第138話 アニス潜入、意思持つ機械達
ーアトランティア帝国 国境付近ー
ヒイイイイインンンーーッ!
『Rog、アニス、目標の敵装甲重巡航艦です』
「ん、そのようだね」
『Lst、攻撃しますか?』
「ダメだよ、アレには人が乗ってるんだ!絶対攻撃したらダメッ!」
『Rog、わかりました』
「私が行くよ」
『Lst、アニス?』
「ここからあの船の中に入るッ!」
『Lst、1人でいいのですか? なんなら私が突入しますが?』
「ううんアウディ、私だけで行くよ。それに…」 ちらッ ジ〜ッ
アニスはやって来た方角の方を見た。
「それにレオンが苦戦してる。アウディ、あなたに彼を助けに行って欲しいの」
『Rog、私が彼をですか?』
「ん、お願い、あの青いブレードナイトは、多分あなたでないと抑えれない。ダメかな?」 ニコ
『Rog、アニス…分かりました、あなたの頼みです。行きましょう』
「ありがとうアウディ、無理言ってごめんね」
『Rog、アニスも無茶しないでくださいね』
「ん、じゃあ」 シュンッ!
アニスはアウディのコクピットから一瞬で消えてしまった。
『Lst、アニス、あなたは…やはり…』 グイッ! バアアーッ クルッ!
バッ! ヒイイイーッ バウウウウウーーッ! ビュンッ!
アニスの姿がコクピットから消えた後、アウディは機体を翻し、レオハルト少佐の「アウシュレッザ」とベルダム大佐の「シュバルツライザー」の両者が戦っている空域へ、スラスターを全開にして戻って行った。
ーゼルファ神帝国 装甲重巡航艦「バルゲイト」ー
ヒュルルルンッ! シュンッ! タン タタ…
「ん、無事、中に入れたね」 キョロキョロ
アニスは上空のブレードナイト「アウシュレッザD型RFAアウディ」のコクピットからここ、装甲重巡航艦「バルゲイト」の艦内に転移して来た。
ゴウン ゴウン ゴウン…
アニスの転移した場所は、横幅2mほどの通路で、人気が無くただ機関室から聞こえる推進機音のみが聞こえていた。
「ん、こっちかな」 テクテク
アニスは、千里眼によって、囚われている皇太子達の存在を感知した方向に向かって歩き出した。
「しかし誰もいないね、こんな大きい船、どうやって動かしてんだろ」 テクテク
テクテク テクテク ピタッ!
しばらく通路を歩いていくと、アニスはそこに違和感を感じ足を止めた。
「ん、なんだろ?」 スッ!
その違和感があるあたりに手を伸ばした時、あたりが騒がしくなった。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
『侵入者ッ! 侵入者ッ! 保安部員は直ちに排除せよ! 繰り返す…』
「あ、見つかっちゃった!」 タタタッ
それは重要施設周りに張り巡らされた警報装置だった。アニスは目的の場所に向かって走り出した。
「いたぞおーッ」 チャカチャカ ダダダッ
アニスが通路を横切った時、保安部員の3人に見つかり、彼らは追いかけて来た。
「ん、こっちか!」サッ! タタタッ
「待てええッ! 待たんと撃つぞおッ!」 チャカチャカ ダダダッ!
「ん〜、待っても撃つくせに〜ッ!っと、こっちかッ!」 サッ! タタタッ
アニスは的確に通路を進んでいった。そのうち、保安部員の数も3人から10人になっていた。
タタタッ チャカチャカチャカ ダダダダッ!
そして、アニスは目的の場所にたどり着いた。
「あ、ここだッ!」 タタッ ピタッ!
アニスが目的の場所で足を止めた時、後ろからやって来た保安部員たちに声をかけられた。
「ようしッ そこまでだッ! 両手を上げて大人しくするんだッ!」 ガチャッ!
保安部員のリーダーらしい者に指示をされたアニスだが、その言葉を無視して、彼らの方に振り返った。
クルッ! パサアアーッ!
青みがかった銀髪を靡かせ、体のラインが少しわかる程度の赤と白のライナースーツ姿のアニスが彼らの方を見た。その姿を見て、保安部員は、その姿に見入ってしまっていた。
「(美しい…)…はッ! だ、誰だ貴様はッ!」 チャッ!
