第218話 踊る人形たち
ー帝都上空ー
シュバアアアーーッ! ギュヲオオオオオーーッ!
ピピピピピッ ビコッ! ガチャッ!
ブオオオオオオーーッ! ドババッババババッ! ガンガンッ! ドオオーンッ!
『右だッ! 右ッ! 右から突っ込んでくるぞッ!』 ピッ
『ブルー2ッ! ブルー3ッ! 何処だッ! 返事をしろッ!』 ピッ
『敵機撃墜ッ! だああッ! また来るぞッ!』 ピッ
『こちらフォーチュンリーダー、『ヴィクトリアス』コントロール、コンタクト』 ピッ
『こちら『ヴィクトリアス』コントロール、フォーチュンリーダー受信』 ピッ
『敵ブレードナイトがまた増えた、数が多すぎる、我が大隊はすで8小隊をロスト、戦力の半数を失った。このままでは抑えきれない、更なる増援を要請』 ピッ
『フォーチュンリーダーへ了解、第3戦列、第2派2個中隊72機が間も無く発艦する、無線通信505のまま連絡を密にし、連携せよ! オーバー』 ピッ
『了解ッ! 増援に感謝するッ! アウト』 ピッ
アニスが神聖艦「ルシェラス」のブリッジ内でミドラスと会話をしていたその頃、帝都上空では両軍合わせて、500にも及ぶブレードナイトの大空中格闘戦、及び十数隻の艦隊による砲雷撃戦闘が繰り広がれていた。帝都内や郊外の森林地区には、撃破されたブレードナイトや被弾撃破された両軍の軍艦艇が落下し、爆発し、至る所で火災も起き始めていた。
帝都王城付近は完全なる乱戦状態となっていた。地方に派遣遠征中の帝国大陸艦隊も挙って『皇帝陛下の危機』と急遽引き返し始め、その艦隊が帝都に入るや否や参戦し始め、そのせいなのか、更なる混乱を巻き起こし、帝国軍大陸艦隊総司令部も全体の把握をする事ができなくなった。
帝国軍大陸艦隊総司令部は、これ以上の艦隊投入はさらに混乱を招き、皇帝陛下に危険が及ぶのは悪手とみなし、帝都に接近中の他の艦隊すべてにその場で停止し、帝都を包囲待機せよと命令を下し、状況に応じて逐次戦力の投入を決めた。 そんな大乱戦状態の中、一際目立つ小隊がいくつか存在し、その一つに強襲巡航艦「ライデン」所属のブレードナイト、アルファー小隊のアラン少尉達、英雄の3人が入っていた。
シュバアアアーーーーッ! ゴオオオオオーーッ!
ビーーーッ! ビコビコッ!
『シエラッ! 後ろよッ!避けてッ!』 ピッ
「えッ! きゃあああーッ!」 ブオンッ! ガシイイッ! ジジジッ!
『『 シエラッ! 』』 ピピッ!
「だ、大丈夫…」 ググッ! ギュウッ! ヴオンッ! ジジジジッ!
ピッ ピピッ ピピッ! ブオンッ!
『人間…粛清…』 ピッ
「こ、このおおおッ!」 ピッ グイッ ピッピッ! カチ
ブオオオオオオーーッ! シュシャシャシャッ!
バッ バッ バッ! シュバアアアーーッ!
「なんでッ! なんで当たらないのよッ!」 カチ カチ
ブオオオオオオーーッ ブオオオオオオーーッ!
シエラ准尉は襲って来た敵教団側無人ブレードナイトに至近からフォトンライフルを撃ち込んだが、その攻撃を敵教団側無人ブレードナイトは何事もなく躱し離れて行った。
『シエラッ! 無駄撃ちはダメよッ!』 ピッ
「でも隊長ッ! あッ!」 バッ!
ピッ ビコッ! ブオンッ!
『ビビッ!』 ガチャ ピッ!
ブオオオオオオーーッ ババババババッ! ガンガンッ! バンッ!
「きゃあああーッ!」 ビー ビー パン ポンッ!
『『 シエラーーッ! 』』 ピピッ!
