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第150話 アニスと夕食、野営談義

ーアトランティア帝国 国境周辺 森林地区ー


アニスと駆逐艦「ライデン」艦長グレイ少佐達は、回収部隊の回収艇が来るまでその場所で待機をしていた。やがて、日は傾き始め、空を赤く染め始めた。


タタタ ザッ!


「艦長、回収部隊より通信、『本日の回収作業は終了、明日0600時より再開予定、現地で待機されたし』だそうです」


「うむ、了解した。全員、聞いてのとうりだ! 明日0600時から回収作業再開になった。我々は此処で一晩野営をする準備してくれ」


「「「「「 了解ッ! 」」」」」 ザッ! ダダダ


「と言うわけで、アニス大尉もいいかな?」


「はい、仕方ありませんよね、わたしも手伝います」


グレイ艦長の指示の元、皆が野営の準備に動き出した。寝床となる場所は脱出艇の中でも良いが、夕食となると外で作るしかなく、男性兵士はかまどを作る石と焚き木を集め始めた。女性兵士は夕食の準備という事で、脱出艇から緊急用食糧を取りに来ていた。


「よッと、う〜んまたこれかあ…」 ゴソゴソ ガサッ ふう〜


「あはッ マリーそれ好きじゃないもんねえ」 ふふ


「あッでも私もそれ好きじゃないですよ」 ウンウン


今回残っていた者の中に女性兵士は3人で、整備長の【マリー曹長】、整備士、【クレア軍曹】【サラ軍曹】の3人だった。彼女達はお幼馴染で、人目のない所では、階級差なしの付き合いをしていた。


「でもマリー、アニス大尉って本当に綺麗で可愛い娘ね」 ガタガタ


「そうそう、あの綺麗な銀髪、透き通るような肌、スタイルもいいし笑顔が可愛い、素敵よね」 ゴソゴソ


「そうなのッ! アニス大尉、いやアニス様は私にとって女神様なのッ!」 グッ


「(ちょっとちょっとクレアッ!)」 ヒソヒソ


「(何よッ!今忙しいのに)」 ヒソヒソ


「(マリー、いったいどうしちゃったの⁉︎)」 ヒソヒソ


「(ああ、あれね、何でもアニス大尉に一目惚れしちゃった見たいよ)」 ヒソヒソ


「(えーッ! ウソッ‼︎ まじッ⁉︎)」 ヒソヒソ


「(まじッ!)」 ヒソヒソ


「うん⁉︎ あなた達何か言った?」 クルッ!


「「 いえいえッ! 何にも言ってませんッ! 」」 ブンブン


「さあ急ぎましょッ! 味はともかく人数分は充分にあるから」 サッ!


「「 はいッ! 」」 タタタ


3人は非常常備食を抱え、皆のいるところへ運んでいった。


「ようし、火を焚いて食事の準備だ! マリー曹長持ってきたかな?」


「はい艦長、人数分以上、ありましたから大丈夫ですよ」


「うむ、じゃあ早速作るか」


グレイ艦長達は、火を起こし、大鍋で湯を沸かしたら、女性兵士達は持って来た非常常備食の袋を開け、中身を沸かした湯の中へ投じ、それを温め始めた。 いわゆるレトルト食品というものであった。


「ん、これは何ですか?」 グツグツ ボコボコ


アニスは湯の中に投じた食品パックを見て、それを湯の沸いた鍋をかき混ぜていたクレア軍曹に尋ねた。


「あら、アニス大尉はコレ、初めてだったかしら。見たことない?」 


「はい、ないですね。コレはなんですか?」 ジ〜 ボコボコ


「コレは、帝国軍正式野戦緊急常備食、まあ非常食ですね」 ニコ


「コレがごはんですか…」 グツグツ ブクブク


鍋の中に、人数分のレトルトパックが踊っていた。


「よし温まったね、サラ、準備はいい?」


「ええ、お皿はオッケーよッ!」


「じゃあいくよッ!」 プチッ ドババッ! ドロ〜


サラ軍曹の用意したお皿に、クレア軍曹は温まったレトルトの封を開け出していった。


「さあ、アニス大尉、みんなに配ってくれますか?」


「はい!(って、なんだこれ? あまり美味しそうに見えないね…)」


アニスは皿に入ったレトルト食品を、脱出艇前に焚き火を作り、その周りに集まっていたグレイ艦長達に配り出した。


本日の夕食メニューは、棒状の栄養補助食品各2本、皿に入ったレトルト食品とコーヒーという物だった。食事をもらった者から適当に座り始めた。全員に夕食が配られたのを見て、グレイ艦長が声をかけた。


