第153話 アニス、侯爵令嬢になる
ー戦闘空母『フェリテス』艦内ー
ピ ピピ カチカチカチ タンタン ピコ ピッ
「艦長、地上残留の駆逐艦『ライデン』乗員、全員すべての回収作業終了。後部ハンガーデッキ閉鎖します」 ピッ
「ブレードナイト、第18中隊帰還、第一格納庫に収容」 ピッ ピピ
「よし! 『フェリテス』はこれより帝都に帰還! 艦回頭113度 機関最大!発進せよッ!」 ババッ!
「アイサーッ 艦回頭113度!左右舷側スラスター 1番3番 10番12番噴射ッ!」
ピッ タンタン ビコッ
カシュンッ! ババアアーーッ ゴゴゴゴゴ…. バシュンーッ、!
「艦回頭終了、機関最大! 進路0.00 マーク01 速度27ノット 目標地、帝都『アダム』固定」 ピピッ! ポン!
「発進 アイッ!」 ピコ グイッ!
バウウウウーーッ! ゴゴゴゴゴ シュワアアアアーーッ!
戦闘空母「フェリテス」は、スラスターを全開にして、帝都「アダム」に向け発進した。
「進路クリアー 問題なしッ!」 ピコ
「右舷第2遠方域、チャートNo.03 マークポイント4 グリーン23 友軍艦艇、捜索回収艦『ベルティー』 速度12ノットで巡航中 距離15000」 ポンポン ピピッ!
「周辺空域にストレンジャー無し! 巡航航行」 ピコ
「よし、副長」
「はッ!」
「少し席を外す、指揮を頼む」 スッ
「はッ! 了解しました」 サッ
「では頼む!」 サッ カツカツ プシュー
戦闘空母「フェリテス」艦長、アリエラ大佐は、艦の指揮を副長に任せ、ブリッジから出て行った。
カツカツ カツカツ ピッ プシュー ピピ プシュー ウイイイイー
ー「フェリテス」艦内 ブレードナイトデッキ ー
ガガガッ! プシュン プシュン! ピー ピー
「オーライ オーライ ストーップ!」 ガシュン!
「ようしッ! サービスハッチ開けろーッ!」 ガシャガシャッ! ガコンッ!
「甲板長ーッ! 38番機、整備入りますッ!」 ダダダッ!
「おうッ! 気合入れてやれッ!」 ガンガン! ゴオオン!
「了解ですッ!」 バンバン プシュン プシュン!
ガガガッ! ダンダンッ! ビュウンビュウン! ピピーッ!
戦闘空母「フェリテス」の艦内にあるブレードナイトデッキ、そこは巨大な空間であった。搭載機数を80機近くを誇るそこは、まさに巨人の世界であった。10数メートルもの機体が、自由に動ける空間である。だが、今そのデッキ内にはその半数ほどになっていた。 先の戦闘で、「フェリテス」は搭載ブレードナイトの約半数、37機を失っていた。(ブレードライナーの大半が脱出、生還、捜索回収艦に回収中である)
そんな喧騒のブレードナイトデッキの中を、1人の少女が歩いていた。
テクテクテク ピタッ!
「う〜ん、壮大だねここは」 ふむ
アニスは、「フェリテス」に救助回収された後、今、自由気ままに、艦内を見て歩いていた。
「ん? アレは… アウディじゃないか、アイツ、なにやってんだ?」 テクテク
アニスはハンガーデッキに収まり、整備中のブレードナイト「アウシュレッザD型FARアウディ」を見つけ、その側に近寄って行った。
キュウインッ! ピ ピッ! ダダダッ! プシュンプシュンッ! テクテク
「お〜い、アウディ、なにやってるの?」 コンコン
アニスは「アウディ」の足を軽く叩き尋ねた。
ヴオンッ! ピッ ピッ ピッ ウイン!
『Rog、アニス、貴女はここにいて良いんですか?』 ピッ
「ん、なんで?」 ヨッ! よいしょ よいしょ ヨジヨジ よッ!
