第19話 アニスと制御コア
ーギルド医務室ー
私は王の命を受け城塞都市パルマへ第2騎士団を率いて遠征中、途中の町マゲラルに寄った。そこには我が盟友の【閃光のマシュー】がいるはずだ。私は彼を訪ねようと所属の冒険者ギルドに来れば、パートナーと依頼を受け出かけたと聞いた。私は耳を疑った、あのマシューがパートナーと依頼を受け出かけた?、しかもそのパートナーはマシューが誘ったと。まさかと思ったが彼らが帰って来た時、確かにマシューの傍に外套を被った少年を見た。その少年が私の部下に絡まれ、闘技場に行ったので私も興味本位に見に行った、その少年はいとも簡単に部下を制してしまった。私はその場に近寄りその少年に話しかけた、その後少年と模擬戦をするがこれがどうだ、私の剣技がまったく通じない。まるで、盟友のマシューとやっている様だった。しかも外套の下からはものすごく綺麗な女の子だった事に動揺した。最後に魔法を試そうとした時意識を失った。今、目が覚めこれまでの状況を振り返っていた。
「よッ!目が覚めたか?」
「ふっ マシューか、久しいな」
「ああ、それとすまんな俺のせいで」
「うん、いやいい気に....そうだマシューッ‼︎ 僕の妻はどこに行ったッ⁉︎」
「はあ? オマエまだ結婚してねえだろ、どこに妻がいるんだよ?」
「さっきまでいた‼︎、僕に目の前でちゃんと白いウエディングドレスを着て、かわいい笑みを浮かべ、綺麗な青みの銀髪、手には手料理を作るためのミドルダガー、名はアニス、僕の嫁だ、妻だあーっ‼︎」
ゲシッ‼︎ ボカッ! 病室のベッドの上でいきなり叫ぶアーデルベルトを、マシューとサイルが拳骨を入れた。
「目を覚ませ、あれは俺のパートナーだ」
「アニスちゃんを嫁だあ?いっぺん死にますか?」
「おい、サイル落ち着けっていうかナイフをしまえ!」
病室で一悶着があったが、しばらくして落ち着きを取り戻した。
「それで、彼女はどこに行ったんだい?」
「あいつは、お前がここに運び込まれた後なんか用事があるとか言って飛び出していったな」
「なあマシュー、お前あのアニスの事どう思う」
「アニスの事って何か気になるのか?」
「闘技場であの子と対峙した時、とてつもなく大きな壁に向かっている気がした」
「ああ~、なんとなくわかる。俺もあいつとやったんだが勝てんかった」
「ほう、剣聖である三大天『閃光のマシュー』が勝てんかったと?」
「ああ、一撃も与えられず、逆に一撃をもらっちまったい」
「お前に一撃を入れた?じゃあ俺ではあの子に勝てるわけないな」
「ま、お前は剣より魔法の方が得意だからな三大天『天撃のアデル』さんよ」
「その二つ名は伏せてくれ、恥ずかしい」
「わかった、そう言えば俺、あいつが魔法使うとこ見たことねえなあ」
「え、一度もないのですか?この前の依頼の時も?」
「ああ。、ない!確かだ、一切使ってないな」
「魔剣士って言ってたけど、そう言えば言ってたなあ、『使う程の事がなかったから』って」
「アニスがそう言ってのか?」
「聞いたらそう言ってた」
「確かに、あいつは滅茶苦茶強いからなあ。剣技であれだぜ、魔法なんか使ったらどんなんだか」
三人はアニスがとんでもない魔法を使い、周りがどうなるか想像してみた。
「取り合えず、アニスの魔法に関しては一時保留と言うことで様子見だな」
その場の全員がうなずいた。
「話は変わるがマシュー、お前あの子とどういう関係だ?」
「な、か、関係も何も俺とあいつは今は依頼を共にこなす冒険者仲間、パートナーだな」
「そうか、じゃあ僕が嫁にもらってもいいか?」
「「はああーッ⁉︎」」
「だめだ!だめだッ!あいつは誰にもやらねえ‼」
「あなた、今日で人生終わらせたいのですか?」
「え、でも早いもん勝ちじゃあ...」
「だまれえーつ!!」 ドカッ!ドカッ!
