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第207話 アニスとゼレオ公爵、ガーナ神教団

ー神聖艦『ルシェラス』 艦内ー


ダダッ ダダッ ドタドタ バタバタ ハアハア ゼエゼエ


「こっちッ こっちですぞ公爵殿ッ!」 ハアハア ダダッ!


「うッ、うむッ!」 ゼエゼエ ドタドタ


ギイイッ! バタンッ! ダダダッ! ドタドタ……


テクテク テクテク ピタッ


「ん? こっちかな?」 キョロキョロ テクテク


ギイイッ! バタンッ! テクテク…


レオハルトやアラン達が、帝都上空で戦っていたころ、アニスは神聖艦『ルシェラス』の艦内を、ゼレオ公爵とフィラウス大司教を追って歩いていた。 やがて、ゼレオ公爵とフィラウス大司教は他とは異質の扉の前に来た。


ドタドタ バタバタ ダダッ!


「よし、ここなら…」 ピッ ピピピ ビコ


『大司教 フィラウス様ヲ確認シマシタ』 ピッ 


プシュウウウーーッ ガチャンガチャンッ ゴウンゴウン ゴオオン


その扉にはセキュリティー装置が付いており、フィラウス大司教が扉についている数字を押し、暗証番号を入力すると、ロックが解除され扉がゆっくりと開き始めた。ここは、特定の人物しか入室が許されてない部屋だった。


「ささ、公爵殿中へ、此処なら安心ですぞ!」 スッ!


「ふうう…そうか、では…」 ザッ ザッ


「では締めますぞッ!」 ピピッ!


ゴウンゴウン ゴオオンン! ガチャンガチャン ピーッ!


重厚な扉はゆっくりと閉まり、再びロックが掛かった。


パッ パパパッ! シュイイイン…


扉が閉まると同時に、部屋の中の照明がつき、空調装置が作動を始めた。


「ふうう、此処なら安心ですぞ! さあ公爵殿、この奥へ」 サッ


「う…うむ」 ザッ ザッ


2人は、その部屋の奥にあるさらに重厚な扉を開けて、中へと入っていった。


ピッ ピピピ ピコ ガチャッ! プシュウウウーーッ


ドガガガッ! ガコンガコンッ ピーッ ピーッ ヒュイインッ ガンガン


「こッここはッ! アレは一体なんだ? ワシもまだ見た事がないぞ!」 キョロキョロ


そこは、奥行き40m、横幅25m、高さ16m程もある広い空間、その両脇には30機もの新型ブレードナイトが立ち並んでいた。 ここは神聖艦「ルシェラス」の数多くあるブレードナイトデッキの一つであった。 だが人気は無く、ブレードナイトデッキの中は多数の人型ドローン達が立ち並ぶブレードナイトの整備、点検作業をしていた。


「公爵殿、アレは我が教団の最新鋭機、完全自動の無敵無人ブレードナイト『ファウストFAV22』、もうブレードライナーなんぞ必要としない、最強のブレードナイトですぞ!」 ババッ ふふん


「最新鋭…ライナーを、人を必要としないブレードナイト…」 ジイイ…


ゼレオ公爵は、アニスに追われている事などすっかりと忘れ、フィラウス大司教が紹介した最新鋭機のブレードナイトを見ていた。 そこで1つの疑問が彼の頭をよぎり、フィラウス大司教に聞いてみた。


「フィラウス大司教、今、完全自動の無人機と言ったな?」


「はい左様です、公爵殿」 ペコ


「ライナーが要らないと言ったが、リモートでもないと言う事か? もう人が、ライナーが必要でないと…」 グッ


「ええ、リモートなど此奴らの為のもの、良いデータが撮れましたぞ!」 ふふん


「フィラウス、最新鋭と言ったが、先程ライナーを乗せて出撃して行ったブレードナイトも最新鋭機ではなかったか?」


「ああ、『ヴェラールXC5』の事ですかな?」 サッ


「そうだッ! フィラウス、卿は言ったな、『もう、ブレードライナーなど必要ない』と、では『ヴェラールXC5』はどう言う事だッ!」 バッ


「ははは、そうですな、確かに矛盾しておりますのお…では、公爵殿には教えて差しあげましょう、あの機体『ヴェラールXC5』は、『教団、内外にいる、力を持ったこの世界中、全てのブレードライナーの能力と魔力を吸い出し、破棄する為』に制作した、ブレードライナーを始末する為のブレードナイト、ライナーキラーの機体です」 二ッ!