アニスはアウディによじ登り、彼の肩のとこまでやってきて腰掛けた。
『Lst、救助回収された全員が、この艦の第一会議室に集まってますよ』 ピッ
「ん、そうなの? でもいいや、私は貴方と話がしたい」 ニコ
『Lst、私とですか?』 ピッ
「ん!」 コクン
『Lst、一体どんな話ですか?』 ピッ
「貴方は人型になれるのに、なぜしないのかなっと思って」
『Lst、そんな事ですか』 ピッ
「訳でもあるの?」
『Rog、はい、ありますよ』 ピッ
「で、その訳ってなに?」 コテ
『Lst、アニス、これは貴女と私だけのという事でよろしいですか?』 ピッ
「ん!」 コクン
『Rog、では話しましょう、確かに私は今でも人の姿になれます』 ピッ
「ふむふむ」
『Lst、しかし、その機能を持っているのは、この世界では私だけになってしまいました』 ピッ
「あッ そうか、同じ能力を持っていた『シュバルツライザー』のジェシーと『ノイ・バルゲイド』のルイは、元の体に戻ったから今は『アウディ』だけなんだ」
『Rog、そういう事です。この能力を持った私達はあまりにも危険な存在となりました。人の姿で敵地に侵入し、いきなり巨大なブレードナイトになる、敵軍としては驚異そのものなんです…
それが今、私だけになった事でその驚異度と希少性、重要性はさらに増しました。そこで私はジェシー達と同様に、『人型になれなくなった』と言う事にしていまに至ります。私は目立たないほうが良いと判断、このボディーのままでいるんです』 ピッ
「そっか…アウディごめんね…本当は私は…」
『Rog、わかってますよアニス、貴女は私を兵器としてではなく、友人として創造、再生してくれた事を、友達が欲しかったんですよね。『有限である人の友達ではなく、自分と同じ無限の、いつまでも一緒にいられる友達』を…』 ピッ
「………」 コクン
『Lst、しかしアニス、このボディーでさえ貴女の無限にはほど遠いのです。が、このボディーが朽ちるまで、私は貴女の友達でいますよ』 ピッ
「ありがとう……ねえアウディ…」 スリ…
『Lst、なんですかアニス?』 ピッ
「ジェシー達がいなくなって、寂しくない?」
『Rog、私がですか?』 ピッ
「ん、」 コクン
『Lst、アニス、あなたは優しいですね。大丈夫ですよ、今は私もパートナーができましたから』 ピッ
「パートナー?」
『Rog、あなたの好きな【レオハルト・ウォーカー】中佐です』 ピッ
「ッ!」 カアッ!
『Rog、アニス、大丈夫ですよ。彼も貴女には特別な感情を持ってます』 ピッ
「そ、そっか…レオンがね…」
『Lst、アニス、私から一つ質問があるのですがよろしいですか?』 ピッ
「質問? 私に? いいけどなに?」 うん?
『Rog、アニス、貴女の仕草と喋り方が少女のようになったのは何故ですか?』 ピッ
「はい?」
『Lst、随分と女の子らしくなってます』 ピッ
「ん、これねえ〜…へん?」
『Lst、よく似合ってると思いますよ、その方が自然体で可愛いです』 ピッ
「そっか…まあ、コレは女神ダイアナの助言で、この仕様にしたんだ。なんか感情もそんな気がする」
『Rog、レオハルト中佐の事も、そのせいなのですか?』 ピッ
「レオンか…」
『Lst、アニス?』 ピッ
「ねえアウディ、私から頼みがあるんだけどいいかな?」
『Rog、アニス、貴女の頼み、断る理由はありません。どうぞ』 ピッ
「レオンを…レオハルト中佐を守ってあげてくれないかな?」
『Rog、了解しました。私アウディは、アニスの命により、レオハルト・ウォーカー中佐を守ります』 ピッ
「ん、アウディ… ありがとう!」 バッ!
アニスはアウディの頭に抱きついた。 その時、艦内放送が入る。
ポンッ!
『アニス大尉、アニス大尉、至急第一会議室へ! 繰り返します。 アニス…』
「ん、呼び出しか…行かなきゃいけないかな…」 う〜ん
『Rog、アニス、行ってきなさい。私は大丈夫ですから』 ピッ
「は〜…ん、わかったッ! アウディ、行ってくるね」 バッ! スタンッ! テクテク
アニスはアウディの肩から飛び降り、ブリッジ下にある第一会議室に歩いて行った。
『Lst、アニス…気づいてますか? 私も貴女の事が好きなんですよ…』 ピッ シュウウンン…
アニスがブレードナイトハンガーデッキから姿が見えなくなったところで、アウディは一言そう言って、電源を落とした。
ー戦闘空母「フェリテス」 第一会議室ー
トントン カチャ!
