第184話 アニスと焦土再生
ー交流戦 演習場ー
ドオオオンーッ! メラメラ ババアアーーッ!
不意に飛んで来たロケット弾により、アニス達がいた野営地周辺は高温の炎と煙で、とても人が生存できる環境では無かった。 その場所から約1800m程離れた地点、小高い丘の上に1人の貴族男子生徒と白い神官服を着た男が立っていた。
「はははッ! やったッ! やってやったぞッ! これで私は皇太子殿下に褒めてもらえるッ! そうですよねッ 司祭殿ッ⁉︎」 ババッ!
「流石はレスター殿、お見事です。 良くおやりになりましたな! これで、皇太子殿下の周りにうろつく不遜の者どもを一掃できましたぞ!さぞや、殿下もお喜びになるでしょう」 サッ ふふふ…
「おお、そうかッ! 私は皇太子殿下のために良き事をしたのだなッ!」 ババッ!
「はい、左様です。レスター殿」 サッ ニヤッ…
小高い丘の上にいたのは、「金扇クラス」の交流戦メンバーの男子生徒の1人で、【レスター・フォン・ランバート】男爵家嫡男であった。彼は急遽、この交流戦に参加した1人なのだが、見せ場がなく苛立っているところに、『ガーナ神教団』の【ルコック・モスキン】司教の配下、【ダナトス・デルニア】司祭からの助言を受け、ここにやってきてアニス達を攻撃したのだった。
彼の使用した武器は、交流戦専用武器などでなく、正規の特殊陸戦部隊が使用制限する フォトンロケットランチャー「FD/RPG-77」対ブレードナイト用携帯局地戦略兵器であった。当然、こんな物を学生である彼が用意出来るはずもなく、これはダナトス司祭が用意し、彼に使用させた物だった。
「はははッ! やったぞ! やったぞ!」 ググッ!
「ええ!(ふふふ、貴族のバカ息子が…これで皇太子は丸裸同然、目障りな英雄達にはここで退場してもらいます。明日の大事のために…)」 ニヤニヤ…
燃え盛る現場を見て、喜んでいるレスターを見て、ダナトス司祭は彼に気付かぬよう嘲笑っていた。
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ー交流戦 中央管理棟ー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「緊急事態ッ! 緊急事態ッ! 無許可の武器が使用されました。現状は大破ッ! 被害甚大ッ!」 ピピッ! ビココッ! タタタタタタッ!
「拡散魔力爆発ですッ! 破砕魔力量1.25メルガノン! 周辺温度急速に上昇中! 生命維持限界を超えますッ!」 ピッ ピッ ピコン!
管理室内は騒然としていた。ただの学生同士の交流戦、使用されるのは全て模擬弾や演習用の短剣フォトン銃にライフル、ライトニングセイバーであったはずなのに、ここにきて、実践用局地戦略兵器、それもブレードナイトをも破壊する凄まじい威力の高い兵器が使用されたからだった。
爆発のあった辺り一帯は、テルミット効果による高温で融解、そして拡散魔力による魔素の有毒化、それが長時間に渡って続くのだった。とても人が生存できる状態では無かった。
当然、参加メンバーの学生に、そのような威力のある兵器に耐えうる手段を持っているはずもなく、管理室にいたほぼ全員が、大型モニターに映る光景を見て、その場にいた全員の生存を諦めていた。
「何をしているのッ! 早く救護体制をッ! 控え室にいる【モスキン】司教に連絡ッ! 生徒達の救助に向かいますッ!」 バッ!
「はいッ! 直ちにッ!」 バババッ!
即座に動いたのはアニスの姉、【レイラ・ヴァン・クリシュナ】であった。彼女は的確な指示を出し、救護員としてここに来ていたモスキン司教に、生徒達の救護要請を出した。
「冗談じゃないわッ! 誰があの様な兵器を持ち込み使用したのッ! アレでは流石のアニスちゃんも…」 ググッ… サッ…
レイラは、大型モニターに映る現場を見て、両手で口元を押さえ、必死に叫びたくなるのを我慢していた。
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ー交流戦 演習場ー
ゴウウウウウウウーッ! メラメラッ! モクモクモク ババアアーーッ!