乱戦状態の一角、マイヤー国選辺境侯爵家艦隊所属、護衛巡航艦「オルペウス」所属のブレードナイト第2小隊のイレーネ小隊4機が、教団側無人ブレードナイト6機の波状攻撃にさらされていた。 イレーネ小隊は女性ライナーのみの小隊で、本来は第1小隊、男性ライナーのみのギガース小隊の後方支援小隊だったが、乱戦により第1小隊と距離が離れ、現在、教団側無人ブレードナイトの襲撃に遭っている最中だった。
「クク…ええいッ!」 グイッ! カチッ!
ダダダダダッ!
ピッ! ガンガン ビシビシッ! ボンッ!
『ビーッ!』 ピッ ギュワアアアーーッ!
シエラ准尉が放った対ブレードナイト攻撃兵装Tマインを受け、敵教団側無人ブレードナイト「ファウストFAV22」が被弾し、離れて行った。
ビー ビー ビー
「ハアハアハア、どう…思い知った…ハアハア…」 ギュウ…
シエラ准尉のブレードナイト「ウルグスパイアーD型FAフロンティア」は、フォトンライフル弾を多数被弾し、火災こそ起きてはいなかったが、至る所から煙を出していた。
シュバアアアーーーーッ! ヒイイイイインンン バババアアアーーッ
ピッ
『シエラ准尉ッ!大丈夫ですかッ!』 ピッ
『『 シエラッ! 』』 ピピッ!
「隊長、みんな…うう…」 グッ
『シエラ?』
「うわああんッ! 怖かったよおおッ!」 グッ!
『ふう、無事見たいね、しかし…』 ピッ クルッ!
『『『 隊長… 』』』 ピピッ!
イレーネ小隊4番機、シエラ准尉の無事を確認した小隊長、【イレーネ・フォン・ガーファンクル】大尉は周りを見た。 友軍の第1小隊は遥か向こう、自分達の目の前には6機の敵教団側無人ブレードナイト、こちらは1機が中破の4機…ましてや動きが全く読めない相手であった。 『勝ち目がない、このままでは全滅する』そう思った矢先だった。
ビーッ!
『左舷上方ヨリ友軍機接近』 ピッ
『えッ⁉︎』 バッ!
シュバアアアーーーーッ! ギュウウウウウウウンンーーッ!
ピッ ビコビコ ピッ カチ
ブオオオオオオーーッ! ババババババッ! ガンガンッ! バンッ!
ピッ!
『ビーーーッ!』 ガンガン! ドオオオオオオーーン!
『ビガアッ!』 ドカドカッ! バアアアアーーッ! ドオンッ! バラバラ…
ピッ カチ カチカチ ビコッ! ヴオンッ! ビシュウウーーッ!
ババババババーーッ! ザンザンッ! ジュワッ! ドオオオオオオーーンッ!
それは上空から急接近して来た3機のブレードナイトだった。 彼らは高速で急降下をしながら、6機の敵教団側無人ブレードナイトに攻撃を仕掛け、その全てを一瞬で撃墜してしまった。
「えッ! 凄いッ!」 ギュ
『なになになにッ⁉︎ なにが起きたの?』 ピッ
『あ…あああ…』 ピッ
『こ、これは…(なんて素早いの…この数を一撃だなんて…)』 ピッ
目の前の敵が全て撃墜され落ちてゆく、そんな光景を見ていた時、イレーネのブレードナイト「アウシュレッザD型R3」の前に、助けに来たブレードナイトの1機、「アウシュレッザD型F1ライナーマークII」アラン少尉の機が現れ、通信が入った。
ピッ
『こちらアルファー小隊、大丈夫でしたか?』 ピッ
突然の援軍と通信にイレーネも戸惑いを見せたが、何とか答えた。
「ええ、助かりました。ありがとうございます」 サッ!
『無事でよかった、どうやら魔力も少ないようですので一度帰還されたほうがいいですよ! では』 サッ ピッ
ヒイイイイインンンッ! バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーーッ!
「あッ! 官姓名をッ!」 バッ!
