第206話 非情の空 アランと親友ザッツ
ー帝都上空ー
ヒイイイイインンンーーッ! バウウウウウーーッ! バババッ! ドウンドウンッ!
帝都の広い大空で、アラン達3機と教団側の3機の激しい空中格闘戦が繰り広がっていた。
バババアアアーーッ! シュンッ! ババッ! ゴゴオオオーッ!
「ザッツッ? おまえ、本当にザッツなのかッ⁉︎」 ピッ
「ああ、そうだぜアラン、どうだ、驚いただろ!」 ピッ
ヒイイイイインンンーーッ! チャカッ!
ザッツの青いブレードナイトは アランのブレードナイトに向け フォトンライフルを構えた。
「やめろザッツッ! 君とは戦いたくないッ!」 ババッ!
「はッ 戦いたくないだあ? 散々俺をコケにしたくせに…」 ピッ カチッ!
ブオオオオオーーッ! バババッ! シャシャシャッ!
「くッ!」 バッ! グイッ! ギュッ!
バシュッ! シュババッ! バウウウウウーーッ! シャシャシャッ!
アランはザッツの銃撃を躱し、加速して離れて行った。
「くそッ! 逃げるんじゃねえ! アランッ!」 ピッ グイッ! ギュッ!
ヒイイイイインンンッ バウウウウウーーッ!
ザッツもスラスターを全開にして後を追った。
・
・
ヒイイイイインンンーーッ ピッ ピピピピピ ビコッ!
「はッはあッ! もらったぜええッ!」 ピコ カチッ!
ブオオオオオーッ バババッ!
『マスター、銃撃が来ます』 ピッ
「了解よ、レパートッ!」 グイッ グイッ! ギュッ!
バッ! ババッ! バウウウウウーーッ! ギュウウウンンッ!
ジェシカもまた、アランと同じく神業に近い動作で、元猟兵団のケーニスの攻撃を躱していった。
「くそッ これも躱すかッ! やろう、いい腕だぜッ!」 グイッ! ピピ
シュバアアーッ! ギュウウウンンッ!
『敵機 高速で当機を追尾』 ピッ
「ふふ、さあ、ついてらっしゃい」 ニコ グイッ!
バウウウウウーーッ! ギュワアアアアーーッ!
ジェシカはケーニスを誘うように、わざと本来出せる速度の半分程で飛び回った。
「くそッ! 本当に「ウルグスパイアー」かッ? まるで「アウシュレッザ」並みの性能じゃねえかッ!」 グイッ グイッ! ギュッ! ギュッ!
シュバアアッ! バッ! ババッ! ギャンッ! ズワアアアアーッ!
ジェシカのブレードナイトの高速に、ケーニスは全力で追いかけて行った。
「うん、よくついて来てるわ そろそろかしら…」 ニコ グイッ! ギュッ!
ジェシカは「ウルグスパイアー」のスラスターを少し絞った。
ピッ ピコ ピピピピピ ビコビコッ!
「よしッ! 今度は捉えたぜッ! 喰らえええーッ!」 カチッ! ピコ!
ブオオオオオオッ! ババババッババーッ! シャシャシャッ!
ビーッ! ビコッ!
『マスターッ きますッ!』 ピッ
「掛かったわねッ!」 カチカチッ ピッ ピコッ! グイイッ! ギュインッ!
シュバアアーッ! バウンッ! バウウウウウーーッ! ギュワアアアアーーッ!
「なにいいーッ‼︎」 ピッ ビコビコッ! バッ!
「うふッ! もう遅いわッ!」 ギュワアアアアーーッ! ブオンッ!
それは一瞬の事だった。 ケーニスのブレードナイト、「ヴェラールXC5」が、ジェシカの「ウルグスパイアー」をその射程に収めたのは、お互いの距離が約800mの距離、そこへ装備のフォトンライフル、「ガルスターGSh-80」が火を吹き、毎秒100発を撃ち出した。
しかしジェシカのブレードナイト、「ウルグスパイアー」は、ケーニスの銃撃が当たる瞬間、それまでとは全く違う速度で動き、800mの距離が嘘のように数秒後、ケーニスのブレードナイト、「ヴェラールXC5」の真横に接近し、ライトニングセイバーで斬りかかった。
ブオンッ! ザシュウウウーーッ! ザンッ!
「うおおおおッ!」 ガクンガクンッ! ビーッ! ビーッ! バチバチバチッ!