「入ります」 テクテク
アニスが第一会議室の扉を叩いて中に入ると、そこには3人の人物がいた。
「(あれ? 3人しかいないじゃないか)」 パタン
「おお! アニス大尉、やっときたか」
「アニスッ! どこ行ってたんだよ!ずっと待ってたんだぜ!」
グレイとレオハルトの両中佐が、入ってきたアニスを見て声を上げた。
「ん、待っていた? 私がいないとダメだったか?」
「当たり前だろッ! 今回、1番の功労者だからな!」
「ん?私が功労者? 何かしたかなあ」 はて…
「自覚なしかいッ! 全くお前ってやつは…」 はあ〜…
「ふふ! 貴女がアニスちゃんね!お噂はグレイとレオン君から聞いてるわ」 ニコ
第一会議室の1番の上座、そこには、赤いロングヘアの髪を色っぽくかき分け、アニスをジッと見つめる戦闘空母「フェリテス」艦長、【アリエラ・フォン・ビクトリアス】大佐が座っていた。
「アニスです(レオン君?)」 ペコ
「私は当艦、戦闘空母『フェリテス』艦長【アリエラ・フォン・ビクトリアス】大佐です。よろしくねアニス大尉」 ニコ
「ん、こちらこそよろしく」 ニコ
「あら、随分と可愛い子なのね。レオン君、どこで知り合ったの?」 ジロ
「えッ! いや…そのう…なんだ、彼女とはたまたま出会って…」 アセアセ
「うん? たまたま? いつ?」 ニコニコ
「なんだ、レオンらしくないぞ!はっきり言ったらどうだ!『任務中に出逢いました』って」 ニイッ
「なッ! グレイッ! おまッ… え…」 ゾクッ…
アニスとの出会いを、グレイ中佐が冗談気味に『出逢い』と言い、レオハルト中佐をからかった時、レオハルト中佐は嫌な悪寒を感じ、その方向を見た。
「レオン君…」 ゴゴゴ
「わああッ! アリー姉ッ!」 ババッ!
そこには、艦長のアリエラ大佐が、レオハルト中佐を鋭い目つきで見ていた。
「任務中に何やってんのッ!」 ガアッ!
「ち、違うッ!違うッ! アリー姉聞いてくれッ!」 オタオタ
「何が違うのッ! 現にここにアニス大尉がいるじゃないッ!」 ガアッ!
「いや、だからそれが…」 ビクビク
「言い訳しないッ!」 ガアッ!
「ひいいッ! ごめんなさいッ!」 バッ!
「全く、任務中に女の子をナンパするなんて、それも大尉? 職権濫用よッ!」 ふん!
「いや、落ち着けアリエラ、彼女は大尉ではないんだ」 まあまあ
「うん? どう言う事よグレイッ!」
「いや、彼女…アニスは軍人じゃあない!」
「え? じゃあ大尉ってのはなに?」
「俺が貸した軍服が大尉のものでな、艦内を歩くときに着てもらったら、そのまま大尉って事になってしまったんだ」
「なにそれ、じゃあ、アニス大尉は…」
「普通の女の子、貴族でも軍人でもない」
「ちょっと待って、軍人でもないってのは分かるわ、でも、この容姿で貴族じゃないって嘘でしょ!」
「お前もそう思うかアリエラ、俺もそう思う。だが正真正銘、アニスは貴族でもない」
「そう……ねえアニス…ちゃん?」 スッ
「ん、なんですか?」
カツカツカツ ピタッ
アリエラは席を立ち、アニスの前までやって来て、アニスを見つめた。
「………」 ジ〜…
「え…えっと…なにか…な?」 ビク!
「うんッ! 合格ッ!」 ガシッ ギュウーッ!
「うぎゃッ⁉︎ 胸がッ! 胸があああッ! ムグッ!」 ギュウウッ!
アリエラは突然、アニスに「合格」と言った途端、彼女を自分の胸に押し付けるように抱き寄せた。
「ア、アリー姉ッ!」 ババッ!
「はあ〜、アリエラの目に止まったか…」 やれやれ
「レオン君、この娘ちょうだいッ! 私が面倒見るからッ!」 ギュウ!
「はあ⁉︎ なに言ってんだよアリー姉ッ! そんなのダメだッ!」 バッ!
