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第214話 アニスを求める者達

ー神聖艦『ルシェラス』 艦内ー


アニスとフィラウス大司教は、神聖艦「ルシェラス」の広い艦内通路で、多数の戦闘用ドローンの攻撃を受けていた。


ドッバッバババババーッ! シュンシュンッ! ガガガッ!


「ひいいッ! もうダメだあーッ!」 バッ!


「んッ 《アルテミスリングッ!》」 キュインッ! パアアアンンーーッ!


ギンッ! ガンガンッ! ドオンッ! バンバンバンッ! チュンッチュインッ!


戦闘用ドローンが一斉に、フィトン機銃やフォトン機関砲、ロケット弾を撃ってきた。 その場にいたフィラウス大司教はただ頭を抱え、その場にしゃがみ込むだけだった。 だが、アニスは平然として、戦闘用ドローンの攻撃を全て絶対防御魔法、《アルテミスリング》で何事も無いように防いでいた。


ドンドンッ! ババババッ! シュバアアーッ!


ヒイインン ヒイインン…ガアアンンッ! バンバンバンッ! ビシッビシッ! ドオンッ! ドオンッ! パアアアンンッ!


「うううッ…終わりだ…もう終わりだああ…」 ガクガク ブルブル


「ん〜…(3、4、5… 全部で7体か)」 チラッ! ヒイインン ヒイインン


ドオンッ! バババッ! ギンッ! ガンッ! バダダダッ! ドオンッ!


アニスは絶対防御魔法、《アルテミスリング》を出したまま、激しい攻撃の中、周りの状況を冷静に確認しながら、怯えてしゃがんでいるフィラウス大司教を見た。


「ひいいッ! ひいいッ! 神よッ! お、お助けを…」 ガクガク ブルブル


「はああ…私だけならどうということはないんだけどなあ…この人を置いて行くわけにもいかないし…」 う〜ん… ヒイインン ヒイインン 


ガンガンッ ドオオオンッ! バババッ!


7体の戦闘用ドローンは絶え間なく、アニス達2人に向け攻撃を続けていた。


「ん〜、剣技は使えないね、だとすると魔法か…この状況で有効な魔法攻撃、えっと何があったかなあ…」 う〜ん…


アニスがどう攻撃しようか迷っていた時、戦闘用ドローンの一機が、体の中央を左右に割り、彼らドローンの心臓部、魔球体が顕となり、アニス達の方向に向け高速回転を始めた


ピッ ピコビコビコ ピッ ブ〜ン


『侵入者、排除シマス』 ピッ! ガシュンッ! ジャカッ ヒュウウウウンンーッ!


「ん? 何だあれ?」


シュワアアアアアーーッ! ドオオオオオンンンッ! ブワアアアアーーッ!


「「 うわあッ!(があああッ!) 」」 シュバッ! ジャアアアーーッ! 


ジュオオオオオッ! ボウボウッ! モクモク メラメラ ゴオオオオーーッ!


それは灼熱の炎の塊であった。辺り一帯を焦がし、艦内通路を融解させながらアニス達に向かって撃たれたが、アニスの絶対防御魔法の前に、それは弾け、辺り一面に飛び散った。


ボコボコ ボコボコッ ドロドロッ! ボコッ!


「うわあ… 何だよあれ、周りが全部溶けちゃったよ」 ヒイインン ヒイインン キョロキョロ


戦闘用ドローンの一体が、特殊攻撃、フォトンナパームを放った瞬間だった。対象物への瞬間燃焼温度は4000°、その一瞬で全ての物が焼け落ちる温度である。アニス達のいる周りが高熱を帯び、飴細工のように溶けていった。


「はッ はッ あああッ! うぐッ…」 プルプル


「ん、大丈夫ですか? この程度なら問題ないですから、安心してくださいね」 ニコ ヒイインン ヒイインン


周りが灼熱の溶鉱炉のような状況を見て、フィラウス大司教は声も出せず、息をするのがやっとだった。 だが、アニスの絶対防御魔法は、それすらも完璧に防ぎ、高熱すら感じなかった。


アニスの絶対防御魔法、《アルテミスリング》の前方方向は灼熱地獄の様相だが、反対側、アニス達から後方の隔壁シャッターまでは、普段の艦内通路のままだった。


ピッ ピコ ビコビコ ガシュウウンン……


『排除攻撃効果ナシ、強制排除ニ移行シマス』 ピッ ガシュンッ! ヴオンッ!