「ライナーキラー…ライナーを…この世界からブレードナイトを全て排除しようと言うのかッ!」


「はい、この様なものに人が乗るから、いつまで経っても争い事は無くなりませんし、それどころか、ライナーを英雄に祭り上げる。由々しき問題ですぞ!」


「それで、このブレードナイトか…」


「はい、完全自立型、命令を与えておけば着実にそれを実行する為に自分で考え、学習し、我々『ガーナ神教団』の為にだけ動く、彼等に私利私欲はありません、理想の尖兵なのです」 二ッ


「それは、ブレードナイトの形をした戦闘用ドローンではないかッ!」


「ご明察の通り…そうです、もう人が操縦して闘うなど古い考えなのです。我々『ガーナ神教団』は人々の幸せに為、帝国…いや全世界の平和の為に、人が死なない為の、人と人が争わない為の世界にする為に活動しているのです」 ババッ!


「全世界だと?」 グッ


「左様…良いですかな公爵殿、この世界、帝国や聖国、王国に合衆国など、国の数だけ人々は色分けされているのです。そして、その国の法律や主義主張が絶対だと…此れではいつまで経っても、この世界から争い事がなくなりません」


「フィラウス…卿は一体何を言っておるのだ?」


「おやおや、やはり貴方も一国の器だけの様ですな、だから我々は考えたのです。どうすれば人と人が争わなくなるのかと、そして1つの結論に至りました。『この世界に多種多様の国などあるからいけないのだ、ならば各国の皇帝や王、その最高者どもを排除し、我々が単一国家、この世界の唯一無二の世界の王、神になれば良い』と」 ハアハア…


フィラウス大司教は少し興奮気味で語っていた。


「なッ…フィラウス、卿が神だと? では『ガーナ神』様とは何だったのだッ!」 バッ!


「はあ? クククッ ここにきて『ガーナ神』ですか」 クククッ


「何がおかしいッ! 『ガーナ神』様は我等の大神、大いなる慈愛の神ではないのか?」 グッ


「いや公爵殿、失敬しました、確かにそう風潮して有りまたなあ!」 クク


「フィラウス…まさか『ガーナ神』様は…」 ギュッ


「やれやれ…まあ良いでしょう、公爵殿にはただならぬ協力を得ましたからな、これはその御礼という事で」 二ッ


「フィラウスッ!」


「公爵殿、『ガーナ神教団』とはただの宗教団体ではない、それぞれがその国、その王や貴族、軍隊に憤りをを感じ、それを変えたい者達の集まり。 偽りの象徴として生まれたのが『ガーナ神』なのですよ」 ザッ


「では、ワシをこの帝国の皇帝にすると言うのはまさか…」 ワナワナ


「おや、やっとお気づきましたか…公爵殿とは15年、随分と時間がかかりましたな」 ニヤッ!


「フィラウスッ!」 ババッ!


「ふふふ、公爵殿、貴方は実に有能な手駒でした」 二ッ


「どう言う事だッ!」 グッ


「我々を祭り上げ、多額の資金と資材や人員、土地や建物、おかげでこの様な巨大なふねを製造できましたし、さまざまなブレードナイトの開発も出来ました。いやいや、感謝致しますぞ!」 ニヤニヤ


「おのれえッ! フィラウスッ! ワシを謀ったなあーッ!」 ダダダッ!


