第221話 アニス対創造神ジオス
ー神聖艦「ルシェラス」ー
神聖艦「ルシェラス」、創造神ジオスが教皇という立場で命じ、フィラウス大司教が主となり、ガーナ教団の持てる力と膨大なお布施による資金を使い、長年、王城横の行政棟地下で建造された超巨大グランドシップ、艦種で言えばこの世界に存在しない『戦艦』と言う艦種に値するものだった。
全長は3776m 、全高1380m、まさしく戦艦、もしくは移動要塞艦と言っていいほどの巨大艦で、帝国大陸艦隊の最大艦、アクセル級2番艦の「ヴィクトリアス」でも、その大きさは、全長2480m、全高920mと、いかに神聖艦「ルシェラス」が巨大なのかがわかる。
これほどの巨艦になったのは、元々はこの艦自体が多くの信者や信徒を乗せ、一つの国として独立し、この世界を移動支配するのと、創造神ジオスが来たるアニスとの戦いを予想して造艦され、その殆どが創造神ジオスの創造の力と人々を操る力を使い建造されたものであった。
ドオオオオオオンンンンーーーッ! ブワッ! ドバアアアーーンンッ! ドドドドッ!
その巨艦、神聖艦「ルシェラス」の最下層、艦底部の底が大きな音を立て巨大な穴を開けた。一筋の光り輝く魔力の束が突き抜けて、地上に落ちていった。
ー神聖艦「ルシェラス」艦内、礼拝室ー
神聖艦「ルシェラス」の艦中央部の広い礼拝室、縦横130m、天井高25mもある大きく広い礼拝室で、アニスと創造神ジオスの2人がいた。 お互いが創造の力で創造、顕現した者同士が闘っていた…はずだった…
シュウウウウウウ… チリチリチリ…
「はッ あッ ああッ! ああああーーッ!」 ガクガクガク…
礼拝室の中央床部分に大きな穴が開き、そこには神槍「コルセスカ」を携えたアニスの創造、顕現した大男「グリースゼルダ」が立っていた。 創造神ジオスの創造、顕現した深紅の重装騎士「フェルメルト」は姿を消し、創造神ジオスはただ震え、言葉にならない声を上げていた。
『ムウウ…弱いッ! 主人殿、アレは何だったのですかな? まるで手応えが無い』 ビュンッ! ジャキンッ!
「わああ…(なにアレ…底抜けちゃったよ、ジオスの…『赤いフェル…』何だったっけ? 消えちゃった…と言うか…)グリースゼルダ、ちょっとやり過ぎだよ」 メッ!
『はッ! 申し訳ない』 ズウウッ!
創造神ジオスの創造、顕現した深紅の重装騎士、『紅蓮のフェルメルト』は決して弱い存在ではなかった。所持していた剣は炎の属性を持つ魔剣、鎧と盾には、対魔法防御の施された防具で、それに加えて、創造神ジオスの加護がその体全体に付与されていた。
騎士としては一級、創造神ジオスの加護を受けているため、重装甲の鎧を着ていても動きが素早く、剣での攻撃も凄まじい威力を持っていた。 フェルメルトの実力は、通常騎士の数倍、一個騎士団規模の戦力であった。
・
・
ー数分前…ー
「じゃあ行くよ」 サッ!
ズウウンッ! ズウウンッ!
「はッ あッ ああッ! ああああーーッ!」 ガクガクガク…
アニスが声をかけ右腕を振り下ろし、ジオスを示唆すると、アニスによって創造、顕現した「氷雷皇、グリースゼルダ」は、示唆された創造神ジオスに向かって歩き出した。 ジオスはそれを見て膝が震えたが、何とか耐え、いつもの状態に戻っていった。
「はッ… はは…何なんだそれはッ! ただデカイだけの野蛮人など創造しおってッ!」 ババッ!
『ムウウ…野蛮人とは我の事か?』 ギラッ! ズウウンッ! ズウウンッ!
「なッ⁉︎ バカなッ! 喋るだとッ⁉︎ 」 ザッ!
「ん? なにを言ってる? 創造、顕現した者の中でも高位の者は語るよ」 サッ
「そんな…私は一度も…」 ググッ
「まさか、創造、顕現した高位の者と話した事がない…いや、高位の者を創造した事がない…か、キミはまだまだだね」 ニコ
「き…貴様ああッ! 行けえッ!『フェルメルト』ッ! その大男を倒せッ!」 ババッ!
