表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
199/311

第199話 アニスVS執事のゼロス

ー王城 謁見の間ー


アトランティア帝国、帝都「アダム」にある王城の謁見の間にて、白銀髪に白を基調とした上着にスカート姿のアニスと、紺色のオールバックヘアで、黒を基調とした燕尾服の執事服を纏ったゼロスが、お互いに武器を持って対峙していた。


「準備のほどは如何ですかな、アニスお嬢さん?」 ザッ シュリイインンッ!


「ええ、いつでも…」 サッ チャキッ!


「では…参りますぞッ!」 ググッ!


「ん」 コクン グッ!


「「 《縮地ッ!》 」」 シュシュッ! バッ!


アニスとゼロスは同時に高速移動術を使い、その場から一瞬で消えた。


シュバッ!  ビュンッ! シャシャシャッ! ヒュンヒュンヒュンッ! バッ!


「ほう、速いッ…(《縮地》は使えて当然、ですがこの速度、この私と同速とは意外でしたぞ)」 二ッ シュババーーッ!


シュシュッ! ビュン! シャシャシャッ! シュサッ! ヒュンッ!


「ん〜…(手加減してるのかな? アラン達より遅いなぁ…)」 シュンシュッ!


執事のゼロスは、自分の最高速についてくるアニスに称賛していたがアニスは違った。アニスはゼロスの《縮地》速度を見て、ゼロスが手加減をして、わざと速度を落としているものと思っていた。 実際、アニスの特訓を受けたアラン達3人は、今のゼロスの《縮地》速度を遥かに上回る速度で動けていた。


この世界、全てが魔力次第の世界。魔法や魔道具、武器からブレードナイトまで、その全てがそれを使う個人の魔力量と魔力操作によって違ってくる。 従って、同じ魔法や魔道具、武器、ブレードナイトでも使用する者によって、その性能や威力が変わってくるのであった。


シュンッ! ギンッ! キンキンッ! シュババッ! ギュンッ! シャシャッ!


ドカッ! ビシイッ! バアンッバラバラッ! バシバシッ! シャシャシャッ!


2人が打ち合い出して既に30分ほど、謁見の間では2人が出す剣の剣さばきや剣撃、高速移動など高速音が響き、時折2人の姿が現れては消え、レイピアとダガーの出す火花や剣線が見えた。 その威力により、石畳の床や石柱、壁や天井を傷つけ、破壊していった。


「ふむ…剣筋は十分、いきますぞッ アニスお嬢さんッ!」 ググッ ババッ!


「ん? 魔力が膨れ上がった…」 シュバッ! シャッ!


執事のゼロスは、《縮地》を使った高速移動戦闘中に、アニスの剣筋を読み取り通常剣技戦では、互角と判断し、《縮地》を使用したまま彼の自負している特異剣技に入った。アニスもそれに対し反撃した。


「ふんッ! Nr.1ッ!《ツバイッシュ.シャウトッ!》」 シュッ バシューーッ!


「うわッ 剣技ッ!《グランツ、カッツエッ!》」 キュンッ! シュバーッ! 


ギュワアアアッ! バシイイイッ! バアアアンンーーッ!


ゼロスの初動作無しの剣技に驚きつつも、アニスはそれを剣技で返し、お互いの技がぶつかり合い爆発して威力を打ち消した。 それでも2人は《縮地》を継続し、高速移動戦闘を続行した。


シュンッ! シュバババッ! ヒュンッ! ギュンッ!


「ほう…Nr.2ッ!《シュラング.バッシュッ!》」 シャシャシャッ! バババッバーーッ!


「ん! 剣技ッ!《イージス.エッジッ!》」 キュインッ! シュババーーッ!


バシイイイイッ! ダアアンンーッ! バアアアーーッ!


「なんとッ! しからばッ! Nr.3ッ!《シュラッツ.ラッザッ!》」 ヒュインッ! ババババアアアーーッ!


「フッ! 迎撃剣技ッ!《ガイエス.シャッフェルッ!》」 キンッ! ヒイイッ! ギュワアアアーーッ!


シュワアアアアーーッ! スバアアーーンンッ! ババアアーーッ


ビュウウウーーッ! ヒュンッ! シュサササーーッ!


「ふおッ! コレもですかッ‼︎ ううッ! ならばッ!」 シュンッ! バババッ!


「ん、さらに魔力を高めた…」 チラッ シュンッ! バババッ!


