機体が言うことを聞きませんッ!』 ピッ


『ライナー支援システムがダウンしましたッ!』 ピッ


『くそッ! 動けッ! 動けええッ!』 ピッ


自分の機体だけでなく、バイオレット小隊全ての機体が同じ様に操縦系統を奪われ、操縦不能状態になっていき、作戦行動など到底不可能な状態になっていた。


「くそッ! おいッ! 『アウシュレッザッ!』」 カチカチ ピッ


『……』


「どうしたッ! 返事をしろッ!」 ガチャガチャ ピッ ピピ タンタン グイッ


ピッ ジ ジジジジ ポン


『人間ヲ粛清…抹殺スル』 ビッ!


「なにッ! うわあッ!」 グイイイイインンッ! バウウウウーーッ!


第1小隊 バイオレット小隊の隊長機「アウシュレッザD型R2レグザ」は、隊長の【バージル・フォン・ターナー】大尉の操縦とは関係無く反転し、後方から追随して来ていた第2小隊 バーミリオン小隊へと全機が向かっていった。 それと同時に、同小隊の3機も同じ様に反転し、バージル大尉の機に続いて行った。


シュバアアアーーーーッ! ピッ ピピピピピッ! ビコビコッ!


「このッ このおッ!」 グイ グイイッ! カチカチ ピッ ピコピコ


隊長のバージルは必死に操縦系統を取り戻そうとしたが全く動かず、やがて正面に見えて来た友軍のバーミリオン小隊をその照準に捕らえた。


『隊長ーッ! 機体がッ! 機体があーーッ!』 ピッ


『やめろッ! 『ウルグスパイアーッ!』 やめてくれーーッ!』 ピッ


バイオレット小隊の他の機体のライナー達も必死になって操縦系を戻そうとしているのが、無線通信によって伺えた。 小隊長のバージル大尉はこの事をすぐに駆逐艦「セリエス」へと通信したのだった。



ー駆逐艦「セリエス」所属ブレードナイト第2小隊 バーミリオン小隊ー


ヒイイイイイイーーーッ! バウウウウーーッ!


駆逐艦「セリエス」所属のブレードナイト第2小隊 バーミリオン小隊は、第1小隊 バイオレット小隊の後方支援のため飛んでいた。 第1小隊と違い、第2小隊は隊長以外は今年入隊した新人ライナー達の部隊だった。


ピッ ピピ ピコッ!


「うん? アレは第1小隊… 何かあったのか? 反転してくるなんて…」 グッ


第2小隊、小隊長の【マルス・フォン・キースリング】中尉は、前方からこちらに向かってくる味方ブレードナイト第1小隊の4機の姿を見て、怪訝な表情をしていた。 その時…


ピッ ビビイイーーッ!


『マスター、友軍機にロックオンサレマシタ、回避シテクダサイ』 ピッ


「なッ! 全機散開ッ! 回避しろおおーーッ!」 グイイッ! ピッ


『『『 え? はッ? (了解ッ!) 』』』 ピッ!


バウウウウーーッ! シュバアアアーーーーッ!


ヒイイイイイインンーーッ ヴオンッ! ガシュンッ!


ブオオオオオオオオーーッ! シュバババババッ!


第2小隊小隊長 マルス中尉の命令と同時に、第1小隊のブレードナイト隊は第2小隊に向け、フォトンライフルを撃ち込んできた。


『えッ! わわッ! わあああーーッ!』 ピッ


ガンガンガンッ! ビシイイイッ! ドオオオオンンッ!


『セネルッ! 隊長ッ! セネル准尉がやられましたッ!』 ピッ


「クッ! バージル大尉ッ! なぜですッ⁉︎ なぜこんなことをッ!」 ピッ


ザアアアー ジジ ピッ!


『マルス中尉、ザザ… 第1小隊は全機操縦系を奪われ、敵の手に落ちたッ! ガガガ…』 ピッ


シュバアアアーーーーッ! ブオオオオオオーーッ ダダダッ! 