一瞬だが、我を忘れていた保安部員のリーダーらしき者が命令して来た。
「私はアニス、この中にいる子達を返してもらうね」 サッ!
そう言ってアニスはその場所の扉に手をかけた。
「それに触れるなあッ! 射てええッ!」 ババッ!
ドガガガガガガーッ! シュンシュンッ! チュンチュインッ! キンキキンッ!
10人もの保安部員が一斉に、手に持ってる小銃やハンドガンを撃ち込んできた。だがそれを、アニスはものともせず防いだ。
「《アルテミス.リングッ》」 パアンッ!
それは絶対防御の魔法だった。あの警備ドローンの攻撃をも防ぐ魔法、保安部員の所持する銃器では、どうすることもできなかった。
ババババアアアーン…ポロポロ ポトポト キン キン コロコロ…
魔力の銃弾は、その全てが《アルテミス.リング》の壁で止まり、その威力が無くなると、壁から抜け力なく床に落ち転がっていった。
「なッ! 銃が効かないッ! まさかッ⁉︎ 『フォトンフィールド』か⁉︎」
「ん、(魔法だよ魔法、フォトンフィールドなんかじゃないのになあ…)」スッ!
アニスは彼らに対し右手の手のひらを向けた。
「気を付けろッ! 何をするかわからんッ!」 ババッ!
保安部員には、暴動鎮圧用の小さな盾が腰に常備されていて、それを彼らは自分の前に出し構えた。
「防御体制ッ!」 ザザッ ビシッ!
そんな彼らにアニスは攻撃を放った。
「あなた達も人ではないのね、その借り物の器と共に消えなさいッ!」 ヴオンッ!
「な、何を言って…」
アニスにそう言われたリーダーだが、反論しようとしたその時、アニスからの攻撃が始まった。
「《イグニ.グラン.バーストッ!》」キイイインンッ! ドゴオオオオ―ッ!
バアアアーッ!
「「「 わあああー…ッ! 」」」 ジュワアアーー…
保安部員達は全員、アニスの魔法攻撃によって消えていった。
シュウウウゥゥゥーー…
「さて、この中か…」 グッ! カチッ!
ピッ プシュー テクテク ピタッ
扉を開け、中に入ったアニスが見たものは、棺のようなカプセルが22個、綺麗に並び置かれていた。そのカプセルは、壁にある機械にコードが繋がれおり、どのカプセルも緑のランプが点滅していた。
「ん、これが皇太子達なのか?」 テクテク ジッ!
アニスはカプセルのひとつを覗き込んだ。そのカプセルの小窓には、中で眠っている者の顔が見ることができ、その中の者の名前や状態が記されていた。
ピッ ピッ ピッ ピッ…
「ん、女の子か、『【ミレイ・フォン・アスター】公爵家 冬眠中』か…」
アニスは中の者を見て安堵し、それが22個、つまり行方不明として、出された名簿の人数と一致していることを確認した。
「皇太子もあるのかな?」 テクテク
そう言って探すと、すぐ隣のカプセルがまさに皇太子の物だった。
「ん、隣のこれか、『【ラステル・ヴェル・アトランティア】皇太子 冬眠中』」
アニスは確認した後、この後どうしようか悩んだ。
「さて、どう救出しよう? 22人も目を覚ますと大勢すぎて収拾がつかない。ましてや、アウディにそんなに乗れない、安全に一度に救出するには…」 ふむ…
アニスがそう悩んでいた時、アニスの背後から、ライトニングセイバーで、切りかかってきた者がいた。
タタタタッ! ババ―ッ
「やあああーーッ!」 ブオンッ! ババッ!
だがアニスはそれを咄嗟に躱し少し離れた所まで飛んで移動した。
ビュンッ! ザザーッ!
「ん、いきなりだな」 スタ
「躱したか、侵入者めッ!」 ハアハアハア
「で、君は誰だい?」
アニスは体制を立てなおし、腰にある、神器ミドルダガーの「アヴァロン」に手を当てた。
「僕はここの守護者だッ!」 ブオン
アニスの前に現れたのは、年齢は12歳程度少年で、金髪に青い目、少年兵の防具にその手には、ライトニングセイバーが握られていた。
「守護者ねえ…」 ふふん
「な、何がおかしいッ!」 グッ!
