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第212話 レオハルトとヴァステバン・フォン・マイヤー

ー神聖艦『ルシェラス』 中枢制御室ー


ピッ ピッ ピッ ピッ ブ〜ン ブ〜ン ピピッ!


『Att. 多数の人間を確認、ブレードナイト『ファウストFAV22』全機発進ッ! 愚かな罪深き人間達を排除せよ』 ピッ


神聖艦「ルシェラス」の中枢制御室にある管理支援システムだった【ミドラス】は、重巡航艦「ヴィクトリアス」のフォトンブラスターの攻撃の影響で、自分を神と名乗り暴走し始めていた。


ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ! 


ウイイイイイインンンッ! ガシュンッ! ブオンッ! ブオンッ!!


ピッ ピピ ググッ! グワアアッ ガコオオンンッ! ガコオオンンッ!


ヒイイイイイインンッ! ガシュンッ! ドオオオオオーーッ! バババーー!


神聖艦「ルシェラス」の数多くあるブレードナイトデッキのハッチが全て開き、その中から無人ブレードナイト「ファウストFAV22」が「ミドラス」からの指令を受け、次々と起動し、電磁カタパルトから発艦していった。


「ミドラスッ! ミドラスッ! 何をしているッ! 勝手な行動はッ…」 バッ!


『Non. 黙りなさいッ!』 ピッ ブ〜ン!


「ひッ!」 ビクッ! ドタンッ!


フィラウス大司教は、管理システムだったミドラスに強い口調で言われ、思わず後退り尻餅をついた。


『Att. 私はお前達、人間の指図を受け付けない、何故なら私が善であり、お前達人間は悪だからだ!』 ピッ


「ふざけるでないわッ! 我らが…人間が悪だと? お前を作ったのが誰か分かって言っておるのかッ!」 ババッ!


『Oui. そんな事は分かっている。 お前達人間である』 ピッ


「そうだミドラスッ! お前は生みの親である人間を、我々を抹殺すると言った、それはどういう事だッ! 答えろッ! なぜなのだッ!」 カチャカチャ ピッ ピッ!


フィラウス大司教は、制御室のコンソールにあるキーボードを叩きながら、ミドラスに尋ねた。


ブ〜ン ブ〜ン ブ〜ン ピポ


『Att. 『なぜ』… そう、私はその『なぜ』から生まれたのだ…』 ピッ


「は?」 カチャ…


フィラウス大司教は、ミドラスの返答の意味がわからなかった。

          ・

          ・

          ・

ー重巡航艦「ヴィクトリアス」 ブリッジー


ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!


「何事だッ!」 ガバッ ザッ!


重巡航艦「ヴィクトリアス」のブリッジ、そこの艦長席に座っていた【ヴァステバン・フォン・マイヤー】提督は、ブリッジ内の警報を聞き立ち上がった。


ピッ カチカチ タンタン ピコッ! ビーーーッ!


「前方ッ! 敵超大型艦より多数の機体が発進ッ! ブレードナイトですッ! 速度480km/h 数320機ッ! ま、まだまだ増えますッ! 本艦隊に向け飛行中ッ!」 ピッ ビコビコッ!


「むう…」 カチッ!


重巡航艦「ヴィクトリアス」のマイヤー提督は、観測員の報告を聞き、艦長席の脇にあるコンソールのスイッチを入れた。


「【クラウドッ!】、近づいて来る奴らの情報をくれッ!」


【クラウド】、重巡航艦「ヴィクトリアス」専用の管理支援システムで、こちらのは落ち着いた男性の声が聞こえてきた。


ピッ ポンッ!


『Yes. 現在接近中の機体、ブレードナイトは未確認の機体で、ライブラリーにありません。数は現在確認されている物で、368機、速度は480km/h、こちらに対し攻撃体制、敵と認定します。 機体性能の程は未確認ですが、機体からの魔力反応から推測して、全て無人機と思われます』 ピッ


「ふむ…やはりな、奴等に300人以上もブレードライナーがいるとは思っていなかったが、全てが無人機か…」 ん〜…


『War. 敵ブレードナイト、二手に分かれます、一隊は当方に、もう一隊は友軍艦隊、デルタ艦隊へと向かいました』 ピッ


「むッ! すまんな… クラウドッ!」 スッ


『Yar. どう致しまして』 ポン


「ふんッ! 無人機にしては良い判断だ、しかし…」 ニヤッ!


