第216話 空戦、レオンとミドラス
ー神聖艦『ルシェラス』艦内ー
テクテク スッ ペチペチ テンテン…
「う〜、もういない…ミドラスのヤツどこにいったんだ?」
アニスは力なく稼働停止し、床に倒れている戦闘用ドローンを触ってその状態を確認していた。先程まで稼働していた戦闘用ドローンが、今は壊れた人形のように、全く動かなくなっていた。
スクッ! ザッ! ファサッ!
「早く、ミドラスを探して止めないと…」 テクテク
「ア、アニス様ッ!」 サッ
「ん? あ、いや、ただのアニスでいいから、様なんて要らないよ」 フリフリ
「そうは参りませんッ! 私は貴女様を見て悟りました。 貴女こそ神、紛ごとなき女神様です。私が間違っておりました…崇める神を偽り仕立て上げ、間違った教えを広めた事…教団の…全ての信徒達の導き方とその活動、そしてこれまでの行い… 私は皇帝陛下の御前にて全てを打ち明け、この身を持ってその罪を贖う所存でございます」 サッ!
フィラウス大司教は、アニスのその姿と圧倒的な力を眼のあたりにして改心したのか、自分と自分達の今までの行いを悔いあらためる覚悟のようだった。
「ん〜、(神じゃないんだけどね〜)」 はは…
「アニス様、ぜひブリッジの方へ、そこならミドラスの動向がわかるかと思います」
「そうだッ ミドラスッ! アイツ、レオンを狙ってるんだッ!」 バッ
「急ぎましょう、案内いたします」 スッ!
フィラウス大司教が、アニスにそう言った時、後方の閉じていた隔壁の壁が急に開いた。
プシューッ! ゴンッ!
「ん?」
「えッ⁉︎」
ピッ ピッ ピッ ガシュンッ! ガシュンッ! ピピピッ!
『『『 人間ヲ発見、発見、発見 』』』 ガシャシャッ! ビコッ!
「なッ! 戦闘用ドローンッ!」
「ん〜、また君達か…大勢だね」 スッ チャキインッ!
開いた隔壁の向こうには、先ほどと同じ黒い戦闘用ドローンが8機、整然と並んで立っており、両腕に装備されているフォトン機銃を2人に向けていた。 アニスは腰裏の神器「アヴァロン」を抜き構えた。
ピッ ピピピッビコッ!
『攻撃対象ハ人間』 ピッ グルッ! ガチャッ!
ドババババババババッ! ガガガガガガッ!
「ひいいいッ!」 ババッ!
「んッ! 《アルテミスリングッ!》」 キンッ! パアアアンンッ!
いきなりの銃撃に、フィラウス大司教はかがみ、アニスは咄嗟に左腕を伸ばし、手の先から絶対防御魔法、《アルテミスリング》を展開した。
ヒイイイインン ガンガンガン バンバン キュンキュインッ! バババッ!
「ア、アニス様ッ!」 バッ
「大丈夫ですよ、少し待ってて、今、通れるようにするからね…」 ニコ
グッ! クルクルッ チャキ! スタッ! シュワッ!
アニスはそう言うと、防御魔法を出したまま、腰を下げ、右手に持った神器「アヴァロン」を逆手に持ち替えた。すると「アヴァロン」の短い刃先が青白く輝きだし、刃の表面が輝き出した。
ググッ! ザッ!
「《縮地ッ!》神級迎撃剣技ッ!《ガイエリアス.グラン.ファングッ!》」 シュンッ!
「え! き、消えたッ!」 サッ
アニスはフィラウス大司教の前から、防御魔法を展開しながら一瞬でその姿を消した。そして、次の瞬間、戦闘用ドローン達の銃撃は止み、凄まじい爆発と爆風が周囲を襲った。
ドオオオオオオンンンーッ! ブワアアアアアーーッ! ビュウウウウーッ!
「うわッ!…」 グッ! シュバアアアーーーーッ! バサバサバサ…
フィラウス大司教は、その凄まじい爆風と煙の中を耐えていた。やがて、爆風もおさまり、そこにいた戦闘用ドローン達8機は全て破壊され、機能を停止して床に転がっていた。
ガラガラ バラバラ バラ…モクモク…カタン…シュウウウ…
ビュウウウウ! テクテク ザッ! クルクルッ! チャキイインンッ! バサバサ…
戦闘用ドローン達がいた辺りからは、アニスが青みがかった銀髪と純白の上着とコルセットスカートを爆風に靡かせながら現れ、神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻し、そこに立っていた。
「ああ…(なんと神々しい…)」 ググッ…
アニスは一瞬にして、戦闘用ドローン8機を倒してしまった。そんなアニスを見て、フィラウス大司教は涙を浮かべ、感動していた。
「さ、行きましょうか」 ニコ
「は…はいッ!」 ザッ!