「では、皆いただこうか」


「「「「 はッ! いただきますッ! 」」」」 バクバク カチャカチャ


グレイ艦長の声かけで、兵士達は皆、黙々とそれを口に運んで食べていった。まるで義務の様に…だが、アニスは違った。


ぱく…………… もぐ……もぐもぐ……. カチャ……コクン…


「…………うッ!」 グッ


「アニス大尉、どうしました? やはり…お口に合いませんでしたか?」


「……が、しない…」 プルプル


「は? 今何と…」


「うう…味がしないよお〜」 プルプル え〜ん


そう、アニスの言う通り、レトルト食品の中身は味のないシチューのような物だった。アニスは涙目でマリー曹長に訴えた。そんなアニスを、グレイ艦長以下全員が食事の手を止めアニスを見た。


「ああ、で、でもほら、栄養価はしっかりと有りますから!」


「うぐぐッ!」 プルプル


「アニス大尉?」


「コレは食事にいや、神に対する冒涜だッ!」 ググッ!


「へ? い、いやいやそんな大袈裟な…」


ガバアッ! ザッ! バサッ キュッ!


アニスはその場で立ち上がり、手早く白銀髪の髪を束ねポニーテイルを作った。


「「「 アニス様⁉︎(大尉)⁉︎ 」」」


「私が作るッ!」 テクテク ファサア〜 ザッ!


アニスは歩きながら異空間よりエプロンを出し、それを着け、かまどに向かった。


「アニス大尉が作る?出来るのか⁉︎」


「グレイッ!、コレではダメですよッ! 私に任せなさい!」 グッ!


「え!あ、うん」 コクン


「なッ!艦長を呼び捨てだぜッ!」 ヒソヒソ


「アニス大尉、すげええ!」 ヒソヒソ


「あ、でも俺、アニス大尉ならアリかも」 ヒソヒソ


ヴアンッ! ダンダンドンッ!


兵士達がそんな話をしている中、アニスは異空間から調理台と食材を取り出した。


「ええーッ! なにアレ!なにアレ!」 バッ!


「うおおおッ! 肉だッ! 肉があるぞッ!」


「ア、アニス大尉ッ⁉︎」


「大尉って、収納魔法持ち⁉」


「おいそれって、特級重要人物じゃなかったか?」


「確かそのはずだッ!王族お抱えのごく少数人物だよ!」


グレイ艦長以下、その場にいた全員が驚いた。何も無いかまどだけの場所に、アニスが大きな調理台と大きな肉の塊と野菜、果物を取り出したからだ。


「アニス様ッ!コレはいったい…」


「ん、マリー、今から私が夕食を作ってあげるからちょっと待っててね。それとその様ッ! いらない!」


「で、でも…」


「マリーとは友達だよ、アニスでいいよ、だから、ね!」


「で、では…アニス…ちゃん…?」


「ん、それでいいよ」 ニコ


「はいッ!アニスちゃんッ!」ギュッ!


「「ああーッ! マリーだけずるいッ!」」 ババッ!


「ん、じゃあみんなもそう呼んでね」 ニコ


「「 いいの⁉︎ やったーッ! 」」 タタッ! ギュッ!


「わあッ! って、じゃあさっさと作っちゃうね!」 


「「「 はいッ!」」」


アニスは出した食材を手際良く調理し始めた。男性兵士はそのポニーテールとエプロン姿に見惚れ、女性兵士はアニスの手際と調理の仕方に見入っていた。


トントン サクサク ジュウウウーッ! ザクザク ジャッ ジャッ!


野菜のオニーを細かく刻み、飴色になりまで炒めた後肉をサイコロサイズに切り一緒に炒め、そこにざく切りにした野菜のニジンとカルトを放り込み、水を足す。ブクブクとじっくりと湯掻きそこへ、灰汁を取った後、ターメリック、コリアンダー、ペッパーを投入、よくかき混ぜ、少し火から離し、コトコト煮込む、その間に、タリネを大量に炊く。


「わあ!アニスちゃんすごい」


「本当、ねえアニスちゃん、何か手伝うことない?」


「ん、じゃあ、この野菜、手で千切ってこの大皿に入れて、コレかけて混ぜてくれるかな?」


アニスはキャベとレッター、オニーと言うこの世界の野菜と筒に入った液体を渡した。


「野菜はわかるけど、コレなあに?」 ヒョイ


クレア軍曹がアニスから渡された筒を持って尋ねてきた。


「ああ、それは私が作ったドレッシング、ちぎった野菜にかけて食べると美味しいよ」


「「「 えッ! 野菜を生のまま食べるのッ⁉︎ 」」」 ザワッ!