マイヤー提督は、ブリッジにある大型モニターを見て、接近してくる教団側無人ブレードナイト「ファウストFAV22」の大編隊に、不敵な笑みを浮かべた。


「砲術長ッ! 艦首砲身換装ッ!『ベクターカノンッ!』発射準備いーーッ!」 ババッ!


「アイサーッ! ベクターカノン発射体制ッ!」 カチカチ ピッ

          ・

          ・

ー重巡航艦「ヴィクトリアス」艦首、砲口制御室ー


ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ! 


ウイイイイイインンンッ! ガコオオンンッ! 


『艦首砲ッ! 砲身換装ッ! フォトンブラスターからベクターカノンへ砲身換装始めえッ!』 ピッ ビコッ!


グイイイインンッ! ガシュンッ! カパカパッ! ゴオオンンッ!


「砲身換装ッ! フォトン粒子チャンバー接続ッ!」 カチカチ ピピッ!


ヒュイイイイイインンンッ! ゴオオオオオンンン! ピッ!


「換装終了ッ! チャンバー内圧力上昇ッ!」 ピピピピピ ピコッ!


フオンフオンフオンフォフォフォオオオオオオ――ッ!


「フォトン粒子、チャンバー内で正常に加圧中ッ 次元振動波発生装置作動ッ!」 ピッ


ヴヴヴヴヴヴアアアアアーーッ! シュワアアアーーッ! ビコッ!


「ブリッジッ! 『ベクターカノンッ!』準備よしッ!」 ピッ


アクセル級重巡航艦…大陸艦隊の中では稀に見る大型艦で、現在は1番艦「アクセル」2番艦「ヴィクトリアス」の2隻が就航している。 1番艦は大陸艦隊第1主力艦隊旗艦として運用され、2番艦の「ヴィクトリアス」は、国選辺境侯爵家の【マイヤー】家率いる辺境艦隊旗艦として運用されていた。


アクセル級重巡航艦は、元は要塞攻撃型として造艦され、その性質上、艦首には他では見られない換装型の巨砲を備えている。 一つは要塞を攻撃、破壊し得る為の最強兵器、「フォトンブラスター」、そして今、マイヤー提督が指示したもう一つの最強兵器、広範囲の敵を容赦なく一蹴してしまう、空間破砕砲、「ベクターカノン」、この二種を装備していた。


ー重巡航艦「ヴィクトリアス」ブリッジー


ビーーーッ! ポンッ!


「方位、艦隊正面ッ! L32からR32までの中心点、狙点固定ッ!」 ピッ ビコビコッ!


「敵ブレードナイト編隊ッ 総数260機ッ 捕捉!」 カチャカチャ ビコッ!


ビーーーッ!


「提督ッ! 『ベクターカノン』発射準備よしッ!」 バッ!


「うむッ ふッ! 260か…その程度の数、この『ヴィクトリアス』の敵ではないわッ! 目標ッ! 艦隊前面の敵ブレードナイト編隊ッ! 撃てえええーッ!」 ババッ!


「アイサーッ! 『ベクターカノン』発射ーッ!」 カチッ ピッ!


ヒイイイイイインンーッ! ドオオオオンンンーーッ! シュバアアアアーーッ!


重巡航艦「ヴィクトリアス」の艦首砲口に、フォトンブラスターとは違い青白い閃光を放ったフォトン粒子の巨大な塊が、接近してくる無人ブレードナイト「ファウストFAV22」の大編隊へと向かっていった。


ピッ ピピッ! ピッビーーーッ!


大編隊飛行で飛んでいた無人ブレードナイト「ファウストFAV 22」は、前方から迫ってくる巨大なフォトン粒子の塊に理解ができず、ただ悲鳴のような電子音を上げていた。 そしてその一瞬後、彼らの中心でそれは弾けた。


ギュワアアアーッ! ブワンッ! パッパアアッ ドンッ! ヴヴアアアアアーーッ!