『右腕損傷、メインウエポン使用不能 戦闘能力42%』 ビーッ ピッ ピコ
ジェシカは、ケーニスのブレードナイトの真横から、ライトニングセイバーで右腕を切り落としてしまった。そしてすぐにまた、ケーニスのブレードナイトに向け構えた。
シュウウウウーッ! ブオンッブオンッ! ピッ ピッ ピッ シュバアアーーッ!
『マスター、敵ブレードナイト右腕消失』 ピッ
「さあ、もう戦えないでしょッ! 貴方の仲間、ザッツを止めてッ!」 ピッ
シュウウーッ! シュウウーッ! バチバチッ! ガクガク ピッ ピッ
「はあ? 止めろだと? 正気か? そんな事、俺にできるかよッ!」 ピッ
「なぜッ⁉︎ 貴方ッ 死にたいのッ⁉︎ 彼を止めなさいッ!」 バッ カチカチッ!
ガシュンッ! ジャキンッ! ピッ
ジェシカは「ウルグスパイアー」の主兵装として、「アウシュレッザ」のフォトンライフル、「ストライクウイングM61A7」をケーニスのブレードナイトに向け構えた。
ピーッ! ピーッ! シュウウーッ! シュウウーッ!
「ククク…教えてやるよお嬢さん…もう奴はまともじゃねえ、誰のいうことも聞きゃあしねえよッ!」 ピッ
「なッ! それはどういう事よッ!」 バッ! ピッ
シュウウウウ… ピッ ピッ
「ひとつの事に縛られてんのさッ! 俺のようになッ!」 ニッ! カチッ ピッ!
ケーニスが教団ブレードナイト「ヴェラールXC5」についている機能の一つ、出力リミッターのスイッチを切ると、彼のブレードナイトの目が白から赤へと変わり、搭乗者、ライナーのケーニスから魔力を吸い上げ始めた。
シュワアアアアアーーッ ビュウォオオオーッ!
「うおおおおーッ!な、なんだよこりゃああーッ⁉︎」 カチッ カチッ ガクガク ブルブル ポタポタ…
『魔力不足分ヲ、ライナーカラ魔力ヲ回収開始』 ピッ
「ヴェラールXC5」は、どんどんケーニスから魔力を吸い上げて行った。 ケーニスはたまらず、スイッチを押したが、それは止まらなかった。
ズワアアアアーッ!
『マスター、敵機の魔力反応増大です。一度距離をおいてください』 ピッ
「そうねッ! レパートの言う通りだわッ!」 グイッ! ギュッ!
ババッ! バウウウウウーーッ! シュアアアアーーッ!
ジェシカは一旦ケーニスのブレードナイトから離れ、距離をとった。
「うおおおおッ! 神官どもめええッ! グワアアーッ!」 ガタガタタッ!
ブシュワアアーーッ! シュウウーッ シュウウーッ! ガシュンッ! ブオンッ!
ケーニスの体は次第に萎んでいき、まるで老人のように細く皺だらけになって、最後は完全に干からび絶命しチリとなって消えてしまった。ブレードナイトは事を終えたのか、ジェシカのブレードナイトを睨み、左腕のライトニングセイバーを起動して構えた。
ピッ ピッ ピッ ビコッ!
『マスター、気を付けてください。先程までとは全く異質のブレードナイトになってます』 ピッ
今、目の前にいるブレードナイトは、先程とは違い異常な魔力を放ち、片腕がない事など気にも留めて無い様子だった。
「ええ、そのようね…」 カチカチッ! ピッ
カシュンッ! ブン ビシュウウーーッ! ブオンッ!
ジェシカもフォトンライフルを収納し、相手は恐らく高速での、ライトニングセイバー攻撃に出ると判断して、自分もライトニングセイバーを起動し、相手に構えた。
「さあ、来なさいッ!」 ギュッ! ピッ ブオンッ!
ビッ ビビッ! ブアンッ! ギンッ!
『グバアアアーッ!』 ヒイイイイインンンーーッ!バウウウウウーーッ!
ギュワアアアアーーッ! ブンブンッ! ブアンッ!
「ええッ⁉︎ なにあれッ!」 ギュンッ! グイイッ! ババッ! ピッ
バウウウウウーーッ! シュワアアアアアーーッ!
