第148話 偽世界「アーク」誰が為に鐘は鳴る
-国境周辺 乱戦艦隊戦空域-
乱戦状態の艦隊戦も終盤、お互いの艦船も打ち減らされ、自然と戦闘終了の雰囲気が伝わる中、駆逐艦「ライデン」に、ザイル提督のブレードナイト「ヴァンダーディアックMe262」の放った対艦弾頭弾、「エグソセR33」が2発直撃した。炎に包まれた駆逐艦「ライデン」は、あっという間に爆発、地上に落ちていった。
今、その対艦弾頭弾「エグソセR33」が4発、今度は戦闘空母「フェリテス」に向かって放たれた。
シュシュシュウウウーー! シュゴオオーーー!
「帝国の戦闘空母めええッ! 全弾喰らって終わりだああーッ!」 グイイッ!
ジャキンッ! ピッ ピピピピ ビコッ! ビココッ! ポンッ!
『照準固定、目標ヲ捕ラエマシタ! 攻撃可能デス』 ピッ
発射された4発の対艦弾頭弾「エグソセR33」と同時に、戦闘空母「フェリテス」に突っ込んだザイル提督の「ヴァンダーディアック」は、装備してあるブレードナイト用フォトンライフル「グストロフFg42」を構えた。
「エグソセだけでも十分だが、念には念だ! 艦橋をぶち抜いてやるッ!」ググッ
ザイル提督は「ヴァンダーディアック」の照準器に戦闘空母「フェリテス」のメインブリッジを捉えた。
ビコ!ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「敵ブレードナイト確認ッ! 大型の弾頭弾ッ!被弾コースッ!」
ビコビコッ! ビーッ!
「全速回避ーッ! PDS起動ッ! 撃ち落としてえッ!」
「アイサーッ! 全速回避ッ! PDS起動ッ!」 ピッ ピッ ピコンッ!
シュゴオオーーーッ! ゴゴゴッ! ウインッ! カシャ! ヴオオオオオーッ!
戦闘空母「フェリテス」は、回避行動をとりながら、対艦弾頭弾と共に急降下してくるザイル提督のブレードナイトを迎撃し始めた。
バババババッ! シュンッ! シュシュシュッ!
猛烈なPDSによる弾幕をよそに、ザイル提督のブレードナイトは高速で突っ込んでいった。
シュゴオオーーー!シュワアアアアーーッ! ピピピピッ!
「ヤツの消滅の糧となれええッ!」 ビコッ! グッ!
ザイル提督が操縦桿に付いている、フォトンライフルの発射ボタンを押そうとした瞬間、目の前にある照準モニターが真っ白に輝き、なにも見えなくなった。
「うわッ‼︎ 眩しッ…」 バッパアアアーーーーッ!
ドゴオオオンンーッ!ドンッ!バン!バアーーーンッ‼︎
戦闘空母「フェリテス」と急降下中のブレードナイト「ヴァンダーディアック」との間に光の玉が四つ起こった。
グワアアアーーンッ! パアアーーッ! ドオオオンンンッ!
ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ
『Rog、目標弾頭に命中、他は誘爆、破壊、狙撃終了』 ピッ!
シュウウウウウーーッ! ピッ ピッ ピッ ガシュンッ!チャカッ!
四つに光の玉は、ザイル提督が放った、対艦弾頭弾「エグソセR 33」4発の爆発の光だった。対艦弾頭弾は遥か離れた所から狙撃され1つが爆発、その他の3発が誘爆したのであった。それは、戦闘空母「フェリテス」から5000mも離れた空中にいた一機の白いブレードナイト、「アウシュレッザD型RFAアウディ」の狙撃だった。
「ヒュ〜、凄えなアウディ、百発百中じゃあないか!」
『Rog、レオハルト少佐、私には当然の結果です』 ピッ
「だがなあ、5000の距離だ! ましてや標的はロケットをぶっ放して飛んでる弾頭だぜ、普通は当たんねえよ!」
『Rog、レオハルト少佐、私の有効狙撃距離は、100000mですよ、大したことではありません』 ピッ
「なんか、おまえアニスに似てんな」
『Rog、マスターに似ているとは光栄です。』 ピッ
「はは…さて、アイツはまだ健在だろう」
『Rog、敵ブレードナイト「ヴァンダーディアックMe 262」は健在です』 ピッ
「じゃあ、急ごうッ!」 グイッ! ギュウッ!
『Rog、了解』 ピッ ヒイイイイーーン! バウウウウーーッ!