『ウオオーッ!』 バッ! ダンダンダンダンッ! ガチャガチャ! ボウッ!
自分を創造したジオスの命令を受け、深紅の重装騎士「フェルメルト」は、雄叫びをあげ、魔剣に付与されている炎の属性を発現させ、刃に炎を纏わせ、アニスの創造、顕現した「グリース・ゼルダ」に向かって駆け出していった。
「来たよ、『グリース・ゼルダ』お願いできる?」 ん?
『ウム、うおおおおーーッ!《ストライク.ランサーッ!》』 ブワッ! ビュンッ!
「なッ⁉︎」 バッ
「え?」 サッ
カッ! シュバアアアアアアアアアアーーーーッ! ドゴオオオオオオオオーーッ!
「うおおおッ!」 バアアアーーッ!
「わあッ!」 シュンッ! バアアアアアーーッ!
アニスによって創造、顕現された「グリース・ゼルダ」は、自分に向かって斬りかかってきた創造神ジオスの創造、顕現した深紅の重装騎士「フェルメルト」に対し槍術を使って突き刺した。 その威力は絶大で、「グリース・ゼルダ」の持つ神槍「コルセスカ」は光り輝き、「グリース・ゼルダ」が突き刺した瞬間、膨大な魔力風と雷が放たれ、一瞬で、深紅の重装騎士「フェルメルト」の姿が消え、その床を貫いていった。
ドオオオオオオンンンンーーーッ! バリバリバリッ! ビュオオオオーー!
「ぐわあああッ! フェ…フェルメルトーッ!」 ババッ! バザアアアーーッ!
「わあッ! グリース・ゼルダのばかああーッ!」 ババッ! バサバサバサッ! バザザーーッ!
神聖艦「ルシェラス」の艦中央部にある広い礼拝室室内は、暴風と衝撃波が吹き荒れ、眩い光が辺り一面を照らし、轟音が響いた。 やがてそれは静かに収まっていった。
ビュオオオオーー… バラバラ チリチリ ヒュウウウウウ……
『主人殿、終わりましたぞ』 ズウウ! ズンッ!
「ううう…グリース・ゼルダのバカちん……」 バサバサ ヒュウウウウウ…
アニス達の前には大きな穴が開き、創造神ジオスの創造、顕現した深紅の重装騎士「フェルメルト」の姿はどこにもなく、ただ、強めの風が吹くだけだった。
『ムウウ…弱いッ! 主人殿、アレは何だったのですかな? まるで手応えが無いッ!』 ビュンッ! ジャキン!
「……」 テクテク ザッ
『ム、主人殿、如何された?』 ズウウ
「わああ…(なにアレ…底抜けちゃったよ。ジオスの…『赤いフェル…』何だったっけ? 消えちゃったねえ…と言うか…)グリース・ゼルダ、ちょっとやり過ぎだよ」 メッ
『はッ! 申し訳ない』 ズウウ…
「相手は一騎だったでしょ? アレはちょっと…」 ふうう…
『ムウウ、主人殿、威力が大きすぎましたかな』 ジャキン シュウウウウウウ…
アニスと、「グリース・ゼルダ」が話をしていたその時、突如、創造神ジオスが2人を襲ってきた。
シュバッ!
「このおおッ! 《グランツ.カッツェーーッ!》」 ビュンッ! シュバアアアーーッ!
『ムッ⁉︎』 クルッ ザッ!
「んッ! 《グランツ.カッツェッ!》」 シュンッ ビュンッ! シュバアアアーーッ!
ギイイインンーーッ! パアアアアーーッ!
創造神ジオスがいきなりアニス達のすぐ真上に現れ、細身の剣で剣技を使って襲ってきた。「グリース・ゼルダ」がそれに気づき振り返った時、既にアニスはその場から飛び跳ね、創造神ジオスと全く同じ剣技、《グランツ.カッツェ》を放った。 2人の技は空中でぶつかり合い、その威力は相殺され消えていった。
シュンッ! ズザザザザザアアーーッ! チャキッ! ヒュウウウウウ…
クルクルッ トン スタッ チャキッ! ファササア〜…
「クッ さ…流石だな、アニスッ!」 グッ
「ん、どういたしまして」 ニコ ギュッ
創造神ジオスは勢いよく、アニスは軽やかに地上に降り、お互い相手に対して剣を構えた。
『ムウウ、死角からの不意打ち…流石は主人殿、よく動かれる…しかし、此奴はあまり褒められた者ではないな』 ググッ!
