第134話 アニス皇太子救出に向け発艦
―駆逐艦「ライデン」 格納庫―
アニスはブレードナイトの操縦席で、目の前にあるモニターいっぱいに映った女性、ソフィアと会話をしていた。
『ジオス様ッ! 一体今までどこでなにをしてたのですかッ!』 ババッ!
「ううッ! ってあれ、なんで私が怯えてるんだ?」 はて?
『ジオス様?』
「ソフィア、久しぶりだな!」 ニコッ!
『え?』
「そっか、お前と会うのは500年ぶりくらいだからな」
『516年ですッ!』
「そっか、心配かけたな、ごめんね」
『あ、いえ…もういいです…』
「そうか、516年か…」
『で、いきなり消えた理由は何ですか、ジオス様?』
「ソフィア、今はジオスではなくアニスで通している。こんな成りだしな」 サッ
『そうですね、また一段と可愛くなりましたし、その方が違和感がなさそうですね」
「それで頼む」
『わかりました。それで、いなくなった理由は何ですか?』
「ああ、それはねえ……」
ジオスは、これまでの経緯を全てソフィアに話した。516年前から今日までの事を…
『はあ〜、だいたい理解しました』
「ふう~、つかれた~ ん?」
ピーッ! ピポッ!
ソフィアにおおよその事を話終えたその時、アニスの元に無線通信が入った。
『ライデンコントロールよりベリー1 出撃できますか?』 ピッ
「ああ、そうか、出撃準備中だった」
『アニス様、今は出撃してください、今後の事は道中またお話ししましょう』
「ん、わかった。じゃあ、あとでね」 ブンッ!
目の前のモニターからソフィアの姿が消え、ブレードナイトの通常モニターに変わった。
ピピーッ! ポン!
『ベリー1 聞こえますか?』 ピッ
「ん、『アニスです、準備完了、今から出します』」ピッ
『了解しました。ベリー1 第1発艦用電磁カタパルトへ』 ピッ
「よし、さて、君は自分で動けるんだろ?」
『Rog、私はアニス様により、自由に行動する事ができます』
「それは、君には自我があり、自分で考えて動けるという事かな?」
『Rog、そうとっていただいていいと思います』
「そうか…(話し方も自然だし、この子には心がある、生きてるんだ)」
『Lst、アニス様、一つよろしいでしょうか?』
「ん?」
『Lst、私に名前を付けていただけないでしょうか?』
「名前?」
『Rog』
「そうだね、君には自我があるんだ、いつまでも君じゃあ可哀そうだしね」
『Rog、よろしくお願いします、アニス様』
「じゃあ、君の名はその男性っぽい声から『アウディ』なんてのはどうかな?」
『Rog、『アウディ』それで結構です。アニス様』
「アウディ、私の事はアニスでいいよ!」
『Rej、そうお呼びした方がよろしいのですか?』
「ん、その方が気兼ねないし、友達みたいだから」
『Rog、友達…わかりました、ではアニスっとお呼びします』
「ん、じゃあ行こうか、アウディ!」
『Rog、了解、ではアニス、発艦します』
「うん、頼むよ」
「Rog!』 グウイインッ!
アニスが操縦しなくても、「アウディ」は自分で発艦用電磁カタパルトの方へ移動した。
ヒュウウイイインンッ! ガコン! ガコン! ガチャンッ プシューッ!
『ライデン、アニス発艦準備、完了です』 ピッ
『ライデンコントロール了解 ベリー1 進路クリアー 発艦ッ!』 ピッ
ビーッ!
「『アウシュレッザD型RFAアウディ/アニス』行きますッ!」 ドンッ!
ガシュンッ! シャアアア――ッ ドオオオオ――ッ!
「うっわああーッ!すっごーいッ!」 バアアアアーッ!
