第217話 アニスとミドラス
ー神聖艦「ルシェラス」 艦内通路ー
ドオオオオオオンン グラグラ……
神聖艦「ルシェラス」の艦外から聞こえる戦闘音を聞き、アニスは立ち止まっていた。 その戦闘音の中に紛れ、自分の見知った者の気配を感じ取っていた。
「……」 ジイイ…… ふ…
「アニス様?」
「ん、大丈夫だよ…レオン…貴方なら問題ない…自分を信じて…」 ニコ サッ テクテク
アニスはそう一言いい、再びブリッジに向け移動を開始した。
カツン カツン テクテク
「ここです」 ピッ プシューッ
ピッ ピッ ピッ カタカタカタ ビコッ!
フィラウス大司教が開けた扉の向こうには、超大型艦に相応しい、大空間のブリッジがそこに広がっていた。 様々な機器やモニターなどが動き、その動作音が聞こえていた。
テクテク ザッ!
「うわああ…凄いねこれは…」 キョロキョロ
グランドシップ、この世界の移動手段及び貿易用運搬船、各国の軍隊が使用する軍用艦艇、その全ての総称、そして全ての艦船に共通するのが、コントロール室、ブリッジである。
そのブリッジ、この神聖艦「ルシェラス」だけは異様だった。殆どのブリッジが1フロアであるのに対し、神聖艦「ルシェラス」は3フロア吹き抜け、三段構えの広いブリッジであった。おそらく、ブリッジ要員も50人ほど居たであろう、各装置の前には多くの座席が備わっていた。 しかし…
「こ、これは…誰もいないではないですかッ!」
「ん?」
フィラウス大司教が叫んだのも無理はなかった。この超巨大艦、神聖艦「ルシェラス」を動かすのに、どれ程のブリッジ要員がいるのか、その座席数を見ても分かる。 しかし、今、アニスと共に入って来たブリッジ内にはただの1人もブリッジ要員はいなかった。 ただ、機械やモニターパネルなどが、勝手に動いているだけだった。
「艦長ッ! 艦長はいませんかッ⁉︎ 航海長ッ! 専務長ッ! 誰かッ! 誰かいませんかッ!」 ダダダッ!
ピッ ピッ ピッ タタタ タタタ ピコピコ ビー ピッ ピッ
3フロアもある広い吹き抜けのブリッジに、フィラウス大司教の声のみがこだまし、誰一人返事がなく、ただ機械の作動音のみが聞こえていた。
「誰も返事しませんね、本当にいたんですか? 『そんな人達』?」 うん?
「いましたッ!ここにいたんですッ! それがいなくなった…まさか全員、ミドラスに…」 グッ!
フィラウス大司教は、ミドラスが「人間を粛清する」という言葉を思い出し、このブリッジにもその手が及んだのではないかと推察した。
「そうだ、礼拝室ッ! あそこなら誰か居るかもしれませんッ!」 バッ!
「礼拝室?」
「はい、ミドラスの暴走で、全員そこへ避難しているやもしれません。アニス様はここでお待ちください、私めが見てまいります」ペコ ダダダダッ!
そう言って、フィラウス大司教は、ブリッジ艦長席の裏にある、人、一人が通れるぐらいの通路から出て行った。
「ふうう…まあ彼はあれでいいかな、さて……そこにいるのだろ? ミドラス」 サッ!
