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第220話 戦乱の帝都 アニスとジオス

ー帝都上空 重巡航艦「ヴィクトリアス」ー


シュワアアアアアーーー  ドオオオオンンッ!


ババババッ! ババババッ! シュンシュンッ! ドンドンドンッ!


「右舷ッ! 敵ブレードナイト接近ッ! 迎撃ッ!」 ピッ ピコ


「前方第2戦闘空域、戦闘終了ッ! スバル、インデア各中隊帰還しますッ! 両中隊、損耗率37%ッ!」 ビコビコ


「敵艦隊接近ッ! チャートNo.01ッ! マーク03 イエロー28チャーリーッ! 速度38ノット! 巡航艦を先頭に3隻ッ! 王城に向け突っ込んできますッ!」 ビコビコ ッ! ピピッ!


「王城には近づかせるなッ! 主砲ッ! 撃ち方用意ッ!」 ババッ!


「アイサーッ! 前部甲板ッ! 主砲転回ッ! 発射体制」 ピッ カチカチ タンタン ピコ


ガコンッ! グイイイイインン ゴオンゴオンゴオン ゴオオンッ!


マイヤー国選辺境侯爵軍艦隊旗艦、重巡航艦「ヴィクトリアス」の前部甲板にある、主砲の58.8cm主砲が一斉に向きを変え、射角の取れる三連装5基15門の大型フォトン砲が、全速で突き進んで来る教団側無人艦隊を照準に捕らえた。


ピ ピピピ ビコビコ ピッ!


「主砲ッ 1番から5番、目標を自動追尾、照準固定ッ!」 ビコッ!


「閣下…」


「うむ、一撃で仕留めよッ! 全砲門ッ 接近中の敵艦に向け砲撃開始いいッ!」 ババッ!


「アイサーッ! 全砲門撃ち方始めッ!」 ピッ


ヒイイイイインンンッ! ドドドドオオオオンンンーーッ!


「全砲門発射ッ! 着弾まで後5秒ッ!」 ピッ ビコビコッ!


ピッ ピッ ピッ ピッ ビコビコッ!


「3、2、1、今ッ!」 ビコッ!


ドゴオオオオンンーーッ! グワアアーーッ! ドオオオオンンッ!


「敵艦隊に命中ッ! 敵巡航艦大破沈黙ッ! 駆逐艦は轟沈ッ!」 ピッ!


マイヤー提督に指示通り、接近中の教団側無人艦隊は重巡航艦「ヴィクトリアス」の一撃の元、成すすべもなく消えていった。


ビーーーーーッ!


「左舷方向、チャートNo.01 マーク12 グリーン16アルファッ! 友軍艦艇を確認ッ!」 ビコッ! タンタン ピッ!


「コース1.008 マーク12 距離3800、速度27ノット 第13警務艦隊ッ! 旗艦、軽空母『ロッテ』以下5隻です」 ピッ


「むッ! 『ロッテ』に通信ッ! 『周囲警戒を厳とせよ! 敵は通常にあらず、直ちにブレードナイトを発艦し空中警戒せよ』 となッ!」 バッ!


「アイサーッ!」 ピッ


「こちらマイヤー艦隊旗艦『ヴィクトリアス』、接近中の第13警務艦隊旗艦、『ロッテ』にコンタクト」 ピッ


カチャカチャ ピッ ピピ タンタン ビコビコ



アトランティア帝国、帝都アダム、その上空と王城付近は、帝国大陸艦隊とガーナ新教団の無人艦隊及び、両者のブレードナイト部隊で、戦場と化していた。帝都全域も惨憺たるもので、突如、異常をきたした地上にある帝都防衛ドローンが帝都内の人間を攻撃し始め、帝都内防衛隊や憲兵隊と交戦、市街戦となり一般人はいち早く、地下シュルターへと避難をし、地上の建物には人っ子1人いなかった。 


これもミドラスによる、システムの介入で、帝都内に存在する防衛ドローンが一斉に、帝都の民を攻撃、殺害し始めたのだった。



ー帝都アダム 城下町ー


ブ〜ン ブ〜ン ピッ ピッ ビコッ! ヒュウンンッ!