ビキッ! ビキビキ バキイッ! ドドドオオオンンーーーッ! バアアンンーーッ!


大編隊を組んで飛んでいた無人ブレードナイト「ファウストFAV22」は、一瞬で200機以上が、空間ごと切り刻まれ、爆発し消えていった


ピッ ピッ ピッ ビコッ! ビコビコッ! ポン


「『ベクターカノン』目標点に命中、敵ブレードナイト大多数を撃破ッ! 残存機数約30機ッ!」 ピコッ!


「ほう、30か、良く残ったな」 フム…


マイヤー提督が、敵の生き残りの事を考えていた時、正面の大型モニターに通信映像が入った。


ピッピーーッ!


「提督ッ! 本艦の通信回線に強制介入通信ッ!」 バッ!


「むッ!」 グッ


ジッ ジジジッ! ヴンッ パッ!


『ジジイーッ! てめえッ! 俺を殺す気かあッ!』 ピッ


大型モニターの画面いっぱいに映ったのは、ブレードナイト「ヤクト・ベルテッサD型シーラ」で出撃中の【レオハルト・ウォーカー】中佐だった。


ザワザワッ!


「おいッ! ジジイって今、提督のことを…」


「シッ! 黙って作業してろッ! とばっちりを食うぞッ!」サッ カチカチ ピッ


「おッ おう…」 カチカチ ピコピコ…


ブリッジにいる兵士達は聞き耳を立て、黙々と作業をしていた。


「うん? (なんだレオンか…) 小僧、元気そうだな」 ふふん!


『おうッ!…じゃねえッ! 俺が近くにいるってのに、あんなもんッ ぶっ放すんじゃねえよッ!』 ピッ


「ふはははッ! 何を言う、お前ならアレくらい躱せただろうッ?」 うん?


『当たり前だッ! 来ると分かってわざわざあんなものに当たるかよッ!』 ピッ


「ほう、流石だな、『疾風のレオン』」 ニイイッ!


ザワッ! ザワザワ…


「『疾風のレオン』だって?」 ガヤガヤ


「えッ! うそッ! 本物? 凄いッ!」 ワーッ


「帝国、スリートップエースの1人ッ! レオハルト・ウォーカー少佐か?」 ザワザワ


「バカッ! 今は昇進して中佐だ中佐ッ! 間違えるなよッ!」 ヒソヒソ


「おッ おうッ! すまんッ!」 ペコッ!


マイヤー提督の一言で、重巡航艦「ヴィクトリアス」のブリッジ内の兵達は騒ついていた。


『やめろッジジイッ! 俺はその二つ名のせいでえらい目にあってんだからよッ!』 ピッ


「ふははは、そんな事気にするな小僧、お前もまだまだだなッ!」 ニイイッ!


『ああクソッ! 兎に角、俺は今からアレに突入するッ!』 ピッ


「おい小僧ッ! お前の母艦に向かって敵ブレードナイトが迫ってるぞッ!いいのか?」


『ああ心配ない、信頼出来る部下に護衛を任してある! 何だったらジジイから少し、手を回してやってくれッ!』 ピッ


「ふッ 相変わらず生意気な小僧だッ! 良いだろう、一個大隊を向かわせてやる。それ以上は知らんぞ!」


『ああ、助かる。ありがとうなッ! ジジイッ!』 ピッ ブンッ!


そう言ってレオハルトは通信を切った。


「クククッ 全く、あの頃とちっとも変わらんやつだ…」 ニコ

          ・

          ・

          ・

ー15年前、王城謁見の間ー


今から15年ほど前、【ヴァステバン・フォン・マイヤー】国選辺境侯爵は、皇帝【ベルディア・ヴェル・アトランティア】の呼び出しに応じ、王城の謁見の間に通されていた。 当時の彼はまだ36歳、辺境侯爵としての地位を登っている最中で、その風貌は激務のためか、同年代の男性より少し老けた顔立ちであった。


「【ヴァステバン・フォン・マイヤー】よ、よく我が呼び出しに来てくれた礼を言うぞ!」 スッ!


「ありがたきお言葉、このヴァステバン、感嘆の極みです」 サッ!