「ん、そうか、君も人じゃないんだ」 スッ
「はッ⁉ お前何を言ってる!」
「君は守護者なんかじゃないだろ⁉」 ニコ
ドキンッ!
「な、何を根拠に…」カア~
アニスは腰から手を放し、その少年の前に歩いてきた。
テクテク
「ち、近づくなッ! それ以上近づいてみろッ! お前を殺すぞッ!」 ググッ
「ん?私を? あははは、ムリムリ」 フリフリ
「な、なんでだ?そんな事やって見なきゃわからないじゃないか」
「私が君の事が分かったから、これでいい?」
「は? なんだその理由は、今あったばかりで、俺の事は何も知らないくせに! バカバカしい」 ググッ
「じゃあ、こう言えばいいのかな、『装甲重巡航艦「バルゲイト」』君」 ニコ
「なッ‼」 カチャンッ コロコロ
アニスにそう呼ばれ、少年は持っていたライトニングセイバーを落としてしまった。
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―アトランティア帝国 山岳地帯 入口付近上空―
ギュワアアアアア―ッ! ババババッ! バンバンバンッ!
シュゴオオオオオ――ッ! ピ―ッ! ピッ ピッ
「くそおッ! ちょこまかと動きやがって―ッ!」 グイッ! ピッ
ギュウウンンン― ビコッ! ビビコッ! ポンッ!
『もうッ、今日は何なの! アイツといいコイツといいッ!』 ポンッ!
「全くだなジェシー、こんなにもッ! 凄腕のライナーがいるとはなッ!」 グイッ! グイッ!
レオハルトの「アウシュレッザ」とベルダム大佐の「シュバルツライザー」は、ほぼ互角の戦いをしていた。
キイイイイイーーッ ビコッ! ポンッ!
「いけえッ!」 カチッ ピッ
ヴオオオオオーッ! ビュッビュッ! ビュンッ!
『また、こんな位置でッ!』 ピッ ビコッ!ヴアンッ!
「くううッ! ジェシー避けろッ!」 グイッ! ビーッ!
シュッ! シュシュッ! バンッ! ドガアッ! ビシッ!
ビュウウウーーッ!パリパリ…
「ちッ! 『フォトンフィールド』かッ、厄介なッ」 グイイッ! ピコ!
バウウウウウーーッ! ギュイイイインー
「ハアハア、アイツもすげえぜ、フィールドが無かったら落ちてたなジェシー」
『ええ、でもアイツの癖も分かりました。次で当てます』 ポン
「頼むぜ、ジェシー」 グッ! カチカチ ポン!
バウウウウウーーッ! ギュウウウンンーーッ
再び2機は高速で近づいて行った。
ピピピピッ ビコッ! ポン
『敵ブレードナイトヲロック、撃墜可能デス』 ピッ
「ああ、これでアニスのところへいけるッ!」 グイッ! カチッ!ピッ
ピピピピピッ ビコ、ビビコッ!ポンッ!
『大佐、捕捉しました攻撃をッ!』 ポンッ!
「了解ッ!」 グイッ! カチッ! ピッ
双方の照準が同時に定まり、お互いのライナーは同時に引き金を引いた。
ヴオオオオオーーーッ! ババババッ! ビュンビュン!シュシャシャシャシャッ!
「「 うおおおおーーッ 堕ちろおおーッ! 」」 ギュウッ!
2機のブレードナイトは高速で接近、その接近中にフォトンライフルをフルで打ち合った。
ガンガンガンッ! ビシッ バシッ! バンバンッ ベキイッ! ボウンッ!
2機の戦いに遂に決着がついた。
ピーッ! ピーッ! ボウウウー メラメラッ バンッ!