『人間ヲ粛清 人間ヲ粛清 人間ヲ粛清』 ピッ ピッ ピッ


ザッ! 


「いたぞッ! 暴走ドローンだッ!」 ザッ!


「隊長ッ!」 グッ!


「ベルト少尉、お前は第2小隊を連れて右に回れッ! 準備出来次第、アイツを仕留めるッ!」 バッ


「了解しましたッ! いくぞッ!」 サッ!


「「「「 了解ッ! 」」」」 ザッ ダダダダダッ!


1機の防衛ドローンを繁華街で見つけたその部隊は、帝都防衛隊の第18防衛中隊だった。 隊長の【ゼント・フォン・デルマーク】大尉は、今回暴走して、帝都民を攻撃、殺害し始めた防衛ドローンを見つけては破壊、処理をして回っていた。


ピッ


『隊長、第2小隊、位置につきました』 ピッ


「よし、フォーメーションッ! タンゴ タンゴ エコー3ッ! いくぞッ!」 ババッ!


ゼント隊長を先頭に、第18防衛中隊、第1小隊の5人がフォトンライフルを構え、暴走している帝都防衛ドローンの前に出た。


「撃てええッ!」 ザッ!


ドバババババババババーーッ! 


ピッ ピピイイーーッ!


ガンッ ガンッ! ドンッ! バンバンバンッ! チュインッ! ギャンッ ギュンッ!


『ビッ! ビビッ!』 グラグラッ! バンッ! パンパンッ!


第1小隊のフォトンライフルの激しい銃撃で、暴走した防衛ドローンはその体を、銃撃の衝撃で左右に振られていた。


ババババッ! ガンガンッ! ビシッ! ギンッ! グラグラ


「うおおおおーーッ! 今だッ!ベルトッ!」 ザッ! ドババババババババーーッ!


ピッ 


『了解ッ! いくぞッ!』 ザッ! ダダダッ! ビシュウウーーッ! ヴオンッ!


『『『 ワアアアアーーッ! 』』』 ダダダッ! ビシュウウーーッ! ヴオヴオンッ!


第1小隊の激しい銃撃の中、第2小隊は隙を突いて小型のライトニングセイバーを起動し、暴走防衛ドローンに突っ込んでいった。 ブレードライナーの持つライトニングセイバーと違い、彼ら帝都防衛隊や憲兵隊が持つそれは、長さが短く威力も小さい。 だが、接近出来れば、防衛ドローンの様な装甲を直に貫き、引き裂くことは出来た。


フォトンライフルでは、防衛ドローンの装甲とフォトンフィールドによって大したダメージは与えないが、ライトニングセイバーによる接近直接攻撃は、中枢部を切り裂き、防衛ドローン本体を破壊し行動停止する事は出来た。 帝都防衛隊は囮を使い、暴走防衛ドローンを引きつけ、その間に別働隊が近づき中枢部を断つ、この戦術でこれ迄に数体の暴走防衛ドローンを倒してきたのだった。


「銃撃やめッ! ベルトッ!」 サッ!


バッ! ダダダダダッ! ザッ! ビシュウウウーーッ! ブンッ!


「うおおおおーーッ!」 ヴオンッ! ビュッ! ドシュウウーーッ!


ピッ! ビコビコッ! ビビビビーーッ!


『ビイイイイイーーーッ!』 ガタガタガタ ピッ ビビビッ! ガチャガチャガチャッ!


「「「 わああーッ! 」」」 ヴアンッ! ザシュッ! ドシュッ! ジジジッ!


ガタガタ ジジッ! ボンッ! パンッ! ガガッ! ジジジ…


『ビッ! ビビビビッ! ガガ…ビ…』 ガクガクガク 


「よしッ! 下がれッ!」 バッ! ザザッ! 


「「「  はッ! 」」」 ババババッ! ザザアーーッ!


ジジジッ! ドオオオオンンッ! ガシャンッ! ジジ ジジジ… プシュウウウ…


第2小隊全員のライトニングセイバー攻撃を受け、暴走防衛ドローンは、中枢を始め、至る所を破壊され機能を停止して破裂しながら地面に崩れ落ち動かなくなった。


「よしッ! 良くやったぞ! ベルト少尉」 サッ!