アニス専用ブレードナイト、「アウシュレッザⅮ型RFAアウディ」は、すさまじい加速で飛んでいった。
「艦長、今の、アニス大尉のブレードナイトって…」
「言うな副長、前も言ったろ?」
「「 あれがアニスだから… 」」 くく、はははは…
艦長のグレイと副長は、2人して笑っていた。
ヒイイイイイイ――ッ ヒュオオオオオーーッ!
周りの景色が前方から後方へ、物凄い速さで過ぎ去っていく。
『速度920㎞/h、巡航速度です』
「ん、さて、ソフィアと話があるから任せてもいいかい?」
『Rog、お任せくださいアニス』 ビコッ! ピッ ピッ
「ん、じゃあ、ソフィア聞こえるかい?」 ピッ!
ブンッ! パアア―ッ!
『大丈夫ですよアニスちゃん』
「ん、アニスちゃん?」
『はい、その方が今のお姿ですと、しっくりきますので。いけないでしょうか?』
「まあ、いろんな人にそう呼ばれてるからなあ、いいよ」
『ではそう呼ばせていただきます』
「で、今はすぐにそっちには行けないんだ」
『はい、状況はわかっています、皇太子殿下と帝都学園の生徒達救出ですね』
「そうだ!つい頼まれてな、まあ、拉致、誘拐なんざ許せないからね」
『それで居場所はわかるのですか?』
「ああ、もうつかんでいる」
『さすがはアニスちゃん、いつも完璧ですね』
「救出がすんだらお前の所に行く、それでいいかな?」
『ええ、ではお待ちしてます』 ブンッ!
ソフィアとの会話を終え、アニスは前方を見た。
「うん⁉︎ アレは…」 グッ
バウウウウーッ! ヒュオオオオオーッ! ピッ ピッ ピッ ピピピッ!
『前方に、友軍機、駆逐艦ライデン所属、ブレードナイト第一第二小隊5機、速度580km/hで編隊飛行中』
「もう追いついたか、さすがに早いな」
『合流しますか?』
「いや、このまま救出地点まで行こう」
『Rog、友軍機、相対距離500m、速度920㎞/hで追い抜きます』
「うん、よろしくね」
『Rog』 ピッ ポンッ!
バアアッ! バウウウウーッ!
-ハリス少尉機-
ビーッ! ビーッ!
『後方ヨリ異常接近、友軍機、左舷500mデ追イ抜キマス』 ピッ
「友軍機?、俺達を追い抜くだと?」
シュゴオオオオーーーッ! バアアアアアアーーッ!
「うわあああッ!」
『友軍機通過、速度920㎞/hデ、追イ抜キマシタ』 ピッ
「920㎞/hだと? 信じられん、なんて速度だ!」
『た、隊長―ッ 今のはなんですッ⁉』 ピッ
『アラン准尉、落ち着くんだ。とりあえず味方の様だ、詮索は後にしよう」 ピッ
『はッ! 了解しました』 ブンッ!
「今のはなんだ? ブレードナイトの出す速度じゃないぞ!」
『友軍機 高速デレンジ外ニ出マシタ。探知不能』 ピッ
「速いッ!…もう『アウシュレッザ』の探知圏外に…」
『友軍機ロスト…』 ピッ
アニスのブレードナイトは、またたくまにハリス少尉達、ライデンブレードナイト隊の視界から消えて行った。
ーアトランティア帝国 山岳地帯 グラウンドバレー上空ー
ビュウウウンンンーッ! グワアアアンンーッ!
ババババッ! ドンドンッ! ドガアアッ! ドオンンッ!
『後ろに回り込まれたッ! 振り切れねええッ!』 ピッ ギュウウンンーッ
『今行くッ! 右にひねろッ!』 ピッ グイッ! バアアアーーッ!
『ドレイクッ! 右下に3機編隊ッ! ダイブして突っ込むッ!』 ピッ ギュウンッ!
『ラジャッ!』 ピッ ギュインッ! バアアアーッ ドドドドッ
ギュインッ!ドドドドッ! ガアアンンン! ヒュウウウッ! ドオン!