ピッ ピコン
『警告 警告 現在有毒魔素ガ充満中! 周辺気温約1200° 大地ガ融解ヲ開始、生命位維持ハ困難ッ! 当地域ハ閉鎖シマス』 ピッ
ピッ ピコン
『『『『 閉鎖シマス 』』』』 ピッ
その場にいいた判定ドローンが全て同じ判断を下し、警告を出していた。 1台を除いて…
ドゴオオオオーッ! メラメラッ メラッ! モクモク
ピッ ピコン ガシュン…ヴオンッ!
『アニス…ゴメンナサイ…アナタヲマモルコトガデキマセンデシタ、私ハ不良品デス…EG-6ハ廃棄処分ヲ申請シマス』 ピッ
高温で燃え盛るその場所で、7台のうち6台がその場で行動を停止して、警告を放っていたが、そのうちの1台、EG-6だけが、爆発の中心地付近に向かい、その場に居たであろうアニスに向かって謝罪と自分の破棄処分を語っていた。
ゴオオオオーッ! メラメラッ! ボウッ! ボウッ モクモク…
「そんな事はないぞッEG-6ッ! 君は不良品なんかじゃないッ!」 パアアアーッ!
ピッ⁉︎
『マ、マサカッ!』 ピコッ! ピピッ! ガシュンッ! ヴオンッ!
燃え盛る高温の炎の中から、EG-6の聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「《リフレスッ!》」 シュバアアアアーーッ!
燃え盛る高温の炎が、その中心から円を描く様にかき分けられ、そこには純白の魔法陣が展開されており、その中にアニスと英雄達、ザッツとジェシカ、ヒルツがそこにいた。
ピッ ピコン! ヴオンッ!
『アニスッ! 無事ダッタノデスカッ!」 ピッ
ヒイイイインン…ヒイイイインン…ヒイイイインン…
「ん、心配かけたね、EG-6」 ニコ
展開された純白の魔法陣の中で、アニスは微笑んでEG-6に答えた。
「凄ええッ! これがアニスちゃんの防御魔法…」
「本当、見て…あの岩なんか熱で溶け出してるのに、この中は全然熱くない…これがアニスちゃんの防御魔法なのね…」 わあ〜…
「ああ、おそらくこの防御魔法の外は、温度1000°以上の高熱になってるはずだ!そこにいたら俺たちなんて一瞬で蒸発してしまう!」 タラ〜…
「ジェ、ジェシカッ! よ…よく平気でいられるわね…」 ビクビク
「うん、アニスちゃんだもん、大丈夫よアルテ、彼女と一緒だと、もの凄く安心なの」 ニコ
「そ…そうなんだ…」 ホ…
「これが転入生の…コイツの魔法…」 ボー…
アニスの防御魔法、《アルテミスリング》の中で、アラン達英雄やザッツ、ジェシカはその絶大な防御魔法に、只々驚くばかりだった。
ピッ ピコン
『ソレデアニス、コノ後ハドウシマスカ?』 ピッ
「ん〜…」 キョロキョロ…
アニスは防御魔法を展開させたまま、辺り一帯を見た。攻撃による熱と有毒化した魔素で、その辺りはどこかで見た地獄の様な世界に変貌していた。 岩は溶け出し溶岩の川となり、木々や草花は焼け落ち、その場の温度は1000°以上。防御魔法を解除すれば一瞬でアニス以外の者は絶命し、その身体は蒸発して消えてしまうのは目に見えていた。
「アニスちゃん?」
アルテが心配そうに、アニスに聞いてきた。 この状況は恐らくまだ直ぐには収まらないだろう、このままでは自分は良いが、アラン達やアルテ、ザッツ達が持たないと確信し、アニスは自身の能力を使う事にしたのだった。
「ん、仕方がないか…」 はああ…
サッ! サッ! バッ! フワッ…
アニスは防御魔法を出したまま、両腕を左右に広げ両目を瞑った状態でさらに魔力を高めると、アニスの周りの空気が僅かながら上に上昇し、アニスの青みがかった白銀髪を揺らした。
「「「「 アニスちゃんッ⁉︎ 」」」」 ババッ! ザワッ!
