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第196話 アニスと「ガーナ神教団」大神殿

ーアトランティア帝国 王都「アダム」「ガーナ神教団」大神殿ー


ブーッ! ブーッ! ブーッ!


「こ、これは…一体何が起きたのですかッ! 各国の支部はッ! 艦隊はどうしましたッ!」 バッ!


ガーナ神教団、大神殿奥の「聖なる軍団」管理室で大司教の【グレイシス・ビン・フィラウス】が、大型モニターを見て叫んでいた。そのモニターには各国の支部の司教や司祭の姿が映っていたはずだったが、どれもが一斉に画像が切れ、真っ黒な状態になっていたからだった。 またサブ画面には、「聖なる軍団」の艦隊表記があったのだが、それらも、一つまた一つと画面から消えていった。


この異常事態に「聖なる軍団」管理室内は、ハチの巣をつついた状態になり、信徒達や管理官達が慌ただしく動いていた。


ピ ピコピコ ピーーーッ!  ビーッ! ビーッ! ピコピコッ!


ワーワーッ! ドタドタ バタバタ ガヤガヤ


「おいッ!ウーリア公国内はどうだッ!」 カチャカチャ ピッ ピピッ!


「だめだッ! 反応なしッ! バルニア司教、デニア司教供に音信不通ッ!」 カチャカチャ ピコ


「グリアス王国ッ! パルダ聖国ッ! 両支部も通信途絶ッ!」 カチカチ ピピッ! 


「フェラウス様ッ! どの実行部隊とも連絡がつきませんッ! 無人艦隊におきましては反応無しッ! 完全に見失いましたッ!」 ババッ!


「はッ⁉ バカなッ…」 ググッ!


ピコッ! カチャカチャカチャッ! ピピッ! ブーッ!


「ゼルファ神帝国侵攻部隊ッ! 反応消滅ッ! 神帝国内信徒とも連絡が付きませんッ!」 


ビーッ! ビーッ! ポン!


「急報ッ! こ、これはッ!」 ピピッ! タタタタッ!


「どうしました? 報告しなさいッ!」 バッ!


「ヤ…ヤマト皇国侵攻部隊の反応消失ッ! 全滅ですッ! ボストビック司教とも連絡がつきませんッ!」 


「なッ⁉︎」 ドサッ ドタンッ!


フィラウス大司教は、その報告を聞きその場で床に崩れた。 ボストビック司教は彼の最も信頼する司教の1人で、今回の決起にも有人部隊の司令官として、ヤマト皇国に出向いてもらっていた。「ガーナ神教団」の中でも有人で最強の部隊を指揮していた彼が、全滅し連絡が途絶えたのである、フェラウス大司教の落胆は大きかった。


ビーッ! ビーッ! ビーッ!


「そんな…ボストビック司教が…」 ガクン


「どうするのだッ!フィラウス大司教ッ! コレでは計画通りにならぬではないかッ!」 ドタバタ


「ゼレオ公爵様…ま、まだ手はありますぞ!」 ガバッ!


「むッ! 真であろうな! してその手とはなんだ?」


「はい、間も無く此処に【ラステル】様と【レイラ】様を連れて参ります。さすれば、当初の目標でありました公爵様の皇位継承は容易、この国は公爵様のものになるかと…」 スッ


「ふむ…兄の子と妹か…そうだな、このアトランティア帝国がワシのものに出来るということだな!」 バッ


「左様です、公爵様」 ペコ


ビーッ! ビーッ! 


ドオオオンッ! モクモク ダダダダッ


「「「 わあああーッ! 」」」 バババーッ!


ドオオオンッ! バンッ! ボンッ! メラメラ モクモク


ビーッ! ビーッ! ビーッ! 


「何事ですかッ!」 バッ!


「フィラウス大司教様ッ! 遠隔操作室から火災ですッ! 一部のカプセルが破裂ッ! 誘爆も始まってますッ!」 バッ! 