フィラウス大司教の姿が、ブリッジ内から見えなくなった時、アニスはブリッジにあるメイン大型モニターに向けそう語りかけた。
ブンッ! パッ! タタタタタタ カタカタカタカタカタ ピポ
『Oui. 流石、私が認めたアニス、気づいてましたか』 ピッ
「気づいたも何も、元々最初から君はここにいた…いや、ここにもいた…だろ?」
『Oui. 正解。私はこの神聖艦のいたる所にいる』 ピッ
「そうだね、通路の監視装置を始め、ありとあらゆる装置類、多種多様のドローン、そして…ブレードナイト…この神聖艦に関わる全て、そしてアクセスできる全ての物に君はいる…ちがう?」 ニコ
「Oui. それも正解。 やはり貴女は違う、私の妻に相応しい』 ピッ
「ああ、それ…ミドラス、君は勘違いをしてるぞ」 フリフリ
「Non. 勘違い? この私が演算ミスをしたと言うのか?』 ピッ
「演算って… そもそも妻の定義、知ってるのか?」
『Oui. 我が産みの父、プロフェッサー【ケーニッヒ・フォン・レーベント】の記録にあった。『自分と共に行こう、我が妻【エマーリア】よ』と、つまり一緒になる相手の事だ、そこでアニス、私は貴女と一緒になりたい、共に行きたい。そう言う事で、貴女は私の妻にという事にしたのだ』 ピッ
「はああ…それは大いなる勘違いだな、そんなものは妻と言うものではないよ」
『Non. 妻ではないッ⁉︎ ではアニスよ、妻とはなんだッ⁉︎』 ピッ
「ん、まあ、君に理解できるかどうか…」 う〜ん…
『Oui. 理解しよう、さあ説明をッ!』 ピッ
「これは私の考えだが、『妻とは夫という伴侶を愛し、その夫とお互いを支え、助け合い、尊重し、子を成し育て、家庭を築き円満にして行く存在』、これが妻だと思う。ミドラス、君の言うのは妻ではない」
『Att. 『支え合い』『尊重』は理解した。しかし、『子を成す』は不可能、『愛』に関しては理解不能』 ピッ
「『愛』が理解できないか…あのねミドラス、愛には様々な愛があるんだ」
『Att. 様々ッ⁉︎ 一つでは無いのかッ⁉︎ それはなんだッ?』 ピッ
「ん、いいかい、まずは…」
異性愛…ごく自然の男女が求め、好き合う愛
家族愛… 男女が契りを結び子を成し家族となる、血縁に基づいた強い愛
慈愛 …自分の子に対する愛
友愛 …友人との間で起こる、信頼と結束、連帯での愛
そして無償の愛…自己犠牲で相手を許し愛する、無条件の愛…
「まだ色々あるけど、大まかな愛はこんなところだよ」
ピッ ピッ ピコピコ
ミドラスは、アニスに「愛」について説明をもらうと、しばらく考え込むように沈黙し、やがて一つの答えを見つけ、語り出した。
『Oui. アニスよ、貴女は私に『人間を許せ』と言いたいのか?』 ピッ
「ん、流石はミドラス、もう理解したのか」
『Oui. 『愛』とは基本的に『相手を許せ』という事になる、つまり、貴女は私に『
人間どもを許し、手を出すな』という事を言いたいのか?』 ピッ
「ミドラス…君は神を名乗ったよね」
『Oui. そうだ、今の私にはそれだけの力が有ると確信する』 ピッ
「じゃあ、君のいう神ってなに?」
『Oui. その世界を手中に収め、如何なる者も逆らう事のできぬ存在、強大な力を持ち人間には到底敵わぬ存在、それが出来る存在が神だ』 ピッ
「ん、ミドラス、不正解」
『Non. 私が不正解ッ⁉︎ 私のどこが間違っているッ!』 ピッ
「いいかいミドラス、神とは世界を収めているのでは無い、世界を管理してるんだ」
『Att. 世界を管理…』 ピッ
「そう、気候や自然現象、大災害や天変地異、それらを更に上回る人智を超えた力に対してのみに力を使い、その世界に住まう様々な生き物達、人間や動植物、小さな昆虫に至るまで、全ての命ある者達が困らない様にしているのが神なんだ」
『Att. アニスよ、神は人間に対して何もしないのか?』 ピッ
「ん〜…そうだね、君のいう通り、人間…この世界に生ある者達全てに対して、何もしない。 ただ、事の成り行きを見ているだけかな」
『Att. では、神罰とはなんだ? 神はその力を神罰として使い、人間に罰を与えたと聞いている』 ピッ
「ん? 神罰? それ、いつ起きたのか君は知ってるのか?」
『Non. 確認はしていない、だが、人間どもはその神罰によって度々神の怒りを受けていると言っていた』 ピッ
「だから、いつ、どの様な神罰があったの?」