「はッ! 我が中隊、全員の戦果です!」 サッ!


「ふッ そうだな…」 ジャキ…


ドガアアアアアアーーーンン! ガラガラガラ ドオオオオンンッ!


「むッ! あっちかッ!」 サッ!


「「「 隊長ッ! 」」」 ババッ!


「よしッ! 行くぞッ!」 ダダダッ!


「「「 はッ! 」」」 ザザッ! ダダダッ!


第18防衛中隊は、他に存在している暴走防衛ドローンに向かって駆け出していった。 この様な帝都防衛隊が各所に存在し、彼らの活躍によって、帝都内は破壊されつつも沈静化に向かっていった。

          ・

          ・

ー帝都アダム 王城ー


皇帝【ベルディア・ヴェル・アトランティア】は、娘である【レイラ・ヴァン・クリシュナ】と共に王城に残り、謁見の間にある掃き出しの窓からテラスへと出て、戦場と化し、破壊されていく帝都やその上空の惨状など、事の顛末を見守っていた。


ヒュウウウウンン… ドオオオオンンッ! ボウンッ! メラメラ パチパチ


パンパンパンッ! ダダダッ! ダダダッ! ドガアアンンンーーッ!


ドオオオオンンッ! ガラガラガラ モクモク…


「この帝国が、いや帝都がこんな事になるとはのう…全てわしの責任だな…」 ジッ


「ちち…いえ、皇帝陛下、これは不可抗力です。誰も…いかなる者も、地下にあの様なものが存在し、今に至るまでの状況を予期するなど出来ません。 陛下の責任などではありませんッ!」 サッ!


娘であるレイラは、父、皇帝陛下に頭を下げ慰めた。


「のうレイラよ…」 スッ


「はッ!」 サッ


「もしかすると、わしはこの帝国最後の皇帝となるやもしれんな…」 フフフ…


「陛下ッ! 何をッ!」 バッ! ザザッ!


「まあ、慌てるでないレイラよ、わしには分かるのだ…この帝都周辺に漂うこの異様な感じ…あの様な巨大なグランドシップに大量のブレードナイト、そして大司教の裏切り…恐らく、神が…この世界の神が、この帝都に降臨し、我らに神罰を与えんとしているのかもしれんな…」 ササッ! クルッ ザッ!


ビュオオオオオーーッ! ヴオオオオオーーッ! ガンガンバンッ! シュバアアアーーッ!


ドガアアアアアアーーーンンッ! ビュワアアアーーッ! バサバサバサ…


皇帝のベルディアがテラスで振り向きざまに、レイラにそう言った時、彼の後ろを帝国軍のブレードナイト「アウシュレッザ」が教団側無人ブレードナイト「ファウストFAV22」を追いかけ、通り過ぎざまに撃墜していき、その爆発の爆風が、皇帝の羽織っていたローブやレイラの美しい髪をを激しくはためかせた。


「陛下…」 バサバサ…


「感じるのだ、あの巨大なふねの中から…」 クルッ! ザッ!


王城より離れたところ、空中に浮かぶ巨大なグランドシップを皇帝ベルディアは再び見て何かを感じていた。尋常ならざる巨大な何かを… その時、神聖艦「ルシェラス」の上部を貫き、遙か天空に向け巨大な炎の柱が昇っていった。 それは眩い光を発しながら辺り一面を照らし昇っていった。


ドオオオオオオーーッ! ブオオオオオオオオーーッ! ゴオオオオオオオオオンンーーッ!


「ほうッ!あの力…凄まじいのう…レイラよ、あれが人の身では成す事が出来ない力であることくらいわかるであろう? わしの…いや、この国の命運はあの者にかかっておるやも知れんな……(『お爺ちゃん』 ニコ)…フフフ、あの者、アニスにな…」 ニコ


「陛下…(お願い、アニスちゃん…この国を守って…)」 グッ


アトランティア帝国皇帝、【ベルディア・ヴェル・アトランティア】と、その娘【レイラ・ヴァン・クリシュナ】の2人は、神聖艦「ルシェラス」の装甲を軽々と突き破っていく、巨大な炎の柱を見て、その中にいるであろう存在、アニスに自分達とこの国の全てを委ねた。

          ・

          ・

ー同時刻、帝都上空 重巡航艦「ヴィクトリアス」ー


ビーーーーーッ! ポンッ!


