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第158話 アニスとレイラ先生

ー帝都学園 教師棟前ー



バチバチ パンッ! ボンッ! メラメラ ジ…ジジジ…


「下がって下がってーッ!」 ダダダ


「エヴァン君! こっちだ! 早く消火器を!」 バッ!


「はい! 教頭先生!」 ダダダ ザッ ギュッ! シュバアアアアアーッ!


ジュウウッ ジュウウッ! シュウウウウー……


教師棟のすぐ脇では ちょっとした騒ぎになっていた。教職員総勢で表に出てきており、そこで、火花を散らしながら燃え続けているドローンの消化をしていた。


ジュウウ……モクモク…シュウ〜…


「よしッ! 無事消えたな! しかし、なぜこんな物がここに?」 ツンツン


教頭は持っていた教師杖で、火が消えバラバラになり原形をとどめていないドローンをつついていた。


「教頭先生ッ!」 バッ


「うん? キャサリン先生、大丈夫でしたか?」 ツンツン


「はい! それよりもソレは『R−32 暗殺型対人戦闘ドローン』です!」 ビシッ!


「そのようですね、それでキャサリン先生」 スクッ!


「はい!」


「コレは貴女がやったのですか?」 スッ


教頭先生が、破壊され燻っている暗殺型対人戦闘ドローンを指さして、キャサリンに質問した。当然、その場にいた全員がキャサリンに注目する。


「あ…いえ、私ではありません…」 フリフリ


「ほう、キャサリン先生ではない、まあ確かに貴女ではコレをここまで破壊することは無理でしょう。ではコレを、この強固なドローンを一体誰がここまで破壊したのですか?」


キャサリンは教頭の質問にどう答えようか悩んでしまった。事実を話すべきか、それとも惚けてしまうか、そんな事を悩み考えていた時、キャサリンの後ろから声が上がった。


「私ですよ、 教頭先生…」 ニコ ジャキンッ!


そこには、人の背丈ほどもある重狙撃スナイパーフォトン銃、「イーグルアイSRF/L115 A1Mk4」をその身に立て掛け立っているレイラが微笑んでいた。


「レ、レイラ先生ッ! ま、まさか貴女、ソレを使ったのですか?」 ババッ!


「はい、使いましたわ、教頭先生」 んふ♡


「うッ…ま、そういう事にしときますか…」 やれやれ


教頭は最初、レイラのこの事に関して疑ったが、レイラは公爵家の息女、これ以上は詮索無用と判断したのであった。  


「教頭先生ッ! 私はソレが生徒を襲っているのを見ました!」


「なッ! 生徒を襲っただと!」


「教頭ッ!」 ザザッ!


「ううむ…これは由々しき事です! 緊急、教職員会議を行ますッ! 各担任の先生方は受け持ちの生徒全員を今日は自宅に返して下さい! 連絡あるまで自宅待機です!」 ババッ!


「「「「「 はいッ! 」」」」」 ザッ! ダダダダッ!


1回生から4回生までの教師達は自分の受け持ちの生徒達がいるであろう教室、グランド、訓練場や寮棟などに向かい、教頭の指示にあった『自宅待機』、学園から出る指示を伝えに動き出した。


「レイラ先生、ありがとうございます」 ペコ


「キャサリン先生、私は私のできる事をしただけですよ」パチ♡ カツ カツ カツ


キャサリンはレイラに礼を言ったが、レイラは当然の事という素振りで、重狙撃フォトン銃を抱え、ウィンクをして去っていった。


「キャサリン先生!」


「は、はい! 教頭先生」 ピク


「貴女は会議前に学園長室に来て下さい! 聞きたい事があります」


「は…はい…」 クルッ! タタタタ!


「ん、先生」 テクテク


「あ、ビクトリアスさん、ちょっと今忙しいのでそこで待っててくれるかしら?」 タタタ


「はい、ではここで…」 スタッ


「では後で来ます」 タタタ


そうアニスにその場にいる様に指示を出し、キャサリンは学園長室にかけていった。


「アニスちゃんどうする?」


「ん、私はここで待つ様に言われたから、みんなは先に行っていいですよ」コクン


「わかったわ、私たちはエマ達を探しに行くね」 タタタ


「じゃあね、後でねアニスちゃん」 フリフリ タタタ


「ん!」 フリフリ


アニスをその場に残し、女生徒達は皆、教室棟に入っていった。が、皆はその後、すぐに帰宅指示が出て、アニスに会えず帰っていってしまった。

          ・

          ・

1時間ほどで、学園内の生徒はほぼ帰宅し、寮住まいの生徒も寮から出され、一時帰宅した。


「教頭先生、生徒を全員帰して良かったのですか?」


「『暗殺』など名がつくドローンが学園内にいたのです、貴族の誰が狙われてもおかしくない以上この学園に置いておくのは危険だ。事が終わるまで帰っていてもらった方がいい!」