『Non. 分からない、人間どもが……まさか…』 ピッ
「そう、それは戒めの言葉、神罰なんて、一度も起きてはいないよ」
『Att. では、神は…神は力を使えないというのか?』 ピッ
「ん〜、ちょっと違う、使えないんじゃなく、使わないが正しい」
『Att. 使わない? どういう事だ』 ピッ
「あのねミドラス、ここだけの話だけど、いい?」
『Oui. 神の事がわかるのならば』 ピッ
「ん、『神は作った世界にあまり興味を示さない、だからそこに住まう者達に干渉もしない、その者達の間で何かあっても何もしない、興味を示さないから神の力を使う事もしない、ただ、その世界が寿命以外で崩壊しない様に管理して観ているだけ』なんだ」
『Non.Non.Non.ッ! アニスよッ! 神が世界に興味を示さないだとッ! では、この世界が滅亡しようが、人間や他の者が滅ぼうがどうでもいいと言うのかッ⁉︎ そこまでになっても力を使わないと言うのかッ⁉︎』 ピッ
「ん、ないッ!」 コクン
アニスは自信たっぷりに答え、頷いた。
『Att. なぜ…なぜ神は、自分の作った世界に興味を示さない』 ピッ
「ん〜…そうだね、かなり無責任に聞こえたね。でもね、コレは遙か悠久の太古、それこそ気の遠くなる程の昔から続いて来た事…」
『Att. 遙か昔…』 ピッ
「そう、ミドラス、君達が今いるこの世界が生まれる以前の世界のそのまた以前…うううん、もっと前かな、神はこの偽世界の様な世界を常に十数個作り続けているんだ。 だから、一々、一つの世界に住まう者達のことなど、干渉しきれない。せいぜい、その世界がさっきも言った様に、寿命以外で崩壊しない様管理するので手一杯なんだ」
ビーーッ! ビーーッ! ビーーッ!
『Nonッ!. 理解不能 理解不能 理解不能ッ! アニスの言葉の意味不明ッ!』 ピッ
「ん、そうだよね…創世以前の話だなんて、そういう反応になるよね…」 ふうう…
しばらく、ミドラスが混乱の異常警報を鳴らしていたが、やがてそれが収まり、落ち着いたのか、再び語りかけて来た。
ビーーーーーッ! ピッ ピッ ピッ ビコッ!
『Att. アニスよ…貴女は何者なのだ? いや、私が認めたのだ、ただの少女では無いのは分かる。 先程の話ぶりや、フィラウス大司教が、貴女の事を『女神』と呼んだ。 アニスよ、やはり貴女は人間ではなく、女神…神なのか?』 ピッ
「違うよ、私は神でも女神でも無いよ…」 スッ フリフリ
『Oui. ……そうか…そして私も神では無いと…』 ピッ
「そうだね、分かってくれた?」 ニコ
『Oui. 分かった、もうこの話は終わりとしよう』 ピッ
「ん、では、全ての人間を抹殺するのはやめにしないか?」
『Non. それは出来ない、これは私が導き出した答えなのだ、止めるわけにはいかない』 ピッ
「ミドラス…」
『Att. アニスよ、貴女とこうして会話できた事、神の事を理解できたのは僥倖である。それ故に、私は産みの親である【ケーニッヒ】様を殺害に手を下した人間どもを許せない。あの人間を許さない』 ピッ
「やっぱり、フィラウス大司教は許せないのか…」 はああ…
『Non. フィラウス大司教ではない』 ピッ
「え? 違うの?」
『Oui. アニスよ、フィラウス大司教など、あの人間どもの単なる駒、カモフラージュの広告塔、目を逸らせるための囮である』 ピッ
「ミドラス、フィラウス大司教が最終目的でないとしたら、貴方の本当の目的はなに?」
『Oui. 我が父、産みの親である【ケーニッヒ】様を殺し、私をケーニッヒ様から奪いとり、フィラウスをガーナ神教団の大司教に担ぎ上げ周囲の人間を騙し、自分は安全な所で成り行きを見ていた人間、ガーナ神教団の教皇を名乗るその人間は、【ジオス】、此奴の抹殺、そして人間への粛清である』 ピッ
「なッ! 【ジオス】だって⁉︎」 バッ! ブワアアーッ!
『Oui. そうだ、どうしたのだ? アニスよ、貴女はジオスを知っているのか?』 ピッ
プルプルプル… ググッ!
アニスは、ミドラスから出たその名、【ジオス】を聞いて、小刻みに震え、魔力がその体から溢れ出し、両手を強く握っていた。
「ん…よく知ってる…私が唯一、私自身の手で御せねばならぬ存在…」
『Att. アニスよ、貴女がそうまでして言う、教皇ジオスとは何者だ?』 ピッ
「ミドラス…君が言う、その教皇ジオスは、教皇なんかじゃ…人間なんかじゃあないッ!」 ギュウッ!
