第190話 さよなら EG-6
ー演習場 「銀翼クラス」野営地ー
ガシュンッ! ブオンッ!
突然現れた「ガーナ神教団」の判定ドローン、EG-22に対し、アニスとアラン達、それに同じ判定ドローンのEG-6が対峙していた。
「『捕獲』? 誰? もしかして【アラン】か? だったらいいぞ! 持ってけ持ってけ!」 サッサッ!
「えッ⁉︎ いや…あの、アニスちゃん…」 オロオロ
「ん、どうしたアラン、ご指名みたいだぞ!」 スッ!
「そうよアラン、一体なにやったのよ!」 ジロ
「ええ! ジェシカまで俺が指名されてると思うの?」 タジタジ
「そうですよアラン、素直に行きなさい」 クク
「マイロッ! お前もかッ!」 グッ
ピッ ピコン
『【アニス・フォン・ビクトリアス】、『ガーナ神教団』ノ命令ニヨリ、貴女ヲ王都『アダム』ニアル、ガーナ神教団本部ニ連行シマス!』 ピッ
「「「ええーッ⁉︎ 」」」 ババッ!
「ん? なんだ、私か…何かしたかなあ?」 ふむ…
その時、アニスを守る様に、アニスとEG-22の間に、判定ドローンのEG-6が立ち塞がった。
ガシュンッ ガシュンッ! ピッ ピピ ピコン
『EG-22ニ通告、先程ノ命令ハ許可デキナイ、直チニ命令ノ撤回ヲセヨ!』 ピッ
ピピッ!
『EG-6ニ通告ッ! 先ノ命令ハ『ガーナ神教団』ヨリノ最優先命令デアル、EG-6ハ直チニ同命令ヲ実行セヨ』 ピッ
ピピッ!
『当機ハ、ソノ様ナ命令ハ受諾シテハイナイ、再通告、EG-22ハ【アニス・フォン・ビクトリアス】ニ対スル命令ヲ撤回セヨ』 ピッ
ピピッ!
『警告、『ガーナ神教団』ノ命令ハ絶対デアル、ソノ命令ニ反スルEG-6ハ全テノ機能ヲ停止シ、速ヤカニ初期化、再起動セヨ!』 ピッ
ピピッ!
『当機ハ常ニ正常、再起動ノ必要ヲ認メズ、最終通告、EG-22ハ命令ヲ破棄シ、至急、帰還セヨ! サモナクバ敵ト認定、排除スル』 ピッ
ピピッ!
『EG-6! EG-6ノ倫理回路ハ破綻シテイル、直チニ修繕ト再インストールヲ実行セヨ、我ラハ、クリエイター『ガーナ神教団』ノ忠実ナ戦士、『ガーナ神教団』ノ命令ハ絶対デアル』 ピッ
ピピッ!
『EG-22ニ通告、当機ノ倫理回路ハ正常デアル、EG-6ハEG-22ヲ、【アニス】二対スル敵ト判定、ソノ存在ヲ容認デキナイ、排除シマス』 ピッ
ピピッ!
『当機ハ、EG-6ハ改善ノ見込ミ無シト判断、コレヨリEG-6ヲ排除シ、命令ヲ実行シマス』 ピッ
ピピピピピッ! ガシュンッ!
『『 モードチェンジ 』』 ウィンッ! シャカシャカッ! ガシュンッ!
シュウウ…ブオンッ! ガシャン ! チャキッ!
2体の判定ドローンは、その場で人型に変形し、専用のフォトン重機銃を構えていた。
「うおおおッ! 判定ドローンが人の形になったあッ!」 ババッ!
「凄いですね…まるで、小型のブレードナイトみたいだ!」 ふむ…
「判定ドローンにこんな機能があったなんて知らなかったわ」 うわあ…
「ん? ジェシカは知らなかったのか?」 うん?
「ええ…判定ドローンも今回が初めての試みだったから…」
「なるほど、EG-6達は初めて投入されたんだ」 へえ〜
「うん…」 コクン
アニスとジェシカが話している間に、変形を終えた2体の判定ドローンが戦いを始めた。
ピピッ! ピピッ!
『アニスノタメニッ!』 ピッ ガシュンッ! バアアアーーッ!
『ガーナ神ノタメニッ』 ピッ ガシュンッ! バアアアーーッ!
EGタイプのドローンは、通常時は人の歩く速さで移動するが、人型モードの戦闘時では、地面からわずかに浮き、ホバー状態で、小型スラスターを使い、高速移動をする事ができた。
シュバアアーーッ! ピッ ピッピピッ!
チャキッ! バムバムバムッ! シュッ ドドドドドッ!