マリー達3人は驚いた。どうやらこの世界の人たちは野菜を生で食べる習慣がなかったらしい。アニスの出した野菜は、全て清潔で何の問題もないが、この世界の野菜はとても生では、と言うものばかりだったからだ。


「ん、大丈夫だよ、心配ないからね」 コトコト パカッ!


アニスがかまどで煮込んでいた鍋の蓋を取り、中身をおたまでゆっくりとかき混ぜた。その時、辺りにアニスの作った料理の良い香りが充満した。本当はじっくり煮込む料理なのだが、今回は鍋に圧力を掛け、時間短縮をした。


「な、なんかすごくいい匂いがするぜ!」


「ああ、さっき食ったばっかりなのに、なんか腹が減ってきた」


「ふむ、アニス大尉は料理も完璧か? レオンのやつが羨ましいな!」


「わああッ! いい香りッ!」


「うん、すごくお腹が減ってきた!早く食べたいって感じ」


グレイ艦長達はアニスの作る料理の香りを嗅ぎ、騒ぎ始めた。


コトコト コトコト プクプク  ジュウウウーッ! パッ パカッ!


「よしこっちはよく煮込めたね、ご飯は…よし炊けた炊けた」 ニコ


「わああッ!凄い色ッ! でも美味しそう!」 コトコト プクプク


「本当、アニスちゃん、コレなんて言う料理なんですか?」


「ん、コレはね、野営で食べる定番食!「カレーライス」ですッ!」


「「「「「 カレーライス? 」」」」」


「え⁉︎ カレーライス… 知らない?」


「「「「「 知りません! 」」」」」 ブンブン!


「はは…まあ、試食のつもりで食べてみてください」 カチャ モリ トロ〜 サッ!


アニスはさらにタリネを焚いたごはんを乗せ、できたカレーを注ぎ、グレイ艦長に渡した。その後、皆にも同様にわたし、カレーライスの試食会が始まった。


「凄い色だな!だが食欲をそそるいい匂いだ…まあ、アニス大尉が作ってくれたんだ、さあ、頂こうじゃないか」


「「「「「 はい、いただきますッ! 」」」」」 カチャ パクッ!


「「「「「 ッ‼︎ うまいッ!(美味しいッ!) 」」」」」 ザワッ!


かちゃかちゃかちゃ! バクバク パクパク もぐもぐ ゴクン!


「アニスちゃんッ! コレすごく美味しいよ!」 パクパク


「本当…コレ…はすごく…うまい…くせになる」 バクバク ゴクン バク!


「おお、コレは見た目と違って美味いな!凄いじゃないか大尉ッ!」 バクッ!


「ア、アニス大尉殿!」


「ん?」 クルッ! 


「おかわりをしても良いでしょうか?」


1人の男性兵士が、もう一皿食べてしまった様で、恐る恐るアニスに聞いてきた。


「ん、いいですよ、遠慮は入りません」 ニコ


そう言って、アニスはその男性兵士から空になった皿を受け取り、おかわりをよそい、渡した。それを機に、ほとんどの者がおかわりを要求し、アニスの作ったカレーライスは皆の腹の中に収まっていった。野菜サラダの方も最初は抵抗があったものの、カレーライスの辛さからサラダを口にし、あっという間に皆それも平らげた。

          ・

          ・

食事が終わった後、皆は想い想いの場所でコーヒーを片手に休憩をとっていた。辺りはすっかり暗くなり焚き火とかまどの火の灯りだけが、あたりを照らしていた。


ザッ ザッ ザッ


「いやあ、美味しかったよアニス大尉」


「グレイ艦長、気に入って頂きありがとうございます」 カチャカチャ ペコ


「いやいや、こんな所であんなに美味しい夕食が取れたんだ、礼を言うのは我々の方だよ」 ニコ


アニスが食事の後片付けをしていると、艦長のグレイ少佐が話しかけてきた。


カチャカチャ ふきふき、キュ!