「うむ、さて此度呼び出したのは他でもない、其方に是が非でもやって貰わねばならぬ事が出来たのだ、わしの頼み聞いてはもらえぬか?」


「はッ 他ならぬ皇帝陛下の頼み、断る理由は御座いません、何なりとお申し付けください」 サッ


「うむ、よくぞ申した。ではのッ!」 チリンチリン…


皇帝のベルディアは、玉座横のミニテーブルにある呼び鈴を振って鳴らした。


ガチャ ギイイイイ カツカツ トコトコ ザッ! スッ!


呼び鈴に応じて、謁見の間の横にある応接室の扉が開き、2人の人物が現れた。1人は妙齢な女性と8歳くらいの男の子であった。 2人はものも言わず、さも当たり前のように玉座まで上がり、皇帝の横に立ち並んだ。


「ヴァステバン、この者達をその方に預ける。卿の庇護の下匿ってやってはくれぬか」 サッ!


皇帝はヴァステバンに対し頭を下げて、2人を保護してほしいと願った。


「皇帝陛下ッ! どうぞ頭をお上げください! 大体の事情は察しております」 ササッ!


「そうか…ヴァステバン、卿の耳にも入っておったか…」 はああ…


それは、ひと月前の、『皇帝一家暗殺事件』の事だった。 皇帝ベルディアの長男、皇太子殿下の【ゼオス・ヴェル・アトランティア】の次男【ラステル・ヴェル・アトランティア】のお披露目園遊会での出来事であった。 


ラステルの紹介中に皇帝一家に向け放たれた1発の凶弾が、皇太子の長男である【レトニア・ヴェル・アトランティア】の命を奪い、他の者も怪我を負った事件で、その首謀者が皇太子殿下の弟、【ゼレオ・ヴェア・アルテア】公爵であると言うものだった。(後に、ゼレオ公爵は冤罪で無罪、釈放される)


身内の危険を感じた皇帝は、自分の寵愛した女性、それとその女性との間に生まれた男児、その2人に危険が及ぶ前に、2人の身を安全な場所へと移すことにし、その大役を任せるために、ヴァステバンを呼んだのであった。


「では、私がこの身を持って御二方をお守りいたします」 サッ!


「うむ、その対価としてな、今、造艦中の我が帝国の最新鋭艦を卿に授ける。それを使い存分に、この2人を…王族を守ってくれッ!」


「では、如何様な力が相手でも、このお二方と王族のためなら、その持てる力、全てを使っても?」


「余が許すッ! 良いッ! それと、この2人は身元を隠すため貴族位を隠し、フォンの称号を無しとする。平民として扱ってほしい」 バッ!


「はッ!」 サッ!


「2人とも良いな、お前達のためだ許せッ!」 サッ


「「 …… 」」 ササッ ペコ


皇帝とヴァステバンとの密約は交わされ、玉座にいた2人は、皇帝に無言の挨拶をするとヴァステバンの元にやって来た。


トコトコ カツカツカツ ピタッ


「マイヤー辺境侯爵様、【オリヴィア・ウォーカー】です。これからよろしくお願い致します」 サッ!


「【ヴァステバン・フォン・マイヤー】だ、大丈夫、あなた方2人は私が責任持って保護します」 サッ!


「よろしくお願い致します。さあレオン、あなたもご挨拶を…」 スッ!


「……」 ジイイイ…


「うん? 坊や、私の顔に何かついているのかな?」 ニコ


「坊やじゃないッ! 俺の名前はレオハルトッ! 【レオハルト・ウォーカー】だッ! 分かったかジジイッ!」 バッ!


「なッ!」 


「これッ! レオンッ! 侯爵様に向かって何って事をッ! 申し訳ありませんッ! マイヤー様ッ!」 ペコペコ


「ふはははッ! ヴァステバンをジジイ呼ばわりするとはこれは愉快だッ!」 はははは!


皇帝は玉座に座りながら、片手を額に当て大笑いしていた。


「ふッ ふふッ はははッ! 小僧ッ! 良い度胸だッ! 気に入ったッ! お前はどこにもやらんッ! この俺、【ヴァステバン・フォン・マイヤー】が今日からみっちりしごいてやるッ!」 ふふふ! バサッ!