「わかりました」 サッ


教頭は、燃え残った残骸を見て事の重大さを思う。


「(こんな事…下手をすれば貴族間同士の内戦になってしまいます! 冗談ではないッ!)」 ググッ


「教頭先生ッ! 学園長も参られました! 第一会議室に来てください!」


「うむ」 コクン ザッ ザッ ザッ


学園の教職員全員が、教師棟2階にある第一会議室に集まり、夜遅くまで今回の事を話し合っていた。




ー帝都学園内 女子寮棟横ー


パチパチ メラメラ ボウッ メラメラ


「みんなどこ行ったんだろ? 先生も来ないし…ま、いいか、ちょうどいい空き地があったし、誰も文句は言わないよね」 テキパキ


空は陽が傾き、赤く染めはじめた時間、アニスは1人、女子寮棟横の空き地にテントを貼り、かまどを作って、夕食の準備をしていた。 アニスは生徒全員が自宅待機になり、この学園から出ていったのに気がついていなかった。 学園の施設には全て錠がかけられ入れず、仕方なしの行動であった。


「よ〜しッ!張り切って作っちゃうぞおお!」 グッ キュッ! パサッ


アニスは制服の上からエプロンを被り、セミロングの髪は後ろで束ねポニーテイルにして、腕をまくり夕食制作に取り掛かった。


「さて、どうせ1人だし、ちょっと凝った物でも作っちゃおうか、ん〜っと…」 ゴソゴソ


アニスは異空間に手を突っ込み、そこに保管してある膨大な食材を吟味していた。


「よしッ! 今晩は肉料理だッ!」 ドンッ! ドンッ! ズンッ! 


アニスは異空間から、調理台、2人がけ程度のテーブルと椅子、そして調理台の上には大きな肉のかたまりを取り出した。


「よし、まずはスープからだね」 スッ!


調理台の上に乗ってる肉に向かって、アニスは調理用ナイフを持ち、調理を始めた。


プクプク ポコポコ トントン サッ パカッ クルクル


「よし、コンソメたまごスープはコレでいいね」 とん


アニスは出来上がったスープ鍋を少し火から離し、メインディッシュの肉料理に取り掛かった。


ストッ ストッ スッスッ ジュウウ〜 


新鮮な肉を食べやすい大きさに切り分け、さらに食べやすく焼きやすいように、隠し包丁を入れる。温めた縁の深いフライパンに食用オイルを垂らし、切り分けた肉を塩、胡椒を振ってから焼いていく。 肉全体に焼き目がついたらここでフライパンの中にジンジャーエールを投入、フライパンの底が浸るくらい入れて肉ごと煮こむ。


後は、砂糖、醤油、酒、ニンニク、を入れ、落とし蓋をして30分 投入した調味料が飴色に甘辛くタレになり、肉にからむ。その後は肉を返して満遍なくフライパンに残った甘辛のタレを纏わせ完成。


「よしよし、いい感じだねえ」 ふんふん♪


周辺には、アニスの作った肉料理の香りが充満していった。


コツコツ コツコツ ピタッ


「あら、何かしら、いい香りです事…」 スン スン


そこに現れたのは、緊急職員会議から少し中座して出て来た、4回生、「王金獅子クラス」の担任教師、【レイラ・ヴァン・クリシュナ】であった。


スンスン コツコツ 


「こっちの方ね… うん? あら……」 コツコツ スッ! ピタッ


レイラは女子寮棟の脇の空き地で、テントを貼り、焚き火とかまどの周りで1人、白銀髪の少女が髪を束ね、制服の上からエプロンをして料理をしている姿を見た。


「ふふ、可愛い娘ですね、手際もいいしこの香り…料理の腕も相当良いみたいね」 スンスン


アニスは見られているのに気づかず、料理を仕上げていった。


「できたあーッ! よし盛り付けてお終い!」 カチャカチャ スッ


テーブルの上にはコンソメたまごスープに野菜サラダと白パン、メインに作った肉料理、軽めの食前酒にオレンジの果実酒を注いで並べた。アニスは席に着き、ナイフとフォークを持った。