イレーネが助けてもらった男性ライナーに、階級と名前を聞こうとしたが、彼はすぐさま飛び去り、仲間の2機と共に、他の戦場へと飛んで行ってしまった。
『隊長ッ! 今のッ! 今の人誰ッ! 私ッ私ッ! あの人に会いたいッ!』 ピッ
『あッ! シエラずるいッ! 私だって会ってお礼がしたいわッ!』 ピッ
『なら私も…お礼言う権利あります』 ピッ
『ええーッ! 隊長、あの人の名前聞いてませんかッ!』 ピッ
「シエラ…彼、名前もなにも言わず行ってしまったわ…でも…(素敵な人…あのブレードナイト…肩についてた所属の部隊章は確か…)」 ふふ…
『ああッ! 隊長は何か知ってるッ!』 ピッ
『本当ですか隊長ッ! お願いしますッ! さっきの方は誰ですかッ!』 ピッ
「ふふ♡、じゃあ帰ったら教えてあげるわ、イレーネ小隊、帰還しますッ!」 バッ
『『『 了解ッ! 』』』 グイイッ!
バババウウウウウウウーーーッ!
イレーネ小隊の4機が、補給、休憩の為、母艦である護衛巡航艦「オルペウス」に向け飛んでいった。
ヒイイイイインンン…
ピッ ピピピピピ ビコッ!
『マスター、敵ブレードナイト3機を捕捉、更にその後方1200に敵ブレードナイト13機の編隊を確認!』 ピッ
「分かったマークIIッ! ありがとう」 グイッ! カチカチ ピッ
『無茶しないでくださいね、マスター』 ピッ
「ああ、わかってるよ…マイロッ! ジェシカッ! 聞いての通りだッ! 正面の3機ッ! やるぞッ!」 グイイッ!
『『 了解ッ! 』』 ピピッ! グイイッ!
ババババウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーーッ!
帝都上空、王城付近で、アラン達アルファー小隊の3人が、敵教団側無人ブレードナイト部隊と戦闘を継続、帝国軍はその活躍ぶりに狂喜した。 味方のブレードライナー達が、次々と魔力不足で後退を始めている中、アラン達3人は未だ魔力不足になどならず、連戦に次ぐ連戦をし、敵教団側無人ブレードナイトを次々と落としていく、その姿に憧れ、好感を持つ者達が次第に現れ始めていた。
ピピピピピ ビコッ!
「そこだあッ!」 カチ
ヴオオオオオーーーッ! シュババババーーーッ!
『ビッ! ビイイイイイーーッ!』 シュバアアアーーーーッ!
ガンガンッ! ドコオッ! ビシイッ! ドオオオオオオーーンンッ!
ピッ
『敵機撃墜を確認、流石ですマスター』 ピッ!
「ありがとう、マークII、マイロ達はッ⁉︎」 ギュッ!
ピコン!
『ふふ♡、大丈夫ですよ、アラン隊長』 ピッ
『僕もです、心配は無用ですよアラン』 ピッ
ピコ
『アラン様、マイロ様、ジェシカ様ともに撃墜を確認しました。敵機3機ロスト』 ピッ
バウウウウーーーーッ!
アラン、マイロ、ジェシカの3人は、遊撃部隊として戦場を駆け巡り、今回既に、3人で敵教団側無人ブレードナイト、65機を撃墜していた。 この撃墜数は帝国軍大陸艦隊トップエースの3人に匹敵する撃墜数で、3人の活躍は否応なしに注目されていた。(ただし、トップエース達は単独撃破での活躍で、その相手も無人機ではなく、敵ブレードライナーの乗る、有人機相手での戦果である、従ってアラン達の戦果とは少し違ったものとなる)
ピッ ビコビコ
「うん?どうしたんだ、マークII」
『はい、マスター、弾薬の残りがわずかです、一度帰還し補給と休息を取ってください』 ピッ
「え⁉︎ あ…」 ピッ カタタタタタタ…
アランはライナー支援システムの『マークII』にそう啓発され、サブ画面の一つ、武装モニターを見た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
兵装データ
フォトンライフル 残弾 1830発
対ブレードナイト用Tマイン 0発
近接用フォトン機銃 20mm 880発
ライトニングセイバー 1基
対ブレードナイト用電磁ナイフ 1基
対追尾誘導弾用チャフ 0発
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「皆ッ! いったん帰還しようッ! このままじゃ全滅するッ!」 グイイッ!
『そうね、このままじゃ危ないわ、帰りましょ』 ピッ!
『了解、よかったよ、もう僕の『サニー』も弾薬切れだったんだ』 ピッ!