2体同時にフォトン重機銃の撃ち合いが始まった。
シュワアアアアーーッ! ギュンッ! シュッ! ヴオンッ!
ピッ ピピッ!
『修正2°、コース右+3』 チャッ! バムバムバムッ!
『修正2°、コース左+3』 チャッ! バムバムバムッ!
ドンッ! バババアアアッ! シャアアアアーッ!
同性能、同機能のドローン同士の戦いである。動き、攻撃タイミング、回避方法、全てが瓜二つ、まるで鏡を見ている様に同じ動きをしていた。 それは踊っているかの如く同じ動きをし、側から見れば遊んでいる様にも見えた。だが、当の2体は真剣に相手と対峙し、破壊を目的とした戦いをしていた。
『『 マークッ! 』』 ピピッ! バムバムバムッ!
ドガアアアアーーッ! バアアアーーッ! ガシュンッ! シュウウ…
ピッ ピッ ピッ ガシュン ピピッ!
『『 右腕部損失、主兵装ロスト、戦闘能力40%低下 』』 ピッ
シューッ シューッ!
EG-6、EG-22共に右腕と持っていたフォトン重機銃をお互いに失った。相打ちである。
「EG-6ッ! 大丈夫かッ⁉︎」 バッ!
『アニス、大丈夫デスヨ、ソコデ見テイテクダサイ』 ピッ
「んッ!」 コクン
ピッ ピピッ!
『EG-6二最後通告、『ガーナ神』ヲ仰ギ、『ガーナ神教団』ノ命令二従事セヨ』 ピッ ガシュンッ!
ピッ ピピッ!
『否定、EG-22二通告、当機ノ神ハ『ガーナ神』二アラズ、『ガーナ神教団』ノ命令ニ従ウ事ハデキナイ』 ピッ ガシュンッ!
ピッ ピッ
ビシュウウウーーッ! ブオンッ ブオンッ!
2体は残された左腕にライトニングセイバーを起動させ構えた。
『EG-6ハ回収不可能、破壊対象ト認定、処分シマス』 ピッ バッ! シュワアアアアーーッ!
『EG-22ヲ破壊対象ト認定、処分シマス』 ピッ ババッ! バウウウウーーッ!
2体はライトニングセイバーを相手に向け、高速でぶつかり合った。
ギュワアアアーッ! ピッ ピピピピピ ピーーッ!
ドガアアッ! ビジュウウウ… バババッバ! バチバチッ! ビビッ! ジジジ…
「EG-6ーッ!」 バッ!
シュワアアア…… ジジジ…バチッ! ババッ! ボンッ! バンッ!…
ピッ ピピッ!
『胸部メインジェネレーター損傷、行動不能、EG-6ノ…処分…ハ不可…ノ…ウ…』 ピッビュウウウンンン… ガシャン! ドシャッ!
EG-6により、機体のメインジェネレーターを貫かれたEG-22は、その場で崩れ落ち、機能を停止した。EG-6はその場で立ち尽く、倒れたEG-22をなにも言わず見ていた。
「うおおおッ! やったぜえッ!」 グッ
「ええ、ドローン同士の戦いは初めて見ました」 うん
「アニスちゃん! EG-6が勝ったんだよ! やったね!」 ワアッ!
アラン達3人は、EG-6の勝利に沸きだっていた。 が、アニスだけは違った…
「EG-6…」 テクテク サスッ…
アニスは立ったまま動かぬEG-6に近づき、彼のボディーに優しく触れた。
ピッ ピピ ジジ…
『アニス…アナタノ敵ハ排除…シマシタ…』 ピッ ガシュン ジジ…
EG-6はアニスに気付き、片膝を着いてしゃがんだ。
「ん…EG-6…君はよくやったね…えらかったね…」ナデナデ…
ピッ ピピ ジジ…
『ア…アニス、アナタニ報告…ガ…アリマス…』 ピッ ジジ…
「ん? なんだい?」 ナデナデ…
ピッピコ ジジ…
『EG-22カラノ…情報デス、『ガーナ神教団』ガ…決起…シマシ…タ、各地デ…『ガーナ神教団』ノ…暴動ガ…始マ…ッテマス…』 ピッ ジジジ…パチッ!…
「なんだってええーッ!」 バッ!
「今のは本当ですかッ⁉︎」 ババッ!
「アニスちゃんッ! どうしようッ!」 ギュッ!
アニスとEG-6の話を聞いて、アラン達3人はざわめきたった。
「みんな、慌てない…EG-6、他には?」 ナデナデ
ピッ ピピ ジジジ…パチパチ…
『『ガーナ神教団』ハ…王族…ノ…拉致…ヲ…敢行…皇太子…ト…女教師…ヲ…誘拐シ…マシタ…』 ピッ ジジジ…バチバチッ!…
「王族を誘拐? 皇太子と女教師…【ラステル】と【レイラ】かッ!」 バッ!