パチンッ!


ピ ピピピッ! ガシュンガシュンッ! ババッ!


ゼレオ公爵がフィラウス大司教に掴みかかろうとした時、フィラウス大司教が指を鳴らし、それに応える様に空中浮遊型の警備ドローンが腕を伸ばし、ゼレオ公爵を取り押さえた。


「うおッ! 離せ! 離せえッ!」グイグイッ! ジタバタ


ピピッ! ビーッ!


『不審者ヲ確保』 ピッ!


ゼレオ公爵は必死に振り解こうとしたが、全くびくともしなかった。


「公爵殿、落ち着きなさい」 サッ


「フィラウス…貴様…」 ググッ!


「公爵殿、貴方との蜜月もここまでの様ですな」 ふふ…


「ワシを…今までワシをずっと騙していたのかッ⁉︎」 ググッ


「はい、15年前のあの時から…」 ニコ


「15ッ‼︎ ま、まさかッ…15年前! あの【ラステル】の披露宴の時の惨劇はッ!」


「ええ、そのとうり、我が教団がある方に頼まれて、『貴方に罪を着せる為に』行ったのですぞ」 ババッ!


「なッ! がああああああーッ‼︎」 バタバタッ


それは、ゼレオ公爵にとって衝撃の一言だった。 


皇太子【ラステル】のお披露目会、その披露宴の最中に、何者かに放たれた1発の凶弾が、【ラステル】の兄の命を奪い、その罪を自分にかけられ、最愛の妻とは離縁、領地の民や兵士達からの信頼を全て失ったあの忌まわしい事件、それが全て、自分が懇意にしていた「ガーナ神教団」の仕掛けた事だと知ったからだった。


「うぐぐぐ…だ、誰だッ! 誰がお前達に依頼をしたあッ!」 ググッ!


「おやおや、もう15年も前の事ですぞ? 今更それを知ってどうするのですかな?」 ククク


「復讐だッ! ワシを…ワシの周りから全てを奪ったソイツをッ!ソイツと貴様達をこの手で全て消してやるッ!」 グッ


「なる程…復讐ですか、しかしそれはもう叶いませんな」 フリフリ


「どう言う事だッ!」


「今、公爵殿は囚われの身、しかも、その依頼主は亡くなっているからですぞ! 公爵殿」


「なッ! 亡くなっただと! そんなもの誰が信じるかッ!」


「おや、信じられませんか」


「当たり前だッ! ワシがこの目で見ぬ限り、そんな事信じぬぞ!」 バッ


「では大丈夫ですぞ、貴方はしかと、その両目で確認しておられたではないですか」 ニヤ


「はあ? ワシがこの目で確認しただと?」


「ええ、棺に入った依頼主の遺体を見、花まで添えたではないですか」 ふふ


「ワシが花を…ま、まさかッ!」


「ええ、ソノまさか…15年前、皇太子【ラステル】の兄【レトニア・ヴェル・アトランティア】の命を奪い、貴方に罪を着せようとしたのは、現皇帝の長男であり【ラステル】と【レトニア】の父でもある【ゼオス・ヴェル・アトランティア】、そうです、貴方の実の兄なのですぞ」 ふふふ


「はッ⁉︎…あ…あう…あ…」 ガクガク


ゼレオ公爵はもう言葉を発せられない程のショックを受け、身体中を震わせていた。 先程、教団からの裏切りを知ったばかりか、今度は実の兄が自分をおとしいれようと、自分の息子を犠牲にしてまでそれを教団と仕組んだ事を…


「我々も当時は驚きましたぞ、何せ、『自分の息子を殺し、その罪を自分の弟に着せる』、いやはや王族とは一体、身内を何だと思っておりますのやら」 フリフリ


ゼレオ公爵は、フィラウス大司教のその言葉に、なんとか声を出して質問をした。


「な、なぜ兄が…ワシだけでなく自分の息子まで…」


「ふむ、まあ依頼主も、もうこの世にはいません事ですし良いでしょう、なぜ公爵殿の兄【ゼオス・ヴェル・アトランティア】が自分の息子を殺害し、その罪を公爵殿に着せたかを…」