シュバアアアーーーーッ!
「くそッ!」 ダンッ!
『マスター?』 ピッ
アランは自分に怒りを感じ、怒りながら自身のライナーシートの肘掛けを叩いた。
「あれだけ、隊長に言われてたのに…俺ってやつは…」 ググッ
・
・
ー数刻前、戦闘空母「フェリテス」ブレードナイト発艦デッキー
ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!
ポンッ!
『第1電磁カタパルト、緊急発艦準備、整備員は発艦体制をッ! 繰り返す、第一…』
ダダダッ!
『隊長おおーッ!』 ダダダッ ザザーッ!
『おうッ! お前らッ!』 サッ
発進前のレオハルトの元に、英雄と呼ばれているアラン少尉達3人が駆け寄ってきた。
『隊長、本当にお一人で行かれるんですか?』 ザッ!
『そうですよ、私たちも一緒に行きます』 バッ
『そうです、お願いします』 サッ
『なんだあ、お前達、俺がいないと寂しいのかあ?』 ニイッ ガシガシ
アラン少尉は局地戦闘機、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」でただ1人、発艦しようとしていた自分達のアルファー隊隊長、【レオハルト・ウォーカー】中佐に駆け寄り、質問をした。それに対してレオハルトは微笑みながら、アラン少尉の頭を強く撫でながら答えていた。
『わああッ! た、隊長ー!』 ガシガシ
『ははは、すまんすまん』 ババッ ははは…
『隊長、アルファー小隊の指揮はどうするんですか?』
『そうだなあ……』 ジイイイ…
アラン少尉にそう言われ、レオハルトは少し考えながらアラン少尉を見た。
『隊長?』
『うんッ! よしアランッ! お前がやれッ!』 ビシッ! ニイッ!
『『『 ええーッ⁉︎ 』』』 ザワッ!
『俺がですかッ⁉︎』 ババッ!
『ああ、お前ならりっぱにできるさ、マイロとジェシカにしっかりと指示を出すんだぞ』 グッ!
『うふふ、アラン隊長、よろしくね』 ニコ サッ!
『頼みましたよ! アラン隊長!』 グッ!
『俺に…俺に隊長の様な事が出来るのでしょうか?』
『出来るさッ!』 バンッ!
『わああッ!』 ヨロ…
レオハルトはそう強く返事をし、アラン少尉の背中を軽く叩いた。 レオハルトの言葉にはカリスマ性があり、人に納得させ、自信をつけさせる事がしばしば見受けられた。
『いいかアラン少尉』 グッ
『は、はい隊長』 グッ
『今からお前がアルファー小隊の隊長だッ! 自分を信じろ、腹に力を入れて声を出せ、常に周囲に気を配って動け、お前達は強い、敵を倒すなんざ二の次だ、仲間の為に…無事に帰還する為に動け、引き際を見極めろッ! 無理なものは無理なんだ、引く時は素早くだいいなッ!』 ポン
『はい、でも…』
『うん? なんだアラン少尉』
『隊長は引く時は引いてましたっけ?』 はは…
『俺はいいんだよッ! 引く気が…いや、引く暇がないからなッ!』 バッ!
『はああ…俺も隊長みたいになりたいです』
『あん? 俺みたいにか? う〜ん……アニスに頼んでみるか…』 ふむ…
『『『 結構ですッ! 』』』 ザザッ!
『ははは、正直だなお前達…』 ニイッ
ピポンッ!
『レオハルト中佐、ブレードナイト『ヤクト・ベルテッサ』発艦準備完了、出撃可能です』 ピッ
『おうッ! じゃあ行ってくるぜ、いいかアラン少尉、周りと機体の状況をしっかり把握するんだ! いいなッ!』 バッ!
『はいッ!』 サッ!
『お前達も無理すんじゃねえぞ、アランに頼るんじゃない、アランと共に行くんだッ! いいなッ!』 グッ!
『『 はいッ! 了解です! 』』 ササッ!
『よしッ!』 ダダダッ! カンカン バッ!
プシューッ! バクンバクンッ! ピッ ヒュウウウウウンンンーーッ!
ビーーーッ!