ケーニスのブレードナイトは、いきなり咆哮し出し、ジェシカのブレードナイトに突進して来た。それはもう、ブレードライナーの操縦とはとても思えぬ動きだった。ジェシカは咄嗟に動き、後方に下がった。
ピッ ピッ ビコッ ビコビコ ピッ!
『マスター、気を付けて下さい。何か様子が変です』 ピッ
「ええ、そのようね。でも大丈夫だから」 ニコ グッ!
『ガアアアーッ』 ブンブンッ! ゴオオオオーーッ!
ケーニスのブレードナイトは、咆哮しながら高速突進し、ライトニングセイバーを振り回してジェシカのブレードナイトに接近して行った。
「わあ、ブレードナイトが叫ぶなんて初めてだわ、でも…」 カチカチ ピッ
『ガアッ ガアアアーッ!』 ブオンッ!ブアンッ! ビュン!
「確かにさっきより強くなったわ、だけど…それでも私達に届かない…」 グイイッ!
ババッ! クルッ! バウウウウウーーッ! ブオンッ ビイイーーッ!
ジェシカは「ウルグスパイアー」を急反転し、スラスターを全開にして、迫ってくるケーニスのブレードナイト「ヴェラールXC5」に、ライトニングセイバーの出力を最大にして斬りかかった。
シュワアアアアアーーッ! ビイイイインンッ!
「残念ね、そんなんじゃ私達の相手にはなれないの」 グイッ! ギュッ! ピッ
シュババッ! ザンッ!
『ガッ! ガアアアーッ!』 ズバアアアッ! ドオオオオオンンンッ! パラパラ…
ケーニスのブレードナイト「ヴェラールXC5」は、ジェシカのブレードナイト「ウルグスパイアー」によって袈裟がけに両断され、爆発四散していった。
『マスター、敵機の撃墜を確認しました』 ピッ
「アランとザッツは? マイロはどうなったの?」 バッ!
『アラン少尉は右舷上空、2500の位置にて交戦中、マイロ少尉も前方1600の位置にて交戦中です』 ピッ
サッ サッ キョロキョロ
「マイロの方は大丈夫そうね、問題はあっちか…」 ジイイ…
ジェシカは前方のマイロよりも、遥か上空で戦っているアランとザッツの方を見ていた。2人は尋常でないほどの速度で格闘戦をしていた
「アラン…」 ググッ
『マスター、加勢しますか?』 ピッ
「レパート…ううん、やめとくわ、男の子のプライドと意地をかけた戦いに、私は出ちゃいけないわ」 フリフリ
ジェシカは2人の戦いに手を出さず、見守ることに決めた。
・
・
シュバババッ! バチバチ ポンッ! バンッ!
「ハアハアハア、こ、こんな馬鹿な…」 ピッ ピッ ピッ シューッ シューッ
それは教団ブレードナイト隊隊長のベルターだった。彼のブレードナイト、赤い機体の「ヴェラールXC5」は、マイロの「アウシュレッザD型F1ライナーR32」の動きに全くついてこれず、すでに両肩と右足の動力を失っていた。
「どうですか? 僕のR32、意外と凄いだろ!」 ピッ
『あらマスター、凄いのはマスターですよ!』 ピッ
「そうなのかな?」
『ええマスター、あの者も優秀なブレードライナー、かなりの手練れでした。しかしマスター、マイロ様の方が数段、能力や魔力が上だったんです』 ピッ
「ジェシカの言ったとうり、やはり僕達は…」 グッ!
マイロはベルターに対し、フォトン銃とライトニングセイバーで完膚無きまでに攻撃し、ベルターは手も足も出なかった。 それほどまでに強くなっていた事をマイロは実感していた。
ビーッ ビーッ ビーッ
『戦闘不能、リミッター解除ヲ申請シマス』 ピッ
ダンッ!
「黙れッ! 俺は知ってるんだぞ! 解除すれば俺の命を奪って貴様達は戦うのだろッ! 俺は認めんッ!」 カチカチッ! ピッ ピコピコ!
ベルターは、教団仕様のこのブレードナイトの事を知っていた。普通に使えば間違いなく優秀なブレードナイトである。だが、リミッター解除というスイッチを入れた途端、ライナーの命を犠牲にして、このブレードナイトは狂戦士モードに入り、魔力が尽きるか、破壊されるまで見境なしに攻撃と破壊を続ける事を…
教団は卑劣な仕様をこのブレードナイトに仕組んでいた。 ライナーに『窮地に陥った時、リミッターを解除すれば、窮地を脱せる』と伝え、率先してライナー達にそれを勧めていた。まるでブレードライナーなどただの捨て駒のように… だが、ベルターも知らない機能がもう一つ備わっていた。
カチカチ ピコピコ ポンッ!