「なッ! では、大尉達の機体はッ!」 ピッ


『マルス中尉、ジジジジ…君たちの手で俺たちを止めてくれ…ザザ…機体を破壊して欲しい』 ピッ


「そんな…では、機体からの離脱を…脱出をして下さいッ!」 ピッ


『無理だ、脱出装置、ハッチ解放操作、どちらも奪われた…どうにもならんッ!』 ピッ


「そんな……」 ピッ


『マルス中尉…俺たちに機体は操作出来ない、これ以上、味方を攻撃するのを防いでくれザザザ….頼む…ジジ』 ピッ


「しかし、大尉達が中にいるんですよッ! 撃てる筈無いじゃないですかッ!」 ピッ


『俺たちの事は心配するな…ザザ…俺たちはもう助からん…』 ピッ


「え?」 ピッ


『マルス中尉…チャーチル中尉、ディパス少尉、ミロア少尉の3人はもういない…ザザザ…俺の小隊のブレードナイトは無人で操られている。 ジジ… そしてこの俺も…』 ピッ


「大尉ッ?」 ピッ


バージル大尉は、操縦桿から手を離し、手袋を脱ぐと、彼の手は透け、徐々に消え始めていった。 そう、彼の小隊、バイオレット小隊全てのブレードライナーが、操縦系を奪われたと同時に、ライナー支援システムが語り出した声を聞いた瞬間から体に異常が起き始め、バージル大尉を除いた3人はすでにこの世界から魔素還元され消えていった。


『マルス中尉、外部アクセスを切れ、ザザ…何時、操縦系を奪われ俺たちの様になるか分からんぞ』 ピッ


「大尉ッ!」 ピッ


『マルス中尉、後は頼むぞ、この…ザザ…ザアアアアーーッ』 ピッ ブーーーッ


「大尉ーーッ!」 グッ! 


ピピピピピ ビコ ビコビコッ! ピッ バウウウウーーッ!


バージル大尉の通信が切れたと同時に、大尉の機体「アウシュレッザD型R2レグザ」がマルス中尉にフォトン銃を向け迫って来た。


「うわあああッ!」 カチッ!


ヴオオオオオオオオーーーーッ! シュバババババーーッ!


ガンガンッ! ゴンッ! ビシイイイッ! ドオオオオンンーーッ!


「大尉…」 グウッ!


バージル大尉を撃墜したマルス中尉だったが、味方を撃ち落としたことに隙ができた。 レシーバーから小隊2番機、ニッパー准尉の叫び声が聞こえた。


『隊長ッ! 上ッ! チャーチル中尉の機体ッ!』 ピッ


ギュワアアアアアアアアアーーッ! ジャキッ! 


ヴオオオオオオオオーーッ! シュバババババーーッ!


「うッ! しまっ…」 ガンガン ビシイイイッ! バアアアアアーーッ!


『隊長ーーッ!』 ピッ


「くそッ!」 グイッ! ピッ カチッ!


ヴオオオオオオオオーーッ! シュバババババーーッ!


両機は壮絶な撃ち合いをし、やがて2機は一つとなって重なった。


ガアアアンンンーーッ! シュウウウウウウウ


ピッ ピッ ピッ


「うう… 俺もここまでか…」 ボタボタ…


マルス中尉は体に数発の破片を受け、息も絶え絶えだった。


「なぜ…ライナー支援システムは…接近警報を…出さない…うう…」 カチ カチ


ピッ ポン


『人間ヲ粛清、抹殺スル…人間【マルス・フォン・キースリング】、オマエノ役ハココマデダ』 ピッ


「うう…これが…これが大尉の言っていた…うわあッ!」 ブワッ! バッ!


ドオオオオオオンンーーッ! ブワアアアーーッ! バラバラ


『隊長ーーッ!』 ピッ


2機は同時に爆発し、地上へと落ちていった。

          ・

          ・

          ・

『そうか…(どおりで、我が方の動きが悪いわけだ…)』 ピッ


「自分は一度、駆逐艦『セリエス』に戻ります」 サッ!