レオハルト少佐と「アウシュレッザD型FARアウディ」は、狙撃用のライフルを再度構え直し狙いを定めながら、全速でスラスターをふかし、戦闘空母「フェリテス」へと向かった。
グワアアアンンッ! モクモクモク
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
『目標ヲロスト! 離脱シテクダサイ』 ピッ
「ぐううッ! なにが起きたあッ!」 ビリビリッ!
ザイル提督は閃光と爆発音、充満した煙の中でなにが起きたのか理解ができていなかった。人は咄嗟の出来事になかなか反応はできないものである。ザイル提督もブレードナイトの動きを止め、状況を見守るしかなかった。 だが、そんな煙の中まで、戦闘空母「フェリテス」の迎撃の攻撃は止んでなかった。
バババババッ! シュンッ! シュッ! シュッ! チュインッ! ガンガンッ!
「チッ! このままではなにもできんッ!」 グイッ! ギュッ!
ヒイイイイッ バウウウウーーッ! ギュウウウウンンーッ!
一旦高度をとり仕切り直すため、ザイル提督はブレードナイトを上昇させた。
ババアアッ! ヒュウウウウウンンン!
爆発の煙から抜け、眩しい日差しのある大空へと出た時、ザイル提督は眼下に信じられないものを見た。確実に仕留めたと思った戦闘空母が、1発も命中弾を受けず航行していたからであった。4発もの対艦弾頭弾は全て当たらず、目標の300手前で爆発してしまったのであった。
「馬鹿なッ!」 ググッ!
ザイル提督は、ブレードナイトの操縦席でただ一言、その言葉しか出なかった。
ビーッ! ビーッ! ビコビコッ! ポンッ!
『左舷方向、高熱原体接近ッ! 注意ッ!』 ピッ!
「左舷だとおッ⁉︎」 グイッ!ババアアーッ!
ビュウウーーッ‼︎ ビシイッ! ドガアアーーンッ‼︎
「うわあッ!」 ガクガクッ! ガクンッ!
ビーーッ! ピッ ピコッ!
『主兵装、フォトンライフル『グストロフFg 42』破壊!使用不能!』 ピッ
ザイル提督は自機のブレードナイト「ヴァンダーディアック」の体の向きを変えたその時、ブレードナイトは強烈な一撃を受け、右手に持っていたフォトンライフル「グストロフFg42」が破壊されてしまった。
「なッ⁉︎ いったいどこから⁉︎」 カチカチ ピッ ピッ!
ビコッ!ビコビコッ! ピッ! ポンッ!
『射点ヲ特定、高速接近中ノブレードナイト カラデス! 距離3800!」 ピッ!
「さッ 3800だとおおッ!そんな距離から精密射撃ができるわけないッ! ましてや高速で接近中の機体からだとおおッ⁉︎」 ググッ!
ザイル提督が驚くのも無理がなかった。ただでさえ狙撃は固定発射されるものである。それがこの長距離を、空を飛び、高速で接近中の機体から、空中にいるブレードナイトを狙撃、命中させる。まさに神業であった。
シュゴオオーーーッ!
ビコッ! ピピッ!
『Rog、命中、ただし損傷なし、携帯武器に当たったものと推定』 ピッ
「かあ〜! この速度で当てたのかよッ! なんてヤツだ!」
『Lst、レオハルト少佐、接近戦になります。用意はいいですか?』 ピッ
「ああ、そうなったら俺がなんとかしてやる!」
『Rog、あと3分で遭遇戦です!』 ピッ
「了解ッ!」 ポキポキ ポキポキ
レオハルト少佐は指の骨を鳴らし、敵ブレードナイトとの接近戦に備えた。
ビーーッ! ビコビコッ!
『敵ブレードナイト急速接近ッ! 近接戦闘モードへ』 ピッ!
「クッ! もうきたのかッ⁉︎ 速すぎるッ!」 カチカチ ピッ
ビュウウンッ! ヴィンッ! シュウウウウウッ!
ザイル提督はブレードナイト用ライトニングセイバーを出し構えた。
ヒイイイイーーーッ! ビコッ! ビコッ! ピッ
『Lst、敵ブレードナイト近接戦闘に入りました』 ピッ
「よしッ! 俺たちもだ! アウディ、ライトニングセイバー、タイプIIIだッ!」
『Rog、ライトニングセイバー、タイプIII、出します』 ピッ
ヴアンッ! ビシュウウウウーーッ!
グワアアアッ! ババッバアアアアーッ!