ゼロスはアニスが三度みたび、自分の連鎖剣技を防いだ事に驚き、今まで使う相手がいなかった連鎖剣技の四撃目を使用した。


「はあああッ! Nr.4ッ!《べルスレッジ.ブレッザーッ!》」 ギュンッ! ドバアアアーーッ!


「大きい… 神級剣技ッ!《ヴェルダー.スウィングッ!》」  キュインッ! シュバアアアアアーーッ‼︎


ギュワアアアーーッ! バシイイッ! ドガアアアアーーンッ! ビュワアアーッ


「ぬあッ⁉︎ 何とおおおーッ! グウウッ!」 バシイイッ! ババッ! ババーーッ!


ゼロスはアニスが放ったカウンター剣技の衝撃波を受け、その場から吹き飛んでいった。


「うおおおーーッ!」 ビュンッ ブワアアーーッ!


ドオオオンッ! バシバシッ! ドカドカッ! ザザザーーッ! バラバラ…


「むう…なんと言う威力…」 グッ スタッ! パッ! パッ!


ゼロスはアニスの剣技で飛ばされ、床に膝をついて動きを止めた。すぐさま立ち上がり、執事服についた埃を払った。


シュンッ! スタタッ! タン… ファサッ! サワサワ…


そこに、何事もなかったように、セミロングの青みがかった白銀髪とスカートを靡かせ、颯爽とアニスが現れた。


「ん、連続剣技は終わりですか?」 ニコ テクテク チャキッ!


「むう…(強い…こんなお嬢さんがこれほどの使い手とは…)」 グッ!


笑顔で現れたアニスに対し、ゼロスは平然を装っていたが、内心驚いていた。その様子を皇帝、ベルディアはじめ、全員が身動きせず固唾を飲んで見ていた。


「凄い…2人の動きが目で追えない…ゼロスもだけど、アニスちゃんがこれ程だったなんて…」 ブルッ


「レ…レイラ姉さん…アニスさん凄いッ! 凄すぎるよッ! はは…決めたッ! 私は彼女が欲しいッ!」 ギュッ!


「ふうむ…(強いと思うたが、まさかこれ程とはのう…)」 二ッ


皇帝のベルディアとラステル、レイラの3人はアニスの戦いを見て驚いた。ラステルなどは完全にアニスに見惚れ、興奮していた。 一方、ゼロスの主人、ゼレオ公爵は逆の意味で驚いていた。


「はッ⁉︎ ゼロスだぞッ! 執事の中でも最強の『スタークス・バトラー』の称号を持つゼロスがッ…あんな小娘に…」 ググッ!


驚くのも無理がなかった。ゼレオ公爵にとって最大戦力のゼロスである。彼の攻撃が通じず、逆に彼が膝をつくなど、今まで見た事が無かったからだった。


「ゼロスッ! 何をしているッ 早く其奴を仕留めるのだッ!」 ババッ!


「はッ! 畏まりました、旦那様」 ペコ


こんな状況でも、主人に対し礼を欠かさず、無理難題でも引き受ける。流石は最強で最高の執事である。


「さて…アニスお嬢さん」 クルッ バッ!


「ん?」


「剣の腕は感服しました。ですがそれまで、旦那様を待たせるわけにはいきません」 スッ! シュッ!


ゼロスはレイピアを腰の鞘に戻し、半身になって構えた。アニスもそれを見て神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻した。


「ん? 剣技はもういいの?」 スッ! チャキン!


「はい、剣技は終わりです。今からは魔法ですッ! はああッ!」 ブワアアッ!


「魔法…ね」 スッ! グッ!


ゼロスが魔力を高めると、その周りに白い魔力が立ち込めていった。


「おお!そうだゼロスッ! 魔法だ魔法ッ! お前のその、真の実力を見せてやるのだッ!」 ガハハッ!


「レイラ姉さん、アニスさんは魔法を使えるんですか?」


「ええ、多分…(まさか、大丈夫よねアニスちゃん…)」 ググッ


レイラは以前、まだアニスに出会う前、レオハルトから聞いた言葉を思い出した。

          ・

          ・

『レイラ姉、アニスを頼むぜッ! いいか、あいつを怒らせるなよッ!』


『何よ突然、そのアニスって娘がどんな娘か知らないけど、そんなになの?』


『ああ、絶対に敵に回すなッ! 回せば滅ぶぞ!』


『また何を大袈裟に…』


『アニスの魔法で、巡航艦が一隻消し飛んだ』


『は?』


『俺の見ている目の前でだ…あの巨大な巡航艦がチリ一つ残らなかったよ…』


『そんな…』


『いいかレイラ姉、アイツは剣の腕も超一流、だが魔法はそれ以上なんだ…絶対にアニスに魔法を使わせない様になッ! 頼んだぜ…』

          ・

          ・

「(アニスちゃん、お願いだから大きな魔法はやめてね)」 ハラハラ ギュッ!