「ん、コレでよしッ!」 シュン!


洗った食器や調理器技類を異空間に仕舞ったのを見て、再びグレイが口を開いた。


「アニス大尉」


「はい、何ですかグレイ艦長」


「少し話がある、ちょっといいかな?」


「ん〜…」 ジッ!


アニスはマリー達の方を見た。彼女達から片付けの後、誘われていたからだった。


「アニスちゃん、私達は先に寝床作っておくから後でいいよ」 フリフリ


「ん、じゃあお願い、後で行きます」 ペコ


「すまんな、マリー曹長」


「グレイ艦長、アニスちゃんに変なことしないでくださいよ!」


「はあ? しないしない、だいいちアニス大尉はレオンの、レオハルト少佐の恋人だぞ!そんな事するわけ無いだろ!」


「「「 えええーッ⁉︎ 」」」 ババッ!


「へ⁉︎ はああッ⁉︎ 」 ポッ!


マリー達3人は驚き、アニスは顔を赤くしてグレイ艦長を見た。


「なになになに、アニスちゃんって恋人がいたの⁉︎」


「それよりもあのレオハルト少佐よッ! 似合いのカップルじゃない! 素敵すぎる!」


「そ、そんな…わたしのアニスちゃんに恋人がいただなんて…」


1人を除い女性達は興奮気味だった。


「グレイッ! わたしはレオンとはそんな関係じゃ…」


「でも嫌じゃないだろ?」 うん?


「いや、それは…その〜…」 カアア


顔を赤らめ、返事に困っていると、アニスの肩に手がかかり、振り返るとマリー曹長ほか、女性兵士達が満面の笑みを浮かべ話しかけてきた。


「アニスちゃん、グレイ艦長との話の後、私たちもお話があります」


「へ⁉︎、いや…あの…」


「「「 今夜は楽しい夜になりそうね♡ 」」」


「 ヒッ! 」 ブルッ!


アニスは女性陣の目が笑っていない笑顔を見て何時ぞやの悪寒が走った。


「おお、それじゃあ手短に話そう、こっちにきてくれ」 ザッ!


「は、はい〜…」 テクテク


「「「 アニスちゃん! 待ってるねえ〜 」」」 フリフリ


アニスはマリー達に見送れながら、グレイ艦長の後に続いた。


ザッ ザッ ザッ テクテク テクテク


焚き火脇のターフを貼った場所に2人はやってきた、そこにはもう1人おり、副官の【アイザック大尉】がそこにはいた。


「ああ、彼は『アイザック大尉』、私の副官だ!」


「【アイザック・フォン・ニュウア】大尉ですアニス大尉」 サッ!


「はい、アニスです大尉さん」 ペコ


「さあ、そこに座ってくれ」 サッ!