アニスとフィラウス大司教は、神聖艦「ルシェラス」のブリッジへと向かっていった。
・
・
・
ー戦闘空母「フェリテス」 ブリッジー
ビッビーッ! ピッ ピコピコ
「出撃中のブレードナイト第2中隊より通信ッ!」 ピッ
ジジッ ビビ ピッ
『『フェリテス』聞こえるかッ! こちら第2中隊ガゼルだッ!』 ピッ
「第2中隊 こちら『フェリテス』受信ッ!」 ピッ
『『フェリテス』、第2中隊はプラム小隊の指揮官機を含め7機を失ったッ! もう魔力が持たないッ! 一度帰還する、指示を頼む!』 ピッ
「こちら『フェリテス』、第2中隊へ、了解、速やかに帰還せよ」 ピッ
『帰還指示感謝するッ! こちらのセンサーから敵ブレードナイトの一集団が消えた、周辺警戒をしてくれッ! オーバー』 ピッ
「警告に感謝するッ! アウト」 ピッ
「艦長ッ!」 ババッ!
「CICッ! 聞いての通りだッ! 周辺対空警戒を厳とせよ」 ザッ!
「アイサーッ」 ピッ ピッ タンタン ピコ
「まったく…敵ブレードナイトの数が多すぎる、敵戦力の底が見当もつかないわ」 フリフリ
ビーッ!
「第2中隊、キドニー小隊帰還、着艦します」 ピッ ピコ!
戦闘空母「フェリテス」のブリッジから帰還してくるブレードナイトを見た。
シュゴオオオーーッ! シュウウウウー…
「(1機足りない…小隊長機がいないのね…)」 ジイイ…
戦闘空母「フェリテス」の艦長アリエラは、小隊長機を失ったキドニー小隊の、傷つき、1機は抱き抱えられて着艦して行くブレードナイト「ウルグスパイアーD型FAフロンティア」3機を見て、戦局の激しさを感じていた。
ビーッ!
「キドニー小隊着艦、続いて第2中隊各小隊着艦用意ッ!」 ピッ ピコ
戦闘空母「フェリテス」に第2中隊のブレードナイトが着艦コースに入った。
「第二戦列の部隊の状況はどう?」
「はッ 第1中隊残存の9機は健在、防衛任務中です。またレオハルト中佐の『アルファー小隊』の3人、アラン少尉、マイロ少尉、ジェシカ少尉は遊撃部隊として転戦、すでに52機の敵ブレードナイトを撃墜、現在も戦闘中」 ピッ タンタン ピッ ビコビコ
「52機ッ!…凄いわ、レオン君並じゃない…(流石、アニスちゃんの教え子達ね、こうも結果が出ると、改めて驚かされるわ)」 ふふ…
ビーッ! ピコン!
「第2中隊、着艦します」 ピッ ピコ
シュゴオオオーーッ シュウウウ…
ガゼル中佐の第2中隊が次々と着艦していった。
・
・
・
ー神聖艦「ルシェラス」上空ー
ビーッ ビーッ! ピピピピピ ピコ
「おりゃあああーッ!」 カチカチ ピッ グイイッ!
シュバアアアーーッ! ブオンッ! ブンブンッ! ビシイイイッ!
『ビッ! ビビーーーッ!』 グワッ! ドオオオオオオンンンーッ!
「これで65ッ!」 グイッ! ギュウッ!
バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーッ!
レオハルト中佐は、手動でコントロールを取り戻した局地戦闘機、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサD型シーラ」を操り、撃墜数を伸ばしながら、神聖艦「ルシェラス」の突入場所を探していた。
ヒイイイイインンンーーッ! ピッ ピッ ピッ
「しっかしでかい艦だぜ…突入場所が決まんねえな」 カチ ピッ!
普段なら、ライナー支援システムがフォローし、相手の情報や位置、数、進行方向など啓発してくれるのだが、今、ミドラスからのシステム支配から解く為に、ライナー支援システムを破壊している状態なので、その恩恵が受けられず、自力で突入口を探し出すしか無かった。
シュバアアアアアーーーッ! ピッ! ピピピピピ ピポンッ!
