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第172話 救出、アニスとベルギットの友人達

ー演習場準備棟 「金扇クラス」専用棟ー


交流戦前日の朝、今、アニスはベルギットに頼まれ、彼女の友人達を助けるために、ここ演習場準備棟『金扇クラス』専用棟にやってきた。


シュンッ! スタッ! ピタッ


準備棟の側面、人影のない所にアニスは一瞬で移動した。


「さて、中はどうなってんだろ?」 スッ ペタ


アニスは建物の壁に手を当て、目を瞑り、アニスだけの能力を使用した。


「ん、《リ.サーティスッ!》」 コオオオオオンンン………


アニスを中心に、波動の波が円を描くように広がっていった。


「ん、1階に男性4人、2階右奥の部屋に女性が3人、ん?1人はどうした? 動いていない…右腕がない? 重症じゃないか…ん!ここの反対側…小柄な女性が1人…」 ス…


アニスは目を開け、建物より手を離した。


「この周辺には自分を含めて9人…1人は重症だな、早くしなきゃ ん? あの子は…」 ソロ…


アニスが動こうとしたその時、こことは反対側に反応があった1人が準備棟の窓に近づいていった。


「ん、小さいがあの服装…今回の交流戦のメンバーか、野戦服にキュロットスカートだから女子メンバー、ベルギットの友人かな?」 ジッ


ぴょん ぴょん トトト ぴょんッ!


アニスが見たその人物は、小さかった。 身長はおそらく130cmくらい、薄緑色のセミロングヘアの幼女体型の少女だった。身に付けている装備は、交流戦女子メンバーと同じで、少し違うのは、彼女は背中にミニリュックを背負い、フォトン銃は所持してなく、演習用小型ライトニングセイバーのみだった。 そんな彼女が窓を覗こうと、可愛く跳ねていた。


「うう…もう少しなのに見えないよおお…」 ぴょん ぴょん


「(あはは…あ〜、なんか可愛いのがいる…)」 はは…


アニスはその様子を見て、心の中で笑ってしまった。


「う〜、こうなればッ! 《ウォール.クラックッ!》」 ピシッ! 


ドンッ! バラバラ バラ…


「(うわあッ! あの子、魔法で壁に穴開けてるよ!)」 ジ〜


その少女は、準備棟の壁に手を当て魔法を放ち、自分が通れるくらいの穴を壁に開けたのであった。


「どうだ! 私にかかればこんな壁、こんなものよ!」 うん! こそこそ…


彼女は魔法で開けた穴から、準備棟の中に入って行った。


「ん、さすがは交流戦メンバー、良い魔法といい判断だね」 コク


アニスは彼女の行動に感心した。そのまま玄関から入れば、1階ロビーにはアディオスの仲間、男子メンバーがいて見つかってしまう、だが、彼女が魔法で開けた壁の穴は、1階奥の用具室の壁、彼らに見つかることはなかった。


「さて、ケガをしてる子の事も心配だから、私も動くかな…」 シュ タタタ…


アニスは真正面、準備棟の玄関までやってっ来て、躊躇なく扉を開き中へ入って行った。


ガチャ ギイイ テクテクテク


「「「「 なッ! 」」」」 ガタタッ! ババッ!


中央ロビー横の喫茶コーナーにいた男子メンバー全員が、玄関より堂々と入ってきたアニスを見て立ち上がり構えたが、言葉を失った。 それは、あまりにも神々しい姿の美少女が、颯爽と建物の中に入ってきたからだ。


「ん!」 キンッ! パアアアンッ‼


「あ…は?…な…」 ガタガタガタ… ドタンッ!


「う…ぐぐ…」 ドサッ バタンッ!


「あ、ああ…あッ…」 バタタッ ドサッ!


「ヒッ!…ヒイイッ!…」 ドタン ガタガタ… バタン!


