第176話 交流戦前日2 アニスとレイラ
ー帝都学園演習場ー
カチャカチャ トトト…スッ!
「はい、お姉ちゃん」 カチャ
「あら、ありがとう アニスちゃん」 カチャ
アニスは一度仕舞ったミニテーブルと椅子を再び出し、紅茶と菓子のセットで、姉であるレイラをもてなした。
コクン ふう…
「相変わらず美味しい紅茶ですね」 ニコ カチャ
「どういたしまして」 ペコ
「さて…アニスちゃん、話してくれるかな」 コク
「ん、アラン達とは…」
アニスはこの帝国で初めて出会ったのが彼らアラン達で、この帝国の事を教えてくれたのも彼らだった。アラン達はその時、学園の遠征訓練中で、その時に帝国軍のレオハルトや駆逐艦「ライデン」に出逢い、その後隣国との戦闘、戦闘終了後は【アリエラ】の妹として侯爵に、学園に来てからは【レイラ】と出逢い、その妹として公爵にと説明していった。
「事情はわかったわ、つまり彼らはアニスちゃんが鍛え上げた戦士という事になるのね」
「ん、潜在魔力の活性化、それに伴う身体能力上昇、戦技、剣技に鍛錬、それらを手解きしました」 コクン
「それはどれくらいの期間で行うの?」
「えっと…現行時間で約8時間…くらい…」
「8時間ッ⁉︎ そんなッ!…(有り得ないッ! 有能な素質のある者でさえ、戦技、剣技には2年から3年、魔力の操作、能力上昇に関してはその者の素質もあるけど、約3年から5年はかかるはずッ! それを、実力も無い学生をブレードライナー程の実力まで上げるのに8時間ッ⁉︎ 異常すぎるッ!)」 ジッ!…
「ん? レイラお姉ちゃん?」 うん?…
「アニスちゃん、それは貴女の力? それとも能力か魔法なの?」
「ッ‼︎……(あれ?)」 ピリッ!
「どうしたの、アニスちゃん?」
アニスの身体全体に、静電気のような現象が起き始めていた。
「ん? ああ、私の能力です…(なんだろ?)」 ピリッ パリッ!
パシッ! シュワアアー
「えッ‼︎( アニスちゃんから何か? これは魔力?…)」 ピリッ
「うう…お姉ちゃんは私の能力、力を知りたいのですか?(こ、これは…魔素が…)」 ゴゴゴゴッ! シュバアアアアーッ!
「ア…アニスちゃん…大丈夫?…きゃ!」 ビリッ ビリビリッ!
アニスの様子が変わり、レイラは驚いた。あの、呑気なアニスからは信じられない程の濃い魔素が溢れ出し、静電気のような電撃を放ち、辺り一面を満たしていった。 レイラはその濃い魔素に耐えながらアニスと対峙していた。アニスもまた、自分の中から何かが湧き出て、何かが変わり始めたのをのを感じていた。
「ん、お姉ちゃん…たぶん、大丈…あッ!」 バリバリッ シュワアアアアーッ
「くうッ! ううッ! アニスちゃんッ!(これは、アニスちゃんのじゃ…ない?)」 ババババアアーーッ!
レイラは異質な魔力を感じ、それがアニスのものでないと瞬時に認識した。
「あッ…ああッ!…レイラ…お姉ちゃんッ!…離れてッ!」 ババッ! バリバリッ!
シュバアアアアーッ! ピカッ! パアアアンンーッ!
「きゃあッ!」 グッ! バババーッ! シュワアアアアーッ!
その瞬間、アニスは強烈な光を放ち、レイラは余りにもの眩しさに目を瞑り、身動きできなかった。 しばらくして、レイラがそっと目を開けると、目の前の状況に驚き固まってしまった。
「はッ⁉︎ えッ! な、なな!…」 ガクガク…ペタンッ!
あの、気品があり優雅なレイラが、目の前の状況に腰を抜かし、地面にその身体を落とした。 今、彼女の目の前には、莫大な魔力を纏い、こちらを見つめている高身長の青年が颯爽と立っていた。
ビュウウウーー… バサバサ…
「ん、これは…この体は…元の私ではないかッ! 元に戻った…と言うわけではなさそうだな…」 シュウウ… スッ!