アトランティア帝国、山岳地帯 グラウンドバレー上空で、帝国、神帝国双方合わせて、50機以上のブレードナイトが空中戦やライトニングセイバーでの斬り合いをする、乱戦状態に入っていた。 そんな中に、レオハルト少佐は、2機の敵ブレードナイトと対峙していた。
ビシュウウウ… ピッ ピッ ピッ
「くそッ! こうも乱戦になるとは思わなかったぜッ!」 グイイッ! カチカチカチ ピッ!
ヴォンッ! シュバアアアアーッ!
「うおおおおッ!」 バアアアーーッ! ザシャーーッ!
ビジュウウウーッ! ドガアアアアーンンッ! メラメラ
「あと一機…」 ググッ! ヴォンッ! ビシュウウウーーッ
レオハルトは、2機の「ヴァルヴィルFw159」を相手にし、その内の一機を、たった今、ブレードナイト用ライトニングセイバーで斬り倒したところだった。 そのレオハルトに対し、もう一機の「ヴァルヴィルFw159 」は、持っていた ブレードナイト用サブマシンガン、88mmフォトン機関砲を構えた。
ガシュンッ! ガシュンッ! ダンッ! バンバンバンバンッ!
「当たるかッ! うりゃああッ!」 グイッ! カチカチッ ピッピッ ギュウッ!
バアアアーーッ ギュンッ! ギュンンッ! ギンギンッ! シュザザアーッ!
レオハルトは、「レスタリッザ」のスラスターを全開にして、こちらに銃撃をしてくる敵 ブレードナイトに、急接近していった。
「くらえーッ!」 ピッ カチッ! ブオンッ! ブンッ! グシャアアアーッ!
ドガアアアーーンッ! パラパラッ…
レオハルトの「レスタリッザ」は、銃撃をかわし、瞬時に敵ブレードナイトの懐まで入り、右腕の対装甲ナックルで、相手のコクピットをつらぬき、爆散させてしまった。
「ふう、2機撃破っと…」 ピッ ピッ タンッ!
『フェリテスコントロールッ! アルファー1コンタクト』 ピッ
『アルファー1 フェリテスコントロール受信』 ピッ
『状況はどうなってる?』 ピッ
『現在、敵の半数を撃破、各小隊奮戦中』 ピッ
『フェリテスコントロール 損害は?』 ピッ
『ホーク小隊は全滅、ファルコン、スワロウ小隊がそれぞれ2機を失っているオーバー』 ピッ
『アルファー1 了解、一度帰還する アウト』 ピッ
「ホークが全滅か…これでいて、未だ皇太子達の居場所がわからんとはッ! くそッ!」 グイッ!
バウウウウウーッ! ドオオオオーーッ!
レオハルトは、補給、補修の為、戦場を離脱し、一度母艦である「フェリテス」に向かって飛んでいった。その時、一つのマーカーに目がいった。
「マーカーを付けた敵の潜空艦か、動きが無い…そうか、無人艦なんだ。と言う事は、アレは囮…皇太子達は…逆方向かッ!」 バッ!
ピッ ピピピッ! ポンッ!
「ダメだッ! オットーやハーマン、エーテルが足りねえッ! くそッ!」 ガンッ!
逆方向に行こうにも、エネルギーである、エーテルの残量が少なく、また武器弾薬も失っている。補給をしなければどうにもならなかった。 その苛立ちを、レオハルトは「レスタリッザ」のコンソールに、拳を握って振り下ろしていた。
そんな思いを抱き、母艦へ帰還中の「レスタリッザ」の探知圏内に、一機の機影が映った。
ビーッ! ポンッ! タタタタ タタタタ タタ ポンッ!
「うん? 『前方より友軍機』? 『高速接近中』だあ? 『フェリテス』からの援軍か?」 ピッ ピピピッ!
ビコッ! ビビッ タタタタ タタタタ ポンッ!