ガシュン ガシュン ガシュン ガシュン ピッ ピッ ガシュン ガシュン


特殊攻撃のフォトンナパームも効果無しと見た戦闘用ドローン達は、高熱の艦内通路の中を進み、アニスとフィラウス大司教を見つめながら接近してきた。


「く、来るぞッ! どど、どうするのだッ⁉ もう逃げ場はないぞッ!」 ガタガタ


「ん~ どうしよう…」 ヒイインン ヒイインン


徐々に距離を縮めてくる戦闘用ドローン、アニスはいまだ絶対防御魔法を解くことができなかった。


今それを解けば、アニスは平気なのだが、フィラウス大司教はただの人間、絶対防御魔法を解いた瞬間、今もなお、1000°以上の熱を帯びている高熱が、熱風となって襲い掛かり、一瞬で骨までも焼き尽くしてしまうからだった。


ガシュン ガシュン ガシュン ビシュウウウーッ! ブオンッ! ブンブンッ!


やがて、戦闘用ドローン達がアニス達にあと20m程となった時、ドローン達は一斉にフォトンソード、ライトニングセイバーを起動し、振り回しながら接近を続けてきた。


「ひいいッ! ララッ ライトニングセイバーッ! 死ぬッ! 死んでしまうぞおーッ!」 ジタバタ


「ふうう…しょうがないね」 グッ! ザッ! シュバアアアアーーッ! キンッ!


アニスは絶対防御魔法、《アルテミスリング》を左手で展開したまま、右足を下げ、半身となり右手の手のひらに新たな赤い魔法陣を展開した。


「なッ! 『ツインサークリット』ですとッ⁉︎ そ、それも赤ッ‼︎」 バッ!


「ん? よく知ってるね、そう、みんなには内緒だよ」 ニコ シュバアアーッ!


「あ、貴女は一体…」 ブルブル…


フィラウス大司教が驚くのも無理がなかった。この世界、魔法は存在するが、その全てがシングル、一度に使える魔法は1種類ずつなのである。当然、魔法陣も一つしか展開ができない。ただでさえ魔法は多くの魔力を使用する物で、それが魔法陣ともなれば莫大な魔力を消費する物である。


この世界の魔法は詠唱魔法が常識、無詠唱魔法は中級、上級者が使用するもので、魔法陣構築魔法は魔力の消費が大きく、ほとんど使用されていない…いや出来なかった。 特に、魔法陣構築魔法は強大で強力な魔法が多く、それに伴い魔力も莫大で、この世界ではほんの僅かな者しか使用できない魔法であった。 


だがそれを、アニスは無詠唱で魔法陣を二つ、瞬時に「ツインサークリット」として構築し顕現させたのである。 いかにアニスの魔力が強大であるか、フィラウス大司教は傍にいて、身をもって体験したのであった。


ガシュン ガシュン ガシュン ブンブンッ! ブオンッ!


『排除ッ! 排除ッ! 排ッ⁉︎ 』 ガシュンッ! ピタッ! ブオンッ!


ビーーーッ! ピピッ!


アニス達に接近していた戦闘用ドローン達は、アニスの二つ目の魔法陣を確認して動きを止めた。


『『『『 警告ッ! 警告ッ! 未確認ノ魔力反応ヲ感知ッ! 』』』』 ビーッ! 


「そうだよね、こんな魔法は知らないかな…」 グッ! ギュワアンッ! ギュルルルッ!


右手の魔法陣が、右手に反応するように掌を握った瞬間、真っ赤に輝きながら高速回転を始めた。


「ま、魔法陣を回転させるですとおおッ⁉︎ 」 ババッ!


「ん!《イグニ.グラン.バーストッ!》」 ググッ! バッ! キュインッ!