レイラはゼロスと対峙しているアニスを見て、心から願った。


「ふむ、では行きますぞ! アニスお嬢さんッ!」 ギュッ! サッ サッ サッ!


「ん、いいよ」 ザッ!


「はああッ! 《アイスラング.ランスッ!》」 キンッ! ドババババッババーーッ!


ゼロスはいきなり氷結系最強呪文の一つをアニスに放ってきた。


「ふむ、(いかがですかな? いきなり最強呪文は失礼だったかもしれませんが、旦那様の命令です。アニスお嬢さん、申し訳ありませんな)」 ニッ! ババババッババーーッ!


直径30cm 長さが1mもの氷の槍が十数本、アニスに向け、高速で襲いかかった。


「氷の槍の魔法か…ジェシカより数が少ないね」 スッ! フィイインンッ!


「なッ! 無詠唱で赤い魔法陣ですとッ⁉︎」 ババババッババーーッ!


アニスは向かってくる氷の槍に対して右手を差し出すと、右手の先に小型の赤い魔法陣が現れた。


「《ゼルダリア.フェルメッ!》」 キュインッ! ドドドドドドッ!


アニスの赤い小型魔法陣から、膨大な熱量を誇る光の球が無数、発射された。


シュバババッバーー! ジュワアッ! バアアアーーンンッ!


「ぬううッ! 何という輝きッ!」 ババッ! ビリビリビリ ジリジリ…


ゼロスの放った氷の槍は全て、アニスの光の玉に砕き散らされ、蒸発していった。さらにその余波を受け、ゼロスは軽く火傷を負っていた。


ジリジリ…


「次、いいですよ」 ニコ サッ!


「ムウウ…ではこれは如何ですかなッ?」 ババッ サッ ササッ! シュワンッ!


「ん!」 ザッ! ササッ! 


「《グレイシュトラウス!》」

「《フレイムランス!》」

「《バル.デスレクター!》」…


「ん、《レイ.スラッシュ》」

「《グリン.フォール》」

「《アルテミスリング》」…


ドオンンッ! バンバンッ! シュワッ! ゴオオンンーーッ!…


その後、ゼロスの持つ火、水、風、土、光に闇、ありとあらゆる魔法全てを、アニスは撥ね除け、全くの無傷だった。


ヒュウウウ… バサバサッ テクテク スタッ!


「ん〜 もうやめません? あまり効果もなさそうですよ…」 ササ…


「ハアハアハア、で、ではこれならどうですッ!」 ババッ! キイイインンーーッ!


全ての攻撃魔法を防がれたゼロスは、右手で空中に何やら呪文の様なものを描いた。すると、彼のすぐ前に紫色の魔法陣が構築され、それがゆっくりと回り始めた。


「ん? 召喚魔法? この世界で初めて見た」


アニスは召喚術をしない、しなくても十分な存在だったため、初めてその魔法陣を見た。


「ゼロス…召喚魔法が使えたのね…」


「レイラ姉さん、あれが召喚魔法なんですか?」


「ええ、使用者の魔力と引き換えに、強力な力を持った何かを召喚するって言われてるわ」


レイラの解釈は正しく、召喚魔法は使用者の魔力量によって、召喚されるものが違ってくる。ゼロスは類い稀ない魔力の持ち主、かなり強力な何かを召喚するものと思われた。


「ははは、アニスお嬢さんには申し訳ない、女性には酷かもしれませんが、これは命をかけた勝負、いきますぞッ!」 グググッ! ブワアアアーーッ!


「ふはははッ! そうだッ! いいぞゼロスッ! 強力な力でそんな小娘、ラステル達共々殺ってしまええーーッ!」 ババッ!


ビリビリ バシッ! ババッ ババッ!


「ん? (不味いね、うまく制御できてないじゃないか、これでは召喚された何かは暴走してしまう)」 グッ


ゼロスの魔力が最大に膨れ上がり、紫色の魔法陣から何やらツノの様なものが見えた瞬間、アニスは足元に転がっていた石材を拾った。


「ん〜…えいッ!」 ヒョイ シュッ! 