「うん? ちッ!新手かッ!」 グイッ!
レオハルト中佐の進行方向の先、超巨大艦、神聖艦「ルシェラス」の舷側下方からハッチが開き、3機の無人ブレードナイトが発進して向かってきた。
グイイイインン シュバッ! シュバッ! シュバッ! バウウウウーーッ!
「ムッ!コイツら……」 グッ! ピッ ピッ ピッ
ギュワアアアーーッ! ヴオンッ! ビッ! ジャコンッ!
『『『 Oui. 最優先排除対象、レオンを補足、これより強制排除行動に入る。アニスの為に 』』』 ピピピッ! ビコビコッ!
バウウウウウーーッ! ピピピピピッ! ビコッ!
それは、ミドラスが宿った無人ブレードナイト3機であった。アニスを手に入れる為、ミドラスはその障害となるレオハルトを狙ってきた。 3機の無人ブレードナイトは、息の合った動きで高速移動し、フォトンライフルを構え、レオハルトのブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」に向け銃撃を開始した。
「クッ! 何だ奴らッ 動きが違うッ!」 グイッ! ギュウッ!
バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーッ!
ピピピッ! ビコッ!
『『『 Oui. レオン、お前は私とアニスにとって『バグ』である。よって排除する! 』』』 ピピピッ! カチ ピッ!
ブオオオオオオオオーーーッ! ババババババババーーッ!
「うおおおおおーーッ!」 グイッ! ギュウッ!
バウウウウーーッ! シュワアアア――ッ!
シュッ シャシャシャシャシャシャーッ! バババッ!
ミドラス達の銃撃は正確無比、確実にレオハルトに向かって無数のフォトン弾を放ってきた。それをレオハルトは巧みに躱し、「ヤクト・ベルテッサ」のフォトンライフルで反撃をした。
ピピピッ ビコビコッ! ピッ!
「喰らえええーッ!」 カチ ピッ!
ヴオオオオオーーッ! シュッババババババーーーッ!
『『『 Att. 排除対象急速接近、弾道計算、回避行動開始 』』』 ピッ グイイッ!
バババッ! バシュウウーッ! ブオンッ! ギュワアアアーーッ!
「なにッ! 回避行動が早ええッ! やっぱコイツら今までの奴らとは違うッ!」 グイッ! ギュウッ!
バウウウウーーーーッ! シュバアアアーーーッ!
ピッ ビコビコッ!
『『『 Oui. 排除対象、レオンを捕捉、機動攻撃ッ! 』』』 ピピピ!
バシュンッ! バシュンッ! ドッババババババババーーッ!
ミドラスは、レオハルトのブレードナイトを捕捉すると、対ブレードナイト用追尾誘導弾、フォトンミサイルを多数発射した。
ビーッ! ビーッ! ビコビコッ! ビーッ! ビーッ! ビコビコッ! ビーッ!
ガンッ! ピッ
「うるさいッ! ミサイルぐらい解ってんだよッ!」 グイッ! カチカチ ピッ!
レオハルトは「ヤクト・ベルテッサ」のミサイル接近警報に怒鳴りつけ、コンソールを叩きながらその警報を切り、すかさず武器セレクトスイッチで対追尾誘導弾用チャフを発射した。
ババババババッーッ! ヒイイイイッ! バウウウウーーーーッ!
対追尾誘導弾用チャフの使用で、ミドラスが放ったフォトンミサイル達は、全てあらぬ方向へと飛んでいった。レオハルトはすかさず狙いをつけ、フォトンライフルを撃ち出した。
ピピピピピ ビコッ!
「ミサイル発射で動きが止まってるぜッ!」 ピッ! カチ
ヴオオオオオーーーッ! シュッバッバッバッバッバッ!
『『『 Att. 排除対象反撃、回避行動 』』』 ピピ ビコッ! グイイッ!
バッ バッ バウウウウーーーーッ! シュワアアーーッ!
「ちッ! これも避けるかッ! アイツらいい動きだぜッ! ならッ これでどうだッ!」 グッ! グイッ! カチカチ ピッ!
シュバアアアーーッ ヒイイイイイイーー ジャキッ! ヴオオオオオーーッ!
ドッ バッバッバッバッバッ! ガンガン ビシッ! バアアンンッ!