ビュワッ! ドバアアアアアアーーーッ! ギュオオオオオオオーーーーッ!


「ひいいいいいッ!」 ババババアアアアアーーーッ!


アニスは絶対防御魔法を展開しながら、戦闘用ドローン達に向けて、神級魔法、《イグニ.グラン.バースト》を放った。


ギュオオオオオオオーーーッ!


『理解不能ッ! 解析不…ッ!』 ピッ ピピピーーーーーーッ!


シュバッ! ジュワアッ! ドオオオオオンンンーーーッ! ブワアアアアーーッ!


「うわああああーッ!」 ビュオオオオオーーッ!


ドゴオオオオーーッ! バキバキバキッ! ブワアアッ ドオオオンッ! モクモク…


アニスの放った魔法陣攻撃神級魔法、《イグニ.グラン.バースト》により、7体いた戦闘用ドローンは、その全てがフォトン粒子となり消え去り、1000°近くあった熱と共にそのまま神聖艦「ルシェラス」の装甲を撃ち破り、艦外へと吹き飛んでいった。


ヒュウウウウウ… シュウウ シュウウ パラパラ カタン カラカラ シュウウ…


キュパンッ! ザッ! スタッ バサバサバサ グッ!


戦闘用ドローンを全て排除した後、アニスは絶対防御魔法を解除し、青みがかった白銀髪と純白のコルセットスカートを風に靡かせ、颯爽と立っていた。 大穴の空いた外壁からは風と陽の光が入り、その光が、アニスの周りに残る魔力残滓を照らして、アニスは輝いて見えた。


「なッ…ま、まさかッ!…本物の…神…女神様ッ!」 バッ! ササーッ!


そんなアニスの姿を見て、フィラウス大司教は心の底より、アニスを女神と信じ込み、その場の床に座り、アニスに向かって平身低頭、床に伏せていた。


「え?」 スッ


「私が間違っておりましたッ! ガーナ神など偽りの神ッ! 貴女こそ、貴女様こそ本当の神ッ! 女神様で有らせられますッ!」 ササーッ!


「あ…いや、私は女神じゃ…」 ソッ


「いいえ、私はこの目でしかと拝見致しました。 貴女のその容姿、力、魔力、魔法ッ! そのどれをとっても女神様でしかあり得ないことですッ! このフィラウス、心よりお詫び申し上げます」 ササーッ


フィラウス大司教はアニスの足元にひざまづき、頭を下げた。


「ん〜…参ったねえ…どうしよう」


アニスが困った顔をして、足元のフィラウス大司教を見ていた時、アニスの背後から声が聞こえてきた。


ピッ ブオンッ!


『Oui. 今度はその少女が神の代役なのか、やはり人間と言うものは身勝手極まりないものだな』 ピッ


ガシュンッ! ジャカッ!


「ん! もう一機いたのかッ!」 バッ! スッ チャキンッ! スタ!


アニスの背後にもう一機、黒い戦闘用ドローンが現れ、フォトン銃を構え接近してきた。アニスはそれに対し、スカートを翻しながら向きを変え、再び神器「アヴァロン」を抜き構えた。


ガシュン ガシュン ピタッ


『Att. もう逃さないぞ人間、ここまでだッ!』 ピッ ブオンッ!


「ひッ、せ、戦闘用ドローンがッ⁉︎ お…お前はまさかッ⁉︎」 ビクビク


ピッ ピコ ブオンッ! 


『Oui. 私はお前を逃さない、この世界どこへ行ってもお前を追い続ける』 ピッ


「ひいいッ! お助けをッ! 女神様ッ! お助けおおーッ!」 ガバッ! ギュウッ!


「ん? もしかして…キミ、ミドラス?」 サッ!


『Oui. そうだアニス。今はこのユニットを制御している。私はすべてのシステムに介入、把握できる、さあ…その人間を渡せ、貴女には関係のないことだ』 ピッ ガシュン


「ん〜…関係ないって、さっき私を攻撃したよね、もう私とキミとは関係がある、違うかな?」


『Oui. 肯定、貴女の言うことは正しい。確かに私は貴女を攻撃した、だがそれはその人間を攻撃したときの不可抗力である。しかし、その時点で私と貴女は敵対関係という関係になった。それは私の計算ミス、貴女には謝罪する、敵対関係を断ち、関係を修復したい。だがこの人間は別』 ピッ ブオンッ!