「ふんッ! 戦いにおいて有利な状況があれば仕掛けるは当然、不意打ちが卑怯と言うのは戦を知らん、軟弱な奴らの言う事だッ!」 グッ ザザッ!
パアアアンンッ! シュワッ!
創造神ジオスは左腕腕を伸ばし、手のひらを開いてその先に、深緑の魔法陣を出した。
『主人殿ッ!』 ズワッ!
「ん、わかってるよ」 ザッ! クルクルッ! チャキン…
グリース・ゼルダが警戒し、アニスを庇うように前に出た。アニスは、手に持っていた神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻し、創造神ジオスの攻撃に備えた。
「これならどうだッ! 《クリエイトッ!》《撃滅蓬莱ッ! グリオスガルダッ!》」 パアアアンンッ!
シュババババババッ! ババババッ! ザザザアアアーーッ!
『ギャアアアーーッ! ギャアアアーーッ!』 バササアアアーーッ!
新緑の魔法陣からは、緑の翼、長い尾羽、深紅の嘴、黄金の瞳、数十の大型の鳥が創造、顕現され飛び出して、アニス達の上空を飛び回り始めた。 「グリオスガルダ」、創造神ジオスの創造、顕現した緑の悪魔、自爆鳥であった。
「ん、やっかいな…」 グッ
『主人殿、ここは今一度この『グリース・ゼルダ』にお任せを!』 ズウウン
「ダメ」 サッ!
『主人殿ッ!』 ザザッ!
「『グリースゼルダ』」
『はッ!』 ズウウ…
「キミの力は大きすぎるんだ、だからダメ(って言うか、これ以上『グリース・ゼルダ』の大技を使ったら、この艦落ちちゃうよ)」 フリフリ…
「ふふふ… これだけでは無いぞッ!」 パアアアンンッ! シュワッ!
創造神ジオスは続け様に創造の力を使った。次はオレンジ色の魔法陣が現れた。
「え?」 サッ!
『ムウウッ!』 ザッ!
「はああッ!《クリエイトッ!》《風狼雷火ッ! ベルファストッ!》」 パアアアンンッ!
ドドドドドッ! ババババーーッ! ダダッ ダダッ ダダッ!
『ウオオオーーッ!』 ダダッ ダダッ!
今度は銀色の毛皮を纏い、統率の取れた動きでアニス達の前に大型の狼が多数現れた。
「ん〜? 『ベルファスト』?…」
「さあ、お前たち、我、創造神が命ずる! その者たちを消し去れッ!」 ババッ!
『『『『 ギャアアアーーッ! ギャアアアーーッ! 』』』』 バサバサッ!
『『『『 ウオオオオーーッ! 』』』』 ダダダダダッ!
『主人殿ッ!』 ザザッ!
「ん!グリースゼルダ、狼たちをお願い、私は鳥を落とす。いい、絶対に力のある槍技を使わないでね」 シュンッ!
『主人殿、分かり申した』 グルグルッ! ジャキンッ!
アニスはその場から一瞬で消え、グリースゼルダは神槍「コルセスカ」を振り回し、迫ってくる銀色の狼の群れに向かって構えた。
『さあ狼共ッ! 我が神槍「コルセスカ」のサビにしてくれようぞッ! かかって来いッ!』 ビュンッ!
『『『『 ウオオオオーーッ! 』』』』 ダダダダダッ! ババババーーッ!
・
・
『『 ギャアアアーーッ! ギャアアアーーッ! 』』 バザザザアアーーッ!
シュンッ! パッ!
「やあッ!」 ニコ
『『『『 ギャギャアアーーッ⁉︎ 』』』』 バザザザアアーーッ!
グリースゼルダの真上から自爆鳥、「グリオスガルダ」の群れが、急降下で襲ってきた時、彼らの前にいきなり白銀髪の少女、アニスが現れた。 急降下中の「グリオスガルダ」の群れは驚き、一瞬群れが乱れた。 その様子を創造神ジオスはにやけながら見ていた。
「ふッ アニスよ大男を捨てたか…だが、その「グリオスガルダ」、ただの鳥では無いぞ、共に消し去るがいい」 ニヤッ!