『『『 Non. 被弾ッ⁉︎ 弾道計算不能? イレギュラー! 』』』 ピピ ビコビコ ピッ! ビビッ!
ビイイイイイーーッ!
『Nonッ! 回避不ッ!』 ビシイイイッ! ガンガンッ! ドカッ!
ブワッ バアアアーーッ! バラバラバラ ドオオオオオオンンンーーーッ!
「はっはああーッ! やったぜ、ジャストミートオオッ!」 グッ!
バウウウウーーーーッ! シュゴオオオーーッ!
レオハルトの動きに演算計算が追いつかず、遂にミドラスが宿り操る無人ブレードナイト、3機のうち1機が被弾し、火を吹きながら地表に落ちて爆発した。
『『 Non. 想定外、通常ライナーに非ず。 警告、排除対象、レオンを脅威度『S』と認定、最重要緊急排除対象と認定する。 援護要請ッ!、 最重要緊急排除対象、レオンを殲滅せよッ! 』』 ピピピッ! ビーーーーッ!
レオハルトとミドラスのブレードナイト戦は一進一退であったが、遂にレオハルトの一撃をもらい、1機を失った。 その状況を見たミドラスは、彼の力量に恐怖し、レオハルトを危険視して、さらに援軍を呼んだ。
ウイインッ! シュバッ シュバッ シュバアアアーーッ! バッ! バッ!
バウウウウーーーーッ! ブオンッ! ドドドドーーッ!
それは、無人ブレードナイト「ファウストFAV22」と有人機であったはずの「ヴェラールXC5」、両機合わせて18機の援軍だった。 「ファウストFAV22」は当然、「ヴェラールXC5」にも、ライナーは搭乗しておらず、全て無人機であった。
ピッ ピッ ビコビコ ビーッ!
「はは…参ったねこりゃ…どうすっかなあ…」 ググッ! ガシガシ…
ミドラス3機相手で互角、それが追加18機の合計20機である。(1機は今しがた撃墜)それを見たレオハルトは流石に困惑し、頭をかいていた。
ピッ ピッ ピコピコ ビッ! ビコビコッ!
「手練れの残りが2機、それに加えて増援が18機か……」 ピッ カチ タタタ
レオハルトは、自機、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」のステータス表示を出した。 そこには、「ヤクト・ベルテッサ」の現在の状況が表示されていた。
「魔力変換はよし、稼働可能時間…あと1時間弱、武器…フォトンライフル残弾 3240、対ブレードナイト用Sマイン…0、近接用フォトン機銃20mm残弾 5140、あとはライトニングセイバー2基…これだけか」 ピッ タンタン ピコ
この表示はブレードナイトにとっては、すでに緊急補給レベル、ブレードナイト戦闘の様な激しい戦闘は出来ないという表示であった。 特に、稼働可能時間、これはブレードナイトがスムーズに動き、母艦まで帰り着くの迄の時間である。
元々、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサD型シーラ」は局地戦闘機、稼働時間が「アウシュレッザ」の約半分強といった機体であった。 稼働時間が短い代わりに、高速と俊敏性は「アウシュレッザ」のそれを凌いでいた。 現在残りが2機なら兎も角、増援が18機、到底20機ものブレードナイトを相手にし、母艦まで帰れるものでは無かった。
ピッ タンタン… ピタッ…
「ふッ…アニスすまん…どうやらお前の所まで行けそうにも無いぜ…(約束…破っちまうが、お前の事、愛してるぜ…アニス…)」 ググッ
レオハルトは両目を、神聖艦「ルシェラス」に向け、今、この場にいないアニスに謝罪と自分の気持ちを送った。
シュバアアアーーッ! ゴオオオオオーーッ! ブオンッ!ブオンッ!
『『『『『 最重要緊急排除対象、レオンを殲滅する 』』』』』 ピピピ!
ミドラスが操る無人ブレードナイト部隊が、たったの1機、レオハルトのブレードナイト「ヤクト・ベルテッサD型シーラ」を包囲した。
・
・
・
ー戦闘空母「フェリテス」 ブレードナイトデッキー
ガガガッ! ビュンビュウンンッ! ジジジ ジジッ!
「おらああッ! さっさと補給作業を終わらせんかあッ!」 バッ!
「「「「 はいッ! 班長ッ! 」」」」 ダダダッ! バタバタ ドタバタ!