ワーワー ザワザワ バタバタ ドオオオンッ! モクモク


「ええいッ! 遠隔操作室を封鎖しなさいッ!完全隔離ですッ!」 バッ!


「は? し、しかし、中にはまだ搭乗中の者が…」


「かまいませんッ! 閉鎖しなさいッ!」 ザッ!


ピコ ウィイイイインンッ!


管理室と遠隔操作室との間の扉に隔壁シャッターが下り始めていた。


ダダダッ! バタバタ


「ま、待ってくれええーッ! まだ俺たちがいるんだあーッ!」 ダダダッ!


遠隔操作室の中で救助作業や消化活動をしていた者達が、急に下り始めた隔壁シャッターを見て、出口に叫びながら走っていた。だが、隔壁シャッターは無情にも下まで下がり、遠隔操作室は完全に管理室から隔離されてしまった。


ガコーーンッ!  ドンドンドンッ


中にいるのであろう作業員達が、隔壁シャッターを叩いているのだろう、隔離シャッターを叩く鈍い音のみが聞こえていた。 やがて、その音も聞こえなくなっていった。おそらく、中では煙と火災で酸素がなくなったのであろう、その場にいた者達の絶命を物語っていた。


ビーッ! ビーッ! ビーッ! ピ ピピッ! ピコピコ


「フェラウス大司教…」


「ゼレオ公爵様…コレは仕方のなかった事なんです。彼らの犠牲で我々は生き残れたのです。彼らの死を無駄にしてはいけませんぞ…」 グッ


「う…ウム…」 コクン


ビーッ! ビーッ! ビーッ! ピッ ピッ ピコピコ ポンポン!


自己を正当化しようとする大司教、教団の力を利用し、国を乗っ取るつもりの公爵、仲間がすぐ隣で死んでいくのをただ見ているだけの管理室の信徒達、その場では異様な雰囲気が漂い、警報ブザーと機械音だけがやけに大きく聞こえていた。 その雰囲気を一つの報告がかき消した。


ピッ ポンッ! 


『行政棟第3ゲート、教団高速艇が接舷します』 ポン


「おお、着いた様ですな…ささ、公爵殿、我らの障害となる者達を迎えに行こうではありませんか」 サッ!


「ウムッ!」 ザッ!


皇位継承第2位のゼレオ公爵とガーナ神教団のフィラウス大司教は管理室を出て、「ガーナ神」大神殿大広間に向かっていった。

          ・

          ・

          ・

ー強襲巡航艦「ライデン」 連絡艇用発着デッキー


地上の中央管理棟より救助された、副長以下教師職員生徒達は、連絡艇で強襲巡航艦「ライデン」に収容されていた。


プシュウウウーーッ ガコンッ!


『連絡艇2号機収容完了、整備員は直ちに作業開始ッ!』 ポン


ウイイイイーーン バクンッ! カツカツカツ  タンッ!


「さあ皆さん、係の者が案内します。順番に降りてください!」 サッ!


ガヤガヤ ザワザワ カツンカツンカツン タタタ 


連絡艇から全員が降りている中、その場に1人の女性士官が現れた。


「皆さんお疲れ様です。私は強襲巡航艦『ライデン』主計科の【シエラ】少尉です。皆さんをサロンに案内しますのでついて来てください」 サッ ニコ


学園の教師、生徒と職員全員が、彼女の後に続いて、連絡艇発着デッキから出ていった。皆が出て行く中、最後に連絡艇から英雄の3人、アラン達が出て来た。


「ふう〜、やっぱ俺、『ライデン』の方が落ち着くなッ!」 ザッ ザッ グイイーーッ!


「ふふ、アランったら」 ニコ トコトコ


「さあ、アランもジェシカも、急いで支度ですよ!」 ザッ ザッ ザッ


「おっと、そうだった、殿下達を救助するんだった!」 ザッ ザッ ザッ


「ええッ、 急ぎましょッ!」 バッ!