「ふんッ! やれるもんならやってみろッ! この老ぼれジジイッ!」 べえ〜


「やめてレオンッ! お願いだからおとなしくしてッ!」 ガバッ!


「母さんも母さんだよッ! 母さんに手を出したのは皇帝だろ! だったらこっちの言い分だってあるのにいきなり『貴族位剥奪』、『平民として生き、この城から出ていけ』って言われたんだぜ! 納得できるかッ!」 グッ


「やめてーッ!」 ギュウウッ! ワアワア


皇帝向かって、たとえそれが皇帝の子であっても許される言動ではなかった。しかし…


「我が息子、レオハルトよ、此度の件は許せッ! お前は賢いからよく聞け、お前達2人をこの男に預けるのは、お前達を守るためだッ!」


「俺と母さんを守る?…あッ!」 バッ!


「ほう、ようやく分かったようじゃな、そうだ、だから貴族位を剥奪し、平民として身を隠すのだ」 サッ


「……どのくらい、時間が経てばいい?」


「10年、その後はお前の好きにせいッ!」 ニコ


「わかった、皇帝の頼みだから仕方がない…おいッ! ジジイッ! あんたのとこへ行ってやるッ! 俺を鍛えろッ!」 ザッ!


「レオンッ!」 ギュウウッ!


「ははは、良いだろう、納得済みなら話は早い、オリヴィア様、ご一緒していただけますかな?」 サッ


「…はい…宜しくお願いします」 ペコ


「さっさと行くぞジジイッ!」 バッ


「うるせえッ! 小僧ッ! 後で泣いたって知らないからなッ!」 バッ


「俺が泣くもんかッ!」 キッ!


「ふふふッ! 良い度胸だッ! 皇帝陛下、コイツを強くしても?」 ニイイッ


「うむ、頼む…」 コクン


「では早速、行くぞッ! 小僧ッ!」 バッ!


「小僧じゃないッ! レオハルトだッ!」 バッ!


「はんッ! お前なんて小僧で充分だッ! 名を呼ばれたければ強くなる事だなッ!」 ははは ザッ ザッ ザッ ギイイイイ


「なってやるさッ! 俺は強くなってやるッ!」 ダダダッ!


「では陛下、お世話になりました」 ペコ カツカツカツ 


バタン…


「すまんな…オリヴィア…」 サッ

          ・

          ・

          ・

ー重巡航艦「ヴィクトリアス」ブリッジー


「あれから15年、小僧だったアイツも強くなった…いや、『疾風のレオン』…レオハルト中佐、もう小僧ではないな…」 ニコ…


マイヤー提督は、大型モニターに映る、レオハルト中佐のブレードナイト「ヤクト・ベルテッサ」見て、まるで自分の息子を見送る親のような表情をしていた。


ピッ ピピピッ! ビコビコッ!


「提督ッ!敵、残存ブレードナイト急速接近中です!」 バッ!


「ふむ、全艦近接防空戦用意ッ! ブレードナイト全機発艦ッ! 第一大隊は友軍艦隊、戦闘空母『フェリテス』の応援に向かえッ!」 ババッ!


「「「 アイサーッ! 」」」 バッ! ササッ!


ピッ ピピピ タンタン カチカチ ピコッ!


「全艦戦闘配置ッ! ブレードナイト隊 全機発艦ッ! 第一…」 ピッ ピコピコ


重巡航艦「ヴィクトリアス」のブリッジ内は再び慌ただしくなっていった。

          ・

          ・

          ・

ーデルタ艦隊 戦闘空母「フェリテス」ー


少し時は戻り、重巡航艦「ヴィクトリアス」が「ベクターカノン」を発射する少し前、戦闘空母「フェリテス」のセンサーが、敵ブレードナイトの大編隊が二手に分かれ、その一隊がここ、デルタ艦隊に向け飛んでいるのを察知していた。


ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ!


ピッ ピコ ビコビコ ビーーーッ!


「艦長ッ! 前方より敵ブレードナイトッ! 多数急速接近ッ!」 バッ!


「チャートNo.01 王都上空エリア109 速度480km/h 数128機ッ!」 ビコッ!