『War. 警告、前方超巨大艦に異常魔力反応を感知、衝撃に備えて下さい』 ピッ


「何ッ!」  バッ!


ドオオオオオオーーーッ! ゴオオオオオオオオオーーッ!


「「「「「 うわあああーーッ! 」」」」」 ビーッ ビーッ ビーッ! グラグラッ!


「ぬううッ!」 ググッ!


重巡航艦「ヴィクトリアス」の前方に位置する超大型艦、神聖艦「ルシェラス」の上部から、天に向かって膨大な熱量と輝きを持った炎の柱が昇っていった。 その衝撃波が周りを襲い、「ヴィクトリアス」の艦体を揺らした。


「前方ッ! 超大型艦艦内より膨大な熱量を感知ッ! 天頂方向へ放たれましたッ! 詳細は不明ッ! わああーッ!」 ビーッ ビーッ ビーッ! ゴオオッゴンッ! グラグラ


ビリビリ グラグラグラ…


「クッ! しっかりせんかあーッ! 『クラウドッ!』」 カチカチ ピッ ザッ!


ポン


『Yes. 』 ピッ


「アレが何かわかるかッ⁉︎」 サッ!


『Yes. 前方に位置する超大型艦艇の中央、そこに急激な魔力増大反応を感知、一気に上方、天頂方向に向かって放たれました。 計測魔力出力 1340メルガノン 当艦『ヴィクトリアス』の艦首砲、『フォトンブラスター』とほぼ同等の威力です』 ピッ


「「「「 何いいいーーッ! 」」」」 ザワッ!


重巡航艦「ヴィクトリアス」の管理支援システムである『クラウド』の返答を聞き、ブリッジ要員の全員が声を上げ驚いていた。


「むう…クラウド、ヤツらは『フォトンブラスター』を艦内で撃ったと言うのか⁉︎」


『Yes. 魔力出力量と熱量、観測できた破壊状況を見て間違い無いと判断します』 ピッ


「そんな事をして、あの艦の乗員は無事なのか?」


『No. あの威力です、恐らく艦内は人が生存できる環境では無いと思います』 ピッ


「では奴らは…中にいる者は…」


『Yes. 生存者は0、今は、完全無人の自動操縦艦となってます』 ピッ


「あの巨大なふねが無人艦…うおッ!」 ガクンッ! ゴオオオンンッ!


バウウウウーーッ! ゴゴゴゴ ゴンゴン ゴオオーーッ!


マイヤー提督が重巡航艦「ヴィクトリアス」の管理支援システム、「クラウド」と話していた時、重巡航艦「ヴィクトリアス」が急制動をかけ停止した。


ビーッ! 


「何事だッ!」 バッ


「分かりませんッ! 艦が自動的に急制動をかけ停止しましたッ!」 ピッ ピコピコ


「機関停止ッ! 制動ッ! スラスター、1番から18番まで最大噴射ッ! 艦ッ停止しますッ!」 ピッ ピッ ピピ


「『クラウド』どうしたッ!」 カチカチ ピッ


ピッ ポン


『Yes. 当艦に不正アクセスを確認、サイバー攻撃です。ウィルスが侵入しました。これより当艦は手動操作に切り替え、私はウィルスに対処します』 ピッ


「了解した『クラウド』、さっさと片付けろ」


『Yes. この『クラウド』に侵入した事を後悔させましょう』 ピッ


「ふふ…徹底的になッ!」 ニヤ


『Yes. 』 ピッ ピュウンン…


重巡航艦「ヴィクトリアス」はその場でしばらく停止していた。

          ・

          ・

          ・

ー神聖艦「ルシェラス」上空ー


シュバアアアーーッ! ヒイイイイイイーーッ


神聖艦「ルシェラス」に向け、レオハルト中佐の操縦するブレードナイト「ウルグスパイアー」が、スラスターを全開にして接近していた。


ヒイイイイイイーーッ ピッ ピッ ビコビコ


「アニスッ! 無事でいろよッ! おい『ウルグスパイアーッ!』」 グッ!