レオハルトの「アウシュレッザ」が被弾したのだった。 彼の機体にはフォトンフィールドは無く、全ては彼の技量で敵弾を躱していたのだが、ジェシーの弾道計算についに捉われ、被弾したのであった。
「く、くそうッ!」 ピーッ! ピーッ! ピッ ピッ
『右腕部全壊ッ! スラスター損傷、当機ハ戦闘不能状態デス』 ピッ
「こ、このまま落としてなるものかッ!」 カチカチッ ピッ タンタン ピコンッ! ギュウッ!
バウウウウウーーッ! バンッ! バッ バッ! ヒュウウウ…
レオハルトは、「アウシュレッザ」のメインスラスターをやられ、姿勢制御用の小型スラスターだけで、落下速度を必死に落としていった。
「ジェシー、トドメを」グイッ!
『わかってるわ』 ポン
ピピピピ ビコッ! ポンッ!
「じゃあなッ!」 グッ
ベルダム大佐がその照準に、レオハルトの「アウシュレッザ」を捉え、引き金を引こうとした時、いきなり機体が動いた。
バウウウーッ! ギュウウウンンーーッ
「な、どうしたジェシーッ⁉︎」 バッ
『アイツが来たッ!』 ポンッ
「なにッ⁉︎」 ギュウッ!
ピピピピ ビコッ! ピコンッ!
コクピットの前にあるモニターには、こちらに向かって飛んでくる純白の機体がはっきりと映っていた。
「ジェシー、アイツともう一戦行くかい?」
『当然よ、今度は負けないから』 ポン ピッ
バウウウウウーーッ! シュゴオオオオオーッ
「シュバルツライザー」は高速で飛んでくるアニスの機体「アウシュレッザD型RFAアウディ」に向け、スラスターを全開にして飛んでいった。
ドオオオンッ! メキメキッ! ガシャーン… パラパラ…
ヒヒュウウウンン… バクンバクンッ スタッ!
「ふう、なんとか地上に着いたぜ、参ったなこれじゃあアニスのとこなんざ行けやしねえ」 ポリポリ
被弾した「アウシュレッザD型カスタム」をなんとか地上まで下ろしたレオハルト少佐は頭をかいて、アニスの飛んでいった方向を見た。
「とりあえず、救助を待つか…はあ〜…」 スタンッ
レオハルトは壊れた「アウシュレッザ」の上で腰を下ろし頭上の大空を眺めため息をついた。
ヒイイイイインンンーッ! ピッ ピッ ビコッ! ピコンッ!
『Lst、遅かったようですね、レオンの「アウシュレッザ」は落とされてしまいましたか、これは後でアニスに怒られてしまいますね』 ピッ ピッ ビーッ!
アウディの探知センサーには、すでにレオハルトの「アウシュレッザ」の信号が無くなっている事を表していた。そして、自分に近づいてくるブレードナイトの存在も…
ピッ ピッ ポンッ!
『Rej、あれを落とせば許してくれるかな?』 グイイッ! ピッ
バウウウウウーーッ! ヴオンッ! ジャキンッ!
アウディは異空間武器庫から、フォトンライフルを取り出し、さらに加速をして、ベルダム大佐の「シュバルツライザー」に接近していった。
ピッ ピッ ピッ ピコンッ! ポンッ!
『Rog、射程内に突入、照準固定、先制攻撃一斉射!」 カチッ! ピッ
無人のコクピット内で、モニターやスイッチだけが自動で動いていった。
ヒュイイイイイッ ドオオオンーーッ! バシュウウーーーッ!
それは、フォトンライフル「イーグルスナイパー」による、高圧フォトンAP弾の長距離先制攻撃であった。
ピピピピピッ ピーーーッ!
『Rog、命中確率 100%』
キイイイイイーーッ! ピッ ピッ ビーーーーッ!
『い、いやああーーッ!』 ポン
「ど、どうしたジェシーッ⁉︎」 ババッ!
ピピピピッ! ピーーーーッ!
「なッ! なにいいいーッ!」 ギュウッ!
ベルダム大佐はその時気がついた。 真正面から来るそれは、フォトンライフルによるレンジ外からの高速フォトンエネルギー弾攻撃、彼はただ、操縦桿を握っている事だけしかできなかった。
ピピピピピッ! ピーーーッ! ビコッ!
「Rog、命中ッ!」 ピッ
一つの光の球がそこに輝いた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。