「ん、我ながら良い出来栄え、美味しそう!」 コクン


「本当美味しそう!コレはなんて料理なんですか?」


「ん、コレはねえ、肉料理『スペアリブ、甘辛煮』です」 えっへん


「まあ、聞いた事ない料理ですね、少しいただいても?」


「ん、どうぞどうぞ、今用意しま…す…から……え?…」 ピタッ


「うん?」 ニコ


「わああッ!」 ビクッ!


「はい?」 ニコニコ


「だ、だれッ?」 プルプル


「ここの教師ですよ」 ニコニコ


「え⁉︎ 先生ですか?…失礼しました」 ペコ


「良いんですよ、私の方が突然声をかけたのですから」 ニコ


「はい…(わああ、この人、誰かと雰囲気がそっくり。だれだっけ?)」


「私はレイラ、【レイラ・ヴァン・クリシュナ】、4回生の教師をしてます」 スッ


「あ、私はアニス、【アニス・フォン・ビクトリアス】、今日転入した3回生です」 スッ


アニスとレイラは女性貴族の挨拶、カーテシをお互いにした。


「貴女がアニスちゃんね、お噂は聞いてますよ」 ニコニコ


「ん? 噂? 誰だろ、レオンかなあ…」 ム?


「ふふ、いろんな方からですよ。それより、この料理、いただいても宜しくて?」 ニコ


「はい、準備します。少し待っててください」 コクン カチャカチャ


アニスはレイラの分をすぐに用意し、テーブルには2人分の料理が並んだ。


「まあ素敵、お外でこの様な高級レストラン並みのお食事ができるなんて、思ってもいませんでしたわ」


「高級かどうかはわかりませんが、どうぞ、お召し上がりください」 サッ


「ええ、ではいただきますわ」 スッ コク


レイラは食事作法どうり、スープから口にしていった。


「まあ!美味しい。この様なスープ初めてですわ」 コクン


「ん、よかった。 では私も、いただきま〜す」 スッ コクン


「ふふ(面白い娘ですね)」 スッ コク


「ん〜ッ! やっぱりスープはコンソメだね!」 ニコニコ


「コンソメ? このスープの名前ですか?」


「う〜ん、スープというより、その素かな?」 スッ コクン


「そうですか、では肉料理の方をいただきます」 カチャカチャ


レイラは、ナイフとフォークを持ち、メインディッシュの肉料理を食べ始めた。


スッ! パク


「ッ‼︎ 美味しい…お肉がこんなに柔らかく、そして程よい甘さと辛さ…こんな料理があったんですね」


レイラが驚くのも無理はなかった。この世界、肉料理は焼いても煮ても、ナイフとフォークで戦うが如くスジが多く、硬い食べ物だったからだ。それがアニスの肉料理は食事用ナイフが軽く入り、口の中でも優しく崩れて食べやすい、想定外の肉料理だったからだ。


「凄いわ、アニスちゃんって一流のシェフ以上ですね」 パクパク コクン


「えへへ、そんな事ないですよ」 ニコニコ パクパク モグモグ


「謙遜しなくても良いのですよ。(ほんと、可愛い娘ですね。アリーがこの娘を妹にしたのも頷けます)」 パク モクモク コクン


「んーッ! 美味しいッ!」 パクパク ングング ゴクン!


「ふふ、(こんな可愛い娘が、妹なんてアリーが羨ましいです。 こんな娘が実力的には『一個軍団並みに匹敵する』なんて思いませんね)」 ジッ…


「ん?」 パク…


「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてたものだから」 ニコ フリフリ


「ん!」コクン パクパク モグモグ コクン!