自爆鳥、「グリオスガルダ」 創造神ジオスのオリジナル創造鳥で、ただ創造主の命令に従い、相手に体当たりし自爆、破裂する鳥であった。 アニスは創造者故に、創造されたものを瞬時で見抜く事ができる。今回も、その鳥を見ただけで、どんな鳥か瞬時に把握していた。
『『『『 ギャギャアアーーッ! ギャギャアアーーッ! 』』』』 バサササーーッ!
一度は怯んだ「グリオスガルダ」の群れは、すぐに目標をグリースゼルダからアニスに切り替え、集団で襲ってきた。
「ん、キミ達は仰ぐ主人に恵まれなかったね…次はもっと自由に生きるといいよ…」 サッ!
『『『『 ギャギャアアーーッ! 』』』』 バサザアアアーーッ!
「《イグニ.グラン.バースト》」 キンッ!
ドゴオオオオオオオオーーーッ! シュバッ! ジャアアアアアーーーッ!
『『『『 ギャアアアーー………』』』』 シュバアアアアーー……
数十いた大型の鳥、「グリオスガルダ」は、アニスの魔法により、一瞬でその場から消えていった。 その勢いと威力は、先に創造神ジオスが開けた大穴を通って、艦外へと噴き出していった。
シュウウウウウウウ……
「クッ! 『グリオスガルダ』が…アニスめ、あの様な強力な魔法まで…」 ググッ
・
・
ドガアアーーッ! ダンッ バンッ!
『 キャンキャンッ! 』 ダダッダッ! ヨロ バタン シュウウウ…
『フンッ! どうした狼共、それだけか』 ブンブン ビュンッ!
『『『 グルルルルッ! 』』』 ザザッ!
アニスが自爆鳥の「グリオスガルダ」を全て消し去っていた頃、グリース・ゼルダは銀色の狼、「ベルファスト」の群れを蹴散らしていた。 既に半数が倒され、魔素還元され消えていった。
「くううッ! 何なんだあの大男はッ! 銀狼だぞッ! それも大型の魔狼族の、最強の銀狼だぞッ! それを…あの数を持ってしても倒せないとはッ! 何なんだいったいッ!」 ググッ!
『ヌンッ!』 ビュンッ! ズシャアアアアーーッ!
『ギャンッ!』 ドシャッ サササアアア…
やがて、全ての「ベルファスト」、銀狼達は倒され魔素還元され消えていった。
「グッ、おのれ、『ベルファスト』まで…あの大男、只者では無いな」 グッ
シュンッ! スタッ テクテク
「キミには分からないんだね」 ピタッ!
「アニスッ!」 ザッ ババッ!
「もう、諦めたらどうなの? ジオス、キミに勝ち目はないよ」 スッ
創造神ジオスのすぐ前に、アニスはいきなり現れ、ジオスはそれに驚き飛び退いた。
「はんッ! なにを言うと思えば、私を見ろッ! 何のダメージもない、つまり私は何ら貴様に負けていないのだッ!」 ザッ!
「ん、」 シュンッ!
パアアアアアンンンッ! ザンッ! シュバッ! ズバアアーーッ!
「うごおおおおーッ!」 ビュンッ! ドオオオンンーーッ! ガラガラガラ…
アニスはいきなり、予備動差なしに右腕を横薙ぎに払った。 その瞬間、離れていた場所にいた創造神ジオスの体に衝撃が走り、彼の体は再び吹っ飛び、礼拝室の壁にぶち当たり、瓦礫に埋もれてしまった。
「どう? もう一度言うよ、諦めて、私に御されてくれないかな?」 テクテク ザッ!
アニスはジオスの埋もれている場所まで歩き再度訪ねた。
ドオオオンンーーッ! ガバッ! バラバラバラ… カラカラ…
「誰がッ! うッ!… こ、これは…」 ズキッ! スッ
創造神ジオスは自分の腹部を見て顔を青ざめた。
「私が…神である私が斬られただとおおーーッ!」 ザワッ!