アニスは促されて、用意してあった椅子に腰掛けた。


「大尉殿、どうぞ」 カチャ


アニスが座ると、男性兵士がコーヒーを出してくれた。


「ありがとうございます」 ニコ


「ッ! し、失礼しますッ!」 サッ! クルッ タタタ


男性兵士は、アニスにコーヒーを渡すと顔を赤くして、慌てて駆け出して行った。


「こりゃ男はみんなアニス大尉に惚れてしまうなぁ」


「ははは、そうですね艦長」


「え⁉︎(何でだ?そういえば最近なんか変だ、何だろ?)」


「まあ、その話は別にして、飲みながら話そうか」 サッ


「はい、ではいただきます」 コク


アニスはコーヒーを一口飲んだ。少し苦味がきつかったが、飲めないほどではなかった。


「ふう〜、うまい、さて、話なんだが」 ゴク カチャ


「はい、何でしょう」 コク


「アニス大尉、きみのお陰で皇太子殿下以下、攫われた生徒達は皆無事だった。心から礼を言う」 ペコ


グレイ艦長がそう言い、頭を下げると、副官のアイザック大尉も一緒になって頭を下げた。


「そうですか、帝都に帰り着いたんですね」


「ああ、20名全員な、それでアニス大尉に帝都王宮からの呼び出しが出ている」 ゴクン


「私がですか…」 コク カチャ


「そうだ…君が『ライデン』を出た後、レオハルト少佐の報告があってな、『アニスが皇太子殿下以下全員を救出、帝都に搬送中』と言う通信が戦場中を飛びかったんだ」 ゴク


「レオンがそんな事を…でもそれは当然の事で王宮に呼び出される程の事でしょうか?」


「まあ、他にも理由はある」ゴクン カチャ


「他ですか?」


「ああ、今回、こんなにも大きな艦隊戦やブレードナイト戦があったにもかかわらず、両軍とも艦船やブレードナイトの消耗はあっても、戦死者がほとんど無かったからだ」


「戦死者がほとんどなかった…(ああ、『スピリット.コレクトスフィア』でのヤツか)」


「そうだ、どんなに酷い攻撃を受けても、皆助かってる。不思議でしょうがないのだ」


「はは、よかったじゃないですか、皆無事で…」


「いや、それが良くない」


「へ? 何故ですか?」


「宮廷の聖職者達が騒いでな、『コレは神の身技である。そのアニスという少女は神の御使様かもしれない。早急にここにお招き申し上げるのだ』って言う命令が出されたんだ」


「うわあ〜、なんか面倒事ですね」


「ああ、面倒事だ! それでアニス大尉、君を見つけ次第宮廷に連れて来いと言う話だが、どうする?」


「私どもとしては軍人ですので命令に逆らえません。アニス大尉も軍人ですのでコレを無視するわけには…」


「ん⁉︎ 私、軍人じゃあないですよ」 


「「 え⁉︎  」」


「いや、今だってこの私服ですし、階級章もありませんよ」


「あああーッ! そうだったああーッ!」 ガシッ!


「艦長?」


グレイ艦長は何かを思い出し、急に叫び頭を両手で抱えた。


「思い出しました?」


「そうだ、アニス大尉、じゃないアニスはただのアニスだ!大尉でも何でもない!」


「はあ⁉︎ 艦長、それ本当ですか?」


「ああ、艦内を歩き回るのに、たまたま特務大尉の制服があってな、アニスに着てもらったんだ。すっかり忘れてたよ」


「ん、だから私は宮廷には行かないって言う事でお願いします」 ペコ


「艦長〜」


「まあ、一般人じゃあ命令を受ける義務はないしなあ、だが帝国人として…」


「あ、帝国の国民でもないです」


「は⁉︎ では神帝国の…」


「でもないです。私はどちらの国民でもないですよ」 ニコ


「なッ!じゃあもしかすると…」


「ん?」


「蛮族か?」


「は? 何ですかその蛮族って?」


「ああ、それも違うのか?」


「違います、私はただの少女、どこの国にも属さない人です」


「そうか、じゃあ我々にアニスをどうこうする権利はないって言うかしたくない!」


「艦長?」


「レオンに言われてんだよ!「アニスに手を出すな!絶対敵に回すな!」ってな」


「レオハルト少佐がですか?」


「ああ、レオンのヤツが言うには『アニスを手放すな、怒らせるな。敵対すれば国が滅ぶ』だとさ」


「ん⁉︎、(何言ってんだレオンのヤツめええ!)」


「で、アニスはこれからどうする?」


「そうですねえ、とりあえずアランやジェシカ達に会ってから、その後のことを考えます」


「そうか、じゃあひとまずは我々と共に行動するんだな」


「はい、そのつもりです」 コクン


「うん、今夜はすまなかったな、もういいぞアニス大尉」 サッ


「え、私は…」


「行動を共にしている間はその方が良いだろ?」


「ん、わかりました、グレイ艦長」 サッ


そう言ってアニスはグレイ艦長達のいるターフから出ていった。


テクテク テクテク


「はあ〜、なんかまた面倒なことになりそうだな…」


そう言って歩いていると、アニスの前に人影が現れた。


「ん?」


「お帰りアニスちゃん」


「「お帰り〜♡」」


「へ?」


「さあ、次は私達とお話ししましょう!朝までたっぷり時間がありますからね♡」


「ぎゃあああーッ! 忘れてたああーッ!」 バッ!


ガシッ! ガバッ! ギュウッ!


「ヒイッ!」


アニスは逃げようとしたが、サラとクレアに両脇を掴まれ身動きできなくなっていた。


「さあ、こちらへ… ふふふ」 テクテクテクテク


「さあ行きましょ! アニスちゃん」 うふふ


「楽しい夜になりそうですね」 あは♡


「ああああーーーッ…」


アニスは3人の女性兵士に連行されていった。回収部隊到着まで後7時間程である。





いつも読んでいただきありがとうございます。

次回もでき次第投稿します。

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