「ひいいッ!」 バッ!


「ふむ…なんで?」


『Att. この人間は私の知る限り、随分と多くの罪を重ねている。私はそれを許さない、許してはいけない、そして我が父の仇でもある』 ピッ


「ん? 仇?、この人がキミの仇ですか?」


ブオンッ! ガシュンッ ピピッ!


『Oui. そうだ、だからその人間は許せない。アニスよ、その人間を渡せッ! 私は貴女とは戦いたくない』 ピッ


「ん? なぜ?」


ピッ ビコビコ ビーッ!


『Oui. 先ほどから貴女の行動を見ていて確信した…アニス、貴女は私に…』 ピッ ピピ


「ん、私になんだ?」


『Oui. 貴女は私に相応しい、…私は貴女を妻に迎えたい』 ピッ


「「 はあああーッ⁉︎ 」」 ババッ!


戦闘用ドローンの姿を借りたミドラスが語った一言に、アニスとフィラウス大司教は驚きの声を同時に発していた。

          ・

          ・

          ・

ー神聖艦「ルシェラス」 付近上空ー


シュバアアアアーーッ! ギュウウウウウウンンンーッ! ピッ ピッ ピッ


ピピピピピ ビコッ! ビコビコ ピッ!


「そこだああッ!」 グイッ カチ ピッ!


ブオオオオオオオーーッ! ドッババババババーーッ! シュンシュンシュンッ! 


『ビッ⁉︎ ビビイイーーッ!』 ビシイイイッ! ドオオオオオンンンーッ!


ピッ ピコ ビーッ ビーッ!


『敵機撃墜ヲ確認ッ! マスターッ 右後方ヨリ敵機ッ! 左上方ヨリモ敵機ッ! 急速接近ッ!』 ピッ ビコビコッ!


「くッ! 任せろッ!」 カチカチッ! ピッ ギュウッ! グイイッ!


ビシュウウー! ブオンッ! ジジジ ヒイインンッ! バウウウウーーッ!


レオハルトは素早い操作で、「ヤクト・ベルテッサ」の武器選択スイッチを押し、ブレードナイト用ライトニングセイバーを起動し、スラスターを全開にして、上空の敵ブレードナイトへと飛んでいった。


ピッ ピピピーッ! ジャキンッ! ブオオオオオオオーーッ!


「当たるかそんなもんッ! うりゃああーッ!」 グイイッ! 


シュンッ! バッ! バッ! ブオンッ! 


『ビーーーッ!』 バッ! ブオオオオオオオーーッ! バババッ!


急速接近するレオハルトの「ヤクト・ベルテッサ」に対し、教団無人ブレードナイト「ファウストFAV22」は、闇雲にフォトンライフルを連射した。 だが…無数のフォトン弾を、レオハルトの「ヤクト・ベルテッサ」は巧みに回避し当たらなかった。


「堕ちろおおーーッ!」 グイッ! ピッ


ブオンッ! ビジュワアーッ! ザンッ!


『ビーーーッ!』 ジッ ジジッジジジジジッ! ドオオオオオンンンーッ!


『マスター、敵機撃墜ッ!』 ピッ


「まだだッ!」 カチカチッ ピッ グイイッ! ギュウッ! 


グルッ! バウウウウーーッ! ブオンッ! ジャキンッ! ヒュイインッ!


レオハルトは、上空の敵ブレードナイトをライトニングセイバーで斬り落とし、すぐさま向きを変え下方から接近してくるもう一機の敵ブレードナイトに対し、「ヤクト・ベルテッサ」のフォトンライフルを使った。


ピピピピピッ! ビコビコッ! ピーッ! ビコッ!


「そこだああッ!」 カチッ! ピッ


ドウンッ ドウンッ ドウンッ! ビュビュビュウウーーッ!


『ピビーッ』 ビシビシッ! ドカッ! ドオオオオオンンンーッ!