「ふッ どうだ、これでもう俺しか操縦できまい、お前達の好きにはさせん!」 グッ
ベルターは「ヴェラールXC5」のライナー支援システムを全て解除し、ライナーのみのマニュアル操作に切り替えた。しかし…
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
『不正解除サレマシタ、当機ハ秘密保持ノ為自爆シマス』 ピッ ピコ
「なッ! ふざけるなッ!」 ダンッ! カチカチ
ベルターは、自爆アナウンスを聞き、コンソールを叩きながら叫んだ後、自爆解除に努めた。
『自爆マデ、アト9、8、7…』 ピッ ピッ ピッ
カチャカチャ ピッ タンタン ピコ ピコ ブーッ!
「くそッ! くそッ! こんなッ! こんな事でッ!」 カチカチ カチャカチャ!
ベルターは必死に、自爆解除しようとしていた。
ピッ ビーッ!
『マスターッ! 離れてッ! 敵は自爆しようとしてますッ! 脱出をッ!』 ピッ
「うッ! わかったッ!」 グイイッ! ギュウ! ピッ!
ヒイイイイインンンーーッ! バウウウウウウーーッ! シュバアアアアーーッ!
「自爆するなんて…そんなのライナーじゃねえよッ!」 グッ!
マイロはその場を離れながら、モニターに映るベルタ―のブレードナイト「ヴェラールXC5」を見ていた。
ピッ ピッ ピッ
『…4、3、2…』ピッ ピッ ピッ
「ちくしょおおおーッ!」 カチャカチャ カチャカチャ…
『…0、』 ピッ カアアアアッ!
ドガアアアアアアンンンーーッ! バラバラッ!
ベルターのブレードナイトは一瞬眩く光り、彼共々爆発して散っていった。
ヒイイイイインンンーーッ!
「愚かな…生きて帰れば再戦の機会もあったのに、死んでどうする…」 グッ
マイロは亡くなったベルタ―に対し、そう言ってその場を離れた。
・
・
帝都上空2800m付近、2機のブレードナイトが高速格闘戦を続けていた。
ヒイイイイインンンーーッ! ピピピッ! ビコッ!
「アランッ! もらったぜッ!」 ピッ カチッ!
ブオオオオオオーーッ! バババッ! シュンシュシュッ!
『マスターッ!』 ピッ
「ああ、任せろッ!」 グイグイッ! バッ! ギュッ!
バッ! バッ! ササッ! バウウウウウーーッ! ギュワアアアアーーッ!
「くそッ! また避けやがったッ!」 グイッ!
シュババアアアーッ!
2人の戦いは一進一退、一向に決着がつかなかった。
『マスター、敵機が追い縋って来ます』 ピッ
「ザッツ…どうして…」
ザッツのブレードナイト「ヴェラールXC5」は最大加速でアランのブレードナイト「アウシュレッザD型F1ライナーマークII」に迫っていった。
「はあっははははッ! どうだアランッ! これが俺の力だッ! もうお前だけが英雄じゃないぞッ!」 カチッ!
ブンッ ビシュウウーッ! ブオンッ!
「くそッ!」 グッ
『マスターッ!』 ピッ
「ちいッ!」 カチカチッ! ピッ
ブンッ ビシュウウー! ブオンッ!
「「 はあああーッ! 」」 グイイッ!
ブワアアッ! ビシイイイッ! ババアアーーッ! ジジジジッ!
2機のブレードナイトは、お互いにライトニングセイバーを起動し撃ち合い、鍔迫り合いになった。
ブウンッ! ブブブッ ジ、ジジジジ ブアンッ! グググッ!
「ザ、ザッツッ!」 グググッ
「うぐッ! さ、流石だなアランッ!」 グググッ
「ザッツッ! お前は一体どうやってッ⁉︎」 ジ、ジジジジッ ググッ
「どうやってライナーになったかってか? アラン、それをお前がいうか? お前も同じようにやったんだろ?」 ジジジジ ブアン ブアンッ! ググッ
「なッ なんのことだッ!」 ブアンッ! ググッ!