異常な魔力上昇を感じ、アラン達とアルテは、そんなアニスを見て叫んだ。ザッツだけは一体何が起ころうとしているのかわからず、ただ見ているだけだった。
「アニスちゃん、一体何を…」 スッ!
「アルテッ! アニスちゃんから離れてッ!」 ババッ
「ジェシカ?…」 ピタッ
「ああ…アルテ、アニスちゃんから離れた方がいい…」 ジイ…
「そうだね、ちょっと離れていようか…アニスちゃんの邪魔はしてはいけないから…」サッ
「う…うん…」 トコトコ
アニスに近寄ろうとしたアルテを、ジェシカ、アラン、マイロの3人に止められ、アルテはアニスから3人の元に下がった。
「(ん、よしッ!)」 パチッ! ブワアアッ!
「「「「「 うわああッ⁉︎(きゃああッ⁉︎) 」」」」」 バババアアーッ!
アニスが閉じていた両目を開けると、アニスの周りの魔力が急に膨れ上がり、外側に向かって放出された。その勢いに、その場にいいた全員が驚き、叫んだ。
「『我、ジオスが創生す、漂う全ての……』」 ザッ!
「えッ! アニスちゃんが詠唱してるッ⁉︎」
「本当だッ! 俺、アニスちゃんが詠唱してるところ初めて見たぜッ!」 バッ
「私もですね、一体何なんでしょうかあれは?」 ふむ…
「私もよ…しかもアレはただの詠唱じゃないわ…アレは何層にも及ぶ魔法陣を使用する多重層超高等魔法…恐らく帝級…いえ、神級魔法かも…」 ブルッ! ジ〜ン…
「あ…わわ…なんだよッ? 一体何が始まるんだよおッ⁉︎」 ブルブル
アラン、マイロ、ジェシカそしてアルテはアニスのその詠唱に驚き、ジェシカに至ってはアニスの詠唱魔法に感動していた。ザッツのみ震え、怯えていた。
「『…この地この場所に漂う悪き魔素よ集約し、我に集い我に従えッ! 創生転換元素還元ッ!』神級創生ッ!《ティラー.ジェネレーションッ!》」 バッ!
パアッーーーッ! フワアアアアアアアーーーッ!
「「「「「 ーーーーーーーッ! 」」」」」 ッ!
アニスが詠唱を終え、その能力が発動した瞬間、地面と天空にその場所を覆う超巨大な純白の何層にも重なった魔法陣が現れ、アニスを中心に眩い光と暖かい高密度の魔力風が輝き吹き荒れた、その場にいた者達はその眩しさに目を瞑り、出した叫び声は高密度の魔力風によってかき消され、辺り一帯が真っ白な世界へとなっていた。
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ー交流戦 中央管理棟ー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「演習場内、爆発高温延焼空域に異常魔力反応ッ!」 ピッ タンタンピコッ!
ザザーーーッ! プツンッ!
「どうしたのッ⁉︎ メインモニターが消えたわッ! 早く映しなさいッ!」 バッ!
大型モニターに映っていた、アニスたちの現状映像が突然切れ、真っ黒な状態になったのをレイラは早く映る様にと、担当職員に急かした。
ピッ ポンポン カチカチ ピピッ! ピッ! タンタン ピコッ!
「ダメですッ! あまりにもの高温と高密度の魔力が立ち込めたため、監視カメラ及び判定ドローン全てのシステムに影響が出ていますッ! 映像の復旧には時間がかかりますッ!」 ピッ ピッ ピコ
ダンッ!
「こんな時にッ!」 ググッ
レイラは苛立ち、机を拳で叩いた。その時、管理室の警報が突然鳴り響いた。
ビーー! ファンファンファンファンッ!
「今度はなにッ⁉︎」 ババッ!
「魔力ですッ! それも…お…大きい…極めて大きい魔力が発生しましたッ!」 ピコンッ!
「魔力ッ⁉︎ 大きい…正確な数値はッ⁉︎」 ババッ!