「うん! 見えたッ! ってまた青いブレードナイトかよッ!」
『Rog、ジェシーの『シュバルツライザー』とはまた別の青い機体ですね』 ピッ
「ええいッ!行くぞおッ!」 グイッ! ギュウッ!
シュゴオオーーーッ!
『『Rog、接触ッ!』』ピッ!
「おりゃあああッ!」 グイイッ!
「うおおおッ!」 グイイッ!
ヴオンッ! バシイイイッ! ビババッバババーッ!
レオハルト少佐の「アウシュレッザ」とザイル提督の「ヴァンダーディアック」の2機は、お互いのライトニングセイバーで打ち合い、鍔迫り合いになった。
「ほう、俺の一撃を受けたぜ!流石神帝国の青いブレードナイト!」 バチバチバチ!
「ぐううッ! 何だこいつは⁉︎ 白いブレードナイトなど見たことがないぞ!」 バチバチバチ!
グググッ! バアアアアンンッ! シュワアアアアーーッ!
お互い力押しに相手を押し合い、その場から少し離れた。
ヒイイイイーーッ! シュゴオオーーーッ!
ピッ ピッ ピッ ピッ
「どうだいアウディ、アイツの事、少しはわかるかい?」
『Rog、解析終了、ゼルファ神帝国4大ブレードナイトの1つ、ブレードナイト『ヴァンダーディアックMe262』です』 ピッ
ゼルファ神帝国 帝国の4大ブレードナイト
ブレードナイト「ヴァンダーディアックMe262」
身長 13.2m
重量 33.2t
出力 25800Kw
速度 陸上 88〜120km/h
空中 720〜960Km/h(瞬間1080Km/h)
武装 120mm魔力ライフル(グストロフFg 42)
腕部20mm機関砲 x4
腰部ウェポンラック(対ナイト用兵器各種)
ブレードナイト用ライトニングセイバー x2
対艦攻撃兵装 速射型ランチャーユニット
(対艦弾頭弾『エグソセR33』x16)
乗員 1名
特殊兵装 フォトンフィールド発生装置
瞬間加速装置、(フォトンブースター)
戦術学習装置、(タクティスブレイン)
※ 神帝国4大ブレードナイト、「シュバルツライザー」が戦闘機に対し、「ヴァンダーディアック」は戦闘攻撃機である。量産機はなく、ザイル提督戦用機となっており、ジェシーと違い、人格は無い。自己進化する学習型のブレードナイトである。
「へえ、すごいな!」 ピッ ピッ ピッ
『Lst、私からすれば玩具ですね』 ピッ
「うん? じゃあ『シュバルツライザー』のジェシーはどうなんだよ?」
『Rog、彼女は素晴らしいブレードナイトです。比較にもなりません』 ピッ
「へえ〜、なるほどねえ〜…」
『Rej、なんですか?レオハルト少佐…』 ピッ
「いや、なんでも… んッ!来るぞッ!」 グイ!
『Rog、分かってます』 ピッ
ヴオンッ! シュゴオオオーーッ!
「ただのブレードナイトではないな! ここで時間を取るわけにはいかんッ! ええいッ!一気に片付ける!」 グイッ!
『了解シマシタ、サポート開始シマス』 ピッ ビコッ! ビビコッ!
ウイイイイーーン! バウウウウーーッ!
再び2機のブレードナイトは高速で接近戦を繰り返した。ライトニングセイバーでの打ち合い、銃撃に格闘、どれをとっても互角に見えた。この時点で…
「おりゃあああッ! ほいッ!そりゃあッ!」 グイッグイッ!グイイーー!
「うぬうッ! クッ! はああッ! 」 グイッグイッ!グイッ! ギュッ!
バシイイイッ! バアンッ! ビシイッ! バンバシュッ! バチバチバチ!
ギョアアアアアーッ! シュゴオオオーッ! バババババッ! ビシイッ!
「流石ッ! いいライナーだッ!」 ピッ ビシイッ! ババッ!
『Rej、そうではないですよレオハルト少佐』 ピッ
「なにッ! この俺と互角なんだぜッ! ライナーの腕がいいんだろ⁉︎」ビシイッ!
『Rej、ライナーではありません、あのブレードナイトが私の闘い方を学習している所為です』 ピッ
「なにッ! カンニングか⁉︎」
『Lst、レオハルト少佐、それは少し違うかと…』 ピッ
「だってお前の闘い方を真似てんだろ!盗み、真似たんだッ! カンニングじゃないか⁉︎」
『Lst、レオハルト少佐、それがあの機体の特徴、仕様なのですから仕方ないのです』 ピッ
「それじゃあいつまで経っても勝てねんじゃないのか? うりゃッ! ほいッ!」 ビシイッ! ババッ!