ピッ 


『ハイ、マスター』ピッ


「今すぐ外部とのラインを切れッ!」


『外部トノデスカ?』 ピッ


「そうだ、モデムもルーターもあと外部通信系は全てカットだッ!」 


『ソレデハ友軍ノ機体ヤ艦隊トノ連携ヤ連絡ガ出来ナクナリマスガ宜シイデスカ?』 ピッ


「ああ、構わねえよッ! 奴は機体をハッキングして操縦を奪うんだ! それを防ぐためだッ!」


『了解シマシタ』 ピッ ピポッ!


ピュウウンンッ! ピピピ ピッ!


『全テノ通信系ヲ、オフライン、当機ハ「スタンドアローン」状態トナリマシタ』 ピッ


「よしッ! じゃあ行くぜッ! あの発艦用ハッチだッ!」 グイッ! ギュウッ!


バウウウウーーッ! ギュワアアーーッ! ブオンッ!


レオハルト中佐のブレードナイト「ウルグスパイアー」は、前方の神聖艦「ルシェラス」の艦体中央部にある、ブレードナイト発着艦用デッキのハッチが解放され始めたのを見て、そこに向かって突進していった。当然、ハッチより、2機の教団側無人ブレードナイトが発艦してきた。


「うおおおおーーッ! 邪魔だああーーッ!」 ピピピ ビコッ! カチッ! ピッ


ヴオオオオオオオーーーッ!  シュババババババーッ!


ドンッ ガンガンッ! バアアアーーッ! ドオオンッ!


発艦したての2機のブレードナイトに向け、レオハルト中佐は、「ウルグスパイアー」の標準装備、12.7mmフォトンライフル弾を撃ち込んでいった。毎秒80発、容赦ないフォトン弾が無人ブレードナイトに吸い込まれ、あっという間に2機は火を吹き、地上へと落ちていった。


「よっしゃあーーッ! このままあそこに突っ込むッ!」 グイッ! ギュウッ!


バウウウウーーーーッ! シュギュワアアアアーーッ!


レオハルト中佐は、瞬く間に2機のブレードナイトを撃墜し、その勢いのまま、「ウルグスパイアー」を神聖艦「ルシェラス」のブレードナイト発艦デッキへと突っ込んでいった。

          ・

          ・

          ・

ー神聖艦「ルシェラス」 中央部礼拝室ー


ドオオオオオオオオオーー………


シュバッ! ヒイイイイイインン…イン…イン…イン……


ヒュウウウウウ… ドロドロ ボコボコ チリッ チリチリ…


「ハアハアハア……ふう…ふッ! クククッ…ああっははははははーーーッ!」 ザッ!


神聖艦「ルシェラス」の中央部にあった大空間、礼拝室のそこは半分ほどが灼熱の溶岩の様に溶け、真っ赤に焼け爛れ大穴が空き、その穴の先には「ルシェラス」の何層もの壁と装甲を突き破って、青い大空が見えていた。


つい先ほどまで、そこには青みがかった銀髪と、白を基調としたインナーにジャケット、膝丈のスカートを翻していた少女、アニスが立っていた場所だったが、今は床や壁、天井などが真っ赤に溶け、高熱を帯びた空間へと変わっていた。そこにはアニスの姿はなく、チリと熱風が渦を巻いて、大穴から艦外へと噴き出ていた。


ザッ ザッ ザッ ババッ!


「ついに…ついにやったぞッ! 私はッ! 私はあのアニスを消し去ったのだッ! 私の知る全ての者が、全ての神々がッ 『逆らってはいけない』『敵対してはいけない』『怒らせてはいけない』そう言われ続けた存在ッ! その存在であるアニスをッ! 私は消し去ったのだッ! もう、恐れるものは何もないッ!」 ババッ!


バッ! ババッ! サッ! クルッ! ババッ!


ジオスは礼拝室の全てを見渡し、アニスの存在がないか確認をした。


「奴の気配がない…ふふ…これでこの世界は私のものだああーーッ!」 ババッ!