「はいッ! ちょっと待ってくださいッ!」 ピコ タンタン カチッ! ピコン
「出ましたッ! 魔力量!…魔…魔力…嘘だろ…こんな数値…」 ガクガク…
「なにッ⁉︎ はっきりしなさいッ! 数値が出たんでしょッ! 報告しなさいッ!」 ババッ!
「はいッ! 魔力量ッ! 720メルガノンッ! 破砕魔力量の720倍の魔力量ですッ!」 ババッ!
「「「「「「 なにいいーッ! 」」」」」」 ザワザワザワザワッ!
観測員の答えに、管理室の中は騒然としていた。 現場を高温で土地や岩などが融解が始まっている威力の魔力量でさえ、1.25メルガノンの魔力量である、それが今回現れた魔力量が720メルガノン、その魔力量がなす量と威力が誰の目に見ても明らかだった。
ビーッ! ファンファンファンファンッ!
「当該魔力量ッ! さらに増大ッ! 800…850…900…950ッ! まだまだ上昇しますッ!」 ピコッ!
ビーッ! ビーッ! ファンファンファンファンッ!
『緊急警報 緊急警報ッ! 異常魔力量を感知ッ! 繰り返します…』 ピッ
「魔力量ッ! 1000ッ! 1050ッ… 1100ッ!」 ビビッ! バチッ!
バチバチバチッ!
「うわああッ! 計測限界をッ!」 バチバチバチッ ドオオンッ!
「わあああッ!」 ボンッ! メラメラ…
ジリジリジリジリ….
『火災発生、直ちに消火活動をしてください。 繰り返します…』 ピッ
「早くッ! 消火だ消火ッ!」
ワーワー! シュワアアアアッ! ジュウ…
「一体…なにが起きているというの?」 ググッ!
レイラはその様子を見て、現場ではなにが起きているのかわからなかった。
大型モニターにはなにも写っておらず、計測機械は壊れ、音声のみが動いて聞こえていた。事の真相がわからない今、その場にいる全員が戸惑い、不安に駆られていた。
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ー交流戦 演習場ー
パアアアアアアアーーッ! シュバッ! シャッ!
それは、遥か昔…アニスが一度使用した創造者、神をも凌駕する力であった。その威力は絶大を遥かに凌ぎ、超壮大で、その全てを作り変える…アニスの意のままにする事のできる究極の能力であった。
チリチリ ジュワアッ! シュウウッ! パチッ パパパッ!
アニスの絶対魔法防御、《アルテミスリング》の外、多重層魔法陣内は、その全てが消え去り再び形あるものが形成され始めた。 灼熱の焼けた大地や溶岩、燃え盛る炎と煙は消え去り、高温の大気もその熱共々、消え去っていった。
「ん、仕上げだね!『この地に元の平穏を、元の安らぎを、大地再生、魔素変換ッ!』《ディーバイスッ!》」
パアアアアッ! パーーーンッ‼︎
その場の全てが弾け、全てが終わった。 それと同時に、《アルテミスリング》も解除され、アニス以外は目を瞑ったままだった。
ササ〜…そよそよ…チチチッ ピチュピチュ バサバサバサ…
そこには元の交流戦演習場、野営地の緑豊かな大地に戻っていた。灼熱化し、溶けた岩は、元の状態に戻り、木々や草花、野鳥が飛び交い、近くに流れる小川も戻った。気温も正常に21°程で、心地よい爽やかな微風が吹いていた。
「ん、こんなものかな…」 ニコ
アニスが辺りを確認した時、その場にいた他の者が目を開け始めた。
「うう…どうなった⁉︎」 ソ〜
「終わったのかしら…」 ソ〜
「多分なッ! ちょっと…目がなれてきた…」 ソ〜
「「「 俺もだッ!(私もよッ!) 」」」 パチパチ…
全員が目を開け、眩しさからよく見えていなかった目が、慣れてきて見え始めてきた。
パチッ! サアアアアアアーーーーッ! パアアアアアアアーーーッ!
「「「「「 えええーーーーッ‼︎ 」」」」」 バババアアッ!