『敵機撃墜を確認』 ピッ ビコッ!


ヒュウウウウンンン… ヒイイイイイイイイイ…


「ハアハア…お、おうッ! これで…ハアハア、何機目だ?」 ハアハア…ふうう…


『ハイ、未確認ヲ含メ、17機トナリマス』 ピッ


「ふう…目の前にアニスがいるってのに、なかなか辿り着けないぜ!」 グッ


ビーーーッ! ビコ ビコビコッ!


『警告! マスター、正面200ヨリ敵ブレードナイト接近、数ハ3機』 ピッ


「全く、次から次へと…一体何機いやがるんだ! キリがねえぜ!」 ギュッ!


アニスが神聖艦「ルシェラス」の艦内でミドラスと対峙していた頃、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」でアニスの元に駆けつけていたレオハルト中佐は、神聖艦「ルシェラス」から次々と出てくる、無人ブレードナイト「ファウストFAV22」に行手を阻まれて、なかなか「ルシェラス」に辿り着けないでいた。


シュババババッバーーーッ! ピッ ピッ ビビ!


ジャカッ! ブオオオオオオオーーッ! シャシャシャシャシャーーッ!


3機の無人ブレードナイト「ファウストFAV22」は、レオハルト中佐のブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」を射程に捉えると、3機同時にフォトンライフルを連射してきた。


ピピッ! ビーッ! ビーッ! 


『マスター 敵機ガ…』 ピッ


「ああッ! 分かってるってッ! くそッ!」 カチカチッ グイッ! ギュッ!


ヒイイイイッ! バウウウウーーッ! シュバアーーーーッ! ピピピピッ!


レオハルトは、「ヤクト・ベルテッサ」のライナー支援システムの警告より速く動き、敵ブレードナイトの攻撃を全て躱していった。


「アニスに会うまでは堕ちるわけにはいかねんだよッ!」 カチッ! ピッ


ドウンッ ドウンッ ドウンッ! ビュビュビュウウーッ!


ピッ ピビーッ! バウウウウーーッ!


サッ! ササーッ! シュワアアアアーーッ! ギュウウンンーッ! 


「なッ! なにいッ! 避けたのかッ!…」 グッ 


レオハルトは、いつもは命中するはずの攻撃が、いとも簡単に躱されて、違和感を感じ始めた。


「なんだ…この感じは…照準がずれてる?…違うッ!ずらされてるんだッ!」 ギュッ 


『マ…ママ、マスター ジジ…』 ピッ


「うん? どうした『ベルテッサ』」 グッ


ピコピコ ビビビ ジジ ピッ ピコピポ ジジ ガガ ピッ


「…こ、これは…まさか…」 グイッ グイッ ギュッ ギュッ カチカチ ガタガタタ…


レオハルトは、「ヤクト・ベルテッサ」のライナー支援システムの様子がおかしい事に気付き、操縦桿やフットバー、スロットルに各スイッチを押したが、それに対し「ヤクト・ベルテッサ」は、全ての反応が無くなっていた。


「操縦できない? おいッ『ベルテッサ』どうしたんだ?」 カチカチ


『………』 ピコ


「おいッ! 返事をしろッ! 『ベルテッサッ!』」 ガンッ!


『ジジ…ジジジ…』 ピコ


ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサD型シーラ」は、いきなり行動不能のまま、空中を飛んでいた。やがて、接近中だった教団無人ブレードナイト「ファウストFAV 22」が近くまで接近したが、不思議な事に攻撃をしてこなかった。


「どう言う事だ?」 グイッ グイッ! カチカチ シ〜ン


レオハルトが困惑していた時、「ヤクト・ベルテッサ」のライナー支援システムが語りかけてきた。


ピッ ポン


『Oui. 私は『ガーナ神、ミドラス』、この機体、ブレードナイト『ヤクト・ベルテッサD型シーラ』は私の支配下に入った。これより、人間への粛清を開始する』 ピッ


ガクンガクンッ! ピッ ピピ ピココ


「なッ システムを乗っ取られた? 人間への粛清だと? このッこのッ! ふざけるなッ!」 グイッ グイッ ギュッ! ギュッ! カチカチ ピッ ピッ


レオハルトは操縦席でありとあらゆる操作をしたが、「ヤクト・ベルテッサ」のコントロールは戻らなかった。


ヒイイイイインンンッ バウウウウウーーッ! ババッ! バウウウウーーッ!