そう、そこに現れたのは、本来のアニスの姿、【創造者ジオス】の身体に戻ったアニスが立っていた。そして、その足元には、少女の姿のアニスが、力なく地面に横たわっていた。ジオスはそっとアニスの体に触れ、その状態を見た。
「ん、大丈夫だ…(しかし、一体、何が……ん?…そうか…アニスの身体が私の魔素に耐えきれず、アニスの身体から溢れたんだ…)」 ふう ニコ…
「アニスちゃんッ! 貴方ッ! 誰なのッ! アニスちゃんから離れなさいッ!」 ババッ!
「ん?(ああ、そうか…レイラはこの姿を知らないんだ。さて、どうしよう……ん、そうだッ! これしかないッ!)」 パッ! ザッ!
ジオスは、足元に横たわるアニスの身体を両手で抱き抱え、レイラに語りかけた。
「レイラと申したか?」 ザッ!
「貴方ッ! 何者なのッ! アニスちゃんを早く離しなさいッ!」 スク チャキッ!
レイラは気力を振り絞って立ち上がり、ジオスに向けライトニングセイバーを構えた。
「アニス…ちゃん、か…(アニスの身体から溢れ出た魔素でできたこの身体だが…ふむ、安定はして来たが、長くは持たないか…ならば!)」 ザッ!
「動かないでッ! 動けば切りますッ!」 カチ ビシュウウウーッ! ブオン!
レイラはさらに深く構え、ライトニングセイバーを起動した。
「ん、いい構えだ!」 ニコ
「なッ! なにをッ!」 カアアッ! ググッ!
ジオスに褒められ、レイラはライトニングセイバーを構えながら顔を赤くしていた。
「クククッ いや、すまん…私の名は【ジオス】…こいつ、アニスの兄だ!(と、言う事にしておこう)」
ジオスはこの状況をなんとかする為、咄嗟に兄妹設定を作った。
「えッ! アニスちゃんの…お兄さんッ⁉︎」 スッ カチ シュウウンン…
「ああ、妹が世話になってるみたいですまん!」 ペコ
「あ…いえ…そんな事は…ない…です」 カアアッ
「そうか、ありがとなッ!」 ニコ
ドキンッ♡ トクン トクン…
「あ…あのう…」 ドキドキ
「ん?」
「あ…いえ…その…」 ドキドキ
「ああッ! こいつアニスの力のことか…私が話そう…」
「え⁉︎ いいんですか?」 スウ〜…
「ん!問題ないだろ…こいつが使った力は、アニスが認め、アニスの能力の指導について来れた者のみ、力を得る事ができるのさ」
「そ…そんなッ!(という事は、アニスちゃんの能力でそれに耐えれれば、誰でも短時間で有能な戦士に仕上がるという事なの? …)」
「指導強化、いや…能力と魔力を与え、身体能力を底上げする。アニスはそれが出来るんだ」
「えッ⁉︎」
「だが、アニスが『拒絶』した場合、いかなる者もアニスはその者の全てを…能力を一瞬で消し去り、魔力も能力もないただの人に戻してしまうだろう!」 うん…
「なッ⁉︎ (そんなの、もう神じゃないッ! 伝説の特殊能力、誰もが欲しがり得られなかった能力、もう神にしか使えることの出来ない能力と言われた究極の特殊能力! 《生殺与奪》ッ! 生かすも殺すも思いのまま…というか、アニスちゃんを怒らせると、その者は全てを奪われる、逆に認められれば力を与えて貰える…なんて強力な能力を…)」 フルフル…
アニス(ジオス)は創造者である。それは神以上の力を持つ者、そこに住む人々に力を与えるのも、それを奪い去るのも自由自在に出来た。 だがアニス(ジオス)はそれを滅多にしない。余程の事がない限り、アニス(ジオス)はそこにいる人々の能力を上げたり下げたりするという事はしなかった。
ここでレイラは一つ勘違いをしている。それはアニスの能力は《生殺与奪》ではなく、《付与と剥奪》だからだ。当然、《生殺与奪》もアニスは使えるのだが、アニスはそれを使用しないだけだった。
「大丈夫か? 少し話が大きすぎたか…」 ふうう…
「いえ…大丈夫です」 カアアッ
「ん、そうか…これからもよろしくなッ レイラッ! 」 ニコ
「えッ⁉︎」 ドキンッ♡ トクン…トクン…
レイラはジオスの一言とその笑顔に、胸の奥で何かが弾けたような気がした。それは、そのまま、胸の鼓動を激しく打ち、顔を赤らめていった。
「い、いえ、お礼など…その…(えッ? えッ? なになに、この感覚ッ なぜ体が震えてるの?)」 トクン トクン ドキドキ プルプル…
「コイツがまた迷惑をかけるがよろしく頼む!(ん、始まったか…)」 シュウウ…
「はい、あの…ジオス…さま…」 ポ ポ
「ん?」 シュ シュワッ…
「貴方は…貴方は一体どこから…」 カアアッ! ポ
「ああ、訳あって、今はすぐに消えてしまう身だ、今回は何かの弾みで、こうして私は現れる事ができたらしい(たぶんね…)」 シュウウ…
「えッ! 消えてしまうのですか?」 ドキドキ
「ああ、だが消滅して無くなるわけではない、またいつか会えるさ! 私もまた、レイラに逢いたいッ!(この姿もいいからねえ…)」 ニコ
「はうッ♡ 」 ドキンッ! うう… ドキドキ…
両手で胸を抑え、レイラはもう顔が真っ赤であった。
「で…ではまたお会いしませんかッ⁉︎」 ドキドキ ドキドキ
「ああ、必ず! アニス、コイツと共にいればいずれな!(おっと、もう終わりか…)」 パリパリッ! バババッ!