アニスが一瞬、魔力を高め、彼らを見つめた瞬間、男子メンバーは床に崩れ落ち、震え気絶していった。


「ん、彼らには少し強すぎたか…悪いことをしたかな…」 テクテク


まだ学生の少年たちである、アニスにとって本気で相手する者達でなく、ただ魔力を高め牽制するつもりだった。しかし、彼らにはそれだけで十分だった。 不意を突かれたことと、アニスの容姿に見とれ、まともにアニスの密度の濃い魔力を受け倒れてしまったのであった。


アニスは、倒れて気絶している彼らをそのままにし、2階への階段を上ろうとした時、階段の陰から先ほどの小柄な少女がアニスを襲ってきた。


「うわああッ! 皆をかえせえーッ!」 トトッタタタッ! ヴォン ビシュウウー


小柄な少女は小型ライトニングセイバーを起動し、勢いよくアニスに斬りかかってきた。


「ん!」 サッ! ヒョイ…


「うわッ!」 ドタドタタッ! コテンッ! ザザーッ


勢い良く斬りかかってきたが、アニスは難なく避け、少女は勢い余って床に倒れてしまった。


「うう…私の攻撃を交わすとは…」 スクッ! ブオン!


「ふむ、(保有魔力はまあまあ、動きもいい、隠密行動もできてる、他のメンバーに比べるとかなり優秀な方かな)ん?」 ジッ


「あなたが男子達を唆した張本人ね! 私の仲間を返しなさいッ!」 ブンッ!


「ん? 私が? 唆した?」 スッ


「そうよッ! あなた以外、他に誰がいるのよッ!」 バッ ブオン! タタタ


少女は再び、小型ライトニングセイバーで切りかかってきた。


ブンブンッ! ビュンッ! ビシュッ! ババッ! ブオンッ! ブンッ!


少女の手数は多く、高速連続攻撃をしてきたが、アニスはものともせず、よけながら、少女の質問に答えていた。


「ん〜、ここにいない人物じゃないのですか?」 サッ!サッ! ヒュヒュンッ! 


「ふざけないでッ! このッ! このッ! やッ!」 ブオン ブンッ! ビュッ!


「はあ…仕方がないなあ…」 サッ! シュンッ! シャッ!


「え⁉︎ 消え…」 ブンッ! バッ!


「ここです」 シュンッ! トンッ!


「わッ! きゃあッ!」 ババッ! 


シュッ! トテッ! カランカラン コロコロ…


少女がアニスに何度も斬りかかった瞬間、アニスは彼女の前から消え、一瞬後に、彼女の背後に現れて、彼女のライトニングセイバーを手刀で叩き落とした。


「ん、ここまでにしませんか?」 ニコ


「なッ! い、いつの間に…くうう…」 うう…


「わたしの勝ちですよ、お嬢ちゃん」 ニコニコ


「お嬢ちゃんじゃないッ!」 くわッ!


「え、でも…その背格好…」 スッ


「私はこう見えても17歳だッ!」 ババッ!


「え⁉︎ ええーッ! 私と同じ歳⁉︎ こんなに小さいのに⁉︎ というかベルギットと同級生なの⁉︎」


「小さいは余計だッ! って、え? あなた、マイヤー様を知っているのですか?」 サッ


「あ、私はアニス、【アニス・フォン・ビクトリアス】、ベルギットとは友達です」 サッ!


「へ? マイヤー様の、ご、御友人…なの?」 ピク!


「はい、友人です。よろしくねお嬢ちゃん」 ニコ


「だからッ!お嬢ちゃんじゃないッ!【ニベルダ・フォン・レーヴェルト】侯爵家 17歳よッ!」 ぷんぷん!


「はは…17歳にこだわるんだ…(あ〜、ちっさいし、見事に幼女体型…)」 あはは…


「とにかく、あなたがアイツらとは違うという事は分かったわ」 チラッ!