「ふんッ あくまでもしらを切るつもりか? お前達は薬を使ったんだッ! 俺と同じようにッ!」 ジジジジッ! ブアンッ!
「なッ!」 ジジジジッ! グイイッ! バッ!
「ふんッ!」 ジジッ! グイイッ! バッ!
バシイイッ! ババッ! シュワアアアアアーーッ! ブオンブオンッ!
2機は押し合いその場から離れ、空中で対峙した。
「薬だとッ! 俺達はそんなもの使っていないッ!」 バッ!
「ふんッ! 嘘をつくなッ!だったらお前達のその力はなんだッ!」 グッ!
「こ、これは…」グッ
アランは答えれなかった。誰が信じよう、アニスと名乗る少女に異空間で鍛えられ、能力と魔力を通常の何倍にも上げられ、ライナーに成れたなどと、常規を逸した話である。
「俺は確信したのさ、お前達は薬を使った、それで英雄になれたとな」 スッ
「ザッツッ! 違うッ 違うんだッ!」バッ
「違わないさッ 現にその薬を使って、俺はお前と同等の力を得たんだ! それが全てだッ 違うかッ!」 グイッ! ギュッ!
ヒイイイイインンンーーッ バウウウウウーーッ!
「ザッツーッ!」 グイッ! ギュッ!
ヒイイイイインンンーーッ バウウウウウーーッ!
バシイイイーッ! ブン ビシュウウーーッ! ブオンッ! ビビビッ!
2機は再びスラスターを全開にしてぶつかり合った。
「ザッツ…」 グイッ グイッ! ババッ!
「はははッ! どうした どうしたあッ! 英雄とはそんなものかあッ!」 グイッ グイッ!
ビシイイイッ! バシバシッ! ブン ビュワアアーッ! ブンッ!
「ハアハアハア どうだッ! まだまだ行くぞッ! アランッ!」 グイッ!
ピー ピー ピー
『魔力減少、ライナーヨリ供給開始』 ピッ
「ああ? べつにいいぜッ! 今の俺は最強だあッ!」 グイッ! ギュッ
ブオンッ! シュバアアアアーーッ!
ピッ ピコッ!
『マスター、敵のブレードナイトが異常魔力を放出、様子が変です』 ピッ
「ザッツッ! おいザッツッ! 聞こえるかッ!お前の機体、おかしいぞッ!」 グイッ!
「はん、おかしいもんか、これがコイツの正常だぜッ!」 グイッ
バシイイッ ブオン ブオン バシイイッ ビシイイイッ! ジジジジッ!
ザッツのブレードナイトからは、過剰なほど魔力が漏れ始め、当然その出どころがザッツ本人であった。だが、彼は教団の薬の影響でそれに気が付いていなかった。
「ザッツッ! やっぱり変だッ! とにかくその機体から出ろッ! 脱出するんだッ 早くッ!」
「うるさいッ! 行くぞおおッ!」 ギュウウッ! グイッ!
バアアアアーッ! ブンブンッ バアアアアーッ!
「うわッ!」 グイッ!
バウウウウウーーッ! ササッ! バッ! ブンッ ビシュウウーッ ザンッ!
ブシャアアーッ!
アランは猛攻撃をしてくるザッツを避けた時、無意識にライトニングセイバーを振り、すれ違いざまにザッツのブレードナイトの左腕を切断してしまった。
ピッ ピコ ポン!
『マスター、敵ブレードナイト、左腕消失、お見事です』 ピッ
「わるい! ザッツ、つい攻撃してしまった」 バッ
アランはつい、友人に話す感じで言ったその言葉が、ザッツをさらに怒らせた。
「うぐぐ、よくも左腕を…ついだあ? アランッ! 絶対に許さねえ!」 グッ
『リミッターヲ解除シマスカ?』 ピッ
「ああッ 奴を倒せるなら何んでもやれッ!」 カチッ
『了解』 ピッ
シュバアアアアーーッ!
「ぐうううッ! なッ! うわああああーッ!」 ガクガク ビクビクッ!
ザッツの体から魔力が吸い出され始めた。
ピッ ピコ!
『マスター、解析完了、あのブレードナイトは危険です。ライナーの魔力を枯渇寸前まで吸い尽くすタイプです』 ピッ
「なッ⁉︎ ザッツッ おいッ ザッツッ!」 カチカチ
だがザッツからの返事はなかった。
『攻撃可能デス』 ピッ
「…ア…アラン…」 グイイッ! ピッ
バウウウウウーーッ シュバアアアアーーッ!