目が慣れた全員が、慣れた目に写ったその場の情景に大声を出して驚いていた。 あの焼け爛れたこの場所が、元の状態に…いや、それ以上に豊かな緑の大地となっていたからだった。
サワサワ そよそよ…
ピッ ピコン
『『『『 正常デス 問題アリマセン 』』』』 ピッ
判定ドローンはいつもの様に答えていた。
「こ…これは…こんな事が…」
「す、凄いよアニスちゃんッ!」 ババッ ギュッ!
「ええッ!本当ッ凄いわッ! こんな魔法が使えるなんてッ!」 ガバッ!ギュッ!
「わあッ! アルテッ、ジェシカッ! んぎゃッ!」 ギュウッ!
「たああ…参ったぜ、マイロ、お前これ見てどう思う?」 はは…
「どうもこうもありません、アラン、私はもう二度とアニスちゃんには銃を向けませんからッ!」
「ああ、同感だな、これだけの事が出来るんだ、アニスちゃんを怒らせるのは絶対ダメだな!」
「当然ッ!」 コクン
元の状態に戻った大地や森を見て、アルテとジェシカはアニスに抱きつき喜び、アランとマイロはアニスの能力に参っていた。 その場の全員が安堵している中、遠く離れた場所にいる2人は驚愕の表情を浮かべ、アニス達を双眼鏡で見ていた。
「どういう事だッ! 奴らピンピンしているではないかッ! しかも焼かれたはずの森まで何ともなってない!」 ジイ〜…
「そ、そんなバカな…アレが爆発して焼かれているのを見たはず…なのに何故、何も起きていないかの様になってるのだッ!」 ババッ!
ここ遠く離れた場所では、アニスが一体何をしたかなど分かる由もなかった。ただ、爆発して燃え盛り、光り輝いて、元に戻った。 ただそれだけしか分からなかった。
「ウウッ…や、奴ら全員…司祭殿ッ! 今一度攻撃だッ! 先ほどと同じものをッ!」 バッ
先程の攻撃が効いてないのを見たレスターは今一度攻撃をするために、司祭のダナトスに武器の催促をした。
「いや、申し訳ない、先程の威力のある物は一つしか用意できませんでした。あとは通常の爆裂弾頭しかなく…」 スッ
ダナトスは通常の爆裂弾頭をレスターに見せた。
「そっちのそれはッ? それでも良いッ! それをッ!」 ババッ! カチャッ!
「ああッ! 何をッ! それはッ!」 ババッ
レスターはダナトスの後ろにある金属ケースの中の弾頭を、強引に取り出し、それをロケットランチャーに装填して、再び構えた。
「レスター殿ッ! それはダメですッ! 今、それを使ったらッ!…」ザッ!
「ええい、うるさいッ!」 ドカッ!
「うわああッ!」 ダン! ザザアアアーーー
レスターは、持ち出した弾頭を取り返そうとしたダナトスを足で蹴り飛ばし、照準を合わせた。 レスターはもはや、まともな状態ではなかった。
「ヒ…ヒヒ…今度こそ…今度こそ奴らをッ!」 ブルブル
ググッ! ピピピピピッ! ピコッ!
「ハヒッヒヒヒッ!…皇太子殿下あぁぁ…ヒヒ…こ、今度こそこれで終わらせますっ! あはははッ!」 プルプルプル…
「うう…く、狂ってる…この男はもうだめだ…」 ザッ ダダダッ!
レスターの様子を見て、ダナトス司祭はその場から駆け出し逃げて行った。 レスターは、ロケットランチャーの照準器の中にアニス達を捉えた瞬間、そのトリガーを引き、先程強引にダナトス司祭から奪った弾頭を発射した。 それは、この世界の国同士で使用禁止を決めた戦略弾頭、無差別に広範囲を攻撃、破壊し、長期間その周辺を魔素毒で汚染するという事で製造、所持、使用が禁止になった物だった。
カチッ! バシュウウウウウーーッ!
「はあッははははッ! みんな消えてなくなれええッ!」 ババッ!
ロケットランチャーから発射された弾頭は、ブースターから勢いよく火を吹き、高速でアニス達の元に飛んでいった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。