「『接近中の機体は駆逐艦「ライデン」からの機体』? 『機体速度920km/h』だとおおーッ!」
ビコッ! ビビッ タタタタ タタタタ ポンッ!
「『戦闘空域を通過する』? 『進路を開放せよ』って誰だッ⁉︎」 ババッ!
旧型の「レスタリッザ」には、音声アシストは無く、モニターに映る情報を、ライナーは読み取っていかなけれんばならなかった。そうこうしているうちに、お互いが近づいている状態なので、その距離がいきなり短くなった。
「うん⁉︎ アレかッ!」 グッ!
ビコッ! ビーッ! タタタタ タタタタ ポンッ!
「『友軍機より通信』って、いったい…」 ピッ ピッ カチッ!
『いいから言う事を聞けレオンッ! 危ないぞッ! そこを通過するッ!』 ピッ
「なッ! この声ってまさかッ⁉︎」 グイイッ! ババッ! ビュウウンッ!
ヒイイイイインンンーッ! シュゴオオオオオーーッ!
「うおおおッ!」 ビリビリビリビリッ!
バアアアッ! ビシュウウウーー……
ビコッ! ビビッ! タタタタ タタタタ ポンッ!
「くううッ…今度は…『友軍機通過』『相対位置180m 速度920km/h』」
フュウウウー………
「なんて速さだ、しかしさっきのは、間違いなくアニスの声だった…アイツッ! まさかッ⁉︎」 バッ!
すれ違った友軍機を見ようと、機体を振り向かせたが、もうそこにはその友軍機の姿はどこにも存在しなかった。
「やっぱアニスだッ! こんな事ができるのはアイツしかいねえッ!」グイッ!
バウウウウウーッ!
レオハルトは、気を取り直して、母艦の「フェリテス」へ急いだ!
「アニスの事だッ! もう、皇太子達の居場所を掴んでいるに違いないッ!」
ヒイイイイインンンーッ ギュワアアアーッ!
『アルファー1より フェリテスコントロール コンタクト』 ピッ
『アルファー1 フェリテスコントロール受信』 ぴ
『今から急ぎ着艦する。その後すぐに出るッ! 俺の「アウシュレッザD型カスタムを高速戦闘仕様で待機させておいてくれッ! オーバー』 ピッ
『フェリテスコントロール 了解 発艦デッキに指示を出しておく アウト』 ピッ
「よしッ これでいいッ アニス、待ってろよッ! 俺が行くまで無茶すんじゃねえぞッ!」 グイッ!
フィイイイイイッ! バウウウウウーッ!
レオハルト少佐の「レスタリッザ」は、さらに加速して飛んでいった。
キイイイイーーッ
「おおッ! 見えたぜッ!『フェリテスッ!』」 ピッ
視界に見えて来たのは、今レオハルトが母艦にしているデルタ艦隊旗艦、戦闘空母の『フェリテス』であった。やがて、レオハルト少佐は、空母格納庫に着艦して消えて行った。
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ヒイイイイインンンーッ ヒュオオオオオーッ!
『Lst、どうしたのですかアニス? 少し落ち込んでいるように見えますが?』
「ん、お前は凄いねアウディ、そんなことも分かるんだ」
『Rog、どういたしまして、で、なにがあったのですか?』
「ん、それはねえ…」
『Lst、先程すれ違ったブレードナイト「レスタリッザ」のブレードライナーの男性の事ですか?』
「へ? な、なんで…」
『Rog、すれ違った瞬間、アニスの顔が、少し赤くなりましたからです』
「う〜ッ! アウディのバカあッ!」 カア〜 プンッ!
『Rej、私がバカ? 馬鹿とはなんでしょう?』
ヒイイイイインンンーッ ヒュオオオオオーッ!
ブレードナイト「アウシュレッザD型RFAアウディ」は、一つの疑問を持ちながら、皇太子殿下達が囚われているゼルファ神帝国の大型潜空巡航艦の潜む山間に向かって行った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回もでき次第投稿します。