「ん?」


「あなたでしょ、男子メンバーを、あのようにしたの?」 スッ


「ええ…まあ…」 コクン


「マイヤー様の御友人なら納得です。あなたは私より強い、認めてあげるわッ!」 ザッ!


「はは…ありがとうございます。レーヴェルトさん(わああ、ちびっ子がふんぞり返って、可愛いですね)」


「ニールよッ!」


「え?」


「私の事はニールって呼んでいいわよ! 私の仲間にはそう呼ばせてるわ!」


「ん、ではニール、私の事もアニスと呼んでくださいね」 ニコ


「うッ…うん分かったわアニス(か、可愛いじゃない…悔しいけど負けたわ)…で、あなたもみんなを助けにきたんでしょ!」


「はい、ベルギットに頼まれました。急いだ方がいいですよ! 1人は重傷を負ってます」


「え! 誰、誰なの⁉︎ 不味いじゃないそれッ! どこッ! どこにいるのッ⁉︎」 ババッ!


ニールは急に慌て出し、仲間の所在を聞いてきた。


「この2階、奥の部屋みたいです」 スッ


「2階の奥ねッ!」 ババッ! トトトッ! タタタッ!


「私も急ぎますか…」 ババッ! タタタッ!


2人は2階に監禁されているであろう仲間のもとに駆け上がっていった。


タタタ ガチャ


「違う!」 バタン!


「ニール、その奥ですよ」 タタタ


「こっちね!」 タタタ ガチャガチャ!


ニールが扉に手をかけたが、鍵がかかっているようで、開かなかった。


「鍵が…くく…どうして…」 ガチャガチャ!


「ニール、ちょっと宜しいですか?」 スッ!


「アニス、あなた…」 サッ!


後から来たアニスが鍵のかかった扉に手をかけた。


「ん、《リフター》」 キン! ガチャ


「凄い…開いた…アニス、貴女はいったい…」


「ニール、どうぞ」 スッ


アニスに促され、ニールは扉を勢いよく開け、中に飛び込んでいった。


ガチャ!タタタッ!


「みんなッ! 大丈夫ッ!」 ザッ


「「 ニールッ! 」」 バッ


「サンドラ! メルティー! よかったあーッ」 タタタ ギュウッ!


「う…うん、ニールも無事で良かったわ…」 スッ


「そうね、でも…シルティーが…」 チラ


「え⁉︎ シルティーがどうかしたの?って…シルティーッ!」 タタタ スッ!


ニールは2人の後ろに横たわっていたシルティーに気づき、駆け寄っていった。


「そんな…シルティー…なんてひどい怪我…」 ガク…うう…


ニールはシルティーの怪我を見て、両膝をつき、涙を流した。それは彼女の想像を遥かに超えた大怪我だったからだ。


テクテク スタッ!


「ニール…ちょっと宜しいですか?」 スッ


「「 だれッ⁉︎(わああ、綺麗…) 」」 ザッ!


「ん?」


サンドラとメルティーはアニスが現れて驚き、警戒した。


「サンドラ、メルティー、アニスさんだよ、マイヤー様の御友人だそうよ」


「「 ベルギットの? 」」


「ん、【アニス・フォン・ビクトリアス】、侯爵家です」 ニコ サッ


「あ、【サンドラ・フォン・パーシェル】、侯爵家です」 ニコ サッ


「私は【メルティー・フォン・シュタルダー】、侯爵家です」 ニコ サッ


3人は貴族女性の挨拶、カーテシをし、挨拶を交わした。どんな状況下でも、この世界での女性同士は、初対面は行うらしかった。


「ん、パーシェルさんとシュタルダーさんですね」


「ああ…ベルギットの友人でしょ、サンドラでいいわよ」 コク


「ええ、私もメルティーで結構ですわ」 ニコ


「ん、では私の事もアニスでお願いします」 ニコ


「分かったわアニスさん」


「あ、思い出しましたわ、確か学習棟でお会いした方ですわ」


「ん? 学習棟?(ああ、あの階段での時のことかな?)」


「2人とも聞いて、アニスのおかげで、マイヤー様は大丈夫だそうよ」 サッ


「そうですか!ありがとう、アニスさん」 ペコ


「いいんですよ。それでは、ちょっと彼女を見せて」 テクテク スッ!