ダッ タタタッ…


「おいッ! 待てよッ!」 ザッ!


アラン達3人が、連絡艇から降り、直ぐに行動しようとした時、後ろから声がかかった。


「「「 うん?(え?) 」」」 ザザッ! クルッ!


3人が声の聞こえた方に向きを変えると、そこには帝都学園の男子生徒が、睨んで立っていた。


「「「 ザッツ! 」」」


「アラン、俺も連れて行けよッ! 俺だって殿下の救助をしたいッ!」 ババッ!


そう言ってザッツはアラン達の前で叫んだ。 ザッツにしてみれば、アラン達は自分と同じ歳の同級生、『アラン達に出来る事なら、自分にもできるはずだ』との思いで、申し込んできた。しかし…


「ダメだッ!」 ドン


アランは躊躇なく即答でザッツの申し出を断った。


「な、なんでだよッ! 俺だってやれるッ! やれる筈なんだッ!」 グッ!


「『やれる筈』だと?…ザッツ、お前では無理だッ!そんな中途半端な魔力と身体能力じゃ、俺達の足手纏いだ。なんの役にも立たないッ!」 ザッ!


「な、なんだとおお…」 ググッ…


「アラン…もうちょっと優しく言ってあげた方が…」 ソッ…


「ジェシカ、ダメなものはダメなんだ! 俺はこいつを死なせたくない」 グッ


「そ、そうだよね…ザッツ君、此処は引いてくれるかな…あなたでは力不足なの、私達とあなたとでは力の差が有りすぎるわ、だから大人しく『ライデン』で待っててくれる?」 サッ


「そうだねザッツ…アランやジェシカの言う通りだ、死にたくなければ、君は此処で大人しく待ってた方がいい」 ジッ


「なッ‼︎ くうううッ!…」 ググッ ギュウッ!


ザッツはショックだった。幼馴染で同級生のアランだけでなく、女の子のジェシカや、マイロの2人にも、自分は役に立たないという様な感じに取られ、宥められたからだった。


「わかってくれザッツ…第一、君は軍人じゃない、ブレードライナーでもないし捜索にはブレードナイトが必要となる。君にはその資格がないんだ! ライナーでもない、機体もないんじゃ何もできないよ。だから此処で大人しくしていてくれ」 サッ


「うううッ…くそッ!」 ガンッ!


ザッツはアランに事実を指摘され、悔しくて床を蹴った。


「さあッ!急ぐぞッ!」 バッ! ダダダッ!


「「 おうッ!(ええッ!) 」」 ババッ! ダダダタタタッ!


その場にザッツを残し、3人はブレードナイト発艦デッキに向かって走っていった。その場で1人残されたザッツは、悔し涙を流しながら、自分の不甲斐なさに憤りを感じ立っていた。


「うう…くそッ…くそくそッ!…」 ブルブル…


タン タン スッ


「悔しいですかな?」 ニコ


「だ、誰だッ!」 クルッ バッ!


ザッツが悔し涙を流しながら立っていると、突然声をかけられた。声のする方を見ると、そこには白い服を着た男が1人立っていた。


「あなたは…」


「私は【ダナトス・デルニア】と申します」 サッ!


「お、俺に何か用か?…」


「皇太子殿下を探し救助したい、そうですな?」 ニコ


「ああ…だが、俺にはまだその力がない…軍人でもないし、ましてやブレードライナーでもなくブレードナイトも持っていない…悔しいがアラン達の言うとおり、今の俺ではダメなんだ…」 ググッ


「ふむ…ブレードナイトならありますよ。何ならお貸しいたしましょうか? 私の教団とこの最強のブレードナイトを…」 ふふふ…


「あなたのとこ?…あるのか、そんな物が?」


「ええありますとも、私どもも少々困っていたのです。『だれか乗ってくれないか』と…」 ニヤッ!


「だが、俺ではまだ…」 ギュッ!


「大丈夫ですよ、私どもにはコレがあります」 サッ! トプン!