黒を基調とした服を身に纏った青年、創造神ジオスは、アニスの気配がないことを確認し、その場で勝利の歓喜を挙げた。 と、その時…


『ちがうよ』 


「なッ⁉︎ 」 ババッ! 


歓喜に震えていた創造神ジオスの耳元に、あの涼やかな少女の声、アニスの声が聞こえた。


ザッ! サッ! バッ! ササッ! ババッ! 


創造神ジオスはあたりを隈なく見渡し、どこから声が聞こえているのか探った。しかし、アニスの姿はどこにもなかった。


「バカな…気配はいぞッ! ではさっきのは…」 グッ!


創造神ジオスが先程の声の主を探している最中にまた、耳元にあの声が聞こえてきた。


『この世界、君にはあげないよ』


「うわあああッ! バカなッ! そんなはずはないッ!」 シュキンッ! ビュン ビュビュンッ!


存在が確認できない者の声を聞き、創造神ジオスは腰に装備していた細身の剣を抜き振り回した。


「くそッ! 貴様は消滅したはずだッ! 消えたんだッ! いるはずがないッ! いるのなら出てこいッ! どこだッ! どこにいるッ!」 ビュンビュンッ!


創造神ジオスが力の限り、剣を振り回したその背後に、突然、彼女は現れた。


「ここだよ」 シュンッ! ババッ! ファサッ! シュキンッ!


「なッ⁉︎」 バッ! クルッ!


「ん、《イージス.エッジッ!》」 キュンッ! シュバアアアーーッ!


周りを仕切に探り、細身の剣を振り回していた創造神ジオスのその背後に、アニスはその青みがかった銀髪と純白のスカートを靡かせながら突如として現れ、腰に装備していた神器「アヴァロン」を抜き、ジオスが振り向いたその瞬間、彼女は剣技を放った。


「うおおおおおーーッ!」 ババッ ザンッ! バアアアアーーッ!


ビュンッ! ドガアアーーンッ! ガラガラ パラパラ カラ…モヤモヤ…


アニスの剣技を受け、創造神ジオスはその勢いで、礼拝室の壁まで吹き飛び、壁を崩しながら倒れた。そんなジオスの元へ、アニスは神器「アヴァロン」を腰の鞘に戻しその近くまでやって来た。


テクテク ピタッ クルクルッ チャキン バサバサ ヒュウウウウウ…


「ん、死んだかな?」 ジイイ…


ガバッ! バババアアーッ! ザアアーーッ!


「死ぬかああーーッ!」 ダンッ! バアアアーーッ!


「うわあッ! あはは…うん、無事だったね」 ニコ


創造神ジオスは瓦礫の中から勢いよく立ち上がった、それを見てアニスは呑気に笑顔で見ていた。


「き、貴様…どうやってあの状態から逃げ果せたッ⁉︎ アレは神をも封じる結界ッ! 私のオリジナル結界なのだぞッ! それを…」 グググッ!


「ん〜、出れたね、何処かに穴があったんじゃないか?」


「ふざけるなッ!」 バッ! シュインッ! ババババッ!


「んッ!」 パアアアンン シュパッ! ガンガンッ! ギンッ!


創造神ジオスの咄嗟の無詠唱攻撃魔法も、アニスは同じく無詠唱防御魔法で、その攻撃の全てを弾いた。


シュウウウウウウ…


「くそッ! 何故だッ! 私は創造神だぞッ! 神なんだッ! 何故同じ神なのに、こいつにッ! アニスに勝てないのだあーーッ!」 バアアアーーッ!


創造神ジオスは、自分の持てる最高の攻撃を出し続けているが、目の前の相手、アニスに何らダメージを与えることができず苛立っていた。


「ん? 同じ? きみと私がか?」 うん?


「そうだッ! 6大女神達の話を私は聞いて知っているぞッ!」 バッ!