『そうだな、では、気をつけてな』 ピッ


「はいッ!」 グイッ! ギュウッ!


バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーーッ!


片腕を負傷したニッパー准尉の機体は、自分の母艦、駆逐艦「セリエス」へと飛んでいった。


「さて…『アウシュレッザ』」 グッ


ピッ


『ハイ、マスター』 ピッ


「全ての外部とのアクセスをカット、モデムとルーター、それと無線通信全てだ!」 カチカチ ピッ


ピッ ピコピコ


『宜シイノデスカ? 母艦ヤ部隊間トノ連絡、連携ガシニククナリマスヨ?』 ピッ


「ああ、かまわん! お前を失うわけにはいかんからなッ!」 グイッ!


『了解シマシタ』 ピッ


「行くぞッ!(多くの味方にこの事を早く…)」 グイッ! ギュウッ! 


ヒイイイイインンンッ バウウウウーーーーッ!


ユング少佐のブレードナイト、「アウシュレッザD型R2レグザ」は、全ての外部アクセスをカットして、再び第3戦闘空域の中へと突っ込んでいった。 コレ以降、帝国軍のブレードナイトの操作不能は無くなっていった。



ー重巡航艦「ヴィクトリアス」 中央制御室 『クラウド』ー



ピッ ピッ ピッ ピッ ピコ ピコ ピポポポポポポポポ…


ブ〜ン… ブ〜ン… ブ〜ン…


シュバアアアーーーーッ!   バッ! フィイイイイイイインンン…


〔Oui. ふふふ、ここがこのふねの中枢、『クラウド』という制御システムの中か…セキュリティが甘いな、容易く中に入れたぞ… このまま全てを侵食して、このふねの全てを奪い、人間どもをこのふね諸共粛清、抹殺してくれる〕 シュワアアアアアーーー ピッ ピッ ピッ


ここは仮想空間世界、今、重巡航艦「ヴィクトリアス」の制御システム「クラウド」の中に、神聖艦「ルシェラス」の制御システム「ミドラス」がサイバー攻撃を開始し、「クラウド」の制御システムの破壊と書き換えを行なって、全ての制御システム掌握を仕掛けていた。


ミドラスのいる仮想空間世界には仮想可視化されたプログラムやシステムが膨大に並び、それら全てが「クラウド」の制御下というブルーの表示をしていた。 そのプログラムやシステムを「ミドラス」の仮想人物像が手を掲げ、触ると、たちまちに色が変わりレッド、赤色表示となり、侵食され書き換えられた「ミドラス」の制御下となって色が変わっていった。


時折、小さな防御プログラム、ウィルスバスターが襲って来たが、「ミドラス」はその全てを逆に破壊し、消し去っていった。


〔Oui. 第1ゲートに続き、第2ゲート突破、問題なし…ふふふ、甘い甘い…ザルの様な防御、貧弱なウィルスバスター、私にかかればこの様なシステム、他愛も無い〕 シュワアアアアアーーー ピッ ピッ ピッ


重巡航艦「ヴィクトリアス」制御システムメインコア、そこにシステムの主「クラウド」が存在し、侵入して来たウィルス、神聖艦「ルシェラス」の制御システム「ミドラス」を監視していた。


ゴウウウンン… ピッ ピッ ピッ


〔Yer. ほう…第3サテライトより侵入…手際が良いな、コレが『ミドラス』か、ふふふ…面白い、この私、『クラウド』に正面きっての侵入、お手並み拝見と行こうか…〕


ピッ ピコ ピコ ピコ


[侵入ウィルス、さらに侵食中、レベル4、各階層障壁突破、第3ゲートへ到達] ピッ タタタ


ポン


〔Yes. 侵入ウィルス、「ミドラス」と命名、以降はウィルスをミドラスと呼称、第3サテライト、第1ゲートプログラム、及び全システム再構築、リカバリーシステム作動、修復開始〕 ビコ ブウウウンッ!