「あら、私に逆らうの?」 ふふん
「いや…逆らうんじゃなくて…その、アニスは…俺の…」 もごもご…
「うん? アニスは俺のなあに?」 うふふ
「あ…あのう…」 モゴ!
「あん! あッ ごめんね、苦しかった?」 ニコ ナデナデ
「いえ、その、大佐は一体何を…?」
「うん、私ね、貴女のような妹が欲しかったの!」 ふふ
「へ? 妹ッ!」
「アリー姉ッ!」
「はあ〜…やっぱり…」 やれやれ
「もうッ! 決めたッ! 絶対に離さないから♡」 ギュウ
「ひゃあッ! グッ グレイッ! どう言う事ですか⁉︎」 ギュウウッ!
「ああ、アリエラはな【ビクトリアス】侯爵家、最後の1人でな、前から家族を、兄弟姉妹を欲しがってたんだ」
「最後の1人…」 ギュウ ナデナデ
「それで、自分で家族、兄弟姉妹を作ろうとしてたんだが、アリエラが自分基準に選ぶもんだから、誰もその候補にいなかったんだ、だが3年ほど前にやっと1人、レオハルトを弟として認めたんだ」
「ああ、それで『アリー姉』なんですね」 ギュウギュウ
「ああ、そう言うこと。まあ、俺もその時は1人だったし若かったからな、アリー姉の提案を受け入れたんだ」
「うん、可愛い可愛い♡ 柔らかいし髪も綺麗! やっぱり女の子よねえ」 ナデナデ
「あのう、アリエラ…」
「お姉ちゃんッ!」
「えッ⁉︎」
「私の事はお姉ちゃんッて呼んでね、アニスちゃん」 ニコニコ
「は…はい、お…お姉ちゃん…?」 オドオド
「きゃあー♡ 可愛いいッ! もう私のモンだからねッ!」 ギュウギュウウッ!
「うぎゃッ!」 ギュウーッ!
アリエラは満面お笑みを浮かべアニスに抱きついた。
「おいッ!アリエラ、いい加減にせんとアニスが潰れるぞ」
「そうだよ!アリー姉ッ! それに話があるんだろ!」
「えー、まあいいわ、アニスちゃんに色々聞きたいし、やってもらいたい事があるからね」 グッ
「やってもらいたい事? アリー姉、あまり無茶はダメだぜ」
「分かってるわよ、ちゃんと順を追って話すから一度座って」 サッ
グレイ中佐以外は席を立っていたので一度皆、椅子に座った。主計兵に飲み物を配らせ、一同は一息ついてから話を開始した。
コクン カチャ スッ
「さて、一息ついた所で本題に入りたい」 ギン
アリエラ大佐は、先程とは打って変わって真面目な顔つきになり話し始めた。
「今から話し合うことは口外厳禁、この4人の中での事での話だ、全員いいわね?」
「「うむ」」 コクン
グレイ中佐とレオハルト中佐はうなづいた。 が…
「なんで?」 うん?
「いいわねッ‼︎」 ギロッ!
「ん、うん! お姉ちゃん」コクン
「はうッ! コレがいいの♡」 ニコ
アニスは、アリエラの勢いにうなづいた。アリエラもまた、アニスの返事に感動していた。
「じゃあ、まず第一がアニスちゃん、貴女に宮廷に招くように連絡が来てるの、どうする?」
「なんで私が宮廷に?」
「まあ、宮廷と言っても宮廷内にある、神殿の方だね。そこの最高司祭殿が呼んでるらしい」
「行きません」 フリフリ
「よしッ!」 グッ
「即答だな! いいのか? 宮廷だぞ宮廷、滅多に入れないんだぞ」
アニスの即答に、レオハルトはガッツポーズをとり、グレイは勿体ないと言う素振りをしていた。
「ん、いい、興味ない」 フリフリ
「いい判断力ね、いいわ、それは本人の意向で却下。じゃあ次ね」 スッ
アリエラ大佐は次の話をした。
「じゃあ第二は、軍部から」
「軍部?いつもダンマリの奴らが何を言ってきたんだ?」
「また面倒な事を言ってんじゃねえのか?」
「グレイ正解、要は『アニス大尉を軍部によこせ』、と言う事だけどその命令の出所がねえ…」
「ん、何か良くないのですか?」
「国防軍、情報局からなのよ」 ふう〜
「「 情報局だとおッ! 」」 ババッ!