パリイイイインンッ! バラバラバラ シュゴオオオオオ……シ〜ン…


アニスは拾った石材にアンチスペル、強制解除魔法を神語ヒエログリフで書き、それを紫色の魔法陣に投げた。 投げられた石材によって、魔法陣は砕け散り、召還中の何かはその姿を表す前に消えていった。


「はッ?」


「「「「 えッ⁉︎ 」」」」


「あはは、壊れた、やっぱ脆いよね召喚中の魔法陣って」 ニコ


「「「「「 えええーーッ! 」」」」」 ババーーッ!


「ん?」


「うぐぐッ! ふ…ふざけるなああーーッ!」 ババッ!


「ん?」


その場にいた全員が意表を突かれ驚き、ゼロスは顔を真っ赤にして怒り、アニスに叫んだ。


「しょ…召喚中の魔法陣に手を出す奴が何処におるかああーーッ!」 ガアッ!


「ここ」 サッ!


ゼロスの叫びに、アニスは真面目に答えた。


「あはははッ! ア、アニスちゃんおもしろいッ!」 ケタケタ


「レ、レイラ姉さん…」 え〜…


「フォフォフォッ! こらたまげたのう、こんな事は初めてじゃ」 ニコニコ


ゼロスはその場にいた者達から笑われ、さらに顔を真っ赤にして腰にあるレイピアを再び抜いた。


「これほどの屈辱は初めてですぞ、アニスお嬢さん」 うう… チャキイイン… ヒュンヒュンヒュンッ!


シュンッ ピタッ! ザッ!


「ん、屈辱? 魔法陣を壊しただけですよ」 スウウ チャキンン!


「ふむ、確かに… いいでしょう、このゼロス、どんな相手であれ全力で戦って参りました…剣技、技、魔法、どれをとっても貴女は強い」 サッ


「ありがとう…では、諦めて降参してくれますか?」 ニコ


「いえ、旦那様の命令は絶対なので…この辺りで終わらせていただきます」 ギラッ! 


「え〜…まだやるんだ、仕方ないですね…」 チャキッ! 


「ではこれで最後です、アニスお嬢さん」 ブンッ! ユラユラ シュバッ!


「ん? なんだ…急に姿がぶれ始めた?」 サッ!


「ふふふ、左様、この技は誰も知らない、このゼロス個人の特殊能力…アニスお嬢さん、貴女がどんなに強くても、これは防げませんぞ!」 ユラユラ シュバッ!


「あ〜、消えた、これって…」 ふむ…


ゼロスの体は、周りの景色に溶け込み始め、しばらくして、完全に気配がなくなり、その姿が消えていった。


「あッ! あれは私の時と同じ技ッ!」 バッ


そう…最初、レイラが煙幕弾で戸惑っていた時、その空間から突如として現れたのがゼロスだった。その時の事を思い出したのであった。


「ん、あれ? 確かそんな技があったよね、えっと…なんだったけ?」 はて…


『ふふふ、感知できまい…この技、いや能力を極めした時、私は歓喜に沸いたものよッ! 誰にも気付かれず、ことを成し遂げる…そう、これこそ、神が私に授けた究極の能力ッ! この無敵とも言える能力があれば私は神にだってなれるのだッ!』 フオン フオン


フオン フオン フオン


アニス達には彼の姿が全く見えず、気配も感知できなかったが、ゼロスにはまるでその場、謁見に間にいる様な状態で、容易くアニスの近くに近寄っていった。


カツカツカツ シュキイイイイン! キラッ!


『いつ切られたか、いつ死んだのかさえ、分からないでしょう』 シュバッ!


ゼロスはアニスの正面に立ち、袈裟がけにレイピアを振り下ろした。


『お強かったですぞ、アニスお嬢さんッ!』 ビュンッ!


普通の者ならば、この一撃は致命傷になるはずだった。ゼロスもそれを確信して止まなかった。だが、レイピアがアニスに斬りかかるその時、確信を遥かに超えた事が起こった。


「ん、思い出したあーッ!」 ビュンッ!


ビギイイイインンッ! バシイイッ! 


アニスは突然叫びながら、神器のミドルダガー「アヴァロン」を振り上げ、ゼロスが振り下ろしてきたレイピアの攻撃を受けきり弾いた。


『なッ⁉︎ なんとおおーーッ!』 サッ! ババッ!


「やっぱり…そこにいたね」 ジッ! チャキ…


誰にも感知できない空間内で、レイピアの攻撃を受け止められ、驚き後退りするゼロスであった。


『バカなッ! 見えるはずがないッ! なぜわかったッ⁉︎ なぜ受け止められるッ⁉︎ どうして? なぜ? なぜ?』 カツツッ! ググッ!