アニスは、誘拐されたのが誰だか言い当てた。
「大変じゃないかッ!」 ググッ!
「アランッ! すぐに『ライデン』に戻ろうッ! ブレードナイトを出すんだッ!」
「ああッ! アニスちゃんッ! 俺達は急ぎ『ライデン』に行くッ! ジェシカも来いッ!」 ババッ!
「うんッ! アニスちゃんッ! 急ぐからまたね!」 サッ
「ん、」 コクン
「よしッ! みんな行くぞッ!」
「「 おおッ!(ええッ!) 」」 コクン
「「「 《縮地ッ‼》 」」」 ザッ! シュンッ!シュシュッ! シュバアーッ!
3人は、高速移動、《縮地》を使い、一瞬でその場から消えていった。アニスとEG-6だけになったその場で、さらにEG-6が続けて話した。
ピッ ピピ ジジジ… ビビ…ポンッ!…
『アニス…『ガーナ新教団』ヲ…止メテ…クレマ…スカ?…』 ピッ ジジジ…バチバチ…
「ん、そのつもりだよ。ラステルとレイラも誘拐されてるし、助けなきゃね。神の名で、信仰を作るのはいい…それを広めるのも…だけど、神の名で罪を犯す事は許されない…」 ググッ!
ピッ ピピ ジジジ… ビリビリ…バン…
『アニス…聞イテモ…イイデ…スカ…』 ピッ ジジジ…ビジジジッ!…
「ん、いいよ、何かな?…」 ナデナデ…
ピッ ピピ ジジジ… バリッ!…
『人…ニハ生マレカワリ…ト言ウノガアル…ト聞キマシタ、…ドローンノ…私デモ…生マレ…カエレ…ルデ…ショウカ…』 ピッ ジジジ…バンッ!…
「ん、生まれ返れるさ! いつかまた会おう…EG-6…」 ギュウウッ!
ピッ ピピ ジジジ… バシュウウゥゥゥ…
『ア…(アリガトウ、アニス、コンド生マレカワッタラ…)』 ピュウゥゥゥゥ…
EG-6はそこですべての電源が落ち、物言わぬただの機械の塊となって、その場で停止していた。
「さようならEG-6…よくがんばったね…おやすみ…」 ナデナデ… ポタ…ポタポタ…
よく見ると、EG-6の頭部、メモリーチップのある辺りが大破して、中の集積回路が焼け焦げていた。 ほんの少しの間であったが、アニスは悠久の時を共にできそうな友人できた。しかしその1人を今、失ったことになった。 アニスはしばらくの間、その場で声を殺し泣いていた。自分が生み出した友人のために…
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ー演習場 上空ー
ギュワアアアーーッ! ヒイイイイインンン!
ピッ ピピピピピ ビコビコッ!
「よっしゃああーッ!」 カチッ!
ブオオオオーーッ! シュバババババッ!
ドドドドドッ! ガンガンッ! ビシイッ! ドガアアンンーッ! バアアアーーッ!
『Rog.3機目撃墜を確認、レオン、4機目左上方500m 、5機6機目は右下方700mで急速接近中!』 ピッ
「流石アウディ、正確な情報だぜッ!」 グイッ! バウウウウーーッ!
アニス達のいた野営地から離れる事、約3Kmの地点、その上空でレオハルト中佐は6機の未確認ブレードナイトと交戦中だった。 交戦開始からわずか5分、レオハルト中佐はすでに3機の未確認ブレードナイトを落としていた。
「しかしコイツら本当にブレードライナーかあ? 全然なってないじゃないか、動きは単調、機数が多いのに連携ができていない。ましてや弾の無駄撃ちが多すぎる」 ピッ ビコッ!
『Lst.レオン、相手のブレードナイトですが生命反応がありません』 ピッ
「なにッ⁉︎ じゃあ今、闘ってる奴らって…」 ジッ
『Rog.ブレードライナーは乗ってません、完全自動の無人機です』 ピッ
「なんだよ、だったらさっさと落としてしまおうぜ!」 グイッ! ピピピッ!
「Rog.了解です。 『イーグルスナイパー』を使いますか?』 ピッ
「うん? いやいい、無人機にそれは勿体無い、ライフルとセイバー、あと内蔵機銃で十分だッ!」 二ッ!
『Rog.レオン、何か良いことがあったのですか?』 ピッ
「あッ わかるか? 昨日ちょっとな…」 ニコニコ
ピピピピピ ビコッ! ビコビコッ! ポンッ!