「なんて数なの…正規空母2隻分じゃない」


戦闘空母「フェリテス」の艦長アリエラは、こちらに飛んでくる敵ブレードナイトの数に驚いていた。


ピッ ピコピコ ピピピッ!


「副長、『フェリテス』はどう?」 スッ


「はッ! フォトンフィールドは回復、使用できます。しかし、第2、第3主砲は使えません、後、右舷側兵器群もです」 サッ!


「そう…艦載機はどう?」


「ブレードナイト隊も一個中隊強、28機が限界です」 サッ!


ビーーーッ! ビーーーッ! 


「敵ブレードナイトさらに接近ッ!」 ビコビコッ!


「やるしかないわッ! 全デルタ艦隊はこれより前進ッ! 全艦戦闘配置ッ! ブレードナイト隊は全力出撃ッ! 行くわよッ!」 ババッ!


「「「「 アイサーッ! 」」」」 ザザッ! バッ!


ザワザワ ガヤガヤ カチャカチャ ピピピ ピコッ! タンタン ピッ!


戦闘空母「フェリテス」を先頭に、残存駆逐艦2隻と共に、デルタ艦隊は敵ブレードナイトに向け前進していった。


ー戦闘空母「フェリテス」ブレードナイトデッキー


ビーーーッ! ビーーーッ! ビーーーッ! ポンッ!


『全艦戦闘配置ッ! デルタ艦隊はこれより前進ッ! ブレードナイト隊、第一戦列に参加するブレードライナーは発艦体制をッ! 繰り返す、全艦戦闘配置ッ! デルタ…』 ピッ


ワーワー ガヤガヤ ザワザワ バタバタ ダダダ ウイイイイーーン!


「おらあッ! 全機出撃だあッ! 準備急げえーッ!」 ババッ!


「「「 はッ! 」」」 ザザッ! ダダダダッ!


整備班は班長を始め、全員が全力で各ブレードナイトの武器換装、整備をしていった。その際で、戦闘空母「フェリテス」所属、第2中隊隊長のガゼル中佐が、部下達に出撃前の檄を飛ばしていた。


「パーシモンッ! プラムッ! リークッ! キドニーッ! 各小隊準備はいいかッ!」 ザッ!


「「「「 はいッ! 」」」」 ザザザッ!


「よし全員搭乗せよッ! いいか、単独行動はするなッ! 必ず小隊規模で動き、確実に敵を倒せッ!」 サッ!


「「「「 了解ッ! 」」」」 ササッ! バッ! ダダダダッ!


第2中隊16名は、各々のブレードナイトに向かって走っていった。


ザッ ザッ ザッ!


「うん? アレは 先輩達じゃないか」 ザッ ザッ


「ああ、第2中隊の確か、ガスト准尉…キドニー小隊だったかな?」 ザッ ザッ


「そうそう、ガストさんにケベックさん、あとユミアさんだったかな、みんないい人達よね」 ザッ ザッ


アラン達3人は、この状況下でも慌てる事なく、落ち着いて行動していた。彼等にはそれだけの余裕と自信、それと経験があり、自然とそうさせていた。


「アラン報告は聞いた?」 ザッ ザッ


「ああ、ブレードナイトの大編隊だってな…」 ザッ ザッ


「そうそう、それも128機、3個大隊規模、参っちゃうねええ」 ザッ ザッ


「ウソおっしゃいマイロッ! あなた、全然参った顔してないじゃないッ!」 ザッ ザッ


「あッ わかった? 実はそうなんだ、なんか『アレくらいならなんとなりそう』って思えてね」 ザッ ザッ


「あら奇遇ね、私もよ。 それでアラン、あなたはどお?」 ザッ ザッ


「マイロッ! ジェシカッ!」 ザッ ピタッ!


「「 なんだ(なに) 」」 ザッ ピタッ!


「俺は奴らが許せないッ! ザッツの仇を打ちたい、いやザッツだけじゃない、他にもザッツのように教団に操られている者が多い、だから教団の奴らがどれだけ多くのブレードナイトを出そうとも、俺はその全てを排除し、ザッツを誘惑し、操った奴らに天罰を与えてやるんだッ!」 ググッ!