100%の勝利を確信した一撃が、ものの見事に防がれたのだ。しかも、それを行ったのが目の前に存在する、白銀髪の少女アニス、ゼロスは全く予想外の出事に動揺を隠しきれなかった。


フオン フオン フオン


『こんな事があるのか? 何だこのお嬢さんは… いや、偶然なのでは…たまたま振り上げたダガーが当たったのでは無いのか?…』  ググッ!


ゼロスはあり得ない事象にひとつの結論を付け判断した。


『ふむ…私としたことが…そうだ、偶然だ、私のこの能力が防がれるわけ無いのです!』 フオン フオン


カツカツカツ ザッ! シュキイイイイン!


ゼロスは再び、アニスの際に立ち、レイピアを構えた。


『偶然は二度と起きませんぞッ! アニスお嬢さんッ!』 ビュンッ!


ゼロスは再びアニスにレイピアを振り下ろした。 ゼロスが近づき、レイピアを振り下ろすまで、アニスは全く気付いた様子がなかった。


『ふむ、やはり先ほどのは偶然、この能力は最強なんです』 二ッ


「ん、そこだねッ!《イグニ.グラン.バースト》」 クルッ! バッ!


『なッ⁉︎』 ビクッ!


ゼロスが再び勝利を確信した瞬間、ゼロスは恐怖した。目の前にいるアニスがこちらに振り向き、呪文を唱え魔法を放ってきたのであった。ゼロスはその体に、今までに無い衝撃を受けた。


キュインッ! ドバアアアアアアンンンーーッ!


『グワアアッ!』 バリバリバリッ! ビビッビシイイッ!


ブオン ヒュワアッ! パッ! ドサッ! ブスブスブス…


「うう…」 ググッ…


ゼロスは身体中、大火傷と傷だらけで、アニス達の前に現れた。


「レイラ姉さんッ! あそこッ!」 サッ!


「ゼロスッ! 凄い怪我をしてる…一体何が起こったの…」


アニスのすぐ横に、両膝をつき大怪我をしたゼロスを見てラステルとレイラはまたも驚いていた。


「そ、そんな…あのゼロスが…」 ドタッ!


ゼレオ公爵は、アニスの横に現れたゼロスを見て、落胆の色を見せ床に膝をついた。


「勝負有りですね」 ニコ スッ! チャキンン!


アニスは満身創痍のゼロスを見て、もう戦う必要なしと判断し、神器「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻した。


「うう…う…な…なぜ…?」 ヨロ…


「ん?」


「ア…アニスお嬢さん…教えていただきたい…うう、な…なぜわかった…のですか…」 グッ


「ああ、貴方の能力の事ですか?」


「ム…うう…」 コク


「そうですね、私は以前、貴方と同じ技、いや能力かな、それと一度戦ってます」


「なッ!(この能力は私固人だけのもの…そんなはずは…)」 グッ


「《イリュージョン.ダイブ》幻影系隠密スキル、そうなんでしょ?」 ニコ


「ッ⁉︎ どこでその名を…その名は…私だけしか…」 うう… ザッ ヨロヨロ…


「ん〜 随分前にね…」 サッ


「完璧に…気配をたったのに…なぜ?」 ヨロヨロ ググッ


「ああ…居場所ね、それは簡単、自分中心に魔力、フォトン波動波を広げ、それに触れる波を探すの、その波を掴めば居場所なんて1発ですよ」 ニコ


「ふふふ…アニスお嬢さんには乾杯です…もう、会う事…もありま…せんな…」 フラッ ズシャッ!


一度は立ち上がったゼロスだが、再び両膝をつき倒れた。


「大丈夫じゃなさそうだね…」 テクテク


「はは…アニス…お嬢さん、私は…これまで…の様ですな…」 スッ! クタ…


「ん、《イグニ.グラン.バースト》は、全てを焼き尽くす魔法、そう何もかも…ごめんね」 スッ


「おいッ! ゼロスッ! 立てッ! 立ってそこらの者達を始末せんかッ!」 バッ


ゼレオ公爵は相変わらず、ゼロスの状態を見もせず命令してきた。


「も…申し訳…ありません…旦…那様、ゼロスは…もう…」 クタ…ファサササーーッ


帝国最強の執事、「スタークス・バトラー」のゼロスは息を引き取った。長年、ゼレオ公爵のアルテア家に仕えて来た名執事の最後であった。息を引き取った瞬間、彼の体はチリとなり消えていった。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