「ん?」
「絶対ダメだッ! そんな所にアニスを行かせるわけにはいかないッ!」 グッ
「私も同意見だッ! 奴らは人を人とも思っておらん非道組織だッ! 絶対行っちゃいかんぞ」 グッ
「ん、2人がそう言うならそれも、やめと言う事で」 フリフリ
「その方がいいわ」
「でもなんで情報局が出てきたんだ?」
「アラン少尉達のせいよ!」
「アラン少尉達?」
「そう…今、我が軍話題の4人、『新星のごとく現れたトップライナー』、で、『彼ら4人は皆アニスちゃんに訓練を受けた者達である』という事で、軍部、特に情報部がその仔細を聞きたがっているのよ」
「アラン達を訓練した? 確かに奴らはずば抜けて凄いが、アニスがそうしたのか?」
「ん、訓練はしてあげたね」
「そんなに凄いのか?」
「ええ、彼ら4人はつい最近まで帝都学院の生徒、ライナー素質はまだ未確定の生徒達ばかりだったわ」
「それが最近になって伸びて、トップライナーになったと?」
「いいえ、最近じゃないわグレイ、ブレードナイトに初搭乗していきなりよ。いきなり4人で軽空母 1 撃沈、 撃破撃墜敵ブレードナイト50 コレは異常だわ」
「なるほど、軍部、情報部はアニスに『彼らをどう訓練したか』と聞きたいのだろ」
「ええ、そうよ。どう鍛え上げたのか聞きたいみたいね」
「それで、軍部がよこせと言うわけか…」
「ん、やはり行きません」 フリフリ
「そうね、貴女が軍人なら命令には背けないけど、そうで無いのなら、この命令は無視してもいいわ。ただ…」
「どうしたんだアリー姉?」
「ああ、そう言うことか」
「ん、グレイは何か分かるのですか?」
「あ、ああ….あまり良いことじゃないが、軍人でなければ奴らは、情報局の者どもは強硬手段に出る」
「と言うと?」
「アニス、お前さんを拉致しに来るだろうな」
「え⁉︎ 私を攫いにくると言うのですか?」
「アイツらならやりかねないわね。軍人でも貴族でもない。ましてやこの帝国の国民でもないのなら尚更ね」
「そうですか…」
「そんな事はさせんッ! アニスッ!俺が守ってやるからなッ!」 ババッ!
レオハルトはアニスにそう言い放った。
「ありがとう、レオン… だけど…」
「アニスちゃんの思ってるとうりよ。奴らは手段を選ばない」
「どう言う事だアリー姉」
「簡単な事よ、レオン君、貴方に任務を与え、アニスちゃんから遠ざけるのくらいの事、奴らにとっては簡単な事よ。その間にアニスちゃんを拉致、攫うなんて日常茶飯事じゃない」
「じゃ、じゃあどうすれば…」 グッ
「そこで提案」
「「「 うん? 」」」
「アニスちゃんが私の妹になればいいの!つまり、侯爵令嬢ともなれば、奴らも簡単には手を出せないわ。しかも、私の妹よ、手を出したらこの私が『フェリテス』で突っ込んでやる」 ふふふ
「はは…(わあ〜凄いって、本当にやっちゃいそうだよこの人)」
「なるほど、侯爵家令嬢か…悪くないな」
「え、でもそれじゃあ俺とはなかなか会えないじゃないか」
「レオン君、君は軍人なんだよ。でも大丈夫、ちゃと合わせてあげるから」 ニコ
「本当かよ!」
「あらあ、私が嘘をつくとでも?」
「いえ、仰せのままに…」 ペコ
「いいんですか? 私が… お姉ちゃんの家名をいただいても?」
「いいのよお! アニスちゃんは気にしなくていいの! 全部お姉ちゃんがやっておくから」 ニコニコ ナデナデ
「では、よろしくお願いします」
「ほう、ではアニスは【アニス・フォン・ビクトリアス】となるのか?」
「そう言うことね、あ、あと、帝都学園に入学してほしいの」
「学生ですか?」
「そう、実はやってもらいたい事というのが、その帝都学園内での事なの!」
「ん? 詳しく話してもらえますか、お姉ちゃん」 ニコ
アニスはアリエラの、アニスを自分の身内にする本当の目的を話し始めた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回も出来次第投稿します。