それは公爵にとって全く寝耳に水の話だった。 15年前、皇帝陛下【ベルディア・ヴェル・アトランティア】の皇太子だった【ゼオス・ヴェル・アトランティア】は、次期皇帝の座は自分だと自負していた。 しかし、皇帝の側近の左大臣と右大臣、丞相、憲兵総監がこぞって、次期皇帝には別の2人の者を名指ししたのであった。


その者の名は、現在、皇太子殿下の長男、文官としての才能があり、剣技や魔法にも長けている【レトニア・ヴェル・アトランティア】、もう1人は領地改革と税金対策、領地の民や兵士達に信用の厚い皇帝陛下の次男【ゼレオ・ヴェア・アルテア】公爵の2人であった。


ただ、皇帝の側近達がその2人を名指ししたのは仕方がなかったのであった。 皇太子であった【ゼオス・ヴェル・アトランティア】は、文武に至っては息子に、内政処理や人望に至っては実の弟【ゼレオ・ヴェア・アルテア】公爵に、遠く及ばなかったからで、側近としては当然の意見であった。


その事を皇太子だった【ゼオス】は、物陰から皇帝と側近達が話し合っていたのを聞いてしまい、その瞬間から彼に嫉妬心と野望の火がつき、当時はまだ新興宗教程度だった「ガーナ教」の代表、【フィラウス】と手を組み、あの披露宴での惨劇となった。


使用されたのはただの煙幕弾だったが、防御結界の中で、【ゼオス】は自分の息子に毒針を刺し殺害、そしてその罪を弟の【ゼレオ】公爵に擦り付けたのだった。


結果的には、息子は死に、弟は失脚したのだが、翌々年、隣国ゼルファ新帝国との小競り合いに出兵中、その艦隊旗艦 巡航艦「スターラック」が集中攻撃を受け、大破撃沈。皇太子の【ゼオス】はその場で戦死が確認され、遺体は収容された。 彼は皇帝の椅子に座ることなく終わったのであった。


その後、落ち込んでいた【ゼレオ】公爵に、「ガーナ教」のフィラウスが近づき、公爵と手を組み、「ガーナ教」が「ガーナ教団」へと成り上がり、今に至っていた。



「と言う訳ですな、公爵殿」 ふふ…


「そ、そんな…あう…あう…ぐ…」 ポタ ポタポタ…


「おや、悔し涙ですか? それとも…」 二ッ


ゼレオ公爵は只々涙を流すだけであった。これまで自分は一体何をしてきたのか? 王族とは? 皇帝とは?国とは? 世界とは? 領地や民とは? ただ頭の中にそんな思いが巡り回っていた。


「あ…ああ…」 プルプル


「ふむ、これまでですな、おい、この者を牢に入れ、厳重に監禁しておきなさい」 ザッ


ピッ ピコピコ ピッ


『了解シマシタ』 ピッ


グイッ! ブ〜ン


フィラウス大司教は警備ドローンにそう命じて、ゼレオ公爵を連れ出そうとした時、ブレードナイトデッキの隔壁がいきなり崩れた。


『《バーゼル.グラン.リッパーッ!》』 ビシイイイッ! 


グワアアアーーンッ! ドオオオンッ! ブワアッ ドオンンッ ドオオオンッ!


「うううッ! なッ 何事ですかッ!」 ブワアアアアーーッ!


ピ ピピーーーッ! ガシャンッ!


「うおおおッ!」 ドサッ! 


ドドドドッ モクモク パラパラパラ…パラ…


隔壁は斬り崩れ、あたりが瓦礫と埃まみれになり、その勢いで、何体かのドローンとゼレオ公爵が床に倒れた。


テクテク ザッ! 