『Rej、いいえ、勝てますよ』 ピッ
「はあ?じゃあどうすりゃいいんだ? クッ!」 バシュウウウーッ!
『Lst、倒しても?』 ピッ
「ああッ! やれッ!」 ビュウウウッ! ババッ! ビュウウウーーッ!
『Rog、少し揺れます』 ピッ カチカチッ! ピッ!
ギュワアアアアアーーンッ! ビュンッ!
レオハルト少佐がアウディに「やれッ!」と命じた瞬間、「アウシュレッザ」の操縦系が切り替わり、アウディ自身が動き出した。
「うわああッ! アウディいッ!」 ググッ!
『Lst、喋ると舌を噛みます! 構えてください!』 ピッ
シュンッ! ビシイイイッ!
「うおッ⁉︎ 動きか急にッ! 」 グイッ! グイッ!
『敵ブレードナイト、動キ、トレース出来マセン!』 ピッ
ザイル提督は急に動きの良くなった「アウシュレッザ」に驚き、ブレードナイト「ヴァンダーディアック」はその動きを捉えることができなくなっていた。
ビシュッ‼︎ フッ!
「なッ⁉︎ き、消えたッ⁉︎」 ババッ!
『敵ブレードナイト ロストッ!』 ピッ
シュンッ! ヴオンッ! シュバアアーーーッ!
『Rog、《ミラージュアタック》』 ピッ ビジュウウウーーッ! ザンッ!
「があああッ! 馬鹿なああッ!」 ビジュアアアアアアーッ!
ドガアアーーンッ‼︎ バアアアアンンンッ! ゴオオオオオンンンーッ!
一瞬だった、操縦をアウディに渡した瞬間、あっという間に敵ブレードナイト「ヴァンダーディアックMe262」は、操縦席ごと切られ、爆発していった。その時、構造体の何かが響いたのか、爆発と同時に教会の鐘のような音が響いた。
ビュウウン! シュン!
『Rog、敵機撃墜確認、戦闘終了』 ピッ
「すげえッ! アウディ、お前本当にアニスとそっくりだな」
『Rog、レオハルト少佐、ありがとうございます』 ピッ
タイミングがあったのか、ザイル提督のブレードナイトが破壊されたと同時に、ゼルファ神帝国全軍に撤退命令が出た。国境周辺の大艦隊戦は終了したのである。それにはアニスの行動が関係していた。
ー神帝都 中央タワー地下ー
レオハルト少佐達がザイル提督と戦う少し前、中央タワーの地下に存在する巨体球体のある部屋で、アニスは何者かに魔法攻撃を受けていた。
『《ヘルフレア.バーストッ!》』 キュインッ!
「ん⁉︎」 バッ!
ドグワアアアアーッ‼︎ ビュオウウウーッ! ボウウウーッ!
ゴオオオオッ‼︎ ボウッボオオッ! パチパチ メラメラメッ!
『油断したな、アニス…いや、ジオスよ…』コツコツ…ザッ!
そこに現れたのは白い仮面を被った者だった。その者はアニスに超高温の魔法攻撃を仕掛けたが、その者はそこに驚愕の姿を見た。
ボウウッボウッボウッ! メラメラ… テクテク テクテク テクテク
「誰が油断したって?」 テクテク テクテク ファサアア〜ッ! ザッ!
炎の竜巻の中から、アニスは平然として出てきたのであった。青みがかった銀髪や白い肌、白を基調とした彼女の服装には一切の焦げ目もなく、全くの無傷で現れたのだった。
『流石ですねアニス、いやジオス、こんな魔法攻撃ではなんともありませんか…』
「………」 ジッ!
ババッ! シュンッ!
『なにッ⁉︎ どこにッ!』 バッ!
アニスは何も言わず、一瞬で姿が消えた、とその直ぐ後、仮面を被った者は入り口のドアまで吹き飛んでいった。
シュンッ! ドゴオオン!
『え⁉︎ うわあああーッ!』 ビュウウウウーーッ! ゴオオオオオンンンーッ!
アニスは瞬時にその仮面の者の前に現れ、その体に回転蹴りを見舞った。仮面の者はドアにぶち当たり、球体のある部屋にその音がこだました。まるで、教会の鐘の音が響き渡るように…
ゴオオオオオンンンーッ ゴオオオオオンンンーッ…
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。