その司祭は懐から液体の入った小瓶を取り出し、ザッツに見せた。


「それは…」


「これこそが神の奇跡ッ! 選ばれし者が飲めばその力は何倍にも膨れ上がり、眠っていた力を呼びさませることのできる秘薬ですぞッ!」 バッ


「力を…何倍にも…はッ!(そうか、アラン達はアレを飲んだに違いないッ! そうだッ! そうに決まっているッ!)」 ググッ! ギュウウッ!


「どうかされましたか?」


「ううッ…(ずるい奴らだッ! あんな物を飲んで英雄になったんだッ!)」 ブルブル…


「いかがですかな? 貴方もコレを飲み、私の教団とこのブレードナイトを操って、皇太子様を救助すれば、英雄になれますぞ…」 ふふん


「…(英雄…俺が…アラン達と同じ…)」  グッ!


「無理にとはもうし…」 フリフリ


「飲むッ! それを俺にくれッ!」 ババッ!


「ふむ、よくぞ決断なされた、これで貴方もこの国の英雄になれますぞ」 ニコ


「ああ…ああッ! なってやるッ! なってやるともッ 英雄にッ!」 バッ!


「では、コレをお飲みになるのは構いませんが、此処ではちょっと…」


「では、どこでならいいんだ?」


「私がとある場所に案内します。そこでお飲みなっていただきます」 ペコ


「わかった、では案内をしてくれ」 サッ!


「では、私の肩に手を乗せていただきますかな」


「こうか?」 スッ 


「はい、では行きますよ」 スッ!


「うん? それは….」


「我が『ガーナ神教団』の秘匿アイテム、エンシェントファクトの『転移水晶』です」 サッ! ヒュンッ!


そう言ってダナトスは持っていた青く輝く六角錐の水晶を床に投げつけた。


パリイイイイーンッ! シュバアアーッ!


「なッ!『ガーナ神教団』ッ! うわあッ!」 シュバアアーッ!


シュンッ! ヒュウウウウウ……


ザッツと「ガーナ神教団」の司祭ダナトスは、教団の秘匿アイテム「転移水晶」を用いて、強襲巡航艦「ライデン」連絡艇発着デッキから、何処かへと転移し、消えていった。

          ・

          ・

          ・

ーアトランティア帝国 王都「アダム」「ガーナ神教団」大神殿内ー


コツコツ カツカツカツ ザッ ザッ ザッ!


大神殿内を複数の男女が歩いていた。全員が信徒というわけでなく、そのうちの2人の男女は、演習場、中央管理棟にて拉致された、王族の皇太子【ラステル】と王族であり教師の【レイラ】であった。


コツコツ


「私達をどこまで連れて行くのですか?」 コツコツ


「ンーッ! ンーッ!」 ググッ


レイラは大人しくついていったが、ラステルは騒いだせいか、口に猿轡を噛まされ、喋れなくされていた。


「黙ってついて来なさい」 ジッ


神官の1人以外、他の者は一言も話さず歩いていた。レイラは横目で彼らを見た。その表情は固く、どこを見ているかわからない目つきで、正面を向き、淡々と歩いていた。


「(この者達は正気ではないわね…恐らくは…薬…噂に聞いた、人を操る薬ね…)」 コツコツ


カツカツカツ コツコツ ザッ ザッ ザッ! スタタッ!ピタッ!


「此処で待て」 ザッ


そこは大きな扉の前で、その両脇にはこの扉を守っているのであろう、神官兵の2人が腰に剣を装備して立っていた。その扉に、先ほどの神官が近づき扉に手を当て、扉にあるスイッチを押した。


ピッ ピピッ! ポン! ガチャ ゴゴゴゴ ガコーン!


扉は開き、大広間が現れた。


「大司教様ッ! お連れしました」 サッ


そう神官が扉の前で頭を下げ報告すると、中から2人の人物が現れた。


ザッ ザッ ザッ スッ! 