「え〜…あの子達、何言ってたんだろ?」 うう…


6大女神、それは、創造神ジオスの素の姿、「個体No.000Zfar01」を作った女神たちの事である。遠い昔、まだ、偽世界「アーク」が誕生するずっと以前、神界世界で彼は生まれた。6大女神たちの力を全て注がれてできた彼は、6大女神たちの尊敬する者の姿と能力を真似て作りだされたのだった。


彼女たち、6大女神たちの尊敬する者とは、神界世界を作り、彼女たちを生み出し創造してくれた存在、そう、アニスの本当の姿、【アニライトス・ディオ・ジオス】、創造者の姿であった。



ー遥か昔、神界世界ー


「できたあッ! 出来たわよアリシア姉様ッ!」 サッ!


「まあ、エレンディア。よく頑張ったわね」 ニコ ナデナデ


「えへへ、ジオス様を真似て作ってみたんです」 ウニウニ


「へえ、エレンディアにしてはよく出来てるじゃねえか」 ニイ


「シンシア姉さんッ! 私にしてはってどう言う意味ですかッ!」 ガアッ!


「別にい、だがもちっと力が足んねえな、俺がちょっと注いでやるよ」 サッ! シュワッ!


「あッ じゃあ私もッ!」 サッ シュワッ!


「ダイアナまでッ!」 バッ


「あらあら、では私も入れるわね」 ニコ サッ シュワッ!


「わたしも…その、入れてみたいです。 えいッ!」 サッ! シュワッ!


「アリシア姉様ッ!フェリシアちゃんまでッ!」 ババッ!


「全く、私だけ除け者は許されませんわッ!」 サッ! シュワッ!


「ああ〜、一番常識のあるバランシア姉さんまで、うう…」


パアアアアアアアーーーッ!


「「「「「 来た来た来たあーーッ! 」」」」」 わあああッ!


「わああんッ! どうにでもなれええッ!」 サッ シュワッ! バッ!


パアアアアアアアーーーンッ! チリチリチリ


「「「「「 おおおおーーッ! 凄いよこれ、凄いのが出来たあーーッ!」」」」」


「ううう…本当だ、最強じゃない、まるで創造神、そう、ジオス様みたい…」

          ・

          ・

          ・

「私はあの時、6大女神たちから誕生したときに聞いたのだッ!」 バッ!


「ん?」


「私は貴様と同じ力を持った創造神だとなッ!」 ババッ!


「私と?」


「そうだあッ!《クリエイトッ》《紅蓮のフェルメルトッ!》」 パアアアンンッ!


シュバアアアーーッ! ドオオーッ!


『ウガアアアーーッ!』 ガシャ ギンッ!


創造神ジオスは、再び創造の能力、神の力を使い、深紅の重装騎士を創造し、この場に顕現させた。


「ふふふ、今度は先程の様にはいかんぞッ! さあッ 神と神の戦いだあッ! 行くぞアニスッ!」 バッ!


『ウガアアアーーッ!』 ジャキンッ! ザッ!


ジオスがそう言うと、顕現した重装甲の深紅の騎士は、すかさず抜刀し、アニスに向け構えた。


「ん〜…何度も言うけど、私は神じゃないよ」 サッ! ヒュウウウウウ….


「はッ 今更何を言う、そんな戯言聞く気はないぞッ!」 ググッ


「仕方がない…《クリエイトッ!》《氷雷皇ッ グリース・ゼルダッ!》」 パアアアンンッ!


ズズズッ! バアアアアアーーッ! シュワッ! 


『ムウウッ!』 ゴゴゴゴッ!


「はッ⁉︎ へッ あ、ああ… はああああーーッ‼︎」 ガクガクガク


アニスが創造し、この場に顕現したその者は、隆々とした筋肉と鋭い眼光、右手に神槍「コルセスカ」を携えた、身の丈10mほどの男が現れた。


「なッ なな、何だッ! 何だああーーッ!」 ガタガタガタ ガクガクガク


「ん、これが君と私の違いだよ」 ニコ


怯え驚く創造神ジオスに対し、アニスは笑顔で答えていた。


「じゃあ、いくよ」 サッ!


「はあッ! あああああーーーッ!」 ババッ!


神聖艦「ルシェラス」の艦内、その中央部にある広大な礼拝室で、アニスとジオスの創造の戦いが始まった。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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