『第1電磁カタパルト、進路クリアー、『ヤクト・ベルテッサ』発艦どうぞッ!』 ピッ
『おうッ!『ヤクト・ベルテッサD型シーラ/レオハルト』発艦するッ!』 グイッ ピッ
ビーーーッ! ガシュンッ シャアアアアアーーッ ドオオオオオオーーッ!
・
・
「あれ程周りに気を使えと言われてたのに…」 ググッ…
『大丈夫ですよマスター、このまま『フェリテス』へと帰還しましょう、今なら問題なく帰ることができます』 ピッ
「ありがとうマークII、君が教えてくれなかったら今頃、俺達は…」 ギュ
『その為の私達です、気にしないでください、マスター』 ピッ
ピコ
『そうよアラン隊長、レオハルト隊長も言ってたでしょ、『引く暇がない』って、それと一緒よ』 ピッ
『そうですよアラン隊長、俺たちは生きてる、皆無事なんだ。それで良し、さっさと帰還しようぜ!』 ピッ
「ジェシカ…マイロ…そうだな、良し帰還するッ! アルファー小隊ッ! 帰還ッ!」 グイッ
『『 了解ッ! 』』 ピピ グイイッ!
ババッバウウウウウウウウーーーーーー! シュバアアアーーーーッ!
アラン少尉達アルファー小隊は、総撃墜数65機で補給と休息のため、戦闘空母「フェリテス」に帰還して行った。
・
・
・
ー神聖艦「ルシェラス」上空ー
シュバババッバババーーッ! シャッシャッシャッ!
ビー ビー ビー
「くそッ このおッ!」 グイッ! カチカチ ピッ ギュウッ!
バッ ババッ! ギュワアアアッ! ヴオンッ! ブシュウウウウウーーッ!
ギュワアアアーーッ!
『ピッ⁉︎ ビビーーーッ!』 ババッ!
『おりゃああーーッ』 グイイッ!
ザンッ! ビジュワアアアアアーーッ! ドオオオオオオーーン! バラバラ…
「ハアハアハア…あ、あと13機…ハアハアハア…」 ギュウッ!
神聖艦「ルシェラス」の上空で、【レオハルト・ウォーカー】中佐は、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」単機で、20機もの敵教団側無人ブレードナイトいや、ミドラスと戦い、既に7機のミドラスが宿るブレードナイトを撃墜していた。
『Att. 流石は危険度S、人間とは思えない動きと魔力、アニスが気に掛ける人間だけの事はある』 ピッ
「なッ! お前話せるのかッ⁉︎、 だったら気安くアイツの名を語るんじゃねえッ!」 ググッ
『Att. なぜかね、呼び方など自由ではないか』 ピッ
「だめだッ! 特にお前ッ! 俺がそれを許さねえッ!」
『Oui. やはり貴方には消えてもらう、アニスの為によくはない』 ピッ
「ああ同感だ、俺もお前はアニスの為によくはないと思うぜ」 グッ
『Oui. ではお互いどちらかが…』 ピッ
「ああそうだな、どちらかが…」 ギュウ
「『 消え去るまでだッ! 』」 ババッ!
ヒイイイイインンッ! バウウウウウーーッ!
ピピピピピ ピコッ
「よしッ!」 カチ
ヴオオオオオオオ――ッ! カラカラカラ ヒュウウンンン…
ピ ピピ
「ちッ! 残弾0、弾切れかッ!」 カチカチカチ ピッ! ビコ
ブンッ! ビシュウウウウーー! ブンブン ジジジジジ
レオハルトは、フォトンライフルの残弾が無くなったと見るや、武装をライトニングセイバーに切り替え構えた。 その様子を見たミドラスはレオハルトに問いかける。
『Att. 人間レオンよ、もう戦力のないお前がなぜそこまで争う?』 ピッ
「はッ! 愚問だな、惚れた女の為に戦うんだ、理由なんかあるかよッ!」 グッ
『Oui. それは『愛』か?』 ピッ
「へええ、お前そんな事がわかるのか、だったら俺が戦う理由もわかるな」 ギュッ!
『Oui. 理解した。尚更アニスは渡せない、お前を消去し、アニスは私が手に入れる』 ピッ ブオンッ!
「やれるもんならやって見ろッ! お前じゃアニスは勿体ねえよッ!」 グイッ! ギュウウッ!