「ジオス様ッ!」 ババッ!
「すまん時間のようだ! アニスを頼む レイラッ!」 ババババッ! パアアアンンーッ!
「きゃあッ!」 ババッ!
再び強い光が弾け、ジオスはその光の中に消えていった。辺りにあった魔素は、アニスに吸収され、元の状態に戻っていった。
シュウウ… ヒュウウウ…
「うッ ふう…(またこの体、アニスに戻ったのか…そうか、過剰に蓄積された魔素が拡散され正常値に戻ったからか…)」 スクッ!
ジオスは一瞬だけ、本来の姿、創造者ジオスの姿で現れたが、今はその姿は消え、また元の美少女、アニスの体の中に戻っていた。
「ん、どこも異常はないね」 パ パ!
立ち上がったアニスが体の隅々を確認し、スカートの汚れを払った時、ものすごい勢いで、レイラが駆け寄ってきた。
ダダダッ! ババッ! ガシッ!
「わッ わあああッ! レ…レイラお姉ちゃんッ⁉︎」 ギュウウッ!
「出してッ‼︎」 ユサユサ
「えッ⁉︎ お、お姉ちゃん?」 ユサユサ
「アニスちゃんのお兄さんッ! ジオス様を出してッ!」 ユサユサ
「あッ いやあ、ごめんなさい…今はできません…(たぶん今は無理だあ〜)」ペコ
「そ、そう…(逢いたい…そうね…また逢えますよね、ジオス様♡ …この娘は絶対に手放さないからッ!)」 コクン
「お姉ちゃん?」
「ううん、何でもないわ、さ、話の続きをして」 ニコ
「は、はい…えっと…そうだ、私の能力で、アラン達はライナーになったんです」
「そう…(それはジオス様から聞いた、アニスちゃんは知らないのね…)」
「この事は【アリエラ】お姉ちゃんも、誰も知りません。今、初めて【レイラ】お姉ちゃんに話しました」
「え⁉︎ アリーも知らないの?(と言う事は、ジオス様の事も知らないわね 秘密 秘密っと♡)」 ウンウン
「ん?」
「ああ、なんでもないわ! とにかく、この事はアリエラは知らないのね」 ニコ
「はい、彼らアラン達は確かに力をつけ、アリエラお姉ちゃんの艦に乗ってます。ですが、なぜアラン達、彼らが強くなったかは、『私の手解き』としか聞いてないと思います」
「じゃあ、アニスちゃんのこの力の事は…」
「はい、今この場で聞いているレイラお姉ちゃんと、その能力を体験した、アラン達しか知りません」
「うん…アニスちゃん、話してくれてありがとうあ。もう十分理解したわ」 ニコ
「ん、お姉ちゃん…」 ニコ
「あと一つ聞きたいんだけどいいかな?」
「ん? なんでしょうか?」
「アニスちゃんのお兄さんの事、詳しく知りたいんだけど…いいかしら?」 ニコ
「えッ⁉︎ (あ、コレは断ったらダメなやつだッ!…少しならいいか…)…良いですよ」
「わあッ! ありがとう!アニスちゃんッ!」 パアアッ! ギュウウッ!
「うぎゃッ!」 ギュウウッ!
レイラは満面の笑みを浮かべ、 アニスに思いっきり抱きついた。
「ああ、ごめんなさいアニスちゃん、つい嬉しくって…」 パッ!