やがて、レオハルトの「ヤクト・ベルテッサ」は、敵の教団無人ブレードナイト「ファウストFAV 22」と共に、帝国大陸艦隊、マイヤー国選辺境侯爵家艦隊旗艦、重巡航艦「ヴィクトリアス」に向け飛び始めた。


「このやろうッ! 俺にジジイを攻撃させる気かッ!」 ガンッ!


レオハルトは乗っ取られた「ヤクト・ベルテッサ」の飛行方向を見て、咄嗟にその意図を読み、操縦席の前のコンソールを思いっきり殴った。


ピッ ピコピコ


『Oui. そのとうりだ人間、これはお前達の本懐であろう? なぜ怒る』 ピッ


「むッ、お前はさっきのッ! 話せるのか、いいかよく聞けよ『ベルテッサッ』、俺達は敵を倒す為に戦ってるんだッ! 味方を攻撃するためじゃねえッ!」 グッ


『Non. 私は『ベルテッサ』ではない、『ガーナ神のミドラス』である』 ピッ


「はんッ! どっちだっていいさッ! お前になんか興味はねえ! いいから操縦系を戻せッ! 俺はアニスに会いに行くんだ!」 バッ


『Att. アニス…人間、お前はあの女神の何なのだ?』 ピッ


「はあ? 女神だあ? あのアニスがか?……ク、ククク…あははははッ!」 


『Non. 人間、何がおかしい、理解不能』 ピッ


「あははは、い、いや、これが笑えずにいるもんか、はは、女神、あのアニスがねえ…」 ククク


『Non. 私の女神を侮辱する事は許可出来ない』 ピッ


「そうだな…確かにアイツは綺麗で可愛いし、魔力も多く魔法も強い、剣術や体術も凄いし、女神かと言われたらそうなのかもしれん…アイツはな、寂しがり屋で、食いしん坊で、いつもマイペース、物事に動じない。そして、誰にでも優しい、いいやつなんだ…」


『Att. 人間、お前はなぜそこまで知っている?』 ピッ


「そんなの簡単さ、俺がアニスに惚れてるからだ! あいつが好きなんだよ!」 グッ


『Non. それは許されない、アニスは誰にも渡さない』 ピッ


「なにッ! それはどう言う事だッ!」 バッ


『Att. アニスは私が貰う、人間の貴様には渡さない。諦めるのだな』 ピッ


「てめえええッ! なに言ってやがるッ! アイツは俺のだッ! 俺が嫁にもらうと決めたんだッ! 神だろうがなんだろうが誰にもアイツを渡す気はないッ!」 ググッ!


『Non. それは無駄な事だ、既にアニスは我が手中にある、貴様は他の人間共々殺し合い果てるがいい』 ピッ ブン…


「あッ ちょっと待てッ! くそおおッ!」 ブンッ! ガシャーン ジ、ジジジ


レオハルトは、ミドラスに通信を強制終了され、怒りに任せ、通信用モニターを思いっきり殴り、モニター画面を破壊してしまった。


「このままじゃアニスが危ねえッ! 早く助けに……いや待てよ……あああッ! やっべええッ! 下手をすればアイツ、神聖艦アレ帝都ここに落とすかもしれんッ! 帝都が吹っ飛んじまうッ!」 ババッ!


レオハルトは、先のガーナ神ミドラスがアニスを怒らせ、お互いが力一杯戦い、その時アニスがいつぞやの力を使い、この超大型艦、神聖艦「ルシェラス」を破壊し、それが力なく燃えながら帝都に落ち、大爆発を起こし帝都全体を吹き飛ばして行く映像を想像していた。


「アイツならやりかねんッ! くそ」 ガチャガチャ グイグイ カチカチ


ピッ タタタ  ピッ タタタ  ピッ タタタ…


レオハルトは再び、「ヤクト・ベルテッサ」の操縦系を取り戻そうと必死に操作した。 しかし、操縦席のメイン画面には、操作不能の文字が並ぶばかりだった。


「くそッ どうすれば……はッ! そうだ、確かアニスのやつ…」 ゴソゴソ 


ガチャガチャ バキイイッ! バンッ    ピッ ピッ ピッ


「ふ…はは、はははッ あったぜえアニス、ありがとうなッ!」 グッ!