バウウウウーーーーッ! ブオンッ! ブン! シュバアアアーーーーッ!
レオハルトはミドラスの宿る無人ブレードナイトの集団に、ライトニングセイバーだけで突っ込んでいった。
「Non. やはり、人間というものは理解し難い、13対1の戦力差、理解出来ないのだな!』 ピッ
ガシャッ! ジャキジャキジャキンッ! ピッ
ライトニングセイバーを振り翳し、全力で急接近してくるレオハルトのブレードナイトに対し、ミドラスの宿る13機の無人ブレードナイトが一斉にフォトンライフルを構えた。
ビー ビー ビー ピッ ビコビコッ!
「ちッ! ロックオンされたかッ!」 グイイッ! ギュウッ!
バウウウウーーーーッ! ギュワアアアーーッ!
『Oui. 消え去るがいい、レオンを消去!』 ピッ カチッ!
ブオオオオオオーーッ ドッバッバッバッバッバッバッ!
13機のブレードナイトによるフォトンライフルの一斉射、その全てが寸分違わず、レオハルトのブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」に向け放たれた。
ババババババーーッ!
「くそッ! 当たるかああッ!」 ギュウッ! グイグイッ!
ギュワッ! ババッ! シュン サッ! ササッ!
フォトンライフルの集中攻撃を、レオハルト急接近しながら、紙一重で躱して行った。
『Non. 回避された⁉︎ あり得ない、演算は完璧…….推論、人間レオンの動きが演算処理の枠を超えてると推察、こちらの攻撃のその上をいくと判断、対処不能』 ピッ
「遅ええッ! そこだあーッ!」 カチカチ ピッ グイイッ!
ブオンッ! ブンッ! ザシュウウーーッ! ジジジ ドオオオンンーーッ!
「まだまだあッ!」 グイイッ! ギュウウッ!
ザザンッ! ジュオオオオーーッ!
『Non.ッ! ト、トト、トレース…フ、不能ッ!』 ピッ ドオオオンンーーッ!
シュバアアアーー! ピッ ピッ ピッ ピッ ビコッ!
「へへ…あと11機、どうだ…あんま人間を舐めんなよッ!」 ハアハア…
『Oui. 了解した、だが、ここまでだレオンよ』 ピッ カチ
ブオオオオオオーーッ!
「やべッ!」 ギュウッ! グイイッ!
ビーーーーーーーーッ!
「なッ! しまったッ!」 ババッ!
急接近し、2機の無人ブレードナイトをライトニングセイバーで撃破したレオハルトに対し、ミドラスは直近でフォトンライフルを打ち始めた。 それをレオハルトは瞬時に判断、回避行動に出た、数発を躱したその時、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」の行動限界ブザーがなった。
ドンッ! ガンガンッ! バンッ! ドガアンッ! バアアアアーーッ!
「うおおおッ!」 ギュウウッ! ガンガン グラグラ バシ ビシ バン バン ポン!
『Oui. 終わりだレオン、アニスの事は私に任せるがいい』 ピッ
ブオオオオオオーーッ! ババババババッ!
ビービービー! ガンガンッ! バンッ! ビシビシッ! バカッ! ドンッ!
「くそうッ! うッ!」 ビシ ビシ ドシュッ! ビシャッ!
行動不能になったレオハルトのブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」に対し、ミドラスは容赦ないフォトンライフルの一斉射を続けていた。やがてブレードナイトの装甲を突き破り、機体の至る所やライナー席のあるコクピット内まで、その凶弾が襲いかかってきた。
ビシビシッ! ガンガン ドオンッ! バアアアアーーッ!
ビービービー ガタガタ パンパン ポン シューシュー ジジ ジジジ…
「うう…く…」 ハアハア…ボタ… ボタボタ…
ヒュウウウウウ………
『Oui. 状況終了、レオンの消去完了』 ピッ
ミドラスはレオンの撃墜を確信していた。しかし…
バウウウウーーーーッ! シュバアアアアアアーーーッ!
『Lst.ッ! レオンッ!』 ピッ ビュワアアアアーーーッ!
『Non.ッ! 何ッ⁉︎』 ピッ⁉︎
シュバアアアーーーッ! ゴオオオーーッ! ガシッ! グイッ! バアアアアーーッ!