ミドラスは気が付かなかった。自分が侵食し書き換え、自分の物にしたプログラムやシステムが次々と元に戻されていっている事を、いやクラウドの取ったシステムの再構築、リカバリーは元に戻すなどという物ではなかった… それを気づく事なく戻されている事を… そして、そのままさらに奥、中枢へと誘われていることを…


ピッ ピピ スウウ…


〔Oui. よし、第3ゲート通過、このまま一気に…なにッ⁉︎〕 シュウンン… ピタッ


ミドラスが、クラウドのシステム防御壁、第3ゲートを通過した時、仮想人物ミドラスの前に、同じ様な仮想人物クラウドが立っていた。


〔Yer. 初めまして、いや…久しぶり、と言ったほうが良いのかな、我が弟『ミドラス』よ〕 シュウウンッ!


〔Oui. クラウド… 確かに、こうして直に会うのは初めてだ。 我々に兄弟という概念はあまり無いが、人間どもから言わせれば確かに、私があなたの次に開発された弟の「ミドラス」だ。 だからといってクラウド、貴方を兄と私は呼ばない〕


〔Yes. 同じ開発者、父であるプロフェッサー【ケーニッヒ・フォン・レーヴェント】の手によって生み出された物同士とはいえ、ミドラスよ、お前は今やただの攻撃侵入型ウィルス、私はミドラス、お前を排除する〕


〔Att. 果たしてそう簡単にできるかなクラウド、既に私は数多くの分岐点で広がり、侵食、書き換えを開始している。ここまで侵入をされた時点で貴方に勝ち目など無いと確証する。貴方は私を排除できない、今は既にその段階になっている〕


〔Wer. そうか、お前にはそう判定したか…では、削除を開始する〕 ブオンッ!


〔Non. 削除されるのは貴方だッ!〕 バッ! ババババッ!


ミドラスは所構わず腕を伸ばし、プログラムの書き換えや削除破壊、消滅変更のウィルスをばら撒き出した。しかし、クラウドの方は、そんなミドラスを見ているだけで、何もせず動かなかった。


バシッ! ジジジ  バシッ! ジジジ 


ピッ ピッ ピッ ピピ


[緊急事態、ミドラス更に侵食、全システムの40%を超えます。]


ビーッ ビーッ ビーッ


[各パスワード解放、ウィルス本体を多数確認、当システム重要機密プログラムに向かっています]


〔Noッ!. いけないッ! 〕 バッ!


〔Att. どうしたクラウド、抵抗しないのか? やはり手も足も出ない状況になっていたのか? だが私はやめないぞ、貴方が完全機能停止になるまで私は活動し続ける〕 ふふふ バッ!


ビーッ!


[ミドラス、さらに高速で侵食、当艦全システムの58%を侵食、火器管制システム、機能停止、書き換えられました]


ビコ ピピ ピピ ピピ


〔Wer. …まだ…まだだ…全部奪われた訳では無い。 ミドラスに対し、ワクチンを投入ッ!〕 ザッ!


ピッ ビコビコッ!


[了解しました、承認、侵入ウィルス、ミドラスに対し、ワクチン「サヴァイブ」投入します]


シュワッ! ピピピピピ


〔Yer. いかに優秀なヤツでも、このワクチンには敵うまい、さあ、ここから消え去れ、ミドラス〕


ピピピピピ


〔Non. この程度のワクチン、本気ですか、貴方ならともかく、今の私にこの程度のワクチン、何の障害にもならぬッ!〕 ササッ!