アニスは横になっって倒れて気絶しているシルティーを見た。


「ん…(右上腕から下が欠損か…この傷跡は…ライトニングセイバーか、酷いことをする)」


アニスはシルティーの右腕の傷を調べた。アニスの見解では、シルティーの傷は魔道具のライトニングセイバー、それも訓練用ではなくおそらく実戦用、そんな物を使われ切られたものだった。


「切られた腕はどうしたのですか?」


「…ないの…」 うう…


「ない? 何処かにあるのではないのですか?」


「ううん…わからないの、ここに運ばれた時、シルティーはすでに腕がなかったから…」 うん…


「そっか…(では、もうその腕は使えないな…)」 ふむ…


その時、気絶していたシルティーが目を覚ました。


「うう…こ、ここは…」 う〜ん…


「シルティー、気が付いた? 大丈夫?」


「メルティー…みんな…」 ググッ


シルティーは大怪我を負っていたが、応急キットの薬のおかげで、痛みだけは無くなっていた。


「ん、目が覚めましたか?」 ニコ


「あ…貴女は…アニス・フォン・ビクトリアス…どうして…」 うう…


「『どうしてここに?』ですか?」 ニコ


「え…ええ…」 コクン


「ベルギットに貴女達を助けてほしいと頼まれました」 ニコ


「ベルギットに…そう…良かった。彼女は無事なんですね」


「ん!無事です」 コクン


「よかった…あッ…腕が…そうだわ、あの時に…う、うう…」グス…


シルティーはベルギットの無事に安堵したが、今度は自分の右腕がない現実に戻され泣き出した。


「も…もうこれでは…お父様やお母様が見たらお嘆きになるわ…」 グスグス うう…


「「「 シルティー… 」」」 ババッ ギュウッ!


泣いているシルティーに、サンドラとメルティー、ニールの3人が抱き合い、慰めていた。そんな時、傷を見ていたアニスがシルティーに質問した。


「これは逃げる途中で?」 スッ ジイイッ


「ええ、ベルギットの姿が見えなくなって、ちょっと油断した時、アイツが…」ググッ


「アイツ?」


「アイツ、アディオスが現れて…」 ギュウウッ!


シルティーは左手の拳をギュッ!っと握り、腕をなくした時の状況を思い出した。

         ・

         ・

         ・

ドオオオンッ! パラパラ… ドンドンッ!


『サンドラッ! ベルギットは行った⁉︎』 ババッ! ドンドンッ!


キュルルルル! ドオオオンッ! メラメラ パラパラ…


『ううッ! おそらくッ!』 ザッ!


『じゃあ、貴女達も行きなさいッ!』 バババッ! チュンッ! チュンッ!


『しかしッ! うッ!』 ババッバ! ビシッ! パパパッ!


『サンドラッ! メルティーッ!サンドラが撃たれたわ、彼女と一緒に下がりなさいッ! 早くッ!』 ダダダッ!


『はい! シルティーも早く下がってねッ!』 ザッ! パンッ! パンッ!


『うん! あと、ニールはどこ行ったのかしら?』 ザザッ!


『わからないの、途中で逸れてしまったから…』 ザッザッ!


キュルルルルッ! ドオオオンッ! ドオオオンッ! バアアアーー!


『きゃあッ! ニールは大丈夫よ! 強い娘だからきっと…だから早く行ってッ!』 ババッ! ドンドン!