ピー ピー ピー ピー
「オーライッ オーライッ! ストーップッ!」 ガシュンッ!
「補給作業始めええーーッ!」 ピッ ブオオン ブオオン ブオオン…
戦闘空母「フェリテス」のブレードナイトデッキ内は、帰還して来た第2中隊のブレードナイト達で慌ただしかった。 帰還した機体を全て修理、整備、弾薬補給し、いつでも再出撃出来るようにする為であった。
ガヤガヤ ダダッダッ! ガンガン ウィイイイン! ジジ ピーッ ピーッ
ザッ ザッ ザッ
「甲板長」 サッ!
「ああん? なんだお前さん達か…無事帰還、おめでとう」 サッ
「「「 ありがとうございます 」」」 ササッ
「そう固くなるなッ! ライナーってなあなッ 出撃して無事帰って来れれば一人前よおッ! お前達は無事帰って来た、もう立派なライナーだぜ、胸を張りな胸をッ! ガハハハッ!」 バンバン
「「「 うわあッ!(きゃあ!)」」」 ヨロ…
ガスト准尉達3人は、甲板長に背中を叩かれ、足元がおぼつかず、よろめいていた。
「なんだなんだ、魔力不足か…今しばらくは待機だな!」 二ッ
「「「 はい… 」」」
第2中隊の帰還したライナー達は、その殆どが魔力を使い切り、ライナー待機所で横になって休んでいた。この事を見ても、いかに英雄の3人や、レオハルト中佐達が規格外である事がわかる。 全力出撃での戦闘、防衛任務、殆どの者が疲弊し、魔力不足になっている時、彼らだけはその兆候が見られず、今も全力戦闘中だった。
ダダダッ
「班長ッ!」 ザッ!
「なんだ、緊急か?」
「いえッ! 第2中隊、「アウシュレッザ」2機、「ウルグスパイアー」4機、補給整備完了、何時でも出せますッ!」 ババッ!
「うむ、ご苦労ッ! と言っても肝心のライナー達がなあ…」 ちら…
ガスト達を始め、第2中隊のライナー達は、未だ魔力回復に至らず、とてもブレードナイトを操れるものでは無かった。
「とにかく待機だッ! 残りの機体も早く整備しろッ!」 バッ
「了解しました」 バッ! ダダダッ!
整備兵は駆け足で、整備中のブレードナイトの元へ走っていった。
「じゃ、じゃあ、我々も待機室に行きます」 ヨロヨロ
「失礼しますね、班長」 ヨロヨロ
「おうッ! しっかり休めよッ!」 サッ
そう言って、ガスト達も待機所に入っていった。
「ふうう…こんな時、敵に襲われたらイチコロだぜ…」 ダッ ダッ ダッ
整備班長は、一抹の不安を持ちながら自分も持ち場に向かっていった。
・
・
ピッ ピコ ピピピピピ ヴオンッ! タタタタタ ビコッ!
ポ…
『L……レオン…』 ピッ
ポ…ピポ… ビコビ! ピピピピピッ!
『Lst. レオンッ! レオンが危ないッ!』 ピッ ビコッ!
ヒイイイイイイイイイイイ… ビコビコ ピッ ピッ タタタ ピピ
整備班長達が去ったその場所の、第一ハンガーデッキ、そこに収まっていた1機のブレードナイト、「アウシュレッザ」が動き始めた…
ブンッ! ピッ ビビュンッ! ポン!
『Rog. 全システム異常なし、起動完了、発進準備…レオン、今行きます!』 ピッ
バシュバシュバシュウウッ! ガコオンッ!
『Lst. 戦闘空母「フェリテス」へのオンライン、発信プロトコル開始』 ピッ
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ガコオンッ!
「な、なんだッ! 何が起こってるッ⁉︎ こりゃあいったい…」 バッ!
ワーワー ドタバタ バタバタ ザワザワ
整備班長以下全員が、急に動き出した「アウシュレッザ」に驚いてデッキ内は騒然としていた。
『Rog. 電磁カタパルト起動ッ! 発信準備』 ピッ
グワアアッ! ガシュン ガシュン ガシュン
それは、レオハルト中佐の愛機、ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」だった。
ピッ
『Rog. アニスには禁止されてましたが、緊急事態です。アニス、貴女のレオンを助ける為です、今一度だけ、貴女から授かった力、使用します』 ピッ ビビ ビコッ ピーーーッ!