「死ねえぇ—ッ!くそむしいぃ――ッ‼」 ボカボカッ!
「ワアアッー アニスゥーーッ!」
病室内に断末魔の叫び声が響いた。
ーマゲラル中央ー
ギルド内の病室がまた騒がしくなったころ、アニスはとある場所に来ていた。
「ここがマゲラルの中央制御所か」
初心の目的を果たすため、目的の気配を感じる場所に来てみればそこは、マゲラルの中心、制御コアのある建物だった。入り口には衛士が二人いたが、認識阻害の魔法を使って中に入って行った。建物の地下7階まで難なく降りてきたアニスは、中央制御コア室と書かれている扉の前に来ていた。
「ここが入口か」
すると扉横にコンソール板があり、その上に小型の画像モニターが浮遊していた。モニターにはこう書かれていた。
{入室にはコード及び認識番号を入力してください}
「そういえば、シュウゴのヤツが言ってたな。重要施設にはあった方がいいって」
アニスはコンソール板の前にあるキーボードに打ち込む。
「私のは確か、創造者ジオス、認識番号0000A-A」
自分のコードと認識番号を口にしながら打ち込んでいき、最後にエンターキーを押す。すると音声案内が流れた。
「創造者ジオス様と確認しました。どうぞお入りください」
扉がゴゴッっと音を立てて開いていった。アニスが中に入ると自動的に中の照明が光りあたりを照らし出した。その空間の中心に30cmほどの球体が、淡い光を出しながら浮いていた。アニスはその球体の前まで来て尋ねた。
「お前がこのマゲラルの制御コアか?」
「Rog、私はコア№039 エレンディア、衛星都市マゲラルの制御コアです。ようこそおいで下さいましたジオス様」
「№039 エレンディアか、ということはお前はエレンディアの作ったものか?」
「Rog、私を作りここに配置されたのは、エレンディア様で間違いありません」
「よし、では私がお前を正常化するがいいか?」
「Rog、エレンディア様より上位の存在であるジオス様なら仕様変更は可能です」
「わかった、今から変更の方向でする、いくぞ!」
アニスは両手を球体に向け、目を瞑り制御コアの正常化を始めた。それに、制御コアも応える。
「システム起動、ジオス様とオンライン、全アプリ開放、上書き開始、しばらくお待ちください」
制御コアの球体から様々な小型クリスタルが現れ、個々に回りながら光る。クリスタルの中に数字が現れ、その数字が新しい表示をして固定すると、球体の中に消える。赤から緑へ、黄色から青へ多種多様な変化変換がなされ、ピッ!ピピッ!ティンティンッ!ビッ!ビッ!小型クリスタルが変化変換されるたびにそれに応じて様々な音が出る。しばらくして全ての作業が終わりを告げる。
「お待たせいたしました。これより再起動、最適化に入ります」
ビッ!「天候システムオンライン」
ビッ!「循環システムオンライン」
ビッ!「生命維持システムオンライン」
ビッ!「魔力供給システムオンライン」
ティロ――ン「衛星都市マゲラル制御コア正常起動開始!」
「新成制御コア、起動確認これより個体№が変わります」
アニスは目を開け、制御コアを確認し尋ねる。
「正常動作は確認した。だが個体№は変えなくてもいいのではないか?」
「Rej、私は今ジオス様に作り替えていただきました。よって、個体№039 エレンディアは個体№001 ジオスと変更されました」
「ま、まあいいか、それより新システムの制御コア、どうだい?」
「Rog、前回の物より快適です。ありがとうございました」
「よし、当初の目的第一号はこれにて終了。さ、帰ろ帰ろ..」
アニスが制御室から出ようとした時、制御コアよりアニスに報告を受けた。
「お待ちくださいジオス様」
「ん、なんだい?もう調子はいいはずなんだけど」
「いえ、そうではなくジオス様宛にメールと贈り物が届いています」
「私にメールと贈り物?...だれ?」
「アリシア様とエレンディア様からです」
「うう~じごくじゃああ~」
「ユキヤマ、がんばれ」
「アニスちゃん、かわって」
「あ~、あ~何も聞こえない~」
「耳をふさぐなあー」
次回もでき次第投稿します。