『分かったわシルティー、気をつけてね!』 タタタッ! ガサガサ


メルティーは銃弾を受け傷ついて気を失ったサンドラを担いで藪の中に入っていった。この後、彼女達はすぐに男子メンバーに捕まってしまう。


『全く、アディオスのヤツ、いったい何を考えてるのかしら』 カシャ チャキン!


ガサガサ ババッ! ザザッ!  ダンッ! ジロッ!


『ようッ! シルティー、探したぜえ!』 ヴオン! ビシュウウーッ!


『なッ! アディオスッ!』 ブオン! ビシュウウーッ!


突然現れたアディオスは、ライトニングセイバーを起動して、シルティーに近づいてきた。それを見てシルティーもライトニングセイバーを起動する。


『いい加減降参したらどうだ? そうしたら、そうだな…俺の女にでもしてやるよ!』 ふふふ


『ふざけないでッ! 誰が貴方になんてッ!』 ババッ! ブン!


シルティーは訓練用のライトニングセイバーを持って、アディオスに斬りかかった。


『ふん、残念だよッ! はああッ!』 ダダダッ! ブンッ!


バシイイイッ! ジジ ジジジッ! ブオンブオン! ジジジ


『ほう、やるじゃないかシルティー』 ふふん


『貴方なんかに負けないわッ! はあッ!』 グイッ! ブンブン ブオン!


『おっと、じゃあこれでも食いやがれッ!』 シュバアアッ ! ヴオンッ! 


『え⁉︎ そのセイバー、訓練用じゃあ… きゃああーッ!』 ザンッ! ビシュッ! 


ドサンッ! ボトッ! ポタタタッ! 


シルティーの右腕が、上腕から切り落とされ、鮮血が地面に落ちていった。


『ちッ! 腕を切り落としちまったぜッ!』 ヴオン 


『あ…ああ…う、腕が…私の…』 フッ  ドサッ!


ここでシルフィーは腕を失った事のショックで気絶してしまった。

          ・

          ・

          ・

「アディオス…絶対に許さないから…」 ワナワナ…


シルティーは憎しみを込めた声をあげていた。


「ふむ、このくらいなら…」 サスサス


「「「「 えッ⁉︎ 」」」」 バッ!


「アニス、いったい何を…」


「ん、ニール、シルティーの怪我だけど、私なら治せます」


「「「 ええーッ⁉︎ 」」」


「ほ…本当ですか? アニス・フォン・ビクトリアス…さん」 うう…


「ん、それとアニスでいいですよ」 コクン


「あ…もうしおくれました、ごめんなさいこんな格好で、【シルティー・フォン・アイゼンベルガー】、侯爵家です」 スッ


「ん?【アイゼンベルガー】? 【ウィリバルト】と同じ苗字だな、知ってる?」


「え? 【ウィリバルト】は私の伯父様ですが…アニスさんは知っているのですか?」


「ええ、確か【グレゴリー】と一緒に友人になった人です」 ニコ


「え⁉︎(憲兵総監の伯父様を友人?それに今、【グレゴリー】って、まさか帝国宰相の【グレゴリー・ヴァン・ベッケンヴァウアー】様?) アニスさん、貴女は一体何者ですか?」


「ん、それはさておき、すぐ治療してしまいましょ!」 スタッ! サッ!


「ま、まさか…欠損部分を治すような治癒大魔法だなんて、『ガーナ神殿』の教皇様か大司教様くらいしかできないのよ!」


「ん?『ガーナ神殿』? 聞いた事ない神の名だな…(しかし、身体欠損治療ができるのか…その教皇とか大司教、凄いな)」 うん!


「アニスさん?」


「ん、ごめんね。では、始めるからそこに横になってください」 スッ!


「は、はい…」 サッ コロ…


「「「 シルティー、頑張ってッ! 」」」 ギュッ!


「うん…」 コクン


「では、始めます!」 スタッ! バッ! 


「はい、お願いします、アニスさん」 フルフル…


「「「 始まるッ! 」」」 ジッ! ゴクッ…


「《リングッ!》」 パアアアンンッ!