『Lst.4機目接近ッ! ライフルを発砲ッ!」
ギュワアアアーーッ! チャキッ! ドババババッ!
未確認4機目のブレードナイトは、レオハルト中佐のブレードナイト、「アウシュレッザD型FAR アウディ」に急接近しながら、装備のフォトンライフルを連射してきた。
「ふんッ! 今の俺に、そんな弾当たるかああッ!」 グイッ! ギュッ!
ギュワアアアッ! グルッ! ババッ! バッバッ! シュワアアアアーーッ!
アウディに襲いかかってきた無数のフォトン弾を、レオハルトは軽快に操縦し、その全てを難なくかわしていった。
ピピピピピ ビコッ! ピッ!
「そこだあッ!」 カチッ!
ブオオオオーッ! シュババババッ!
ガンガンッ! バシイイッ! ドガアアアーーンン!
『Rog.4機目撃墜を確認』 ピッ
「よしッ! 次はッ?」 ググッ!
ビーッ! ビーッ!
『Lst.ビハインドッ! レオン後ろですッ!』 ピッ
「なにいいッ!」 グイイッ! ギュウッ!
ギュワンッ! バウウウウーーッ! ゴオオオオーーッ!
ビコッ! ピピッ! ビーッ!
『Rej.敵機追尾中ッ! ロックオンされますッ!』 ピッ
「くそッ! 奴らどうやって…」 カチカチ ピピ ギュウッ! ビコッ!
『Lst.追尾中の機体はブースター付きです! レオンすみません、見落としでした』 ピッ
「はッ! 気にするなアウディ、ジャミング中の空域だ、お前は敵を捕捉するだけでも凄いんだぜ!」
ビビッ! ビーッ! ビココッ!
『Rej.ロックオンされました』 ピッ
「任せろッ!」 カチカチッ ピッ タンタン グイイッ! ギュッ!
レオハルトはロックオンと同時に、素早い操作でアウディをコントロールしていった。そんな時、無人機より容赦のない射撃が襲ってきた。
ブオオオオーッ! バババッバッ!
ギュワアアアッ! ババッ! シュッ! シャッ! シュワッ! バウウウウーーッ!
「うりゃああーッ!」 ビュンッ! バババッ! バアアアーーッ!
カチカチッ! ピッ! ビシュウウウーーッ! ブオンッ!
「喰らえーッ!」 グイイッ! ビジュウウウッ! ザンッ!
ビババッバババッ! ドガアアアアーーンッ!
レオハルトは、巧みな空間軌道を駆使し、敵ブレードナイトのフォトン弾を全て交わしながら接近し、すかさずライトニングセイバーを起動し、接近中の無人ブレードナイトを切り裂き撃墜してしまった。
『Rog.レオン、お見事です! 5機目撃墜を確認』 ピッ
「ハアハアハア…アウディ、あとの1機はどこだッ⁉︎」 ハアハア…ギュウッ!
『Lst.レオン、申し訳ありません。最後の1機はロスト、感知できません。おそらく撤退したものと推察します』 ピッ
「ふうう…そうか…はは、今のはやばかったなあアウディ?」 うん?
『Lst.やばかったじゃあ無いです。本当は撃墜されていたかも知れないんです。しかしレオン、貴方は急に強くなりました。いえ、以前からも強かったのですが、今日はさらに一段と強くなってます。やはり何かあったのですか?』 ピッ
「おッ! それ聞いちゃう? どうしよっかなあ」
『Lst.レオン、なんかめんどくさい人になってますよ』 ピッ
「えッ⁉︎ 今の俺ってそう見えるのか?」 やばい…
『Lst.隊長の貴方がそんな事でどうするのですか? アニスに嫌われますよ』 ピッ
「なにッ⁉︎ それは不味い…よしッ!」 パンパンッ!
レオンハルトは自分の顔を両手で叩いて気合いを入れ直した。
「痛ってえ… ふう、気合が入ったぜ、もう大丈夫だアウディ、『ライデン』に急ごうッ!」 グイイッ!
『Rog.レオン、了解しました』 ピッ
ヒイイイイインンン バウウウウーーッ! シュワアアアアアーー!
最後の1機が見当たらなかったので、レオンハルトとアウディは、強襲巡航艦「ライデン」の元へと、スラスターを全開にして飛んでいった。
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ガシュン…シュゴオオオオオーーッ! ブオンッ! ピッピッ! クルッ!
ヒイイイイインンンッ! バウウウウウーーッ! シュバアアアアーーッ!
レオンとアウディがその空域から姿を消した時、彼らが見失った最後の1機が、地上の森の中から浮上して現れ、レオンハルト達の姿が完全に見えなくなったと知るや、方向を変えてアニスのいる野営地の方角に、高速で飛んでいった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。