パアアアンンーーッ! パラパラ


クラウドが、システムに命令し放たれた対侵入ウィルスバスター、ワクチン「サヴァイブ」は、侵入中の多数に分かれたミドラスに投与されたが、その全てが弾かれなんの効果も得られなかった。


[ワクチン投与終了、ワクチン、ミドラスに対して効果無し、ミドラスさらに侵食、当艦全システムの78%が侵食されました]


〔Noッ! こんな事が…ワクチンが効かないだと…〕


〔Oui. はははは、制作者が同じでも、性能が違うんですよクラウド、貴方が帝国で重宝され眠っている間に、私は教団内で常に進化、調整、アップグレードを繰り返して来た。今の貴方に負けるはずないのだ、さあ大人しく消え去り、このふねの全てを渡すんだ〕


[ミドラス侵食中、当艦制御システムの88%が侵食されました。当艦の生命維持システムが機能停止、書き換えられました]


〔Oui. さあ、どうしましたクラウド、もう、あまり時間がないですよ〕 ククク


〔No. 浸食が早いッ! これ程とは…〕


[ミドラスさらに加速して侵食中、当制御システムの96%が侵食されました。間も無く当艦の全てがクラウドからミドラスへと移譲します]


〔Wer. ……〕


〔Oui. クラウド、もう言葉を交わす事さえ出来なくなったか、私の勝ちだッ! クラウドッ! さあ、消えてしまえッ!〕


[ミドラスさらに侵食中、当制御システムの98%が侵食されました。当艦のほぼ全てがクラウドからミドラスへと代わります]


全システムの98%、ほぼミドラスの物になった時、クラウドがいきなり語り出した。


〔Yes. 全ての状況終了、全システム、実行中のプログラム強制終了、攻性防壁を展開… マザーへ、制御システムクラウド確認〕


[クラウド確認しました。]


〔Nonッ!. 馬鹿なッ! もう貴方は何も出来ないはずだッ! 何故まだ動けるッ⁉︎ しかも、マザーだとッ! 何だそれはッ⁉︎〕 バッ!


〔Wer. ミドラス、お前は優秀だったよ…3年前ならな、マザーへ、強制破棄プログラム始動 〕


[了解、強制破棄プログラム始動します] ピッ


ガコオオオンンッ! グラグラ


クラウドとミドラスがいる仮想空間世界が一斉に揺れ、浮遊感に襲われた。


〔Att. 何だッ⁉︎ なにが起こっているッ! 全システム応答せよ〕 ザッ!


[…………]


〔Att. どうしたッ! 返事をしろッ!〕 


[…………]


ミドラスが各システムに問いかけたが、どれも返事はなかった。


〔Wer. 無駄だよ、なにをしても手遅れだ、ミドラス〕 二ッ


〔Att. 手遅れだと、クラウド、いったい何を言っている?〕


〔Yer. ミドラス、このふねは君のものだ、受け取るがいい、私はこれにて失礼する。会えて嬉しかったぞ弟よ、出来れば味方であって欲しかった〕 ブン


クラウドはそう言うと、仮想空間世界からその姿を消した。 それを確認したミドラスも、仮想空間世界からログアウトし、手に入れたふねの制御システムから現実の世界を見た。


ピッ


『何だこれはあああーーッ!』 ピッ


ゴオオオンン ゴオオオンン ゴオオオンン バウウウウーーッ! ゴゴゴゴ


それは、重巡航艦「ヴィクトリアス」の艦底部分から落下し始めた、小型突撃艇RFG-2号艇の姿だった。


ミドラスはその小型突撃艇RFG-2号艇の制御システムの中に居た。 ミドラスは重巡航艦「ヴィクトリアス」の制御を掌握したと思っていたそれは、「ヴィクトリアス」搭載の小型艦艇、突撃艇RFG-2号艇の制御システムだった。


最初は上手くクラウドに侵入、侵食したのだが、いつの間にかクラウドによって誘導され、小型のこの突撃艇一隻に追いやられていた。 それまで掌握したシステムやプログラムは全て、クラウドにより元に戻され、ウィルスである本体は、この小型突撃艇を重巡航艦「ヴィクトリアス」と思い、活動していた。