2人はその後も食事を続け、アニスが用意した肉料理は全てなくなってしまった。


コポコポコポ  スチャ


「食後の紅茶です、どうぞ」 カチャ


「あら、ありがとう…ん〜いい香りです。いい茶葉を使ってるのね」 スッ


「ん、今日のは『アールグレイ』、とても美味しいのを選びました」 


「ではいただくわね」 コク コクン


レイラは紅茶の味にも驚いた。今まで飲んだどの紅茶よりも美味しかったからだ。レイラは紅茶のカップを置きながら、アニスに問いかけた。


「ねえ、アニスちゃん」 カチャ


「ん?」 コク コクン


「貴女、私の妹にもならない?」 ニコ


「へ?」 カチャ


「ああ、別に『ビクトリアス』の姓を捨てろという事ではなくてよ、私の『クリシュナ』の姓も使わないかって事」 ふふ♡


「えっと…それは二重姓って事になって、皆んなが困惑しませんか?」


「ええ、だから普段は『ビクトリアス』の姓を、必要な時は私、『クリシュナ』の姓を名乗ると便利よ」 ニコ


「先生の姓ですか? いいのかなあ…」


「私が許可を出すんです。異議を唱える者などいません」 ニコニコ


「でもなあ…お姉ちゃんがなんて言うか…」


「あら、アリーなら大丈夫ですよ」 


「え⁉︎ アリー?」


「ええ、貴女のお姉さん、【アリエラ・フォン・ビクトリアス】は、私の従姉妹、あの娘の物は私の物、私の物はあの娘の物て言う付き合いなの、問題ないわ」 ニコニコ


「は…はは…(え〜⁉︎ 何だよそれ、聞いてないよ!)」 あはは…


コクコク カチャン


「でもねアニスちゃん、一度私とお手合わせしてもらいたいの」


「お手合わせ? 私の実力ですか?」


「ええ、そうよ。昼間のアレ、キャサリンの話では貴女がやったと聞いてますが?」


「昼間のアレ?…ああ、あの黒い硬いやつ!」


アニスは、昼間襲ってきた4本足の黒い暗殺型対人戦闘ドローンを思い出した。


「そう、でも私は直接見たわけではないの、だから私の姓を名乗るのに相応しいかどうか試させてもらいたいの、いいかしら?」 ニコニコ


「ん、(確かに、誰ともまだはっきりと分からない者に、そう簡単に姓など与えることなど出来ない。至極普通の判断だ)」 コクン


アニスはレイラの申し受けに応えた。


「では、アニスちゃんこちらへ」 スッ! コツコツコツ


「はい…」 テクテクテク


アニスはレイラの後をついていった。しばらく歩くとそこは4回生が使用する訓練所、室内訓練棟の入り口についた。


「ここなら誰の気兼ねなく、思う存分やれるわ。ついてきてね!」 ガチャッ! ゴウンッ!


レイラが専用の鍵を使い、訓練棟の鍵を開け中に入っていった。アニスもまた、レイラに続き中に入っていった。


キイッ! バアアアーーッ


訓練棟の中には通路がありさらにその奥に一つの扉があった。レイラはその扉に手を添えると、扉は光り輝き、開いていった。


コツコツ スッ パアアンン! ゴウンゴウンゴウン! ガシュンン!


「さあ、アニスちゃん、ここで見せてもらいます。貴女の実力を…」 サアアアアーッ


そこは広い、物凄く広い空間だった。建物の外見以上に広い空間、おそらく空間魔法系の処置で、中の空間を広げている様だった。


「ん、コレは凄い、こんなにも広い空間があったんだ」 ババッ


「ふふ、満足しましたか?」 ニコ


「ふむ、ここなら実力を見るのも十分な空間だね」 コクン


「では、早速見せていただきます」 スッ!


「ん、で、何が見たいのですか?」


「ではコレを…」 スチャ


「コレですか?」 スチャ


レイラはアニスに渡した物、それは訓練用ではなく本物の実戦用ライトニングセイバー、フォトンソードであった。


「コレ、実戦用ですけど…」


「ええ、そうです。でなければアニスちゃんの実力は測れません」 ニコ


「いいのですか?」 


「ええ、いいのですよ」 ニコ


「ん、では行きますッ!」 ザッ! チャキッ! ヴオン! ビシュウウウウーッ


「はい、きなさいッ!」 ギンッ! チャキッ! ヴオン! ビシュウウウウーッ


訓練棟の中にある広い訓練所、そこには今2人だけがおり、お互いに実戦用ライトセイバーを起動し対峙していた。


「「 いざッ! 」」 ババッ! タタタッ! バシュウイイインンーーッ!


ギイイインンッ!  バアアアーーーンンッ‼︎ ビュワアアアアーーーッ‼︎


その場に凄まじい突風と光、そしてフォトンソードのぶつかり合う轟音が響いていた。 





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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