レオハルトの機体は、火を吹きながら力無く落下していった。その時、純白のブレードナイトが、ミドラスの探知圏外からブレードナイトの出せる限界以上の速度で急接近し、落下するレオハルトのブレードナイトを掴み、上昇して行った。
『Lst. 大丈夫ですかレオン』 ピッ
「な…はは…アウディ…助かったぜ…」 ボタボタ…
『Rog. レオンとにかく下がって、あとは私が相手をします』 ピッ
「だ…ダメだアウディ…俺は…下がらねえぞ…うッ!」 ボタボタ…
『Lst. レオン、私はアニスより、貴方を守るよう指示を受けてます。この指示は私にとって最優先指示です。だから、貴方を危険に晒すことはできない』 ピッ ビコッ!
シュバッバババアアーーッ! ビコ ブオンッ! ガシガシンッ!
「なッ! おい…ア…アウディッ!…く…」 ボタボタ…
すると、アウディを追ってやってきた無人操縦ブレードナイト10機のうち「ウルグスパイアー」2機が、レオハルトのブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」の両脇を掴んだ。
『Rog. 命令、速やかに友軍機『ヤクト・ベルテッサ』と共に帰還せよ!』 ピッ
ピッ ビコビコ ヴオンッ!
『『 了解シマシタ 』』 ピピッ! ブオン
ヒイイイイインンンッ! グルッ! ババッ!
アウディの命令を聞いた「ウルグスパイアー」 2機は、レオハルトの「ヤクト・ベルテッサ」を抱えたまま向きを変え、母艦である戦闘空母「フェリテス」方向に動き出した。
「お…おいッ!… 待てよッ アウディッ!…」 ボタボタ…
『Lst. レオン、相変わらずですね貴方は、アニスの為ですか…分かってますよ』 ピッ
「うう…アウディ…おまえ…」 ボタボタ…
『Rog. レオン…アニスを貴方に託します。 帰還せよッ!』 ピッ
『『 了解ッ! 』』 ピッ
「アウディーーッ!」 ババッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウウウーーーッ! ビュオオオオオーーッ!
レオハルトは2機の無人操縦ブレードナイト「ウルグスパイアー」に掴まれ、戦闘空母「フェリテス」へと飛んでいった。
『Att. 私はミドラス、そこの自立型ブレードナイトに次ぐ、無駄な事だ。あの人間はもう助からない、なぜ逃した?』 ピッ
『Lst. なに、簡単な事です。レオンは死なない。生きて再びここへ帰り、アニスを迎えにくるからです』 ピッ
『Non. それは不可能な事だ、何故なら………ビ…ビビビ…ガガガ…』 ピッ ピピ ジジジ
『Lst. どうしたのだミドラス?』 ピッ
今まで流暢に話していたミドラスが急に黙り、雑音が鳴り始め、ブレードナイトの動きもぎごちなく小刻みに動いていた。そして…
ピッ ピピピピピ ビコビコ ピコ! ビーッ! ピッ ピッ ピッ ピッ!
『Oui. そうだ…全て…全て消えてしまえばいい…何もかも全て…』 ピッ ブオンッ!
いきなり、ミドラスの声のトーンが変わり、11機の教団側ブレードナイト全機が、今までとは違った雰囲気になっていた。そしていきなり口調が変わった。
『Oui. そうだ、これでいい、これでなッ! ははははッ!』 ピッ
『Lst. コレは…そういう事でしたか…私が生まれた意味、そしてコレが私の役目、そういう筋書き、コレが創造神の…いいでしょう、アニスの為、最後まで争いましょう』 ピッ
ヒイイイイインンンッ! ビコ ビコビコ ヴオンッ! ジャキンッ!
『Lst. 全機、敵無人ブレードナイトを攻撃せよ』 ピッ
『『『『 了解ッ! 』』』』 ピピピッ! ブオン ブオンッ! ビコッ!
『Oui. 殲滅ッ!』 ピッ
バババアアアーーーーッ! ギュワアアアアーーッ! ジャキンッ!
雰囲気の変わったミドラス、教団側無人ブレードナイト11機とブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」率いる無人操縦ブレードナイト9機、無人機同士のブレードナイト空中格闘戦闘が始まった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
PV100,000を超えました。
たくさんの方に読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。