「やはり、兄上、あなたの仕業だったんですねッ!」 グッ ババッ!


「ンーッ! ンーッ!」 ジタバタ!


レイラとラステルはその二人を見て叫んだ。


「ああ、そうだともレイラ、お前がおとなしく私に賛同していれば、こんな事はしなかったのだがな、仕方がない」 ぐふふ…


「大司教ッ! あなたもですかッ! 多くの信徒を抱えるあなたが、こんな奴と…」 ググッ


「すみませんなあレイラ様、私共といたしましては、より教団にお力添えをして頂く方の協力するのは当たり前、分かって頂けましたかな?」 ニコ


「このエセ神教団めがッ!」 グッ グッ!


「おやおや、いけませんなあ、王族ともあろう方が、我が『ガーナ神』様を侮辱なさるとは…これは例え王族といえど許されませんぞ」 バッ!


「ふん、なんの恩恵ももたらさず、ただ民の心を惑わす偽りの神が、そんなものを信仰するお前達の方が許されない存在だわ!」 ググッ


「むう…『ガーナ神』様だけでなく、この私をも侮辱なされるとは、これは万死に値しますぞ!」 ババッ


「したければそうするがいいッ! だが、後になって後悔するのは貴様達だッ! よく覚えておくがいいわッ!」 ググッ


「ふむ、相変わらず、気の強い女だなレイラ、亡くなった母上そっくりだ」


「はん、兄上こそ、簒奪をもくろんで滅んだ、【ゲラーテ】叔父にそっくりですよ、お気をつけた方がいいのでは?」 ふんッ!


「あんなマヌケと一緒にするではないわッ! ワシは違う! まあ吠えずらを書くのはいいが、今後の身の振り方でも考えておくんだな、我が妹よ」 ふふふ


「何を企んでるのッ!」 グッ


「なあに、ちょっと父上にはな、ここらで引退をと思ってな」 ふふふ


「父…皇帝陛下がそんな事するわけがないわッ!」 ババッ


「まあ普通はな…しかしコレを使えばわからぬぞ…」 トプン


ゼレオ公爵は、懐から液体の入った小瓶を取り出し、レイラに見せた。


「ま、まさか…」 タラ〜


「さすが我が妹、察しがいいな」 ぐふふ…


「ゼレオ公爵様、お話はそれまでにされた方が…」 スッ


「おお、そうであったな、コレは極秘の事であったな わははははッ!」 ササッ!


「ではレイラ様、ラステル様、後ほどお会い致しましょう」 ニヤッ!


「ンーッ! ンッンーッ!」 ジタバタ モゾモゾ


「ははは、次期皇帝候補もこうなってはただのクソガキだなッ!」 ニヤニヤ バッ!


ゲシッ! ドカッ! ダンッゴロゴロ


「ンーーッ!…」 ゴロゴロ…


ゼレオ公爵は、縛られ、猿轡を噛まされているラステルに蹴りを入れ罵倒した。受け身の取れないラステルはその場で気を失ってしまった。


「やめなさいッ! 皇太子に対してなんて事をッ!」 ググッ!


「今はなッ! だがもうすぐ物言わぬ屍となるんだ、皇太子ではなくなる…お前ともどもな、せいぜい2人仲良くあの世への準備でもしているがいい」 ははは… クルッ! バサッ! ザッ ザッ


「では、公爵様、次の準備を致しませんと」 サッ


「おお、そうであった。父上にお会いしなくてはな」 ニヤ


「兄上ッ! やめなさいッ! そんな事をすれば…」 ババッ!


「ふむ、我が妹にだけには教えておいてやるか…父上、皇帝陛下の側近はもうワシの意に従う者ばかりに変えておる。皇帝がどの様に亡くなったとしても、だれも咎めはせん。全てワシの思惑どうりなのだ」ふふふ


「なッ⁉︎」 ガクッ…


「では参りましょうぞ! 公爵様…いや、次期皇帝陛下」 ペコ


「わはははは」 ザッ ザッ ザッ! 