アニスが開始の言葉を唱えると、シルティーを中心に、その部屋いっぱいに純白の魔法陣が二つ、床と天井に現れた。


「え⁉︎ 凄い、床と天井いっぱいに白い魔法陣! こんなの見たことがないッ!」


「ねえねえ、ニール!」


「何よ、サンドラ、今いいとこなのッ! 邪魔しないで!」 ジイイ…


「アニスさんって何者なの?」


「え⁉︎ そんなこと知らないわよ!」 ジイイ…


「「 え〜… 」」


サンドラとメルティーを他所に、ニールはアニスの魔法に釘付けだった。


ポン 『隔離空間が構成されました、これより神聖魔法が発動します』


「「「 え⁉︎ なになになにッ! 」」」 ザワッ!


「なに今の声? どこから…」キョロキョロ


「それより今、『神聖魔法』って聞こえたけど…」 オドオド


「「「 まさかッ! 」」」 ババッ!


ヒュルルルル…


「ん、《リバイバル.ヒール》」 キュンッ! 


シュババババアアーッ! シュヲオオオオーーッ!


アニスがそう唱えると、シルティーは眩い光に包まれ、失った右腕は一瞬で蘇り、光と白い魔法陣は一瞬で弾けた。


パアアアンンッ!


「ん、終了」 スタッ


「「「 えええーッ! 」」」 


「もう、終わったのですか?」 ゴソ


「ん、どうですか? シルティー」


「え? あッ…右腕…私の右腕…」 グッ パッ グッ パッ


「良さそうですね」 ニコ


「うう…ありがとう…ありがとう…ありがとうございますッ! アニスさんッ! 」 ガバッ! ギュウウーッ!


自分の右腕がもとに戻ってシルティーは思わずアニスに抱きついた。


「うわッ! シ、シルティー?」 ギュウウーッ!


「うう…うう…本当に…あ、ありがとう…アニスさん…」 うう…


「治って、よかったですね。シルティー…」 トントン


アニスは自分に抱きつきお礼を何度も言いながら泣くシルティーの背中を軽く叩いた。


「見て見て、メルティー、私たちの傷も無くなってる!」 バッ!


「本当、凄い治癒魔法、こんなの初めてだわ」


その部屋に居合わせていた、サンドラの銃撃の傷やメルティーの切り傷なども一緒に治っていた。


「ん、みんな治ってよかった」


しかし、1人は違ったようだった。


「治ってないッ!」 バッ!


「「「「 えッ⁉︎ 」」」」


そう叫んだのはニールだった。


「ん、どこか治ってなかったの?」


「みんな、私を見てッ!」 ババッ!


ニールは両手を広げ、自身の身体を見せた。


「どこも怪我なんてしてなさそうだけど?」 ジッ


「うん、ないね、どこか痛いの?」


「よく見てよッ!」 ババッ!


「「「「  ?  」」」」


「私の背が縮んだままよッ!」 バッ!


「あ、はは…ニール、流石にそれはちょっと…」 はは…


「え!ダメなの? シルティーの腕が蘇るほどの魔法でも?」


「 ん、ケガではないので…」 コクン…


「うう…」 グッスン…


「さあ、ベルギットが待ってます。行きましょうか?」 スタッ!


「「「「 はいッ!(は〜い…) 」」」」 タタタ


そう言って、囚われていた「金扇クラス」女子メンバーは、1階で倒れたままの男子メンバーをそのままに、準備棟から、ベルギットの元へ出て行った。


数十分後、戻ってきたアディオスは、準備棟の扉を開けその場の惨状を見て大声を上げた。


「なんなんだよこれはああーッ!」 ババッ!


1階正面ロビー横の喫茶コーナーで、気絶して倒れている男子メンバーが4人、彼はなにが起きたのかさっぱり分からなかった。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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