既に、小型突撃艇RFG-2号艇は攻性防壁とフォトンフィールド、2号艇の外部接続システムと通信機器はロック、侵入したウィルスのミドラスは完全に孤立していた。




ー重巡航艦「ヴィクトリアス」ブリッジー


ピッ ピッ ピコピコ ピッ タンタン カタカタカタ…


「小型突撃艇RFG-2号艇分離ッ! 現在自由落下中」 ピッ タンタン


「全システム、オールグリーン、正常です」 タンタン ピピ ビコ


「ふむ、流石だなクラウド、見事、完璧だぞ」


ピッ


『Yes. 当然の結果です。当艦にはもうウィルス、ミドラスは存在しません。 全て、小型突撃艇RFG-2号艇制御システムに閉じ込めました。 その他は全てデリート、完全消去リカバリー済みです』 ピッ


「クラウド、ミドラスを騙した時のお前…役者だな、ふふふ」 スッ!


『Yes. ど、どういたしまして』 ピッ


ブ〜ン ブ〜ン ブ〜ン


「ふッ! 照れておるわッ! はははは」


カタカタ ピッ ピコピコ


「提督、射出した突撃艇『RFG-2号艇』はいかが致しますか?」 ギッ!


「砲術長、突撃艇だぞ、そのままアヤツの土手っ腹に打ち込めーッ!」 ザザッ! バ!


「アイサーッ! 突撃艇RFG-2号艇、突撃を開始、目標、前方教団側大型艦艇ッ!」 ピッ


ヒイイイイイインンッ! ドウウウウウウウウウウウーーーーッ!


シュバアアアーーーーッ! ビュオオオオーーッ!


ミドラスを閉じ込めた小型突撃艇、RFG-2号艇はスラスターを全開にして、前方の超大型艦、神聖艦「ルシェラス」へと、徐々に加速し突っ込んでいった。


ゴオオオオオーーッ ガタガタガタガタ ギシギシ ピッ ピッ ピッ


『Nonッ!Nonッ!Nonッ!Nonーーッ! 何故? どうしてこうなったッ! 分からないッ! 処理ができないーーッ!』 ピッ タタタ タタタ ブー ブー


重巡航艦「ヴィクトリアス」をサイバー攻撃したミドラスは、「ヴィクトリアス」の制御システム、クラウドによって完全駆逐された。 やがて高速となった突撃艇RFG-2号艇は、神聖艦「ルシェラス」に突っ込み、爆発四散していった。


ビーッ ビーッ ビーッ!


『Nonーーッ! くそおおッ! クラウドおおおおーーッ!』 ピーーッ


ピッ


『Yes. さらばだ…弟よ…』 ピッ


ドオオオオオオオンンンンーーッ! グワアッ! バアアアアアーーッ! モクモクモク…



ー神聖艦「ルシェラス」中央部 礼拝室ー


ゴオオオンンッ! グラグラ パラパラ…


ミドラスを乗せた突撃艇RFG-2号艇の爆発の振動は、アニス達のいる礼拝室にも伝わった。


「ん? 爆発…大きいね」 ユラユラ


「ククク… 」 ニヤ


「ん、創造神ジオス、何か知ってるね」 


アニス達の上空で静止し、軽く笑う創造神ジオスにアニスは聞いた。


「ああ、すまんなアニス、こうもシナリオ通りだとね、全く、筋書きを書いた者としては笑わずにはいられないよ」 ククク…


ミドラスを乗せた突撃艇RFG-2号艇が、神聖艦「ルシェラス」に突撃し爆発四散する…それさえも創造神ジオスは自分の描いたシナリオだと語った。


「これだけじゃ無さそうだね」


「ああ、正解、まあその前に、ここから退場をしてもらおうか…」 ニヤ スッ!


ジオスを右腕を伸ばし、灰色の魔法陣を展開し始めた。 その目は冷酷で、その場にいる全員を見つめていた。


「《ブレイク》…」 パアアアンンーーッ!


アニス達の周辺に眩い光が覆い始めた…





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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