ゴゴゴッ バターン! 


「兄上ッ! やめてくださいッ! 兄上ーッ!」 ググッ


兄であるゼレオ公爵とフィラウス大司教が再び扉の向こうに去り、扉は閉まった時、レイラは涙を流し、横に横たわっている皇太子ラステルを見て祈った。


「さあッ 立てッ! お前達を幽閉するッ!」 チャキッ! ザッ


レイラ達を案内していた神官が、錫杖をレイラに突きつけ命令して来た。だが、レイラはそれに構わず涙混じりで祈った。



「神よ…もし、本当におられるのでしたら…お助けを…私達を…この国を…お助けくださいッ!」 うう…



レイラはただ、純粋に祈った。その時、その場に綺麗な清んだ少女の声が響き渡った。


『いいよッ! 今助けてあげるねッ お姉ちゃんッ!』 パアアアンンーッ!


「えッ⁉︎」 バッ!


ザッ! チャキッ!


「だ、誰だッ! どこにいるッ!」 ババッ! キョロキョロ! シャキン!


レイラは驚き顔を上げ、神官達は周りを探し始め神官兵は剣を抜き構えた。 

それは一瞬で現れた。


シュンッ! パッ!


「ここだよッ!」 チャキッ!


「は?」 クルッ ババッ!


「アニスちゃんッ!」


「《縮地》剣技ッ!《エノーマル.エッジッ!》」 シュンッ! ヒュオンッ!


シュバアアアーーーッ! ザンッ!


「ヒッ! ギャアアアアーッ!」 シュバッ! ビシュウウーッ!


シュンッ! シュンッ! シュババッ! ザンッ!


「「「「 ウグッ! ギャアッ! グハッ! 」」」」 バタバタ ドタ バタン


ザザーーッ! タンッ! スチャ シュウウウウ…


「アニスちゃん…凄い…これが、この娘の力…」


レイラは目を見開き驚いていた。絶望の淵に立たされ、思わず神に願ったその瞬間、まるで本当の神が現れたかのようにアニスが現れ、一瞬でその場にいた神官達13人を倒してしまったからだ。今、レイラの前には、青みがかった白銀髪と膝上までのコルセットスカートを靡かせ、右手に神器ミドルダガーの「アヴァロン」を構えた彼女が立っていた。


クルクルクルッ チャキンン テクテク スッ!


「レイラお姉ちゃん、大丈夫でしたか?」 シュルン


アニスは神器ミドルダガーの「アヴァロン」を腰裏の鞘に戻し、レイラの拘束を解きながら尋ねた。


「アニスちゃん、ありがとうッ!」 ガバッ! ギュウウー


「うわッ! お姉ちゃん…無事でよかったです」 ニコ


「ううう…」 ゴソ…


「ん? アレだれ?」 スッ!


「ああッ いけないッ!」 タタタ ゴソゴソ シュルン…


「ううう…痛てて…」ムク…


「殿下、大丈夫ですか?」 サッ…


「レイラ姉さん…ええ、大丈夫です。ちょっと痛めただけです」 スクッ


「よかった…」 ハア〜…


レイラはラステルが無事なのに安堵した。そこへアニスが覗き込んだ。


「大丈夫ですか〜?」 ヒョコ


「ええ、大丈…きッ君はッ!」 ババッ!


「 ん? 」 


「私の天使だああッ!」 ガバッ! ギュウウッ!


「へ? わあああッ!」 ギュウウッ!


「こッ こらあッ! 殿下ッ! いやラステルッ! アニスちゃんから離れなさいッ!」 グイッグイッ!


「いやだああッ! やっと見つけたんだあッ! コレは私のだああーッ!」ギュウウッ!


「ぎゃあああッ! 離してッ離してええーッ!」 ギュウウッ!


「ガーナ新教団」の神殿内で、3人の男女の声がこだましていた。




いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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