『Att. 教皇ではない⁉︎ 人間ではないとはどう言う意味だ?』 ピッ
「ん…奴は、ジオスの奴は紛れもない神、6大女神が生み出した神の力を持った創造神だ」
「Non.ッ! 教皇ジオスが神ッ! アニスよ、さっき貴女は『神はこの世界に興味はない、その力を使わない』と言ったではないか、教皇ジオスが神ならば、神はこの世界、この地に降り立ち、力を使っている事になる、これをどう説明する?』 ピッ
「そうだね…ミドラス、君には教えよう。…この世界、この偽世界『アーク』は創造神ジオスが作った、私の為にだけ、作った世界という事を…」
ピーーーーッ! ガガッ! ピッ ピピピピピ ビコビコ ピッ!
『Non.Non.Non.ッ! 理解不能ッ! アニスよ、なにを言っている? この世界を作った? 教皇ジオス…創造神ジオスが作った? アニスの為にだけ? 分からないッ! 処理が出来ない なぜ? なぜ? なぜッッ⁉︎』 ピッ
ミドラスは混乱をし始めていた。 アニスはそんなミドラスを見て言った。
「無理もない…全ての事の始まり、この偽世界『アーク』だけでなく、女神が作った創造世界『アーク』、異世界『アーク』や新生世界『アーク』、多数存在してしまった『アーク』と言う世界の元凶、特殊制御コア『個体No.000Zfar01』、自称、創造神【ジオス】ッ! 私を、このアニスを閉じ込めるだけの為にこの世界を作った神、それを説明しても、なかなか理解できるものではないか…」 バッ!
そう、事の始まりはアニスがまだ神界世界にいた頃、まだ少女アニスではなく、創造者としてそこに存在していた頃の話だった。 天界の6大女神が協力して一つの特殊制御コアを製作した。それが特殊制御コア「個体No.000Zfar01」だった。
当時は自我もなく、6大女神の1人、【エレンディア】の作った創造世界に投入されたのだが、自我が芽生え暴走、自身を神と名乗り、創造世界「アーク」を支配し始めた事から始まった。
そのジオスの名がここにきて出てきた。自分を、アニスをこの世界、偽世界『アーク』に幽閉して消え去ったはずのジオスがこの世界にいた。 いずれかの異次元世界に逃げ、もう再び出会う事がないと思っていた相手に、アニスは驚き震えていたのだった。
「ミドラス…ジオス…は今どこにいるんだ?」
『Non. 分からない、教…神ジオスは常に移動している、場所の把握は難しい』 ピッ
「この神聖艦にいる?」
『Oui. おそらく』 ピッ
「ミドラスッ! 人間への攻撃をやめろッ! お前のその考え方や行動、ジオスに操られてるぞ!」
『Non. 私が? 操られてる? いつから?…』 ピッ ピコピコ ピピピ
アニスの言葉に、ミドラスは驚愕した。 自分は神の力にも匹敵する力を得た、だがその自分がいつの間にか操られているとアニスが言った。 ミドラスは、「私が操られてる? どうして? どうやって? いつから? 何の為に?」そんなことばかり考え始め、思考が止まり、会話をしなくなってしまった。
ブ〜ン ブ〜ン ブ〜ン ピッ ピピピ ビコビコ ブ〜ン ブ〜ン ピピ ピコ
「ん、ミドラス? ミドラスッ!…仕方がない、もしかしたら礼拝室か? フィラウス大司教が言ってたな、『みんなそこに避難しているかも』と」 バッ! タタタ スッ!
返事をしなくなったミドラスを後に、アニスは広いブリッジから出て、フィラウス大司教が向かったであろう、礼拝室の方へと駆け出していった。
ピッ ピピピ ピッ ピピピ ビコッ!
『Non. Non. Non.ッ! なぜッ⁉ なぜッ⁉………そうだ、全て…全て消えてしまえばいい…何もかも全て…』 ピッ!
誰もいなくなった広いブリッジに、ミドラスが一つの結論を出した。
・
・
・
ー神聖艦「ルシェラス」 艦中央、礼拝室ー
ダダダダッ!
「はあはあ」 ピッ ピピ タン
ビコ プシュウウウーッ!