ザッツはまだ意識があった。 その薄れ行く意識の中で、ザッツはアランの名を口にしていた。
ブオン ブンブンッ!
「くそッ! こうなればッ!」 カチカチ ピッ ピコッ! グイイッ!
バウウウウウーーッ ブオンッ! ビシュウウーッ!
「これで止まれええーッ!」 ギュウッ! ブンッ! ザシュザバアアーッ!
バシイイッ! ドオオオオオンンンッ! ボウッ!
「グウウウウッ!」 ガクガク
『膝関節損傷、可動セズ、武装変更、フォトンライフルへ』 ピッ カチッ
ブオオオオオオーーッ! バババッ!
アランに両足を壊されたザッツのブレードナイトが、今度は右腕一本で、フォトンライフルを射撃し始めた。 完全自動の戦うブレードナイトになってしまった。しかし、片腕ゆえに、照準も定まらず、フォトン弾は在らぬ方向へと飛んでいった。
シュウウーーッ ピッ ピッ ピッ
「う…うう、はッ! アラン…俺は…俺達は…」 カサカサ カチ カチッ!
コクピットの中で、ザッツは正気を戻した。魔力を吸い出され、その命をも吸い出されようとしていた時の事であった。 微かな意識の中、ザッツは自動戦闘モードを解除しようとスイッチ類を押していたが無駄だとわかり、呆然としていると、自分の体の変化に気がつき、目の前のアランに通信を送った。
バババッバーーッ! シュンシュンシュシュンッ!
「こんな弾幕ッ!」 グイッ! ババッ!
ピッ
『聞こえるか…アラン…』 ピッ
「ザッツッ!」
『すまない…つい、教団の…口車に乗せられた…』 ピッ
「ザッツッ! ザッツなんだな? よかった…」
『ああ…随分と迷惑かけたな…』 ピッ
「ああ、そうだ、この馬鹿野郎、今行く、その機体から脱出するんだッ! その機体はおかしいぞッ!」
『はは…ありがとう…やっぱり君は親友だ…』 ピッ
「当たり前だッ! 幼馴染だろッ!」
『幼馴染…か…アラン、頼みがある』 ピッ
「頼み? ああ、後で聞いてやる! 早くそこから出ろッ!」
『教団を…ガーナ神教団を全て…消してくれッ!』 ピッ
「ザッツ、お前…」
『俺はここまでのようだ…もう、体の半分が消えた…』 ピッ
ザッツの下半身はすでに消えて散り、それが上半身へと伝わっていった。
「はああ? ザッツッ! 何を言ってるんだ!」 ババッ!
『いいかアラン…親友として幼馴染としての頼みだッ! 教団と、この…ブレードナイトを…全て消してくれッ!』 ピッ
「ザッツ…」
『いいか?』 ピッ
「わかった、だがお前を助けてからだッ! いいなッ!」
『………』 ピーーーッ
「おい ザッツッ! 返事しろよッ! ザッツッ!」
ザッツのコクピット内にはすでに誰もいなかった。ただ、ザッツが着ていたであろうライナースーツが、主人をなくしライナーシートの上にあるだけだった。
ブンッ!ブオンッ! シュバアアアアーーッ!
主人をなくしたブレードナイトが、完全自動で、アランのブレードナイトに斬りかかって来た。
「うう…ザッツ…」 ググッ
『マスター、敵ブレードナイトが急接近して来ます』 ピッ
「うおおおおおーッ!」 カチカチッ! ピッ ピコッ!
ジャキンッ! ピッ ピピピピピ ビコビコッ!
「ザッツの仇だあああーッ!」 カチッ!
ブオオオオオオーーッ! バババッバーーッ!
ギュワアアアアーーッ! バンバンバンッ! ガスッ! ドンッ! ビシビシッ!
ドガアアアアアアンンンーーッ! バアアアアアーーッ! ドオオオンンッ!
ザッツの乗っていた青いブレードナイト「ヴェラールXC5」は、アランのフォトンライフルの攻撃で穴だらけとなり、爆発して地表へと落ち爆散していった。
「ザッツ…頼みは聞いた、俺がやってやる。だから…安らかにな…」 グイッ!
ヒイイイイインンンーーッ! バウウウウウーーッ!
アランはマイロ、ジェシカと合流するために、スラスターを全開にして飛んでいった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。