創造神ジオスの漆黒の服、長袖ジャケットとその下に着ている黒のシャツが右脇腹から左胸にかけ裂け、その下の身体にうっすらと一筋、赤い線が入り、一滴の赤い血が流れた。 ジオスは自分の腹に手を当て、その傷を治すと同時に流れ出た一滴の血をその掌に取りじっと見つめた。
「よ…よくも…」 ワナワナワナ…
「ん?…アレは…そうか……」 ふうう…
「よくもこの私に… 神である私に傷を… 神聖なる神の血を流させてくれたなああーーッ!」 バアアッ! ググッ! ダンッ!
シュバアアアアアアーーーッ! ビュウウウウーーッ! バサバサバサ
創造神ジオスは怒りに満ち、全身から魔力が溢れ出した。そんなジオスを見てもアニスは平然としており、ジオスに話しかけた。
「ジオス… キミは神じゃ無かったんだね」 フリフリ
「はあッ⁉︎ 何をふざけた事を… 貴様も見たであろう、私の能力をッ! 創造の力をッ! 創造神たる私の全てをッ!」 ババッ! シュバアアアアーーッ
「…ジオス…」
「私は神ッ! 全知全能の創造神ジオスだああーッ! 《クリエイトッ!》《聖天のグレイタス・イリアッ!》」 パアアアンンッ!
シュバッ! ズオオオオーーッ! バアアアアアアーーッ!
「んッ! これはッ!」 サッ!
『ヌウウ、主人殿ッ!』 ズウウ…
「はははッ! そうだアニスッ! 私こそが神ッ! 創造神ジオスだッ! さあ私の創造の力より顕現せよ!」 バババアアーーッ!
シュバッ! バアアアアンンンーーッ! ヒュウウウウウ… サササアアアーー…
「ん、見事、よく創造、顕現できたね」 うん
『あ、主人殿ッ! あ…あの者はッ!』 ピクッ!
シュワアアアアアーーー ズウウウンン バッ!
「おおおおッ! 出来たッ! 私にも出来たぞ高位の存在がッ! よくぞ現れた、我が僕、「グレイタス・イリア」よッ! 私がお前の創造主ッ! 創造神ジオスだッ!」 バッ!
そこに現れたのは正しく天界に住まう天使、背中に白い羽をいただき凛とした姿、膨大な魔力を帯び優しく微笑む女性天使がそこにいた。 彼女の天界天使順位は15位、大天使に最も近い存在で、亜神などは歯も立たぬ存在であった。
『貴方が私を創造し、この世界に顕現させた神ですか、我はニ級天使、聖天使位15位の「グレイタス・イリア」です。以後お見知り置きを…』 ザッ!
「おおッ! 早速だッ! 創造神ジオスが命ず、あの者達を討ち滅ぼし、この世界から消し去るのだッ!』 ババッ!
『はッ!』 ズワアッ! ザッ クルッ!
グレイタスイリアは向きを変え、アニス達の方を見た。
『ふむ…亜神「氷雷皇 グリース・ゼルダ」ではないか、お前も創造、顕現していたのだな』 ザッ
『ヌウウ…グ、グレイタス・イリア様、会えて恐縮です』 ズウウ うう…
「なにッ! 亜神だとッ! あの大男、まがいなりにも神であったか、道理で強いはず、「ベルファスト」など、なんの役にも立たんわけだッ!」 ギュウッ
同じ創造、顕現した者同士ではあるが、高異次元世界では見知った者同士、そこではグレイタスイリアは最高位の存在に位置し、彼女に比べたら亜神であるグリースゼルダは下位の存在で、力の差も大きく有り、彼女達高位の存在には頭が上がらなかった。
『さて、我が主人の命令だ、グリース・ゼルダよ、貴様を高位次元世界に戻してやろう!』 シュワンッ チャキ!
『うう…グレイタス・イリア様…』 ザッ ジャキンッ!
二級天使「グレイタス・イリア」は、腰に携えていた剣を抜き、「グリース・ゼルダ」に向け構え、「グリースゼルダ」もまた、神槍「コルセスカ」を「グレイタス・イリア」に向け構えた。
『ふむ、心意気は買おう、だが無駄な事だ、貴様はただの一度も私に勝てた試しがないではないか、素直にこの世界より立ち去り、元の世界、高異次元世界に帰るが良いッ!』 ググッ
『ムウウ…』 ググッ
グレイタス・イリアとグリース・ゼルダが武器を構え対峙していた時、アニスが声をかけた。
「イリアッ! 剣を納めよッ!」 バッ!