「はふううッ! 別に良いですけど、兄の何を聞きたいのですか?(自分の事だけどねえ…)」はは…
「大体でいいの! お兄さん、ジオス様の事を教えて!」
「ん〜、兄の事を大体ですか…」
「そうッ! 大体でッ♡」 ニコニコ
「んと、まず兄、【ジオス】の力はこの世界の全ての国を相手にしても負けません(創造者だから当然だよね…)」
「はッ⁉︎ ぜ、全部ッ!」
「はい、次に兄の能力と魔力ですが、私のそれを遥かに超えてます」
「ア…アニスちゃんより凄いの?」
「ん、私は兄の足元にも及びません(仮の身体だからねえ、しょうがない)」
「あんなに強いアニスちゃんが…足元にも及ばないなんて…」 フルフル
「ん? レイラお姉ちゃん?」
「決めたわ…」 フルフル
「えッ? お姉ちゃん、どうしたの?」 スッ
「アニスちゃんッ! 私は決めましたッ!」 ガバッ!
「うわッ! な、何を?」
「私、【レイラ・ヴァン・クリシュナ】は、貴方の兄、【ジオス】様と結婚しますッ!」 ババアアーーンッ!
「はッ? えええーーーッ!」
「これからもよろしくね♡ アニスちゃん」 うふふ ニコニコ
アニスは、レイラのいきなりの結婚宣言に驚き、逢いた口が塞がらなかった。
【レイラ・ヴァン・クリシュナ】、現皇帝の娘で、その歳26歳の公爵家当主、アリエラとは従姉妹で、今現在アニスの姉になっている。 本来であれば、とっくに婿を貰い、クリシュナ家に収まっているのだが、彼女に見合う男性が見つからなかった。
容姿端麗で清楚な佇まい、学歴も優秀で何より類い稀ない魔力の持ち主だった。彼女が男子で生まれて居ればまず間違いなく皇帝候補の1人だったはずの人物であった。彼女の成人後は数多の数ほどの貴族から求婚がなされていたが、彼女はその求婚を全て断っていた。
彼女は自分の能力よりも下の者に嫁ぐ気などさらさら無かったのである。そんな彼女の能力は、攻撃に特化した多重攻撃、まさに神に匹敵するほどの能力を持ちその特殊能力は、《レリアントアタック》、《キャリバー》で異空間より武器を取り出し、敵に対して集中攻撃を行う。 女性には珍しいフォトン銃の使い手で、愛用の重狙撃スナイパーフォトン銃「イーグルアイSRF/L115A1Mk4」を使いこなす。
その様な強大な魔力と能力を持った彼女を相手に出来る者など、この帝国では皆無だったのだ。 だが、今さっき、彼女の前にその人物は現れた。 自分を上回る絶大な魔力、妹としていたアニスのその強大な力をさらに上回る人物、背格好、物腰といい、これほど人物ならと、レイラは決めたのであった。
つまり、レイラにとってジオスとの出逢いは、ひと目惚れの初恋で、初めて自分からの求婚であった。
「さあ、明日の準備に入りましょ! アニスちゃん」 ニコニコ
「は…はい…(ど…どうしよう…はは…)」 テクテク
グイイイン ガシュン ガシュン ピッ ピピッ!
『正常デス 問題アリマセン』 ピッ
「ん、君はマイペースだねえ…」 ペチペチ!
アニスはそばに寄って来たEG-6のボディーを軽く叩いた。 その後、2人とドローンのEG-6は、演習場を後にした。
ーアトランティア帝国 帝都アダム 宮廷内ガーナ神殿内執務室ー
ザシュウーッ! グサッ!
「ぎゃあああーーッ!」 ドサッ! ボタボタ…
「余計な事をされては困るのですがねえ」 ビュン!