ー戦闘空母「フェリテス」ブリッジー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「艦長ッ! ブレードナイトデッキがジャックされました。こちらからの操作ができませんッ!」 カチカチ ブーッ! カチカチ ブーッ!
「どういう事、いったい何が起こってるの!」 バッ
ビーーーーッ! ガシュンッ シャアアアアーーッ ドオオオオオオーーッ!
「電磁カタパルト始動! ブレードナイト『アウシュレッザ』発艦ッ!」 ピコ
「誰ッ⁉︎ 誰が乗ってるのッ⁉︎」 ガッ!
「そ、それが…発艦した機体には誰も乗ってません!」 ピコ
「誰も乗ってない?…馬鹿な、我が軍のブレードナイトは全て有人ッ! ライナー無しでは起動すらしない筈だッ!」 バッ!
戦闘空母「フェリテス」艦長、アリエラの言う通りであった。帝国のブレードナイトは全て、個人所有である。したがって、その個人、ブレードライナーが操縦席に座り、魔力を放出した時にスイッチが入り起動する、しかし、ブレードライナーがいないのであれば、そのブレードナイトは全く動かない筈であった。
それが勝手に動き、あまつさえ戦闘空母「フェリテス」の発艦工程が勝手に動くなど理解できなかった。
「艦長ッ! 電磁カタパルトッ 2番、3番、4番始動ッ! ブレードナイト発艦しますッ!」 ピッ ピピピ ビコッ!
ビーーーーッ! ガシュンッ シャアアアーーッ ドオオオオオオーーッ!
ビーーーーッ! ガシュンッ シャアアアーーッ ドオオオオオオーーッ!
戦闘空母「フェリテス」からは、ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」に続き、次々とライナーを乗せないまま、整備の終わったブレードナイトが発艦していった。
ピッ ビコビコ ピピピピピ ピッ
「『アウシュレッザD型Gカスタム』ガゼル機発艦ッ! 同じく『アウシュレッザD型ランサー』レコン機発艦ッ! 『ウルグスパイアーD型FAフロンティア』ケベック機、ユミア機、セラード機、セリカ機発艦ッ!合計6機がライナー無しで発艦しました」 ババッ ピッ ピッ
「前代未聞だわッ! ブレードナイトが主人であるライナーを乗せずに動くなんて…」 ググッ
アリエラは只々驚くことしか出来なかった。こんな事は帝国大陸艦隊始まって以来、聞いた事も見た事も無かったからだった。 ブレードナイト「アウシュレッザD 型アウディ」は、アニスが手がけた存在、その能力の1つが、ミドラスと全く同じだったと言うのは偶然の事だった。
ビッビーーーー!
「艦長ッ!」 バッ!
「今度はなにッ⁉︎」 ババッ!
「第3ハッチ、電磁カタパルト5番、6番始動ッ! ブレードナイト『ヤクト・ベルテッサD型シーラ』2機、発艦しますッ!」 ピコ
「なんですってええーーッ!」 ババッ!
ビーーーッ! ガシュン シュバアアアーーーーッ! ドオオオオオオーーッ!
シュバアアアアーーーッ!
「ブレードナイト全機、最大速度で敵大型艦に向け突入して行きますッ!」 ピッ ピッ ビコッ ピッ!
「何が起こってるの…」 ドサッ!
アリエラは艦長席に座り、大型モニターに映るブレードナイト隊を見ていた。
ヒイイイイイイイイイイイーーーーッ
『Rog. 稼働可能なブレードナイト、全機発艦、コントロール完了、全機に指令、我に続け』 ピッ グイッ!
バウウウウウウウーーーッ! シュゴオオオオーーッ!
ピピ ビコビコ ブオンッ!
『『『『 指令受諾、了解シマシタ 』』』』 ピッ グイッ! グイッ!
ババババッ! バウウウウウウウーーーッ! シュバアアアアーーッ!
ブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」に率いられた、ブレードナイト隊 合計11機が、レオハルト中佐の元へと、スラスターを全開にして飛んでいった。
ー神聖艦「ルシェラス」艦内通路ー
カツン カツン カツン
テクテク テクテク ザッ! ピタッ
「ん⁉︎」 ピクッ クルッ ファササア〜
「どうかされましたか? アニス様」 ピタッ
「レオン…今、何か言った?」 ジイイ…
アニスは何かを感じ、レオンがいる方向を見て立ち止まっていた…
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。