『んん? なんだこの小娘は、この私を略称で呼ぶとは不遜な奴め、主人の命だ、貴様を先に無に帰そう』 スッ ズシャ ズシャ ズシャ シュキン!
二級天使のグレイタス・イリアは、自分の名を略称で呼ばれ、その呼んだアニスに向け歩き出した。
『「グレイタス・イリア」様ッ! お待ちをッ! やるのであればこの我をッ! 我が主人殿を見逃してはくれまいか?』 ズウウ
『ならんッ! この小娘は我を侮辱したのだ、主人の命でもある。どのみち、貴様ともども滅するのだ、順番が入れ替わっただけの事、そこで大人しく見ておるがいい』 ズシャ ズシャ
「ありがとうグリース・ゼルダ、私は大丈夫だからね」 ニコ
『主人殿…(申し訳ない…)」 ズン!
『ふふふ…小娘、いい度胸だ、我は二級天使、『グレイタス・イリア』、故あって貴様の存在を消させてもらう事となった、名はなんと?』 ズシャ ズシャ ズシャ
「私はアニス、イリアは相変わらず気の強い子だ…まあ、この姿では仕方がない…か」 ふむ…
『ヌッ! まだ言うかッ! 私の名は『グレイタス・イリア』だ! 略称で呼ぶで無いッ! 呼んでいいのはあの方々だけだッ!』 ググッ!
「ん? ああ、シュウゴと6大女神、アリシア達の事か?」 サッ
『なッ⁉︎ 小娘、貴様は一体何者だッ! 一介の人間では無いなッ! なぜ、あの方々の名を知っているッ! 正体を表せッ!』 ババッ
「分からないか…」 やれやれ…
『グリース・ゼルダよ、この小娘は一体なんだッ⁉︎ 貴様の主人であろうッ! 何者だッ!』 ザッ!
『いや…そのう、我も今さっき創造、顕現したので分かりません ただ…』
『ただ、なんだ、答えよ!』 バッ!
『亜神である我を創造し、この世界に顕現したのです。かなり力の主人かと…』
『ふむ、まあ良い、小娘覚悟はいいか?』 チャキッ!
「ん、仕方が無い、イリアッ! 高異次元世界に帰ったら、『イシュタル』と『オベロン』に宜しく言っておいてね」 サッ! スウ〜 チャキンッ!
アニスはグレイタス・イリアにそう言って、腰を少し下げ、腰裏に有る神器「アヴァロン」を抜き構えた。
ギンッ! ヒイイイインン…
『なッ! なぜその名をッ! しかもあの武器はッ! (バカなッ! アレは全ての世界にただ一つしか存在しない神器、ミドルダガーの『アヴァロン』ッ! なぜ、こんな小娘が、アレを持っているッ! アレを所持できるのはたしか…)」 ザッ
「いくよ、イリア、ちゃんと避けてね」 ググッ! キイイインッ!
『ふッ! 生意気な…』 ググッ! シュイイイイインンッ!
「『 神級剣技ッ! 《ヴァーゼル.グラン.リッパーッ!》 』」 キュインッ!
シュバアアアアアアーーーッ! ギイイイインンンンーーッ!
『なッ⁉︎ バカなッ! 私と同じ剣技をッ!』 グッ! バババアアアアアーーッ!
「ふふふ、『吊り目のイリア』、前にも言ったよ、左が下がってるって」 ニコ シュンッ!
『あああああーーーッ! 貴女様はあああーーッ!』 ビシッ! ドオオオオオオーーッ!
「ん、気付いた? イリア?《イージス.エッジッ!》」 ビュンッ! ビシイッ!
『きゃああああーーッ!』 バシイイイッ! ドオオオオオオーーッ!
ブワアアッ! ドゴオオオオオオオオンンッ! バラバラバラ パラパラ…
シュンッ! トン スタッ! クルクルクルッ チャキンッ! ファササア〜…
二級天使のグレイタス・イリアは、アニスの2段剣技の攻撃を受け、創造神ジオスのようにその衝撃波で吹き飛び、礼拝室の壁に当たり、壁を崩しながら倒れた。 アニスは何事も無く軽やかに立ち、青みがかった銀髪と純白のスカートを靡かせながら、神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻し、倒れているグレイタスイリアに近づいていった。
「ん、イリア、大丈夫ですか?」 テクテク ザッ! ニコ
相手を気遣う、いつもの調子のアニスがそこにいた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。