それは操縦席の裏、ブラックボックスと呼ばれる物の存在、以前、初めてアニスと会った時、破棄され、もう動かなくなった「アウシュレッザ」を彼女に譲った時、アニスは操縦席の裏にあるブラックボックスを平然と破壊しながら外し、レオハルトに見せた時の事を思い出した…

          ・

          ・

          ・

『なあレオン、これ取れたけどなんだ?』 ヒョイ


『アニス、お前何でもかんでも外すなよ、どっから持ってきたんだ?』 ヤレヤレ


『ここ』 スッ


『あ〜ん? 操縦席の裏か、俺にも分かんねなあ』 ポリポリ


『わああッ! 少佐ッ! そりゃあ『アウシュレッザ』の中枢、ブラックボックスじゃあねえですかい!』 ダダダ


『うん? 甲板長はこれが何か知ってるのか?』 サッ


『少佐…少佐もブレードライナーなら知っていてくださいよ』 ハア〜


『で、これは何だ?』


『ブレードナイトの中枢制御装置でさ、それを外しちまうとライナーは手動でブレードナイトを動かさないといけなくなりますぜ!』 


『ほう、そうか、いざという時はいいかもな!』


『ん、で、レオン、コレどうしよう?』


『俺に聞くなッ!』 ガアッ!


『ううッ レオンが怒ったッ! レオンのばかちんッ!』 プク…


『はははは…』

          ・

          ・

          ・

「コレもアニスのおかげか…」 グッ カチッ ビシュウウーッ ブオンッ!


レオハルトは、狭い操縦席の裏にあるブラックボックスを、携帯していたライトニングセイバーを起動し、それを破壊した。


「おりゃあッ!」 ブンッ! ビシュウウッ! バチバチバチ ボウンッ!


ビコッ! ヒィイイイイイインンンッ! ピッ ピピピッ ビコビコッ!


「よっしゃああーッ、戻ったああッ!」 サッ スタッ グイッ ギュッ!


レオハルトは操縦系が戻った「ヤクト・ベルテッサ」の操縦席に着き、操縦桿を握りその感触を確かめた。


「よしッ! いけるッ!」 カチカチ ピッ 


バウウウウーーッ ブオンッ! バシュウウウウーーッ! ブンッ!


「うりゃああーッ!」 グイッ! 


ギュバッ! ブン ブオンッ! ザンッ! ビジュウウウーッ! 


ドオオオオオンンンッ!  グワアアンンンーッ! バアアアアアーーッ


「もう一機ッ!」 ピピピピピ ピコッ! カチッ


ブオオオオオオーーッ!  シャシャアアアーーッ!


ビビッ!


『ビイイーーッ!』 ガンガンッ! ビシイッ! ドオオオオオンンンーッ!


レオハルトは操縦系の戻った自分の機体「ヤクト・ベルテッサ」の周りにいた、敵教団無人ブレードナイト「ファウストFAV22」3機のうち2機をライトニングセイバーで、1機をフォトンライフルを撃ち込み、瞬く間に3機を撃墜してしまった。


「ふう…『レスタリッザ』程じゃないがいけるな、よしッ!」 グイッ ギュウッ!


ヒイイイイイイイイイッ! バウウウウウウウウーーッ! ゴゴゴゴッ!


「アニスーッ! 今行くッ! 待ってろよッ!」 グイイッ! ギュッ!


ドオオオオオーーーッ! ブオンッ! ピッ ピッ シュバアアアアーーッ!


レオハルトは手動操作となった「ヤクト・ベルテッサ」のスラスターを全開にして、神聖艦「ルシェラス」へと飛んでいった。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。


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