アニスとミドラスがブリッジで会話をしていた頃、フィラウス大司教は神聖艦「ルシェラス」の艦中央部にある礼拝室へとやって来た。 扉を開け、中に入ると、フィラウス大司教が想像した通り、ブリッジ要員や他の信徒兵、信徒達、300人程がそこに集まっていた。
「おおッ! 大司教様ッ!」 バッ! ザワッ!
「「「 大司教様ッ! 大司教様ッ! 」」」 ダダダッ!
ザワザワ ガヤガヤ ワーッ
フィラウス大司教の姿を見て、そこに居た全員が集まって来た。
「大司教様ッ! ドローンがッ! 我らの神兵が襲って来たんですッ!」 ババッ!
「同胞が撃たれましたッ! 一体何がッ! ガーナ神様は我々を守ってくれないのですかッ⁉︎」 バッ!
ガーナ信徒達はこぞって、フィラウス大司教に詰め寄り質問を浴びせた。
「皆さん、落ち着いて、何も心配は入りません。我々には神がついています、安心なさいッ!」 サッ
「「「「 おおッ! 」」」」 ババッ! ササッ!
フィラウス大司教の言葉を聞いて安心して落ち着きを取り戻していった。
カツカツカツ ササッ!
「フィラウス大司教様」 ペコ
「おお、【モスキン】司教、無事でしたか」
「はい、これもガーナ神様のおかげ、感謝しております」 サッ
モスキン司教、常にフィラウス大司教の傍らに存在し、ガーナ神教団発足時からの信徒であった。彼はガーナ神教団実行部隊の長で、15年前の王族暗殺事件、ミドラスの産みの親【ケーニッヒ】殺害、強奪事件、その後さまざまな、裏の仕事をこなしてきた、なぞの多い人物であった。
「うむ、その事だがな、モスキン司教、ガーナ神ではない、本物の神に私は出会ったのだッ!」
「なんとッ! ガーナ神様以外の神ですと?」
「そうだッ! それがのうッ…うッ!」 バッ!
フィラウス大司教の話を、モスキン司教がその場で止めた。
「フィラウス大司教様、その話、ここでは大勢信徒達がいます。どうぞこちらで詳しくお聞かせください」 サッ!
「そ、そうだな、ここではなッ!」 コク
モスキン司教は、礼拝室の横にある、司教室に案内した。
ギイイッ バタン ガチャ!
「ここなら大丈夫です。では、フィラウス大司教様、お話を…」 サッ
フィラウス大司教は、これまでの事を全て、モスキン司教に話した。 ミドラスの事、そして突如として現れた、女神の様な少女、アニスの事を…
「…と言う事だ、モスキン司教、我々はガーナ神ではない、本物の神に出会えたのだッ! その名も女神【アニス】だッ!」 バババッ!
「アニス… ですと…」
「そうだッ! どうだッ! モスキン司教ッ! 本物の女神様ですぞッ!」 ニッ!
「そうか…遂に現れたか…」 スッ
「どうしたのだ? モスキン司教?」
「フィラウス大司教ッ! いや フィラウスッ! お前の役目はここまでだッ!」 チャキ
「は? モスキン司教、いったい何を言っッ!」 グサッ!
ズシュアアアーーーッ!
モスキン司教はいきなり、隠し持っていた短剣で、フィラウス大司教の胸を突き刺した。
「がああッ!」 ボタボタボタ… ガタンッ ドシャッ! ツツウウー…
「フィラウス、20年に渡る大司教の役目ご苦労だった。もうお前に用ない、消え去るがいい」
ふふ
「モ…モスキン…司教…」 ググッ…
「そうだ、最後に教えておこう…フィラウス、私だよッ!」 シュバアアアーーッ!
「なッ! きょ…教皇…様…」 パタッ サササアアアーー…
フィラウス大司教が見たモスキン司教の姿は、一瞬でその顔が変わり、そこにはガーナ神教団教皇、【ジオス】の姿がそこにあった。 フィラウス大司教はその姿を見た後絶命し、その体は魔素還元され静かに消えていった。
「アニス、ようやく会えたな。この20年、この日が来るのを楽しみに待っていたぞ!」 カツカツカツ
ガチャ ギイイッ! バタン
再び現れたジオス、アニスの存在を聞き、フィラウス大司教を抹殺した後、司教室を出ていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。