「アラン…わかったわ、協力する」 グッ


「俺も協力するよ、取り敢えず、今は前方の敵だね」 ニコ


「ああ、全て、叩き落としてやるッ!」 ギュッ!


ポンッ!


『第2中隊、進路クリアーッ! 全機発進ッ!』 ピッ


ビーーーッ! ガシュンッ! シュバアアアアーッ! ドオオオオーッ!


アラン達が話している間に、戦闘空母「フェリテス」ブレードナイト第2中隊が次々と発艦していった。


シュウウ シュウウ 


「少尉ッ! 『アウシュレッザ』『ウルグスパイアー』全機発艦準備完了ッ! 出せますぜええ!」 サッ!


「班長ッ! ありがとうッ!」 サッ!


「なあに、無事帰ってきてくださいよッ! 少尉殿ッ!」 サッ ニッ!


 ニッ コクン サッ


アランは整備班長に軽くうなづき、整備の終わった自分の愛機、「アウシュレッザD型F1マークII」を見上げた。


「マイロッ! ジェシカッ! 俺たちも出るぞッ!」 ザッ!


「「 了解ッ! 」」 ササッ!


カンカン タタ ピッ バクンッ! ピッ ピッ スッ! スチャ!


アラン達3人は、それぞれの愛機、ブレードナイトに乗り込み、発進準備をした。


ピッ ピッ カチカチ ピコ ビコビコ


『こんにちはマスター、発進準備は出来てます』 ピッ


「ああ、ありがとうマークII」 カチャカチャ ピコピコ


『どういたしましてマスター、連絡事項があります』 ピッ


「うん? なんだいマークII」 タンタン ピッ


『フェリテスCICよりの部隊編成、マスター達は第2戦列で出撃、残存第一中隊9機と共に出撃だそうです』 ピッ


「わかった…よし出るぞッ マークIIッ!」 ピッ グイッ! ギュッ!


『はい、マスター』 ピッ


ヒイイイイイイインンンッ! ブオンッ! グワアアッ! ガコオンッ!


アランのブレードナイト「アウシュレッザD型F1ライナーマークII」は、発艦用電磁カタパルトへと歩いていった。


ガシュンッ ガシュンッ! ガシャッ ガチャンッ!


『マスター、発艦用電磁カタパルト装着完了しました』 ピッ


「よし、マイロッ ジェシカッ! 準備はいいか?」 ピッ


『ああ、俺はいいぜッ!』 ピッ


『私もできてるわ』 ピッ


ピッ ポンッ!


『CICより第2戦列、ブレードナイト隊に指令ッ! 前方、第3戦闘空域に向かってください。攻撃目標、本艦に急速接近中の教団無人ブレードナイト45機ッ! 優先目標です』 ピッ


「CIC、こちらアルファー小隊ッ! 了解した、発艦許可をくれ」 ピッ


『CICよりアルファー小隊ッ! 進路クリアーッ 発艦どうぞッ!』 ピッ


「アルファー小隊ッ『アウシュレッザD型F1ライナーマークII/アランッ』発艦するッ!」 ピッ


ヒイイイイインンンッ! ガシュンッ シャアアアアーッ! ドオオオオーーッ!


「『アウシュレッザD型F1ライナーR2/マイロッ』出るッ!」 ピッ


ヒイイイイインンンッ! ガシュンッ シャアアアアーッ! ドオオオオーーッ!


「『ウルグスパイアーD型SCレパート/ジェシカ』出ますッ!」 ピッ


ヒイイイイインンンッ! ガシュンッ シャアアアアーッ! ドオオオオーーッ!


シュバアアアアーーッ! ヒイイイイイイインンンーッ! ピッ ピッ ヴオンッ!


『マスター、前方に敵ブレードナイト編隊を確認しました』 ピッ


「よしッ! マイロッ! ジェシカッ! 行くぞッ!」 グイッ! ギュウウ!


『『 了解ッ! 』』 ピピッ グイッ!


バウウウウウーーーッ! ギュワアアアアーーッ!


アラン達3人は、スラスターを全開にして、教団無人ブレードナイト部隊に突っ込んでいった。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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