「ん、切れた切れた、あッ そこに居たんだ」 ニコ ファサッ


「なッ! そ、そんなバカなッ!」 ワナワナ


崩れた隔壁のそこには、青みがかった白銀髪と白を基調とした上着とコルセットスカートを揺らしたアニスが、片手に神器「アヴァロン」を持って現れた。


「もう、諦めますか?」 テクテク


「うぐぐッ! ここの扉や外壁は、厚さ200mmの鋼鉄製ですぞ、魔法どころか、ブレードナイトの重フォトン銃にも耐えられる構造になっているッ! ましてや入口は厳重なセキュリティーによって守られていた筈なのにどうやってッ!…」 ググッ


フィラウス大司教は、そこに現れたアニスに対し驚きを隠せなかった。


「ああ、あの入り口のやつですか、なかなか開けてもらえませんでしたので、そこではなく、隣の壁を切ったら、この通り、あはは…」 サッ!


「『この通り』でこの壁がこうも簡単に切れるものかッ!」 ババッ


「でもあいたよ」 ほらッ サッ


「ぬぐぐ、全くふざけたお嬢さんだ」 ググッ


「さて、ではおふた方には王城に、おじいちゃんの前に連れて行きますね」 チャキ


「こ、ここで捕まるわけには行きませんッ! 1号機起動ッ! この者を排除せよッ!」 ババッ!


フィラウス大司教は立ち並ぶ30機もの無人機、ブレードナイト「ファウストFAV22」の1番機に命令すると、そのブレードナイトの目が青く輝いた。


ブオンッ! フィイイイイインン ピピ ピッ ピッ グワアアン


ガコオンッ ガコオンッ! グググッ!


「ん、動いた…誰か乗ってるのかな?」 テクテク ピタッ


ピッ ピココッ! ブオンッ! ズンッ! ズンッ!


『目標ヲ確認、攻撃シマス』 ピコ


グワアアッ! ブンッ ドゴオオオオーンッ!


「わッ!」 シュンッ!


無人機、ブレードナイト「ファウストFAV22」はいきなりアニスに向かって、その巨大な拳を叩きつけてきた。


ドゴオオオオーーッ! グラグラ…


「ふはははッ! 良いですぞ、その調子でやってしまいなさいッ!」 ババッ! ダダダダッ! 


ピ ピピピ カチャッ! バンッ!


フィラウス大司教は、「ファウストFAV22」の1号機の稼働を目にした後、ブレードナイトデッキ奥にある別の出入り口から出て行った。


ピッ ピッ ピコ! シュウウッ シュウウッ! グワアアッ! パラパラ…


「ファウストFAV22」が腕を戻すと、そこにはアニスの姿はなく、へこんだ床があるだけだった。


『目標ヲロスト』 ピコ


シュンッ! パッ!


「あッ! あいつ逃げた」 


ピピピピ ピコピコ ヴオンッ! グワアアッ!


『標的ヲ視認、攻撃ヲ継続』 ビコ


ブンッ ブンッ! グワアアーーッ!


ブレードナイト「ファウストFAV22」がアニスを再び確認すると、その両腕を振って攻撃を仕掛けてきた。


「ん、君はちょっと邪魔だよ!《アルテミスリングッ!》」 パアアアンンッ!


 シュワアアアアーッ! ドオオオンッ! ググッ グググッ!


アニスの防御魔法の前に、「ファウストFAV22」の攻撃は受け止められてしまった。 ブレードナイト程の質量を持った腕によるスピードの乗った攻撃、その破壊力は王城の城壁など簡単に穴を開けるほどの威力があった。 しかし、アニスはその攻撃を何事も無く防ぎ、ブレードナイトの腕は力なく止まったままだった。


シュウウッ シュウウッ ググッ グググッ!


ピッ ピッ ピコピコ ブオンッ!