「全くだ、私の配下である【ガスティー】侯爵家が先程、憲兵隊に連れて行かれたと報告が来た。なんでも貴様が奴の息子を焚き付けたそうだな! 全く、こっちにそのしわ寄せが来たらどうする!この愚か者め!」
「も…申し訳…ございません」 ポタポタ…
交流戦前日の午後、王城横の建物内、その奥にあるガーナ神殿の執務室に、3人の人影があった。その内の1人は今、血を流し床に平伏していた。
本日の昼前に、カルディナ軍港に【マイヤー】侯爵家の強行偵察艦が帰ってきて、マイヤー家息女の【ベルギット】以下女子メンバーが全員無事に帰還、その時の情報と捕らえてあった男子メンバーより、主犯は【ガスティー】侯爵家の嫡男、及びその嫡男に入れ知恵をしたとされる、ガーナ神官の1人と判明した。
すぐさま、各方面に連絡、国選辺境侯爵の【ヴァスデヴァン・フォン・マイヤー】は、怒り狂い全軍をゾルダン地方にあるガスティー侯爵領に進軍しようとしたのを娘の【ベルギット】に止められ、事なきを得ている。が、憲兵総監の【ウィリバルト・フォン・アイゼンベルガー】は、そうはいかなかった。自分の弟の娘の腕を斬り落とされたのだ、アニスに治してもらったとはいえ、その怒りは尋常では無かった。
午後1番には【ガスティー】侯爵を拘束、共犯のガーナ神官を捜索中だった。 件のガーナ神官は早々に、ここ宮廷内ガーナ神殿に逃げ込んできたのであった。流石の憲兵隊も宮殿内にあるガーナ神殿には踏み込めず、指を加えてみているしか無かった。 ガーナ神殿に入るには、神官に帰依するか、皇帝陛下又はガーナ神殿、大司教の許可が必要だったからだ。
「大司教殿、この後どうしたものか…」 オロオロ
「心配めさるな、公爵のあなたがそんな事ではいけませんぞ、『次期皇帝陛下』【ゼレオ】様」 ふふふ
「おお、そうであったな【フィラウス】大司教殿、頼れるのは其方だけだッ!」 ガッ!
「しかし、【ガスティー】侯爵家はどうしますかのう…」
「ここに至ってはいたしかたない、【ガスティー】侯爵家は見限るッ!」 バッ!
「うん? 宜しいのですかな、大事な資金源、資金調達の者では無かったのですかな?」
「対岸の火事がこっちに飛び火する前に切るだけだッ! 資金調達の貴族などいくらでもおるッ!」
「そうですか、では遠慮なくおきりになった方が得策ですぞ!」
「うむ、そのつもりだ、後は…」
「そうですな…後始末をしませんと、後々面倒な事になりますからのう…」ジロッ
「ひッ! お、お助けをッ! 大司教様ッ!」 ポタポタ ガタガタ
「うむ、待っておれ、ガーナ様は誰でも救ってくださる」 ニコ
「だ、大司教様ッ!」
「うんうんッ!」 ビュン! ザシュウウーーッ!
「ぎゃあああーッ! だ…大司教…さま…」 バタン…
手配中のガーナ神官は大司教の手によって処刑された。
「ふむ、相変わらず見事な剣捌きですな!」
「ふふ、最近の者はフォトンソード、ライトニングセイバーしか知らん、私の実体剣、本物の鋼の剣など知る由もない、嘆かわしいことよのう」
ビュン! チャキンン!
「さて、後は【ガスティー】侯爵だな、いらぬ事を口走る前に消えてもらわねば」
「ふむ、公爵様には良き考えがありますかの?」
「我が家の執事に良い者がおります。暗殺に長けた者が…」 ふふふ
「おお、それは重畳、ではよろしく頼みますぞ、次期皇帝陛下…」 スッ
「ふふふ、わかっておる、任せておけ」 グフフフッ!
「「 はははははッ! 」」
ガーナ神殿奥の執務室に、男たちの笑い声が響いていた。
・
・
・
ー帝都学園 女子寮棟横の空き地ー
バサッ! シュワンッ!
「ん、これでよしッ!」 パン パン
「アニスちゃん? 何をしてるのかな?」
「あ、お姉ちゃん、これですか?」
アニスは再び、女子寮棟横の空き地にテントを貼っていた。
「ん、今日の寝泊まりする所です」 ニコ
「まさか、まだ連絡来てないの?」
「ん? 連絡? なんですかそれ?」 はて?
「じ む きょくの奴らああッ! ちょっと行ってくるわッ!」 バッ!
カツカツカツ!
そう言ってレイラは教師棟の方へ歩いて行った。
・
・
・
パチパチ カタン ボウッ! メラメラ…
「ん〜ッ! 美味しいいッ! 晩御飯は美味しくないとね」 はむッ!
もぐもぐ コクン!
ガサッ ガササッ!
「ん? ガササ?」 ハグハグ もぐもぐ
ガサガサ ガササッ!
草藪が揺れるのを見ながら、アニスは夕食を取っていた…
ガサアッ! ババッ! タタタ…ペタン…
「うううッ! お腹すいたよおおお…」 ヘタヘタ…
アニスの見知っている少女がそこに現れた。
「あああッ! ニールッ!」 もぐもぐ ゴクン!
「アニス〜…」 グウウ…
草藪から現れたのは背の低い幼女体型の自称17歳、腹ペコのニールがそこにいた。
グウウ〜…
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。