『打撃攻撃効果無シ、対処方法ヲ考慮』 ピコ


「ひ ひいいッ! ここれは一体」 ガタガタ


「ん、ゼレオ公爵、正気を戻しましたか」 ヒイイン ヒイイン


アニスは防御魔法を出し、「ファウストFAV22」の攻撃を防いだまま、衝撃で正気を戻したゼレオ公爵に問いかけた。


「なッ き、貴様は…そうか…そうだな、貴様…いや、お嬢さん、ワシは間違っていた様だ」


「ゼレオ公爵?」


「もう公爵ではない、ただの謀反人、帝国にとって反逆者、大罪人だ…」


ブオンッ! グワアアッ! ズンッ!


『武器選択 ライトニングセイバーヲ起動、攻撃ヲ再開』 ピコ


ビシュウウーーッ ブオンッ! ブン ブンッ! ブワアアアアーーッ!


「ゼレオ公爵、離れて!」 バッ!


「うッ! うわああああーッ!(こ、皇帝陛下…いや、父上…レイラ…申し訳な…)」 ジュワアアアアーーーッ!


「ゼレオ公爵ッ!」 ザッ!


ゼレオ公爵は、ブレードナイト「ファウストFAV22」のアニスを狙ったライトニングセイバーの攻撃をもろに受け、その体はフォトン粒子となり消えて行った。消えかかる意識の中、彼はこれまでの事を悔い、父である皇帝と妹のレイラに対して謝罪しながら消えて行った。


ブオンッ! ブオンッ! ビュン ブアンッ!


サッ! ササッ! シュンッ! クルクル スタッ ザッ!


連続でライトニングセイバーを振る「ファウストFAV22」の攻撃をアニスは何事もなく交わしていたが、ゼレオ公爵の死を目の当たりにして、その動きを止め、表情が変わった。


ピビコビコッ!


『目標補足ッ!』 ピコ ブオンッ!


ビュウウンンーーッ! シュバアアアアーーッ!


動きを止めたアニスに対し、「ファウストFAV22」はライトニングセイバーの出力を上げ、振り下ろして来た。


「《ファントムッ》」 ヴンッ! シャッ!


アニスの体がブレ、一瞬でその姿が消えた時、ブレードナイト「ファウストFAV22」のライトニングセイバーが降りかかった。


ブジャアアアアアーーッ! ジッ ジジジジッ!


『目標ヲ再ビロスト、探査中』 ピコ


ブレードナイト、「ファウストFAV22」がアニスを見失い、探査に入った瞬間、「ファウストFAV22」首の辺りに、アニスは瞬時に現れた。


シュンッ パッ!


「ごめんね!」 シュンッ!


『ギッ! イレギュラーッ!』 グルンッ! ブオンッ! ビーッ!


「神級剣技ッ!《アルテナ.グラン.バスターッ!》」 ヒイイインッ シュバアアーーッ!


『ビイッ! 理解不能 理解不能ッ! 』 ビビーーーッ!


ザシュウウウウウーーッ! ザンッ ビビビッ! ドガアアアアーーンッ!


シュンッ! スタッ! クルクルッ! チャキンンッ!


ブレードナイト「ファウストFAV22」は、アニスに肩から股下にかけ、一刀両断の元、神器「アヴァロン」に斬り裂かれ、放電しながら爆発して行った。 アニスは神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に収め、ゼレオ公爵が居たであろう場所に目をやっていた。


「ゼレオ公爵…今度生まれ変わった時は、王族や貴族でないといいですね…」 サッ


テクテク テクテク チャキッ! 


「剣技ッ!《バーゼル.グラン.リッパーッ!》」 ビシイイイッ!


シュバババーーッ! キンッ グワアアンンンッ! ドオオオンッ!


テクテク


「ん、こっちか… 」 キョロキョロ コクン


ザッ テクテク テクテク


アニスはフィラウス大司教が出て行った扉を切り裂いて、彼を追って、ブレードナイトデッキを出て行った。






いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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